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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-03
(54)【発明の名称】ローラヘミング装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/04 20060101AFI20220127BHJP
   B21D 39/02 20060101ALN20220127BHJP
   B21D 53/88 20060101ALN20220127BHJP
【FI】
B21D19/04 B
B21D39/02 F
B21D53/88 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017174036
(22)【出願日】2017-09-11
(65)【公開番号】P2018043289
(43)【公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016177796
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】野上 陽盛
(72)【発明者】
【氏名】石関 清一
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-132327(JP,A)
【文献】特開平07-060370(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060732(WO,A1)
【文献】特開2005-014069(JP,A)
【文献】特開2013-248646(JP,A)
【文献】特開平07-290158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/04
B21D 39/02
B21D 53/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ受け面を有する受けローラと、
ローラ加圧面を有する転圧ローラと、
前記両ローラを軸平行な状態で回転自在に支持するベース部と、
前記転圧ローラを前記受けローラに対して軸平行な状態で近接離間させるスライド機構と、
前記ローラ受け面と前記ローラ加圧面とでワークパネルの端縁に形成されている折返し部を狭圧した状態で前記ベース部を該折返し部に沿って移動させる移動手段とを備えるローラヘミング装置において、
前記受けローラは前記ローラ受け面の基部に所定高さの段差部が形成され、
前記段差部の上面に、前記折返し部の基部を当接させる受け面が形成されていることを特徴とするローラヘミング装置。
【請求項2】
ローラ受け面を有する受けローラと、
ローラ加圧面を有する転圧ローラと、
前記両ローラを軸平行な状態で回転自在に支持するベース部と、
前記転圧ローラを前記受けローラに対して軸平行な状態で近接離間させるスライド機構と、
前記ローラ受け面と前記ローラ加圧面とでワークパネルの端縁に形成されている折返し部を狭圧した状態で前記ベース部を該折返し部に沿って移動させる移動手段とを備えるローラヘミング装置において、
前記ベース部には、前記受けローラを中心として、該受けローラの周囲に複数の前記転圧ローラが配設されており、
前記受けローラに対して前記各転圧ローラが選択的に近接離間されることを特徴とするローラヘミング装置。
【請求項3】
前記受けローラと前記転圧ローラとの一方の軸周方向にフランジ部が設けられ、他方の軸周方向に該フランジ部に嵌合するガイド溝が設けられ、
前記転圧ローラと前記受けローラとは、前記フランジ部と前記ガイド溝とが常時嵌合された状態で近接離間されることを特徴とする請求項1或いは2記載のローラヘミング装置。
【請求項4】
前記受けローラと前記転圧ローラとの一方の軸周方向にフランジ部が設けられ、他方の軸周方向に該フランジ部に嵌合するガイド溝が設けられ、
前記転圧ローラと前記受けローラとは、前記フランジ部と前記ガイド溝とが常時嵌合された状態で近接離間され、
複数の前記転圧ローラは、少なくとも仮曲げ用転圧ローラと本曲げ用転圧ローラとで構成され、
前記本曲げ用転圧ローラに設けられている前記ローラ加圧面の傾斜角度が前記ローラ受け面と平行に形成され、
前記仮曲げ用転圧ローラに設けられている前記ローラ加圧面の傾斜角度が、前記本曲げ用転圧ローラに設けられている前記ローラ加圧面の傾斜角度よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項記載のローラヘミング装置。
【請求項5】
前記本曲げ用転圧ローラに設けられている前記ローラ加圧面に、前記ワークパネルの前記折返し部に中空閉断面のサークルヘムの形成を許容する逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項4記載のローラヘミング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受けローラに設けたローラ受け面と転圧ローラに設けたローラ加圧面とで、ワークパネルに形成した折返し部を挟圧してヘミング加工を行うローラヘミング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アウタパネルとインナパネルとで構成される車両などのドアパネルやフードパネル等では、アウタパネルの周縁を折返してインナパネルを挟み込んで一体化するヘミング加工(ヘム加工)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2005-14069号公報)には、2台、或いは1台のロボットのアーム先端に第1ローラ本体と第2ローラ本体とをそれぞれ設け、この一対のローラ本体を、アウタパネルの周縁に形成されている折返し部に押し当て挟み込み、その状態で両ローラ本体を折返し部に沿って転圧させることで、アウタパネルの周縁に、インナパネルの周縁を挟み込んで折返し部を形成して、アウタパネルとインナパネルとを一体化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-14069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この文献に開示されている技術では、単に一対のローラ本体で折返し部を挟み込んで、転圧させることで折返し部を形成するようにしているため、両ローラ本体を回動自在に支持する回転軸に常時強い反力が印加され、軸ずれが生じ易い。両ローラ本体の回転軸にずれが生じると、折返し部が正しく曲げ形成されず、曲げ不足やシワ等の発生により製品不良を起因する不都合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、一対のローラ本体で挟み込んで転圧させることで、ワークの周縁に折返し部を形成するに際し、両ローラ本体の回転軸の軸ずれを防止し、製品不良の発生を抑制させることのできるローラヘミング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、ローラ受け面を有する受けローラと、ローラ加圧面を有する転圧ローラと、前記両ローラを軸平行な状態で回転自在に支持するベース部と、前記転圧ローラを前記受けローラに対して軸平行な状態で近接離間させるスライド機構と、前記ローラ受け面と前記ローラ加圧面とでワークパネルの端縁に形成されている折返し部を狭圧した状態で前記ベース部を該折返し部に沿って移動させる移動手段とを備えるローラヘミング装置において、前記受けローラは前記ローラ受け面の基部に所定高さの段差部が形成され、前記段差部の上面に、前記折返し部の基部を当接させる受け面が形成されている
本発明の第2は、ローラ受け面を有する受けローラと、ローラ加圧面を有する転圧ローラと、前記両ローラを軸平行な状態で回転自在に支持するベース部と、前記転圧ローラを前記受けローラに対して軸平行な状態で近接離間させるスライド機構と、前記ローラ受け面と前記ローラ加圧面とでワークパネルの端縁に形成されている折返し部を狭圧した状態で前記ベース部を該折返し部に沿って移動させる移動手段とを備えるローラヘミング装置において、前記ベース部には、前記受けローラを中心として、該受けローラの周囲に複数の前記転圧ローラが配設されており、前記受けローラに対して前記各転圧ローラが選択的に近接離間される
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ローラ受け面を有する受けローラと所定に傾斜されたローラ加圧面を有する転圧ローラとの一方の軸周方向にフランジ部を設け、他方の軸周方向にフランジ部に嵌合するガイド溝を設け、このフランジ部とガイド溝とを常時嵌合させるようにしたので、ローラ受け面とローラ加圧面とでワークパネルの折返し部を挟圧してヘミング加工するに際し、受けローラと転圧ローラとの軸ずれが防止され、常に軸平行な状態が維持されるため、折返し部を精度良く曲げ形成することができ、製品不良の発生を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態によるボディ・コンストラクションと、このボディ・コンストラクションのホイールアーチ部をヘミング加工するローラヘミング装置の概略図
図2】同、ローラヘミング装置の構成図
図3】同、(a)は待機状態のローラヘッド部の正面図、(b)はヘミング加工時のローラヘッド部の正面図
図4】同、ローラヘッド部の要部側面図
図5】同、図3(b)のV矢視側面図
図6】同、図3(b)のVI矢視側面図
図7】同、ローラヘッド部を示し、(a)は第1ローラ本体の近接状態を示す要部側面図、(b)は第1ローラ本体による仮曲げ状態を示す要部側面図、(c)は第2ローラ本体の近接状態を示す要部側面図、(d)は第3ローラ本体の近接状態を示す要部側面図
図8】同、第3ローラ本体による折返し部を曲げ形成する状態を示す、図3(b)のVIII矢視側面図
図9】第2実施形態による図4相当の側面図
図10】本発明の第3実施形態による図7相当の側面図
図11】同、図8相当の側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1図8に本発明の第1実施形態を示す。尚、以下においては、ボディ・コンストラクション(以下、「ボディコン」と略称)1に設けたリヤクウォータパネル2に形成されているリヤホイールアーチ部2aにヘミング加工を施す場合を例示して説明する。
【0012】
図1に示すように、予め設定されているヘミング作業エリアにはローラヘミング装置11が設置されている。尚、このヘミング作業エリアは、車両の組立て及び加工を行う生産ラインの中途に設けられている。
【0013】
ボディコン1のリヤクウォータパネル2は第1ワークパネルとしてのアウタパネル3と第2ワークパネルとしてのインナパネル4とを有し、この両パネル3,4がスポット溶接等を用いて互いに接合されて一体化されている。このアウタパネル3の端縁に、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿う折返し部3aが形成されている。ヘミング加工前の折返し部3aは、図7(a)に示すように、板金プレス加工においてほぼ90°に曲げ形成されており、アウタパネル3の内面に接合されているインナパネル4の端縁が、折返し部3aの内面基部に臨まされている。
【0014】
ローラヘミング装置11は、アウタパネル3に形成されている折返し部3aを、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿ってヘミング加工するものであり、移動手段としてのヘミング用ロボット11aとローラヘッド部21とを有している。ヘミング用ロボット11aは多関節型ロボットであり、図1図2に示すように、予め設定されたヘミング作業エリアに設置されているロボット台12にロボットアーム13の本体ベース14が旋回自在に固定されている。又、ローラヘッド部21はロボットアーム13の手首軸13aに固定されている。
【0015】
このローラヘッド部21のヘッドベース部22がロボットアーム13の手首軸13aに固設されている。図3(a)に示すように、このヘッドベース部22は円形状に形成されており、その中心に受けローラ23が配設されている。又、図4に示すように、受けローラ23の軸部23aが、ヘッドベース部22上に突設された軸支持部22aに、軸方向への移動が規制された状態で回動自在に軸支されており、この軸部23aが予め設定された減速比を有する第1減速機構24aを介して第1電動モータ25aに連設されている。
【0016】
又、受けローラ23の軸周に軸直交方向へ延在する円盤状のフランジ部23bが形成され、このフランジ部23bの上面に円柱状のローラ受け面23cが形成されている。このローラ受け面23cは、アウタパネル3の折返し部3aを、後述する第1~第3ローラ加圧面36a~38aにて曲げ形成する際の受け面として機能する。又、このローラ受け面23cに所定高さの段差部23dがフランジ状に形成され、この段差部23dの上面にR受け面23eが形成されている。このR受け面23eには、アウタパネル3の折返し部3aを曲げる際に形成されるR端部3bが当接される。
【0017】
又、図3(a)に示すように、ヘッドベース部22の受けローラ23を中心とする外周に、第1~第3転圧ローラ部31~33が等間隔に配列されており、受けローラ23と個々の転圧ローラ部31~33とで加工用ローラ対が構成されている。この第1~第3転圧ローラ部31~33は、転圧ローラとしての第1~第3ローラ本体36~38をそれぞれ有し、この各ローラ本体36~38に第1~第3ローラ加圧面36a~38aが形成されている。ここで、第1ローラ本体36が本発明の仮曲げ用転圧ローラに対応し、第3ローラ本体38が本発明の本曲げ用転圧ローラに対応している。
【0018】
図7に示すように、この各ローラ加圧面36a~38aは、傾斜角度がそれぞれ相違しており、この各ローラ加圧面36a~38aによって折返し部3aを所定の曲げ角度θ1~θ3に曲げ形成する。本実施形態では、第1~第3ローラ加圧面36a~38aの傾斜角が45°,60°,90°(ローラ受け面23cと平行な角度)に設定されており、これにより、折返し部3aは、ローラ受け面23cを基準として、θ1=45°,θ2=30°,θ3=0°にそれぞれ曲げ形成される。
【0019】
各転圧ローラ部31~33の構成は、各ローラ本体36~38に形成されているローラ加圧面36a~38aの傾斜角度以外は共通している。従って、以下においては、第3転圧ローラ部33の構成を代表として説明し、第1、第2転圧ローラ部31,32の構成については、第3転圧ローラ部33を準用し、同一構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
第3転圧ローラ部33(第1転圧ローラ部31,第2転圧ローラ部32)はガイド盤41とスライダ42と第3ローラ本体38(第1ローラ本体36、第2ローラ本体37)とを有し、このガイド盤41がヘッドベース部22上に固定されている。スライダ42はガイド盤41上に摺動自在に載置されて、受けローラ23の回転中心に対し、図示しないガイド機構を介し、法線方向に沿って近接離間自在に支持されている。又、このスライダ42の、ヘッドベース部22の外径方向に位置する端部に垂立面42aが形成されている。この垂立面42aに、スライド機構46から突出するロッド46aの先端が固設されている。
【0021】
このスライド機構46は、スライダ42を受けローラ23の回転中心に対し、法線方向に沿ってスライドさせるもので、シリンダ部46bがヘッドベース部22の外周縁に形成された支持フレーム22bに固設されている。このシリンダ部46bにピストン46cが摺動自在に挿通されており、このピストン46cにロッド46aの後端が固設されている。ピストン46cは、図示しない油圧回路からシリンダ部46b内のピストン46cによって区画された各油圧室に給排される油圧によって動作し、ロッド46aを法線方向へ進退動作させる。
【0022】
又、このスライダ42上に軸支持部43が突設され、この軸支持部43にローラ本体36の軸部44が回動自在に軸支されている。更に、このスライダ42に第2電動モータ25bが所定減速比の第2減速機構24bを介して載置されており、この第2減速機構24bがローラ本体36に連設されている。
【0023】
又、このローラ本体38の下部軸周に軸直交方向に開口する嵌合ガイド溝45が形成され、上部に第3ローラ加圧面38aが形成されている。更に、第3ローラ加圧面38aの下端に、嵌合ガイド溝45方向へ縮径して、段差部23dとの干渉を回避するテーパ状の逃げ部47が形成されている。
【0024】
嵌合ガイド溝45は、受けローラ23に形成されているフランジ部23bの外縁に対し摺動自在な状態で常時嵌合されている。この嵌合ガイド溝45の溝幅は、フランジ部23bの板厚に対してガタが生じること無く、しかも摺動可能なサイズに形成されている。
【0025】
ローラヘミング装置11はロボット制御部51からの制御信号にて動作される。このロボット制御部51は、CPU,RAM,ROM等を備えた周知のマイクロコンピュータを主体に構成されており、CPUはROMに記憶されているプログラムに従い、各種制御を実行する。
【0026】
次に、このような構成からなるローラヘミング装置11のロボット制御部51による制御動作について説明する。
【0027】
ヘミング作業エリアにボディコン1が搬送されると、ロボット制御部51は、リヤクウォータパネル2のリヤホイールアーチ部2aに対して、ヘミング用ロボット11aの手首軸13aに固設されているローラヘッド部21を臨ませる。このリヤクウォータパネル2を構成するアウタパネル3の折返し部3aは、板金プレス加工時に、リヤホイールアーチ部2aに沿って内方へほぼ90°に曲げ形成されている。
【0028】
図3(a)に示すように、待機状態にある、ローラヘッド部21に設けられている第1~第3転圧ローラ部31~33は、各スライド機構46の動作により、受けローラ23から離間する方向、すなわち拡径方向へ移動されている。この状態では、受けローラ23のローラ受け面23cと各転圧ローラ部31~33に設けられているローラ本体36~38のローラ加圧面36a~38aとの間が所定に離間されている。
【0029】
又、待機状態であっても、各ローラ本体36~38に形成されている嵌合ガイド溝45と受けローラ23に形成されているフランジ部23bとは常時嵌合状態にある。本実施形態では、この折返し部3aを、曲げ角度θ3=0°(図8参照)に曲げ形成する場合、第1~第3ローラ本体36~38を順に用いて、仮曲げ成形から本曲げ成形まで段階的に曲げ形成するようにしている。
【0030】
<仮曲げ工程>
ロボット制御部51は、予め設定されているプログラムに従い、先ず、図1に示すように、ローラヘッド部21を下方から上昇させて、ローラ受け面23cと第1ローラ本体36のローラ加圧面36aとの間に折返し部3aを遊挿する。そして、図7(a)に示すよう、ローラ受け面23cをアウタパネル3の外表面に当接させると共に、このアウタパネル3のR端部3bをローラ受け面23cの基部に形成されている段差部23d上面のR受け面23eに当接させる。
【0031】
その後、ロボット制御部51は、第1転圧ローラ部31のスライド機構46を動作させて、第1ローラ本体36を支持するスライダ42を受けローラ23の軸芯方向へ移動させる。すると、第1ローラ本体36は、嵌合ガイド溝45が受けローラ23に形成されているフランジ部23bに嵌合されているため、このフランジ部23bにガイドされて、第1ローラ本体36の軸部44が受けローラ23の軸部23aに対し、同一平面において軸平行な状態を維持しながら近接される。
【0032】
そして、第1ローラ本体36のローラ加圧面36aの下端縁部が折返し部3aの端部に接触する。その際、この折返し部3aが、段差部23dの高さ分だけフランジ部23bから浮いているため、この間隙に、ローラ加圧面36aの下端縁部が進入し、ローラ加圧面36aの移動に伴い折返し部3aがローラ加圧面36aの傾斜に沿って次第にすくい上げられて曲げ起しされる。
【0033】
又、折返し部3aのR端部3bが段差部23dの上面に形成されているR受け面23eに当接されているため、ローラ加圧面36aの下端部をR端部3b付近まで進入させることができ、折返し部3aをR端部3b付近から曲げ起すことができる。更に、第1ローラ本体36の嵌合ガイド溝45が受けローラ23のフランジ部23bに支持されているので、受けローラ23に対し第1ローラ本体36は軸ずれを生じることが無く、常時軸平行な状態を維持させることができ、折返し部3aを精度良く、確実に曲げ起すことができる。
【0034】
そして、ローラ加圧面36aの下端に形成された逃げ部47が段差部23dに近接すると、このローラ加圧面36a全体に折返し部3aが押し当てられ、第1ローラ本体36による初期曲げが完了する(図7(b)の状態)。
【0035】
次いで、ロボット制御部51は、受けローラ23と第1ローラ本体36とを、各電動モータ25a,25bの駆動により同方向へ同じ速度で回転させる。同時に、ロボットアーム13によりローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aの一端から他端方向へ、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿って移動させる。その結果、受けローラ23と第1ローラ本体36との転動により、折返し部3aがリヤホイールアーチ部2a全域に亘って、曲げ角度θ1(=45°)に曲げ成形されて、仮曲げ起しが完了する。
【0036】
折返し部3aをリヤホイールアーチ部2a全域に亘って曲げ起すに際し、第1ローラ本体36の嵌合ガイド溝45が受けローラ23のフランジ部23bに常時嵌合されているため、軸ずれが防止され、軸平行な状態を常時維持することができ、折返し部3aをリヤホイールアーチ部2a全体に亘って、R端部3b付近から精度良く、確実に曲げ起すことができる。
【0037】
その後、ロボット制御部51は、第1転圧ローラ部31のスライド機構46を動作させてスライダ42を後退させ、第1ローラ本体36を初期位置に戻し、ローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aから一旦離間させる。
【0038】
<中間曲げ工程>
次いで、ロボット制御部51は、ロボットアーム13の手首軸13aを回転させて、ヘッドベース部22に設けた第2転圧ローラ部32をリヤホイールアーチ部2aの内面側に臨ませ、ローラ受け面23cと第2ローラ本体37のローラ加圧面37aとの間に、仮曲げされている折返し部3aを遊挿する。そして、ローラ受け面23cをアウタパネル3の外表面に当接させ、アウタパネル3のR端部3bを段差部23d上面のR受け面23eに当接させる。
【0039】
その後、ロボット制御部51は、上述した第1転圧ローラ部31の動作と同様の手順により、第2ローラ本体37を支持するスライダ42を受けローラ23の軸芯方向へ移動させる。この場合も、第2ローラ本体37は、嵌合ガイド溝45が受けローラ23に形成されているフランジ部23bに嵌合されているため、第2ローラ本体37の軸部44が受けローラ23の軸部23aに対し、同一平面において軸平行な状態を維持しながら近接される。
【0040】
そして、第2ローラ本体37のローラ加圧面37aの一部が折返し部3aに当接し、第2ローラ本体37の移動に伴い折返し部3aが次第に曲げ起しされる。その後、ローラ加圧面37aの下端に形成された逃げ部47が段差部23dに近接すると、折返し部3aがローラ加圧面37aに倣って押し曲げられて、第2ローラ本体37による初期の中間曲げが完了する(図7(c)の状態)。
【0041】
次いで、ロボット制御部51は、受けローラ23と第2ローラ本体37とを、各電動モータ25a,25bの駆動により同方向へ同じ速度で回転させる。同時に、ロボットアーム13によりローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aの一端から他端方向へ、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿って移動させ、折返し部3aを、受けローラ23と第2ローラ本体37との転動によりリヤホイールアーチ部2a全域に亘って、曲げ角度θ2(=30°)に折曲げて、中間曲げ起しを完了する。
【0042】
この場合も、上述した仮曲げ工程と同様、折返し部3aが、段差部23dの高さ分だけフランジ部23bから浮いているため、第2ローラ本体37のローラ加圧面37aにて、R端部3b付近から確実に曲げ起すことができる。又、第2ローラ本体37の嵌合ガイド溝45が受けローラ23のフランジ部23bに常時支持されているため、軸ずれが発生せず、折返し部3aを精度良く曲げ起すことができる。
【0043】
その後、ロボット制御部51は、第2転圧ローラ部32のスライド機構46を動作させ、スライダ42を後退させて、第2ローラ本体37を初期位置に戻し、ローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aから一旦離間させる。
【0044】
<本曲げ工程>
その後、ロボット制御部51は、ロボットアーム13の手首軸13aを再び回転させて、第3転圧ローラ部33をリヤホイールアーチ部2aの内面側に臨ませ、ローラ受け面23cと第3ローラ本体38のローラ加圧面38aとの間に、中間曲げ形成されている折返し部3aを遊挿する。そして、ローラ受け面23cをアウタパネル3の外表面に当接させ、アウタパネル3のR端部3bを段差部23d上面のR受け面23eに当接させる。
【0045】
次いで、ロボット制御部51は、第3ローラ本体38を支持するスライダ42を受けローラ23の軸芯方向へ移動させる。この場合も、第3ローラ本体38は、嵌合ガイド溝45が受けローラ23に形成されているフランジ部23bに嵌合されているため、第3ローラ本体38の軸部44が受けローラ23の軸部23aに対し、同一平面において軸平行な状態を維持しながら近接される(図7(d)の状態)。
【0046】
そして、第3ローラ本体38のローラ加圧面38aが折返し部3aの一部に当接し、第3ローラ本体38の移動に伴い折返し部3aを曲げ起しする。その後、ローラ加圧面38aの下端に形成された逃げ部47が段差部23dに近接すると、ローラ加圧面38aによって折返し部3aがインナパネル4を挟み込んだ状態でローラ受け面23c側に押し付けられ、折返し部3aがローラ加圧面38a全体に倣って押し当てられて折り返され、第3ローラ本体38による初期の本曲げが完了する(図8の状態)。
【0047】
次いで、ロボット制御部51は、受けローラ23と第3ローラ本体38とを、各電動モータ25a,25bの駆動により同方向へ同じ速度で回転させる。同時に、ロボットアーム13を駆動させて、ローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aの一端から他端方向へ、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿って移動させる。すると、受けローラ23と第3ローラ本体38との狭圧状態での転動により、リヤホイールアーチ部2a全域に亘って、折返し部3aを曲げ角度θ3(=0°)に折返して、アウタパネル3にインナパネル4を挟み込んだ本曲げを完了する。
【0048】
この場合も、折返し部3aが、段差部23dの高さ分だけフランジ部23bから浮いているため、第3ローラ本体38のローラ加圧面38aにて、この折返し部3aをR端部3b付近から確実に折返すことができる。又、第3ローラ本体38の嵌合ガイド溝45が受けローラ23のフランジ部23bに常時支持されているため、折返し部3aを精度良く折返すことができる。
【0049】
その後、ロボット制御部51は、第3転圧ローラ部33のスライド機構46の動作によりスライダ42を後退させて、第3ローラ本体38を初期位置に戻し、ローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aから一旦離間させた後、ロボットアーム13を待機位置に戻し、新たなボディコン1が搬送されてくるまで待機する。
【0050】
このように、本実施形態では、1台のヘミング用ロボット11aのロボットアーム13にローラヘッド部21を取り付け、このローラヘッド部21の中心に受けローラ23を設け、その周囲に複数(本実施形態では、3個)の転圧ローラ部31~33を配設し、受けローラ23に形成したフランジ部23bに常時嵌合する嵌合ガイド溝45を転圧ローラ部31~33に形成したので、転圧ローラ31~33は受けローラ23に支持された状態で近接、及び転圧させることができるため、軸ずれが防止され、常時軸平行な状態が維持され、折返し部3aを精度良く曲げ形成することができる。その結果、高い品質を得ることができるばかりでなく、製品不良の発生を抑制させることができる。
【0051】
又、受けローラ23のフランジ部23bに各転圧ローラ部31~33の嵌合ガイド溝45が常時嵌合されているため、ヘミング加工を高速で行っても軸ブレし難く、高速化による生産性の向上を図ることができる。
【0052】
更に、1つのローラヘッド部21に複数の転圧ローラ部31~33を配設したので、本実施形態のように、折返し部3aを段階的に曲げ起しするに際し、ローラ本体36~38をいちいち組み替える必要がなく、ロボットアーム13の手首軸13aを回転させるだけで簡単に選択することができるため、段取りが容易となり製造工数の大幅な削減を実現することができる。
【0053】
[第2実施形態]
図9に本発明の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態によるヘッドベース部22は、図4に示すように、転圧ローラ部33(31,32)のローラ本体38(36,37)をスライダ42に支持し、このスライダ42をスライドさせることでローラ本体38(36,37)を、受けローラ23に対し、法線方向に沿って近接離間させるようにしている。
【0054】
これに対し、本実施形態のヘッドベース部52の転圧ローラ部61は、ローラ本体38(36,37)をコ字状に形成された枠体71に支持させ、この枠体71を、ローラ本体38(36,37)を挟んで受けローラ23とほぼ対峙する法線方向の位置に配設したスライド機構46のロッド46aに支持させるようにしたものである。
【0055】
本実施形態によれば、スライド機構46が枠体71を受けローラ23に対峙する方向から進退動作させることができるため、第1実施形態に比し、ローラ本体38(36,37)の軸部44に曲げモーメントが発生し難くなり、ヘミング加工の際の軸ブレを有効に防止することができる。
【0056】
[第3実施形態]
図10図11に本発明の第3実施形態を示す。本実施形態は上述した第1実施形態の変形例である。第1実施形態ではアウタパネル3のR端部3bを端部から折り返したフラットヘム形状に加工しているが、本実施形態では、R端部3bの曲げ半径を大きくして、内部が中空閉断面のサークルヘム(「ロープヘム」とも称する)を形成するようにしたものである。尚、第1実施形態と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を簡略化、或いは省略する。
【0057】
本実施形態のアウタパネル3のR端部3bは、比較的大きな半径で予め曲げ形成されている。又、受けローラ23の基部に、アウタパネル3のR端部3bの表面に当接する曲率半径を有するRガイド面23fが形成されている。
【0058】
一方、サークルヘム用第3転圧ローラ本体(以下、「第3転圧ローラ本体」と略称)38’は、第1実施形態の第3転圧ローラ部33を構成する第3ローラ本体38に代えて適用する。
【0059】
この第3転圧ローラ本体38’は、第3ローラ加圧面38a’の下部にサークルヘム逃げ部38b’が形成されている。このサークルヘム逃げ部38b’はアウタパネル3の端縁内側に形成されるサークル状曲面部3cの膨出を許容するものである。
【0060】
このような構成では、図10(a)に示すように、ロボット制御部51(図2参照)による制御動作にて、ローラ受け面23cをアウタパネル3の外表面に当接させると共に、その基部に形成されたRガイド面23fを、アウタパネル3の、大きくR曲げ加工されたR端部3bに当接させ、更に、折返し部3aをR受け面23eに当接させて位置決めする。
【0061】
そして、上述した第1実施形態と同様、仮曲げ工程(図10(b)参照)、及び中間曲げ工程(図10(c)参照)を、所定に完了させる。
【0062】
次いで、ロボット制御部51は、本曲げ工程を行う。すなわち、ロボット制御部51は、ロボットアーム13の手首軸13aを回転させて、第3転圧ローラ部33をリヤホイールアーチ部2aの内面側に臨ませ、ローラ受け面23cと第3ローラ本体38のローラ加圧面38aとの間に、中間曲げ形成されている折返し部3aを遊挿する。そして、ローラ受け面23cをアウタパネル3の外表面に当接させ、R端部3bをRガイド面23fに当接させると共に、折返し部3aをR受け面23eに当接させて位置決めする。
【0063】
次いで、ロボット制御部51は、第3ローラ本体38’の軸部44を受けローラ23の軸部23aに近接させ(図10(d)の状態)、第3ローラ本体38’のローラ加圧面38a’を折返し部3aに当接させる。そして、受けローラ23に更に近接すると、折返し部3aが更に曲げ起される。その際、第3ローラ本体38’の下部にサークルヘム逃げ部38b’が形成されているため、折返し部3aの基部側は内方(サークルヘム逃げ部38b’方向)への膨出が許容され、内部に中空断面が形成される。
【0064】
そして、図11に示すように、ローラ加圧面38a’によって折返し部3aがインナパネル4を挟み込んだ状態でローラ受け面23c側に押し付けられて、折返し部3aが折り返されると、アウタパネル3の端縁に内側へ膨出する曲面部3cにて、内部が中空閉断面のサークルヘムが形成され、これにより初期の本曲げが完了する。
【0065】
次いで、ロボット制御部51は、受けローラ23と第3ローラ本体38とを、各電動モータ25a,25bの駆動により同方向へ同じ速度で回転させる。同時に、ロボットアーム13を駆動させて、ローラヘッド部21をリヤホイールアーチ部2aの一端から他端方向へ、リヤホイールアーチ部2aの形状に沿って移動させる。すると、受けローラ23と第3ローラ本体38’との狭圧状態での転動により、リヤホイールアーチ部2a全域に亘って、折返し部3aを曲げ角度θ3(=0°)に折返してインナパネル4を挟み、且つ、内方へ膨出した曲面部3cによりサークルヘムを形成して、本曲げを完了させる。
【0066】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限るものではなく、例えば、転圧ローラ部はヘッドベース部22に対し、ローラヘッド部21の周囲に1個、或いは2個、或いは4個以上が等間隔に配設されていても良い。例えば折返し部3aが板金プレス加工によってV字状に予め曲げ形成されている場合、第2、第3ローラ本体37,38のローラ加圧面37a,38a、或いは第3ローラ本体38のローラ加圧面38aのみによって折返し部3aを曲げ角度θ3(=0°)に折返す本曲げ加工が可能となるため、2個、或いは1個のローラヘッド部21で対応可能となる。
【0067】
又、各ローラ本体36~38のローラ加圧面36a~38a(38a’)によって曲げ形成される折返し部3aの曲げ角度θ1~θ3は例示であり、これ以外の曲げ角度の組み合わせであっても良い。更に、受けローラ23に嵌合ガイド溝45を形成し、これに嵌合するフランジ部23bをローラ本体36~38(38’)に形成するようにしても良い。又、スライド機構46の動力源は油圧に限らず空気圧、ガス圧等であっても良い。
【0068】
更に、受けローラ23、第1~第3ローラ本体36~38(38’)は、各電動モータ25a,25b、及び各減速機構24a,24bを省略して自由に回転する構造とし、ヘミング加工の際のロボットアーム13の移動に伴って転動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…ボディ・コンストラクション、
2…リヤクウォータパネル、
2a…リヤホイールアーチ部、
3…アウタパネル、
3a…折返し部、
3b…R端部、
3c…サークル状曲面部、
4…インナパネル、
11…ローラヘミング装置、
11a…ヘミング用ロボット、
12…ロボット台、
13…ロボットアーム、
13a…手首軸、
14…本体ベース、
21…ローラヘッド部、
22,52…ヘッドベース部、
22a…軸支持部、
22b…支持フレーム、
23…受けローラ、
23a…軸部、
23b…フランジ部、
23c…ローラ受け面、
23d…段差部、
23e…R受け面、
23f…Rガイド面、
31~33…第1~第3転圧ローラ部、
36~38(38’)…第1~第3ローラ本体、
36a~38a(38a’)…第1~第3ローラ加圧面、
38b’…サークルヘム逃げ部、
41…ガイド盤、
42…スライダ、
42a…垂立面、
43…軸支持部、
44…軸部、
45…嵌合ガイド溝、
46…スライド機構、
47…逃げ部、
51…ロボット制御部、
61…転圧ローラ部、
71…枠体、
θ1~θ3…第1~第3曲げ角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11