(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】ライン引き装置およびライン引き支援具
(51)【国際特許分類】
A63C 19/06 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A63C19/06 B
(21)【出願番号】P 2021003310
(22)【出願日】2021-01-13
(62)【分割の表示】P 2019210645の分割
【原出願日】2019-11-21
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519416820
【氏名又は名称】塩井 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】塩井 久夫
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-236882(JP,A)
【文献】特開2009-254792(JP,A)
【文献】実開昭57-123176(JP,U)
【文献】実開昭49-058122(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 19/06-19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部と、
前記本体部に回転自在に設けられた車輪と、
前記本体部
と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部と、を備え、
前記長さ測定ツールは、一の方向に目盛りが設けられた帯状のものであり、
前記長さ測定ツール固定部は、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を示す目盛りを視認するための開口を有
し、
前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される、ライン引き装置。
【請求項2】
ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部と、
前記本体部に回転自在に設けられた車輪と、
前記本体部
と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部と、を備え、
前記長さ測定ツール固定部は、第1のプレートと、前記第1のプレートの上面に重ね合わされる第2のプレートと、を含み、
前記第1のプレートと前記第2のプレートによって、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を挟み込
み、
前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される、ライン引き装置。
【請求項3】
ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部を備え、車輪の回転により移動しながら粉体を放出することで、対象面にラインを形成するライン引き装置におけるライン引き支援具であって、
前記本体部
と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部を備え、
前記長さ測定ツール固定部は、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を示す目盛りを視認するための開口を有
し、
前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される、ライン引き支援具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動場等にラインを引く際に用いられるライン引き装置およびライン引き支援具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば運動会、野球やサッカー等の球技、陸上競技等を行うに際しては、目的に応じた所望のラインを運動場等の地面に描く作業が予め行われる。当該作業は一般的に「ラインを引く」、「ライン引き」と称される。ラインは例えば、炭酸カルシウムをパウダー状にした粉体で形成される。
【0003】
学校関係者や競技関係者をはじめとする使用者がライン引きを行うために用いる装置として、収容空間に収容された粉体を外部に放出する放出口を有する本体部と、該本体部に回転自在に設けられた車輪を備えたライン引き装置が知られている(例えば特許文献1)。ライン引きを行う際、使用者は本体部に取付けられたハンドルを把持した状態でライン引き装置を任意の方向に押し進めながら、或いは押し引き動作を交えて任意の方向へ移動させながら、放出口を介して粉体を地面に放出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術のライン引き装置を用いて所望のラインを引くためには一定の技量が必要となる。特に円状のラインを引く際、使用者が円中心から所望の距離を維持したままライン引き装置を周方向に移動させることはきわめて難しく、使用者の技量に左右されずに円状のラインを簡単に引くことができる技術が望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、円状のラインを簡単に引くことができるライン引き装置およびライン引き支援具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のライン引き装置は、ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部と、前記本体部に回転自在に設けられた車輪と、前記本体部と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部と、を備え、前記長さ測定ツールは、一の方向に目盛りが設けられた帯状のものであり、前記長さ測定ツール固定部は、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を示す目盛りを視認するための開口を有し、前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される。
【0008】
本願発明のライン引き装置は、ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部と、前記本体部に回転自在に設けられた車輪と、前記本体部と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部と、を備え、前記長さ測定ツール固定部は、第1のプレートと、前記第1のプレートの上面に重ね合わされる第2のプレートと、を含み、前記第1のプレートと前記第2のプレートによって、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を挟み込み、前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される。
【0009】
本発明のライン引き支援具は、ラインを形成するための粉体を収容する収容部と、前記収容部に収容された粉体を外部に放出する放出口と、を有する本体部を備え、車輪の回転により移動しながら粉体を放出することで、対象面にラインを形成するライン引き装置におけるライン引き支援具であって、前記本体部と一体となって移動し、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部を備え、前記長さ測定ツール固定部は、前記長さ測定ツールの前記自由端側の所定位置とは異なる位置を示す目盛りを視認するための開口を有し、前記長さ測定ツールは、その長手方向が平面視して前記車輪の回転軸の延長線と一致するように前記長さ測定ツール固定部に固定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、円状のラインを簡単に引くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の構成説明図
【
図2】(a)(b)本発明の実施の形態1におけるライン引き装置を構成する長さ測定ツール位置決め部の斜視図
【
図3】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置が備えるライン引き支援部(ライン引き支援具)の分解図
【
図4】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の正面図
【
図5】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の部分側面図
【
図6】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の背面図
【
図7】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置が備えるライン引き支援部(ライン引き支援具)の
図4に示すA-A’断面図
【
図8】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の斜視図
【
図9】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の使用例を示す図
【
図10】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置を構成する長さ測定ツール位置決め部の平面図
【
図11】本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の使用例を示す図
【
図12】(a)(b)本発明の実施の形態2におけるライン引き装置を構成する長さ測定ツール位置決め部の斜視図
【
図13】本発明の実施の形態3におけるライン引き装置の構成説明図
【
図14】本発明の実施の形態3におけるライン引き装置の部分側面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
図1から
図10を参照して、本発明の実施の形態1におけるライン引き装置の構成について説明する。
図7は
図4に示すA-A’断面図である。実施の形態1では、一の水平方向をX軸方向、X軸方向と水平面内で直交する方向をY軸方向、XY平面と直交する方向をZ軸方向と称する。ライン引き装置1は、運動場等の地面GL(
図4)に粉体を放出してラインを引く機能を有し、本体部2を備えている。
【0013】
図5において、本体部2は上方が開口した内部空間Sを有し、内部空間Sには、例えば炭酸カルシウムをパウダー状にした粉体3が収容される。内部空間Sは、ラインを形成するための粉体3を収容する収容部となっている。
図1において、本体部2の上部には、図示しないヒンジ部を介して本体部2の上面(開口)に対し開閉自在なカバー部材4が設けられている。本体部2の上面をカバー部材4で覆うことで、内部空間Sに収容された粉体3は密閉された状態となる。
【0014】
図1において、本体部2にはコ字状のハンドル部5が設けられている。ハンドル部5は、本体部2の上部側の両側の位置から上方に起立した起立部5a,5bと、両端が個々の起立部5a,5bに連結された連結部5cと、を含んで構成される。ハンドル部5は、図示しない使用者がライン引き装置1を使用してラインを引く際に、使用者によって把持される。
【0015】
本体部2の底部側の両側の位置には、一対の車輪6a,6bが設けられている。
図1および
図4において、一対の車輪6a,6bは、内部空間Sを介して本体部2を貫通するとともに、本体部2に回転自在に保持されたシャフト7の両端にそれぞれ連結固定されている。一対の車輪6a,6bの夫々にはタイヤ8a,8bが装着されている。タイヤ8a,8bを地面GLに接地させた状態で所定方向に回転させることで、本体部2は所定方向に円滑に移動する。このように、車輪6a(6b)は本体部2に回転自在に設けられている。
【0016】
本体部2の底部には、下方へ延びたスタンド9が設けられている。スタンド9はライン引き装置1を起立させた姿勢に維持するためのものである。
【0017】
図6において、本体部2の底部側の位置であって、スタンド9の取付け側と反対側の位置には、内部空間Sと連通する放出口10が形成されている。内部空間Sに収容された粉体3は、放出口10を介して地面GLに向けて放出される。すなわち、放出口10は収容部に収容された粉体3を外部に放出する。放出口10は複数の小孔の集合体であってもよい。
【0018】
本体部2の底部側の位置には、放出口10を覆う位置と覆わない位置との間で上下方向にスライド自在(矢印a)なスライド部材11が設けられている。スライド部材11は両側に設けられたガイド部材12にスライド自在に保持されている。スライド部材11の上方には、長尺の連結部材13を介して操作部14が設けられている。連結部材13の一部はガイド部材15に覆われており、このガイド部材15により連結部材13は水平方向(紙面左右方向)への移動を規制されながら上下方向にガイドされる。操作部14は、使用者がスライド部材11を所定方向にスライドさせる操作を行う際に把持される。ライン引き装置1を用いてラインを引く場合、使用者は本体部2に対してスライド部材11を上方にスライドさせて放出口10を「開」状態とする(
図6)。
【0019】
図4において、シャフト7には複数の撹拌羽16が軸方向に並んで固定されている。撹拌羽16は内部空間Sに配置されており、シャフト7と一体となって回転する。撹拌羽16は、シャフト7の回転とともに自ら回転することで内部空間S内の粉体3を撹拌する。これにより、粉体3が内部空間S内で固まって目詰まりになるのを防止するとともに、放出口10から適正量の粉体3をスムーズに放出させることができる。
【0020】
次に、車輪6a介して取り付け可能なライン引き支援部(ライン引き支援具)17を説明する。
図1および
図3において、ライン引き支援部17は、使用者が円状のラインを引く作業を支援する機能を有し、一対の車輪6a,6bのうち何れか一方の車輪(実施の形態1では車輪6a)に固定される円筒部材(中空円筒)18を備えている。円筒部材18は中空となっており、複数(実施の形態1では3個)の嵌合部材19を介して車輪6aに固定される。
【0021】
図3において、嵌合部材19は、車輪6aの幅(タイヤ8aの幅)に対応した長さ寸法の板状片19aと、板状片19aの両端から車輪6aの中心方向へ屈曲した第1の屈曲片19b、第2の屈曲片19cと、第2の屈曲片19cの一端から車輪6aと離れる方向へ屈曲した第3の屈曲片19dと、を含んで構成される。板状片19aと第1の屈曲片19b(第2の屈曲片19c)のなす角度は略90度である。第3の屈曲片19dには、座金を介してボルト20を挿入するための開口部19d1(
図5)が形成されている。円筒部材18には、複数の嵌合部材19が取付けられる位置と対応する位置(車輪6aに近接する一端部側の外周上の位置)に、ボルト20を挿入するための開口部18a(第1の開口部)が形成されている。
【0022】
円筒部材18を車輪6aに固定する際は、第1の屈曲片19bと第2の屈曲片19cを車輪6aの両側に沿わせながら板状片19aをタイヤ8aに当接させる。これにより、複数の嵌合部材19は車輪6aに嵌め合わされる。次いで、第3の屈曲片19dと円筒部材18の間にナット21を介在させた状態で、第3の屈曲片19dと円筒部材18の夫々の開口部19d1,18aにボルト20を挿入して円筒部材18の中心方向へ締め込む。これにより、嵌合部材19が車輪6aの中心側へ押し付けられ、円筒部材18は嵌合部材19を介して車輪6aの一側面に固定される。円筒部材18は、車輪6aに固定される固定部(被固定部)となっており、車輪6aと一体となって回転する。また、嵌合部材19、ボルト20およびナット21は、固定部を車輪6aに固定させる固定手段となっている。
【0023】
図3および
図7において、円筒部材18は円筒部材保持部(固定部保持部)22によって回転自在に保持される。円筒部材保持部22は、軸部23と、軸部23を軸心として回転自在に保持された中空の回転体24と、軸部23と回転体24の間に介在するベアリング25と、軸部23の先端部に螺合するナット26と、を含んで構成される。回転体24の幅方向(周方向と直交する方向)の長さ寸法は、例えば円筒部材18の幅方向の長さ寸法の1/2以下である。
【0024】
回転体24を円筒部材18の内部に挿入させると、円筒部材18の内周面と回転体24の外周面とが密着した状態となる。なお、回転体24の幅方向の長さ寸法を、円筒部材18の幅方向の長さ寸法よりも小さくすることで、嵌合部材19と円筒部材18とを締結するボルト20が回転体24に干渉しないようになっている。
【0025】
円筒部材18の内周面と回転体24の外周面とが密着する領域に対応する円筒部材18の位置には、ボルト挿入用の開口部18b(第2の開口部)が形成されている。円筒部材18の内部に回転体24を挿入させた状態で、開口部18bを介してボルト27で締め込むことで、ボルト27の一端部を回転体24の外周面に押し付ける(
図7)。これにより、回転体24は円筒部材18に固定される。一対の車輪6a,6bの回転により本体部2が所定方向に進行すると、円筒部材18は軸部23に対して相対的に回転する。
【0026】
図3において、軸部23の一端部側には、軸部23よりも径の小さい円柱状の接続部28が設けられている。接続部28には、円状の開口部29aが形成された矩形の第1のプレート29が溶接等によって固着している。第1のプレート29の上面に、同じく円状の開口部30aが形成された矩形の第2のプレート30を重ね合わせると、それぞれの開口部29a,30aが連通した状態となる。第1のプレート29と第2のプレート30には、ボルト締結用の複数(実施の形態1では2個)の孔部29b,30bが形成されている。第2のプレート30を第1のプレート29に重ね合わせた状態で、夫々の孔部29b,30bを介して蝶ボルト31で締結することによって、第2のプレート30は第1のプレート29に固定される。
【0027】
図8において、第1のプレート29と第2のプレート30は、長さ測定ツール32の所定の位置(第1の位置P1)を挟持により固定する機能を有する。
図2において、長さ測定ツール32は、一の方向に目盛り32aが設けられた帯状のものであり、いわゆる巻尺が一例として挙げられる。実施の形態1における長さ測定ツール32は、
図8に示すリール33によって巻回収容されている。リール33の一端部側には切り欠き部33aが形成されている。使用者は切り欠き部33aに手指を通すことでリール33を把持する。第1のプレート29、第2のプレート30、蝶ボルト31は、円筒体保持部(固定部保持部)を構成する軸部23と接続部28を介して接続され、長さ測定ツール32の第1の位置P1を挟み込んで固定する長さ測定ツール固定部(長さ測定ツール第1固定部)となっている。
【0028】
上述のとおり、第2のプレート30には開口部30aが設けられている。したがって、長さ測定ツール32を第1のプレート29と第2のプレート30で挟み込んだ際、開口部30aを介して長さ測定ツール32の固定位置である第1の位置P1の一部(
図9に示す固定中心C1)が露出する。これにより、使用者はライン引き装置1を用いて所望サイズの円を描く際、長さ測定ツール32の第1の位置P1における目盛り32aを確認することができる。このように、長さ測定ツール第1固定部は、長さ測定ツール32の第1の位置P1を示す目盛り32aを視認するための開口(開口部30b)を有する。なお、第1のプレート29に開口部29aは形成しなくてもよい。
【0029】
第1のプレート29の下面には、支持部材としての棒状の脚部34の一端が固定されている。脚部34は、長さ測定ツール第1固定部を下方から支持する。
【0030】
図3において、接続部28には、上方に延びた細長形状のガード部材35が固定されている。ガード部材35の下方の位置には孔部35aが形成されている。孔部35aを介してガード部材35を接続部28に挿入した後、ナット36を接続部28に螺合させて該ナット36と軸部23とでガード部材35を挟み込むことによって、ガード部材35は固定される。
【0031】
ガード部材35は上方に延びる過程で本体部側に屈曲する屈曲部35bと、ハンドル部5を構成する起立部5aに隣接して沿うように起立した起立部35cと、を含んで構成される。ガード部材35の他端部(起立部35cの先端)には、「L」の字状の引掛け部37が設けられている。
図8に示すように、リール33の切り欠き部33aを引掛け部37に通すことで、リール33は引掛け部37によって引掛け保持された状態となり、これにより使用者がライン引き作業を行う際にリール33を保持する煩わしさを解消できる。
【0032】
引掛け部37にリール33を引掛けた状態から長さ測定ツール32を引き出し、長さ測定ツール32の第1の位置P1を第1のプレート29と第2のプレート30で挟み込んで固定したとき、リール33と第1のプレート29(第2のプレート30)との間に存在する長さ測定ツール32の範囲(
図9で示す符号Q)は、ガード部材35に接触して車輪6a側への移動が規制される。これにより、ライン引き装置1の走行中に長さ測定ツール32が車輪6aに巻き込まれる事態を抑制することができる。ガード部材35は、長さ測定ツール32の車輪6a側への移動を規制する規制手段となっている。ガード部材35の幅方向の長さ寸法は、長さ測定ツール32の幅方向の長さ寸法よりも大きく設定した方が望ましい。
【0033】
図2において、長さ測定ツール32の自由端側(一端側、先端側)は、長さ測定ツール位置決め部38によって位置決めされる。長さ測定ツール位置決め部38は、「L」の字状に屈曲した複数(本実施の形態では3個)の脚部39を備えている。複数の脚部39は一端部同士が結合され、隣接する脚部39と脚部39の間隔が等しくなるよう放射状に配置されている。
【0034】
脚部39において、地面GLに向けて略90度に屈曲した側の部位は、先端が鋭利な先細り形状になっており、地面GLに突き刺して挿入される挿入部39a(
図4で示す破線)となっている。このように、地面GLの少なくとも3個所に対して鉛直方向に延びた挿入部39aを挿入することで、外部の力が水平方向に作用しても脚部39が地面GLから容易に抜けないようになっている。これにより、長さ測定ツール32の自由端側の水平面内における位置のズレを抑制することができる。
【0035】
複数の脚部39の一端部同士が結合する位置である結合部39b(
図4)には、上方に起立した姿勢の軸部40が設けられている。軸部40の上部にはナット41が螺合している。軸部40は、第3のプレート42と第4のプレート43を回転自在に保持する。軸部40は上下方向に貫通した貫通孔40a(
図10)が形成されており、これにより使用者は貫通孔40aを介して軸部40の直下に位置する地面GLを視認することができる。
【0036】
図2(a)において、第3のプレート42の中央部には、軸部40の径よりも大きく、且つナット41の径よりも小さい径の開口部42aが形成されている。したがって、第3のプレート42は脚部39から抜け落ちないようになっている。第4のプレート43の中央部には、軸部40とナット41の径よりも大きい径の開口部43aが形成されており、脚部39と軸部40に対して着脱自在となっている。第3のプレート42と第4のプレート43の夫々には、ボルト締結用の複数(本実施の形態では2個)の孔部42b,43bが形成されている。
【0037】
長さ測定ツール位置決め部38における長さ測定ツール32の固定方法を説明する。
図2(a)に示すように、使用者は第4のプレート43を外したうえで、第3のプレート42上に長さ測定ツール32の自由端側の所定部分(第2の位置P2)を載置する。この状態から使用者は、第3のプレート42の上方から第4のプレート43を重ね合わせることで、長さ測定ツール32の第4のプレート43に当接する第2の位置P2を挟み込む。次いで使用者は、孔部42b,43bを介して蝶ボルト44で締結する。これにより、第4のプレート43は第3のプレート42に固定されるとともに、長さ測定ツール32における第2の位置P2が第3のプレート42と第4のプレート43によって挟み込まれて固定される。
【0038】
上記構成において、長さ測定ツール位置決め部38(脚部39、軸部40、第3のプレート42、第4のプレート43、蝶ボルト44)は、長さ測定ツール32の自由端側を位置決め固定する。また、長さ測定ツール位置決め部38は、長さ測定ツール32の第1の位置P1よりも自由端側の第2の位置P2を固定する長さ測定ツール第2固定部(第3のプレート42、第4のプレート43、蝶ボルト44)と、ラインを引く対象面である地面GLに固定され、長さ測定ツール第2固定部を回転自在に保持する長さ測定ツール第2固定部保持部(脚部39、軸部40)と、を含んで構成される。
【0039】
例えば運動場では、円を描く位置が予め定められており、該円の中心に目印としてのマーカーが設けられているケースが多い。このようなケースでは、マーカーを避けた位置に脚部39を突き刺して固定しなければならないが、実施の形態1では、回転中心となる軸部40の下方を避けた地面GLの位置に脚部39を突き刺して固定することができる。すなわち実施の形態1における長さ測定ツール位置決め部38によれば、マーカーの鉛直方向に沿った上方の位置に軸部40(回転中心)を位置合わせすることができるため、わざわざマーカーを地面GLから取り外す必要がない。
【0040】
また、軸部40には貫通孔40aが形成されているため、使用者は貫通孔40aを介して軸部40の直下に位置する地面GLおよびマーカーを視認することができる。すなわち使用者は、上方から貫通孔40aを覗き込むことで、マーカーの直上に軸部40が位置合わせされたか否かを視覚的に確認できる。
【0041】
図9において、長さ測定ツール32の第1の位置P1を第1のプレート29と第2のプレート30とで挟み込む高さ位置Haと、長さ測定ツール32の第2の位置P2を第3のプレート42と第4のプレート43とで挟み込む高さ位置Hbは、略同一になっている。これにより、第1のプレート29及び第2のプレート30と、第3のプレート42及び第4のプレート43との間に位置する長さ測定ツール32(範囲Lを参照)の水平度が保たれ、所望サイズの円を粉体3でより正確に描くことができる。
【0042】
実施の形態1におけるライン引き装置1は以上のように構成される。次に
図8、
図9および
図11を参照して、ライン引き装置1を使用して円状のラインを描く方法について説明する。まず、使用者は長さ測定ツール位置決め部38によって、長さ測定ツール32の自由端側を所定の位置に位置決めする。より具体的には、使用者は長さ測定ツール32の自由端側における第2の位置P2を第3のプレート42と第4のプレート43とで挟み込んで固定する。次いで使用者は、軸部40の貫通孔40aを覗き込みながら地面GLに設けられたマーカーの上方に軸部40を位置合わせし、この状態で複数の脚部39(挿入部39a)を、ラインを引く対象面である地面GLに突き刺す。これにより、第3のプレート42と第4のプレート43とで挟持により固定された長さ測定ツール32の第2の位置P2が位置決めされる。第2の位置P2は、描かれる円のほぼ中心に位置する。
【0043】
次いで使用者は、描きたい円のサイズに応じて、長さ測定ツール32の第1の位置P1を第1のプレート29と第2のプレート30とで挟み込んで固定する。なお、
図9において、第1のプレート29と第2のプレート30とで挟み込んで固定される長さ測定ツール32の第1の位置P1の固定中心C1から、放出口10から吐出される粉体3の放出中心C2までの距離Tは一定である。したがって使用者は、この距離Tをオフセット量として予め認識しておけば、当該距離Tを考慮した長さ測定ツール32の所定の位置(目盛り32a)を第1の位置P1として特定することができる。例えば、距離Tがt1であり、描きたい円の半径がr1である場合、使用者は第1の位置P1の固定中心C1から第2の位置P2の固定中心C3までの範囲Wが、r1-t1となるように長さ測定ツール32の2箇所を固定する。
【0044】
次いで使用者は、第1のプレート29と第2のプレート30とで固定された第1の位置P1から、第3のプレート42と第4のプレート43とで固定された第2の位置P2までに至る長さ測定ツール32の範囲Lが水平姿勢になるよう、本体部2を移動させる(
図9)。
【0045】
次いで使用者は、本体部2の放出口10を「開」状態にさせた状態で、軸部40を軸心として、本体部2を前進させる(或いは押し引きを繰り返しながら前進する)。これにより
図11に示すように、第3のプレート42と第4のプレート43は長さ測定ツール32の第2の位置P2を固定保持したまま、本体部2の移動に倣って脚部39に対して回転する(矢印b)。これとともに、本体部2は放出口10を介して粉体3を地面GLに放出させながら、軸部40を中心とした円周上を移動する(矢印c→d→e→f)。このとき、長さ測定ツール32の自由端側は位置決め固定されているので、使用者は半径が一定した円状(正円状)のラインV(地面GLに放出された粉体3が描く軌跡)を簡単に引くことができる。
図11では便宜上、ガード部材35、引掛け部37、リール33の図示を省略している。このように、ライン引き装置1は、車輪6a,6bの回転により移動しながら粉体3を放出することで、対象面である地面GLにラインVを形成する。
【0046】
(実施の形態2)
次に
図12を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、長さ測定ツール位置決め部の構造が実施の形態1と異なる。すなわち、長さ測定ツール位置決め部38Aは、実施の形態1と同様の構成を有する複数の脚部39Aを備えており、複数の脚部39Aの一端部同士が結合する位置である結合部39Abには、鉛直方向に起立した姿勢の棒状部材45が設けられている。長さ測定ツール32Aの自由端側の先端部には、棒状部材45の径よりも大きい開口が形成されたループ状の係止部32Aaが形成されている。
【0047】
使用者は、所望の位置で脚部39Aの挿入部39Aaを地面に突き刺して固定し、さらに棒状部材45に対して係止部32Aaを開口を介して係止させる。これにより、長さ測定ツール32Aは棒状部材45を起点として回転自在に保持された状態となる。
【0048】
すなわち、長さ測定ツール位置決め部38A(脚部39A、棒状部材45)は、長さ測定ツール32Aの所定位置を位置決めするとともに、ラインVを引く対象面に対して固定された位置で長さ測定ツール32Aの自由端側における所定位置を回転自在に保持する長さ測定ツール保持部となっている。また、第1のプレート29と第2のプレート30は、固定部保持部と接続され、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツール32Aの当該自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部となっている。
【0049】
なお、脚部39Aを省略して棒状部材45を地面GLに突き刺すことによっても所期の目的を達成することは可能である。しかしながら、地面GLに対して一点のみで固定する構成では、水平方向に作用する外部の力に弱いため、少なくとも二点以上の固定が望ましい。
【0050】
(実施の形態3)
次に
図13及び
図14を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1と同一の部材に関しては同一の符号を付し、説明を省略する。実施の形態3では、実施の形態1におけるライン引き支援部17の構成が異なる。すなわち、ライン引き装置100が備える本体部2には、接続部50を介して第1のプレート51が固定されている。第1のプレート51には円状の開口部51aが形成されている。第1のプレート51の下面には、支持部材としての棒状の脚部54の一端が固定されている。
【0051】
第1のプレート51の上面に、円状の開口部52aが形成された矩形の第2のプレート52を重ね合わせると、それぞれの開口部51a,52aが連通した状態となる。第1のプレート51と第2のプレート52には、ボルト締結用の複数の図示しない孔部が形成されている。長さ測定ツール32の所定部位を第1のプレート51と第2のプレート52とで挟み込み、この状態から各プレートの夫々の孔部を介して蝶ボルト53で締結させることによって、長さ測定ツール32が挟持によって固定されるとともに、第2のプレート52が第1のプレート51に固定される。
【0052】
図14において、接続部50の一端部は本体部2を貫通して内部空間Sまで達している。接続部50の一端部にはナット部材55が螺合しており、これにより接続部50は本体部2に固定されている。第1のプレート51を本体部2に固定させる方法は、当該実施の形態3で説明した手段以外を採用してもよい。また、図示していないが、ライン引き装置100には、実施の形態1における長さ測定ツール位置決め部38(
図2)が付随している。
【0053】
以上説明したとおり、ライン引き装置100は、ラインを形成するための粉体3を収容する収容部(内部空間S)と、収容部に収容された粉体3を外部に放出する放出口10(
図6)と、を有する本体部2と、本体部2に固定され、自由端側の所定位置が回転自在に保持された長さ測定ツール32の当該自由端側の所定位置とは異なる位置を固定する長さ測定ツール固定部(第1のプレート51、第2のプレート52、蝶ボルト53)と、を備えている。ライン引き装置100では、接続部50を介して第1のプレート51を本体部2に直接的に固定するように構成されているため、実施の形態1に比べて構造を簡略化することができる。
【0054】
以上説明したように、実施の形態1-3におけるライン引き装置1によれば、使用者の技量に左右されることなく、円状のラインを簡単に引くことができる。また、粉体3を収容する収容部と、収容部に収容された粉体3を外部に放出する放出口10と、を有する本体部2と、本体部2に対し回転自在に保持された車輪とを、備え、車輪6aの回転により移動しながら粉体を放出することで、対象面にラインVを形成する従来技術のライン引き装置に取付けることができるため、導入コストを削減することができる。
【0055】
実施の形態1ではライン引き装置1の構成要素にライン引き支援部17を含めた形で説明したが、ライン引き支援部17を別体の「ライン引き支援具」とし、それ以外を「ライン引き装置」としてもよい。すなわち、ライン引き支援具は、車輪6aの回転により移動しながら粉体3を放出することで、対象面にラインVを形成するライン引き装置1を用いて行われるライン引き作業を支援するものであり、ライン引き装置1とともに用いられる。また、ライン引き支援具に長さ測定ツール位置決め部38,38Aを含めてもよい。
【0056】
本発明は実施の形態1-3で説明した構成に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で設計変更してもよい。例えば、円筒部材18は車輪6aと一体となって回転し、且つ回転体の取り付けが可能であれば、外観上、どのような形状でもよい。また、円筒部材18を車輪6aに固定する方法も任意であり、第2の屈曲片19cと車輪6aとを複数のボルトで締結してもよい。また、ライン引き装置は4個の車輪を備えた形態でもよく、かかる場合、4個の車輪のうち何れか一個の車輪に円筒部材を取り付ければよい。さらに、ラインVを引く対象面は地面GLに限られず、芝生、人工芝、室内の床面でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のライン引き装置およびライン引き支援具によれば、円状のラインを簡単に引くことができ、運動設備に関する分野において有用である。
【符号の説明】
【0058】
1,100 ライン引き装置
2 本体部
3 粉体
10 放出口
6a 車輪
51 第1のプレート(長さ測定ツール固定部)
51a 開口部
52 第2のプレート(長さ測定ツール固定部)
53 蝶ボルト(長さ測定ツール固定部)
32,32A 長さ測定ツール
32a 目盛り
S 内部空間(収容部)
V ライン