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特許7001539測位システム、空調システム、端末装置、位置推定装置、位置推定方法、音波出力方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】測位システム、空調システム、端末装置、位置推定装置、位置推定方法、音波出力方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/22 20060101AFI20220112BHJP
   F24F 11/63 20180101ALI20220112BHJP
【FI】
G01S5/22
F24F11/63
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018093918
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019200091
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】水野 尚夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 成治
(72)【発明者】
【氏名】西川 尚希
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真範
(72)【発明者】
【氏名】桜井 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
(72)【発明者】
【氏名】岩田 久雄
(72)【発明者】
【氏名】小野川 英
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-058025(JP,A)
【文献】特開2015-166685(JP,A)
【文献】特開2010-134367(JP,A)
【文献】特開2006-234649(JP,A)
【文献】特開昭56-001349(JP,A)
【文献】特表2005-522708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0019525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/00 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、を備える端末装置と、
前記音波を収音する複数のセンサと、
位置推定装置と、
を備え、
前記音波出力部は、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む前記第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力し、
前記位置推定装置は、
前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、
複数の前記センサのそれぞれが収音した音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、
を備える、測位システム。
【請求項2】
連続した音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、を備える端末装置と、
前記音波を収音する複数のセンサと、
位置推定装置と、
を備え、
前記音波出力部は、第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力し、
前記位置推定装置は、
前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、
複数の前記センサのそれぞれが収音した音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、
前記第1周波数を通過帯域に含み、前記第2周波数を通過帯域に含まないフィルタと、
を備え、
前記到達時刻検出部は、前記第1周波数の前記音波を検出した時刻を、前記到達時刻とする、
測位システム。
【請求項3】
前記位置推定装置は、
前記第1周波数および前記第2周波数の前記音波を、前記音波の前記振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換する変換部、をさらに備え、
前記到達時刻検出部は、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する、
請求項1に記載の測位システム。
【請求項4】
前記振幅の変化が所定の範囲内となる時間は、50msec以上、200msec以下である、
請求項1または請求項3に記載の測位システム。
【請求項5】
前記第1周波数と前記第2周波数との差が1KHz以上である、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システム。
【請求項6】
前記位置推定装置が、
前記第1周波数と前記第2周波数と、を通過帯域に含むフィルタ、
をさらに備え、
前記到達時刻検出部は、前記第1周波数と、前記第2周波数との差に基づいて、前記到達時刻を検出する、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システム。
【請求項7】
前記位置推定装置が、
前記第1周波数を通過帯域に含み、前記第2周波数を通過帯域に含まないフィルタ、
をさらに備え、
前記到達時刻検出部は、前記第1周波数の前記音波を検出した時刻を、前記到達時刻とする、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システム。
【請求項8】
前記音波出力部が、10kHzから20kHzまでの間の所定の周波数帯の音波を出力する、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システム。
【請求項9】
前記位置推定装置が、
前記音波の到達時刻の推定、または、前記音波の出力位置の推定に失敗すると、エラー信号を出力する通信部、
をさらに備える請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システム。
【請求項10】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の測位システムを備え、
前記位置推定装置が推定した前記音波の出力位置を対象として空調を行う、
空調システム。
【請求項11】
自装置の位置を通知するために音波を出力する端末装置であって、
出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、
を備え
前記音波出力部は、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する、
端末装置。
【請求項12】
複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波について、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換する変換部と、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間に出力された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、
複数のセンサのそれぞれが収音した前記音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、
を備える位置推定装置。
【請求項13】
複数のセンサが、連続する複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波を検出するステップと、
検出した前記音波を、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換するステップと、
前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間について設定された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出するステップと、
複数の前記センサのそれぞれが検出した前記音波について、前記到達時刻を検出するステップで検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定するステップと、
を有する位置推定方法。
【請求項14】
音波の出力位置を通知するための音波出力方法であって、
出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力するにあたり、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む前記第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する、
音波出力方法。
【請求項15】
コンピュータを、
出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力するにあたり、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む前記第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータを、
複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波について、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによって変換されたパルス信号を取得して、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間について設定された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する手段、
複数のセンサのそれぞれが検出した前記音波について、前記到達時刻を検出する手段が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、空調システム、端末装置、位置推定装置、位置推定方法、音波出力方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等の空間を空調する場合、その空間の室温等が均一になるように制御することが多い。これに対し、例えば、ユーザが存在するエリアを対象として室温等の空調制御を行う方法が提供されている。このような制御を行う場合、空調システムは、ユーザが存在する位置を正確に推定する必要がある。例えば、天井の4か所に音を検出するマイクを取り付け、ユーザが所持するスマートフォン等から音を出力し、その音の到達時間差に基づいて、TDOA(Time Difference of Arrival)などの方法を用いてユーザが存在する位置を推定する方法が考えられる。
【0003】
なお、特許文献1には、複数の利用者が存在する空間において、利用者が保持する環境設定端末の電波強度やTDOA測定に基づいて各個人の位置を特定し、各々の空調要求を可能な限り満たすような制御を行う空調制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4867836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ユーザがスマートフォン等を利用して発する音の波形は、その振幅が徐々に大きくなる性質を有する。その為、センサ側では、振幅がどの大きさになると音を検出したと判定するかによって音の到着時刻に差が出る。TDOA等の方法では、複数の位置における音の到達時間差に基づいて位置推定を行うが、音の到着時刻を正確に検出できないと、位置推定の精度が低下する可能性がある。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる測位システム、空調システム、端末装置、位置推定装置、位置推定方法、音波出力方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、測位システムは、出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、を備える端末装置と、前記音波を収音する複数のセンサと、位置推定装置と、を備え、前記音波出力部は、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む、前記位置推定装置は、前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、複数の前記センサのそれぞれが収音した音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様によれば、測位システムは、連続した音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、を備える端末装置と、前記音波を収音する複数のセンサと、位置推定装置と、を備え、前記音波出力部は、第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力し、前記位置推定装置は、前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、複数の前記センサのそれぞれが収音した音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、前記第1周波数を通過帯域に含み、前記第2周波数を通過帯域に含まないフィルタと、を備え、前記到達時刻検出部は、前記第1周波数の前記音波を検出した時刻を、前記到達時刻とする。
本発明の一態様によれば、前記位置推定装置は、前記第1周波数および前記第2周波数の前記音波を、前記音波の前記振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換する変換部、をさらに備え、前記到達時刻検出部は、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、前記第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する。
【0009】
本発明の一態様によれば、前記振幅の変化が所定の範囲内となる時間は、50msec以上、200msec以下である。
【0010】
本発明の一態様によれば、前記第1周波数と前記第2周波数との差が1KHz以上である。
【0011】
本発明の一態様によれば、前記位置推定装置が、前記第1周波数と前記第2周波数と、を通過帯域に含むフィルタ、をさらに備え、前記到達時刻検出部は、前記第1周波数と、前記第2周波数との差に基づいて、前記到達時刻を検出する。
【0012】
本発明の一態様によれば、前記位置推定装置が、前記第1周波数を通過帯域に含み、前記第2周波数を通過帯域に含まないフィルタ、をさらに備え、前記到達時刻検出部は、前記第1周波数の前記音波を検出した時刻を、前記到達時刻とする。
【0013】
本発明の一態様によれば、前記音波出力部が、10kHzから20kHzまでの間の所定の周波数帯の音波を出力する。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記測位システムにおいて、前記位置推定装置が、前記音波の到達時刻の推定、または、前記音波の出力位置の推定に失敗すると、エラー信号を出力する通信部、をさらに備える。
【0015】
本発明の一態様によれば、空調システムは、上記の何れかに記載の測位システムを備え、前記位置推定装置が推定した前記音波の出力位置を対象として空調を行う。
【0016】
本発明の一態様によれば、端末装置は、自装置の位置を通知するために音波を出力する端末装置であって、出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力する音波出力部、を備え、前記音波出力部は、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する。
【0017】
本発明の一態様によれば、位置推定装置は、複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波について、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換する変換部と、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間に出力された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する到達時刻検出部と、複数のセンサのそれぞれが収音した前記音波について、前記到達時刻検出部が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する位置推定部と、を備える。
【0018】
本発明の一態様によれば、位置推定方法は、複数のセンサが、連続する複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波を検出するステップと、検出した前記音波を、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによってパルス信号に変換するステップと、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間について設定された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出するステップと、複数の前記センサのそれぞれが検出した前記音波について、前記到達時刻を検出するステップで検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定するステップと、を有する。
【0019】
本発明の一態様によれば、音波出力方法は、音波の出力位置を通知するための音波出力方法であって、出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力するにあたり、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する。
【0020】
本発明の一態様によれば、プログラムは、コンピュータを、出力の開始から音圧の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、前記振幅が増大する性質を有する音波について、連続した前記音波を、複数の時間区間ごとに異なる周波数に変化させて出力するにあたり、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定した後の第1の前記時間区間に所定の第1周波数の音波を出力し、前記音波の音圧の振幅が前記範囲内に整定するまでの時間を含む、第1の前記時間区間の一つ前の前記時間区間に所定の第2周波数の音波を出力する手段、として機能させる。
【0021】
本発明の一態様によれば、プログラムは、コンピュータを、複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力された連続する音波について、前記音波の音圧の振幅が所定の閾値以上か否かによって変換されたパルス信号を取得して、前記パルス信号の周期又は前記パルス信号のパルス幅に基づいて、複数の前記時間区間のうち2つ目以降の前記時間区間について設定された所定の第1周波数の前記音波の到達時刻を検出する手段、複数のセンサのそれぞれが検出した前記音波について、前記到達時刻を検出する手段が検出した前記到達時刻の時間差に基づいて前記音波の出力位置を推定する手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、正確に音源の位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一実施形態における空調システムの一例を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態におけるマイクの配置例を示す図である。
図3】本発明の第一実施形態における音信号を説明する図である。
図4】本発明の第一実施形態における音の到達時刻の検出方法を説明する図である。
図5】本発明の第一実施形態における音源の位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第一実施形態における空調制御の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第二実施形態における空調システムの一例を示す図である。
図8】本発明の第二実施形態における音の周波数とフィルタの通過帯域の関係の一例を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態における音の到達時刻の検出方法を説明する図である。
図10】本発明の第二実施形態における音源の位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の各実施形態における位置推定装置、端末装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態による空調システムを図1図6を参照して説明する。
図1は、本発明の第一実施形態における空調システムの一例を示す図である。
図示するように空調システムは、空調機10と、端末装置40と、マイクM1~M4とを含む。空調機10は、制御装置20を備える。制御装置20は、空調機10の運転を制御する。制御装置20は、空間wの一部のエリアを対象として、空調を行うよう空調機10を制御する機能を有している。制御装置20は、位置推定装置30を備える。位置推定装置30は、端末装置40が発した音sに基づいて、音sが発された位置を推定する。制御装置20は、例えば、位置推定装置30が推定した位置を対象として空調制御を行う。
【0025】
端末装置40は、音波出力部41を備える。音波出力部41は、端末装置40を操作するユーザの位置を空調機10へ知らせる目的で、連続する複数の時間区間ごとに異なる周波数の音波sを連続的に出力する。端末装置40は、例えば、スマートフォン等の情報処理装置である。音波出力部41が出力する音sの周波数には、もともと存在する様々な騒音と混在しないように、騒音レベルが低い周波数が選択される。例えば、10kHz以下の音は、可聴音やエアコン動作に伴う風切り音などで用いられる。また、一般的なスマートフォンが出力できる周波数の上限は20kHz程度である。従って、音sの周波数は、10~20kHzの範囲から選択することが望ましい。さらに、音sの周波数は、空調機10が備えるインバータのスイッチングの周波数(例えば17kHz付近)を避けて設定されることが好ましい。また、可聴域は人が不快に感じる可能性があるため、音sの周波数は、可聴域(10~20kHzの範囲であれば、周波数が低い程、聞こえやすい)を避けて設定してもよい。また、上限にあたる20kHz付近の出力には限界があり、高周波になるほど振幅が減衰しやすくなるため、例えば、20kHz付近は避けて設定することが好ましい。これらの諸条件を考慮して、音sの周波数は、例えば、15kHz付近に設定される。また、後述するように、音波出力部41が出力する音は、音の出力開始から、波形の振幅が所定の範囲内に整定するまでの間、振幅が徐々に大きくなる性質を有する。音波出力部41は、振幅が大きくなるまでの時間区間T1と、それ以降の時間区間T2とで周波数を変更した一連の音sを出力する。時間区間T1における音sの周波数をα1、時間区間T2における音sの周波数をα2とする。
【0026】
端末装置40と位置推定装置30とは、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、超音波通信などの通信手段によって通信可能に構成されている。
マイクM1~M4は、端末装置40が出力した音sを収音するセンサである。
【0027】
位置推定装置30は、端末装置40が出力した音sがマイクM1~M4の各々に到達する時刻の差に基づいて、その音源(端末装置40)の位置を推定する。制御装置20は、位置推定装置30が推定した位置を対象として空調制御を行う。
【0028】
次に位置推定装置30の機能について説明する。位置推定装置30は、アンプ31と、フィルタ32と、コンパレータ33と、マイコン34と、を備える。
アンプ31は、マイクM1~M4が音sを収音して電気信号に変換したアナログの音信号をマイクM1~M4別に取得し、それぞれの振幅を増幅する。アンプ31は、増幅後のアナログ音信号(マイクM1~M4ごとのアナログ音信号)をフィルタ32へ出力する。
フィルタ32は、アンプ31から取得したアナログ音信号の不要な高周波成分及び低周波成分を減衰させて、予め定められた周波数帯のアナログ音信号をコンパレータ33へ出力する。フィルタ32は、端末装置40が出力する音sの周波数α1、α2を通すように構成されている。
コンパレータ33は、フィルタ32が出力した音sのアナログ音信号の振幅と、所定の閾値とを比較してアナログ音信号の振幅が閾値を上回れば「1」を出力し、アナログ音信号の振幅が閾値以下であれば「0」を出力する。ここで閾値とは、端末装置40から出力された音sが到達したか否かを判定するための値である。コンパレータ33は、「0」または「1」のパルス信号をマイコン34へ出力する。
【0029】
マイコン34は、CPU(central processing unit)を備えたコンピュータである。マイコン34は、到達時刻検出部35と、位置推定部36と、通信部37とを備えている。
到達時刻検出部35は、マイクM1~M4のそれぞれに音sが到達した時刻(到達時刻)を検出する。具体的には、到達時刻検出部35は、周波数α2の音sを検出した時刻を、音sの到達時刻とする。
【0030】
位置推定部36は、マイクM1~M4のうちの1つのマイク(例えばマイクM1)を基準として、基準となるマイクM1が音sを検出した時刻と、他の3つのマイクM2~M4が音sを検出した時刻との差、つまり、音sがマイクM1に到達する時刻と、マイクM2~M4に到達する時刻との時間差(到達時間差)を算出する。位置推定部36は、算出した到達時間差に基づいて、音sが出力された位置(ユーザが存在する位置)を推定する。
通信部37は、端末装置40と通信を行い、到達時刻推定処理や位置推定処理の成功または失敗の結果を送信する。
【0031】
次に図2を用いて本実施形態における位置推定方法の一例について説明する。
図2は、本発明の第一実施形態におけるマイクの配置例を示す図である。
図2にマイクM1~M4の配置例を示す。マイクM1~M4は、空間wの天井に、例えばマイクM1~Mの各々が、空調機10の吹き出し口の中心を重心とする正方形の頂点をなすように配置される。
位置推定部36は、マイクM1~M4が音sを検出した時刻の差(到達時間差)に基づいて端末装置40の位置を推定する。位置の推定には、TDOA(Time Difference Of Arrival)等の公知の手法を用いることができる。例えば、マイクM1~M4の座標をそれぞれ(A1、B1、C1)、(A2、B2、C2)、(A3、B3、C3)、(A4、B4、C4)とし、端末装置40の位置の座標を(x、y、z)とし、マイクM1への音sの到達時刻とマイクM1~M4への音sの到達時刻の差をそれぞれt1、t2、t3.t4とし、端末装置40とマイクM1の距離をd、音速をcとすると、以下の連立方程式が得られる。
(x-A1)+(y-B1)+(z-C1)-(d+c・t1)=0
(x-A2)+(y-B2)+(z-C2)-(d+c・t2)=0
(x-A3)+(y-B3)+(z-C3)-(d+c・t3)=0
(x-A4)+(y-B4)+(z-C4)-(d+c・t4)=0
TDOAによれば、端末装置40の位置は、ニュートン-ラプソン法等の近似計算を用いて、上記の方程式を解くことにより算出することができる。このように、音源位置を推定するためには、各マイク間の到達時間差を正確に算出しなければならない。その為には、マイクM1~M4への正確な到達時刻が検出できなければならない。次にスマートフォン等の端末装置40(音波出力部41)が出力する音sの性質について説明する。
【0032】
図3は、本発明の第一実施形態における音信号を説明する図である。
図3(a)に、端末装置40が発するアナログ音信号の一例を示す。スマートフォン等が出力するアナログ音信号の音圧の振幅(振幅が所定の範囲内となった場合)は、図3(a)に示すようにばらつきがある。従って、音sの到達を検出するためには、音圧に閾値を設け、この閾値を所定の回数上回ると、その時刻を音sの到達時刻と決定する方法が考えられる。
図3(b)は、マイクM1等で検出する音sの音圧の振幅の経時的変化を示している。図3(b)は、スマートフォン等が出力する音sは、出力開始から音圧の振幅が徐々に増大し、その波形の形状がラッパ状となることを示している。波形がこのように変化する場合、音sの到達を判定するための音圧の閾値をどのように設けるかによって到達時刻が変化することになり、音sの検出の判定が不明瞭になる。また、スマートフォンの機種や音sの周波数などによって音圧の立ち上がり方(傾き)や音圧のピーク(振幅のピーク)が異なるため、一つの閾値によって音sの到達判定を行うことができなくなる。そこで、本実施形態では、音sの波形の立ち上がりまでに一定の時間が掛かることを利用して、音sの到達時刻を推定する。次に図4を用いて、本実施形態の到達時刻の推定方法を説明する。
【0033】
図4は、本発明の第一実施形態における音の到達時刻の検出方法を説明する図である。
まず、端末装置40が出力する音波sについて説明する。図4の上図は、音sの音圧の波形を示している。
端末装置40の音波出力部41は、音sの出力開始から時間区間T1の間は、周波数α1の音波を出力する。ここで、時間区間T1の長さは、例えば、100msec程度である。時間区間T1の長さは、音sの振幅が徐々に大きくなり、所定の範囲内に整定するまでの時間に相当する長さとして設定される。時間区間T1の長さは、端末装置40の種類や周波数αなどに依存するため、音sの振幅が静定するまでの長さに応じて、50msec~200msecの間で適切に設定される。また、時間区間T1の長さは、音sの振幅が増幅し整定するまでに要する時間より少し余裕をもった長さとして設定されてもよい。また、周波数α1は、例えば、16KHz程度である。
【0034】
音sの出力から時間区間T1を経て時間区間T2を迎えると、音波出力部41は、音sを出力したまま周波数をα1からα2へと変更する。周波数α2は、例えば、15KHz程度である。周波数α1の音波と周波数α2の音波を識別するために、周波数α1と周波数α2の間は、1KHz以上離れていることが好ましい。音波出力部41は、例えば、時間区間T1の長さと同程度の長さに設定された時間区間T2の間、周波数α2で音sを出力する。
【0035】
次に到達時刻検出部35による音sの検出処理について説明する。
図4の上図のPthは、コンパレータ33がパルス信号を生成する際の閾値である。コンパレータ33は、音sの振幅が閾値Pthを上回っていれば「1」を出力し、閾値Pth以下であれば「0」を出力する。図4の下図に、図4上図の音sに対してコンパレータ33が出力したパルス信号のグラフを示す。時間区間T0の間は、実際には音sが到達しているにもかかわらず、音sの振幅が小さいためにコンパレータ33は「0」をマイコン34に出力する。その後、音sの振幅の最大値が閾値Pthを超えるようになると、振幅の大きさが閾値Pthを上下する周期に応じて、コンパレータ33は、「0」と「1」と交互に出力する。
【0036】
マイコン34では、到達時刻検出部35が、パルス信号を取得すると、「0」と「1」が変化する周期に基づいて、音sの到着を検出する。図示するようにコンパレータ33が出力するパルス信号の周期(又はパルス幅)は、音sの周波数に応じて時間区間T1と時間区間T2とで変化する。到達時刻検出部35は、パルス信号の周期が変わる時刻t3を音sの到着時刻として検出する。例えば、到達時刻検出部35は、パルス信号の「0」続く状態から、一定の周期で「0」、「1」が変化する信号を取得するようになると、その周期を算出し記憶する。到達時刻検出部35は、記憶した周期と、コンパレータ33から取得する「0」と「1」の変化する周期とを比較する。到達時刻検出部35は、取得した信号の周期が連続してX回(例えば3回)、記憶した周期(T1での周期)と異なる(周期の差が所定の閾値以上となる)と、音sが到達したと判定し、音sが到達したと判定した時刻t4から、所定の時間だけ遡った時刻t3を音sの到達時刻とする。所定の時間とは、図4の例では、変化後のパルス周期r0×(X-1)+パルス幅r1である。あるいは、到達時刻検出部35は、時間区間T1の音sの周波数α1と、時間区間T2の音sの周波数α2とに基づいて予め設定された時間区間T1と時間区間T2のパルス信号の周期と、コンパレータ33から取得するパルス信号の周期とを比較して、コンパレータ33から取得するパルス信号の周期が、時間区間T2のパルス信号の周期であるとみなせる範囲となると、音sが到達したと判定し、上記例と同様に、最初に時間区間T2のパルス信号を検出した時刻t3を算出して、時刻t3を音sの到達時刻としてもよい。または、到達時刻検出部35は、パルス信号の周期ではなく、パルス幅r1の変化を検出することによって、同様にして音sの到達時刻を推定してもよい。
【0037】
このように、本実施形態では、端末装置40が、音sの波形の立ち上がりに要する時間(例えば、100msec)に合わせて、波形の振幅が増大する時間区間T1と、振幅の変化が整定した後の時間区間T2とで、周波数の異なる音sを出力する。そして、位置推定装置30では、周波数の変化した時刻t3を推定し、推定した時刻を音sがマイクM1等への到達時刻とする。このように、波形の立ち上がり完了時刻を検出するという基準を設けることにより、出力の開始から振幅が徐々に変化し、振幅にばらつきがあるという音sの性質による、単純に振幅の大きさに対する閾値を設けて、その閾値を超える音信号を検出すると音sが到達したと判定する場合の判定の不確かさを解消することができる。
【0038】
図5は、本発明の第一実施形態における音源の位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
図5を用いて、本実施形態の位置推定処理の流れについて説明する。前提として、位置推定部36は、マイクM1~M4の位置情報を記憶しているとする。また、端末装置40は、音sの出力開始から時間区間T1の間は周波数α1を、時間区間T2の間は周波数α2を出力するプログラム、または、そのような音sを再生により出力することができる所定フォーマットの音声ファイル(wavファイル等)を記憶しており、音波出力部41が当該プログラムを実行したり、当該音声ファイルを再生したりすることにより、端末装置40のスピーカから音sが出力される。
【0039】
まず、ユーザが端末装置40を操作して、複数の時間区間ごとに異なる周波数で出力される音sの出力を開始する。マイクM1~M4は、音sを収音する(ステップS11)。マイクM1~M4は、音sを収音すると、音sを電気信号に変換して、音sのアナログ音信号を、アンプ31へ出力する。アンプ31は、マイクM1~M4が出力した音sのアナログ音信号をそれぞれ増幅させ、フィルタ32へ出力する。フィルタ32は、増幅後の4つのアナログ音信号から、α1とα2が含まれる所定の通過帯域の周波数を抽出してコンパレータ33へ出力する。コンパレータ33は、フィルタ32が出力したマイクM1~M4にて収音された音sについての4つのアナログ音信号の各々を、所定の閾値に基づいてパルス信号に変換して、パルス信号をマイコン34へ出力する。
【0040】
マイコン34では、到達時刻検出部35が4つのパルス信号を取得し、音sの周波数の変化を検出する(ステップS12)。具体的には、到達時刻検出部35は、図4を用いて説明したように4つのパルス信号のそれぞれについて、音sの周波数のα1からα2への変化に対応するパルス信号の周期の変化(又はパルス幅の変化)を検出する。例えば、到達時刻検出部35は、パルス信号の周期が変化して、その周期が所定回数以上連続すると、パルス信号の周期が変化したと判定する。到達時刻検出部35は、パルス信号の周期が変化したと判定した時刻、パルス周期およびパルス幅などを検出し、記憶する。
【0041】
次に到達時刻検出部35は、マイクM1~M4それぞれへの音sの到達時刻を推定する(ステップS13)。例えば、到達時刻検出部35は、ステップS12で記憶したパルス信号の周期が変化したと判定した時刻、パルス周期、パルス幅などを用いて、パルス信号の周期が変化したと判定した時刻から、所定時間遡った時刻を算出し、算出した時刻を音sの到達時刻として推定する。到達時刻検出部35は、推定したマイクM1~M4への音sの到達時刻(4つ)を位置推定部36へ出力する。
位置推定部36は、マイクM1~M4への音sの到達時刻から、例えば、マイクM1とマイクM2への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM3への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM4への音sの到達時刻差を算出し、TDOAにより音源(端末装置40)の位置を推定する(ステップS14)。
【0042】
次に位置推定装置30による位置推定に基づく、空調制御について説明する。
図6は、本発明の第一実施形態における空調制御の一例を示すフローチャートである。
まず、ユーザが端末装置40を操作して、所定の周波数の音sの出力を行う(ステップS21)。空調機10では、マイクM1~M4が音sを収音する(ステップS22)。位置推定装置30は、マイクM1~M4が出力した音sに基づくパルス信号を取得し、到達時刻の推定、音源位置の推定を行う。例えば、パルス信号の周期が所定の範囲内ではない場合や、一定の周期分のパルス信号が取得できないなどの場合、位置推定装置30の到達時刻検出部35は、受信失敗と判定し(ステップS23;No)、通信部37は、端末装置40へエラー信号を送信する(ステップS24)。一方、音sを正常に受信できた場合(ステップS23;Yes)、通信部37は、端末装置40へ受信成功を示す信号を送信する。端末装置40は、受信成功を知らせるメッセージをディスプレイに表示したり、音を鳴らしたりして受信の成功をユーザに通知する。あるいは、空調機10側で、受信成功をユーザに通知するために音を鳴らしたり、LEDを点灯させたりしてもよい。音sの受信に成功した場合、位置推定装置30は、音源の位置を推定する(ステップS25)。推定の方法は、図4図5で説明したとおりである。
【0043】
位置の推定処理に成功した場合(ステップS26;Yes)、通信部37が、端末装置40へ位置推定に成功を示す信号を送信する。端末装置40は、位置推定の成功を知らせるメッセージをディスプレイに表示したり、音を鳴らしたりする。あるいは、空調機10側で音を鳴らしたりLEDを点灯させたりして、位置推定の成功をユーザに通知してもよい。また、位置推定装置30が位置の推定に成功すると、制御装置20は、推定した音源の位置を対象に空調制御を行う(ステップS28)。例えば、制御装置20は、空調機10のルーバー(図示せず)を制御して風向を、推定した音源位置に向けるなどの制御を行う。
【0044】
一方、上記の連立方程式の解が算出できなかったり、算出した解が異常(空間wの範囲外など)だったりした場合、位置推定装置30は、位置の推定処理に失敗する。位置の推定処理に失敗した場合(ステップS26;No)、位置推定装置30は、端末装置40へエラー信号を送信する(ステップS27)。
ステップS24、ステップS27でエラー信号を受信した場合、端末装置40は、ディスプレイ等にメッセージを表示させたり、受信または位置推定に失敗したことを通知する可聴音を鳴らしたり、LEDランプを点灯させたりして、ユーザにエラーを通知する。ユーザは、これらの通知を確認すると、再度、端末装置40を操作して、音sを出力する(ステップS21)。以降、位置推定が成功するまで、上記の過程を繰り返す。
【0045】
本実施形態の位置推定装置30によれば、音の出力と共に音圧の振幅が徐々に増大する性質を有するような音sについて、様々な騒音がある環境下において、マイクM1~M4への到達時刻を精度よく検出することができる。これにより、精度の良い音源(ユーザ)の位置推定が可能になる。また、制御装置20は、位置推定装置30を備えることにより、ユーザが所望するエリアを対象とする空調制御を行うことができる。
【0046】
上記の説明では、端末装置40による音sの1回の出力に対し、位置推定を行う場合を例に挙げたが、1回の位置推定を行うために、端末装置40から一連の音s(時間区間T1,T2の間、それぞれ周波数α1,α2で出力された音)を複数回出力するようにしてもよい。その場合、位置推定装置30は、端末装置40が音sを出力する度に音sの出力位置に対する位置推定を行い、例えば、推定結果の平均値を端末装置40(ユーザ)の位置として推定するようにしてもよい。複数回の推定結果に基づいて最終的な推定位置を決定することで、位置推定処理のばらつきの影響を低減し、位置推定の精度を向上することができる。
【0047】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態による空調システムを、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第二実施形態における空調システムの一例を示す図である。
本発明の第二実施形態に係る構成のうち、本発明の第一実施形態に係る空調システムを構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それらの説明を省略する。第二実施形態に係る空調システムでは、位置推定装置30Aが、到達時刻検出部35の代わりに到達時刻検出部35Aを備える。また、端末装置40Aが、音波出力部41の代わりに音波出力部41Aを備える。
音波出力部41Aは、第一実施形態と同様、音圧を示す振幅が増大する間(時間区間T1´)と、振幅が所定範囲内に整定した後(時間区間T2´)では異なる周波数の音波を出力する。一例として、音波出力部41Aは、時間区間T1には周波数α1´の音波を出力し、時間区間T2には周波数α2の音波を出力する。ここで、周波数α1(第一実施形態)、α1´、α2とフィルタ32の通過帯域との関係を、図8を用いて説明する。
【0048】
図8は、本発明の第二実施形態における音の周波数とフィルタの通過帯域の関係の一例を示す図である。図8にフィルタ32へ入力される周波数ごとのゲイン(利得)を示す。
図示するように時間区間T1の周波数α1(第一実施形態)、時間区間T2の周波数α2は、何れもフィルタ32の通過帯域に含まれている。これに対し、第二実施形態の時間区間T1´における周波数α1´はフィルタ32の通過帯域には含まれない。従って、第二実施形態では、時間区間T1´の間、音sはフィルタ32を通過しない。従って、時間区間T1´の間はコンパレータ33から出力されるパルス信号の値は「0」となる。
【0049】
到達時刻検出部35Aは、例えば、コンパレータ33からの出力が一定して「0」の状態から変化して、「1」が通算して所定回数、又は連続して所定回数出力されると、音sが到達したと判定する。到達時刻検出部35Aは、音sが到達したと判定した時刻から所定時間遡った時刻を音sの到達時刻として推定する。第一実施形態では、パルス信号の周期やパルス幅の変化に基づいて音sの到達時刻を推定したが、第二実施形態では、到達時刻検出部35Aは、「1」の値を有する信号を最初に取得した時刻を音sの到達時刻とする。到達時刻検出部35Aは、マイクM1~M4が検出した音sのそれぞれに対して到達時刻を推定し、4つの到達時刻を位置推定部36へ出力する。
位置推定部36は、マイクM1~M4への音sの到達時刻の推定値から、例えば、マイクM1とマイクM2への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM3への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM4への音sの到達時刻差を算出し、TDOAにより音源(端末装置40)の位置を推定する。
【0050】
図9は、本発明の第二実施形態における音の到達時刻の検出方法を説明する図である。
まず、端末装置40が出力する音波sについて説明する。図9の上図は、音sの音圧の波形を示している。
端末装置40の音波出力部41Aは、音sの出力開始から時間区間T1´の間は、周波数α1´の音波を出力する。時間区間T1´の長さは、第一実施形態と同様に、音sの振幅の大きさが所定の範囲内に整定するまでに要する時間に基づいて設定される(50msec~200msec)。また、周波数α1´は、図8に示すようにフィルタ32の通過帯域に含まれない。
【0051】
音sの出力から時間区間T1´を経て時間区間T2´を迎えると、音波出力部41Aは、音sを出力したまま周波数をα1´からα2へと変更する。周波数をα2は、例えば、15KHz程度である(第一実施形態と同様)。音波出力部41Aは、例えば、時間区間T1´の長さと同程度の長さに設定された時間区間T2´の間、周波数α2で音sを出力する。
【0052】
次に到達時刻検出部35Aによる音sの検出処理について説明する。
フィルタ32は、周波数α1´の音波を通過させないので、時間区間T1´における音圧の振幅が閾値pthを超えていてもコンパレータ33へは、音sは出力されない。その為、時間区間T1´においてコンパレータ33からマイコン34へ出力されるパルス信号の値は「0」である(図9下図)。時間区間T2´になると、フィルタ32は、周波数α2の音波を通過させるため、コンパレータ33は、一定の周期で「1」をマイコン34へ出力するようになる。
【0053】
マイコン34では、到達時刻検出部35Aが、「1」の値を有するパルス信号の取得に基づいて、音sの到着を検出する。到達時刻検出部35Aは、最初に値「1」の信号を取得した時刻t3´を音sの到着時刻として検出する。例えば、到達時刻検出部35Aは、パルス信号の「0」続く状態から、一定の周期で「0」、「1」が変化する信号を取得するようになると、その周期を算出し記憶する。到達時刻検出部35Aは、記憶した周期と、コンパレータ33から取得する「0」と「1」の変化する周期とを比較する。到達時刻検出部35Aは、連続してX回(例えば3回)、「1」を検出すると、音sが到達したと判定し、音sが到達したと判定した時刻t4´から、所定の時間だけ遡った時刻t3´を音sの到達時刻とする。所定の時間とは、図9の例では、パルス周期r0´×(X-1)+パルス幅r1´である。
【0054】
このように、本実施形態では、端末装置40が、連続して一定期間音sを出力する中で、波形の振幅が増大する時間区間T1´ではフィルタ32を通過しない周波数α1´で、振幅の変化が整定した後の時間区間T2´ではフィルタ32を通過する周波数α2で音sを出力する。位置推定装置30では、周波数α2の音sを検出し、音sがマイクM1等への到達時刻を推定する。このように、波形の立ち上がり完了時刻を検出するという基準を設けることにより、出力の開始から振幅が徐々に変化し、振幅にばらつきがあるという音sの性質による、単純に振幅の大きさに対する閾値を設けて、その閾値を超える音信号を検出すると音sが到達したと判定する場合の判定の不確かさを解消することができる。
【0055】
図10は、本発明の第二実施形態における音源の位置推定処理の一例を示すフローチャートである。
前提条件等は、第一実施形態(図5)と同様である。まず、ユーザが端末装置40を操作して、周波数α1´を有する音sの出力を開始する。上記の通り、時間区間T2´では、音sの周波数はα2で出力される。マイクM1~M4は、音sを収音する(ステップS31)。マイクM1~M4は、音sを収音すると、音sを電気信号に変換して、音sのアナログ音信号を、アンプ31へ出力する。アンプ31は、マイクM1~M4が出力した音sのアナログ音信号をそれぞれ増幅させ、フィルタ32へ出力する。フィルタ32は、増幅後の4つのアナログ音信号から、所定の通過帯域の周波数を抽出してコンパレータ33へ出力する。第二実施形態では、フィルタ32は、時間区間T2´に出力された音sのアナログ音信号だけを抽出してコンパレータ33へ出力する。
コンパレータ33は、フィルタ32が出力したマイクM1~M4にて収音された音sについての4つのアナログ音信号の各々を、所定の閾値に基づいてパルス信号に変換して、パルス信号をマイコン34へ出力する。
【0056】
マイコン34では、到達時刻検出部35Aが4つのパルス信号を取得し、マイクM1~M4それぞれへの音sの到達時刻を推定する(ステップS32)。具体的には、到達時刻検出部35Aは、図9を用いて説明したように4つのパルス信号のそれぞれについて、値「1」を検出する。例えば、到達時刻検出部35Aは、コンパレータ33から取得したパルス信号にて連続して、あるいは通算で所定回数以上一定の周期で「1」を検出すると音sを検出したと判定する。到達時刻検出部35Aは、音sを検出したと判定した時刻、パルス周期およびパルス幅などを検出し、記憶する。到達時刻検出部35Aは、記憶した音sを検出したと判定した時刻、パルス周期、パルス幅などを用いて、音sを検出したと判定した時刻から、所定時間遡った時刻を算出し、算出した時刻を音sの到達時刻として推定する。到達時刻検出部35Aは、推定したマイクM1~M4への音sの到達時刻(4つ)を位置推定部36へ出力する。位置推定部36は、マイクM1~M4への音sの到達時刻から、例えば、マイクM1とマイクM2への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM3への音sの到達時刻差、マイクM1とマイクM4への音sの到達時刻差を算出し、TDOAにより音源(端末装置40)の位置を推定する(ステップS33)。
【0057】
本実施形態によれば、マイコン34は時間区間T1´における信号処理を行うことなく、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上記説明では、端末装置40Aが、時間区間T1´においてフィルタ32を通過しない周波数α1´の音波を出力することとしたが、本実施形態の位置推定処理は、フィルタ32の通過帯域を調整して(絞って)、時間区間T1´において出力される音sの周波数を通過させないフィルタを設けることによっても実現してもよい。
【0058】
図11は、本発明の各実施形態における位置推定装置、端末装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904、音信号処理回路905を備える。
上述の位置推定装置30,30A、端末装置40,40Aは、コンピュータ900を備える。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。
【0059】
少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、インタフェース904を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0060】
上述した位置推定装置30,30A、端末装置40,40Aにおける各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを位置推定装置30,30A、端末装置40,40Aのコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0061】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
位置推定装置30,30A、端末装置40,40Aは、1台のコンピュータで構成されていても良いし、通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0062】
音信号処理回路905は、音信号を増幅させるアンプ、所定の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタ、コンパレータ、アナログ音信号をデジタル音信号に変換するA/Dコンバータ、デジタル音信号をアナログ音信号に変換するD/Aコンバータ等を含む。例えば、端末装置40,40Aでは、インタフェース904にスピーカが接続され、位置推定装置30,30Aでは、インタフェース904にマイクM1~M4が接続される。
【0063】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、音波の振幅波形が整定する時刻を検出できるように構成されていれば、端末装置40、40Aが出力する音sの時間区間は3つ以上に設定してもよい。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、マイクM1~M4の全てを同時に用いることとしたが、音源の平面での位置の推定は、マイクが3つあれば可能である。ユーザの平面上の位置推定のみを行う場合、例えば、マイクM1~M3だけを使用して位置推定を行い、何れかのマイクが故障した場合に残りのマイクM4を使用するようにしてもよい。あるいは、4つのマイクM1~M4のうち、任意の3つのマイクを毎回選択して、選択したマイクによって位置推定を行うようにしてもよい。
【0065】
または、平面での位置推定を行う場合、1回の位置推定について、マイクM1、M2、M3を用いた推定、マイクM1、M3、M4を用いた推定、マイクM1、M2、M4を用いた推定、マイクM2、M3、M4を用いた推定の4回の位置推定処理を行って、4回の推定結果の平均を、最終的な端末装置40の位置として決定してもよい。
α2は第1周波数、α1およびα1´は第2周波数の一例である。
端末装置40と、マイクM1~M4と、位置推定装置30とで端末装置40の位置を推定する測位システムを構成する。
【符号の説明】
【0066】
10・・・空調機
20・・・制御装置
30、30A・・・位置推定装置
31・・・アンプ
32・・・フィルタ
33・・・コンパレータ
34・・・マイコン
35、35A・・・到達時刻検出部
36・・・位置推定部
37・・・通信部
40、40A・・・端末装置
M1、M2、M3、M4・・・マイク
w・・・空間
s・・・音
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・インタフェース
905・・・音信号処理回路
図1
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