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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】搬送車
(51)【国際特許分類】
   B60K 5/00 20060101AFI20220112BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20220112BHJP
   B60K 25/04 20060101ALI20220112BHJP
   B60P 1/02 20060101ALI20220112BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
B60K5/00
B60K17/04 D
B60K17/04 Z
B60K25/04
B60P1/02 Z
B60P3/00 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017182879
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2019055763
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593005644
【氏名又は名称】JFE物流株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】房登 洋二
(72)【発明者】
【氏名】今井 省吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々部 洋二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康範
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊介
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-7370(JP,A)
【文献】特開2014-15069(JP,A)
【文献】特開2001-122011(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4002890(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0155170(US,A1)
【文献】特開2015-96414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/00
B60K 5/08
B60K 17/04
B60K 25/04
B60P 3/00
B60P 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台と第1走行装置及び第2走行装置とを含む車体と、
上記第1走行装置を駆動するための第1エンジンと、
上記第2走行装置を駆動するための第2エンジンと、
記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達可能な状態と伝達を切り離す状態とに切り換え可能な第1動力伝達装置と、
記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達可能な状態と伝達を切り離す状態とに切り換え可能な第2動力伝達装置と、
上記第1エンジン、上記第2エンジン、上記第1動力伝達装置及び上記第2動力伝達装置を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動しない第1エンジン駆動状態において、上記第1動力伝達装置を、上記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達可能とし且つ上記第2動力伝達装置を、上記第2エンジンの動力の上記第2走行装置への伝達を切り離すように制御し、上記第2エンジンを駆動し且つ上記第1エンジンを駆動しない第2エンジン駆動状態において、上記第2動力伝達装置を、上記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達可能とし且つ上記第1動力伝達装置を、上記第1エンジンの動力の上記第1走行装置への伝達を切り離すように制御することを特徴とする搬送車。

【請求項2】
上記荷台を昇降させるための複数のシリンダと、
上記複数のシリンダに含まれた第1シリンダに接続された第1油圧回路と、
上記複数のシリンダに含まれた第2シリンダに接続された第2油圧回路と、
上記第1油圧回路に配置され且つ上記第1エンジンにより駆動される第1ポンプと、
上記第2油圧回路に配置され且つ上記第2エンジンにより駆動される第2ポンプと、
上記第1油圧回路の上記第1ポンプより下流側部分と上記第2油圧回路の上記第2ポンプより下流側部分とが連通する状態及び連通しない状態のいずれかに切り換える切換手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
上記制御部は、
上記第1エンジン駆動状態と、
上記第2エンジン駆動状態と、
上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動する第3エンジン駆動状態とを取り得ることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送車。
【請求項4】
荷台と第1走行装置及び第2走行装置とを含む車体と、
上記第1走行装置を駆動するための第1エンジンと、
上記第2走行装置を駆動するための第2エンジンと、
上記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達する第1動力伝達装置と、
上記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達する第2動力伝達装置と、
上記第1エンジン、上記第2エンジン、上記第1動力伝達装置及び上記第2動力伝達装置を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、
上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動しない第1エンジン駆動状態において、上記第1動力伝達装置を動力伝達可能とし且つ上記第2動力伝達装置を動力を伝達しないように制御し、上記第2エンジンを駆動し且つ上記第1エンジンを駆動しない第2エンジン駆動状態において、上記第2動力伝達装置を動力達可能とし且つ上記第1動力伝達装置を動力を伝達しないように制御し、
上記制御部は、
上記第1エンジン駆動状態と、
上記第2エンジン駆動状態と、
上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動する第3エンジン駆動状態とを取り得、
さらに、上記制御部は、
上記荷台の昇降動作時、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、
上記荷台が走行高さより低い下限高さのとき、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とすることを特徴とする搬送車。
【請求項5】
荷台と第1走行装置及び第2走行装置とを含む車体と、
上記第1走行装置を駆動するための第1エンジンと、
上記第2走行装置を駆動するための第2エンジンと、
上記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達する第1動力伝達装置と、
上記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達する第2動力伝達装置と、
上記第1エンジン、上記第2エンジン、上記第1動力伝達装置及び上記第2動力伝達装置を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動しない第1エンジン駆動状態において、上記第1動力伝達装置を動力伝達可能とし且つ上記第2動力伝達装置を動力を伝達しないように制御し、上記第2エンジンを駆動し且つ上記第1エンジンを駆動しない第2エンジン駆動状態において、上記第2動力伝達装置を動力達可能とし且つ上記第1動力伝達装置を動力を伝達しないように制御され、
上記制御部は、
上記第1エンジン駆動状態と、
上記第2エンジン駆動状態と、
上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動する第3エンジン駆動状態とを取り得、
さらに、上記制御部は、
上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、
上記荷台が走行高さより低い下限高さのとき、上記荷台の昇降動作時及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とすることを特徴とする搬送車。
【請求項6】
荷台と第1走行装置及び第2走行装置とを含む車体と、
上記第1走行装置を駆動するための第1エンジンと、
上記第2走行装置を駆動するための第2エンジンと、
上記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達する第1動力伝達装置と、
上記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達する第2動力伝達装置と、
上記第1エンジン、上記第2エンジン、上記第1動力伝達装置及び上記第2動力伝達装置を制御する制御部とを備え、
上記制御部は、上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動しない第1エンジン駆動状態において、上記第1動力伝達装置を動力伝達可能とし且つ上記第2動力伝達装置を動力を伝達しないように制御し、上記第2エンジンを駆動し且つ上記第1エンジンを駆動しない第2エンジン駆動状態において、上記第2動力伝達装置を動力達可能とし且つ上記第1動力伝達装置を動力を伝達しないように制御され、
上記制御部は、
上記第1エンジン駆動状態と、
上記第2エンジン駆動状態と、
上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動する第3エンジン駆動状態とを取り得、
さらに、上記制御部は、
上記荷台が走行高さより低い下限高さであるとき、上記荷台の昇降動作時、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、
上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第
1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とすることを特徴とする搬送車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内で重量物を搬送するために使用される搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、重量物を搭載する荷台を含む車体と、2つのエンジンと、車体を走行させるための複数の走行装置とを有する搬送車が記載されている。この搬送車では、前側の複数の走行装置と後側の複数の走行装置とは、それぞれ異なるエンジンにより駆動されるが、一方のエンジンを停止して、他方のエンジンの駆動により走行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-15069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重量物を搭載する荷台を有した搬送車において、一方のエンジンがトランスミッション及びプロペラシャフトを介して前側の複数の走行装置を駆動すると共に、他方のエンジンがトランスミッション及びプロペラシャフトを介して後側の複数の走行装置を駆動することが考えられる。この搬送車において、特許文献1のように、一方のエンジンを停止して、他方のエンジンの駆動により走行したとき、停止側のエンジンがトランスミッション及びプロペラシャフトを介して複数の走行装置に動力を伝達可能な状態であって、停止側のエンジンに接続されたトランスミッションの部品が走行装置の連れ回りにより摩耗等する問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、停止側のエンジンに接続された動力伝達装置の部品が走行装置の連れ回りにより摩耗等するのを防止できる搬送車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる搬送車は、荷台と第1走行装置及び第2走行装置とを含む車体と、上記第1走行装置を駆動するための第1エンジンと、上記第2走行装置を駆動するための第2エンジンと、上記第1エンジンの動力を上記第1走行装置に伝達する第1動力伝達装置と、上記第2エンジンの動力を上記第2走行装置に伝達する第2動力伝達装置と、上記第1エンジン、上記第2エンジン、上記第1動力伝達装置及び上記第2動力伝達装置を制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記第1エンジンを駆動し且つ上記第2エンジンを駆動しない第1エンジン駆動状態において、上記第1動力伝達装置を動力伝達可能とし且つ上記第2伝達装置を動力を伝達しないように制御し、上記第2エンジンを駆動し且つ上記第1エンジンを駆動しない第2エンジン駆動状態において、上記第2動力伝達装置を動力達可能とし且つ上記第1伝達装置を動力を伝達しないように制御する。
【0007】
この搬送車では、第1エンジン及び第2エンジンの一方のエンジンだけが駆動されたときに、他方のエンジンの動力を走行装置に伝達する動力伝達装置が動力を伝達しないように制御される。したがって、停止側のエンジンと走行装置との動力の伝達を切り離すことにより、停止側のエンジンに接続された動力伝達装置の部品が走行装置の連れ回りにより摩耗等するのを防止できる。
【0008】
第2の発明にかかる搬送車は、第1の発明において、上記荷台を昇降させるための複数のシリンダと、上記複数のシリンダに含まれた第1シリンダに接続された第1油圧回路と、上記複数のシリンダに含まれた第2シリンダに接続された第2油圧回路と、上記第1油圧回路に配置され且つ上記第1エンジンにより駆動される第1ポンプと、上記第2油圧回路に配置され且つ上記第2エンジンにより駆動される第2ポンプと、上記第1油圧回路の上記第1ポンプより下流側部分と上記第2油圧回路の上記第2ポンプより下流側部分とが連通する状態及び連通しない状態のいずれかに切り換える切換手段とを備えた。
【0009】
この搬送車では、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動されるときに、第1油圧回路と第2油圧回路とが連通する状態に切り換えられることにより、通常、停止側のエンジンにより駆動されるシリンダに対し、駆動側のエンジンにより油を送ることができる。したがって、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動されるときに、荷台を昇降させることができる。
【0010】
第3の発明にかかる搬送車は、第1または第2の発明において、上記第1エンジン駆動状態と、上記第2エンジン駆動状態と、上記第1エンジンが駆動され且つ上記第2エンジンが駆動される第3エンジン駆動状態とを取り得る。
【0011】
この搬送車では、荷台の高さや荷台上の重量物の重量などにより、第1エンジン及び第2エンジンが駆動される状態と、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動される状態とを切り換えることができる。
【0012】
第4の発明にかかる搬送車は、第3の発明において、上記制御部は、上記荷台の昇降動作時、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、上記荷台が走行高さより低い下限高さのとき、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とする。
【0013】
この搬送車では、機能動作に対する省エネの効率が最もよい。
【0014】
第5の発明にかかる搬送車は、第3の発明において、上記制御部は、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、上記荷台が走行高さより低い下限高さのとき、上記荷台の昇降動作時及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とする。
【0015】
この搬送車では、燃費改善が最もよい。
【0016】
第6の発明にかかる搬送車は、第3の発明において、上記制御部は、上記荷台が走行高さより低い下限高さであるとき、上記荷台の昇降動作時、及び、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量を超えるときは、上記第3エンジン駆動状態とすると共に、上記荷台が走行高さであって且つ上記荷台上の重量物が所定重量以下のときは、上記第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態とする。
【0017】
この搬送車では、エンジンの始動(停止)回数が少なく、油面のアンバランスが生じにくい。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0019】
第1の発明では、第1エンジン及び第2エンジンの一方のエンジンだけが駆動されたときに、他方のエンジンの動力を走行装置に伝達する動力伝達装置が動力を伝達しないように制御される。したがって、停止側のエンジンと走行装置との動力の伝達を切り離すことにより、停止側のエンジンに接続された動力伝達装置の部品が走行装置の連れ回りにより摩耗等するのを防止できる。
【0020】
第2の発明では、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動されるときに、第1油圧回路と第2油圧回路とが連通する状態に切り換えられることにより、通常、停止側のエンジンにより駆動されるシリンダに対し、駆動側のエンジンにより油を送ることができる。したがって、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動されるときに、荷台を昇降させることができる。
【0021】
第3の発明では、荷台の高さや荷台上の重量物の重量などにより、第1エンジン及び第2エンジンが駆動される状態と、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動される状態とを切り換えることができる。
【0022】
第4の発明では、機能動作に対する省エネの効率が最もよい。
【0023】
第5の発明では、燃費改善が最もよい。
【0024】
第6の発明では、エンジンの始動(停止)回数が少なく、油面のアンバランスが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態にかかる搬送車の平面図である。
図2図1の搬送車の右側面図である。
図3図1の搬送車の油圧回路を示す図である。
図4図1の搬送車の通常モード及び省エネモードを示す図である。
図5】第1省エネモードの動作を示す図である。
図6】第2省エネモードの動作を示す図である。
図7】第3省エネモードの動作を示す図である。
図8】第1タンク及び第2タンクに設定された上限値、所定範囲、下限値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態にかかる搬送車について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図1及び図2に示すように、搬送車1は、工場内において重量物を搬送するために使用され、全体として前後方向に長尺な略直方体形状を有する。搬送車1は、荷台2及び複数の走行装置A1-A12を含む車体3を備える。車体3は、平面視で長方形状であり、その上面が荷台2となっている。
【0028】
搬送車1は、進行方向を前後に転換するために、車体3の前後方向の一端部の第1運転室10aと、他端部の第2運転室10bとを有する。したがって、第1運転室10aを前側として前進した搬送車1の進行方向を反対方向へ転換するには、運転者が第1運転室10aから第2運転室10bへ乗り換えて運転することになる。なお、以下では、搬送車1の第1運転室10aが設けられた側を、搬送車1の前側と定義する。
【0029】
搬送車1は、複数の走行装置A1-A12に含まれた第1走行装置A1-A6を駆動するための第1エンジン4aと、複数の走行装置A1-A12に含まれた第2走行装置A7-A12を駆動するための第2エンジン4bとを有する。第1エンジン4aは、第1運転室10aの後方において左側に配置され、第2エンジン4bは、第1運転室10aの前方において右側に配置される。
【0030】
搬送車1は、図1及び図2に示すように、車体3の前後方向に6列、左右方向に2個の合計12個の走行装置A1-A12を有している。走行装置A1-A4及びA9-A12は、それぞれ、車軸と、車軸に固定された4つの車輪と、車軸を回転可能に支持するためのスイングアームとを含む。走行装置A5-A8は、それぞれ、車軸と、車軸に固定された2つの車輪と、車軸を回転可能に支持するためのスイングアームとを含む。
【0031】
走行装置A1-A4の内側には、第1トランスミッション6aが配置され、走行装置A9-A12の内側には、第2トランスミッション6bが配置される。第1トランスミッション6aは、第1シャフト7aにより第1エンジン4aと接続され、第2トランスミッション6bは、第2シャフト7aにより第2エンジン4bと接続される。走行装置A1-A6は、第1プロペラシャフト8aにより第1トランスミッション6aに接続され、走行装置A7-A12は、第2プロペラシャフト8bにより第2トランスミッション6bに接続される。
【0032】
したがって、第1エンジン4aの動力は、第1シャフト7aを介して、第1トランスミッション6aに伝達され、第1プロペラシャフト8aを介して、第1走行装置A1-A6に伝達される。第2エンジン4bの動力は、第2シャフト7aを介して、第2トランスミッション6bに伝達され、第2プロペラシャフト8bを介して、第2走行装置A7-A12に伝達される。第1トランスミッション6aは、第1エンジン4aの動力を第1走行装置A1-A6に伝達可能な状態と伝達しない状態とに切り換え可能に構成される。第2トランスミッション6bは、第2エンジン4bの動力を第2走行装置A7-A12に伝達可能な状態と伝達しない状態とに切り換え可能に構成される。
【0033】
本実施形態では、第1シャフト7a、第1トランスミッション6a及び第1プロペラシャフト8aが、第1エンジン4aの動力を第1走行装置A1-A6に伝達する第1動力伝達装置であって、第2シャフト7a、第2トランスミッション6b及び第2プロペラシャフト8bが、第2エンジン4bの動力を第2走行装置A7-A12に伝達する第2動力伝達装置である。
【0034】
第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動されない第1エンジン駆動状態において、第1トランスミッション6a(第1動力伝達装置)が動力を伝達可能であって、第2トランスミッション6b(第2動力伝達装置)が動力を伝達しないように制御される。
【0035】
第2エンジン4bが駆動され且つ第1エンジン4aが駆動されない第2エンジン駆動状態において、第2トランスミッション6b(第2動力伝達装置)が動力を伝達可能であって、第1トランスミッション6a(第1動力伝達装置)が動力を伝達しないように制御される。
【0036】
搬送車1は、荷台2を昇降させるためのシリンダa1-a12を更に備える。シリンダa1-a12は、走行装置A1-A12のそれぞれに対応したように配置される。シリンダa1-a12は、ロッドを伸縮させることにより、荷台2を昇降させるものである。従って、例えば、全ての走行装置A1-A12に設けられたシリンダのロッドを同じ長さだけ伸長させることにより、荷台2を上昇させることができる。その上昇位置から、全てのシリンダのロッドを収縮させることにより、荷台2を下降させることができる。
【0037】
搬送車1は、第1タンク5a及び第2タンク5bを有し、図3に示すように、第1タンク5aと第1シリンダa1-a6とが接続された第1油圧回路11aと、第2タンク5bと第2シリンダa7-a12とが接続された第2油圧回路11bとを有する。第1タンク5aは、第1運転室10aの後方において右側に配置され、第2タンク5bは、第1運転室10aの前方において左側に配置される。
【0038】
第1油圧回路11aは、第1タンク5aと第1シリンダa1-a6とを接続するものであって、第1ポンプ12aが配置される。第1ポンプ12aは、第1エンジン4aにより駆動される。第1油圧回路11aでは、第1タンク5aと第1ポンプ12aとの間に、切換弁C1aが配置される。第1油圧回路11aは、第1ポンプ12aの下流側において分岐し、第1シリンダa1-a3に接続された油圧回路11aaと、第1シリンダa4-a6に接続された油圧回路11abとに構成される。油圧回路11aaには、切換弁C2aが配置され、油圧回路11abには、切換弁C3が配置される。
【0039】
第2油圧回路11bは、第2タンク5bと第2シリンダa7-a12とを接続するものであって、第2ポンプが配置される。第2ポンプは、第2エンジン4bにより駆動される。第2油圧回路11bでは、第2タンク5bと第2ポンプ12bとの間に、切換弁C1bが配置される。第2油圧回路11bは、第2ポンプ12bの下流側において分岐し、第2シリンダa7-a9に接続された油圧回路11baと、第2シリンダa10-a12に接続された油圧回路11bbとに構成される。油圧回路11baには、切換弁C2bが配置され、油圧回路11bbには、切換弁C3bが配置される。
【0040】
搬送車1の油圧回路には、切換手段である切換弁C4a、C4bが配置され、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとは、切換弁C4a、C4bにより連通する状態及び連通しない状態のいずれかに切り換え可能に構成される。切換弁C2aと切換弁C3aと切換弁C2bと切換弁C3bとは、油圧回路11caにより接続され、第1ポンプ12aと切換弁C2a及び切換弁C3aとの間の部分は、第2ポンプ12bと切換弁C2b及び切換弁C3bとの間の部分は、油圧回路11cbにより接続される。
【0041】
油圧回路11caには、切換弁C4aが配置され、切換弁C4aを切り換えることにより、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとが連通する状態及び連通しない状態のいずれかに切り換えられる。油圧回路11cbには、切換弁C4bが配置され、切換弁C4bを切り換えることにより、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとが連通する状態及び連通しない状態のいずれかに切り換えられる。本実施形態において、切換弁C4bは、第1油圧回路11aの第1ポンプ12aより下流側部分(ポンプからの吐き出し側)と、第2油圧回路11bの第2ポンプ12bより下流側部分(ポンプからの吐き出し側)とを連通させる連通状態及び連通させない非連通状態のいずれかに切り換える第1切換手段である。
【0042】
油圧回路11caにおいて、切換弁C2aと切換弁C3aとの間の部分は、切換弁C5aを介して第1タンク5aに接続され、切換弁C2bと切換弁C3bとの間の部分は、切換弁C5bを介して第2タンク5bに接続される。
【0043】
第1油圧回路11aにおいて第1タンク5aと第1ポンプ12aとの間の部分と、第2油圧回路11bにおいて第1タンク5aと第1ポンプ12aとの間の部分とは、油圧回路11ccにより接続される。油圧回路11ccには、切換手段である切換弁C4cが配置される。本実施形態において、切換弁C4cは、第1油圧回路11aの第1ポンプ12aより上流側部分(ポンプへの供給側)と、第2油圧回路11bの第2ポンプ12bより上流側部分(ポンプへの供給側)とを連通させる連通状態及び連通させない非連通状態のいずれかに切り換える第2切換手段である。
【0044】
したがって、切換弁C4a-C4cを切り換えることにより、第1エンジン4a及び第2エンジン4bが駆動され、荷台2の昇降動作が行われるときは、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとは連通しない状態において、第1ポンプ12aにより第1シリンダa1-a6に油が送られ、第2ポンプ12bにより第2シリンダa7-a12に油が送られる。第1エンジン4aだけが駆動され、荷台2の昇降動作が行われるときは、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとは連通する状態において、第1ポンプ12aにより第1シリンダa1-a6及び第2シリンダa7-a12に油が送られる。第2エンジン4bだけが駆動され、荷台2の昇降動作が行われるときは、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとは連通する状態において、第2ポンプ12bにより第1シリンダa1-a6及び第2シリンダa7-a12に油が送られる。
【0045】
第1タンク5aには、油量を検出する第1検出センサT1が配置され、第2タンク5bには、油量を検出する第2検出センサT2が配置される。
【0046】
本実施形態の搬送車1において、第1エンジン4a、第2エンジン4b、第1トランスミッション6a、第2トランスミッション6b、切換弁C1a、C2a、C1b、C2b、C3b、C4a、C4b、C5a、C5bは、制御部に接続される。したがって、制御部は、第1エンジン4a及び第2エンジン4bを制御すると共に、第1エンジン4a及び第2エンジン4bの駆動状態に基づいて、第1トランスミッション6a及び第2トランスミッション6bを制御する。制御部は、第1エンジン4a及び第2エンジン4bを制御することによって、第1ポンプ12a及び第2ポンプ12bを制御すると共に、切換弁C1a、C2a、C1b、C2b、C3b、C4a、C4b、C5a、C5bを制御することによって、搬送車1の油圧回路を制御する。
【0047】
本実施形態の搬送車1では、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動されない第1エンジン駆動状態と、第2エンジン4bが駆動され且つ第1エンジン4a駆動されない第2エンジン駆動状態と、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動される第3エンジン駆動状態とを取り得るものである。したがって、搬送車1においては、荷台2の高さ(下限高さおよび走行高さのいずれであるか)や、負荷(荷台2上の重量物があるか)に基づいて、第1エンジン4a及び第2エンジン4bが制御される。
【0048】
本実施形態の搬送車1では、図4に示すように、通常モード及び省エネモードのいずれかを選択できる。省エネモードには、第1省エネモードと、第2省エネモードと、第3省エネモードとが含まれる。
【0049】
搬送車1の状態としては、荷台2が下限高さである下限高さ状態と、荷台2が上下昇降する上下昇降状態と、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上に重量物がない軽負荷状態と、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上に重量物がある重負荷状態とがある。搬送車1において、走行路の凹凸が大きいときに荷台2が走行路と接触しないように、荷台2が走行高さより高い上限高さとなることがあるが、通常、搬送車1の状態は、下限高さ状態、上下昇降状態、軽負荷状態及び重負荷状態のいずれかである。搬送車1では、第1シリンダa1-a6及び第2シリンダa7-a12に、圧力センサがそれぞれ配置される。したがって、第1シリンダa1-a6及び第2シリンダa7-a12の圧力センサにより検出された圧力に基づいて、荷台2上の重量物の重量(荷台2の重量と、荷台2上の重量物の重量との合計)が検出される。本実施形態では、第1シリンダa1-a6及び第2シリンダa7-a12の圧力センサにより検出された圧力に基づいた荷台2上の重量物の重量が、荷台2の重量と同一であるとき、荷台2上に重量物がない状態であると考えられる。
【0050】
通常モードは、下限高さ状態、上下昇降状態、軽負荷状態及び重負荷状態のいずれにおいても、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動される状態(第3エンジン駆動状態)となるモードである。
【0051】
第1省エネモードは、上下昇降状態及び重負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動される状態(第3エンジン駆動状態)となると共に、下限高さ状態及び軽負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動されない第1エンジン駆動状態、または、第2エンジン4bが駆動され且つ第1エンジン4aが駆動されない第2エンジン駆動状態となるモードである。
【0052】
第2省エネモードは、重負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動される状態(第3エンジン駆動状態)となると共に、下限高さ状態、上下昇降状態及び軽負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動されない第1エンジン駆動状態、または、第2エンジン4bが駆動され且つ第1エンジン4aが駆動されない第2エンジン駆動状態となるモードである。
【0053】
第3省エネモードは、下限高さ状態、上下昇降状態及び重負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動される状態(第3エンジン駆動状態)となると共に、軽負荷状態において、第1エンジン4aが駆動され且つ第2エンジン4bが駆動されない第1エンジン駆動状態、または、第2エンジン4bが駆動され且つ第1エンジン4aが駆動されない第2エンジン駆動状態となるモードである。
【0054】
第1省エネモードの動作について、図5に基づいて説明する。
【0055】
S1において、搬送車1の電源がオンされると、S2において、第1省エネモードが選択されたかが判断される。S2において、省エネモードが選択されてないときは、通常モードも動作が行われる。S2において、第1省エネモードが選択されたと判断されたときは、S3において、運転室が選択される。以下、第1運転室10aが選択されたときの動作を説明する。S3において、第2運転室10bが選択されたときの動作は、第1運転室10aが選択されたときの動作と同様であることから、説明は省略する。
【0056】
S3において、第1運転室10aが選択されたときは、S4において、第1エンジン4aが駆動されているかが判断される。第1エンジン4aが駆動されているときは、S5において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S5において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S6において、走行高さであるかが判断される。S6において、走行高さでないと判断された後、S7において、昇降動作の指示があると、S8において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断され、第2エンジン4bが駆動されているときは、S9において、第1エンジン4a及び第2エンジン4bが駆動されていることが確認され、S10において、昇降動作が開始される。
【0057】
S4において、第1エンジン4aが駆動されてないときは、S11において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S11において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S12において、第1エンジン4aが手動により駆動された後、S5に移行する。S11において、第2エンジン4bが駆動されているときは、S13において、第1エンジン4aが自動により駆動される。S14において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S15において、第2エンジン4bが自動により停止され、S7に移行する。S14において、走行高さと判断されたときは、S16において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S15において、第2エンジン4bが自動により停止され、S7に移行する。S16において、重負荷であると判断されたときは、S7に移行する。
【0058】
S6において、走行高さと判断されたときは、S17において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S7に移行する。S17において、重負荷であると判断されたときは、S18において、第2エンジン4bが自動により駆動された後、S7に移行する。S8において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S19において、第2エンジン4bが自動により駆動された後、S7に移行する。
【0059】
S10において、昇降動作が開始された後、S20において、運転室が変更されたかが判断され、運転室が変更されないときは、S21において、昇降動作が停止される。その後、S22において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S23において、第2エンジン4bが自動により停止された後、S3に移行する。
【0060】
S22において、走行高さと判断されたときは、S24において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S23に移行する。S24において、重負荷であると判断されたときは、S3に移行する。S20において、運転室が変更されたときは、S3に移行する。
【0061】
第2省エネモードの動作について、図6に基づいて説明する。
【0062】
S101において、搬送車1の電源がオンされると、S102において、第2省エネモードが選択されたかが判断される。S102において、省エネモードが選択されてないときは、通常モードの動作が行われる。S102において、第2省エネモードが選択されたと判断されたときは、S103において、運転室が選択される。以下、第1運転室10aが選択されたときの動作を説明する。S103において、第2運転室10bが選択されたときの動作は、第1運転室10aが選択されたときの動作と同様であることから、説明は省略する。
【0063】
S103において、第1運転室10aが選択されたときは、S104において、第1エンジン4aが駆動されているかが判断される。第1エンジン4aが駆動されているときは、S105において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S105において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S106において、走行高さであるかが判断される。S106において、走行高さでないと判断された後、昇降動作の指示があると、S107において、下降動作の指示であるかが判断される。下降動作の指示であるときは、S108において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断され、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S109において、第1エンジン4aの駆動により上昇途中であるかが判断される。
【0064】
S108において、第2エンジン4bが駆動されていると判断されたときは、S110において、第2エンジン4bが自動により停止された後、S109に移行する。S109において、第1エンジン4aの駆動により上昇途中であると判断されたときは、S111において、第1タンク5aに油を戻した後、S112において、下降動作を開始する。
【0065】
S104において、第1エンジン4aが駆動されてないときは、S113において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S113において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S114において、第1エンジン4aが手動により駆動された後、S105に移行する。S113において、第2エンジン4bが駆動されているときは、S115において、第1エンジン4aが自動により駆動される。S116において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S116に戻る。
【0066】
S116において、走行高さと判断されたときは、S117において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S118において、第2エンジン4bが自動により停止され、S107に移行する。S117において、重負荷であると判断されたときは、S107に移行する。
【0067】
S106において、走行高さと判断されたときは、S119において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S107に移行する。S119において、重負荷であると判断されたときは、S120において、第2エンジン4bが自動により駆動され、S107に移行する。
【0068】
S107において、下降動作の指示でないと判断されたとき(上昇指示であるとき)は、S121において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断され、第2エンジンが駆動されてないときは、S122において、下限高さであるかが判断される。S121において、第2エンジン4bが駆動されていると判断されたときは、S123において、第2エンジン4bが自動により停止された後、S122に移行する。S122において、下限高さでないと判断されたときは、S124において、第1エンジン4aの駆動により上昇途中であるかが判断される。S124において、第1エンジン4aの駆動により上昇途中でないと判断されたときは、S125において、上昇動作が終了される。S122において、下限高さと判断されたときは、S126において、第1エンジン4aの駆動により上昇動作が開始される。
【0069】
S109において、第1エンジン4aの駆動により上昇途中でないと判断されたときは、S127において、第2タンクに油を戻した後、S112に移行する。
【0070】
S112において、昇降動作(下降動作または上昇動作)が開始された後、S128において、運転室が変更されたかが判断され、運転室が変更されないときは、S129において、昇降動作が停止される。その後、S130において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S131において、昇降動作が終了する。その後、S103に移行する。
【0071】
S130において、走行高さと判断されたときは、S132において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S131に移行する。S132において、重負荷であると判断されたときは、S133において、第2エンジン4bが自動により駆動された後、S131に移行する。
【0072】
S128において、運転室が変更されたときは、S134において、昇降動作の途中であるかの判断が繰り返される。S134において、昇降動作の途中でないと判断されたときは、S103に移行する。
【0073】
第3省エネモードの動作について、図7に基づいて説明する。
【0074】
S201において、搬送車1の電源がオンされると、S202において、第3省エネモードが選択されたかが判断される。S202において、省エネモードが選択されてないときは、通常モードの動作が行われる。S202において、第3省エネモードが選択されたと判断されたときは、S203において、運転室が選択される。以下、第1運転室10aが選択されたときの動作を説明する。S203において、第2運転室10bが選択されたときの動作は、第1運転室が選択されたときの動作と同様であることから、説明は省略する。
【0075】
S203において、第1運転室10aが選択されたときは、S204において、第1エンジンが駆動されているかが判断される。第1エンジンが駆動されているときは、S205において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S205において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S206において、走行高さであるかが判断される。S206において、走行高さでないと判断されたときは、S207において、第2エンジン4bが自動により駆動される。その後、S208において、昇降動作の指示があると、S209において、第2エンジンが駆動されているかが判断され、第2エンジン4bが駆動されているときは、S210において、第1エンジン4a及び第2エンジン4bが駆動されていることが確認され、S211において、昇降動作が開始される。
【0076】
S204において、第1エンジン4aが駆動されてないときは、S212において、第2エンジン4bが駆動されているかが判断される。S212において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S213において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S214において、第1エンジン4aが自動により駆動された後、S205に移行する。
【0077】
S212において、第2エンジンが駆動されているときは、S215において、第1エンジン4aが自動により駆動される。その後、S216において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S208に移行する。S216において、走行高さと判断されたときは、S217において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S218において、第2エンジン4bが自動により停止される。S217において、重負荷であると判断されたときは、S208に移行する。
【0078】
S213において、走行高さと判断されたときは、S219において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S220において、第2エンジン4bが駆動不可能であって、S214に移行する。S219において、重負荷であると判断されたときは、S214に移行する。
【0079】
S205において、第2エンジン4bが駆動されているときは、S216に移行する。
【0080】
S206において、走行高さと判断されたときは、S221において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S222において、第2エンジン4bが駆動され、S208に移行する。S221において、重負荷であると判断されたときは、S207に移行する。
【0081】
S209において、第2エンジン4bが駆動されてないときは、S224において、第2エンジン4bが自動により駆動された後、S210に移行する。
【0082】
S211において、昇降動作が開始された後、S225において、運転室が変更されたかが判断され、運転室が変更されないときは、S226において、昇降動作が停止される。その後、S227において、走行高さであるかが判断され、走行高さでないときは、S203に移行する。
【0083】
S227において、走行高さと判断されたときは、S228において、重負荷であるかが判断され、重負荷でないときは、S229において、第2エンジン4bが自動により停止される。S228において、重負荷であると判断されたときは、S203に移行する。S225において、運転室が変更されたときは、S203に移行する。
【0084】
搬送車1では、第1タンク5aに配置された第1検出センサT1により検出された油量と、第2タンク5bに配置された第2検出センサT2により検出された油量とに基づいて、第1タンク5a及び第2タンク5bの一方から他方に油を送ることにより、第1タンク5aの油量と第2タンク5bの油量とのアンバランスが解消される
【0085】
本実施形態において、第1タンク5a及び第2タンク5bには、図8に示すように、それぞれ、上限量と、上限量と下限量との間に設定された所定範囲と、下限量とが設定される。上限量は、タンク内の油量が増加して、オーバーフローするのを防止するためのものである。所定範囲及び下限量は、第1タンク5a内の油量と第2タンク5b内の油量とのアンバランスを解消するためのものである。
【0086】
図8(a)は、通常モードにおいて、荷台2が上限高さ、走行高さ及び下限高さのときのタンク内の油量を示している。通常モードでは、第1タンク5a内の油量と第2タンク5b内の油量とが同一になる。図8(b)では、省エネモードにおいて、第1エンジン4aだけが駆動されたときの荷台2が上限高さ、走行高さ及び下限高さのときのタンク内の油量を示している。第1エンジン4aだけが駆動されることから、第1タンク5a内の油量が低下するが、第2タンク内の油量は低下しない。
【0087】
通常モードにおいて、図8(a)に示すように、上限量d1、所定範囲d2と、下限量d3とが設定され、省エネモードにおいて、図8(b)に示すように、上限量d1’、所定範囲d2’と、下限量d3’とが設定される。
【0088】
したがって、通常モードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが上限量d1以上になったときに、上限量d1以上になったタンクから他方のタンクに油が送られる。省エネモードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが上限量d1’以上になったときに、上限量d1’以上になったタンクから他方のタンクに油が送られる。
【0089】
通常モードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが上限量d1と下限量d3との間に設定された所定範囲d2を超えたときに、所定範囲d2を超えたタンクから他方のタンクに油が送られ、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが所定範囲d2未満になったときに、所定範囲d2未満になったタンクに他方のタンクから油が送られる。省エネモードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが上限量d1’と下限量d3’との間に設定された所定範囲d2’を超えたときに、所定範囲d2’を超えたタンクから他方のタンクに油が送られ、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量のいずれかが所定範囲d2’未満になったときに、所定範囲d2’未満になったタンクに他方のタンクから油が送られる。図8(b)では、省エネモードにおいて、走行高さのときの第2タンク5b内の油量が所定範囲d2’を超えているが、第1エンジン4aだけが駆動された状態であって、第2タンク5b内の油量は低下しないことから、第2タンク5bから第1タンク5aに油は送られない。
【0090】
通常モードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量が下限量d3以下になったときに、下限量d3以下になったタンクに他方のタンクから油が送られる。省エネモードにおいて、第1タンク5a内の油量及び第2タンク5b内の油量が下限量d3’以下になったときに、下限量d3’以下になったタンクに他方のタンクから油が送られる。
【0091】
図8に示すように、第1タンク5a及び第2タンク5bの上限量については、通常モードの上限量d1と、省エネモードの上限量d1’とは同一である。
【0092】
第1タンク5a及び第2タンク5bの所定範囲の油量については、省エネモードの所定範囲の油量d2’が、通常モードの所定範囲の油量d2より少ない。
【0093】
第1タンク5a及び第2タンク5bの下限量については、省エネモードの下限量d3’が、通常モードの下限量d3より少ない。
【0094】
本実施形態では、省エネモードにおいて、第1エンジン4a及び第2エンジン4bの一方だけが駆動されたときに、第1タンク5a内の油量と第2タンク5b内の油量とのアンバランスを解消するためには、駆動側のエンジンのタンクから停止側のエンジンのタンクに油を送るときと、停止側のエンジンのタンクから駆動側のエンジンのタンクに油を送るときが考えられる。
【0095】
例えば、第1エンジン4aだけが駆動されている状態において、第1エンジン4a側の第1タンク5aから第2エンジン4b側の第2タンク5bに油を送るときは、油圧回路11cbの切換弁C4bを、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとを連通させる状態に切り換え、且つ、油圧回路11ccの切換弁C4cを、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとを連通させない状態に切り換えられる。
【0096】
例えば、第1エンジン4aだけが駆動されている状態において、第2エンジン4b側の第2タンク5bから第1エンジン4a側の第1タンク5aに油を送るときは、油圧回路11cbの切換弁C4bを、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとを連通させない状態に切り換え、且つ、油圧回路11ccの切換弁C4cを、第1油圧回路11aと第2油圧回路11bとを連通させる状態に切り換えられる。
【0097】
本実施形態の搬送車1では、第1エンジン4a及び第2エンジン4bの一方だけが駆動されたときに、他方のエンジンの動力を走行装置に伝達する動力伝達装置が動力を伝達しないように制御される。したがって、停止側のエンジンと走行装置との動力の伝達を切り離すことにより、停止側のエンジンに接続された動力伝達装置の部品が走行装置の連れ回りにより摩耗等するのを防止できる。
【0098】
本実施形態の搬送車1では、第1エンジン及び第2エンジンの一方だけが駆動されるときに、第1油圧回路と第2油圧回路とが連通する状態に切り換えられることにより、通常、停止側のエンジンにより駆動されるシリンダに対し、駆動側のエンジンにより油を送ることができる。したがって、第1エンジン4a及び第2エンジン4bの一方だけが駆動されるときに、荷台2を昇降させることができる。
【0099】
本実施形態の搬送車1では、第1エンジン4aだけが駆動される第1エンジン駆動状態と、第エンジン4bだけが駆動される第2エンジン駆動状態と、第1エンジン4a及び第エンジン4bが駆動される第3エンジン駆動状態とを取り得る。したがって、荷台2の高さや荷台2上の重量物の重量などにより、第1エンジン4a及び第2エンジン4bが駆動される状態と、第1エンジン4a及び第2エンジン4bの一方だけが駆動される状態とを切り換えることができる。
【0100】
本実施形態の搬送車1では、第1省エネモードにおいて、荷台2の昇降動作時、及び、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量を超えるときは、第3エンジン駆動状態となると共に、荷台2が走行高さより低い下限高さのとき、及び、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量以下のときは、第1エンジン駆動状態または第2エンジン駆動状態となることにより、機能動作に対する省エネの効率が最もよい。
【0101】
本実施形態の搬送車1では、第2省エネモードにおいて、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量を超えるときは、第3エンジン駆動状態となると共に、荷台2が走行高さより低い下限高さのとき、荷台2の昇降動作時、及び、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量以下のときは、第1エンジン駆動状態または上記第2エンジン駆動状態となることにより、燃費改善が最もよい。
【0102】
本実施形態の搬送車1では、第3省エネモードにおいて、荷台2が走行高さより低い下限高さであるとき、荷台2の昇降動作時、及び、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量を超えるときは、第3エンジン駆動状態となると共に、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物が所定重量以下のときは、第1エンジン駆動状態または第2エンジン駆動状態となることにより、エンジンの始動(停止)回数が少なく、油面のアンバランスが生じにくい。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0104】
上述の実施形態では、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上に重量物がない状態を軽負荷状態、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上に重量物がある状態を重負荷状態としたが、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物の重量が所定重量以下の状態を軽負荷状態、荷台2が走行高さであって且つ荷台2上の重量物の重量が所定重量を超える状態を重負荷状態としてよい。
【符号の説明】
【0105】
1 搬送車
2 荷台
3 車体
A1-A12 走行装置
A1-A6 第1走行装置
A7-A12 第2走行装置
4a 第1エンジン
4b 第2エンジン
a1-a12 シリンダ
a1-a6 第1シリンダ
a7-a12 第2シリンダ
11a 第1油圧回路
11b 第2油圧回路
12a 第1ポンプ
12b 第2ポンプ
C4a、C4b、C4c 切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8