(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】電気化学セル評価用ホルダ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220127BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20220127BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220127BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/02
H01M8/12
(21)【出願番号】P 2017129109
(22)【出願日】2017-06-30
【審査請求日】2020-05-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月1日~平成29年3月3日に第13回国際水素・燃料電池展にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 直毅
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-105662(JP,A)
【文献】特開2010-157466(JP,A)
【文献】特開2016-126833(JP,A)
【文献】特開2009-252561(JP,A)
【文献】特開2016-46040(JP,A)
【文献】特開2014-35907(JP,A)
【文献】特開平9-283168(JP,A)
【文献】特開2008-198431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル、集電体及びシール部材を含むセル部
と、
位置決め溝が一方の面に形成され、燃料ガス導入管と燃料ガス排出管とが側面に並設された燃料極側プレートと、
位置決め溝が一方の面に形成され、空気ガス導入管と空気ガス排出管とが側面に並設された空気極側プレートと、
前記燃料極側プレートと前記空気極側プレートの前記位置決め溝が形成されていない面間に前記セル部を挟持した状態で前記セル部、前記燃料極側プレート、前記空気極側プレートを底部に積層して収容する収容凹部が形成され、前記燃料極側プレートと前記空気極側プレートが前記収容凹部に収容された状態で前記燃料ガス導入管、前記燃料ガス排出管、前記空気ガス導入管、前記空気ガス排出管を外部に引き出すための切欠部が前記収容凹部と連通して外周の一部に形成された収容部と、
前記収容凹部に収容される前記燃料極側プレートの位置決め溝または前記空気極側プレートの位置決め溝に一端が載置されるセラミック製の弾性部材と、
裏面に位置決め溝が形成され、該位置決め溝に対し、前記燃料極側プレートの位置決め溝または前記空気極側プレートの位置決め溝に載置した前記弾性部材の他端が嵌合された状態で前記
収容凹部を閉塞する蓋部材と、
前記蓋部材と前記収容部とを締結固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする電気化学セル評価用ホルダ。
【請求項2】
前記位置決め溝は、前記燃料極側プレート、前記空気極側プレート、前記蓋部材それぞれの略中央部分に
形成されることを特徴とする請求項1記載の電気化学セル評価用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のセルを用いた固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell :SOFC)の性能特性を評価するための電気化学セル評価用ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率の高い固体酸化物形燃料電池(以下、SOFCと称する)が次世代のエネルギー供給システムとして注目を集めている。SOFCは、電解質膜にイオン伝導性固体電解質を使用し、その電解質膜の一方の面に多孔質焼結体からなる燃料極(アノード)を、他方の面に空気極(カソード)を接合して構成される。SOFCでは、燃料極に燃料(水素)を供給し、空気極に空気(酸素)を供給し、電気化学反応によって電気エネルギーを取り出している。
【0003】
この種のSOFCの研究開発に伴い、燃料電池の性能を評価するための評価装置として電気化学セル評価用ホルダ(以下、単に「セル評価ホルダ」ともいう)、耐熱性や加工性に優れ、製造コストが安価なステンレスなどの金属が装置筐体の材料として用いられている。
【0004】
しかしながら、SOFCの作動温度は800℃前後と高温となるため、筐体材料である金属中の成分(例えば、Cr)が蒸発して酸化した酸化物(例えば、Cr2 O3 )がセル表面に付着して汚染され、SOFCの評価試験に悪影響を及ぼす虞があった。
【0005】
そこで、出願人は、上述した問題を解決するため、下記特許文献1に開示される電気化学セル評価用ホルダを開発した。
【0006】
特許文献1に開示されるセル評価ホルダでは、挟持部品である燃料ガス拡散板、燃料極用集電体、セル部、一対のセラミックス製のガスケット、空気極用集電体、空気ガス拡散板を積層し、燃料極側収容凹部と空気極側収容凹部とが対向するようにアルミナ製の燃料極側プレート及び空気極側プレートとを突き合わせた状態で挟持させる。そして、各筐体間で挟持部品を挟持した状態で、空気極側挿通孔にセラミックバネを挿入し、燃料極側挿通孔から挿入したボルトをナットで締結固定して組み立てる。これにより、性能評価時におけるセルへの悪影響が無く、且つ装置の小型化による電気炉への設置容易性と組立容易性の向上を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される評価ホルダは、φ15mm~φ30mmの円形状のボタン型セルから、1辺が30mm~10cm程度の矩形状の平板型セルなど幅広く使用することができる。しかしながら、特許文献1の評価ホルダは、セルサイズとして5cm程度の平板型セルの測定が基準となるように設計されているため、筐体サイズもそれなりに大きく、質量も2~5キロ程度に達する。そのため、平板型セルよりも小さく薄いボタン型セルを設置する場合、筐体自体の重さに加えて設置する際のセラミックバネの押圧力も加わるため、セルが割れないように荷重を掛けるのが非常に難しい。
【0009】
仮に、特許文献1の評価ホルダをボタン型セルのサイズに合わせて小型化させた場合、筐体がフリーの状態でセルの挟持位置がズレないように位置決めしながら組み立てるのが困難となる。また、評価用ホルダが小型化すると、挟持時に適切な付勢力が付与可能なセラミックバネも筐体サイズに合わせたサイズで作製する必要があるが、このバネの小型化が技術的に非常に困難であり、製造コストが大幅に嵩んでしまうという問題がある。
【0010】
さらに、大学などの研究室では、電気化学セルの試験に際し、評価用ホルダを加熱する電気炉の他、種々の実験器具が設置されており、実験スペースが限られているところが多い。そのため、実験スペースを有効活用するためには、電気炉などの小型化に伴い、評価用ホルダの更なる小型化が必要となる。
【0011】
以上のことから、ホルダの筐体サイズを小型セルに適したサイズにしつつ、組み立て性にも優れた新規の評価用ホルダの開発が望まれている。
【0012】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、装置の小型化を図りつつ、セルなどの積層部品を簡便にセットすることができる電気化学セル評価用ホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る第1の態様は、セル、集電体及びシール部材を含むセル部と、
位置決め溝が一方の面に形成され、燃料ガス導入管と燃料ガス排出管とが側面に並設された燃料極側プレートと、
位置決め溝が一方の面に形成され、空気ガス導入管と空気ガス排出管とが側面に並設された空気極側プレートと、
前記燃料極側プレートと前記空気極側プレートの前記位置決め溝が形成されていない面間に前記セル部を挟持した状態で前記セル部、前記燃料極側プレート、前記空気極側プレートを底部に積層して収容する収容凹部が形成され、前記燃料極側プレートと前記空気極側プレートが前記収容凹部に収容された状態で前記燃料ガス導入管、前記燃料ガス排出管、前記空気ガス導入管、前記空気ガス排出管を外部に引き出すための切欠部が前記収容凹部と連通して外周の一部に形成された収容部と、
前記収容凹部に収容される前記燃料極側プレートの位置決め溝または前記空気極側プレートの位置決め溝に一端が載置されるセラミック製の弾性部材と、
裏面に位置決め溝が形成され、該位置決め溝に対し、前記燃料極側プレートの位置決め溝または前記空気極側プレートの位置決め溝に載置した前記弾性部材の他端が嵌合された状態で前記収容凹部を閉塞する蓋部材と、
前記蓋部材と前記収容部とを締結固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする、電気化学セル評価用ホルダである。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る電気化学セル評価用ホルダにおいて、前記位置決め溝は、前記燃料極側プレート、前記空気極側プレート、前記蓋部材それぞれの略中央部分に形成されることを特徴とする、電気化学セル評価用ホルダである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組み立ての際に、収容部に燃料極側プレートや空気極側プレートを収容し、該プレートが支持された状態でセル部を積層させることができるので、ボタン型セルのような薄厚小型セルであっても、位置ずれすることなく容易に組み立て作業を行うことができる。また、弾性部材をセルホルダの略中央部分に配置することで、従来品のように複数本のバネに対する荷重調整をする手間が省け、簡便に適切な荷重を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る電気化学セル評価用ホルダの概略構成を示す分解斜視図である。
【
図3】(a)~(d)は同評価用ホルダの組み立て工程手順を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。従って、添付した図面を用いて説明する実施の形態により、本発明が限定されず、この形態に基づいて当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0019】
また、本明細書において、添付する各図を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用した場合、これはユーザが各図を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。
【0020】
まず、本発明の電気化学セル評価用ホルダ1の構成について説明する。
以下の実施形態では、図中におけるセル裏面側を燃料極、セル表面側を空気極としたセル4aを用い、各図ではセル4aの電極位置に合わせてセル部4を含む各部品を配置した状態を示している。なお、セル4aの表裏面を逆転させた場合は、各部品の配置が逆になることは言及するまでもない。
【0021】
図1や
図2に示すように、電気化学セル評価用ホルダ(以下、評価用ホルダともいう)1は、燃料極側プレート2(図中下方)と空気極側プレート3(図中上方)との間に被挟持部材となるセル部4が挟持される。また、燃料極側プレート2と空気極側プレート3は、セル部4を挟持した状態で収容部5に収容され、この状態で空気極側プレート3の表面に弾性部材6を介在させ、さらに収容部5の上面に蓋部材7を載置して固定部材8により締結固定する構成を基本構造としている。
【0022】
燃料極側プレート2は、評価試験時の高温に耐え、且つセル部4の汚染を防止する効果を備えたアルミナで形成されている。また、燃料極側プレート2の表面(つまり、セル部4と対向する面と反対側の面)には、弾性部材6を設置する際の位置決めを容易にする位置決め溝2aが形成されている。
【0023】
さらに、
図1や
図2に示すように、燃料極側プレート2の一側面(図中では右側面)には、燃料ガス導入管9と燃料ガス排出管10とが並設されている。
【0024】
燃料ガス導入管9は、その一端が燃料極側プレート2と接合され、他端には燃料極側プレート2に形成されるガス流路を介して燃料ガスをセル部4に供給する燃料ガス導入口が形成されている。また、燃料ガス排出管10は、その一端が燃料極側プレート2と接合され、他端にはセル部4に供給された未反応の燃料ガスを燃料極側プレート2内のガス流路を介して排出する燃料ガス排出口が形成されている。
【0025】
空気極側プレート3は、燃料極側プレート2と同様に、評価試験時の高温に耐え、且つセル部4の汚染を防止する効果を備えたアルミナで形成され、燃料極側プレート2と略同一形状を成している。また、空気極側プレート3の表面(つまり、セル部4と対向する面と反対側の面)には、弾性部材6を設置する際の位置決めを容易にする位置決め溝3aが形成されている。
【0026】
さらに、
図1や
図2に示すように、空気極側プレート3の一側面(図中では右側面)には、空気ガス導入管11と空気ガス排出管12とが並設されている。
【0027】
空気ガス導入管11の一端は空気極側プレート3と接合され、他端には空気極側プレート3に形成された不図示のガス流路を介して空気ガスをセル部4に供給する空気ガス導入口が形成されている。また、空気ガス排出管12の一端には、セル部4に供給された未反応の空気ガスを空気極側プレート3のガス流路を介して排出する空気ガス排出口が形成されている。
【0028】
セル部4は、燃料極側プレート2や空気極側プレート3との間に挟持される被挟持部材であり、セル4aと、燃料極用集電体4bと、空気極用集電体4c、一対のシール部材4d、4eで構成されている。セル4aのサイズとしては、例えばボタン型セルのようなφ15mm~φ30mm程度となる。
【0029】
図1に示すように、セル部4は、燃料極側プレート2を下方、空気極側プレート3を上方として配置した場合に、シール部材4d、燃料極用集電体4b、セル4a、空気極用集電体4c、シール部材4eの順に積層され、各プレート2、3の略中央部分に配置された状態で挟持される。その際、
図2に示すように、一方のシール部材4dは、セル部4の燃料極側の外周縁部と燃料極側プレート2との間に介在され、他方のシール部材4eは、セル部4の空気極側の外周縁部と空気極側プレート3との間に介在される。
【0030】
セル4aは、例えばYSZ/Niサーメットなどの燃料極と、例えば(La,Sr)MnO3 などの空気極との間に、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)などの電解質を一体化して構成される。
【0031】
燃料極用集電体4bは、還元雰囲気で安定であるNi網などで構成される。また、空気極用集電体4cは、高温で酸化しにくい貴金属である例えば金(Au)や白金(Pt)製の網などで構成される。
【0032】
一対のシール部材4d、4eは、ガス漏洩防止用としてセル部4の外周縁部を挟んで対向配置される弾力性を有するセラミックス(例えば、バーミキュライト、マイカ、アルミナファイバーなど)からなる。
【0033】
本発明の評価用ホルダ1では、燃料極側プレート2、空気極側プレート3及びセル部4によりセルホルダ20が構成され、このセルホルダ20が収容部5に収容されることになる。
【0034】
収容部5は、燃料極側プレート2や空気極側プレート3が収容可能なように収容凹部5aを有する略直方体形状の筐体である。収容部5は、燃料極側プレート2や空気極側プレート3と同様、評価試験時の高温に耐え、且つセル部4の汚染を防止する効果を備えたアルミナで形成されている。
【0035】
収容凹部5aの内寸は、セルホルダ20の外寸よりも1~2mm程度大きく成形される。このように、収容凹部5aとセルホルダ20との間に若干の空隙を設けることで、セルホルダ20の着脱性を確保しつつ、装着後はセルホルダ20が収容凹部5a内で移動せずに収容することができる。
【0036】
また、収容部5は、燃料極側プレート2や空気極側プレート3を収容した状態で各プレート2、3に設けられた導入管9、11や排出管10、12を外部に引き出すため、外周4方向にある周壁のうちの1つに、収容凹部5aと連通する切欠部5cが形成されている。よって、収容部5を水平方向で切断したときの断面形状は略コ字状となる。
【0037】
図1に示すように、収容部5には、固定部材8による締結固定を行うための複数のネジ挿通孔5bが形成されている。
図1の例では、収容部5の上端面における4隅にそれぞれ形成され、その内表面に固定部材8の雄ねじと対応する雌ねじが形成されている。
【0038】
弾性部材6は、セル部4の性能評価試験中の雰囲気温度による熱膨張などの影響を吸収ようにするため、セラミック製(例えば窒化珪素)のバネで構成される。弾性部材6は、燃料極側プレート2の位置決め溝2a又は空気極側プレート3に形成された位置決め溝3aに嵌入して設置され、蓋部材7で収容凹部5aの開口部分を閉塞したときに押し込まれることで弾性的に付勢してセルホルダ20に荷重を加える。
【0039】
蓋部材7は、燃料極側プレート2、空気極側プレート3及び収容部5と同様、評価試験時の高温に耐え、且つセル部4の汚染を防止する効果を備えたアルミナで形成され、外寸が収容部5と略同一となっている。
図1に示すように、蓋部材7の4隅には、固定部材8を挿通するためのネジ挿通孔7aが形成されている。このネジ挿通孔7aは、蓋部材7で収容凹部5aの開口部分を閉塞したときに、対向するネジ挿通孔5bと一直線上に重なる位置に形成される。
【0040】
また、蓋部材7の裏面(すなわち、収容部5と対向する側の面)には、固定部材8により収容凹部5aの開口部分を閉塞したときに、燃料極側プレート2の位置決め溝2a又は空気極側プレート3に形成された位置決め溝3aと直線上で重なる位置に位置決め溝7bが形成されている。弾性部材6は、この位置決め溝7bと、対向する位置決め溝2a又は3aとの間に嵌合される。
【0041】
固定部材8は、セラミック製のボルトで構成され、軸部の外周面にはネジ挿通孔5bの雌ねじと対応する雄ねじが形成されている。
図2に示すように、評価用ホルダ1は、収容部5内で燃料極側プレート2と空気極側プレート3とを突き合わせた状態でセル部4を挟持させ、次に弾性部材6を介在させたまま蓋部材7により収容凹部5aの開口部分を閉塞し、ネジ挿通孔7a側から固定部材8を挿通して締結固定している。
【0042】
また、燃料ガス導入管9及び空気ガス導入管11のガス導入口には、セル部4で発電した電流を燃料極用集電体4b又は空気極用集電体4cから取り出す電流取出用リード線と、セル部4の各電極の電圧測定を行う電圧測定用リード線と、セル部4近傍の温度測定を行う温度センサとを導入するための気密端子(図示略)がそれぞれ設置される。この気密端子としは、例えば特開2016-46040号公報に開示されるようなハーメチック端子の他、引き出された配線の接続先に応じて適宜選択し取り付けることができる。
【0043】
次に、
図3を参照しながら、上記のように構成される評価用ホルダ1の組み立て手順について説明する。なお、図面が煩雑とならないよう、図中の符号は一部省略している。
【0044】
図3(a)に示すように、まず収容部5の収容凹部5aに燃料極側プレート2を収容する。次に、
図3(b)に示すように、燃料極側プレート2の略中央部分にセル部4を構成する一方のシール部材4d、燃料極用集電体4b、セル4a、空気極用集電体4c、他方のシール部材4eを積層する。次に、
図3(c)に示すように、空気極側プレート3を燃料極側プレート2と対向するように突き合わせ、さらに空気極側プレート3の位置決め溝3aに位置合わせしながら弾性部材6を設置する。
【0045】
図3(d)に示すように、燃料極側プレート2と空気極側プレート3との間にセル部4を挟持させる。次に、空気極側プレート3の位置決め溝3aに弾性部材6を嵌入するとともに、蓋部材7の位置決め溝7bに嵌入し、蓋部材7で収容凹部5aの開口部分を閉塞する。その後、ネジ挿通孔7aから固定部材8を挿入して締め付け、燃料極側プレート2と空気極側プレート3とを収容部5内で固定する。これにより、評価用ホルダ1の組み立て作業が終了する。
【0046】
組み立てられた評価用ホルダ1は、このまま電気炉に挿入され、所望の評価試験が実施される。
【0047】
以上のように、上述した形態の評価用ホルダ1は、収容部5内に燃料極側プレート2を収容し、その状態でセル部4の各部品を積層した状態で空気極側プレート3を突き合わせた状態でセル部4を挟持させる。次に、各プレート2、3間でセル部4を挟持した状態で、空気極側プレート3の位置決め溝3aに弾性部材6を嵌入し、この状態で収容凹部5aの開口部分を蓋部材7で閉塞する。その後、蓋部材7のネジ挿通孔7aから挿入した固定部材8で締結固定して組み立てる。
【0048】
これにより、セル4aがボタン型セルのような小型セルであっても、燃料極側プレート2又は空気極側プレート3が収容部5に収容された状態で組み立てが行えるため、組み立ての際にセル部4を構成する各部品が位置ずれすることなく組み立て作業をスムーズに行うことができる。
【0049】
また、弾性部材6をセルホルダ20の略中央部分に配置することで、組み立て時に細かな荷重調整を必要とせず、セル部4に対して均等に荷重を加えることができる。つまり、従来品では、4隅にあるセラミックバネの弾性的な付勢力が均等になるように荷重調整する必要があり、特にボタン型セルのような小型のセルでは荷重調整が非常に難しかったが、本発明を適用することで、単純に付勢力が調整された弾性部材6を介在させるだけで荷重調整などを行わずに適切な荷重を加えることができる。
【0050】
ところで、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように使用環境等に応じて適宜変更して実施することもできる。また、以下の変更例は、本発明の要旨を逸脱しない範囲の中で任意に組み合わせて実施することもできる。
【0051】
弾性部材6の設置位置として、本実施形態のようにセル部4に対して均等に荷重を加えるために燃料極側プレート2又は空気極側プレート3の略中央部分に配置したが、これに限定されることはない。
【0052】
弾性部材6の他の配置例としては、3点配置や4点配置のように設置対象となるプレートの表面において各弾性部材6が等距離で配置され、セル部4に対して均等な押圧力が付与される配置とすればよい。当然のことながら、弾性部材6が複数になれば、それに対応して燃料極側プレート2、空気極側プレート3及び蓋部材7に形成される位置決め溝2a、3a、7aの数や配置位置も弾性部材6に合わせて適宜変更されることになる。
【符号の説明】
【0053】
1…電気化学セル評価用ホルダ(評価用ホルダ)
2…燃料極側プレート
3…空気極側プレート
4…セル部
5…収容部
6…弾性部材
7…蓋部材
8…固定部材
20…セルホルダ