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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】貝類の養殖篭
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/55 20170101AFI20220112BHJP
   A01K 61/56 20170101ALI20220112BHJP
【FI】
A01K61/55
A01K61/56 311
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020171308
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】595072181
【氏名又は名称】佐々木商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
【審査官】佐藤 智子
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-102961(JP,U)
【文献】特開2007-319122(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109561668(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/53
A01K 61/55
A01K 61/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂被覆材によって被覆されたワイヤにより形成され、両端を連結手段により無端状に連結した外枠を、網で囲い、吊りロープを介して海中に吊下するようにした貝類の養殖篭において、
両端がそれぞれが反対方向に折曲形成され略Z字状に形成された梁棒を複数具備し、各梁棒を略中央にて交差した状態で、各梁棒を前記外枠の内側に配置し、且つ該外枠の内周面に前記両端の連結端部外側面を当接状態として、前記外枠に前記梁棒の両端が結合手段にて固定されていることを特徴とする貝類の養殖篭。
【請求項2】
前記略Z字状の各梁棒の両連結端部の各先端の向きを周方向に同方向とし各梁棒が略卍字状に配置され固定されることを特徴とする請求項1記載の貝類の養殖篭。
【請求項3】
前記結合手段は、前記梁棒の連結端部と前記外枠の外周を巻回して結束するステンレス鋼よりなるリング状部材で構成されることを特徴とする請求項1または2記載の貝類の養殖篭。
【請求項4】
前記結合手段は、前記梁棒の連結端部と前記外枠との外周に巻回されて該外枠に前記連結端部を固定するテープと、該テープの巻回状態の表面に巻き付け縫着して固定される糸と、で構成されることを特徴とする請求項1または2記載の貝類の養殖篭。
【請求項5】
前記結合手段は、前記連結端部と前記外枠の一部を成型金型にて合成樹脂材で覆うインサート成形にて一体化された樹脂成形部よりなることを特徴とする請求項1または2記載の貝類の養殖篭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホタテ貝や真珠貝などの貝類の養殖篭に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝や真珠貝などの養殖には、種々の方式があるが、所定の空間を備えた養殖篭を用い、これを海中に垂下状態とする垂下方式があり、下記特許文献1のような養殖篭の構造がある。
【0003】
この養殖篭は、略四角錐形状で、座布団(ざぶとん)篭や提灯篭などと呼ばれ、略正方形のフレームを底面として網を張設し、この網をフレームの下面とフレーム上部で囲い、上端の中央1ヶ所でロープにて吊り、角錐形状として海中に垂下させる構成とされる。そして、網の上部側の稜線部分に、開口部が設けられ、テグス等にて開閉自在に閉じられている。
【0004】
養殖篭を構成するフレームは、底面を構成するために矩形状であるが、外形状となる矩形状の外側フレームと、底面となる網を支え補強となるために外側フレームの内側に十字状に設けられる補助フレームとを備え、すなわちフレームは田字状に形成された構成とされている。
【0005】
この補助フレームは、2本の真直な棒体で十字形に交差して、それぞれの両端が外側フレームの各辺における中央に連結されている。連結状態は、補助フレームの両端の各先端部分を180°曲げ、この先端部分にて外側フレームの辺部に巻き付けて先端を内向きにして加締めることで固定する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-319122公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のフレームの構成では、補助フレームの先端部分を折り返すように180°曲げてしまうことから、素材である鉄線の金属疲労が起こり、破断し損傷するおそれがあり、破断した場合には加締め固定が解かれ、外側フレームから補助フレームが脱落してしまう問題を有している。
【0008】
また、補助フレームは、鉄線に樹脂被覆を施した部材であるが、180°曲げることで、被覆された樹脂が、その樹脂素材自体の伸び変形の限界を超えてしまい、亀裂の発生、そして破損してしまい鉄線が剥き出しになり、このことから鉄線の発錆、腐食、そして、劣化による折損のおそれがあった。折損となれば、上記破断と同様に外側フレームから補助フレームが脱落してしまう問題となる。
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、養殖篭を構成する枠の構成として、損傷や折損などの発生を防止し、継続して使用することのできる枠構造を備えた貝類の養殖篭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の貝類の養殖篭1は、合成樹脂被覆材によって被覆されたワイヤにより形成され、両端を連結手段7により無端状に連結した外枠3を、網5で囲い、吊りロープ6を介して海中に吊下するようにした貝類の養殖篭1において、
両端がそれぞれが反対方向に折曲形成され略Z字状に形成された梁棒4を複数具備し、各梁棒4を略中央にて交差した状態で、各梁棒4を前記外枠3の内側に配置し、且つ該外枠3の内周面3aに前記両端の連結端部8外側面8aを当接状態として、前記外枠3に前記梁棒4の両端が結合手段9にて固定されていることを特徴とする。
【0011】
この貝類の養殖篭1では、海中での吊り下げ状態で、吊りロープ6にて吊下され、外枠3にて支持された空間を有した網5にて構成され、内部にホタテ貝や真珠貝などの貝類を収容する。Z字状に両端を折曲形成された梁棒4は、その両端となる各連結端部8を外枠3の内側となるように、各連結端部8が外枠3の辺部分に沿うように位置して固定される。各梁棒4は、従来の養殖篭と異なり、その両端が外枠3の外側を超え突出せずに外枠3に固定されることとなり、梁棒4の端部が外枠3の外側で網5に引っ掛かることが無く、網5を損傷させることがない。
また、外枠3と梁棒4との固定状態が、梁棒4の両端位置にて反対方向に突出する連結端部8でそれぞれ固定されているので、外枠3に対する梁棒4の固定向きが一方向とならず、それぞれの端部で逆方向となって固定されていることとなり、梁棒4に対して、梁棒の軸線方向に直交する方向の外力が加わり、結合手段9を解くような力、すなわち外枠3の辺に沿う方向の外力が加わることがあっても、一方の結合手段9と他方の結合手段9とは梁棒4本体に対して固定状態の向きが逆であり、外力の働く方向と同方向と逆の方向とに連結端部8が延びて固定され、一方の連結端部8の結合手段9が解かれやすい方向に抗する方向へ他方の連結端部8の結合手段9にて固定されており、このことから容易に結合状態を解除されず、外枠3から梁棒4が脱落することがない。
【0012】
本発明の請求項2記載の貝類の養殖篭は、請求項1記載の貝類の養殖篭であって、
前記略Z字状の各梁棒4の両連結端部8の各先端の向きを周方向に同方向とし各梁棒4が略卍字状に配置され固定されることを特徴とする。
【0013】
この貝類の養殖篭1では、各梁棒4を交差配置させるとともに、各梁棒4のそれぞれの両端となる各連結端部8を周方向に同方向となるよう卍状に組む。そして、各梁棒4は、外枠3の内側となるように、各連結端部8が外枠3に沿うように位置して固定される。中央で交差した各梁棒4は、各両端の連結端部8がそれぞれに外枠3に結合手段9にて固定されており、外枠3から梁棒4が脱落し、枠体2の変形や損傷を起こさず、網5の形が崩れるようなことが発生せず、養殖篭1としての機能を損ねることがない。また、各梁棒4が卍状に組まれ、外枠3の内側に固定される構成としたことで、各梁棒4が外枠3の内側から各辺を突っ張るようになり、外枠3の形状を変形させないよう維持する。
【0014】
本発明の請求項3記載の貝類の養殖篭は、請求項1または2記載の貝類の養殖篭であって、
前記結合手段9は、前記梁棒4の連結端部8と前記外枠3の外周を巻回して結束するステンレス鋼よりなるリング状部材10で構成されることを特徴とする。
【0015】
この貝類の養殖篭1では、リング状部材10を、例えばC字状或いはコイル型のステンレス鋼よりなる線状部材とすることができ、梁棒4や外枠3に対して取り付けやすく、メンテナンスが容易である。また、リング状部材10は、耐海水ステンレスよりなることで、腐食に耐えることが可能となる。
【0016】
本発明の請求項4記載の貝類の養殖篭は、請求項1または2記載の貝類の養殖篭であって、
前記結合手段9は、前記梁棒4の連結端部8と前記外枠3との外周に巻回されて該外枠3に前記連結端部8を固定するテープ12と、該テープ12の巻回状態の表面に巻き付け縫着して固定される糸13と、で構成されることを特徴とする。
【0017】
この貝類の養殖篭1では、合成樹脂被覆材で被覆されたワイヤよりなる外枠3及び梁棒4の連結端部8を傷つけることなく結束することができ、テープ12や糸13は柔軟な素材であることから取り扱いが容易であり、また、取付作業が煩雑とならない。また、テープ12と糸13とによる構成であることで、網5に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網5を傷つけることがない。
【0018】
本発明の請求項5記載の貝類の養殖篭は、請求項1または2記載の貝類の養殖篭であって、
前記結合手段9は、前記連結端部8と前記外枠3の一部を成型金型にて合成樹脂材で覆うインサート成形にて一体化された樹脂成形部14よりなることを特徴とする。
【0019】
この貝類の養殖篭1では、樹脂成形部14は、連結端部8を覆うとともに、この連結端部8に接する外枠3も覆い、外枠3の内周面に連結端部8の外側面が当接した状態で一体化される。そして、樹脂成形部14が、ワイヤよりなる外枠3及び梁棒4の連結端部8を合成樹脂で覆い、一体化構造とすることで結合され固定されることとなり、部品点数としての削減化、製造の容易さを図ることが可能となる。また、樹脂で覆われることで防錆となり、劣化を防ぐことも可能となる。さらに、一体化構造であり、外枠3の外側に大きく突出するような形状でないことで、網5に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網5を傷つけることがない。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る請求項1記載の貝類の養殖篭によれば、Z字状に両端を折曲形成された梁棒が、その両端となる各連結端部を外枠の内側となり、外枠の辺部分に沿うように位置して固定され、従来の養殖篭と異なり、外枠の外側を超え突出せずに外枠に固定されることとなって、梁棒の端部が外枠の外側で網に引っ掛かることが無く、網を損傷させることがない。また、梁棒を外枠に固定させる際に、梁棒の端部を180°曲げることがなく、梁棒の端部を予めそれぞれ反対の方向としてZ字状に形成されており、この梁棒の両端に予め形成される連結端部を外枠に固定させることから、従来のような180°の折曲、端部の加締めという煩雑な作業が不要となり、組付作業が容易なものとなる。このことから、梁棒の端部(連結端部)において、金属疲労などが起きず、折損、損傷などが発生しないという効果を得られる。さらに、梁棒を180°折曲しないことで、被覆材の劣化、損傷が起きず、梁棒の芯となるワイヤの被覆が損なわれないこととなり、ワイヤの発錆を防止でき、経時変化による劣化や折損を防止することが可能となる。
また、外枠と梁棒との固定状態が、梁棒の両端位置にて反対方向に突出する連結端部でそれぞれ固定されているので、外枠に対する梁棒の固定向きが一方向とならず、それぞれの端部で逆方向となって固定されていることとなり、梁棒に対して、梁棒の軸線方向に直交する方向の外力が加わり、結合手段を解くような力、すなわち外枠の辺に沿う方向の外力が加わることがあっても、一方の結合手段と他方の結合手段とは梁棒本体に対して固定状態の向きが逆であり、外力の働く方向と同方向と逆の方向とに連結端部が延びて固定され、一方の連結端部の結合手段が解かれやすい方向に抗する方向へ他方の連結端部の結合手段にて固定されており、このことから容易に結合状態を解除されず、外枠から梁棒が脱落することがない。
【0021】
本発明に係る請求項2記載の貝類の養殖篭によれば、各梁棒が卍状に組まれ、外枠の内側に固定されるので外枠から各梁棒が脱落し難くなるとともに、各梁棒が外枠の内側から各辺を突っ張るようになり、外枠の形状を変形させないよう維持することが可能となる。
【0022】
本発明に係る請求項3記載の貝類の養殖篭によれば、リング状部材を、例えばC字状或いはコイル型のステンレス鋼よりなる線状部材とすることができ、梁棒や外枠に対して取り付けやすく、メンテナンスが容易である。
【0023】
本発明に係る請求項4記載の貝類の養殖篭によれば、合成樹脂被覆材で被覆されたワイヤよりなる外枠及び梁棒の連結端部を傷つけることなく結束することができ、テープ及び糸は柔軟な素材であることから取り扱いが容易であり、また、取付作業が煩雑とならない。また、テープと糸とによる構成であることで、網に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網を傷つけることがない。
【0024】
本発明に係る請求項5記載の貝類の養殖篭によれば、樹脂成形部が、連結端部を覆うとともに、この連結端部に接する外枠も覆い、外枠の内周面に連結端部の外側面が当接した状態で一体化することができる。これにより、部品点数としての削減化、製造の容易さを図ることが可能となる。また、樹脂で覆われることで防錆となり、劣化を防ぐことも可能となる。さらに、一体化構造であり、外枠の外側に大きく突出するような形状でないことで、網に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網を傷つけることがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明実施の形態に係る貝類の養殖篭の斜視図である。
図2】同貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図である。
図3】同枠体の一部拡大平面図である。
図4】梁棒と外枠との結合手段の変形例1に係る貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図である。
図5】同枠体の一部拡大平面図である。
図6】梁棒と外枠との結合手段の変形例2に係る貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図である。
図7】同枠体の一部拡大平面図である。
図8】他の実施の形態に係る貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図である。
図9】同枠体の一部拡大平面図である。
図10】他の実施形態を示す貝類の養殖篭の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る貝類の養殖篭の斜視図、図2は同養殖篭を構成する枠体の平面図、図3は同枠体の一部拡大平面図である。
本実施の形態に係る貝類の養殖篭1は、外枠3と梁棒4とで構成される枠体2と、網5と、吊りロープ6とを主要な構成として有する。
【0027】
枠体2を構成する外枠3は、本実施形態では、四角形に形成されるとともに、四隅となる各角部に所定のRを形成した所謂角丸四角形とされる。この外枠3は、鉄線或いは鋼線よりなるワイヤに、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂が被覆されている。外枠3は、略真直なワイヤの両端を連結して無端状とされ上記形状に形成されており、この両端の連結手段としては、溶接し互いを連結するとともに合成樹脂にて被覆する構成や、図示のように両端を溶接後に、その溶接部分を覆うように金型を用いて樹脂で成型し軸状成形部7とする構成などとされ、その他、樹脂製などのパイプ状の連結部材を用いて両端を挿着させ嵌合させることで固定する構成としてもよい。
【0028】
梁棒4は、上記外枠3と同等の素材とされ鉄線或いは鋼線よりなるワイヤにPVC等の合成樹脂が被覆された略真直な部材でとされ、本実施形態では2本1組で構成される。各梁棒4の両端は、互いに反対方向に略直角に折曲形成され、それぞれフック状に形成されて連結端部8として構成し略Z字状に形成されている。これら梁棒4は、中央にて交差した十字形の状態とし、且つ、各連結端部8の先端の向く方向を周方向に同方向となるように略卍状とされる。
【0029】
そして、この卍状に組まれる2本の梁棒4は、外枠3の内側に配置され、この外枠3の各辺における略中央部分の内周面3aに各連結端部8の外側面8aが当接するようになる。この配置状態で、4ヶ所の各連結端部8と外枠3の四辺とは、結合手段9にて固定される。
【0030】
本実施形態での結合手段9は、図3に示すように、梁棒4の連結端部8と外枠3との外周を巻回して結束するリング状部材10で構成される。このリング状部材10は、C字状或いはコイル型のステンレス鋼よりなる線状部材とされる。リング状部材10は、断面円形である梁棒4や外枠3に対して取り付けやすく、メンテナンスが容易である。このリング状部材10は、耐海水ステンレスよりなることが好ましく、腐食に耐えることが可能となる。なお、リング状部材10は、図3においては2本で結束するように示されているが、これに限定されることはない。
【0031】
このように、外枠3に2本の梁棒4が卍状となって連結され固定された枠体2は、田字状に形成されることとなり、梁棒4の各連結端部8が周方向で同方向、図3においては梁棒4本体に対して各連結端部8が反時計回り方向へ延出するようになる。
なお、各梁棒4の連結端部8の先端は、好ましくは、樹脂被覆などが施され、ワイヤが剥き出しにならないよう構成される。
【0032】
網5は、所定メッシュの合成繊維の縫製体からなり、底面部を四角形に、上部を四角錐状に形成される。網5の底面部には上記枠体2が配置され、この枠体2の上方へ四角錐状の上部が周囲を囲み、この上部の各稜線部分には、1ヶ所または2ヶ所開口形成されており、この開口部分は、図示しないテグスなどで開閉自在に閉じられている。
【0033】
吊りロープ6は、網5上部の四角錐の頂点に突設された吊り下げ用のループ10を有しており、網5を垂直に貫通し、下方へ延出している。吊りロープ6の中途は、網5内にて梁棒4の交差部分に巻き付けられ結び目となって、この梁棒4を介し枠体2の網上端(四角錐の頂点)からの所定距離を支持している。
【0034】
このように構成された貝類の養殖篭1は、海中での吊り下げ状態で、吊りロープ6のループ10にて吊下され、枠体2にて底面が支持された四角錐状の空間を有した網5にて構成され、内部にホタテ貝や真珠貝を収容する。
養殖篭1の底面を支持する枠体2は、これを構成する梁棒4の形状をZ字状として両端を折曲形成し、この梁棒4を交差配置させるとともに、各梁棒4のそれぞれの両端となる各連結端部8を周方向に同方向となるよう卍状に組み、外枠3の内側となるように、各連結端部8が外枠3に沿うように位置して固定されている。
【0035】
各梁棒4は、従来の養殖篭と異なり、その両端が外枠3の外側を超え突出せずに外枠3に固定されることとなり、梁棒4の端部が外枠3の外側で網5に引っ掛かることが無く、網5を損傷させることがない。
【0036】
また、梁棒4を外枠3に固定させる際に、梁棒4の端部を180°曲げることがなく、梁棒4の端部を予め略L字に曲げ、両端をそれぞれ反対の方向として折曲することから、梁棒4はZ字状に形成されており、この梁棒4の両端に予め形成される連結端部8を外枠3に固定させることから、従来のような180°の折曲、端部の加締めという煩雑な作業が不要となり、組付作業が容易なものとなる。このことから、梁棒4の端部(連結端部8)において、金属疲労などが起きず、折損、損傷なども発生しない。
【0037】
さらに、梁棒4の180°折曲を行わないことから、被覆材の劣化、損傷が起きず、梁棒4の芯となるワイヤの被覆が損なわれないこととなり、ワイヤの発錆を防止でき、経時変化による劣化や折損を防止できる。
【0038】
また、外枠3と梁棒4との固定状態が、梁棒4の両端位置にて反対方向に突出する連結端部8でそれぞれ固定されているので、外枠3に対する梁棒4の固定向きが一方向とならず、それぞれの端部で逆方向となって固定されていることとなり、梁棒4に対して、梁棒の軸線方向に直交する方向の外力が加わり、結合手段9を解くような力、すなわち外枠3の辺に沿う方向の外力が加わることがあっても、一方の結合手段9と他方の結合手段9とは梁棒4本体に対して固定状態の向きが逆であり、外力の働く方向と同方向と逆の方向とに連結端部8が延びて固定され、一方の連結端部8の結合手段9が解かれやすい方向に抗する方向へ他方の連結端部8の結合手段9にて固定されており、このことから容易に結合状態を解除されず、外枠3から梁棒4が脱落することがない。そして、中央で交差した各梁棒4が、それぞれに外枠3から解除され難いよう、各両端の連結端部8が結合手段9にて固定されており、外枠3から梁棒4が脱落し、枠体2の変形や損傷を起こさず、網5の形が崩れるようなことが発生せず、養殖篭1としての機能を損ねることがない。
【0039】
さらに、各梁棒4が卍状に組まれ、外枠3の内側に固定される構成としたことで、上記のように外枠3から各梁棒4が脱落し難くなるとともに、各梁棒4が外枠3の内側から各辺を突っ張るようになり、外枠3の形状である四角形を変形させないよう維持することが可能となる。
【0040】
次に、上記した貝類の養殖篭の変形例を説明する。
【0041】
図4は梁棒と外枠との結合手段の変形例1に係る貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図、図5は同枠体の一部拡大平面図である。
変形例1に係る貝類の養殖篭1は、外枠3と梁棒4とを固定する結合手段9が上記した実施形態に係る貝類の養殖篭1と異なる。
【0042】
この貝類の養殖篭1では、枠体2を構成する外枠3と梁棒4の構成は上述の実施形態と同様とされ、結合手段9がテープ12と糸13とで構成される。
結合手段9を構成するテープ12は、外枠3と連結端部8との外周に巻回され、外枠3に連結端部8を固定する。テープ12は、例えば耐水性を有するビニールテープなどの粘着テープよりなる。好ましくは図5に示すように、外枠3と連結端部8とを結束するようにケープ12が巻回されるとともに、連結端部8の先端部分も覆うように巻き付けられ、外枠3の辺部分にも巻き付けられる。
【0043】
糸13は、例えばナイロンやポリエチレンなどの合成繊維よりなる。糸13は、図5に示すように、外枠3と連結端部8とに巻回されたテープ12の表面に巻き付けられ縫着される。この糸13は、テープ12の剥がれ防止やほつれ防止となるとともに、テープ12を引き締めてその結束状態を強固にして、外枠3と連結端部8との固定状態を保持し、且つ外枠3の辺部分に巻き付けられたテープ12にも巻き付けられて、テープ12による連結端部8先端の覆いを保持するようになっている。
【0044】
このように構成された結合手段を具備した貝類の養殖篭1によれば、合成樹脂被覆材で被覆されたワイヤよりなる外枠3及び梁棒4の連結端部8を傷つけることなく結束することができ、テープ12や糸13は柔軟な素材であることから取り扱いが容易であり、また、取付作業が煩雑ではない。また、テープ12と糸13とによる構成であることで、枠体2を覆う網5に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網5を傷つけることがない。さらに、構成部材として容易に入手可能なテープ12、糸13であることから、補修などが必要な場合には簡便に行うことが可能となる。
【0045】
図6は梁棒と外枠との結合手段の変形例2に係る貝類の養殖篭を構成する枠体の平面図、図7は同枠体の一部拡大平面図である。
変形例2に係る貝類の養殖篭1は、外枠3と梁棒4とを固定する結合手段9が上記した実施形態に係る貝類の養殖篭1と異なる。
【0046】
この貝類の養殖篭1では、枠体2を構成する外枠3と梁棒4の構成は上述の実施形態と同様とされ、結合手段9が樹脂成形部14で構成される。
結合手段9を構成する樹脂成形部14は、梁棒4の連結端部8と外枠3の一部とを、成形金型にセットし、合成樹脂材で覆い、成形させることで得られる。
【0047】
成形金型は、図示しないが、外枠3と梁棒4とを組み付け後の配置状態で支持、すなわち田字状に支持するとともに、4ヶ所の連結端部8と、この連結端部8に接する外枠3の一部の各辺4ヶ所を覆う略T字状の凹部が形成されており、この凹部に連結端部8と外枠3の一部とを挿入状態で、その周りに樹脂を注入し、連結端部8と外枠3と樹脂とを一体化させるインサート成形である。
【0048】
硬化した樹脂は、図7に示すように略T字状の樹脂成形部14となる。この樹脂成形部14は、連結端部8を覆うとともに、この連結端部8に接する外枠3も覆い、外枠3の内周面に連結端部8の外側面が当接した状態で一体化される。そして、図示の通り、連結端部8の先端も覆われることとなり、ワイヤが剥き出しにならない。
【0049】
このように構成された結合手段を具備した貝類の養殖篭1によれば、樹脂成形部14が、ワイヤよりなる外枠3及び梁棒4の連結端部8を合成樹脂で覆い、一体化構造とすることで結合され固定されることとなり、部品点数としての削減化、製造の容易さを図ることが可能となる。また、樹脂で覆われることで防錆となり、劣化を防ぐことも可能となる。さらに、一体化構造であり、外枠3の外側に大きく突出するような形状でないことで、枠体2を覆う網5に対して引っ掛かるなどの不具合が発生せず、網5を傷つけることがない。
なお、図6に示した例では、上述した連結部材7を具備してないが、ワイヤを溶接などで無端状に連結して四角形に形成した後に、その外表面を合成樹脂被覆材にて被覆させることで、連結手段を表出しないように構成することができるものである。
【0050】
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0051】
例えば、上記の実施の形態では、枠体2を構成する外枠3の外形状が角丸四角形とされた場合を例に説明したが、外枠3の形状はその他の形でもよく、例えば、図8に示すように円形の外枠3Aとして構成してもよい。
【0052】
この外枠3Aにおいても、上述同様に、梁棒4を卍状に交差した状態で外枠3Aの内側に組み合わせる。各梁棒4の両端に形成される連結端部8は、上記した例と異なり、外枠3Aに沿わせた角度、すなわち直角よりやや鋭角に折曲され形成される。
【0053】
図8,9に示すように、結合手段9は、上述した実施形態と同様に、リング状部材10を結合手段9としてもよく、或いは上記変形例1や変形例2のように結合手段9を構成することとしてもよい。
【0054】
このように構成された貝類の養殖篭によれば、図10に示すように、連段型の養殖篭1Aに用いることができ、この養殖篭1Aにおいても、梁棒4と外枠3Aとの固定部分である結合手段9が、外枠3Aよりも外側に突出することがないことで、網5Aに引っ掛かることがなく、網5を損傷させることがない。また、外枠3Aに対する梁棒4の固定状態が、容易に脱落するようなことがなく、さらには、梁棒4が発錆や劣化などを起こさず、養殖篭1Aとして継続して使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1…貝類の養殖篭
3…外枠
3a…内周面
4…梁棒
5…網
6…吊りロープ
7…連結手段(連結部材)
8…連結端部
8a…外側面
9…結合手段
10…リング状部材
12…テープ
13…糸
14…樹脂成形部
【要約】
【課題】養殖篭を構成する枠の構成として、損傷や折損などの発生を防止し、継続して使用することのできる枠構造を備えた貝類の養殖篭を提供する。
【解決手段】合成樹脂被覆材によって被覆されたワイヤにより形成され、両端を連結手段7により無端状に連結した外枠3を、網5で囲い、吊りロープ6を介して海中に吊下するようにした貝類の養殖篭1において、両端がそれぞれが反対方向に折曲形成され略Z字状に形成された梁棒4を複数具備し、各梁棒4を略中央にて交差した状態で、各梁棒4を外枠3の内側に配置し、且つ外枠3の内周面3aに両端の連結端部8外側面8aを当接状態として、外枠3に梁棒4の両端が結合手段9にて固定されている。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10