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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】デジタル時素リレー
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/18 20060101AFI20220127BHJP
   H01H 47/00 20060101ALI20220127BHJP
   H01H 43/04 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
H01H47/18 A
H01H47/00 F
H01H43/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018069589
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179715
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】寺田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】管 美冬
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-255431(JP,A)
【文献】特開2017-033243(JP,A)
【文献】特開平10-239463(JP,A)
【文献】特開2016-074424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00-47/36
H01H 41/00-43/32
H01H 9/54- 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備していて何れの切替状態でも前記複数の端子のうち何れか一つを選択する択一型スイッチであり、前記第1中央処理装置が、前記第1設定部の設定値について前記第1メカニカルスイッチの切替操作にて設定可能な択一状態の値であるのかその他の論理値であるのかを調べる合理性診断手段を具備しており、前記第2中央処理装置が、前記第2設定部の設定値について前記第2メカニカルスイッチの切替操作にて設定可能な択一状態の値であるのかその他の論理値であるのかを調べる合理性診断手段を具備しており、
それらの合理性診断手段の何れかが択一状態の値でないと診断したときには前記出力リレーの駆動が抑制されるようになっている、ことを特徴とするデジタル時素リレー。
【請求項2】
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて切り替わる切替状態もそれに対応して選択される端子も三個以上を有しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々に該当するものについて正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備している、ことを特徴とする請求項1記載のデジタル時素リレー。
【請求項3】
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、前記論理整合手段の実行後かつ各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする請求項2記載のデジタル時素リレー。
【請求項4】
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備しており且つそれらの端子の選択状態と切替状態を符号化したものとを一致させる符号型スイッチであり、前記第1メカニカルスイッチにおける符号化と前記第2メカニカルスイッチにおける符号化とが、対応する端子ごとの相補性を持つものである、ことを特徴とするデジタル時素リレー。
【請求項5】
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする請求項4記載のデジタル時素リレー。
【請求項6】
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々に該当するものについて正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備している、ことを特徴とする請求項5記載のデジタル時素リレー。
【請求項7】
前記第1中央処理装置にも、前記第2中央処理装置にも、前記設定部のうち各々に対応するものの設定値が正論理なのか負論理なのかを示す論理通知部が付設されている、ことを特徴とする請求項6記載のデジタル時素リレー。
【請求項8】
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備していて何れの切替状態でも前記複数の端子のうち何れか一つを選択する択一型スイッチと、切替操作に応じて選択される端子を複数具備しており且つそれらの端子の選択状態と切替状態を符号化したものとを一致させる符号型スイッチとを組み合わせたものであり、
前記第1メカニカルスイッチのうちの符号型スイッチにおける符号化と前記第2メカニカルスイッチのうちの符号型スイッチにおける符号化とが、対応する端子ごとの相補性を持つものであり、
前記第1中央処理装置が、前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分について前記第1メカニカルスイッチの切替操作にて設定可能な択一状態の値であるのかその他の論理値であるのかを調べる合理性診断手段を具備しており、前記第2中央処理装置が、前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分について前記第2メカニカルスイッチの切替操作にて設定可能な択一状態の値であるのかその他の論理値であるのかを調べる合理性診断手段を具備しており、
それらの合理性診断手段の何れかが択一状態の値でないと診断したときには前記出力リレーの駆動が抑制されるようになっている、ことを特徴とするデジタル時素リレー。
【請求項9】
前記第1メカニカルスイッチのうちの択一型スイッチと前記第2メカニカルスイッチのうちの択一型スイッチとが、何れも、切替操作に応じて切り替わる切替状態もそれに対応して選択される端子も三個以上を有しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々の択一型スイッチに該当する部分について正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備している、ことを特徴とする請求項8記載のデジタル時素リレー。
【請求項10】
前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理と前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの符号型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理との対応関係と、前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理と前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの符号型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理との対応関係とが、一致しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々の符号型スイッチに該当する部分について前記論理整合手段の論理判定に基づき選択的に反転処理を施す選択的反転手段を具備している、ことを特徴とする請求項9記載のデジタル時素リレー。
【請求項11】
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、前記選択的反転手段の実行後かつ各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする請求項10記載のデジタル時素リレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道分野で多用される高信頼性のデジタル時素リレーに関し、詳しくは、時素の設定や計時の処理を二重系・多重系のデジタル素子・デジタル回路にて処理することによりフェールセーフ性を高めたデジタル時素リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
時素リレーは、電圧が例えば0Vと24Vとで切り替わる制御入力に応じて出力電圧が0Vか24Vになるものであるが(図12(a)参照)、緩動リレーでは制御入力のオン遷移に応じて出力がオン(メイク,閉)状態になるタイミングが緩動時素の時間だけ遅れ、緩放リレーでは制御入力のオフ遷移に応じて出力がオフ(ブレイク,開)状態になるタイミングが緩放時素の時間だけ遅れるようになっている。
そして、そのような時素リレーについて時素の設定部や時間計測手段をデジタル回路にて具現化したものがデジタル時素リレーであり、フェールセーフ性が重要な鉄道分野では、デジタル化に加えて、時素の設定部や計測手段の二重化なども、図られている(例えば特許文献1~4参照)。
【0003】
このようなデジタル時素リレー10の典型的な構成は(図12(b)参照)、制御入力回路11と電源回路12と一対の中央処理装置13a,13bと一対の発振器14a,14bと一対の設定部15a,15bと照合手段16とリレー駆動部17と出力リレー18とを具えたものである。
それらのうち、制御入力回路11は、制御入力の波形を整えて中央処理装置13a,13bへ送るものであり、電源回路12は制御入力から中央処理装置13a,13b等の動作電力を生成するものである。
【0004】
中央処理装置13a(第1中央処理装置)は、マイクロプロセッサ(MPU)等のデジタル演算制御回路からなり、発振器14aの発振信号をクロックとして動作することでリレー駆動制御を遂行するものであり、そのリレー駆動制御に際し、設定部15a(第1設定部)から設定値を入力するとともに、その設定値に対応した時素を制御内容に反映させるようになっている。
中央処理装置13b(第2中央処理装置)も、マイクロプロセッサ(MPU)等のデジタル演算制御回路からなるが、これは発振器14bの発振信号をクロックとして動作することでリレー駆動制御を遂行するようになっている。しかも、中央処理装置13bは、そのリレー駆動制御に際し、設定部15b(第2設定部)から設定値を入力するとともに、その設定値に対応した時素を制御内容に反映させるようになっている。
【0005】
そのため、設定部15a,15bに同一の値が設定されると、それに基づいて中央処理装置13a,13bが同一の処理を行うので、中央処理装置13a,13bからリレー駆動部17に送出されるリレー駆動制御の内容は、設定部15a,15bや中央処理装置13a,13bに異常が無ければ、一致する。
照合手段16は、その一致の有無を確認するものであるが、具体化にはバリエーションがあるので一点鎖線にて図示した。代表的な例を挙げると、中央処理装置13a,13bの内部の監視手段と外部の監視手段との協働によって照合するものや(例えば特許文献1参照)、中央処理装置13a,13bが相互に自系データと他系データとの一致を確認しあうもの(例えば特許文献3参照)、中央処理装置13a,13bの外部の照合回路が確認するもの(例えば特許文献4参照)、などが挙げられる。
【0006】
リレー駆動部17は、照合手段16による照合結果が一致となったときには、中央処理装置13a,13bから受けたリレー駆動制御の指示に従って出力リレー18をオン/オフ(メイク/ブレイク,閉/開)させるが、照合手段16による照合結果が不一致となったときには、中央処理装置13a,13bから受けたリレー駆動制御の指示を無視して、出力リレー18を、予め決められている安全側の状態たとえばオフ(ブレイク,開)状態にさせるようになっている。
出力リレー18は、時素用の付加回路などの無いシンプルな構成のリレーであり、基本的には鉄道設備に適した信頼性の高い信号用リレーが用いられるが、用途によってはJIS規格等に適合した電磁リレーや半導体リレーといった一般的なリレーでも良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-292258号公報
【文献】特開平4-154475号公報
【文献】特開平10-239463号公報
【文献】特開2006-338094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなデジタル時素リレーでは、時素を取り扱うデジタル回路部13~15を二重系(多重系)にしたうえで照合手段16を組み合わせたことにより、回路等の異常を検出する能力を高めて、鉄道分野で要求されるフェールセーフ性を確保している。
しかしながら、使用の態様によっては、具体的には例えば24時間連続して稼動するのか断続的に稼動するのかによって、異常検出能力に差がつくことがあるので、規定等で必要とされるレベルにとどまらず、それより高いレベルまで安全性を向上させるのは、望ましいことであり、重要である。
【0009】
詳述すると、フェールセーフな装置として設計されている従来装置は、24時間連続して稼働することを前提としたものが多く、その場合、常時や随時に二重系・多重系の照合を行うことで、複数系のうち何れか一つの系にだけ発生した故障等については単一故障の発生段階で速やかに異常を検出することが可能なため、異常検出能力が高い。
これに対し、デジタル時素リレー10のように制御入力から動作電力を得ている緩動形デジタル時素リレー等の場合、回路動作の観点からは、24時間連続稼働でなく、電源断の状態が一日のうちに複数回も存在しうる謂わば断続稼働であることが多い。
【0010】
デジタル時素リレー10では、時素の設定に用いられる設定部15a,15bが安全性を考慮して二重系になっているが、照合などの機能が作動不能になる電源断の時には単一故障であっても異常を検出することができず、その異常の検出は制御入力に基づく動作電力の供給再開まで待たされる。そのため、電源回復までの間に更なる故障が発生して、あるいは重篤な故障が発生して、二重系の設定部15a,15bの双方で例えば同一ビットといった同一部位に同じ故障が発現した場合、電源回復後の照合では、手遅れであり、二重系の設定部15a,15bの双方で設定が誤り状態になっているのに、その異常が検出されなくなるので、その分だけ異常検出能力が低下する。
【0011】
ちなみに、照合対象データを一方の系で反転してから他方へ送り、他方の系では、受け取った反転データと、自系の照合対象データの反転データとを照合することでも、両系の間のデータ入力端子の故障を検出する能力の向上が、何れか一方の系だけの故障や、両系で異なる態様の故障であれば、期待できそうであるが、双方のデータ入力端子に係る同一部位の同一故障に対する異常検出能力については、どれほど向上するのか判然としない。データ反転がソフトウェアだけで行われていたり、中央処理装置13a,13bなどがソフトウェアをも含めて同一性を維持している等のためとも思われるが、定かでない。また、その手法を設定部15a,15bの設定値に拡張適用して、設定値の反転を繰り返したとしても、それだけで設定部15a,15bの双方における同一部位の同一故障などに対する異常検出能力が十分に高まるのか否かということも、判然としない。
【0012】
一方、二重系の設定部15a,15bのハードウェア故障については、ショート故障とオープン故障といった異なるタイプの故障である謂わば相違故障よりも、ショート故障とショート故障あるいはオープン故障とオープン故障といった同一故障の方が発生頻度が大きいと言える。過大なサージ電圧の印加や不所望な短絡による故障といった馴染みの原因による回路や素子の故障では、しばしば一つの原因だけでも複数箇所で同一故障が発現するのに対し、異なる原因による複数の故障が同時や近時に発生する頻度は相対的に小さいからである。
【0013】
そこで、フェールセーフ性の優れたデジタル時素リレーを実現すべく、時素の設定についてはコストや同一性を多少は犠牲にしても各系の設定部に係る同一部位の同一故障に対する異常検出能力が高まるように時素設定手法を改めることが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のデジタル時素リレーは(解決手段1)、このような課題をコスト面の犠牲を払ってでも解決しようとして創案されたものであり、
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備していて何れの切替状態でも前記複数の端子のうち何れか一つを選択する択一型スイッチであり、前記第1中央処理装置が、前記第1設定部の設定値について択一状態の値であるか否かを調べる合理性診断手段を具備しており、前記第2中央処理装置が、前記第2設定部の設定値について択一状態の値であるか否かを調べる合理性診断手段を具備しており、
それらの合理性診断手段の何れかが択一状態の値でないと診断したときには前記出力リレーの駆動が抑制されるようになっている、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段2)、上記解決手段1のデジタル時素リレーであって、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて切り替わる切替状態もそれに対応して選択される端子も三個以上を有しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々に該当するものについて正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備していることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段3)、上記解決手段2のデジタル時素リレーであって、
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、前記論理整合手段の実行後かつ各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段4)、上記の課題をハードウェアの同一性の犠牲を払ってでも解決しようとして創案されたものであり、
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備しており且つそれらの端子の選択状態と切替状態を符号化したものとを一致させる符号型スイッチであり、前記第1メカニカルスイッチにおける符号化と前記第2メカニカルスイッチにおける符号化とが、対応する端子ごとの相補性を持つものである、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段5)、上記解決手段4のデジタル時素リレーであって、
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする。
【0019】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段6)、上記解決手段5のデジタル時素リレーであって、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々に該当するものについて正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備していることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段7)、上記解決手段6のデジタル時素リレーであって、
前記第1中央処理装置にも、前記第2中央処理装置にも、前記設定部のうち各々に対応するものの設定値が正論理なのか負論理なのかを示す論理通知部が付設されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段8)、上記の課題をコスト面の犠牲を払ってでも更にはハードウェアの同一性の犠牲を払ってでも解決しようとして創案されたものであり、
時素設定用の第1メカニカルスイッチを具備した第1設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第1時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第1計時手段とを具備した第1中央処理装置と、時素設定用の第2メカニカルスイッチを具備した第2設定部と、その設定値に基づいて時素を設定する第2時素設定手段とその設定時素に基づいて経過時間を計測する第2計時手段とを具備した第2中央処理装置と、前記第1中央処理装置の処理と前記第2中央処理装置の処理との同一性を調べる照合手段と、その同一性の確認結果に応じて選択的に出力リレーを駆動するリレー駆動部とを備えたデジタル時素リレーにおいて、
前記第1メカニカルスイッチと前記第2メカニカルスイッチとが、何れも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備していて何れの切替状態でも前記複数の端子のうち何れか一つを選択する択一型スイッチと、切替操作に応じて選択される端子を複数具備しており且つそれらの端子の選択状態と切替状態を符号化したものとを一致させる符号型スイッチとを組み合わせたものであり、
前記第1メカニカルスイッチのうちの符号型スイッチにおける符号化と前記第2メカニカルスイッチのうちの符号型スイッチにおける符号化とが、対応する端子ごとの相補性を持つものであり、
前記第1中央処理装置が、前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分について択一状態の値であるか否かを調べる合理性診断手段を具備しており、前記第2中央処理装置が、前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分について択一状態の値であるか否かを調べる合理性診断手段を具備しており、
それらの合理性診断手段の何れかが択一状態の値でないと診断したときには前記出力リレーの駆動が抑制されるようになっている、ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段9)、上記解決手段8のデジタル時素リレーであって、
前記第1メカニカルスイッチのうちの択一型スイッチと前記第2メカニカルスイッチのうちの択一型スイッチとが、何れも、切替操作に応じて切り替わる切替状態もそれに対応して選択される端子も三個以上を有しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々の択一型スイッチに該当する部分について正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を統一する論理整合手段を具備していることを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段10)、上記解決手段9のデジタル時素リレーであって、
前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理と前記第1設定部の設定値のうち前記第1メカニカルスイッチの符号型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理との対応関係と、前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの択一型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理と前記第2設定部の設定値のうち前記第2メカニカルスイッチの符号型スイッチに係る部分に関する正論理か負論理かの論理との対応関係とが、一致しており、
前記第1中央処理装置も、前記第2中央処理装置も、前記設定値のうち各々の符号型スイッチに該当する部分について前記論理整合手段の論理判定に基づき選択的に反転処理を施す選択的反転手段を具備していることを特徴とする。
【0024】
また、本発明のデジタル時素リレーは(解決手段11)、上記解決手段10のデジタル時素リレーであって、
前記第1中央処理装置と前記第2中央処理装置とが、何れも、前記選択的反転手段の実行後かつ各々の時素設定手段による時素の設定前に、前記設定値のうち各々に該当するものを比較し合うようになっている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
このような本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段1,8)、両系の設定部のメカニカルスイッチに択一型スイッチを採用したうえで、両系の中央処理装置に合理性診断手段を追加して両系いずれの設定値についても択一状態の条件が満たされているか否かを調べるようにしたことにより、同一部位の同一故障を含む異常が的確に検出される。そして、両系の何れかで択一状態の条件が満たされていない異常が検出されたときには出力リレーの駆動が抑制されるようにもしたことにより、誤動作が的確に回避される。
したがって、この発明によれば、各系の設定部に係る同一部位の同一故障に対する異常検出能力の高いデジタル時素リレーを実現することができる。
【0026】
また、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段4,8)、両系の設定部のメカニカルスイッチに符号型スイッチを採用したことにより、端子の少ないスイッチが多くの切替状態を持つので、部品実装効率が高まる。
しかも、それらのメカニカルスイッチに相補性を持たせたことにより、同一部位の同一故障に起因する異常値の発現状態が相補的になることから、同一部位の同一故障が両系の設定値には恰も異なる故障のときのように反転して発現するため、同一部位の同一故障による異常が、容易に検出できるうえ、検出確度が向上する。
したがって、この発明によっても、各系の設定部に係る同一部位の同一故障に対する異常検出能力の高いデジタル時素リレーを実現することができる。
【0027】
さらに、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段2,9)、端子数が多くて設定値に係るビットパターン等の表現に冗長性を持つ択一型スイッチをメカニカルスイッチに採用したうえで、その冗長性を利用する論理整合手段も追加導入して両系の設定値の論理表現が統一されるようにもしたことにより、両系の中央処理装置についてソフトウェア等の同一性を維持することが容易になる。
【0028】
また、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段3,5,11)、両系の中央処理装置において時素設定手段にて時素を設定するに先だって両系の設定値の比較が行われるようにもしたことにより、二重系の汎用的な照合手段による照合を待つまでもなく速やかに、さらには照合手段による照合では漏れるような場合でも漏れることなく確実に、両系の設定値に係る異常が検出される。
【0029】
また、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段6)、両系の設定値の論理表現が統一されるようにもしたことにより、両系の中央処理装置のソフトウェアについて時素設定以降部分の同一性を維持することが容易になる。
【0030】
また、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段7)、各系に論理通知部を付設したことにより、論理整合手段における論理判定が簡便なものとなる。
【0031】
また、本発明のデジタル時素リレーにあっては(解決手段10)、冗長性に基づき設定値から正論理なのか負論理なのかが分かる択一型スイッチの論理と、設定値だけでは正論理なのか負論理なのかが分からない符号型スイッチの論理とを、予め対応させておくようにしたことにより、予め定めておいた択一型スイッチの論理と符号型スイッチの論理との対応関係に基づいて各系における設定値のうち符号型スイッチ該当部分についても正論理なのか負論理なのかが分かるので、論理通知部のような外付け部材を付設するまでもなく、論理整合手段に加えて選択的反転手段までも、論理判定を簡便に行えるものになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例1について、デジタル時素リレーの構造を示すブロック図である。
図2】(a)がプルダウン接続のロータリスイッチ(択一型スイッチ)の設定と出力の関係を示し、(b)がプルアップ接続のロータリスイッチ(択一型スイッチ)の設定と出力の関係を示している。
図3】設定部に係る状態検出状況を示す表である。
図4】本発明の実施例2について、デジタル時素リレーの構造を示すブロックである。
図5】本発明の実施例3について、デジタル時素リレーの構造を示すブロック図である。
図6】設定部に係る状態検出状況を示す表である。
図7】設定部に係る状態検出状況を示す表である。
図8】設定部に係る状態検出状況を示す表である。
図9】設定部に係る状態検出状況を示す表である。
図10】本発明の実施例4について、デジタル時素リレーの構造を示すブロック図である。
図11】本発明の実施例5について、デジタル時素リレーの構造を示すブロック図である。
図12】従来のデジタル時素リレーの構造等を示し、(a)が緩動・緩放リレーの記号図と波形例、(b)が緩動・緩放リレーのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
このような本発明のデジタル時素リレーについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~5により説明する。
図1図3に示した実施例1は、上述した解決手段1(出願当初の請求項1)を具現化したものであり、図4に示した実施例2は、上述した解決手段2~3(出願当初の請求項2~3)を具現化したものであり、図5図9に示した実施例3は、上述した解決手段4~7(出願当初の請求項4~7)を具現化したものであり、図10に示した実施例4は、上述した解決手段8~11(出願当初の請求項8~11)を具現化したものであり、図11に示した実施例5は、上述した解決手段8(出願当初の請求項8)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の各実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明のデジタル時素リレーの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、デジタル時素リレー20の構造を示すブロック図であり、図2(a)は、プルダウン接続のロータリスイッチ(択一型スイッチ)の設定と出力の関係を示しており、図2(b)は、プルアップ接続のロータリスイッチ(択一型スイッチ)の設定と出力の関係を示している。
【0035】
デジタル時素リレー20は(図1参照)、既述したデジタル時素リレー10(図12(b)参照)を踏襲しつつ一部を改造したものなので、改造箇所を中心に説明する。
デジタル時素リレー20がデジタル時素リレー10と相違するのは(図1参照)、二重系部分の一方(図では左系)については、設定部15aが択一型スイッチ22を具備した設定部21a(第1設定部)になった点と、中央処理装置13a(第1中央処理装置)のソフトウェアについて既存の時素設定手段13aa(第1時素設定手段)及び計時手段13ab(第1計時手段)に新たな合理性診断手段23aが加わった点である。
【0036】
二重系部分の他方(図では右系)についてデジタル時素リレー20がデジタル時素リレー10と相違するのは、設定部15bも同様構成の択一型スイッチ22を具備した設定部21b(第2設定部)になった点と、中央処理装置13b(第2中央処理装置)のソフトウェアについても既存の時素設定手段13ba(第2時素設定手段)及び計時手段13bb(第2計時手段)に新たな合理性診断手段23bが加わった点である。
【0037】
他の構成部分である制御入力回路11と電源回路12と発振器14a,14bと照合手段16とリレー駆動部17と出力リレー18は既述のままで良い。
なお、計時手段13ab,13bbは各系において設定された時素に係る時間経過を計測するものであり既存のものそのままでも良いが、時素設定手段13aa,13baについては、それぞれ設定値の取得先については変更が必要であり、時素設定手段13aaは設定値の取得先が設定部15aから合理性診断手段23aに変更され、時素設定手段13baは設定値の取得先が設定部15bから合理性診断手段23bに変更されている。
【0038】
択一型スイッチ22は、人が触って或いは道具を用いて操作することができるメカニカルスイッチであり、設定部21aに第1メカニカルスイッチとして組み込まれたものも、設定部21bに第2メカニカルスイッチとして組み込まれたものも、切替操作に応じて選択される端子を複数具備しており、何れの切替状態でも複数の端子のうちから何れか一つを選択して、その選択端子と図示しない共通端子とを導通させ、他の非選択端子と共通端子は導通させないようになっている。符号化を行わない基本構成のロータリースイッチが典型的なものであるが、スライドスイッチでも択一型のものなら良い。
【0039】
切替操作に応じて選択される端子が4個のロータリースイッチを具体例として使い方を説明すると(図2参照)、プルダウン接続(同図(a)参照)とプルアップ接続(同図(b)参照)とに大別され、プルダウン接続では設定値が正論理になり、プルアップ接続では設定値が負論理になる。詳述すると、プルダウン接続(同図(a)参照)の場合、操作による切替状態が“1”のときには端子の選択状態に対応した4ビットの値が“0001”になり、切替状態が“2”のときには選択状態対応値が“0010”になり、切替状態が“3”のときには選択状態対応値が“0100”になり、切替状態が“4”のときには選択状態対応値が“1000”になる。これに対し、プルアップ接続(同図(b)参照)の場合、切替状態“1”では選択状態対応値が“1110”になり、切替状態“2”では選択状態対応値が“1101”になり、切替状態“3”では選択状態対応値が“1011”になり、切替状態“4”では選択状態対応値が“0111”になる。
【0040】
合理性診断手段23a,23bは、何れも、設定部21a,21bから受けた設定値が冗長度の大きい既知の択一要件を満たしているか否かを調べることで、択一型スイッチ22に係る故障の有無を判別するようになっている。
具体的には、何れの合理性診断手段も、自系の択一型スイッチ22(即ち、左系の中央処理装置13aの合理性診断手段23aでは設定部21aの択一型スイッチ22、右系の中央処理装置13bの合理性診断手段23bでは設定部21bの択一型スイッチ22)の設定値が正論理であれば、4ビットのうち1ビットだけが“1”になっていて、残り3ビットが“0”になっているときには、択一型スイッチ22が正常であると判定するが、それ以外のときには択一型スイッチ22が故障していると判定するようになっている。
【0041】
これに対し、自系の択一型スイッチ22の設定値が負論理であれば、やはり何れの合理性診断手段も、4ビットのうち1ビットだけが“0”になっていて、残り3ビットが“1”になっているときには、択一型スイッチ22が正常であると判定するが、それ以外のときには択一型スイッチ22が故障していると判定するようになっている。
さらに、合理性診断手段23a,23bは、何れも、自系の択一型スイッチ22が正常であると判定したときには設定値を自系の時素設定手段13aa,13baに引き渡すが、自系の択一型スイッチ22が異常であると判定したときには設定値を時素設定手段に引き渡さないようになっている。そのため、デジタル時素リレー20は、合理性診断手段23a,23bの何れかが設定値について択一状態の値でないと診断したときには出力リレー18の駆動を抑制するものとなっている。
【0042】
この実施例1のデジタル時素リレー20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図3は、設定部21a,21bに係る状態検出状況を示す表である。
【0043】
具体的に説明するために(図3参照)、一事例として、設定部21a,21bの何れでも、択一型スイッチ22の抵抗接続がプルダウン接続されて(図2(a)参照)、択一型スイッチ22の設定値が正論理になっており、さらに択一型スイッチ22の切替状態が“2”になっているものとする。
そうすると、設定部21a,21bが何れも正常であれば、設定部21aの設定値も、設定部21bの設定値も“0010”になり、択一要件が満たされるため、合理性診断手段23a,23bの診断結果が何れも「正常」になり、設定状態が正しく検出されるので、既述したデジタル時素リレー10と同様にして出力リレー18が適切に作動する。
【0044】
これに対し、択一型スイッチ22に故障が発生すると、例えば下から2ビット目に当たる端子と下から3ビット目に当たる端子とが短絡状態になると、そのようなショート故障の発生要因がスイッチ内部のものであれスイッチ外部のものであれ、両端子のビット値が同じになるよう強制されるので、この事例ではショート故障の発生した択一型スイッチ22の設定値が“0010”から“0110”になる。また、例えば下から2ビット目に当たる端子が断線状態になると、該当する端子のビット値が固定されて、そのようなオープン故障の発生した択一型スイッチ22の設定値が“0010”から“0000”になる。
【0045】
そして、故障の種類がショート故障であれオープン故障であれ、故障部が設定部21a,21bの何れか一方であれ双方であれ、更には設定部21a,21bにおける故障発生部位が異なっていようと同一であろうと、択一型スイッチ22が故障すると、択一要件が満たされなくなって、そのことが合理性診断手段23a,23bのうち該当するものによって検出され、診断結果が「異常」になるため、設定状態に異常のあることが正しく検出されるので、既述したデジタル時素リレー10と異なり照合手段16の照合結果を待つまでもなく、出力リレー18の作動が抑制されて、安全が確保される。
【実施例2】
【0046】
本発明のデジタル時素リレーの実施例2について、その具体的な構成等を、図面を引用して説明する。図4は、デジタル時素リレー30の構造を示すブロックである。
【0047】
このデジタル時素リレー30が上述した実施例1のデジタル時素リレー20と相違するのは、左系の設定部21aが上例と同じく択一型スイッチ22がプルダウン接続されて設定値が正論理を維持しているのに対し右系の設定部21bが上例と異なり択一型スイッチ22がプルアップ接続されて設定値が負論理になった点と、左系の中央処理装置13aのソフトウェアに論理整合手段31aと比較手段32aとが追加されている点と、右系の中央処理装置13bのソフトウェアに論理整合手段31bと比較手段32bとが追加されている点である。
【0048】
択一型スイッチ22自体は上例のメカニカルスイッチがそのまま引き継がれており、設定部21a,21bの何れにおいても切替状態および選択端子の個数が三個以上の四個になっているが、左系の設定部21aではプルダウン接続が採用される一方、右系の設定部21bではプルアップ接続が採用されて、両系の設定値で論理が異なるものとなっている。例えば、図示のように択一型スイッチ22の切替状態が“2”の場合、設定部21aの設定値が“0010”になるのに対し、設定部21bの設定値は“1101”になる。
【0049】
論理整合手段31a,31bは、両系のソフトウェアの同一性を維持するために、同じプログラムで実現されており、設定部21a,21bのうち該当する系のものから設定値を入力すると、例えば、その設定値に含まれている“0”と“1”のビット数を数え上げてから、多数決等の判定手法にて設定値の論理が正論理なのか負論理なのかを判別する論理判定を行い、負論理のときには設定値に各ビット毎の論理反転処理を施す、といったことを行って、両系で設定値の論理を一致させるようになっている。
【0050】
このような論理整合手段31a,31bにて両系における設定値の論理を一致させた後は、中央処理装置13a,13bのプログラムコードにとどまらず、中央処理装置13a,13bの細かなプログラム実行状態(プロセス)まで、両系で一致することになる、或いは少なくとも両系で一致させるのが容易なものとなる。
そのため、択一型スイッチ22にプルダウン接続を用いるのかプルアップ接続を用いるのかといった選択に係る自由度が高まる。
【0051】
比較手段32a,32bは、論理整合手段31a,31bによって論理を一致させられた両系の設定値を送受信し合ってから比較するようになっており、設定値そのものの一致確認を明示的に行うものとなっている。図示の例では比較手段32a,32bが論理整合手段31a,31bの実行と合理性診断手段23a,23bの実行との合間に実行されるようになっているが、比較手段32a,32bは合理性診断手段23a,23bの実行の後に実行されるようになっていても良い。時素設定手段13aa,13baの実行より前であれば、不所望なリレー駆動を未然かつ的確に阻止することができる。
【実施例3】
【0052】
本発明のデジタル時素リレーの実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、デジタル時素リレー40の構造を示すブロック図である。
このデジタル時素リレー40が上述した実施例2のデジタル時素リレー30と相違するのは、設定部21aのメカニカルスイッチが符号型スイッチ41になっている点と、設定部21bのメカニカルスイッチが符号型スイッチ42になっている点と、論理整合手段31a,31bがそれぞれ論理整合手段44a,44bになっている点と、中央処理装置13aに論理通知部43aが付設されるとともに中央処理装置13bに論理通知部43bが付設されている点である。
【0053】
符号型スイッチ41も、符号型スイッチ42も、手動操作可能なメカニカルスイッチであり、切替操作に応じて選択される端子を複数具備していて、選択端子と共通端子とを導通させ、他の非選択端子と共通端子は導通させないようになっているが、選択端子の個数が一つとか一定数といった限定がなくて、図示の符号型スイッチでは切替状態の数が“0”~“9”の10個もあって端子数の4個より多くなっている。
このように切替状態が端子数より多くても、切替状態に割り振った数値“0”~“9”を二進数や二進化十進数で符号化したビット列に端子の選択状態を対応させることで、多数の切替状態を少数の端子で表すことができるものとなっている。
【0054】
しかも、符号型スイッチ41,42は、全く同じものではなく、各端子の選択/非選択と、共通端子に対する導通/非導通とを、逆の関係で符号化するようになっている。例えば、符号型スイッチ41が切替状態“5”を正論理の“0101”で符号化するとき、符号型スイッチ42は切替状態“5”を負論理の“1010”で符号化するようになっており、符号型スイッチ41,42の符号化が、対応する端子ごとの相補性を持つものとなる。このような符号型スイッチ41,42の典型例としては、正論理の「リアル」タイプと負論理の「コンプリメンタリ」タイプとが存在するロータリーコードスイッチが挙げられるが、スライドスイッチ等でも符号型で相補性のものなら良い。
【0055】
さらに、このような符号型スイッチ41,42を具備した設定部21a,21bにおける抵抗接続については、プルダウン接続であればスイッチの設定値が中央処理装置13a,13bに入力されるまで設定値の論理が変わらないが、抵抗接続がプルアップ接続であるときには設定値の論理がそこで正論理なら負論理へ負論理なら正論理へ変換される。そのため、設定部21a,21bは、相補性で論理の異なる符号型スイッチ41,42を分担して具備していても、抵抗接続の選択にて、中央処理装置13a,13bに送出する設定値については正論理でも負論理でも任意に採用することができるものとなっている。
【0056】
論理整合手段44a,44bは、上述した論理整合手段31a,31bと同様に各系の設定部21a,21bから入力した設定値のうち各々に該当するものについて正論理なのか負論理なのかの論理判定を行って論理の異なるときには反転処理を施して論理を例えば正論理で統一するものであるが、上述した論理整合手段31a,31bと異なり、個々の設定値だけで論理を判別しうる択一要件を利用することができないので、中央処理装置13a,13bそれぞれに付設された論理通知部43a,43bの通知に応じて選択的に、設定部21a,21bから入力した設定値に対して反転処理を施すようになっている。
論理通知部43a,43bは、設定部21a,21bのうち自系のものの設定値が正論理なのか負論理なのか示す二値情報を中央処理装置13a,13bに送出する。
【0057】
このような実施例3のデジタル時素リレー40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図6図9は、何れも、設定部21a,21bに係る状態検出状況を示す表である。
【0058】
具体的に説明するために(図6参照)、一事例として、設定部21aではプルダウン接続された「リアル」タイプの符号型スイッチ41の切替状態が“5”にされて、設定部21aの設定値が正論理の“5”になっており、設定部21bではプルダウン接続された「コンプリメンタリ」タイプの符号型スイッチ42の切替状態が“5”にされて、設定部21bの設定値が負論理の“5”になっており、それらに合わせて、論理通知部43aは指示値が「正」に設定され、論理通知部43bは指示値が「負」に設定されているものとする。
【0059】
そうすると、設定部21a,21bが何れも正常であれば、設定部21aの設定値が“0101”になり、設定部21bの設定値は“1010”になる。そして、左系の中央処理装置13aでは論理整合手段44aによって設定部21aの設定値“0101”がそのまま採用されるのに対し、右系の中央処理装置13bでは、論理整合手段44bによって設定部21bの設定値“1010”が反転されるので、設定値が“0101”になる。そのような反転の後は、比較手段32a,32bの比較によって両系の設定値が一致していることが確認されることから、設定状態が正しく検出されるので、上述したデジタル時素リレー20,30と同様にして出力リレー18が適切に作動する。
【0060】
これに対し、符号型スイッチ41に故障が発生すると、例えば下から2ビット目に当たる端子と下から3ビット目に当たる端子とが短絡状態になると、そのようなショート故障の発生要因がスイッチ内部のものであれスイッチ外部のものであれ、両端子のビット値が同じになるよう強制されるので、この事例ではショート故障の発生した符号型スイッチ41の設定値が“0101”から“0111”になる。また、例えば下から2ビット目に当たる端子が断線状態になると、該当する端子のビット値が固定されて、そのようなオープン故障の発生した符号型スイッチ41の設定値が“0101”から“0001”になる。
【0061】
一方、符号型スイッチ42に故障が発生すると、例えば下から2ビット目に当たる端子と下から3ビット目に当たる端子とが短絡状態になると、そのようなショート故障の発生要因がスイッチ内部のものであれスイッチ外部のものであれ、両端子のビット値が同じになるよう強制されるので、この事例ではショート故障の発生した符号型スイッチ42の設定値が“1010”から“1110”になる。また、例えば下から2ビット目に当たる端子が断線状態になると、該当する端子のビット値が固定されるが、そのようなオープン故障の発生した符号型スイッチ42の設定値はたまたま“1010”を維持する。この故障の場合は、故障が潜在化して、設定値が見掛けでは正常な値になり、異常動作を引き起こさない。
【0062】
そのため、図6の一覧表を参照して簡潔に述べると、上述した設定部21a,21b双方正常時(表の最上行を参照)と故障潜在時には(表の中央行を参照)、時素設定手段13aa,13baや計時13ab,13bbの処理が正しく実行されて、デジタル時素リレー40が時素リレーとして適切に動作し所期の機能を発揮する。これに対し、符号型スイッチ41にオープン故障が発生するとともに符号型スイッチ42にショート故障が発生したときには(表の最下行を参照)、論理整合後の両設定値がたまたま一致してしまうので、異常が検出されず、異常検出が照合手段16に委ねられてしまう。とはいえ、その他の異常の発生時には、特に符号型スイッチ41,42に双方ショート故障か双方オープン故障という同一故障が発生したときを含めて、照合手段16の処理を待つことなく速やかに異常が検出される。
【0063】
上記事例に限らず、その変形例についても説明すると(図7参照)、例えば設定部21aの抵抗接続がプルダウン接続からプルアップ接続に変更されると設定部21aの設定値が負論理の“5”で“1010”になり、設定部21bの抵抗接続もプルダウン接続からプルアップ接続に変更されると設定部21bの設定値が正論理の“5”で“0101”になる。そして、それらに合わせて論理通知部43a,43bの指示値をそれぞれ「負」,「正」に設定変更すると、右系の中央処理装置13bでは、論理整合手段44bによって設定部21bの設定値“0101”がそのまま採用されるのに対し、左系の中央処理装置13aでは論理整合手段44aによって設定部21aの設定値“1010”が反転されて設定値が“0101”になる。
【0064】
そうすると、繰り返しとなる煩雑な説明は割愛するが(図7の一覧表を参照)、設定部21a,21bが何れも正常なときと設定部21bのオープン故障が潜在化したときには、左系の中央処理装置13aの論理整合手段44aによる設定値の反転の後、比較手段32a,32bの比較によって両系の設定値の一致が確認されるので、設定状態が正しく検出されて、上述したデジタル時素リレー20,30と同様にして出力リレー18が適切に作動する。これに対し、符号型スイッチ41にオープン故障が発生するとともに符号型スイッチ42にショート故障が発生したときは別として、その他の異常の発生時には、符号型スイッチ41,42に双方ショート故障か双方オープン故障という同一故障が発生したときを含めて、照合手段16の処理を待つことなく速やかに異常が検出される。
【0065】
また、設定部21aがプルダウン接続され設定部21bがプルアップ接続されて設定部21a,21bの設定値が何れも正論理の“5”で“0101”になったときや(図8参照)、設定部21aがプルアップ接続され設定部21bがプルダウン接続されて設定部21a,21bの設定値が何れも負論理の“5”で“1010”になったときにも(図9参照)、それらに合わせて論理通知部43a,43bの指示値を共に「正」か「負」に設定しておくことで、何れの場合も、中央処理装置13a,13bでは論理整合手段44a,44bによって何れの設定値も正論理の“0101”にされる。
【0066】
そうすると、やはり繰り返しとなる煩雑な説明は割愛するが(図8図9の一覧表を参照)、設定部21a,21bが何れも正常なときと設定部21bのオープン故障が潜在化したときには、比較手段32a,32bの比較によって両系の設定値の一致が確認されるので、設定状態が正しく検出されて、上述したデジタル時素リレー20,30と同様にして出力リレー18が適切に作動する。これに対し、符号型スイッチ41にオープン故障が発生するとともに符号型スイッチ42にショート故障が発生したときは別として、その他の異常の発生時には、符号型スイッチ41,42に双方ショート故障か双方オープン故障という同一故障が発生したときを含めて、照合手段16の処理を待つことなく速やかに異常が検出される。
【実施例4】
【0067】
本発明のデジタル時素リレーの実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図10は、デジタル時素リレー50の構造を示すブロック図である。
【0068】
このデジタル時素リレー50が上述した実施例2のデジタル時素リレー30と相違するのは、左系の設定部21aが既存の択一型スイッチ22に加えて上述の符号型スイッチ41も具備している点と、右系の設定部21bが既存の択一型スイッチ22に加えて上述の符号型スイッチ42を具備している点と、左系の中央処理装置13aのソフトウェアに選択的反転手段51aが追加されるとともに比較手段32aが拡張されて比較手段52aになっている点と、右系の中央処理装置13bのソフトウェアに選択的反転手段51bが追加されるとともに比較手段32bが拡張されて比較手段52bになっている点である。
【0069】
設定部21aは、択一型スイッチ22と符号型スイッチ41とを組み合わせたことで、計40個の値を設定することが可能になっており、設定部21bは、択一型スイッチ22と符号型スイッチ42とを組み合わせたことで、やはり計40個の値を設定することが可能になっており、何れも設定値の可変範囲が大幅に広がっている。
そして、それら四つのスイッチのうち符号型スイッチ41,42については、上述したように、両スイッチ41,42における符号化が、対応する端子ごとに相補性を持つものになっている。また、符号型スイッチ41,42の抵抗接続(*)は、何れのスイッチについても、プルダウン接続でも良く、プルアップ接続でも良い。
【0070】
一方、それら四つのスイッチのうち択一型スイッチ22,22については、デジタル時素リレー40の論理通知部43a,43bや相当物を付設しておく必要が無くなるようにするために、設定部21aでは符号型スイッチ41の抵抗接続後の設定値部分の論理が正論理なのか負論理なのかに応じて択一型スイッチ22の抵抗接続(#)がプルダウン接続かプルアップ接続かにされるとともに、設定部21bでは符号型スイッチ42の抵抗接続後の設定値部分の論理が正論理なのか負論理なのかに応じて択一型スイッチ22の抵抗接続(#)がプルダウン接続かプルアップ接続かにされるが、その際、それらの論理分けと抵抗接続態様との関係が両系の設定部21a,21bについて一致させられている。
【0071】
具体的には、例えば設定部21aに関する論理分けと抵抗接続態様との関係が、設定部21aの設定値のうち択一型スイッチ22に係る設定値部分も、設定部21aの設定値のうち符号型スイッチ41に係る設定値部分も、正論理になるというものである場合、設定部21bに関する論理分けと抵抗接続態様との関係も、設定部21bの設定値のうち択一型スイッチ22に係る設定値部分も、設定部21bの設定値のうち符号型スイッチ42に係る設定値部分も、正論理になるように、抵抗接続の種類が定められる。
【0072】
また、例えば設定部21aに関する論理分けと抵抗接続態様との関係が、設定部21aの設定値のうち択一型スイッチ22に係る設定値部分は正論理になり、設定部21aの設定値のうち符号型スイッチ41に係る設定値部分は負論理になるというものの場合、設定部21bに関する論理分けと抵抗接続態様との関係も、設定部21bの設定値のうち択一型スイッチ22に係る設定値部分は正論理になり、設定部21bの設定値のうち符号型スイッチ42に係る設定値部分は負論理になるように、抵抗接続の種類が定められる。
【0073】
選択的反転手段51aは、上述の論理分けと抵抗接続態様との関係に基づいて設定部21aの設定値のうち設定部21aの符号型スイッチ41に該当する部分に対して論理整合手段31aの反転処理に応じて選択的に反転処理を施すようになっており、選択的反転手段51bは、やはり上述の論理分けと抵抗接続態様との関係に基づいて設定部21bの設定値のうち符号型スイッチ42に該当する部分に対して論理整合手段31bの反転処理に応じて選択的に反転処理を施すようになっている。
【0074】
比較手段52a,52bは、何れも、比較手段32a,32bを拡張して、ビット数の多い設定値を比較し合えるようにしたものであり、具体的には、自系の論理整合手段31a,31bから引き渡された設定値部分と、自系の選択的反転手段51a,51bから引き渡された設定値部分とを合わせて、ビット数の多い設定値を構成し、それを互いの比較対象とするようになっている。
【0075】
このようなデジタル時素リレー50にあっては、設定部21a,21bの設定値の取り得る値が最大40個にまで拡張されるので、時素の設定値をきめ細かく切り替えることができることになる。
また、単独では正論理か負論理かを判別し難い符号型スイッチ41,42の設定値部分に対する反転処理の選択が、単独でも論理判別可能な択一型スイッチ22,22の設定値部分を利用して行えるようにしたことにより、論理通知部43a,43b等を追設するまでもなく設定値全体の反転処理が適切に行えるものとなっており、更に両系のプログラムコードばかりか細かなプログラム実行状態(プロセス)まで両系で一致させるのが容易なものともなっている。
【実施例5】
【0076】
本発明のデジタル時素リレーの実施例5について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図11は、デジタル時素リレー60の構造を示すブロック図である。
このデジタル時素リレー60が上述のデジタル時素リレー50と相違するのは、要するに、設定部21a,21bに関する論理分けと抵抗接続態様との関係を特定のものに限定したことにより、論理整合手段31a,31bも選択的反転手段51a,51bも不要になって中央処理装置13a,13bから削除されている、ということである。
【0077】
詳述すると、択一型スイッチ22の抵抗接続については設定部21a,21bの何れでもプルダウン接続(PD)になっており、設定部21aの「リアルタイプ」の符号型スイッチ41の抵抗接続についてもプルダウン接続(PD)になっているが、設定部21bの「コンプリメンタリ」タイプの符号型スイッチ42の抵抗接続についてはプルアップ接続(PU)になっている。
これによって、設定部21aの設定値も、設定部21bの設定値も、中央処理装置13a,13bに入力されるときには全ビットが正論理になるので、反転する必要がない。
【0078】
なお、論理整合手段31a,31bと選択的反転手段51a,51bの削除に伴って、設定部21aの設定値のうち択一型スイッチ22に係る部分は合理性診断手段23aに送られ、設定部21aの設定値のうち符号型スイッチ41に係る部分は比較手段52aに送られ、設定部21bの設定値のうち択一型スイッチ22に係る部分は合理性診断手段23bに送られ、設定部21bの設定値のうち符号型スイッチ42に係る部分は比較手段52bに送られるようになっている。
【0079】
[その他]
上記実施例では、何れも、中央処理装置と設定部とが二重系になっていたが、本発明の適用が二重系のものに限られる訳でなく、上記の二重系に該当する部分を含んでいれば三重系以上の多重系にも本発明は適用することができる。
上記実施例2,3,4では、論理整合手段にてソフトウェアの同一性を確保しつつ反転を選択的に実行できるようになっていたが、照合手段16がソフトウェアの細かな実行ステップまで厳密にチェックするものである場合は、論理整合手段の実行中には照合手段16の稼動を一時的に止める等のことで、過度な照合は回避すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のデジタル時素リレーは、緩動時素を設定しうる緩動時素型デジタル時素リレーに好適なものであるが、それに適用が限られる訳でなく、緩放時素を設定しうる緩放時素型デジタル時素リレーや、緩動時素に加えて緩放時素をも設定しうるデジタル時素リレーにも適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10…デジタル時素リレー、
11…制御入力回路、12…電源回路、
13a,13b…中央処理装置(MPU)、
13aa,13ba…時素設定手段、13ab,13bb…計時手段、
14a,14b…発振器、15a,15b…設定部、
16…照合手段、17…リレー駆動部、18…出力リレー
20…デジタル時素リレー、
21a,21b…設定部、22…択一型スイッチ、23a,23b…合理性診断手段、
30…デジタル時素リレー、
31a,31b…論理整合手段、32a,32b…比較手段、
40…デジタル時素リレー、
41…符号型スイッチ(実符号化型,リアル型)、
42…符号型スイッチ(補符号化型,コンプリメンタリ型)、
44a,44b…論理整合手段、
50…デジタル時素リレー、
51a,51b…選択的反転手段、52a,52b…比較手段、
60…デジタル時素リレー
図1
図2
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図11
図12