(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】コンクリート養生テープ
(51)【国際特許分類】
C04B 40/04 20060101AFI20220112BHJP
E01C 7/12 20060101ALI20220112BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C04B40/04
E01C7/12
E04G21/02 104
(21)【出願番号】P 2018013709
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川島 健治
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-207186(JP,A)
【文献】特開2007-077754(JP,A)
【文献】特開平09-158472(JP,A)
【文献】特開2001-317204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
E01C
E04G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層および粘着層を有するコンクリート養生テープであって、
基材層が補強層と
、樹脂発泡シートからなる断熱層とを含有し、
補強層が、ネット状シート、スパンボンド不織布およびフィルムから選択される、表面凹凸が0.5mm以下のシート材であって、
断熱層の粘着層側とは反対側に補強層が設置された、
5N引張荷重時の伸度が20%以下であるコンクリート養生テープ。
【請求項2】
剛軟度が4~25cmとなる、請求項1に記載のコンクリート養生テープ。
【請求項3】
基材層が非透水性フィルムをも含有する請求項1または2に記載のコンクリート養生テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート養生テープに関し、詳しくは、道路、空港舗装、広場、工場内舗装等における土木建築工事で打設されたコンクリートの養生に用いられるコンクリート養生テープに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート工事において、コンクリートの養生は、打設後の所定期間、コンクリートの表面の湿度及び温度を適切な状態に保つとともに、外気温度による寒暖差、日射、風等からコンクリートの表面を保護するものであり、コンクリートの表面の品質を向上させるために重要である。
【0003】
例えば、養生のため用いられている筵や樹脂シートの場合は、施工対象が壁面や天井面に対する養生がしにくく、貼付時の作業効率が悪いという問題を抱えていた。そのため、貼付時の作業性に優れる粘着剤層を有する養生テープが特許文献1に提案されている。しかしながら、日射によりコンクリート表面の温度が高くなり、コンクリート内部との温度差によりヒビ割れが生じる虞があった。また、日射により粘着剤層が劣化し、養生後剥離する際に糊残りが発生する虞もあった。また、施工時にコンクリート養生テープにシワの発生がしやすく、コンクリート養生テープとコンクリートの間に気泡が入りやすいためコンクリートの養生が不均一となり、コンクリートの表面が斑状になるだけでなく耐久性に劣る虞もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の問題を解決するものであり、養生中の保湿性だけでなく、施工性、断熱性、耐劣化およびコンクリート表面品位に優れるコンクリート養生テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材層および粘着層を有するコンクリート養生テープであって、基材層が補強層と、樹脂発泡シートからなる断熱層とを含有し、補強層が、ネット状シート、スパンボンド不織布およびフィルムから選択される、表面凹凸が0.5mm以下のシート材であって、断熱層の粘着層側とは反対側に補強層が設置された、5N引張荷重時の伸度が20%以下であるコンクリート養生テープである。
【0007】
また、コンクリート養生テープの剛軟度が、4~25cmであることが好ましい。
【0008】
また、基材層が非透水性フィルムをも含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンクリート養生テープは、養生中の保湿性だけでなく、施工性、断熱性、耐劣化およびコンクリート表面品位に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の一例であるコンクリート養生テープを示す断面模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の他の例であるコンクリート養生テープを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のコンクリート養生テープは、補強層及び断熱層を含む基材層および粘着層を有し、5N引張荷重時の伸度が20%以下であるため、養生時に粘着層がコンクリート表面に密着して水分を逃がしにくくなることから保湿性に優れ、養生時の貼付時にシワや気泡が入り難くなることから施工性に優れる。また、強く引っ張った場合でも切れにくく、貼付時および撤去時の作業がしやすい。また、コンクリート養生テープは、断熱層を含んでいるため、夏季の日射や冬季の冷気による影響、更には昼夜の温度差の影響を受けにくく、コンクリート表面の収縮、膨張によるヒビ割れを生じにくく、また、日射熱による粘着層の耐劣化にも優れる。
なお、本発明のコンクリート養生テープは、タテ方向(以下、長手方向ともいう)、ヨコ方向(以下、短手方向ともいう)の双方において、5N引張荷重時の伸度が20%以下である。
【0012】
図1に本発明のコンクリート養生テープ1の一例を示している。本発明のコンクリート養生テープ1は、
図1に示すように、基材層2および粘着層3を有し、基材層2は、補強層5と断熱層4を含有している。
【0013】
粘着層3は、コンクリート養生テープ1をコンクリートに接着するための層であり、コンクリート等への密着が良好で、日射熱や紫外線による劣化が小さく、湿潤状態になっても剥がれず粘着(密着)性を維持し、再剥離性がある粘着樹脂が好ましい。粘着樹脂としては、ポリオレフィン系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、シリコーン系、天然・合成ゴム系のいずれかの粘着樹脂が挙げられるが、なかでもポリアクリル系樹脂は添加剤が混入しやすいため、上記性能の調整がしやすく、加工性も良好であるため、加工性の面で好ましい。また、コンクリート打設後の水分を含んだコンクリート面への粘着性を発揮するためにも親水性のある接着樹脂を用いれば、より効率的に粘着性を発揮できる。
【0014】
なお、粘着層3のコンクリートへの粘着力は、2~10N/cmの範囲が好ましい。2N/cm以上であれば養生時に、天井面や壁面であっても被覆状態を保ちやすく、10N/cm以下であれば養生後にコンクリート養生テープを剥がす際、容易に剥離することができ、且つ、粘着剤が養生対象物に残りにくくなる。
【0015】
また、粘着層3の粘着樹脂の付与量としては、10~100g/m2が好ましい。10g/m2以上であれば十分な粘着力が得られやすく、100g/m2以下であれば養生後にコンクリート養生テープを剥がす際、粘着剤が養生対象物に残りにくくなり、また経済的である。
【0016】
さらに、粘着層3の厚みとしては、10μm~1mmが好ましい。10μm以上であれば十分な粘着力が得られやすく、1mm以下であれば養生後にコンクリート養生テープを剥がす際、粘着剤が養生対象物に残り難くなる。
【0017】
粘着加工をする際の粘着層3との安定した密着性を考慮した場合、基材層表面に著しい凹凸がある場合や、毛羽等がある場合、点接着、線接着となる虞があるため、プライマー層として、樹脂コーティングや、平滑なフィルムの積層により基材面を平滑にすることが好ましい。
【0018】
本発明のコンクリート養生テープは、粘着層3と基材層2を含み、基材層2は、補強層5および断熱層4を含有している。
【0019】
補強層5としては、シート状の、織物、編物、スパンボンド不織布、ネット状シート、クロスシート、フィルムが挙げられる。補強層5の5N引張荷重時の伸度が20%以下であると、コンクリート養生テープの伸度を当該範囲の伸度にしやすくなるため好ましい。また、剛軟度が4~25cmであることが、施工性の観点から好ましい。
なお、ネット状シートとは、割繊しテープ状にしたフィルムを、格子等の多角形状やクモの巣状に交叉させて交点を接着したネット状のシートであり、商品名としては、例えば、ソフ(登録商標、積水フィルム株式会社製)やワリフ(登録商標、JX ANCI株式会社製)が挙げられる。
【0020】
また、補強層5は略平滑なシート状であることが好ましく、例えば、気泡緩衝材(エアセルラー)のような1mm以上の凹凸のあるシート材が補強層5となる場合、養生後にコンクリート表面にこの凹凸柄が残る虞がある。補強層5の表面凹凸は、0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下がさらに好ましい。
【0021】
補強層5が織物、編物、スパンボンド不織布の場合の素材としては、特に限定するものではなく、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン-ウレタン共重合体等のポリウレタン系繊維の中から1種もしくは2種以上を用いることができる。なかでも、経済性、生産性、耐久性の観点からポリオレフィン系繊維が好ましい。
【0022】
補強層5がネット状シート、クロスシート、フィルムの場合の素材としては、特に限定するものではなく、例えばエチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン-ウレタン共重合体等のポリウレタン系繊維の中から1種もしくは2種以上を用いることができる。なかでも、経済性、生産性、耐久性の観点からポリオレフィン系繊維が好ましい。
【0023】
補強層5には、必要に応じ、紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、撥水剤、吸水剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、可塑剤、末端封鎖剤、滑剤、有機滑剤、塩素捕捉剤、ブロッキング剤、粘度調整剤等を1種もしくは2種以上を組み合わせて、浸漬処理、コーティング等により付与することができる。
【0024】
断熱層4としては、嵩高なニードルパンチやメルトブロー、スパンレース等の不織布、ダンボールニットなどの丸編みや、ダブルラッセル等の経編みに関わらず嵩高な編物、グラスウール、ロックウール、綿や羊毛等の天然繊維からなるフェルト、ポリエステルやナイロン等の合成繊維からなるフェルト、樹脂発泡シートが挙げられる。
【0025】
樹脂発泡シートに用いられる樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン-ウレタン共重合体等のポリウレタン系樹脂が挙げられ、これらの中から1種もしくは2種以上を用いることができる。なかでも、厚みと断熱性能の兼ね合いや、経済性や生産性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましく、さらには、電子線等で架橋された独立気泡構造であるものが好ましい。
【0026】
基材層2は、補強層5および断熱層4を含有している。さらに必要に応じて、非透水性フィルムを積層してもよい。なお、本明細書で用いる「非透水性」とは、水分の透過を妨げる性質のことであり、「非透水性フィルム」とは、JIS L 1092 B法に準拠する耐水圧が5kPa以上のものをいう。
【0027】
例えば、補強層5の表層側に非透水性フィルムを積層することにより、強風時でも保温効果や保湿効果に優れるため好ましい。
一方、断熱層4の粘着層側、すなわち、断熱層4と粘着層3の間に非透水性フィルムを積層することにより、剥離を繰り返す際にも粘着層3と基材層2の間に隙間が生じにくく、水分が入り込みにくいため、粘着層3が破れたり糊残りが発生したりすることを抑制することができ、好ましい。
図2に、非透水性フィルム6を補強層5の表層側および断熱層4の粘着層側に積層した例を示している。
【0028】
非透水性フィルム6として、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン等の非結晶ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6-ナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、アミン-ウレタン共重合体等のポリウレタン系樹脂の中から1種もしくは2種以上を用いることができる。なかでも、経済性や生産性の観点からオレフィン系樹脂が好ましい。さらに好ましくは耐久性の観点でポリプロピレンが好ましい。
【0029】
非透水性フィルム6には、必要に応じ、紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、発錆防止剤、耐銅害安定剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、可塑剤、末端封鎖剤、滑剤、有機滑剤、塩素捕捉剤、ブロッキング剤、粘度調整剤等を1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
非透水性フィルム6は、金属処理されていても良く、その処理形態は特に限定されず、例えば、非透水性フィルム6中に金属を練り込み等で含有させる方法、層状の金属と非透水性フィルム6を積層させる方法が挙げられる。耐久性の観点から、非透水性フィルム6中に金属を含有させる方法が好ましく、遮熱性の観点からは、層状の金属と非透水性フィルム6を積層させる方法が好ましい。
なお、遮熱性が付与されることにより、夏季における日射や、冬季における冷気を反射し、また、コンクリートの硬化熱を保温する効果が得られるため、コンクリート表面の温度変化を抑制しやすくなる。
【0031】
補強層5と断熱層4の積層方法としては、押出しTダイ法、ドライラミネート、ウェットラミネートのような接着樹脂を全面に塗布する方法や、超音波溶着、熱ラミネート等の方法が挙げられ、なかでも、接着強度、生産性の観点から熱ラミネートが好適に採用される。
また、非透水性フィルム6を補強層5や断熱層4と積層する場合も、特に限定されるものではないが、接着強度、生産性、経済性の観点から押出しTダイ法が好適に採用される。
【0032】
コンクリート養生テープの長手方向および短手方向における5N引張荷重時の伸度が20%以下であると、コンクリート養生テープの施工時にシワの発生を抑制することができ、作業が容易になるため施工性に優れる。好ましくは、10%以下である。また、好ましくは、10N引張荷重時の伸度が、100%以下であり、より好ましくは、50%以下である。
【0033】
また、コンクリート養生テープの長手方向および短手方向における剛軟度が4cm以上であれば、適度なハリコシ感となり、施工時にシワや気泡の発生を抑制することができ、25cm以下であれば、ロール状にしやすいため、生産性、運搬性、作業効率の観点で好ましい。
【0034】
なお、基材層2は、本発明の思想を妨げなければ、上述以外の層を含んでいても構わない。
【0035】
本発明のコンクリート養生テープは、基材層2と粘着層3とを積層することにより製造される。積層方法としては、コンマコーティング、ナイフコーティング法、グラビアロールコーティング法、ロールコーティング法、フレキソコーティング法、スプレー吹付けコーティング法等の方法が挙げられ、なかでも、生産性と塗布量精度の観点からコンマコーティング法が好適に採用される。
【0036】
また、基材層2の粘着層3側と反対の面、すなわち、コンクリート側とは反対側の面には、剥離性および耐摩擦性のある離型層を設けてもよい。離型層としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂などが挙げられる。塗工量は、0.1~2.0g/m2であることが好ましい。0.1g/m2未満であると、自背面粘着力が強く、ロール状に巻きあげた場合にコンクリート養生テープ表面の離型層と粘着層3がブロッキングし基材層2に損傷を生じるおそれがあり、2.0g/m2以上であると、自背面粘着力が弱くなりすぎ、施工した養生テープ同士を重ねて貼り合わせた部分から剥がれ易く、保湿できなくなるおそれがある。
【0037】
また、コンクリート養生テープには、本発明の思想を阻害しない範囲で他の層を付与しても良く、例えば、遮熱層、保水層などが挙げられる。遮熱層としては、赤外線を反射するよう、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のフィルムに、金属蒸着や、金属含有インクの印刷、コーティング、または、フィルム製膜時に金属を含有させたものを用いることができる。保水層としては、不織布や、織布等の基材に吸水樹脂を固定したもの、又は繊維に一体化したものを用いることができる。
【0038】
コンクリート養生テープの厚みは、0.5~5mmであることが好ましく、より好ましくは1~3mmである。0.5mm以上であれば、施工に適度なハリ感やコシ感が得られる。また5mm以下であれば生産性や施工性、運搬性が向上する。
【0039】
コンクリート養生テープの単位面積当たりの重量は、100~500g/m2であることが、好ましい。100g/m2以上であれば、施工時に風の影響によるバタつき等を軽減でき、500g/m2以下であれば生産性や施工性、運搬性が向上する。
【0040】
コンクリート養生テープの長手方向および短手方向における引張最大荷重が10N以上であることが好ましい。10N以上であれば、施工時に展開しやすいため作業しやすく施工性が向上する。また、コンクリート養生テープの長手方向および短手方向における引裂最大荷重が10N以上であると、施工中に突起物等に接した際に裂けにくく、また、養生後剥離する際、破損することなく、作業性が良く好ましい。
【0041】
コンクリート養生テープの長手方向および短手方向における引張破断伸度が100%以下であることが好ましい。100%以下であれば、施工時に非常に強い力が加わった場合でも伸びが大きくなりすぎないため、施工性に劣らない。
【0042】
コンクリート養生テープは、断熱性に優れるため、夏季の日射熱や、冬季の冷気による影響を緩和し、コンクリート表面の温度変化を抑制することができ、膨張・収縮によるヒビ割れを生じにくく、粘着層3の耐劣化にも優れる。具体的には、コンクリート養生テープの熱伝導率は、0.5W/m・K以下であることが好ましい。
【0043】
コンクリート養生テープの製品としては、幅が40~150cmで、1巻の長さが10~50mであることが好ましい。特に幅40~70cm、かつ、1巻の長さ20~30mであることが、施工性や運搬性の面で好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性および評価は、以下の方法により行い、表1に記載した。
【0045】
<測定方法>
1.厚み[μm]
JIS K7311.5.1.2(厚さ)に準じて測定を行った。
【0046】
2.単位面積当たりの質量[g/m2]
JIS L1096.8.3(単位面積当たりの質量)に準じて測定を行った。
【0047】
3.引張最大荷重[N]
長手方向、短手方向のそれぞれに対し、JIS K7311 5 (1995)(引張試験)に準じて、試験片の切断時に至るまでの最大荷重を読み取った。
【0048】
4.引裂最大荷重[N]
長手方向、短手方向のそれぞれに対し、JIS K7311 6 (1995)(引裂試験)に準じて、試験片の切断時に至るまでの最大荷重を読み取った。
【0049】
5.5N引張荷重時伸度、10N引張荷重時伸度[%]
JIS K7311 5 (1995)(引張試験)に準じて、標線距離L0(20mm)の位置を記した試験片を、引張試験機につかみ間距離40mmとなるように取り付け、引張を開始した。毎分300mmの速さで荷重を与え、荷重が5Nに達したとき、標線距離Lを測定した。引張荷重時伸度Eは、E=(L-L0)/L0×100という式によって算出した。長手方向、短手方向のそれぞれに対し測定を行った。なお、荷重が10Nの場合も同様に行う。
【0050】
6.引張破断伸度[%]
長手方向、短手方向のそれぞれに対し、JIS K7311 5 (1995)(引張試験)に準じて、試験片の切断時に至ったときの、伸度を読み取った。
【0051】
7.剛軟度(cm)
粘着面を上向きとして、長手方向、短手方向のそれぞれに対し、JIS L 1096.8.21.1A(2010)(カンチレバー法)に準じて測定した。
【0052】
8.粘着力[N/cm]
生コンクリート(77重量部のトーヨーマテラン株式会社製インスタントコンクリートに23重量部の水を混合したもの)を13mm×30mm×125mmの大きさの型枠に入れ、24時間25℃で放置して作製した試験板を使用し、JIS Z0237 10(2009)(粘着力 180°剥離)に準じて測定を行った。
【0053】
<評価方法>
1.保湿性
ガラスシャーレに精製水20mLを滴下させ、その後、各コンクリート養生テープ10cm×10cmの粘着層側、すなわち、養生時コンクリートに接する面側を下にした状態でガラスシャーレ上に静置した。夏場の日射を想定してレフランプ(100V、500W)を各試験体表面50cmの高さより照射を行い、1時間後の保水率を下記計算式により算出した。算出した保水率から下記評価基準に従って評価した。
[式]
保水率[%]=(精製水の滴下1時間後のコンクリート養生テープとシャーレの重量[g]-精製水の滴下前のコンクリート養生テープとシャーレの重量[g])/(精製水の滴下直後のコンクリート養生テープとシャーレの重量[g]-精製水の滴下前のコンクリート養生テープとシャーレの重量[g])×100
(評価基準)
○:1時間後の保水率が80%以上
△:1時間後の保水率が50%以上80%未満
×:1時間後の保水率が50%未満
【0054】
2.コンクリート構造体に対する施工性
コンクリート構造体に対して、幅700mmのコンクリート養生テープを施工し、その施工性を下記評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:施工時に破けることがなく、角部に対する追従性、及び、基材のハリコシが良好であり、コンクリート構造体をシワなく容易に被うことができる。
△:施工時に破けることがなく、角部に対する追従性、及び、基材のハリコシがやや良好であり、若干のシワは発生するが、コンクリート構造体を被うことができる。
×:施工時に破けてしまい、角部に対する追従性、及び、基材のハリコシが不良であり、コンクリート構造体を被うことは困難である。
【0055】
3.断熱性
熱伝導率(W/(m・K))を、英弘精機株式会社製HC-074/200にて,JIS A 1412-2に準じて測定した。測定した結果から下記評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:熱伝導率が0.45W/(m・K)未満
△:熱伝導率が0.45W/(m・K)以上0.50W/(m・K)未満
×:熱伝導率が0.50W/(m・K)以上
【0056】
4.耐劣化評価(糊残り)
生コンクリート(77重量部のトーヨーマテラン株式会社製インスタントコンクリートに23重量部の水を混合したもの)を20mm×90mm×300mmの大きさの型枠に入れ、24時間25℃で放置して作製した試験板を使用し、50mm×90mmにカットした試験片を貼り合わせ、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)により、2時間/サイクルを100サイクルで照射し、その後、粘着剤(糊)残りの有無を確認した。
(評価基準)
◎:コンクリート表面への粘着剤残りがなく、外観上変化なし。
○:コンクリート表面への粘着剤残りが僅かであり、1m離れた位置から目視できない。
△:コンクリート表面への粘着剤残りが若干あるが、3m離れた位置からは目視できない。
×:コンクリート表面への粘着剤残りが非常に多く、3m離れた位置から目視できる。
【0057】
5.コンクリート表面品位
上記耐劣化評価によって得られたコンクリートの表面の養生シートの凹凸跡(基材の織り目、編み目、エンボス柄、気泡緩衝材の水玉模様等や、粘着層のパターン)の有無を下記評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○:コンクリート表面品位が平滑であり、外観上変化なし。
△:コンクリート表面品位が平滑であり、外観変化は少なく、3m離れた位置からは分からない程度。
×:コンクリート表面品位が平滑でない、または、平滑であるが、養生シートの凹凸跡(基材の織り目、編み目、エンボス柄、気泡緩衝材の水玉模様等や、粘着層のパターン)が3m以上離れた位置からでも認識できる。
【0058】
[実施例1]
ポリエチレンクロスシート(萩原工業株式会社製、織り密度:タテ14本/2.54cm、ヨコ14本/2.54cm)を補強層として、ポリエチレン電子線架橋30倍発泡シート1mm(東レ株式会社製、東レペフ)を断熱層として、これらを熱ラミネート法によって積層したものを基材層として得た。なお、補強層の5N引張荷重時伸度は7%、剛軟度は6cmであった。
次いで、基材層の断熱層面にアクリル系粘着剤(サイデン化学製D202が100重量部に対し、サイデン化学製AL硬化剤を0.6重量部添加したもの)を乾燥後の塗布量が50g/m2になるよう塗布し、厚み35μmの粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
なお、基材層の長手方向、すなわち、コンクリート養生テープの長手方向は、コンクリート養生テープを筒状にした時の巻き取り方向である。
【0059】
[実施例2]
実施例1の基材層の断熱層面に、更に、押出しTダイ法により得た高密度(HD)ポリエチレンフィルム15μmを、非透水性フィルムとして、熱ラミネート法によって積層したものを基材層として得た。
次いで、上記非透水性フィルム面に、実施例1と同様に、粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0060】
[実施例3]
実施例2の基材層のポリエチレンクロスシート面に、更に、押出しTダイ法により、フィルム成形樹脂基材100重量部に対して、粒子径が5μmのアルミニウム粒子3重量部を含有させた厚み50μmのポリエチレンフィルムを、非透水性フィルムとして、低密度(LD)ポリエチレン樹脂15g/m2(接着樹脂)を介し積層し、断熱層側に、押出しTダイ法により得たHDポリエチレンフィルム15μmを、非透水性フィルムとして、熱ラミネート法によって積層したものを基材層として得た。
次いで、基材層のLDポリエチレンフィルム面に離型層用樹脂(直鎖アルキル系離型処理剤)を3g/m2塗布した後、基材層のもう一方の面(HDポリエチレンフィルム面)に実施例1と同様に、粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0061】
[実施例4]
ポリエステルスパンボンド不織布70g/m2(東洋紡株式会社製、エクーレ 3701A)を補強層として、ポリエチレン電子線架橋30倍発泡シート1mm(東レ株式会社製、東レペフ)を断熱層として、これらを熱ラミネート法によって積層し、積層体を得た。一方、押出しTダイ法により、厚み20μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを形成して、非透水性フィルムを得た。この非透水性フィルムを、積層体の補強層側に、LDポリエチレン樹脂15g/m2(接着樹脂)を介し積層し、基材層として得た。なお、補強層の5N引張荷重時伸度は11%、剛軟度は9cmであった。
次いで、断熱層面に、実施例1と同様に、粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0062】
[比較例1]
押出しTダイ法により、フィルム成形樹脂基材100重量部に対して粒子径が1μmの酸化チタン粒子5重量部を含有させた厚み60μmのポリエチレンフィルムを形成したものを基材層として得た。
次いで、実施例3と同様に、基材層の片面に離型層を、更にもう一方の面に粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0063】
[比較例2]
厚さ4.0mmのエアセルラー緩衝シート(酒井化学株式会社製、ミナパック #401)の凸面に、押出しTダイ法により得たHDポリエチレンフィルム15μmを熱ラミネート法によって積層したものを基材層として得た。
次いで、基材層のHDポリエチレンフィルム面に、実施例1と同様に粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0064】
[比較例3]
押出しTダイ法により、厚み65μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを形成したものを基材層として得た。
次いで、実施例3と同様に、基材層の片面に離型層を、更にもう一方の面に粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0065】
[比較例4]
ポリエステル糸550dtex/288f(NAN YA製)を3本80T/mの撚りで合撚したものを、経糸・緯糸に用いて、平織(密度:経27本/インチ,緯25本/インチ)の織物を作製したものを基材層として得た。
次いで、実施例3と同様に、基材層の片面に離型層を、更にもう一方の面に粘着層を付与し、コンクリート養生テープを得た。
【0066】
【0067】
表1に示すように、実施例に係るコンクリート養生テープはいずれも、5N引張荷重時の伸度が20%以下であり、保湿性、施工性、断熱性、耐劣化およびコンクリートの表面品位の全てにおいて優れるコンクリート養生テープであった。
【0068】
これに対して、比較例に係るコンクリート養生テープは、保湿性、施工性、断熱性、耐劣化およびコンクリートの表面品位のうち1以上の評価において、劣るものとなった。
【0069】
本発明は、様々な実施形態が可能とされるものである。また、上述した実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0070】
1 コンクリート養生テープ
2 基材層
3 粘着層
4 断熱層
5 補強層
6 非透水性フィルム