(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】防水システム及びそれに用いられる脱気筒
(51)【国際特許分類】
E04D 13/16 20060101AFI20220112BHJP
E04D 3/35 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E04D13/16 Y
E04D3/35 P
(21)【出願番号】P 2019147210
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】519346631
【氏名又は名称】株式会社Robusto
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】福村 弘文
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-087940(JP,U)
【文献】実開昭60-042833(JP,U)
【文献】特開昭54-102019(JP,A)
【文献】特開2011-149243(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0884015(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16
E04D 3/35
E04D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水施工面に配置される防水シート及び脱気筒を備えた防水システムであって、
前記防水シートは、加熱溶融によって物体に接着する防水シート本体を有し、
前記防水シート本体の前記防水施工面と対向する面には、防水シート側通気路形成部が設けられ、
前記脱気筒は、前記防水施工面と前記防水シート本体との間に設けられる台座部と、前記台座部から上方に向かって突設され、その内部空間が前記台座部を貫通している筒状部と、を有し、
前記台座部の前記防水施工面と対向する面には、脱気筒側通気路形成部が設けられ、
前記脱気筒側通気路形成部及び前記防水シート側通気路形成部により形成される通気路と、前記内部空間と、は連通し、
前記脱気筒側通気路形成部は、前記台座部と別体に設けられた複数の脱気筒側通気路形成部構成体により構成され、
前記脱気筒側通気路形成部構成体は、前記台座部の前記防水施工面と対向する面に積層されている防水システム。
【請求項2】
前記脱気筒側通気路形成部は、前記台座部の前記防水施工面と対向する面から突出して設けられている、請求項1に記載の防水システム。
【請求項3】
前記防水シート側通気路形成部は、前記防水シート本体の前記防水施工面と対向する面から突出して設けられている、
請求項1又は2に記載の防水システム。
【請求項4】
前記防水シート側通気路形成部における前記防水施工面と対向する面は、粘着性を有する、
請求項3に記載の防水システム。
【請求項5】
前記防水シート本体には、その少なくとも何れか一方の面の周縁部に、他の前記防水シート本体と接着する接着領域が設けられ、
前記接着領域は、加熱溶融により接着する溶着領域と、加圧により接着する圧着領域と、を含む、
請求項1~4の何れかに記載の防水システム。
【請求項6】
前記防水シート本体には、前記筒状部が挿通される貫通孔が設けられている、
請求項1~5の何れかに記載の防水システム。
【請求項7】
防水施工面に配置される脱気筒であって、台座部と、前記台座部から上方に向かって突設され、その内部空間が前記台座部を貫通している筒状部と、を有し、
前記台座部の前記防水施工面と対向する面には、脱気筒側通気路形成部が設けられ、
前記脱気筒側通気路形成部は、前記台座部と別体に設けられた複数の脱気筒側通気路形成部構成体により構成され、
前記脱気筒側通気路形成部構成体は、前記台座部の前記防水施工面と対向する面に積層されている脱気筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防水施工に用いられる防水システム及びそれに用いられる脱気筒に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビル等建築物の屋上の防水施工において、コンクリート等に敷設される防水シートと、この防水シートの敷設面に設けられる脱気筒と、が用いられる。
【0003】
脱気筒は、施工時においてコンクリートに含まれていた水分が経時とともに水蒸気として発生したものや、防水シートに塗布される水性系接着剤等から発生するガスを排出する器具である。
【0004】
このように、脱気筒から水蒸気や水性系接着剤等からのガスを排出することにより、水蒸気や水性系接着剤等からのガスが防水シートの施工面に溜まることを防止し、これによる防水シートの膨張や、亀裂の発生を防止している。
【0005】
上記のような脱気筒に関する発明として、例えば特許文献1には、能率的に施工することができるとともに、通気筒部と防水層の施工部分の間からの、雨水等の水分の浸入を防止することを目的とした脱気筒に関する発明が記載されている。
【0006】
また、特許文献2にも、強風時等において、内部への雨水の逆流を防止することを目的とした脱気筒に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4342964号公報
【文献】実開平6-28059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1及び2に記載の発明のように、防水シートと共に設置される脱気筒においては、その台座部の底面全体と設置面とが面接触しており、防水シートも同様に、その一方の面が全体的に設置面と面接触して敷設される。
【0009】
このため、水蒸気や水性系接着剤等からのガスが、脱気筒の底面と設置面との間、又は防水シートの一方の面と設置面との間に停留し、脱気が効率的に行われないという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、脱気を効率的に行うことが可能な防水システム及びそれに用いられる脱気筒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、防水施工面に配置される防水シート及び脱気筒を備えた防水システムであって、
前記防水シートは、加熱溶融によって物体に接着する防水シート本体を有し、
前記防水シート本体の前記防水施工面と対向する面には、防水シート側通気路形成部が設けられ、
前記脱気筒は、前記防水施工面と前記防水シート本体との間に設けられる台座部と、前記台座部から上方に向かって突設され、その内部空間が前記台座部を貫通している筒状部と、を有し、
前記台座部の前記防水施工面と対向する面には、脱気筒側通気路形成部が設けられ、
前記脱気筒側通気路形成部、前記防水シート側通気路形成部及び前記内部空間は、連通している。
【0012】
本発明によれば、脱気筒側通気路形成部、防水シート側通気路形成部及び内部空間が連通していることで、水蒸気や水性系接着剤等からのガスが、滞りなく筒状部の内部空間を通過し、外部に放出されるため、脱気を効率的に行うことが可能となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記脱気筒側通気路形成部は、前記台座部の前記防水施工面と対向する面から突出して設けられている。
【0014】
このような構成とすることで、脱気筒側通気路形成部と防水施工面との接触面積を小さくすることができ、脱気筒側通気路形成部により形成された通気路の通気性を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記脱気筒側通気路形成部は、前記台座部と別体に設けられた複数の脱気筒側通気路形成部構成体により構成され、
前記脱気筒側通気路形成部構成体は、前記台座部の前記防水施工面と対向する面に積層されている。
【0016】
このような構成とすることで、本脱気筒の製造性が向上し、脱気筒側通気路形成部の形状や配置態様、素材等を、使用環境等に合わせて容易に変更することが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記防水シート側通気路形成部は、前記防水シート本体の前記防水施工面と対向する面から突出して設けられている。
【0018】
このような構成とすることで、防水シート側通気路形成部と防水施工面との接触面積を小さくすることができ、防水シート側通気路形成部により形成された通気路の通気性を向上させることが可能となる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、前記防水シート側通気路形成部における前記防水施工面と対向する面は、粘着性を有する。
【0020】
このような構成とすることで、防水シートを防水施工面へ施工する際、バーナ等工具が不要となる上、防水施工面への接着力が、施工者の技量に左右されないため、屋根等に均一に接着させることができ、迅速な施工作業が可能となる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記防水シート本体には、その少なくとも何れか一方の面の周縁部に、他の前記防水シート本体と接着する接着領域が設けられ、
前記接着領域は、加熱溶融により接着する溶着領域と、加圧により接着する圧着領域と、を含む。
【0022】
このような構成とすることで、防水シートを防水施工面へ施工する際、まず、施工者は、隣接する防水シート同士を、圧着領域を用いて仮接着させておく。
そして、施工者は、仮接着された全ての防水シートに対して、バーナ等により溶着作業を行う。
即ち、施工者は、隣接する防水シート同士の溶着作業において、バーナ等工具の出し入れが不要となり、一気に溶着作業を行うことができるため、施工作業の迅速性、容易性が大幅に向上する。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記防水シート本体には、前記筒状部が挿通される貫通孔が設けられている。
【0024】
このような構成とすることで、一の防水シートで台座部を綺麗に覆うことができ、施工の仕上がりを美しくできる上、脱気筒と防水シートとの間の高い水密状態を確保することが可能となる。
【0025】
本発明は、防水施工面に配置される脱気筒であって、台座部と、前記台座部から上方に向かって突設され、その内部空間が前記台座部を貫通している筒状部と、を有し、
前記台座部の前記防水施工面と対向する面には、脱気筒側通気路形成部が設けられている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、脱気を効率的に行うことが可能な防水システム及びそれに用いられる脱気筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る脱気筒を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る脱気筒を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る防水シートを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る防水システムを用いた防水施工方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る防水システムを用いた防水施工方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る防水システムを用いた防水施工方法を説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る防水システムの施工状態を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る防水システムの施工状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、
図1~
図8を用いて、本発明の実施形態に係る防水システム及びそれに用いられる脱気筒について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、これらの図において、符号1は、本実施形態に係る脱気筒、符号2は、本実施形態に係る防水シートを示す。
【0029】
図1は、本実施形態に係る防水システムが備える脱気筒1を示す図であって、(a)外装筒部13が取付けられた状態を示す概略斜視図、(b)外装筒部13が取外された状態を示す概略斜視図である。
【0030】
図1(a)に示すように、脱気筒1は、略四角形状且つ略薄板状の台座部11と、台座部11の略中央から上方に向かって突設された、略円筒状の筒状部12と、筒状部12を覆って設けられる略有底円筒状の外装筒部13と、を有している。
【0031】
台座部11の四隅には、その板厚方向に貫通する固定用孔11aが設けられている。
施工者は、固定用孔11aに、適宜ボルト等の固定具(図示せず)を挿通することで、脱気筒1を防水施工面X(
図4、
図8参照)に固定しておくことができる。
【0032】
図1(b)に示すように、筒状部12の開口端には、外装筒部13と連結するための連結部12aが設けられている。
連結部12aは、薄板の両端を上方に向かって折曲げることで、略コ字状に形成され、その略中央には、外装筒部13の雄ネジ部m(
図2参照)に螺合する雌ネジ部fが形成されている。
【0033】
図2は、脱気筒1を示す図であって、(a)
図1(a)のXX´線断面図、(b)底面図である。
【0034】
図2(a)に示すように、筒状部12の内部空間Sは、台座部11を貫通している。
また、台座部11の底面(防水施工面Xと対向する面)には、脱気筒側通気路形成部V1が設けられている。
さらに、連結部12aの雌ネジ部fが、外装筒部13の雄ネジ部mに螺合することにより、筒状部12と外装筒部13とが連結される。このため、外装筒部13は、筒状部12に対して任意に着脱可能である。
【0035】
脱気筒側通気路形成部V1は、台座部11と別体に設けられた複数の脱気筒側通気路形成部構成体V1aにより構成されている。
なお、
図2(b)に示すように、本実施形態においては、脱気筒側通気路形成部構成体V1aは8つ設けられているが、幾つであっても良く、これに限定されない。
【0036】
各脱気筒側通気路形成部構成体V1aは、略円盤状に形成され、その略中央に、その板厚方向に貫通する小孔hが設けられている。
なお、各脱気筒側通気路形成部構成体V1aの形状は、略円盤状に限られず、例えば矩形状であっても良い。
【0037】
また、各脱気筒側通気路形成部構成体V1aは、
図2(a)に示すように、台座部11の底面に積層することで、底面から突出して設けられている。各脱気筒側通気路形成部構成体V1aは、例えばその一方の面に接着剤を塗布することで、台座部11の底面に固着される。
【0038】
さらに、各脱気筒側通気路形成部構成体V1aは、
図2(b)に示すように、台座部11の周縁に沿って、略等間隔に配置されている。
なお、四隅に設けられた各脱気筒側通気路形成部構成体V1aの小孔hは、各固定用孔11aと連通している。
【0039】
図3は、本実施形態に係る防水システムが備える防水シート2を示す図であって、(a)側面図、(b)底面図である。
なお、
図3(a)において、防水シート側通気路形成部構成体V2aには、斜線のハッチングが施されている。また、
図3(b)において、剥離紙Pは省略している。
【0040】
図3(a)に示すように、防水シート2は、加熱溶融によって物体に接着する防水シート本体21を有している。
【0041】
防水シート本体21は、繊維層21aと、表面側改質アスファルト層21bと、裏面側改質アスファルト層21cと、装飾層21dと、を含む。
【0042】
繊維層21aは、合成繊維及びガラスクロス等で構成されている。また、繊維層21aの一方の面(表面)に、表面側改質アスファルト層21bが設けられ、繊維層21aの他方の面(裏面)に裏面側改質アスファルト層21cが設けられている。
【0043】
表面側改質アスファルト層21bは、アスファルトにエラストマーを混合した、自己粘着可能な改質アスファルトで構成され、溶融した状態の改質アスファルトを、繊維層21aの一方の面に塗布して形成される。
また、表面側改質アスファルト層21bの上面に、砂等からなる装飾層21dが設けられている。
【0044】
裏面側改質アスファルト層21cは、アスファルトにエラストマーを混合した、自己粘着可能な改質アスファルトで構成され、溶融した状態の改質アスファルトを、繊維層21aの他方の面に塗布して形成される。
【0045】
ここで、装飾層21dは、表面側改質アスファルト層21bの縁部分(防水シート本体21の一縁部分)には設けられておらず、表面側改質アスファルト層21bが露出している(以下、表面側改質アスファルト層21bにおける装飾層21dが設けられていない部分を、表面側接着領域B1と称する)。
【0046】
表面側接着領域B1には、不意の自己粘着を防止するために、例えばポリエチレンで構成される、自着防止フィルムFが貼付けられている。
【0047】
図3(b)に示すように、防水シート本体21の底面(防水施工面Xと対向する面)には、防水シート側通気路形成部V2及び穴あき不織布層Nが設けられている。
【0048】
防水シート側通気路形成部V2は、裏面側改質アスファルト層21cの下面から突出するように、一続きに設けられており、複数の防水シート側通気路形成部構成体V2aにより構成されている。
【0049】
各防水シート側通気路形成部構成体V2aは、略円盤状に形成されている。
なお、各防水シート側通気路形成部構成体V2aの形状は、略円盤状に限られず、例えば矩形状であっても良い。
【0050】
また、各防水シート側通気路形成部構成体V2aは、
図3(b)に示すように、防水シート本体21の底面に千鳥状に配置されている。
ここで、裏面側改質アスファルト層21cの下面に設けられた穴あき不織布層Nは、各防水シート側通気路形成部構成体V2aに対応する位置に、各防水シート側通気路形成部構成体V2aと略同径の複数の穴が設けられている。これにより、裏面側改質アスファルト層21cは、穴あき不織布層Nにより覆われ、各防水シート側通気路形成部構成体V2aの下面のみが、外部に露出する態様となる。
【0051】
さらに、各防水シート側通気路形成部構成体V2aは、裏面側改質アスファルト層21cと一続きに設けられていることで、裏面側改質アスファルト層21cと同様に、自己粘着可能な改質アスファルトで構成されている。
この他にも、各防水シート側通気路形成部構成体V2aは、例えばゴムアスファルトにより構成しても良いが、これに限られず、対象物に十分に密着する粘着性を有していれば、どのような素材であっても良い。
【0052】
ここで、防水シート側通気路形成部V2及び穴あき不織布層Nは、裏面側改質アスファルト層21cにおいて、表面側接着領域B1と反対側に位置する縁部分(防水シート本体21の他縁部分)には設けられておらず、裏面側改質アスファルト層21cが露出している(以下、裏面側改質アスファルト層21cにおける防水シート側通気路形成部V2が設けられていない部分及びこの部分に隣接する防水シート側通気路形成部構成体V2aを、裏面側接着領域B2と称する)。
【0053】
裏面側接着領域B2の、裏面側改質アスファルト層21cが露出している部分には、不意の自己粘着を防止するために、その下面に、例えばポリエチレンで構成される、自着防止フィルムFが貼付けられている。
【0054】
ここで、自着防止フィルムFは、裏面側接着領域B2に対しては、裏面側改質アスファルト層21cが露出している部分に隣接する防水シート側通気路形成部構成体V2aには貼付けられていない。
このようにすることで、裏面側接着領域B2は、加熱溶融により接着する溶着領域B2aと、加圧により接着する圧着領域B2bと、を含むこととなる。
【0055】
また、防水シート側通気路形成部V2(圧着領域B2bを含む)には、その防水施工面Xと接する面に、剥離紙Pが設けられている。
剥離紙Pは、例えばポリエステルフィルムで構成され、防水施工前に防水シート側通気路形成部V2が物体に接着することを防止する。
なお、剥離紙Pは、防水シート側通気路形成部V2の物体への接着を防止することができるものであれば良く、ポリエステルフィルムに限定されない。
【0056】
以下、
図4~
図6を用いて、本実施形態に係る防水システムを用いた防水施工方法について説明する。
なお、
図4~
図6では、防水シート本体21の詳細な層構造は省略している。
【0057】
まず、
図4を用いて、防水シート2の施工方法について説明する。
なお、
図4では、防水シート側通気路形成部構成体V2aには、斜線のハッチングが施されている。
【0058】
図4に示すように、まず、施工者は、防水シート2の剥離紙Pを防水シート側通気路形成部V2から剥がし、防水施工を行う防水施工面X(例えば屋上)に防水シート側通気路形成部V2を接着させる。
このとき、施工者は、防水シート2の一方の縁を、防水施工面Xの縁部分に沿わせておく。
【0059】
次に、施工者は、他の防水シート2の剥離紙Pを防水シート側通気路形成部V2から剥がし、一の防水シート2の裏面側接着領域B2の下側に他の防水シート2の表面側接着領域B1が位置するように、他の防水シート2の防水シート側通気路形成部V2を防水施工面Xに接着させる。
そして、施工者は、一の防水シート2の裏面側接着領域B2に対応する表面を加圧することで、一の防水シート2と他の防水シート2とを、圧着領域B2bを介して、仮接着させておく。
【0060】
ここで、施工者は、防水施工に用いる全ての防水シート2に対して、上記施工を行っておく。即ち、施工者は、隣接する防水シート2同士を、圧着領域B2bを介して、仮接着させておく。
【0061】
次に、施工者は、一の防水シート2における溶着領域B2a及び他の防水シート2における表面側接着領域B1を、これらに貼付けられた自着防止フィルムFと共に、バーナ等で加熱し、溶融させる。そして、施工者は、一の防水シート2の裏面側接着領域B2に対応する表面を加圧することで、一の防水シート2と他の防水シート2とを接着する。
なお、施工者は、仮接着された隣接する防水シート2全てに対して、上記の溶着作業を行う。
【0062】
最後に、施工者は、防水施工面Xの周縁に敷設された防水シート2に対して、裏面側接着領域B2を加熱溶融し、防水施工面Xに接着させる。
【0063】
なお、施工者は、防水シート2の防水施工面Xに対する密集性を確保するために、表面側改質アスファルト層21bと裏面側改質アスファルト層21cとを溶融させて、防水シート2と防水施工面Xとの隙間を埋めておくことが好ましい。
また、施工者は、必要に応じて、表面側接着領域B1と裏面側接着領域B2との間に溶着可能なテープを別途設け、隣接する防水シート2の接着性、水密性を向上させておくことが好ましい。
【0064】
次に、
図5及び
図6を用いて、脱気筒1周辺への防水シート2´の施工方法について説明する。
なお、
図5及び
図6では、各防水シート2、2´の一端を断面図で示している。
【0065】
図5に示すように、脱気筒1の台座部11を覆う防水シート2´には、切込み部W1及びこれに連通する貫通孔W2が設けられている。また、防水シート2´の表面には、表面側接着領域B1が設けられておらず、全面が砂等からなる装飾層21dである。
貫通孔W2の内径は、筒状部12の外径と略同一に構成されている。
【0066】
施工者は、
図5(a)に示す状態から、切込み部W1により防水シート2´の端部を開き、切込み部W1を介して、筒状部12が貫通孔W2挿通された状態とする。
こうすることにより、
図5(b)に示すように、台座部11が防水シート2´に覆われた状態となる。
【0067】
なお、防水シート2´は、切込み部W1及び貫通孔W2が設けられている構成、表面側接着領域B1が設けられていない構成、台座部11と当接する裏面に防水シート側通気路形成部V2が設けられていない構成以外は、防水シート2と同様の構成である。
また、このとき、施工者は、台座部11の表面や、防水シート2´の台座部11と当接する裏面に、上記した溶着可能なテープTを設けることで、台座部11と防水シート2´とを、バーナ等工具を用いて溶着させる。
【0068】
次に、施工者は、他の防水シート2の裏面側接着領域B2を用いることで、各防水シート2及び2´を接着することで、
図6に示す状態となる。
【0069】
なお、このとき、施工者は、
図5(b)に示すように、防水シート2´の防水シート2が当接する表面にも、溶着可能なテープTを設けることで、防水シート2と防水シート2´との接着強度を向上させておくことが好ましい。
【0070】
図7は、脱気筒1及び各防水シート2、2´が施工された状態を示す上面図であり、上面視で直接視認できない台座部11、防水シート側通気路形成部V2及び防水シート2´の端辺を点線で示している。
なお、
図7では、説明の便宜上、台座部11を透過して示し、脱気筒側通気路形成部V1についても点線で示している。また、気体Gは、仮想的に、その一つの流れを示す破線の矢印として示している。
【0071】
図7に示すように、気体G(水蒸気や水性系接着剤等からのガス)は、脱気筒側通気路形成部V1及び防水シート側通気路形成部V2により形成された通気路を通過していく。
【0072】
図8は、
図7の側面図であって、筒状部12の内部空間Sを点線で示している。
なお、気体Gは、仮想的に、その一つの流れを示す破線の矢印として示している。また、
図8では、防水シート本体21の詳細な層構造は省略している。
【0073】
図8に示すように、通気路を通過した気体Gは、内部空間Sを通過し、外部に放出される。
【0074】
本実施形態によれば、脱気筒側通気路形成部V1、防水シート側通気路形成部V2及び内部空間Sが連通していることで、気体G(水蒸気や水性系接着剤等からのガス)が、滞りなく筒状部12の内部空間Sを通過し、外部に放出されるため、脱気を効率的に行うことが可能となる。
【0075】
また、脱気筒側通気路形成部V1が、台座部11の防水施工面Xと対向する面から突出して設けられていることで、脱気筒側通気路形成部V1と防水施工面Xとの接触面積を小さくすることができ、脱気筒側通気路形成部V1により形成された通気路の通気性を向上させることが可能となる。
【0076】
また、台座部11と別体に設けられた脱気筒側通気路形成部構成体V1aが、台座部11の防水施工面Xと対向する面に積層されていることで、脱気筒1の製造性が向上し、脱気筒側通気路形成部V1の形状や配置態様、素材等を、使用環境等に合わせて容易に変更することが可能となる。
【0077】
また、防水シート側通気路形成部V2が、防水シート本体21の防水施工面Xと対向する面から突出して設けられていることで、防水シート側通気路形成部V2と防水施工面Xとの接触面積を小さくすることができ、防水シート側通気路形成部V2により形成された通気路の通気性を向上させることが可能となる。
【0078】
また、防水シート側通気路形成部V2が、粘着性を有していることで、防水シート2を防水施工面Xへ施工する際、バーナ等工具が不要となる上、防水施工面Xへの接着力が、施工者の技量に左右されないため、屋根等に均一に接着させることができ、迅速な施工作業が可能となる。
【0079】
また、防水シート本体には、その裏面の周縁部に、圧着領域B2bが設けられていることで、隣接する防水シート2同士の溶着作業において、バーナ等工具の出し入れが不要となり、一気に溶着作業を行うことができるため、施工作業の迅速性、容易性が大幅に向上する。
【0080】
また、防水シート本体21に、筒状部12が挿通される貫通孔W2が設けられていることで、一の防水シート2で台座部11を綺麗に覆うことができ、施工の仕上がりを美しくできる上、脱気筒1と防水シート2との間の高い水密状態を確保することが可能となる。
【0081】
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 脱気筒
11 台座部
11a 固定用孔
12 筒状部
12a 連結部
f 雌ネジ部
S 内部空間
13 外装筒部
m 雄ネジ部
V1 脱気筒側通気路形成部
V1a 脱気筒側通気路形成部構成体
h 小孔
2、2´ 防水シート
21 防水シート本体
21a 繊維層
21b 表面側改質アスファルト層
21c 裏面側改質アスファルト層
21d 装飾層
N 不織布層
B1 表面側接着領域
B2 裏面側接着領域
B2a 溶着領域
B2b 圧着領域
P 剥離紙
F 自着防止フィルム
W1 切込み部
W2 貫通孔
V2 防水シート側通気路形成部
V2a 防水シート側通気路形成部構成体
T 溶着可能なテープ
X 防水施工面
G 気体