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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】木質床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/04 20060101AFI20220112BHJP
   E04F 15/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E04F15/04 G
E04F15/00 601D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018115611
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019218732
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】福永 洋丈
(72)【発明者】
【氏名】角田 泰一
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256763(JP,A)
【文献】特開2013-067163(JP,A)
【文献】特開2004-316290(JP,A)
【文献】特開2015-028256(JP,A)
【文献】特開2009-184184(JP,A)
【文献】実開平06-010488(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の表面側に化粧材が設けられ、木質基材の裏面側には、条溝が形成されない略平面状の裏面を有する密着層が設けられてなる木質床材であって、密着層の平面引張り試験による密着力が0.12~0.18N/mm であることを特徴とする木質床材。
【請求項2】
木質繊維板からなる木質基材とアクリル樹脂発泡体からなる密着層との間にクッション材が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の木質床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密着層を有する木質床材に関する。
【背景技術】
【0002】
特に商業施設などにおいて、下地材への施工(直貼り)が簡単にできる木質床材が切望されており、この要求に応えるものとして、特許文献1に記載されるように、木質基材の裏面に衝撃吸収層を介して吸着層を設けた木質床材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-224548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術によると、吸着層の裏面に、長手方向に延びる複数の条溝を平行に設けて易剥離性を与えている(段落0011,0025,0038,図2)ため、土足で歩行する箇所や水廻りなどに施工すると、木質床材同士の継目から浸入した水が条溝を伝って木質床材の裏面全般に行き渡り、下地材から剥がれやすくなるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、不陸がある下地材であっても良好に密着して、浮きや剥がれなどの施工不良を起こさないと共に、施工後に水が浸入しても剥がれることのない木質床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、木質基材の表面側に化粧材が設けられ、木質基材の裏面側には、条溝が形成されない略平面状の裏面を有する密着層が設けられてなる木質床材であって、密着層の平面引張り試験による密着力が0.12~0.18N/mm であることを特徴とする。
【0007】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の木質床材において、木質繊維板からなる木質基材とアクリル樹脂発泡体からなる密着層との間にクッション材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による木質床材は、下地材に馴染んで密着する密着層を有するので、フロアのリフォームなどの際に、既設の床材を剥離し、接着剤を塗布し、新たな床材を敷設して釘打ち固定するという一連の作業を省略することができ、施工が容易である。また、本発明による木質床材は、下地材に釘打ち固定されず、密着層が下地材に密着することによって施工されるので、一旦施工された後に下地材から剥離することが容易であり、補修や改装を簡単に行うことができる。
【0010】
また、本発明による木質床材においては、密着層の裏面が条溝のない略平面であり、且つ、密着層の平面引張り試験による密着力が0.12N/mm以上とされているので、この木質床材を下地材に密着して敷き詰めた状態で木質床材の表面に水を載置した後8時間以内は下地材と密着層との間に水が浸入しない。すなわち、施工後に木質床材同士の継目から水が入り込んでも、これが下地材との間に侵入しないので、下地材から剥がれることを防止する。
【0011】
また、密着層の平面引張り試験による密着力が0.12~0.18N/mmとされることにより、水の浸入による剥がれを防止しつつ、下地材に過度に密着してリフォーム時に剥がしにくくなることを防止する。
【0012】
また、木質基材に表面平滑性に優れる木質繊維板が用いられることにより、その表面に化粧材の貼着や塗装などによる化粧を施したときに良好な化粧面を与える効果が得られ、密着層にアクリル樹脂発泡体が用いられることにより、その微細な気泡がいわゆる吸盤作用を果たして下地材表面に良好に密着ないし吸着する効果が得られ、これらの間にクッション材が設けられることにより、床材としての適度なクッション性を与えて歩行感を良好にする効果が得られる。したがって、木質繊維板(木質基材)/クッション材/アクリル樹脂発泡体(密着層)の積層構成を有することにより、不陸を有する下地材にも良好に馴染んで浮きや剥がれなどの施工不良を起こさないという基本的な効果に加えて、床材として要求される諸性能を満たす木質床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による木質床材の断面図である。
図2】本発明の他実施形態による木質床材の断面図である。
図3】密着層の密着力を測定する方法を示す説明図である。
図4】本発明の実施例と比較例を対象にして耐水性を評価するために行った試験方法を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示される本発明の一実施形態による木質床材10は、木質基材11の表面側に化粧材12が設けられると共に、裏面側にクッション材13、密着層14および離型シート15が順次に設けられてなる。これら各材11~14の接着には、酢酸ビニル系樹脂などからなる接着剤が用いられる。
【0015】
木質基材11は、合板、LVL、無垢材、集成材、MDFなどの木質繊維板、パーティクルボードその他の木質板またはこれらの一または二以上の複合板を任意に用いることができるが、厚さが0.8~2.0mmであることが好ましい。木質基材11の厚さが0.8mm未満であると、割れや欠けが生じやすく耐久性が低下し、2.0mmを超えると、カッターなどで切断することが困難になると共に、表面に不陸(最大±3mm程度)がある下地材に木質床材10を施工したときに、この不陸に馴染むことができず、浮きや剥がれなどの施工不良が起きやすくなる。
【0016】
また、木質基材11は、曲げ剛性が5×10~50×10N・mmであることが好ましい。曲げ剛性が5×10N・mm未満であると、撓みすぎて取り回しが悪くなり、50×10N・mmを超えると、ほとんど撓まないものとなってしまい、表面に不陸(最大±3mm程度)がある下地材に木質床材10を施工したときに、この不陸に馴染むことができず、浮きや剥がれなどの施工不良が起きやすくなる。
【0017】
化粧材12は、木質基材11の表面に設けて木質床材10に所望の化粧面を与えることができるものであれば特に限定されないが、オレフィンなどからなる樹脂シートや化粧紙などを好適に用いることができる。
【0018】
クッション材13は、木質基材11の裏面に設けて木質床材10に所望のクッション性を与えて歩行感や遮音性、断熱性などを良好にすることができるものであれば特に限定されないが、一例としてポリエチレン発泡体が好適に用いられる。あるいは、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの合成樹脂発泡体からなるクッション材13を用いても良い。
【0019】
密着層14は、木質床材10を下地材の上に施工(直貼り)したときに下地材の表面に密着ないし吸着する機能を果たすものであれば特に限定されないが、一例としてアクリル系樹脂発泡体(アクリル基を有する高分子化合物からなる樹脂発泡体を広く包含する)が好適に用いられる。より具体的には、クッション材13の裏面に、アクリル系樹脂発泡体からなるフィルムまたはシートを接着するか、あるいはアクリル系樹脂発泡体を塗布することにより、密着層14を形成することができる。あるいは、ゴム系またはアクリル系樹脂などからなる粘着剤を木質床材10の裏面に塗布することによって密着層14を形成しても良い。特にアクリル系樹脂発泡体からなる密着層14はその全般に亘って微細な気泡を有するので、木質基材11の裏面に設けられた密着層14の裏面側に露出する微細な気泡がいわゆる吸盤作用を果たして下地材表面に良好に密着ないし吸着する。
【0020】
密着層14は、平面引張り試験による密着力が0.12N/mm以上である。密着力が0.12N/mm未満であると、木質床材10を下地材に施工した後に、木質床材10同士の継目から入り込んだ水が密着層14と下地材との間に浸入して剥がれてしまう。一方、密着力が0.18N/mmを超えると、下地材に対する密着力が強くなりすぎて、一旦下地材に木質床材10を施工してしまうと容易に剥離することができず、リフォームに対応することが困難になる。したがって、密着層14が有する密着力の好ましい範囲は、0.12~0.18N/mmである(詳しくは表1を参照して後述する)。
【0021】
なお、この密着力は、密着層14を最裏層に有する積層体を、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)において被着体として用いられているSUS304BA鋼板に密着させ、日本農林規格(JAS)が定める合板の平面引張り試験に準拠した試験方法に基いて計測したものである。たとえば、図1の木質床材10と同様に表面側から化粧材12/木質基材11/クッション材13/密着層14の積層構成を有する木質床材10の試験体10’(20×20mm)を用意し、図3に示すように、その表面側(オレフィンシート側)を、シアノアクリレート系接着剤で、上側チャック16に係合させた専用冶具17に接着させると共に、試験体10’の密着層を、下側チャック18に係合させた被着体19(SUS304BA鋼板)に密着させ、この状態で、上側チャック16を毎分5880N以下の荷重で上昇させて、最大荷重(試験体10’が被着体19から剥がれたときの荷重)の値を密着力とした。
【0022】
離型シート15は、木質床材10の保管ないし取扱時には密着層14に密着して容易には剥離せず、且つ、木質床材10の施工時には手で容易に剥離することができるものであれば特に限定されないが、ポリエステルなどからなる樹脂シートや離型紙などを好適に用いることができる。
【0023】
この木質床材10を下地材に施工するには、下地材表面に過度の不陸がある場合や下地材表面が平滑でない場合は、必要に応じて下地材の表面に樹脂塗料を塗布または樹脂シートを設けることにより下地材表面をある程度まで平滑ないし平面にした上で、離型シート15を剥がした木質床材10の密着層14を下地材表面に押し付けるようにして直貼りする。下地材は、既設フロア、コンクリート、金属または合成樹脂などであり、表面に±3mm程度の不陸があっても、木質基材11の厚さ、木質基材11の曲げ剛性、密着層14の密着力についての前記範囲の少なくともいずれか一を満たしていれば、±3mm程度の不陸に対しても良好に馴染み、浮きや剥がれなどの施工不良を起こさずに施工することができる。
【0024】
既述した密着層14の密着力の範囲を決定するために、次の要領で試験を行った。すなわち、表面側から、0.15mm厚オレフィンシート(化粧材12)/1.0mm厚木質繊維板(木質基材11)/1.0mm厚ポリエチレン発泡体(クッション材13)/0.1mm厚アクリル系樹脂発泡体または1.0mm厚ゴムラテックス系粘着剤(密着層14)の積層構成を有する木質床材10(150mm×910mm)において、密着層14として密着力が0.10~0.14N/mmの範囲内で0.02N/mmごとに異なるものを選択すると共に、0.1mm厚アクリル系樹脂発泡体からなる密着層14についてはその裏面に条溝が形成されない略平面のものを用い、1.0mm厚ゴムラテックス系粘着剤からなる密着層14についてはその裏面に条溝を形成したもの(長手方向に延長する幅2mm、深さ0.8mmの略V字状の条溝を短手方向に等間隔に計7本形成したもの)を用いた。
【0025】
これらを、図4に示すように、一辺約1800mmの正方形状になるように下地材20の表面に直貼りした後、一辺350mmの正方形状にコーキング材を配置して四周壁21を形成し、この四周壁21内に1リットルの水22を張った。この状態で8時間放置して、密着層14と下地材20の間に水が浸入しているか、および、木質床材10に剥がれが生じていないかを目視確認した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1における「評価」では、水の浸入がなく剥がれなかったものを〇、剥がれは生じなかったが、水が浸入したため、下地材20が木質である場合に腐ったり、階下への水漏れが生じる恐れがあるものを△、水が浸入して剥がれたものを×とした。表1に示す結果から、密着層14の密着力が0.12N/mmおよび0.14N/mmであって密着層14の裏面に条溝が形成されていないもの(実施例1,2)は、いずれも下地材20との間に水が浸入せずに剥がれず、木質床材10として優れた適性を有することを確認した。
【0028】
これに対し、密着層14の密着力が0.10N/mmのもの(比較例1,2)は、条溝の有無いずれの場合も下地材20との間に水が浸入することから、密着層14は0.12N/mm以上の密着力を有する必要があることを確認した。なお、比較例2は、密着層14の裏面に条溝が形成されていないものであるが、密着層14の密着力が小さいため、木質床材10同士の継目から入り込んだ水が、密着層14を下地材20から浮き上がらせてしまい、これらの間に水が浸入したものと推測される。
【0029】
また、実施例1と比較例3の比較および実施例2と比較例4の比較から分かるように、密着層14の密着力が0.12N/mmおよび0.14N/mmであっても、密着層14の裏面に条溝が形成されていると、下地材20との間に水が浸入してしまうことから、水の浸入を有効に防止するためには、密着層14の密着力が0.12N/mm以上であることと、密着層14の裏面が略平面であって条溝を有しないことの2つの条件が必要であることを確認した。
【0030】
なお、上記の表1には含まれていないが、密着層14が0.14N/mmを超える大きな密着力を有する木質床材10についても同様に試験を行ったところ、いずれも下地材20との間に水が浸入せずに剥がれないものではあったが、密着層14の密着力が0.18N/mmを超えると、手で剥がそうとしても容易には剥がれず、リフォームに適さないものであった。このことから、リフォーム作業の容易性を考慮すると、密着層14の密着力は0.18N/mm以下が好ましいことを確認した。
【0031】
以上に本発明について図示実施形態に基いて詳述したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲の記載に基いて画定される発明の範囲内において多種多様に変形ないし変更して実施可能である。たとえば、木質床材10として特にクッション性が要求されない場合は、クッション材13を省略した積層構成の木質床材10としても良い(図2)。なお、離型シートは、木質床材の施工前に密着層が保管時の床面や下方に堆積された別の木質床材などに密着することを防止するものであり、木質床材を下地材に施工する際にはこれを剥がして用いるものであるから、本発明の木質床材として必須の構成要素ではない。
【符号の説明】
【0032】
10 木質床材
10’木質床材の試験体
11 木質基材
12 化粧材
13 クッション材
14 密着層
15 離型シート
16 上側チャック
17 専用冶具
18 下側チャック
19 被着体
20 下地材
21 コーキング材による四周壁
22 水
図1
図2
図3
図4