(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】シートベルトプリテンショナの製造方法、及びシートベルトプリテンショナ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/195 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
B60R22/195 102
B60R22/195 104
(21)【出願番号】P 2018031828
(22)【出願日】2018-02-26
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100089462
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【復代理人】
【識別番号】100129827
【氏名又は名称】山本 進
(74)【復代理人】
【識別番号】100204021
【氏名又は名称】河原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】井口 大輔
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-044934(JP,A)
【文献】特開2013-173400(JP,A)
【文献】特開2012-166786(JP,A)
【文献】特開2011-63177(JP,A)
【文献】特開2009-173103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0259672(US,A1)
【文献】中国実用新案第206202232(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート側部の下部近傍に設置され、
緊急時、ケーブルを介してシートベルトを前記シートの下部に向けて引っ張って前記シートに着座した乗員の移動を規制するプリテンショナの製造方法であって、
前記プリテンショナの組み立て後に、
前記ケーブルが貫通し、チューブ内を移動自在なピストンと、前記ケーブルが前記ピストンを貫通した後の端部をクランプして前記ピストンと一緒に前記チューブ内を移動するケーブルクランプ
とを、前記ケーブルを前記シートベルトとの接続方向に引っ張
ることにより、前記チューブ内において緊急作動前の初期位置まで移動させる
と共に、該移動により前記ピストンの孔に対し前記ケーブルクランプを圧入する工程を行うことを特徴とするシートベルトプリテンショナの製造方法。
【請求項2】
前記ピストンと前記ケーブルクランプは、両者の当接面の何れか一方又は両方
がテーパ状に形成
されていることを特徴とする請求項1に記載のシートベルトプリテンショナの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシートベルトプリテンショナの製造方法により製造された、シートベルトプリテンショナであって、
前記ケーブルクランプでは、外周面から突出するフランジ部が形成され、該フランジ部よりも前記ピストン側が、前記ピストンの孔に圧入されることを特徴とするシートベルトプリテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に安全装置として設置されるシートベルト装置のシートベルトを、車両の急な減速時或いは衝突時等の緊急時に引き込むプリテンショナの製造方法に関するものである。
【0002】
以下、本願において「上」「上方」とは車両の天井側を、「下」「下方」とは車両の床側を意味する。また、「前」「前方」とは車両の前進方向側を意味する。
【背景技術】
【0003】
車両には安全装置としてシートの各着座位置にシートベルト装置が設置されている。例えば、
図4は助手席1に設置されたシートベルト装置2を車両の前方側から示した図である。当該シートベルト装置2は、リトラクタ3と、当該リトラクタ3から繰り出される3点式のシートベルト4と、当該シートベルト4の先端部にアンカープレート5を介して一端を接続されたケーブル6を緊急時に引き込むプリテンショナ7を備えている。
【0004】
図4に示すシートベルト装置2の場合、前記リトラクタ3は、センターピラーの車内側の下部に取付けられている。また、前記プリテンショナ7は、助手席1のドア側の床部に設置されている。なお、前記プリテンショナ7は、助手席1の運転席側の床部に設置する場合もある。また、助手席1のドア側と運転席側の両方に設置する場合もある。
【0005】
前記リトラクタ3から車体の上方に繰り出された前記シートベルト4は、センターピラーの上部に取付けられたスルーリング8を挿通して乗員9の肩部から胸部を拘束するように車体の斜め下方に向けて折り返される。そして、当該シートベルト4を挿通したタング10を、助手席1の運転席側の床部から突出状に設置したバックル11に装着することで、助手席1に着座した乗員9の肩部から胸部及び腰部を拘束する。
【0006】
前記プリテンショナ7の一例を
図5に示す。
プリテンショナ7は、チューブ12と、このチューブ12の他端側にシール材13を介して密閉状に接続されたフレーム14を備えている。
【0007】
そして、前記チューブ12は、内部にピストン15を移動自在に収容している。一方、前記フレーム14には、前記ケーブル6の案内孔14aと、当該案内孔14aを通過したケーブル6を前記チューブ12に導く貫通孔14bを形成している。また、前記フレーム14には、緊急時に前記貫通孔14bを通って前記チューブ12内にガスを供給するガス発生器16を設置している。
【0008】
前記ピストン15は、軸方向の略中心部に、前記貫通孔14bと略同軸の貫通孔15aを有し、この貫通孔15aに前記ケーブル6を挿通させている(
図6参照)。そして、この貫通孔15aを挿通した前記ケーブル6を、前記ピストン15の前記フレーム14と反対側に配置した円筒状のケーブルクランプ17でクランプし、前記ケーブル6がピストン15から抜け出ないようにしている。
【0009】
なお、
図5中の17aは前記ケーブルクランプ17における前記ケーブル6のクランプ部、18は前記貫通孔14bの前記ピストン15と反対側の端部に挿入したガスケットを示す。
【0010】
以下、前記ピストン15及び前記ケーブルクランプ17について、
図6を用いて詳細に説明する。
【0011】
前記ピストン15の軸方向両側には、前記チューブ12の内周形状と略等しい外周形状のフランジ部15b,15cを有している。そして、これら両フランジ部15b,15cの間を前記フレーム14の反対側(紙面左側)に向けて外径を漸次大きくした錐台形状に形成している。以下、この錐台形状に形成した部分を錐台形状部15dという。また、前記ピストン15の前記貫通孔15aは、ケーブルクランプ17側に面取り孔部15aaを設けている。
【0012】
前記錐台形状部15dとチューブ12の間には複数のクラッチ球19を配置する一方、前記反対側の前記フランジ部15cの外周に溝15eを形成し、Oリング20を装着している。
【0013】
なお、前記クラッチ球19の外径は、当該クラッチ球19が前記錐台形状部15dの小径側の前記フランジ部15bと当接する位置の場合に、前記チューブ12の内周面との間に若干の隙間を有するように決定される。このクラッチ球19は、前記フランジ部15bとの間に配置された付勢部材(例えばスポンジ)23によって前記錐台形状部15dの大径側に付勢され、錐台形状部15dの外周面及びチューブ12の内周面と接触している。その結果、ピストン15はクラッチ球19と前記Oリング20によってチューブ12内で支持されることになって、ピストン15単体ではチューブ12内を搖動することはない。
【0014】
また、前記ケーブルクランプ17は、前記貫通孔15aと連通する貫通孔17bを有する円筒状の胴部17cの前記ピストン15側に前記フランジ部15cと同形状のフランジ部17dを形成している。また、前記フランジ部17dの前記ピストン15側に、前記ピストン15の面取り孔部15aaに嵌入して接する面取り部17eを形成している。
【0015】
前記構成のプリテンショナ7では、例えば車両の急な減速をセンサーが検知した時、センサーからの出力信号によりガス発生器16からガスを発生させる。発生したガスは、前記貫通孔14bを通ってチューブ12内に供給され、当該部分の内圧を上昇させてピストン15をフレーム14と反対の方向(
図5(a)の白抜き矢印A方向)に移動させる。ピストン15の前記移動によりケーブル6が前記フレーム14に向かう方向(
図5(a)の白抜き矢印B方向)に引っ張られ、車両の前方への乗員9の移動を抑制する。
【0016】
しかしながら、前記内圧の上昇は短時間で低下する一方、シートベルト4が乗員9から受ける力は維持される。従って、ピストン15は前記移動後の
図5(a)の位置から前記移動と反対のフレーム14の方向(
図5(b)の白抜き矢印C方向)に移動してケーブル6がプリテンショナ7から引出されることになる。この際、前記ガスケット18とケーブル6の隙間からガスが排出する(
図5(b)の白抜き矢印D)。
【0017】
ケーブル6がプリテンショナ7から引出される際、前記クラッチ球19は錐台形状部15dの外周部を大径側に移動し、錐台形状部15dの外周部とチューブ12の内周面間に挟まれる(
図5(b)参照)。この状態では、ピストン15がさらにフレーム14の方向に移動しようとしても、前記クラッチ球19によってピストン15の移動が規制され、車両前方への乗員9の移動を拘束する。
【0018】
前記ピストン15及び前記ケーブルクランプ17の場合、緊急作動前の初期位置では、通常、
図6に示すように、両者が接触する位置関係になっている。なお、緊急作動前の初期位置とは、前記ピストン15の前記フランジ部15bが前記フレーム14のピストン15側の端部に当接する位置をいう。
【0019】
しかしながら、前記ケーブルクランプ17は前記ピストン15の方向に付勢されていない。従って、シートベルト4の着脱時や車両走行時等の振動によりケーブル6が若干移動することで、前記ピストン15及び前記ケーブルクランプ17が接触したり離反したりしてノイズを発生する場合がある。
【0020】
このノイズの発生を防止するものとして特許文献1に開示されたピストン15がある。特許文献1に開示されたピストン15は、
図7に示したように、前記ピストン15のフランジ15c側を延長してケーブルクランプ部15fとなすことで、前記ピストン15とケーブルクランプ17を一体に構成したものである。
【0021】
ところで、
図7に示したピストン15の場合、
図6に示したピストン15に相当する部分は、その要求される形状が複雑なために高価な切削加工によって製作する必要がある。また、乗員拘束時のロック強度が要求されるために熱処理を行う必要もある。
【0022】
一方、前記ケーブルクランプ部15fは、単純な形状であるために安価な圧造による成型で十分である。また、ケーブル6をクランプする時の塑性加工性が必要なために熱処理は必要としない。
【0023】
しかしながら、
図7に示した、ケーブルクランプ部15fを一体構成したピストン15の場合、ケーブルクランプ部15fは
図6に示したピストン15に相当する部分の要求(切削加工、熱処理)に追従させざるを得ない。この場合、ケーブルクランプ部15fでは、不必要な加工法による経済性の悪化、及び不適切な材料硬さによる塑性加工難の影響を受けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明が解決しようとする問題点は、ピストン及びケーブルクランプが別体構成の場合、シートベルトの着脱時などに前記ピストン及び前記ケーブルクランプが接触したり離反したりしてノイズを発生する場合があるという点である。また、ピストン及びケーブルクランプを一体構成とした場合、ケーブルクランプ部では、不必要な加工法による経済性の悪化、及び不適切な材料硬さによる塑性加工難の影響を受けるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、ピストン及びケーブルクランプが別体構成の場合であっても、シートベルトの着脱時などに前記ピストン及び前記ケーブルクランプが接触したり離反したりしてノイズを発生させないようにすることである。
【0027】
上記目的を達成するために、本発明は、
シート側部の下部近傍に設置され、
緊急時、ケーブルを介してシートベルトを前記シートの下部に向けて引っ張って前記シートに着座した乗員の移動を規制するプリテンショナの製造方法であって、
前記プリテンショナの組み立て後に、
前記ケーブルが貫通し、チューブ内を移動自在なピストンと、
前記ケーブルが前記ピストンを貫通した後の端部をクランプして前記ピストンと一緒に前記チューブ内を移動するケーブルクランプを、
前記ケーブルを前記シートベルトとの接続方向に引っ張って緊急作動前の初期位置まで前記チューブ内を移動させる工程において、前記ピストンと前記ケーブルクランプを一体化することを最も主要な特徴としている。
【0028】
すなわち、本発明は、プリテンショナを構成するピストンとケーブルクランプを別体構成するので、ケーブルクランプは、不必要な加工法による経済性の悪化、及び不適切な材料硬さによる塑性加工難の影響を受けることがない。
【0029】
一方、プリテンショナの製造時に別体構成したピストンとケーブルクランプを結合するので、シートベルトの着脱時などに前記ピストン及び前記ケーブルクランプが接触したり離反したりしてノイズが発生することがない。
【0030】
この際、ケーブルをシートベルトとの接続方向に引っ張って緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させる既存の工程を用いて行うので、プリテンショナの製造に新たな工程を加えることがない。
【0031】
本発明において、ピストンとケーブルクランプの一体化は、例えば、両者の当接面の何れか一方又は両方をテーパ状に形成し、緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させる際にピストンとケーブルクランプを圧入すればよい。
【0032】
また、両者の当接面にねじを形成し、緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させる際にピストンとケーブルクランプをねじ嵌合するものでも良い。この場合、前記移動に伴いピストンがチューブ内で回転することによってねじ嵌合する。前記ねじはテーパねじとすることが望ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、別体構成したピストンとケーブルクランプを使用した場合でも、シートベルトの着脱時などに両者が接触・離反することで発生するノイズを防止できる。また、ピストンとケーブルクランプを別体構成するので、ケーブルクランプは切削加工や熱処理が不要になって部品コストを低減でき、両者を一体構成する場合に比べて製造工数も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明方法に使用するピストンとケーブルクランプの第1の例の説明図であり、(a)は緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させる前、(b)は緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させた後を示す。
【
図2】本発明方法に使用するピストンとケーブルクランプの第2の例の
図1と同様の図である。
【
図3】
図1に示した実施例において、ピストンのテーパ孔及びケーブルクランプのテーパを1.5°、2°、10°、15°、20°とした場合の挿入荷重と解離力の関係を示した図である。
【
図4】助手席に設置されたシートベルト装置の概略図で、車両の前方側から示した図である。
【
図5】プリテンショナの一例を示した図で、(a)はガスの発生によりピストンがチューブ内をフレームと反対方向に移動した状態を示す図、(b)はピストンのフレーム方向への移動が拘束された状態を示す要部拡大図である。
【
図6】プリテンショナを構成するピストンとケーブルクランプが別体構成の場合を説明する図である。
【
図7】プリテンショナを構成するピストンとケーブルクランプが一体構成の場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の目的は、ピストン及びケーブルクランプが別体構成の場合でも、シートベルトの着脱時などに前記ピストン及び前記ケーブルクランプが接触したり離反したりしてノイズを発生させないようにすることである。そして、その目的を、ケーブルをシートベルトとの接続方向に引っ張って緊急作動前の初期位置までチューブ内を移動させる工程においてピストンとケーブルクランプを一体化することで実現した。
【実施例】
【0036】
以下、本発明方法に使用するプリテンショナを構成するピストンとケーブルクランプの一例を、
図1及び
図2を用いて説明した後、本発明の製造方法を説明する。
【0037】
21は本発明方法に使用するピストン、22は同じくケーブルクランプであり、両者は別個に構成されている。
【0038】
このうち、ピストン21の基本的な構成は、
図6で説明したピストン15と同様である。すなわち、前記ピストン21は、軸中心部に貫通孔21aを、軸方向両側にフランジ部21b,21cを、これら両フランジ部21b,21cの間に錐台形状部21dを形成している。
【0039】
但し、本発明方法に使用するピストン21は、例えば、ケーブルクランプ22側のフランジ部21cの軸方向長さを延長してその内部の貫通孔を大きくしている。そして、
図1に示した例では、前記大きくした貫通孔をテーパ孔21eとしている。また、
図2に示した例では、ケーブルクランプ22とねじ嵌合するテーパ雌ねじ21fを前記大きくした貫通孔に形成している。
【0040】
一方、本発明方法に使用する前記ケーブルクランプ22も、基本的構成は
図6で説明したケーブルクランプ17と同様、前記貫通孔21aに連通する貫通孔22aを有する円筒状の胴部22bの前記ピストン21側にフランジ部22cを形成したものである。そしてこのフランジ部22cのピストン21側にさらに円筒部22dを形成し、この円筒部22dの外周に、
図1に示した例では、前記テーパ孔21eと一致するテーパ22eを形成している。また、
図2に示した例では、前記円筒部22dの外周に、前記テーパ雌ねじ21fと嵌合するテーパ雄ねじ22fを形成している。
【0041】
以下、前記構成のピストン21とケーブルクランプ22を使用してプリテンショナ7を製造する本発明方法について説明する。
【0042】
本発明方法で製造するプリテンショナ7は、前記ピストン21とケーブルクランプ22以外の部品(チューブ12、フレーム14、ガス発生器16、クラッチ球19、シール材13、ガスケット18、Oリング20、付勢部材23等)は、先に説明した従来と同じ構成である。
【0043】
つまり、ピストン21と、当該ピストン21を貫通したケーブル6の端部をクランプしたケーブルクランプ22をチューブ12に挿入する(
図1及び
図2の(a)図参照)。その後、当該チューブ12と、前記ケーブル6を貫通孔14b及び案内孔14aを通して外部に引き出したフレーム14を密閉状に連結する。
【0044】
前記チューブ12と前記フレーム14を接続した後、前記フレーム14から引出した前記ケーブル6をシートベルトとの接続方向に引っ張り、前記ピストン21と前記ケーブルクランプ22を緊急作動前の初期位置まで前記チューブ12内を移動させる。
【0045】
この初期位置までの移動により、
図1に示した例では、前記ピストン21のテーパ孔21eに前記ケーブルクランプ22のテーパ22eを形成した円筒部22dが圧入される(
図1(b)参照)。一方、
図2に示した例では、前記ピストン21が回転して当該ピストン21のテーパ雌ねじ21fに前記ケーブルクランプ22のテーパ雄ねじ22fがねじ込まれる(
図2(b)参照)。そして、前記初期位置への移動が完了したときには、前記ピストン21と前記ケーブルクランプ22が一体化される。
【0046】
なお、フレーム14へのガス発生器16の取付けは、前記チューブ12と前記フレーム14の連結前後のどちらでも良い。また、前記ピストン21とケーブルクランプ22をチューブ12に挿入する際、クラッチ球19及び付勢部材23を前記ピストン21の錐台形状部21dとチューブ12間に、Oリング20を前記ピストン21のフランジ部21cに形成した溝内に配置しておくことは言うまでもない。
【0047】
ちなみに、
図1に示した実施例において、前記ピストン21のテーパ孔21e及び前記ケーブルクランプ22の円筒部22dに形成するテーパ22eを1.5°、2°、10°、15°、20°とした場合の挿入荷重と解離力の関係を
図3に示す。
【0048】
図3より、前記ピストン21のテーパ孔21e及び前記ケーブルクランプ22の円筒部22dに形成するテーパ22eが小さいほど、圧入後の解離力が大きくなって、強固に一体化されていることが分かる。このことは
図2に示したテーパねじの場合も同様である。
【0049】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇に含まれるものであれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0050】
すなわち、
図1及び
図2で説明した例は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0051】
例えば、
図1の例では、前記ピストン21にテーパ孔21eを、前記ケーブルクランプ22の円筒部22dにテーパ22eを形成している。しかしながら、前記ピストン21のフランジ部21cの前記ケーブルクランプ22側に円筒を形成してこの円筒部の外周をテーパに形成する一方、前記ケーブルクランプ22のフランジ部22cを延長して当該延長部に前記ピストン21のテーパに合致するテーパ孔を形成してもよい。また、前記初期位置までの移動により、前記ピストン21と前記ケーブルクランプ22が圧入一体化されるのであれば、前記ピストン21か前記ケーブルクランプ22のどちらか一方の外周部にテーパを、或いは、どちらか一方の内周部をテーパ孔に形成してもよい。
【0052】
また、
図2の例では、前記ピストン21にテーパ雌ねじ21fを、前記ケーブルクランプ22にテーパ雄ねじ22fを形成している。しかしながら、前記ピストン21のフランジ部21cの前記ケーブルクランプ22側に円筒を形成してこの円筒部にテーパ雄ねじを形成する一方、前記ケーブルクランプ22のフランジ部22cを延長して当該延長部に前記ピストン21のテーパ雄ねじに嵌合するテーパ雌ねじを形成してもよい。また、前記初期位置までの移動により、前記ピストン21と前記ケーブルクランプ22がねじ込まれて一体化されるのであれば、前記ピストン21及び前記ケーブルクランプ22に形成するのはテーパねじでなく通常のねじでもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 助手席
4 シートベルト
6 ケーブル
7 プリテンショナ
9 乗員
12 チューブ
21 ピストン
21e テーパ孔
21f テーパ雌ねじ
22 ケーブルクランプ
22e テーパ
22f テーパ雄ねじ