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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】マウンタ用エア制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017206747
(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公開番号】P2019079970
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204240
【氏名又は名称】株式会社TAIYO
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】入江 進
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-273588(JP,A)
【文献】特開2003-023294(JP,A)
【文献】特開平01-246899(JP,A)
【文献】国際公開第2015/011751(WO,A1)
【文献】特開2017-098308(JP,A)
【文献】特開2004-202673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30、13/00-13/08
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウンタのヘッドモジュールに着脱可能に取り付けられるノズルを負圧域に接続し、先端にパーツを吸着させ得るようにしたものであって、
前記ヘッドモジュールに可変絞り機構を搭載し、この可変絞り機構によって、前記ノズルから前記負圧域へのエアの引き込み量を調整可能とし、前記可変絞り機構を電気的に制御可能な制御手段を備え、
前記制御手段が、前記可変絞り機構を動作させるオン・オフ指令が入力される指令入力部と、予め印加電圧値または印加電流値の設定を行う設定部と、オン・オフ指令を入力されることにより前記設定部に設定されている電圧値または電流値を制御対象に出力する出力制御部と、を備えており、
前記制御手段は、前記電圧値または電流値に対応する印加電圧または印加電流に基づき、前記可変絞り機構の流量を制御し、
前記指令入力部より前記出力制御部が前記設定部に設定されている電圧値または電流値に対応する印加電圧または印加電流を流量調整機構へ印加するタイミングを制御可能であり、
高速用のノズルを対象とした前記可変絞り機構と多機能用のノズルを対象とした前記可変絞り機構とが併設されていることを特徴とするマウンタ用エア制御装置。
【請求項2】
可変絞り機構が、異なる用途向けに複数設けられ、用途に応じた流量に設定される請求項1に記載のマウンタ用エア制御装置。
【請求項3】
可変絞り機構が、複数のノズルごとに複数設けられ、ノズルに応じた流量に設定される請求項1又は2に記載のマウンタ用エア制御装置。
【請求項4】
前記マウンタのヘッドモジュールに更に、正圧域とノズルの間に介在して正圧域からノズルに向かうエアの流量を電気的な駆動により変更可能な流量調整機構を搭載し、前記制御手段により、予め定めた印加電圧または印加電流に基づき、前記流量調整機構の流量を制御しつつ、ノズルの真空破壊を行うように構成される請求項1~3の何れかに記載のマウンタ用エア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウンタのヘッドモジュールを通してノズルによるパーツの真空吸着を適切に行えるようにしたマウンタ用エア制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板の実装装置としてマウンタが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
この種のマウンタは、装置内にXY軸方向に移動可能なヘッドモジュールを備え、このヘッドモジュールにノズルを取り付けて、ノズル先端に実装部品(以下、パーツと称する)を吸着、解放させ、プリント基板に実装するように構成される。ヘッドモジュール内には、ノズルをZ軸方向に上下させるためのエアシリンダやサーボモータが備えられている。
【0004】
同文献の図2に基づいてヘッドモジュールの動作を説明すると、真空ポンプ66によるパーツPの吸着後、エア配管68による解放すなわち真空破壊によってパーツPをプリント基板上にマウントする。バルブ62はその際の切替用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-123612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1つのヘッドモジュールには、例えば、1、2、4、8、12、24個のノズルが搭載されており、ノズルそれぞれに、1つずつ、絞り弁がついている。絞り弁の上流は共通のレギュレータを介して正圧域であるエア配管等に接続されている。
【0007】
図9は1つのノズルnに着目して、ヘッドモジュールHM内でノズルnがソレノイドバルブである3ポートバルブbを介して正圧域と負圧域に背反的に接続される構成を示しており、正圧域はエア配管cからレギュレータd及び絞り弁eを介してエアが供給され、吸着時は負圧域である真空ポンプに直接接続されるようになっている。ノズルn、3ポートバルブb及び絞り弁eは、レギュレータdと真空ポンプfの間にノズル数分だけ並列的に設けられている。
【0008】
図10の構成は図9と同様に3ポートバルブbによってノズルnを正圧域又は負圧域に選択的に切り替え可能とした上で、3ポートバルブbの上流にソレノイドバルブである2ポートバルブg又は3ポートバルブhによって3ポートバルブbへのエア供給のオン・オフを行っており、吸着時は負圧域である真空ポンプfに直接接続されている。
【0009】
さらに、図11の構成はノズルnを正圧域に対して断切する2ポートバルブmと、ノズルnを負圧域に対して断切する2ポートバルブkとがノズルnに対して並列的に接続された構成とされており、吸着時は負圧域である真空ポンプfに直接接続されている。
【0010】
このようなヘッドモジュールHMは、大きくは高速、多機能タイプに分類されている。高速タイプは例えばスマートフォン向けの小さなチップ部品実装用に構成され、ノズルnの数は多く、ノズル径は小さく、パーツ吸着後の真空破壊のために供給するエアの流量も少量に設定される。一方、多機能タイプは例えばコネクタなどの比較的大きな異形部品実装用に構成され、ノズルnの数は少なく、ノズル径は大きく、パーツ吸着後の真空破壊のために供給するエアの流量も比較的多く設定される。このため、図8図10の絞り弁e及びレギュレータdの調整はヘッドモジュールHMの用途ごとに異なり、ヘッドモジュールHM自体が用途に応じて高速用、多機能用として複数種類用意されている。
【0011】
しかしながら、パーツ吸着のためのエアの吸い込み量については、従来では初期設定時については考慮されているものの、パーツやノズルの種類毎に対応でききるような配慮はなされていない。
【0012】
ノズルによる吸着は、真空ポンプの負圧値と流路抵抗で、目的の負圧値までの到達時間が決まるため、ノズルやパーツに対してエアの引き込み量が少なければ、所要の真空度に達するまでに時間が掛かり、その結果、タクトが下がるという新たな課題が生じる。逆に、ノズルやパーツに対してエアの引き込み量が多すぎると、引き込み力が強すぎて部品のダメージの原因となるおそれもある。部品にダメージが生じると、歩留まりが低下するだけでなく、再調整のために装置稼働率が低下するという問題も発生する。
【0013】
このような問題に対処するためには、少なくとも高速用・多機能用でそれぞれエアの引き込み量を異ならせたヘッドモジュールを用意する必要があり、ノズル交換に際しても異なる種類のノズルに交換する場合にはエアの引き込み量も再設定する必要があるが、この場合、ヘッドモジュールは極力共通の構成で負圧域からのエアの引き込み量を調整できるようにしておくことが望まれる。
【0014】
さらに、マウンタの稼働中、パーツの変更時などにノズルnの交換が必要となった場合、ノズル交換は装置の稼動を止めずに行われるのが一般的であるが、ヘッドモジュールHMの交換が必要となった場合は、装置を止めて行う必要があり、設備稼働率の低下につながっている。
【0015】
そこで、1つのヘッドモジュールHMで高速用と多機能用を兼用させることが一つの対策として考えられるが、その際には稼働中に実装部品であるパーツの変更やノズルの交換があったときに、ヘッドモジュールHM内において装置の稼動を停止せずにエアの引き込み量を変更できるようにしておくことが更に望ましい。
【0016】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、真空吸着に際し、パーツやノズルに適したエア引き込み量に調整して、パーツにダメージを与えることなくノズルによる確実な保持状態を実現するとともに、装置稼動率も有効に向上させた、従来にはないマウンタ用エア制御装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、以上のような課題を解決するために、次のような手段を講じたものである。
【0018】
すなわち、本発明のエア制御装置は、マウンタのヘッドモジュールに着脱可能に取り付けられるノズルを負圧域に接続し、先端にパーツを吸着させ得るようにしたものであって、前記ヘッドモジュールに可変絞り機構を搭載し、この可変絞り機構によって、前記ノズルから前記負圧域へのエアの引き込み量を調整可能とし、前記可変絞り機構を電気的に制御可能な制御手段を備え、前記制御手段が、前記可変絞り機構を動作させるオン・オフ指令が入力される指令入力部と、予め印加電圧値または印加電流値の設定を行う設定部と、オン・オフ指令を入力されることにより前記設定部に設定されている電圧値または電流値を制御対象に出力する出力制御部と、を備えており、前記制御手段は、前記電圧値または電流値に対応する印加電圧または印加電流に基づき、前記可変絞り機構の流量を制御し、前記指令入力部より前記出力制御部が前記設定部に設定されている電圧値または電流値に対応する印加電圧または印加電流を流量調整機構へ印加するタイミングを制御可能であり、高速用のノズルを対象とした前記可変絞り機構と多機能用のノズルを対象とした前記可変絞り機構とが併設されていることを特徴とする。
【0019】
このようにすると、可変絞り機構でノズルに対するエアの引き込み量を調整できるため、ノズルごとに適切なパーツの真空吸着を行うことができる。このため、1つのヘッドモジュールで適切に取り扱えるパーツやノズルの種類が増え、汎用性の高いものにすることができる。また、マウンタの稼動を停止させずにパーツやノズルの種類に応じたエアの引き込みを行うことができる。このため、設備稼働率も向上させることができる。さらに、流量や圧力を正確にデジタル管理できるうえに、一旦設定を行ったうえでオン・オフ指令により電圧印加または電流印加を行うことで、瞬時に適切な流量制御を実現することが可能となる。
【0022】
或いは、可変絞り機構は、異なる用途向けに複数設けられ、用途に応じた流量に設定されていることも望ましい。
【0023】
このようにすると、可変絞り機構に対して高速用や多機能用などの用途に相応しい引き込み量の制御ができるため、小さい部品に対しては引き込み量を小さく、大きい部品に対しては引き込み量を大きくする流量制御を行うことができる。これにより、ヘッドモジュールの交換を行うことなく汎用性の高い使い方ができ、ヘッドモジュールを共用することによる部品点数の削減とともに、ヘッドモジュールの交換に要していた分、設備稼働率を向上させることが可能となる。
【0024】
可変絞り機構が、複数のノズルごとに複数設けられ、ノズルに応じた流量に設定されるようにすれば、用途が同一か否かによらず、ノズル別に細かい引き込み量の制御を行うことが可能となる。
【0025】
前記マウンタのヘッドモジュールに更に、正圧域とノズルの間に介在して正圧域からノズルに向かうエアの流量を電気的な駆動により変更可能な流量調整機構を搭載し、前記制御手段により、予め定めた印加電圧または印加電流に基づき、前記流量調整機構の流量を制御しつつ、ノズルの真空破壊を行うように構成すれば、流量調整機構でノズルに供給するエアの流量制御ができるため、マウンタの稼動を停止せずにパーツやノズルの種類に応じた真空破壊のための流量調整を行うことができる。したがって、この点においても、1つのヘッドモジュールで適切に取り扱えるパーツやノズルの種類が増え、設備稼働率も向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上、説明した本発明によれば、真空吸着に際し、パーツやノズルに適したエア引き込み量に調整して、高速用のノズルを使用するときも多機能用のノズルを使用するときもパーツにダメージを与えることなくノズルによる確実な保持状態を実現し、また、マウンタの稼動を停止させることなく、パーツやノズルの種類に応じて高速用のノズル又は多機能用のノズルに切り替えてエアの引き込みを行うことで装置稼動率も有効に向上させ、さらに、流量や圧力を正確にデジタル管理できるうえに、一旦印加電圧値や印加電流値の設定を行ったうえで、オン・オフ指令を通じてタイミングを制御しつつ電圧印加または電流印加を行うことで、瞬時に適切な流量制御を実現することを可能とした、新規有用なマウンタ用エア制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明が適用されるマウンタの構成要素であるヘッドモジュールのエア回路構成を示す図。
図2】本発明の第1実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図3】本発明の第2実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図4】本発明の第3実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図5】本発明の第4実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図6】本発明の第5実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図7】本発明の他の実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係るエア制御装置を示す図。
図9】従来のエア制御装置の一例を示す図。
図10】従来のエア制御装置の他の一例を示す図。
図11】従来のエア制御装置の上記以外の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0031】
この実施形態のマウンタ用エア制御装置が適用されるマウンタのヘッドモジュールHMは、図1に示すように、負圧域を構成する真空ポンプ1と正圧域中に配置されるレギュレータ2を搭載しており、レギュレータ2は同じく正圧域の圧縮空気源となるエア配管3に接続されている。ヘッドモジュールHMには、従来の高速用途に適合するノズルn1と、多機能用に適合するノズルn2が取り付け可能とされており、更に、高速用途のノズルn1も径の異なる複数種類が取り付け可能とされ、多機能用途のノズルn2も径の異なる複数種類が取り付け可能とされている。そして、各ノズルn1…、n2…ごとに可変絞り機構4が接続され、可変絞り機構4の真空破壊側の回路は上流を共通のレギュレータ2に並列的に接続されるとともに、吸引側の回路は上流を共通の真空ポンプ1に接続されている。
【0032】
そして、可変絞り機構4には、電気的な駆動によって流量を連続的に変化させ得るものが採用してあり、この可変絞り機構4を制御する制御手段5を設けて、制御手段5から所要の印加電圧または印加電流で絞りを制御するように構成される。また制御手段5は、可変絞り機構4を制御して、パーツ吸着後にノズルn(n1またはn2)に向けたエア供給による真空破壊を行うように構成されている。
【0033】
図2は1つのノズルn(n1あるいはn2)に対してマウンタ用エア制御装置を構成する可変絞り機構4と、この可変絞り機構4を制御する制御手段5とを示しており、可変絞り機構4はノズルnの真空吸引用の絞り弁41によって構成されている。制御手段5はこれ以外にエア供給用の切替弁61も制御するように構成されている。この回路構成は図11の従来例を改良した形となっている。
【0034】
絞り弁41は、負圧域を構成する真空ポンプ1の吸込口に連通する第1ポート41aと、ノズルnに連通する第2ポート41bとの間に作動部41cが介在し、第1の作動位置で両ポート41a、41b間を遮断し、第2の作動位置で両ポート41a、41b間を連通する流量調整機能付きの2ポートバルブによって構成されている。具体的には、この絞り弁41はピエゾ素子を用いた圧電バルブで、ノーマルクローズに設定され、外部からの印加電圧レベルに応じて第1の作動位置と第2の作動位置の間で連続的に作動部41cが変位又は変形することにより流量を可変として、エアの引き込み量を変更する機能を有したものとなっている。このため、この2ポートバルブ41によってノズルnに対するエアの引き込み量を微調整することができる。また、圧電バルブを採用しているため、例えば電磁弁や比例弁に比べて電圧が印加されてからの応答性が素早いという特徴を有している。
【0035】
切替弁61は、正圧域であるエア配管3の吐出口にレギュレータ21及び絞り22を介して連通する第3ポート61aと、ノズルnに連通する第4ポート61bとの間に作動部61cが介在し、第1の切替位置で両ポート61a、61b間を遮断し、第2の切替位置で両ポート61a、61b間を連通する2ポートバルブによって構成される。具体的には、このバルブ61はソレノイドバルブで、ノーマルクローズに設定され、外部からの電圧指令によって作動部61cが第1の切替位置から第2の切替位置に切り替わる。絞り弁22は手動調整の絞り弁であり、装置の稼働中は固定絞りとして用いられる。
【0036】
一方、制御手段5は、圧電バルブ用ドライバ51を具備し、この圧電バルブ用ドライバ51は上位制御装置52に接続されている。
【0037】
圧電バルブ用ドライバ51は、通信入出力部51a、設定入力部51b、設定部51c、指令入力部51d、出力制御部51e、電圧出力回路51fを備えており、上位制御装置52は、ドライバ設定部52aと、バルブ動作指令部52bとを備えている。
【0038】
ドライバ設定部52aは圧電バルブ用ドライバ51の設定部51cに通信入出力部51aを通じて流量設定を行う。また、バルブ動作指令部52bは、バルブのオン・オフ指令を圧電バルブドライバ51とソレノイドバルブ61に入力する。バルブ動作指令部52bにはどのバルブを駆動するかの通信局番が含まれる。
【0039】
通信入出力部51aが、RS485やEthernet、CAN等に代表されるデータ通信による通信手段の場合、圧電バルブ用ドライバ51は、通信入出力部51aに流量の設定データが入力されると、これを設定部51cに書き込む。これにより設定部51cには、ノズルタイプごとの出力電圧設定、通信局番、動作論理が保持される。出力電圧設定は流量(バルブ開度)に関する設定であり、通信局番はどの圧電バルブ41に関する設定かを特定し、動作論理には指令入力部51dの信号に対して同期出力なのかワンショット出力なのかの切替、立ち上がり、立ち下り等の電圧出力波形の設定、ワンショットパルス時間の設定等が行われる。
【0040】
次に、通信入出力部51aが、接点入力のような切替による通信手段を使用する場合について記述する。圧電バルブ用ドライバ51は、設定入力部51bにより、設定部51cに、出力電圧設定、動作論理、同期出力とワンショット出力切替、立ち上がり、立ち下り等の電圧出力波形の設定、ワンショットパルス時間の設定等を書き込む。これら設定値をひとつのグループとし複数記憶される。接点入力のような切替手段により、グループを切り替えることで、データ通信手段よりも高速に設定の切替が行われる。
【0041】
このような構成では、上位制御装置52は先ず、実装部品(パーツ)を吸着する際にソレノイドバルブ61がオフの状態で圧電バルブドライバ51をオンにする。これにより圧電バルブドライバ51は、通信局番に関連づけて設定部51cで設定されている動作論理に従って、対応するノズルnの圧電バルブ41に出力制御部51e及び電圧出力回路51fを介して出力電圧を印加する。このように、印加電圧を決め打ちすることで、ノズル吸引の応答性を早くしている。
【0042】
圧電バルブ41は、印加電圧に応じて作動部41cが連続的に変位し、ノズルの品種に最適な絞りでエアの引き込みを行う。これにより実装部品を吸着したら、次にバルブ動作指令部52bは、圧電バルブ用ドライバ51を通じて圧電バルブ41をオフにするとともにソレノイドバルブ61をオンにする。これにより、エア配管3からのエアがノズルnに到達し、吸着されているパーツを真空破壊によって開放する。開放されたパーツは、対象となるプリント基板上にマウントされる。
【0043】
上位制御装置52では、マウンタのタクトを上げるために、ヘッドモジュールHMが目的の位置に到達するまえに、バルブの遅れや、ノズル先端が目標圧力になるまでの圧力変化の遅れを想定して、ノズルnのXYZ軸の移動と並行してバルブの動作指令を出している。
【0044】
以上のように、本実施形態のマウンタ用エア制御装置は、マウンタのヘッドモジュールHMに着脱可能に取り付けられるノズルnを負圧域を構成する真空ポンプ1に接続し、先端にパーツを吸着させ得るようにしたものであって、ヘッドモジュールHMに可変絞り機構4を搭載し、この可変絞り機構4によって、ノズルnから負圧域へのエアの引き込み量を調整可能としたものである。
【0045】
このようにすると、可変絞り機構4でノズルnに対するエアの引き込み量を調整できるため、ノズルn(n1、n2)ごとに適切なパーツの真空吸着を行うことができる。このため、1つのヘッドモジュールHMで適切に取り扱えるパーツやノズルnの種類が増え、汎用性の高いものにすることができる。
【0046】
特に、可変絞り機構4を電気的に制御可能なものにするとともに、この可変絞り機構4に制御手段5を接続し、この制御手段5により予め定めた印加電圧または印加電流に基づき、可変絞り機構4の流量を制御するようにしているので、マウンタの稼動を停止させずにパーツやノズルnの種類に応じたエアの引き込みを行うことができ、設備稼働率も向上させることができる。
【0047】
また、可変絞り機構4が、異なる用途向けに複数設けられて、用途に応じた流量に設定可能であり、可変絞り機構4に対して高速用や多機能用などの用途に相応しいエアの引き込み量の制御ができるため、小さい部品に対しては引き込み量を小さく、大きい部品に対しては引き込み量を大きくする流量制御を行うことができる。これにより、ヘッドモジュールHMの交換を行うことなく汎用性の高い使い方ができ、ヘッドモジュールHMを共用することによる部品点数の削減とともに、ヘッドモジュールHMの交換に要していた分、設備稼働率を向上させることが可能となる。
【0048】
また、可変絞り機構4が、複数のノズルnごとに複数設けられ、ノズルnに応じた流量に設定されるため、用途が同一か否かによらず、ノズル別に更に細かい引き込み量の制御を行うことが可能となる。
【0049】
さらに、制御手段5が、予め印加電圧値または印加電流値の設定を行う設定部51cと、オン・オフ指令を入力されることにより設定部51cに設定されている電圧値または電流値を制御対象に出力する出力制御部51eとを備えているため、引き込み量や圧力を正確にデジタル管理できるうえに、一旦設定を行ったうえでオン・オフ指令により電圧印加または電流印加を行うことで、瞬時に適切な引き込み量の制御を実現することが可能となる。
【0050】
そして、可変絞り機構4が、流量調整機能付きの圧電バルブを41用いて構成されるため、高速、長寿命なエア制御装置を実現することが可能となる。
<第2実施形態>
【0051】
次に、本発明の第2実施形態を、図3を参照して説明する。なお、第1実施形態と概ね共通する部分には同一符号を付すか或いは一部符合を省略し、説明についても省略する。
【0052】
前記第1実施形態では可変絞り機構4が絞り弁である2ポートバルブ41によって構成されていたが、この実施形態では、可変絞り機構4が絞り弁である3ポートバルブ44によって構成されている点が異なる。この回路構成は図10の従来例を改良した形となっている。
【0053】
すなわち、負圧域を構成する真空ポンプ1とノズルnの間に介在して連続的な絞り調整を行う圧電バルブ44は、ノズルnに対して負圧域を遮断し正圧域であるレギュレータ21等を接続する位置をノーマル状態とし、圧電バルブドライバ51からバルブ動作指令が入力されることによって正圧域を遮断し負圧域とノズルnの間を連続的に絞りを変えながら接続する動作を行う。また、2ポートバルブ45は、レギュレータ21と3ポートバルブ44の間をオンオフする役割を担い、上位制御装置52のバルブ動作指令部52bからの入力によって動作する。
【0054】
このように構成しても、前記各実施形態に準じた作用効果を奏する。
<第3実施形態>
【0055】
次に、本発明の第3実施形態を、図4を参照して説明する。なお、上記実施形態と概ね共通する部分には同一符号を付すか或いは一部符合を省略し、説明についても省略する。
【0056】
前記各実施形態では可変絞り機構4の機能を含んで2つのバルブが採用されていたが、この実施形態では可変絞り機構4に絞り弁である3ポートバルブ46を用い、この3ポートバルブ46に正圧域の切替機能を持たせている点が異なる。この回路構成は図9の従来例を改良した形となっている。
【0057】
すなわち、この3ポートバルブ46はノズルnに対して負圧域を構成する真空ポンプ1を遮断し正圧域を構成するレギュレータ21等を接続する位置をノーマル状態とし、圧電バルブドライバ51からバルブ動作指令が入力されることによって正圧域を遮断し負圧域を連続的に絞りを変えながらノズルnに接続する動作を行う。
【0058】
このように構成しても、前記各実施形態に準じた作用効果を奏する。
<第4実施形態>
【0059】
図5図2の構成を更に変形したもので、エア供給側においてソレノイドバルブ61に代えて圧電バルブ141を用いた構成を示している。図2と概ね共通する部分には同一符号を付すか或いは一部符合を省略し、説明についても省略する。
【0060】
このものは、前記マウンタのヘッドモジュールHMに更に、正圧域とノズルnの間に介在して正圧域からノズルnに向かうエアの流量を電気的な駆動により変更可能な流量調整機構104を搭載し、制御手段5により、予め定めた印加電圧または印加電流に基づき、流量調整機構104を構成する絞り弁141の流量を制御しつつ、ノズルの真空破壊を行うように構成されている。
【0061】
この回路構成も図10の従来例を改良した形となっている。
【0062】
絞り弁141は、正圧域を構成するレギュレータ21の吐出口に連通する第1ポート1141aと、ノズルnに連通する第2ポート141bとの間に作動部141cが介在し、第1の作動位置で両ポート141a、141b間を遮断し、第2の作動位置で両ポート141a、141b間を連通する2ポートバルブによって構成されている。具体的には、この絞り弁141はピエゾ素子を用いた圧電バルブで、ノーマルクローズに設定され、外部からの印加電圧レベルに応じて第1の作動位置と第2の作動位置の間で連続的に作動部141cが変位又は変形することにより流量を可変として、通過するエアの流量を変更する流量調整機能を有したものとなっている。このため、この2ポートバルブ141によってノズルnに供給するエアの流量および圧力を微調整することができる。また、圧電バルブを採用しているため、例えば電磁弁や比例弁に比べて電圧が印加されてからの応答性が素早いという特徴を有している。
【0063】
一方、制御手段5は、圧電バルブ用ドライバ151を具備し、この圧電バルブ用ドライバ151は上位制御装置52に接続されている。
【0064】
圧電バルブ用ドライバ151は、通信入出力部151a、設定入力部151b、設定部151c、指令入力部151d、出力制御部151e、電圧出力回路151fを備えており、上位制御装置52は、ドライバ設定部52aと、バルブ動作指令部52bとを備えている。
【0065】
ドライバ設定部52aは圧電バルブ用ドライバ151の設定部151cに通信入出力部151aを通じて流量設定を行う。また、バルブ動作指令部52bは、バルブのオン・オフ指令を圧電バルブドライバ151に入力する。バルブ動作指令部52bにはどのバルブを駆動するかの通信局番が含まれる。
【0066】
通信入出力部151aが、RS485やEthernet、CAN等に代表されるデータ通信による通信手段の場合、圧電バルブ用ドライバ151は、通信入出力部151aに流量設定データが入力されると、これを設定部151cに書き込む。これにより設定部151cには、ノズルタイプごとの出力電圧設定、通信局番、動作論理が保持される。出力電圧設定は流量(バルブ開度)に関する設定であり、通信局番はどの圧電バルブ141に関する設定かを特定し、動作論理には指令入力部151dの信号に対して同期出力なのかワンショット出力なのかの切替、立ち上がり、立ち下り等の電圧出力波形の設定、ワンショットパルス時間の設定等が行われる。
【0067】
次に、通信入出力部151aが、接点入力のような切替による通信手段を使用する場合について記述する。圧電バルブ用ドライバ151は、設定入力部51bにより、設定部151cに、出力電圧設定、動作論理、同期出力とワンショット出力切替、立ち上がり、立ち下り等の電圧出力波形の設定、ワンショットパルス時間の設定等を書き込む。これら設定値をひとつのグループとし複数記憶される。接点入力のような切替手段により、グループを切り替えることで、データ通信手段よりも高速に設定の切替が行われる。
【0068】
このような構成では、上位制御装置52は先ず、実装部品(パーツ)を吸着する際に第1実施形態で説明したように圧電バルブドライバ51をオンにして所要の制御を行うことによりノズル先端を所要の負圧状態にし、次にパーツを開放する際に圧電バルブドライバ51をオフにするとともに圧電バルブドライバ151をオンにすることにより、圧電バルブドライバ151は、通信局番に関連づけて設定部151cで設定されている動作論理に従って、対応するノズルnの圧電バルブ141に出力制御部151e及び電圧出力回路151fを介して出力電圧を印加する。このように、印加電圧を決め打ちすることで、エア供給の応答性を早くしている。
【0069】
圧電バルブ141は、印加電圧に応じて作動部141cが連続的に変位し、ノズルの品種に最適な流量および圧力でエアを供給する。このエアはノズルnに到達し、吸着されているパーツを真空破壊によって開放する。開放されたパーツは、対象となるプリント基板上にマウントされる。
【0070】
この場合も、上位制御装置52では、マウンタのタクトを上げるために、ヘッドモジュールHMが目的の位置に到達するまえに、バルブの遅れや、ノズル先端が目標圧力になるまでの圧力変化の遅れを想定して、ノズルnのXYZ軸の移動と並行してバルブの動作指令を出している。
【0071】
このように構成すると、マウンタのヘッドモジュールHMに更に、正圧域とノズルnの間に介在して正圧域からノズルnに向かうエアの流量を電気的な制御により変更可能な流量調整機構104を搭載し、制御手段5により、予め定めた印加電圧または印加電流に基づき、流量調整機構104の流量を制御しつつ、ノズルnの真空破壊を行うようにしているため、流量調整機構104でノズルnに供給するエアの流量制御ができ、マウンタの稼動を停止せずにパーツやノズルnの種類に応じて適切な真空破壊のための流量調整を行うことができる。したがって、この点においても、1つのヘッドモジュールで適切に取り扱えるパーツやノズルの種類が増え、設備稼働率も向上させることが可能となる。
【0072】
勿論、このような真空破壊のための制御は、上記第1実施形態~第5実施形態においても併用することができる。
<第5実施形態>
【0073】
次に、本発明の第5実施形態を、図6を参照して説明する。なお、前記各実施形態と概ね共通する部分には同一符号を付すか或いは一部符合を省略し、説明についても省略する。
【0074】
前記各実施形態では、可変絞り機構4の絞り弁が圧電バルブによって構成されていたのに対し、この実施形態の可変絞り機構4は、絞り弁を比例弁47に変更している点が異なる。
【0075】
すなわち、このものは図11に示す従来の回路構成を改良した形であり、2ポートバルブkと真空ポンプ1の間に比例弁47を配置して、ノズルnと負圧域を構成する真空ポンプ1の間の絞りである開度を上位制御装置52のアナログ出力部52cからの出力によって連続的に可変しているものである。ノズルnを正圧域に接続する2ポートバルブmもバルブ動作指令部52bによって制御される。
【0076】
比例弁47をノズルnごとに個別に持たせるとヘッドモジュールHMの重量が増大するうえに、応答性も悪いため瞬時に切替はできないが、ヘッドモジュールHMを共用してマウンタの稼動を停止することなく高速用から多機能用までを賄え、ヘッドモジュールの交換を不要にできる点では、比例弁47を用いても、圧電バルブを用いた上記実施形態に準じた作用効果が奏される。
<その他の実施形態>
【0077】
図7図10に示す従来の回路構成を改良した形であって、3ポートバルブbと真空ポンプ1の間に比例弁48を配置し、アナログ出力部52cによって絞りを連続的に制御するようにしたものである。また、図8図9に示す従来の回路構成を改良した形であって、3ポートバルブbと真空ポンプ1の間に比例弁49を配置し、アナログ出力部52cによって絞りを連続的に制御するようにしたものである。
【0078】
このようにしても、第5実施形態と同様の作用効果が奏される。
【0079】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0080】
例えば、可変絞り機構4に対し、多機能用途、高速用途などのノズルのカテゴリーに関係なく、複数のノズルに対して本発明を適用することで、ノズルに適合した流量制御を行うことが可能である。
【0081】
また、上記実施形態ではノズルnと可変絞り機構4は1対1の関係であったが、図示しないが、複数のノズルに対して1つの可変絞り機構を設け、可変絞り機構その下流に各ノズルに対して方向制御弁(流路制御弁)を設ける構成としても構わない。
【0082】
さらに、上記実施形態では圧電ドライバはヘッドモジュール外に配置しているが、重量やスペースが問題にならなければヘッドモジュールに搭載しても構わない。
【0083】
或いは、上記実施形態では真空ポンプがヘッドモジュールに搭載されているが、真空排気が適切に行われればヘッドモジュール外に配置しても構わない。
【0084】
さらにまた、本実施形態のエア制御装置はマウンタ2に適用されたが、これに限定されず、外観検査機、測定分別機およびテーピング機などに適用されてもよい。
【0085】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0086】
4…可変絞り機構
5…制御手段
51c…設定部
51e…出力制御部
104…流量調整機構
HM…ヘッドモジュール
n…ノズル
n1…ノズル(高速用)
n2…ノズル(多機能用)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11