(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20220112BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/12
(21)【出願番号】P 2018089876
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 政紀
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】古川 健太
(72)【発明者】
【氏名】坂井 希
(72)【発明者】
【氏名】柴丸 昇
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三川 玄洋
(72)【発明者】
【氏名】八田 浩一
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-312323(JP,A)
【文献】特開2018-14774(JP,A)
【文献】特開2000-102171(JP,A)
【文献】特開2013-255375(JP,A)
【文献】特開2007-189840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/12
H02J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧調整用の機械機構を有する電圧調整装置と自然変動電源とを備える配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
電圧調整装置を配置する配電系統上の位置を選択する配置位置選択部と、配置した一つ以上の電圧調整装置について電圧調整装置の機械機構調整量の組合せを生成する組合せ生成部と、電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量の組合せに対する電圧計算において、配置位置が同一の電圧調整装置の機械機構調整量の組合せについて、はじめに予め保持する基準の機械機構調整量の組合せにおいて潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量と異なる機械機構調整量の組合せについて、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値以上となる場合には機械機構調整量の組合せを新たな基準の機械機構調整量として保持して潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値より小さい場合には電圧感度を用いる電圧近似計算を実施することによって配電系統上の電圧を求める電圧計算部と、前記電圧計算部で求めた配電系統上の電圧について、配電系統に許容される上下限電圧と電圧計算結果の間の差分の最小値である電圧余裕および電圧調整装置の台数に基づいて電圧調整装置を配置する位置を決定する適正配置決定部とを備えることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
前記電圧近似計算では、電圧感度および機械機構調整量の変化量を用いて計算した電圧変動量を加えることで電圧を計算することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項3】
請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
機械機構を有する電圧調整装置は、タップ付変圧器を含んでおり、電圧調整装置の機械機構調整量の組合せ数はタップ数であることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
機械機構を有する電圧調整装置は、複数のコンデンサおよびリアクトルとスイッチを含んでおり、電圧調整装置の機械機構調整量の組合せ数は、コンデンサおよびリアクトルの組み合わせで定まる組み合わせ容量の数であることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
前記適正配置決定部は、前記電圧計算部で求めた配電系統上の電圧について、前記電圧余裕が正の値である配置のうち、電圧調整装置の台数が最小となる配置位置を選択することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項6】
請求項5に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
前記適正配置決定部は、前記電圧調整装置の台数が最小であって、かつ前記電圧余裕が最大となる配置位置を選択することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項7】
請求項1に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
前記電圧調整装置の機械機構調整量変化量についての閾値は、前記閾値を設定する自動電圧調整器の機械機構調整量を変化させたときに、その点について前記潮流計算と前記電圧近似計算の誤差が、電圧精度目標以上となる機械機構調整量変化量を閾値とすることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
機械機構を有する電圧調整装置は、タップ付変圧器を含んでおり、前記電圧精度目標を、タップ付変圧器1タップ分の電圧幅公称値の半値として定めることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項9】
請求項7に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
機械機構を有する電圧調整装置は自動電圧調整器であり、前記電圧精度目標を、前記自動電圧調整器が自動で電圧調整する際の制御パラメータの1つである電圧目標値に対する不感帯幅の値として定めることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項10】
請求項7に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、
機械機構を有する電圧調整装置は自動電圧調整器であり、前記電圧精度目標を、前記自動電圧調整器の1タップ分の電圧幅公称値の半値として定めることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置。
【請求項11】
電圧調整用の機械機構を有する電圧調整装置と自然変動電源とを備える配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法において、
電圧調整装置を配置する配電系統上の位置を選択し、配置した一つ以上の電圧調整装置について電圧調整装置の機械機構調整量の組合せを生成し、電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量の組合せに対する電圧計算において、配置位置が同一の電圧調整装置の機械機構調整量の組合せについて、はじめに予め保持する基準の機械機構調整量の組合せにおいて潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量と異なる機械機構調整量の組合せについて、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値以上となる場合には機械機構調整量の組合せを新たな基準の機械機構調整量として保持して潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値より小さい場合には電圧感度を用いる電圧近似計算を実施することによって配電系統上の電圧を求め、前記電圧計算で求めた配電系統上の電圧について、配電系統に許容される上下限電圧と電圧計算結果の間の差分の最小値である電圧余裕および電圧調整装置の台数に基づいて電圧調整装置を配置する位置を決定することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法。
【請求項12】
請求項11に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法において、
前記電圧計算方法で求めた配電系統上の電圧について、配電系統に許容される上下限電圧と電圧計算結果の間の差分の最小値である電圧余裕が正の値である配置のうち、電圧調整装置の台数が最小となる配置位置を選択することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法。
【請求項13】
請求項12に記載の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法において、
前記電圧調整装置の台数が最小であって、かつ前記電圧余裕が最大となる配置位置を選択することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統に接続された電圧調整装置の配置計画の支援装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統では、需要家の電力使用量(負荷)の変動と、分散電源の発電電力の変動による線路電圧の変動を補償する装置として、電圧調整装置が使用されている。タップ付変圧器の二次側電圧が許容領域から逸脱した電圧の積分値が動作設定値を超えたことをもってタップ付変圧器のタップを調整する電圧調整装置である自動電圧調整器SVR(SVR:Step Voltage Regulator)や、無効電力を調整するキャパシタまたはリアクトルを備えた電圧調整装置が、複数配置されている。各電圧調整装置ではその検知する電圧を許容領域内にすべく、電圧調整装置の機械機構による調整量として、自動電圧調整器SVRではタップ付変圧器のタップ位置を調整し、また無効電力調整のためのキャパシタおよびリアクトルではこれらが並列に接続される数を調整している。
【0003】
近年、太陽光発電逆潮流の増加で配電系統の電圧上昇が増大しており、電圧調整装置の配置による電圧逸脱の回避が必要になり、今後配置を計画する回数が増えていくと予想される。
【0004】
電圧調整装置の配置計画では、探索する配電系統における電圧調整装置の配置位置と想定するSVRタップ位置ならびに並列キャパシタおよび並列リアクトルの接続数である機械機構調整量の組合せについて、電圧計算を実施し、電圧を適正な範囲に収められるかを検証する。このため、組合せの探索を最適化手法で探査する手法が提案されており、例えば、特許文献1には、パーティクル・スウォーム・オプティマイゼーション(PSO)を使用して、最適な配置位置と機械機構調整量の組合せを探索して、潮流計算による電圧計算を用いて配置を求めることが記載されている。潮流計算とは、配電用変電所から配電線末端までの電圧分布を求める計算方法である。潮流計算は、配電用変電所の送り出し電圧、負荷、分散電源発電電力、電圧調整装置の設置位置と機械機構調整量を入力として、配電系統上の電圧を求める方法である。
【0005】
電圧調整装置の配置計画では、探索する配電系統における電圧調整装置の配置位置と想定する機械機構調整量の組合せの数が大きくなると、電圧計算に潮流計算を用いると計算時間が膨大になるおそれがある。例えば、配電系統運用者が、電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量をより網羅的に探索したいという場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、電圧調整装置の配置を計画するが、電圧計算を潮流計算で計算する必要があるため、電圧計算の時間が掛かり、配置計画を高速に計算できないという課題がある。
【0008】
他方、電圧計算の計算時間を削減する手法として、電圧調整装置の機械機構調整量に対する配電系統上の電圧変動量の推定値である電圧感度を参照して電圧を近似計算する方法があるが、電圧計算に電圧近似計算を使用すると、電圧調整装置の機械機構調整量が大きい組合せにおいて、誤差が大きくなるおそれがある。
【0009】
そこで本発明では、電圧計算において、電圧計算精度の劣化を最小限に抑えつつ、計算を高速化することができる配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置および方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、「電圧調整用の機械機構を有する電圧調整装置と自然変動電源とを備える配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置において、電圧調整装置を配置する配電系統上の位置を選択する配置位置選択部と、配置した一つ以上の電圧調整装置について電圧調整装置の機械機構調整量の組合せを生成する組合せ生成部と、電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量の組合せに対する電圧計算において、配置位置が同一の電圧調整装置の機械機構調整量の組合せについて、はじめに予め保持する基準の機械機構調整量の組合せにおいて潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量と異なる機械機構調整量の組合せについて、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値以上となる場合には機械機構調整量の組合せを新たな基準の機械機構調整量として保持して潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値より小さい場合には電圧感度を用いる電圧近似計算を実施することによって配電系統上の電圧を求める電圧計算部と、前記電圧計算部で求めた配電系統上の電圧について、配電系統に許容される上下限電圧と電圧計算結果の間の差分の最小値である電圧余裕および電圧調整装置の台数に基づいて電圧調整装置を配置する位置を決定する適正配置決定部とを備えることを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置」としたものである。
【0011】
また本発明は、「電圧調整用の機械機構を有する電圧調整装置と自然変動電源とを備える配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法において、電圧調整装置を配置する配電系統上の位置を選択し、配置した一つ以上の電圧調整装置について電圧調整装置の機械機構調整量の組合せを生成し、電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量の組合せに対する電圧計算において、配置位置が同一の電圧調整装置の機械機構調整量の組合せについて、はじめに予め保持する基準の機械機構調整量の組合せにおいて潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量と異なる機械機構調整量の組合わせについて,基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値以上となる場合には機械機構調整量の組合せを新たに基準の機械機構調整量として保持して潮流計算を実施し、基準の機械機構調整量からの機械機構調整量変化量が閾値より小さい場合には電圧感度を用いる電圧近似計算を実施することによって配電系統上の電圧を求め、前記電圧計算で求めた配電系統上の電圧について、配電系統に許容される上下限電圧と電圧計算結果の間の差分の最小値である電圧余裕および電圧調整装置の台数に基づいて電圧調整装置を配置する位置を決定することを特徴とする配電系統の電圧調整装置配置計画の支援方法」としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、潮流計算と電圧感度を用いる電圧近似計算を組み合わせて電圧計算することによって、電圧調整装置の配置計画において電圧計算の精度の劣化を最小限にしつつ電圧計算を高速化し、計算時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置の機能構成例を示す図。
【
図2】配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置を計算機で構成するときのハード構成例と、配電系統の全体構成例を示す図。
【
図3】支援装置における処理例の全体を示すフローチャート。
【
図4】潮流計算と電圧感度を用いる電圧近似計算のいずれか一方により配電系統上の電圧を求める方法を示すフローチャート。
【
図5a】
図4における処理の具体的な概念を示す図。
【
図5b】
図4における処理の具体的な概念を示す図。
【
図6】電圧調整装置の適正配置位置の算出の流れを説明する図。
【
図7】配電線の位置p2について求めた電圧Vp2の、負荷による変動を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
以下においては、まず
図1を用いて配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置の機能構成を説明する。次に、
図2を用いて本発明に係る配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置と、配電系統2との全体構成について説明する。次に、
図3を用いて配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置の処理を説明する。
【0016】
図1は、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置の機能構成例を示した図である。
図1において、計算機で構成された支援装置1は、表示部12、入力部13、記憶部17、演算部(CPU)15、通信部14により構成されている。支援装置1は、その入力部13から入力データとして、系統構成データD1と、機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、電圧上下限データD4を入力として得、これらを適宜記憶部17に格納する。
【0017】
図1の記憶部17には上記入力データなどを含む各種のデータやプログラムが格納されているが、
図1では電圧感度データD7を記憶することを例示している。
【0018】
図1の演算部15は、配置位置選択部101と組合せ生成部102と電圧計算部103と適正配置決定部104の機能を備えており、適正配置決定部104の処理により適正配置位置データD9を生成する。生成された情報(適正配置位置データD9)は適宜通信部14を介して表示部12に与えられる。
【0019】
演算部15内の各機能における処理をより具体的に述べると、配置位置選択部101では、系統構成データD1を用いて、配置位置データD5を出力する。組合せ生成部102では、配置位置データD5を用いて、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6を出力する。電圧計算部103では、系統構成データD1と、機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、配置位置データD5と、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6と、電圧感度データD7とを用いて、電圧計算結果データD8を出力する。適正配置決定部104では、電圧上下限データD4と、電圧計算結果データD8を用いて、適正配置位置データD9を出力する。通信部14では、適正配置位置データD9を表示部12に表示する。
【0020】
図2は、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1を計算機で構成するときのハード構成例と配電系統の全体構成例を示す図である。以下では、配電系統を先に説明し、その後に支援装置1のハード構成例を説明する。
【0021】
まず配電系統2は、配電用変電所22、母線26、配電線23(23a、23b、23c)、負荷25、自然変動電源を含む分散電源24、電圧調整装置21(21a、21b、21c)などで構成されている。配電用変電所22に接続された配電線23には、電圧調整装置21(21a、21b、21c)が複数台直並列に設置されている。また配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1は、通信ネットワーク3を介して、電圧調整装置21(21a、21b、21c)や配電系統上のセンサ(図示せず)からデータを取得してもよい。負荷25としては、複数の代表ケースを抽出して設定する。例えば、最小値および最大値を代表ケースとして用いることができる。各負荷の最大値および最小値は、配電線単位で推定した年間の総負荷データから最小値および最大値を抽出し、それらの総負荷を各負荷の契約容量の比で配分することで算出できる。
【0022】
ここで配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置とは、配電系統2上に設置された電圧調整装置21(21a、21b、21c)などの設備の適正な配置を算出する装置であり、さらに具体的には配電系統上の電圧調整装置21(21a、21b、21c)の配置を提示するために、電圧調整装置の配置を表示装置12のディスプレイ画面などに表示する。なお、整定パラメータの設定および整定パラメータの再算出などを配電系統運用者に委ねてもよい。この場合における整定パラメータの設定は、配電系統運用者が各電圧調整装置21(21a、21b、21c)の設置地点に移動して手動で設定してもよいし、通信ネットワーク3を通じて遠隔で設定してもよい。
【0023】
電圧調整装置21について、
図2では自動電圧調整器SVR(SVR:Step Voltage Regulator)21a、21c、および複数の並列コンデンサの接続数をタップ切換え器で調整するタップ切換並列コンデンサ21bを採用した例を示している。これらは負荷時タップ切換変圧器LRT(LRT:Load Ratio Control Transformer)としてもよい。また、複数の並列リアクトルの接続数をタップ切換え器で調整するタップ切換分路リアクトルとしてもよい。本発明では、これらを総称して電圧調整装置21としている。以下の説明では、配電系統電源側の電圧調整装置21が自動電圧調整器SVR21a、21cであり、配電系統の負荷側の電圧調整装置21がタップ切換並列コンデンサ21bである場合を例として説明する。
【0024】
図2の自動電圧調整器SVR21a、21cは、単巻変圧器とタップチェンジャで構成される変圧器と、変圧器のタップを制御する制御部と、センサと、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1から通信ネットワーク3を介して制御部の整定パラメータを送受信する通信部で構成されている。なお、通信部を有しない自動電圧調整器SVRでは、配電系統運用者が制御部の整定パラメータを直接入力するための入力装置で構成される。
【0025】
自動電圧調整器SVR21a、21cは電圧制御方法として、変圧器二次側のセンサで計測した電流および電圧の計測値を用いて、線路電圧降下補償回路(LDC)により配電線23の所定位置における電圧降下を推定し、推定した電圧が設定した基準電圧の不感帯領域から逸脱した動作時間、および逸脱電圧量などに応じて、変圧器のタップ位置の変更を指令する。自動電圧調整器SVR21a、21c内の制御部は、線路電圧降下補償回路における仮想の配電線インピーダンスの値、動作時間、不感帯、基準電圧などの整定パラメータを予め適切な値に設定されており、これらの整定パラメータに従い、配電系統2の電圧を適正範囲内に収める。
【0026】
図2のタップ切替並列コンデンサ21bは、接続数が変更できる複数の並列コンデンサと、電圧センサと、制御部で構成されており、動作時間、不感帯、基準電圧などの整定パラメータに従って配電系統の電圧を制御する。電圧センサによって計測した配電系統への接続点の電圧が設定した基準電圧からの不感帯領域を逸脱した時間が、所定の動作時間を超過した場合に、接続する並列コンデンサの数を増減する。
【0027】
図2の配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1のハード構成について説明する。配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1は、表示部12、キーボードやマウス等の入力部13、通信部14、コンピュータや計算機サーバ(CPU:Central Processing Unit)などの演算部15、演算過程のデータなどを一時記憶するRAMなどのメモリ16、記憶部17がバス11により接続されている。
【0028】
このうち入力部13は、例えば、キーボードスイッチ、マウス等のポインティング装置、タッチパネル、音声指示装置、視線移動と瞬きの検知による非接触型入力装置等の少なくともいずれか一つを備えて構成できる。
【0029】
通信部14は、通信ネットワーク3に接続するための回路および通信プロトコルを備える。演算部15は、記憶部17から所定のコンピュータプログラムデータD7を読み込んで実行する。演算部15は、一つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、または、計算機サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。メモリ16は、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、記憶部17から読みだされたプログラムデータD7を記憶したり、各処理に必要な計算結果データを記憶したりする。
【0030】
また入力部13を介して配電系統から得るデータは、具体的には以下のようである。
【0031】
系統構成データD1には、電圧調整装置21の情報(例えば、制御方式、タップの数、インピーダンス等)と、配電線23のネットワーク構成と、配電線23および変圧器のインピーダンス等が含まれる。
【0032】
機械機構調整量変化量の閾値データD2は、電圧計算における組合せについて、近似計算を継続するか、潮流計算を実施するか切り替える閾値である。
【0033】
自然電源出力変動量データD3には、推定される分散電源24の出力変動量等が含まれる。自然電源出力変動量データD3は、分散電源24の発電設備の定格容量と、分散電源24が直流電源である場合は配電系統への連系用インバータの皮相電力容量および種類(電圧上昇時の抑制方法等、電圧上昇時に自律的抑制を始める電圧の閾値)と、抑制に関する契約(抑制日数上限、抑制の優先順位等)等から推定してもよい。
【0034】
電圧上下限データD4は、需要家に適正電圧で電力を供給するため、配電系統において満たす必要のある電圧の上限値と下限値である。
【0035】
電圧感度データD4は、予め定められて、記憶部17に格納されている。
【0036】
次に、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1の計算処理内容について
図3を用いて説明する。
図3は、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置1の処理の全体を示すフローチャートの例である。
【0037】
図3についてまず、簡単に流れを説明する。
図3の支援装置1の最初の処理ステップS1では、入力部13を介して、系統構成データD1と機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、電圧上下限データD4を入力する。処理ステップS2は、
図1の配置位置選択部101に対応しており、ここでは、系統構成データD1を用いて、電圧調整装置21の配置位置データD5を算出する。処理ステップS3は、
図1の組合せ生成部102に対応しており、ここでは、配置位置データD5を用いて、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6を算出する。処理ステップS4は、
図1の電圧計算部103に対応しており、ここでは、系統構成データD1と、機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、配置位置データD5と、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6と、電圧感度データD7とを用いて、電圧計算結果データD8を算出する。処理ステップS5は、
図1の適正配置決定部104に対応しており、ここでは、電圧上下限データD4と、電圧計算結果データD8を用いて、適正配置位置データD9を算出する。最後に、処理ステップS5において算出した適正配置位置データD9を用いて、配電系統における電圧調整装置の適正配置を通信部14で表示部12に表示する。
【0038】
以上の概略処理の流れを処理ステップごとにさらに詳細に説明する。
【0039】
処理ステップS1では、系統構成データD1と機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、電圧上下限データD4を入力部13および表示部12を用いて入力する。このとき通信ネットワーク3および通信部14を通してデータを入力してもよい。
【0040】
処理ステップS2は、系統構成データD1を用いて、電圧調整装置21の配置位置データD5を算出する。電圧調整装置21の配置位置は、対象となる配置候補位置の組合せを選択する。配置位置は、配電系統運用者が予め範囲を指定したものから決定してもよいし、既設系統に対する追設、移設、撤去を1台ずつ検討してもよい。なお、以下の説明においては、
図2に示した配電系統2において、自動電圧調整器SVRとして21aと、タップ切替並列コンデンサ21bを、図示の位置に新設配置することを想定して説明を行う。
【0041】
処理ステップS3は、電圧調整装置21の配置位置データD5を用いて、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6を算出する。本処理では、配電系統に配置する電圧調整装置の機械機構調整量の組合せを生成する。機械機構調整量の組合せは、取りうる組合せを網羅的に生成してもよいし、ある電圧調整装置の機械機構調整量を固定してもよい。ここで機械機構調整量の組合せとは、例えば自動電圧調整器SVR21aが9段階のタップ位置に調整可能である時には、9通りの組み合わせが想定でき、またタップ切替並列コンデンサ21bが容量の異なる3個のコンデンサを備えているとしたときには投入容量で考えると投入しない場合を含めて7通りの組み合わせが想定できる。さらに自動電圧調整器SVR21aとタップ切替並列コンデンサ21bの双方を新設配置することを想定した場合には、両者で63通りの組み合わせが想定できることになる。
【0042】
処理ステップS4は、系統構成データD1と、機械機構調整量変化量の閾値データD2と、自然電源出力変動量データD3と、配置位置データD5と、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6と、電圧感度データD7とを用いて、電圧計算結果データD8を算出する。
【0043】
ここで、
図4を用いて、電圧計算部103における電圧計算の流れを説明する。
図4は、処理ステップS41~S47を通して、潮流計算と電圧感度を用いる電圧近似計算のいずれかにより配電系統上の電圧を求める方法を示している。
【0044】
処理ステップS41では、電圧計算未実施の配置位置・機械機構調整量の組合せを選択する。また、基準の機械機構調整量を保持していない場合には、基準の機械機構調整量を選択して保持する。例えば、はじめは素通しタップと呼称される電圧調整をしないタップ位置を基準の機械機構調整量として選択すればよい。処理ステップS42では、配置位置に対して、電圧感度を参照済みでない場合には、処理ステップS43に進む。処理ステップS43では、系統構成データD1と、自然電源出力変動量データD3と、配置位置データD5と、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6を用いて、潮流計算で電圧計算し、潮流計算を実施した機械機構調整量組合せを新たな基準の機械機構調整量として保持し、処理ステップS44に進む。処理ステップS44では、潮流計算によって得られた電圧計算結果および電圧調整装置の配置位置と機械機構調整量の組合せに基づいて、対応する電圧感度データD7を参照し、処理ステップS47に進む。なお、電圧感度データD7は、必要な分のデータを適宜データベースから参照してもよいし、計算高速化のために、使用が想定される分のデータをはじめにすべてメモリ16にデータを読み込み、必要な分のデータを適宜メモリ16から参照してもよい。
【0045】
処理ステップS42に戻り、電圧感度を参照済みの場合には、処理ステップS45に進む。処理ステップS45では、選択した機械機構調整量と基準の機械機構調整量の差の絶対値である機械機構調整量変化の大きさが機械機構調整量変化量の閾値データD2以上となる場合には、ステップS43に進む。処理ステップS45において、機械機構調整量変化の大きさが機械機構調整量変化量の閾値データD2より小さい場合には、処理ステップS46に進む。
【0046】
処理ステップS46では、系統構成データD1と、自然電源出力変動量データD3と、配置位置データD5と、配置位置および機械機構調整量組合せデータD6と、電圧感度データD7を用いて、電圧近似計算で電圧計算する。電圧近似計算は、潮流計算で求めた電圧に、電圧感度と電圧調整装置の機械機構調整量変化量の積で求めた電圧変動量を加えることで電圧を算出する。例えば、配電系統のノード#iにおける電圧Viについて電圧計算する場合に、配電系統上に配置したある電圧調整装置#jの機械機構調整量njと、電圧感度ΔVi/Δnjと潮流計算で算出したノード#iの電圧Vbiと、潮流計算を実施した機械機構調整量nbjと電圧計算する機械機構調整量njの間では、(1)式が成立するように定められる。
[数1]
Vi=Vbi+ΣΔVi/Δnj・(nj-nbj) (1)
電圧近似計算が終了したら、処理ステップS47に進む。
【0047】
処理ステップS47では、すべての配置位置・機械機構調整量の組合せについて電圧計算を実施していない場合には、処理ステップS41に戻る。処理ステップS47において、すべての配置位置・機械機構調整量の組合せについて電圧計算を実施した場合には、処理フローを終了する。
【0048】
ここで
図4における処理の具体的な概念を、
図5a、
図5bを用いて説明する。まず
図5aは、横軸に新たに追加設置する予定の自動電圧調整器SVR21aの負荷側各位置p(p1、p2、p3など)を示し、縦軸側に機械機構調整量の組合せ(タップ位置tp1、p2、tp3)ごとの電圧を示している。自動電圧調整器SVR21aのタップ位置により、電圧は平行移動のように変化する関係にある。
【0049】
図4の処理では、タップ位置tpと負荷側各位置pと電圧の大きさの関係を求めようとしており、このときに潮流計算部で電圧計算することは高精度である半面時間を要することから、代表的な条件の事例では潮流計算部で電圧計算を行い、代表的な条件の事例に類似する条件あるいは近似の条件のケースでは、負荷側位置pでの電圧感度を用いて電圧近似計算部による電圧計算を行うとしたものである。さらにこの場合に、類似あるいは近似の条件の範囲を適宜評価し、潮流計算による電圧計算と電圧感度による電圧計算を適宜切り替え使用したものである。この時の切り替えを、機械機構調整量変化量の閾値データD2を基準として行っている。
【0050】
図5bも同様趣旨のものであるが、自動電圧調整器SVR21aの他に、タップ切替並列コンデンサ21bの影響も併せて考慮したものであり、前記例では合計63種類の組み合わせを想定している。タップ切替並列コンデンサ21bの投入により、タップ切替並列コンデンサ21bから配電用変電所側の電圧の低下または上昇の程度が変化する関係にあるので、双方の影響を合わせて負荷側各位置pの電圧を推定する必要がある。
【0051】
図3に戻り、処理ステップS5は、
図1の適正配置決定部104に対応しており、ここでは、電圧上下限データD4と、電圧計算結果データD8を用いて、適正配置位置データD9を算出する。
【0052】
ここで、
図6を用いて、電圧調整装置の適正配置位置の算出の流れを説明する。
図6は、処理ステップS51~S54通して、電圧計算結果を用いて電圧調整装置の配置する方法を示している。
【0053】
処理ステップS51では、すべての配置位置と機械機構調整量の組合せについて電圧余裕算出を終了していない場合には、ステップS52に進む。ステップS52では、電圧余裕未計算の配置位置と機械機構調整量の組合せにおける電圧余裕を算出し、ステップS51に戻る。ステップS51において、配置位置と機械機構調整量の組合せすべてについて電圧余裕算出を終了した場合には、ステップS53に進む。ステップS53では、電圧余裕が正となりうる配置のうち電圧調整装置の台数が最小の配置を抽出し、ステップS54に進む。ステップS54では、ステップS53で抽出した配置のうち電圧余裕が最大となる適正配置位置データD9を出力する。
【0054】
図3に戻り、処理ステップS6では、適正配置位置データD9を通信部14で表示部12に表示する。
【0055】
ここで、適正閾値推定部を備えて、適正閾値データを算出し、算出した適正閾値データを表示部に提示してもよい。
【0056】
ここで
図6における処理の具体的な概念を、
図7を用いて説明する。
図7は例えば配置位置と機械機構調整量の組合せの違いによる変動を示した図であり、例えば配電線に許容される上下限電圧(例えば100V系統では101±6ボルト)に対して、Vp2a、Vp2b、Vp2cのような傾向を示すとした場合には、上下限電圧に対する余裕度が高い、言い換えると中心電圧に近い電圧のVp2bを示すものを選択するのがよいことになる。この場合に、例えば、すべての配電系統のノードにおいて電圧計算結果と上下限電圧の差分を算出し、それらの差分のうちの最小値を電圧余裕として用いることができる。
【0057】
以上述べたように、本発明においては、一つ以上の配置位置と機械機構調整量の組合せについて潮流計算で電圧計算し、潮流計算した組合せを基準として、機械機構調整量変化の大きさが閾値より小さい組合せでは、潮流計算で求めた電圧に、参照した電圧感度と機械機構調整量変化の大きさを用いて計算した電圧変動量を加えることで電圧近似計算を実施する。また、機械機構調整量変化量が閾値以上の組合せでは、潮流計算を用いて電圧計算することにより高精度と高速化の双方を解決したものである。
【0058】
本発明によれば、潮流計算と電圧近似計算を機械機構調整量変化量の閾値に基づいて選択して電圧計算することで、近似誤差を最小限に抑えつつ電圧計算を高速化し、配置計画を高速化できる。
【実施例2】
【0059】
実施例1では、機械機構調整量変化量の閾値データD2が、入力部13から入力データとして与えられていることを前提としている。実施例2では、機械機構調整量変化量の閾値データD2を具体的に設定するための手法について説明する。機械機構調整量変化量の閾値データD2は、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置に適用する場合に、電力会社の配電系統運用者が使用しやすいように、電圧精度目標を元に事前に取り決めて提示され、または自動で入力される。実施例2において、機械機構調整量変化量の閾値データD2は、具体的には以下のようにして定められる。
【0060】
まず閾値推定部を備える。閾値推定部は、
図1の演算部(CPU)15内の機能として備えることができ、或は支援装置1とは別個に設置された装置で計算した結果を入力部13から取り込む形式のものであってもよい。
【0061】
閾値推定部では、配電系統の電圧調整装置配置計画の支援装置に適用する前に、代表ケースにおける系統解析によって求めた誤差と、運用上基準となる電圧精度目標を用いて閾値データD2を算出する。
【0062】
例えば、誤差が最大と推定される配電系統のノードを複数抽出し、閾値を設定する自動電圧調整器の機械機構調整量を変化させたときに、その点について潮流計算と感度計算の誤差が、電圧精度目標以上となる機械機構調整量変化の大きさを閾値として提示する。
【0063】
より詳細には、例えば、閾値を設定する自動電圧調整器において、近似誤差が最大となりうる配電系統のノードを抽出する。そのノードにおいて、近似誤差が変圧器1タップ分の電圧幅などから導いた電圧精度目標ε以上となる範囲における機械機構調整量変化量Δnの最小値を閾値Δnthとして用いる。
【0064】
ここで、閾値を設定する当該の自動電圧調整器について、機械機構調整量変化がΔnのときに、高圧配電系統における自動電圧調整器の電圧管理範囲から選択したノード#iにおいて、潮流計算によって計算した電圧と電圧感度を用いて計算した電圧の差分を取って算出した誤差のデータをΔVer_i(Δn)とする。閾値Δnthは、誤差のデータΔVer_i(Δn)と、閾値を決める電圧精度目標値εの間で(2)式が成立する機械機構調整量変化量Δnのうち、最小値の値として定められる。
[数2]
|ΔVer_i(Δn)|/ε≧1 (2)
なお、閾値を決める電圧精度目標εとしては、例えば下記のような値を用いるのがよい。例えば、配電系統の柱上変圧器1タップ分の電圧幅公称値Vnom(150Vなど)の半値を用いることができる。この場合に、1タップ分が150Vの場合は、電圧精度目標値εは、ε=Vnom/2=75(V)として定めることができる。
【0065】
また例えば、自動電圧調整器のタップの1タップ分の電圧公称値Vsvrnom(100Vや150Vなど)半値を用いることができる。この場合に、1タップ分が100Vの場合は、電圧精度目標値εは、ε=Vsvrnom/2=50(V)として定めることができる。
【0066】
また例えば、自動電圧調整器が自動で電圧調整する際の制御パラメータの1つである電圧目標値Vrefに対する不感帯幅(高圧配電系統における電圧換算値)を用いることができる。目標電圧6600Vに対して、1.5%の不感帯を取っている場合には、電圧精度目標値εはε=6600V*0.015=99Vとして定めることができる。
【0067】
なお、電圧精度目標εは、上記のVnomや自動電圧調整器のVsvrnomやVrefに対する不感帯幅などに基づく電圧精度目標のうちから複数の電圧精度目標を事前に設定しておき、閾値を決める際に、その中から適切な値を一つ自動的に選択してもよい。適切な値の選び方としては、例えば、事前に設定した電圧精度目標が複数ある場合に、対象とする配電系統の構成に適用可能な電圧精度目標の基準のうち、最小の値を選択することができる。
【0068】
実施例2によれば、閾値を算出することにより、機械機構調整量変化量の閾値データD2の選択に要する時間が減り、より高速に計算できる。
【0069】
さらに、実施例を実行するに当たり、以下のことを考慮するのがよい。例えば自動電圧調整器の負荷側が複数に分岐されており、これらの分岐配電系統が自動電圧調整器の電圧管理範囲である場合に、一番電圧差が出る分岐配電系統上のポイントを事前に決めておき、その差をチェックすると計算量が低減できる。なお、系統構成により潮流計算と電圧近似計算の差分量は異なることを考慮するのがよい。
【符号の説明】
【0070】
1:支援装置
2:配電系統
3:通信ネットワーク
11:バス
12:表示部
13:入力部
14:通信部
15:CPU
16:メモリ
17:記憶部
21:電圧調整装置
21a、21c:自動電圧調整器SVR
21b:タップ切替並列コンデンサ
22:配電用変電所
23:配電線
24:分散電源
25:負荷
26:母線
101:配置位置選択部
102:組合せ生成部
103:電圧計算部
104:適正配置決定部