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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】エンコーダおよびそれを備えた装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/36 20060101AFI20220112BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G01D5/36 W
G01D5/36 X
G01D5/347 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017234851
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019100959
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000104630
【氏名又は名称】キヤノンプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽平
(72)【発明者】
【氏名】松山 和樹
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-013810(JP,A)
【文献】特開2015-215241(JP,A)
【文献】特開2015-187605(JP,A)
【文献】特開2011-215014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/62
G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って周期的に形成された第1のパターンおよび前記第1の方向に沿ってライン状に形成された第2のパターンを有するスケールと、
前記スケールに対する前記第1の方向に沿う相対移動が可能であるとともに、複数の読み取り素子で前記第1のパターンおよび前記第2のパターンを読み取ることで、前記第1のパターンの周期に応じた周期信号および前記複数の読み取り素子から出力される信号の和信号を出力する検出部と、
前記周期信号に基づいて、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向における位置情報を算出する信号処理部と、
前記スケールに光を射出する光源と、
前記光源の電流値を検出する電流検出部と、を有し、
前記信号処理部は、前記スケールと前記検出部との位置関係が第1の状態である場合の、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向における位置情報、前記複数の読み取り素子から出力される信号の和信号、および前記光源の電流値、並びに前記スケールと前記検出部との位置関係が前記第1の状態とは異なる第2の状態である場合の、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向における位置情報、前記複数の読み取り素子から出力される信号の和信号、および前記光源の電流値に基づいて、前記スケールに対する前記検出部の傾きを算出することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記傾きに基づいて、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向における位置情報を補正することを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記複数の読み取り素子は、前記第2のパターンを読み取るための互いに異なる4つの検出領域を含み、
前記信号処理部は、前記和信号における、前記第2のパターンを読み取るための前記4つの検出領域のそれぞれから出力される信号の割合に基づいて、前記傾きの方向を取得することを特徴とする請求項1または2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記傾きおよび前記傾きの方向に基づいて、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向に垂直な第2の方向における位置情報を算出することを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記スケールに対する前記検出部の傾きに対応する補正値を記憶する記憶部を更に有し、
前記信号処理部は、前記記憶部に記憶された補正値に基づいて、前記スケールと前記検出部との前記第1の方向における位置情報を補正することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記第2のパターンは、原点検出パターンを有し、
前記検出部は、前記第2のパターン上の前記原点検出パターンに応じた原点信号を検出し、
前記信号処理部は、前記検出部が検出した前記原点信号から原点位置を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記エンコーダは、アブソリュート型のエンコーダであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のエンコーダと、
前記スケールおよび前記検出部の一方とともに移動する可動部材と、
前記スケールおよび前記検出部の他方を固定する固定部材と、を有することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダおよびそれを備えた装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンコーダは、所定のピッチで設けられた周期パターンを有するスケールと、スケールとの相対移動に伴い、周期パターンに応じた周期信号を出力するセンサとにより構成され、可動部材の位置や速度を検出する手段として使用される。エンコーダには、1つの周期パターンから互いに位相が異なる2つの周期信号(2相信号)を生成し、それらの周期数と位相とからスケールとセンサとの相対位置を検出するインクリメンタルエンコーダがある。また、エンコーダには、互いに周期が異なる複数の2相信号から、スケールまたはセンサの絶対位置を検出するアブソリュートエンコーダがある。
【0003】
従来のエンコーダでは、スケールやセンサの取り付けなどによりスケールとセンサとの相対位置にずれが生じると、検出位置の誤差が大きくなり、エンコーダの位置検出精度が劣化する。
【0004】
特許文献1には、スケール上に調整用マークを設け、調整用マークからの受光量の変化で移動方向におけるスケールのずれを検出し、補正するエンコーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-13810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のエンコーダは、発光素子の発光量が変化する場合、スケールのずれを検出できない。
【0007】
本発明は、高精度に相対位置を取得可能なエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのエンコーダは、第1の方向に沿って周期的に形成された第1のパターンおよび第1の方向に沿ってライン状に形成された第2のパターンを有するスケールと、スケールに対する第1の方向に沿う相対移動が可能であるとともに、複数の読み取り素子で第1のパターンおよび第2のパターンを読み取ることで、第1のパターンの周期に応じた周期信号および複数の読み取り素子から出力される信号の和信号を出力する検出部と、周期信号に基づいて、スケールと検出部との第1の方向における位置情報を算出する信号処理部と、スケールに光を射出する光源と、光源の電流値を検出する電流検出部と、を有し、信号処理部は、スケールと検出部との位置関係が第1の状態である場合の、スケールと検出部との第1の方向における位置情報、複数の読み取り素子から出力される信号の和信号、および光源の電流値、並びにスケールと検出部との位置関係が第1の状態とは異なる第2の状態である場合の、スケールと検出部との第1の方向における位置情報、複数の読み取り素子から出力される信号の和信号、および光源の電流値に基づいて、スケールに対する検出部の傾きを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精度に相対位置を取得可能なエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のエンコーダの構成を示す概略図である。
図2】実施例1のエンコーダを図1の左側から見た図である。
図3】実施例1の受光部の構成を示す図である。
図4】実施例1の第1のセンサのブロック図である。
図5】実施例1の第2のセンサのブロック図である。
図6】実施例1の各位置における光源の電流値、センサの出力値、および受光信号を示すグラフである。
図7】実施例1の電流検出部のブロック図である。
図8】実施例1のスケールに対する検出部の傾きの算出方法を示すフローチャートである。
図9】実施例2のエンコーダの構成を示す概略図である。
図10】実施例2のスケールに対する検出部の傾きの検出方法を示すフローチャートである。
図11】実施例3のエンコーダの構成を示す概略図である。
図12】実施例4のエンコーダの構成を示す概略図である。
図13】実施例4のバーニア信号とスケール位置との関係を示す図である。
図14】実施例5のエンコーダの構成を示す概略図である。
図15】実施例5のセンサのブロック図である。
図16】実施例6の本発明のエンコーダを搭載したリニアステージの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例のエンコーダ100の構成を示す概略図である。エンコーダ100は、可動部材(不図示)に取り付け可能なスケール101、固定部材(不図示)に取り付け可能な検出部104および信号処理部108を有する。エンコーダ100は、スケール101と検出部104との相対位置を検出する光学反射型エンコーダである。以下の説明では、スケール101と検出部104とが相対移動する方向(相対移動方向)をX方向(第1の方向)とする。なお、本実施例ではエンコーダ100は光学反射型エンコーダであるが、本発明は光学透過型エンコーダにも適用可能である。また、本実施例のエンコーダ100はインクリメンタル型のエンコーダであるが、本発明はアブソリュート型のエンコーダにも適用可能である。また、スケール101と検出部104とが相対的に移動可能に構成されていれば、スケール101を固定部材に取り付け、検出部104を可動部材に取り付けてもよい。すなわち、スケール101および検出部104の一方が可動部材に取り付けられ、他方が固定部材に取り付けられていればよい。
【0013】
スケール101は、第1のパターン102および第2のパターン103を有する。第1のパターン102は、X方向に沿って周期的に交互に配置された反射部(図中の黒色部分)と非反射部(図中の白抜き部分)とにより構成された周期パターンであり、スケール101および検出部104のX方向の相対変位を算出するために使用される。第2のパターン103は、X方向に沿って第1のパターン102に平行に延びるライン状のパターンであり、スケール101に対する検出部104の傾き(図中のθ)を算出するために使用される。第1のパターン102は第2のパターン103を基準として設けられたパターンであり、第1のパターン102の反射部は第2のパターン103に垂直に形成されている。
【0014】
図2は、エンコーダ100を図1の左側から見た図である。検出部104は、第1のセンサ105、第2のセンサ106および光源107を有する。光源107は、本実施例では、LEDなどの発光素子により構成され、スケール101に光を射出する。第1のセンサ105は、光源107から射出されて第1のパターン102で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部113を有する。第2のセンサ106は、光源107から射出されて第2のパターン103で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部114を有する。
【0015】
図3(a)および図3(b)はそれぞれ、受光部113および受光部114の構成を示している。受光部113および受光部114の複数の光電変換素子は、X方向に沿って一定のピッチで配置されている。スケール101と検出部104とが相対移動すると、相対移動に応じて各光電変換素子で受光する反射光の強度が変化する。本実施例では、各光電変換素子は、A(+)、B(+)、A(-)、B(-)の4つの信号のいずれかを出力する。
【0016】
スケール101から光源107までの距離は、スケール101から受光部113および受光部114までの距離と等しい。そのため、スケール101により形成される反射像は、受光部113および受光部114では、X方向およびY方向において2倍に拡大される。第2のパターン103のY方向幅は、受光部114のY方向幅の1/2である。
【0017】
図4は、第1のセンサ105のブロック図である。図4では、簡略化のために、A(+)の属性を持つPD(Photodiode)アレイを1つのPDとして扱う。同様に、B(+)、A(-)、B(-)の属性を持つPDアレイをそれぞれ、1つのPDとして扱う。各PDにより電流に変換された信号は、4つのI-V変換アンプ115-118により電圧変換信号S(A+)、S(B+)、S(A-)、S(B-)に変換される。
【0018】
4つの正弦波信号である電圧変換信号S(A+)、S(B+)、S(A-)、S(B-)の相対位相は、検出ピッチに対し、S(A+)を基準(0°)とすると、S(B+)、S(A-)、S(B-)はそれぞれ90°、180°、270°ずれている。
【0019】
差動アンプ119、120はそれぞれ、以下の式(1)、(2)で表される演算を行い、各PDが持つ直流成分を除去し、互いに90度位相が異なる2相の正弦波信号(以下、2相信号という)を生成する。
【0020】
【数1】
【0021】
比較アンプ121は、電圧変換信号S(A+)、S(B+)、S(A-)、S(B-)の和信号の値と所定値Vf3とを比較し、光源107の発光量を制御する機能(以下、オートパワーコントロール機能)を有する。電圧変換信号の和信号が変化すると、光源107に流れる電流量が変化し、光源107の発光量が変動する。光源107の発光量は、光源107に流れる電流量に比例する。比較アンプ121は、電圧変換信号の和信号の値が所定値Vf3より大きい場合、光源107の発光量を小さくするために光源107に流れる電流量を大きくする。また、比較アンプ121は、電圧変換信号の和信号が所定値Vf3より小さい場合、光源107の発光量を大きくするために光源107に流れる電流量を小さくする。比較アンプ121は、電圧変換信号の和信号の値が所定値Vf3とほぼ等しくなるまで上記制御を繰り返す。なお、I-V変換アンプ115-118が反転アンプであるため、電圧変換信号の和信号の値と光源107の発光量との関係は逆転している。
【0022】
図5は、第2のセンサ106のブロック図である。第1のセンサ105と同様の構成については、説明を省略する。比較アンプ128は、以下の式(3)を用いて、I-V変換アンプ122-125により変換された電圧変換信号S(A+)、S(B+)、S(A-)、S(B-)の和信号SUMを算出する。
【0023】
【数2】
【0024】
第1のセンサ105は、2相信号S(A)、S(B)を信号処理部108に出力する。第2のセンサ106は、差動アンプ126、127によりそれぞれ生成された2相信号S(A)、S(B)、および和信号SUMを信号処理部108に出力する。
【0025】
和信号SUMは、図6(b)の点線で表されるように、取り付けに起因する位置ずれがない場合、スケール101と検出部104との相対位置に関わらず一定である。和信号SUMは、図6(b)の実線で表されるように、取り付けに起因する位置ずれがある場合、特に検出部104がスケール101に対してZ軸周りで回転し傾いている場合、スケール101と検出部104との相対位置の変化に伴って変化する。また、傾きθの方向により、信号A(+)、B(+)、A(-)、B(-)の受光量の割合が異なる。そのため、第2のセンサ106から出力された2相信号S(A)、S(B)を比較することで、スケール101に対する検出部104の傾きθの方向を取得し判定することができる。言い換えると、和信号SUMにおける複数の光電変換素子の出力の割合に基づいて、検出部104の傾きθの方向が取得される。
【0026】
信号処理部108は、信号取得部109、電流検出部110、演算部111および記憶部112を有する。
【0027】
信号取得部109は、本実施例では、フィルタ回路、信号増幅回路およびA/D変換器などの回路で構成され、検出部104から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。信号取得部109は、FPGA(field-programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)などで構成されてもよい。
【0028】
電流検出部110は、本実施例では、フィルタ回路、信号増幅回路およびA/D変換器などの回路で構成されている。図7は、電流検出部110のブロック図である。電流検出部110は、差動アンプ129により光源107に流れている電流値を電圧値に変換し、電圧値に変換されたアナログ値をA/D変換器でデジタル値に変換する。電流検出部110は、FPGAやASICなどで構成されてもよい。
【0029】
演算部111は、本実施例では、CPUなどの素子、およびFPGAやASICなどの回路で構成される。演算部111は、信号取得部109により取得された第1のセンサ105から出力された2相信号S(A)、S(B)に対して逆正接演算を行い、2相信号の位相を算出する。具体的には、位相φ(0-2π)は、以下の式(4)により算出される。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、ATAN2(X、Y)は、象限を判別して位相が0-2πに変化する逆正接演算関数である。位相φの変化量を累積することで、スケール101と検出部104とのX方向における相対変位(位置情報)を算出することができる。相対変位とは、電源投入時の位置(基準位置)に対する位置の変位である。第1のパターン102のピッチをPx、累積位相変化量をΔφとすると、X方向の相対変位ΔXは以下の式(5)により算出される。
【0032】
【数4】
【0033】
演算部111は、第1および第2の位置における和信号、第1のセンサ105から出力された2相信号に基づいて算出された相対変位、および光源107の電流値からスケール101に対する検出部104の傾きθを算出する。第2のセンサ106から出力された和信号をSUM、光源107の電流値をI_LEDとすると、演算部111は以下の式(6)を用いて受光信号S_SUMを算出する。
【0034】
【数5】
【0035】
和信号SUMを電流値I_LEDで規格化した受光信号S_SUMを用いることで、図6(a)の実線に示されるように光源107の発光量が変動しても、図6(c)の実線に示されるように発光量変動による変化分をキャンセルすることができる。なお、オートパワーコントロール機能を有さないセンサにおいては、電流値I_LEDによる規格化は行わず、和信号SUMをそのまま用いてもよい。
【0036】
第1の位置におけるX方向の相対変位および受光信号をΔX1、S_SUM1、第2の位置におけるX方向の相対変位および受光信号をΔX2、S_SUM2とすると、傾きθは以下の式(7)により算出される。
【0037】
【数6】
【0038】
ここで、ATAN(X、Y)は、逆正接演算関数である。なお、傾きθは、θ≒tanθの近似を用いて、以下の式(8)により算出されてもよい。
【0039】
【数7】
【0040】
演算部111は、算出された傾きθに基づいて、X方向の相対変位ΔXを補正する。具体的には、相対変位をΔX×cosθとする。なお、算出された傾きθに対応した補正値を記憶部112にあらかじめ記憶しておいてもよい。あらかじめ記憶部112に補正値を記憶させておくことで、演算処理を短縮することができる。なお、演算部111は、傾きθおよびX方向における相対変位ΔXを用いてY方向の相対変位を算出してもよい。具体的には、相対変位をΔX×sinθとする。
【0041】
記憶部112は、本実施例では、ROM、RAMおよびハードディスクなどの記憶媒体から構成され、信号取得部109で取得した各センサのデジタル信号、電流検出部110で取得した光源107の電流値、および演算部111の演算結果を記憶する。また、記憶部112は、演算部111に実行させるプログラムを保存可能である。ただし、プログラムが保存されるのは、不揮発性記憶媒体である。なお、記憶部112は、1つの記憶媒体から構成されるだけではなく、複数の記憶媒体から構成されてもよい。
【0042】
図8は、本実施例のスケール101に対する検出部104の傾きの算出方法を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS100では、信号処理部108は、傾き検出位置(第2の位置)および傾きの限界値を設定する。設定された情報は、記憶部112に記憶される。本実施例では、検出部104が第1のパターン102からの反射光を受光できなくなる角度が傾きの限界値として設定される。算出された傾きが設定された傾きの限界値を超えた場合、スケール101および検出部104の取り付け位置の調整が必要となる。
【0044】
ステップS101では、演算部111は、検出動作開始時の位置(第1の位置)における相対変位と受光信号を取得する。このときのスケール101と検出部104との位置関係を第1の状態とする。取得された情報は、記憶部112に記憶される。
【0045】
ステップS102では、ステップS100で設定された位置に、スケール101を移動させる。
【0046】
ステップS103では、演算部111は、ステップS102で移動した位置における相対変位と受光信号を取得する。
【0047】
ステップS104では、演算部111は、ステップS101で記憶部112に記憶された検出動作開始時の位置における相対変位と受光信号、およびステップS103で取得された相対変位と受光信号からスケール101に対する検出部104の傾きを算出する。このときのスケール101と検出部104との位置関係を第2の状態とする。
【0048】
ステップS105では、信号処理部108は、ステップS104で算出された傾きがステップS100で設定された傾きの限界値より大きいかどうかを判定する。大きいと判定された場合、ステップS107に進み、小さいと判定された場合、ステップS106に進む。なお、ステップS104で算出された傾きが傾きの限界値と等しい場合、どちらのステップに進むかは任意に設定可能である。
【0049】
ステップS106では、記憶部112は、算出された傾きを記憶する。記憶部112に記憶された傾きは、以後の相対変位の補正に用いられる。
【0050】
ステップS107では、信号処理部108は、エラー信号を出力する。
【0051】
以上説明したように、本実施例では、第1のパターン102を用いて算出された相対変位、傾き検出用の第2のパターン103を用いて取得された和信号および光源107の電流値に基づいて、スケール101に対する検出部104の傾きを高精度に算出可能である。そのため、オートパワーコントロール機能により光源107の発光量が変動した場合でも、算出された傾きを用いて相対変位を補正することで、高精度に相対変位を取得することが可能である。
【実施例2】
【0052】
図9は、本実施例のエンコーダ200の構成を示す概略図である。実施例1のエンコーダ100の構成と同様の構成については、説明を省略する。
【0053】
エンコーダ200では、第2のパターン103上に原点検出パターン201が設けられている。原点検出パターン201を用いて原点位置を検出することで、原点位置を基準とした位置検出が可能となる。
【0054】
信号処理部202は、原点検出部204を有する。原点検出部204は、本実施例では、CPUなどの素子、およびFPGAやASICなどの回路で構成され、信号取得部109が取得した第2のセンサ106の出力信号に基づいて原点位置を検出する。原点検出部204は、例えば、第2のセンサ106から出力された2相信号S(A)、S(B)の振幅信号を算出し、算出した振幅信号から原点位置を検出する。演算部203は、原点検出部204による原点位置検出が行われると、累積位相変化量を0にリセットする。なお、原点検出部204の原点検出方法や演算部203の上記処理方法は本実施例で説明した方法に限らず、別の方法であってもよい。例えば、原点検出では、2相信号S(A)、S(B)から算出した位相信号から原点位置を検出してもよい。また、絶対位置の演算では、原点位置検出時の相対変位を記憶部112に記憶しておき、各位置における相対変位と原点位置における相対変位との差分を求めるようにしてもよい。
【0055】
図10は、本実施例のスケール101に対する検出部104の傾きの検出方法を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS200では、信号処理部202は、原点位置検出完了後の傾き検出位置および傾きの限界値を設定する。設定された情報は、記憶部112に記憶される。
【0057】
ステップS201では、スケール101を移動させる。
【0058】
ステップS202では、信号処理部202は、原点検出部204の出力信号に基づいて、原点検出部204により原点位置が検出されたかどうかを判定する。原点位置が検出されたと判定した場合、ステップS203に進み、原点位置が検出されていないと判定した場合、ステップS201に戻る。
【0059】
ステップS203では、演算部203は、相対変位を0にリセットし、原点位置における相対変位(0)と受光信号を取得する。取得された情報は、記憶部112に記憶される。
【0060】
ステップS204では、原点位置を基準として、ステップS200で設定された傾き検出位置に、スケール101を移動させる。
【0061】
ステップS205では、演算部203は、ステップS204で移動した位置における相対変位と受光信号を取得する。
【0062】
ステップS206では、演算部203は、ステップS203で記憶部112に記憶された原点位置における相対変位と受光信号、およびステップS205で取得された相対変位と光信号からスケール101に対する検出部104の傾きを算出する。
【0063】
ステップS207からステップS209の処理はそれぞれ、図8のステップS105からステップS107の処理と同様である。
【0064】
本実施例では、原点位置からの相対変位を高精度に検出することが可能である。また、傾き検出後に原点位置検出を行うことで、原点位置を高精度に検出することが可能である。
【0065】
なお、本実施例では、第1のセンサ105および第2のセンサ106は、部品の共通化が図れ、コストダウンにもつながるなどの利点が多いため、同一種類のセンサであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2のセンサ106として、原点位置検出に最適化された第1のセンサ105とは異なる種類のセンサを用いてもよい。
【実施例3】
【0066】
図11は、本実施例のエンコーダ300の構成を示す概略図である。実施例1や実施例2のエンコーダと同様の構成については、説明を省略する。
【0067】
本実施例では、第2のセンサ302が第1のセンサ105に対して90°傾いている。第2のパターン301のY方向幅は、受光部303のY方向幅の1/2である。スケール101は、本実施例では1つの第2のパターン301を有するが、複数の第2のパターン301を有してもよい。スケール101に複数の第2のパターン301が設けられる場合、複数の第2のパターン301の各ピッチは受光部303の複数の光電変換素子の各ピッチの1/2であることが好ましい。複数の第2のパターン301を設けることで、第2のセンサ302から出力される2相信号の位相に基づいてY方向の相対変位を算出することができる。
【0068】
原点検出部305は、信号取得部109が取得した第2のセンサ302の出力信号に基づいて原点位置を検出する。原点検出パターン201付近では、第2のセンサ302から出力される和信号が減少する。原点検出部305は、第2のセンサ302から出力される和信号の値とあらかじめ設定された値とを比較することで原点位置を検出する。検出された原点位置は、記憶部112に記憶される。
【0069】
演算部203は、第2のセンサ302から出力される2相信号の振幅に基づいてY方向の相対変位を検出してもよい。Y方向の相対変位の方向は、2相信号の振幅の大小を比較することで判定することができる。
【0070】
本実施例では第2のセンサ302を第1のセンサ105に対して90°傾けているが90°に限らず、第2のパターン301の反射光が第2のセンサ302の受光部303で受光可能ならどのような角度でもよい。
【0071】
なお、本実施例では、小型化やコストダウンにもつながるなどの利点が多いため、光源を1つとしているが、第2のパターン検出用に別途光源を設けてもよい。
【0072】
また、傾き検出用としての第2のセンサ302とは別に原点検出用のセンサを設けてもよい。各センサは、同一種類のセンサではなく、それぞれ最適化された異なる種類のセンサであってもよい。
【実施例4】
【0073】
図12は、本実施例のエンコーダ400の構成を示す概略図である。エンコーダ400は、アブソリュートエンコーダに好適である。実施例1-3のエンコーダと同様の構成については、説明を省略する。
【0074】
スケール101は、第1のパターン401、第2のパターン402および第3のパターン403を有する。第1のパターン401および第2のパターン402は、互いに周期の異なる周期P1、P2で形成され、スケール101および検出部404のX方向の絶対変位を算出するために使用される。第3のパターン403は、第1のパターン401と第2のパターンとの間に設けられ、X方向に沿って延びるライン状のパターンであり、スケール101に対する検出部404の傾きを算出するために使用される。第1のパターン401および第2のパターン402は第3のパターン403を基準として設けられたパターンであり、第1のパターン401および第2のパターン402の反射部は第3のパターン403に垂直に形成されている。
【0075】
周期P1と周期P2は互いにわずかに異なり、第1のパターン401および第2のパターン402を用いて取得された信号間の位相差を演算することにより元の信号とは異なる周期信号を取得することができる。周期P1および周期P2は、バーニア演算により所望の周期信号が得られるように設定される。
【0076】
本実施例では、スケール101の総ストロークは400×P1μmであり、周期P2はP1×(400/399)μmである。このように、周期P1と周期P2の比は整数倍からわずかにずれている。各パターンの周期およびスケール101の総ストロークはこれらに限定されず、他の値でもよい。
【0077】
検出部404は、第1のセンサ405、第2のセンサ406、第3のセンサ407および光源107を有する。第1のセンサ405は、光源107から射出されて第1のパターン401で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部408を有する。第2のセンサ406は、光源107から射出されて第2のパターン402で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部409を有する。第3のセンサ407は、光源107から射出されて第3のパターン403で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部410を有する。
【0078】
演算部412は、第1および第2の位置における第3のセンサ407から出力された和信号、第1のセンサ405から出力された2相信号に基づいて算出された相対変位、および光源107の電流値からスケール101に対する検出部404の傾きθを算出する。
【0079】
演算部412は、以下の式(9)、(10)を用いて、信号取得部109により取得された第1のセンサ405および第2のセンサ406から出力された各2相信号S(A)、S(B)に対して逆正接演算を行い、2相信号の位相φ2、φ3を算出する。なお、受光部408、409の光電変換素子のピッチがそれぞれ周期P1、P2と異なる場合、各2相信号間の位相差補正処理を行うことが好ましい。
【0080】
【数8】
【0081】
演算部412は、以下の式(11)を用いてバーニア演算を行い、バーニア信号Svを算出する。
【0082】
【数9】
【0083】
ここで、バーニア信号Svが0より小さい場合、演算部412は、Sv=Sv+2πの演算を行い、0-2πの出力範囲に変換する。図13に示されるように、バーニア信号Svに対するスケール位置は一意に決まるため、スケール位置の絶対位置を取得することが可能になる。また、バーニア信号Svのみで絶対位置を取得可能であるが、より高精度に絶対位置を取得するために、位相信号との同期処理を行ってもよい。
【0084】
本実施例によれば、算出した傾きを用いてスケールと検出部の位置を調整することで、高精度に絶対位置を取得可能である。
【実施例5】
【0085】
図14は、本実施例のエンコーダの構成を示す概略図である。実施例1-4のエンコーダと同様の構成については、説明を省略する。
【0086】
本実施例では、第1のパターン102は、第2のパターン103に重なるように形成されている。本実施例では第1のパターン102の端部に第2のパターン103が形成されているが、本発明はこれに限定されない。また、スケール101は、複数の第2のパターン103を有していてもよい。
【0087】
検出部501は、センサ502および光源107を有する。センサ502は、光源107から射出されて第1のパターン102および第2のパターン103で反射した光に対し、光電変換を行う複数の光電変換素子からなる受光部505を有する。
【0088】
図15は、センサ502のブロック図である。比較アンプ512は、I-V変換アンプ506-509により変換された電圧変換信号S(A+)、S(B+)、S(A-)、S(B-)の和信号の値と所定値Vf3とを比較する。センサ502は、差動アンプ510、511によりそれぞれ生成された2相信号S(A)、S(B)、および比較アンプ512の比較結果Vgを信号処理部503に出力する。
【0089】
信号処理部503の演算部504は、以下の式(12)を用いて、比較結果Vgおよび光源107の電流I_LEDから受光信号S_SUMを算出する。
【0090】
【数10】
【0091】
本実施例の構成により、エンコーダ500を小型化することができる。
【実施例6】
【0092】
図16は、本発明のエンコーダを搭載したリニアステージ600の外観である。リニアステージ600は、スケール101、モータ601、ボールねじ602、ステージ603、エンコーダ604およびコントローラ605を有する。
【0093】
ボールねじ602は、モータ601の回転駆動を直動に変換し、モータ601の回転量に応じて、ステージ603を図中の矢印に沿って移動させる。スケール101はステージ603の側面に貼り付けられ、エンコーダ604はスケール101を読み取り可能に取り付けられている。スケール101は、傾き検出に用いられるパターン102および原点検出パターン201を有する。エンコーダ604は、光学反射型エンコーダであり、光源(不図示)および信号処理部(不図示)を有する。エンコーダ604は、スケール101との相対変位に応じて出力する2相信号を位置信号に変換し、これをコントローラ605に出力する。コントローラ605は、エンコーダ604から出力された信号に基づいてステージ603の変位を検出するとともに、モータ601の回転量を制御することでステージ603の位置制御を行う。
【0094】
本実施例では、電源投入時、基準位置である原点位置およびスケール101に対するエンコーダ604の傾きを検出するために、ステージ603を駆動させる。エンコーダ604は、原点位置を検出すると、原点信号をコントローラ605に出力する。コントローラ605は原点信号を受信すると、ステージ603が原点位置に位置していると認識し、この時点での検出位置を0にリセットする。その後、コントローラ605は、スケール101に対するエンコーダ604の傾きを検出するために、ステージ603を駆動させる。ステージ603があらかじめ設定された距離を移動した後、エンコーダ604はスケール101に対するエンコーダ604の傾きを算出し、算出した傾きを記憶部(不図示)に記憶させる。記憶された傾きは、コントローラ605に出力される相対変位の補正に用いられる。その後、コントローラ605は、取り付けによる誤差を軽減した相対変位を取得可能になり、ステージ603のより正確な制御を行うことができる。また、算出された傾きがあらかじめ設定された値より大きい場合、エンコーダ604はコントローラ605にエラー信号を出力する。コントローラ605は、エンコーダ604からエラー信号を受信すると、ステージ603の駆動を終了させ、エラーを出力する。エラーが出力された場合、算出された傾きに基づいて、スケール101およびエンコーダ604の取り付け位置が調整される。
【0095】
本実施例では、ステージにエンコーダを用いた場合について説明したが、本発明のエンコーダは、傾き位置を検出し調整するステージ装置以外の各種装置にも好適である。例えば、撮像装置のフォーカス制御に用いたり、半導体デバイスの実装装置であるダイボンダの位置制御に用いたりすることができる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
100 エンコーダ
101 スケール
102 第1のパターン
103 第2のパターン
104 検出部
107 光源
108 信号処理部
110 電流検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16