(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】壁貼付部材、壁貼付部材の製造方法、壁貼付部材の施工方法、及び、構造体
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20220112BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E04F19/04 101A
E04F13/08 101N
(21)【出願番号】P 2018163244
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】古谷 伸一
(72)【発明者】
【氏名】田村 亞里須
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 菜摘
【審査官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-147009(JP,A)
【文献】特開2001-020489(JP,A)
【文献】特開2017-122289(JP,A)
【文献】特開2004-107877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 17/00-19/10
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁における該壁と床との境界から所定幅で広がる領域を覆った状態で前記壁に貼り付け可能な帯状の壁貼付部材であって、
樹脂製であり且つ帯状の基材層と、
前記基材層の一面の一部に設けられる接着部材層と、を備え、
前記基材層は、前記壁に貼り付けられた状態においてそれぞれ上側及び下側に位置する上端縁及び下端縁を有し、
前記基材層の下端縁は、前記基材層の長手方向に沿って延びる略直線状であり、
前記基材層の上端縁と下端縁との間の幅は、該基材層の長手方向において不均一であり、
前記基材層の一面の前記基材層の下端縁から所定幅において広がる領域は、前記壁への貼り付けの際に接着剤が直接又は間接に塗布されることにより前記壁に被着される被着領域であり、
前記接着部材層は、前記基材層の一面の前記被着領域よりも前記基材層の上端縁側に配置されている、壁貼付部材。
【請求項2】
請求項1に記載の壁貼付部材の製造方法であって、
所定幅で長尺帯状に形成された基材原反部材の一面に所定幅で該基材原反部材の長尺方向に延びる接着部材帯状層を設ける工程と、
前記接着部材層の幅が該接着部材層の長手方向において不均一となるよう、前記接着部材帯状層及び前記基材原反部材を切断する工程と、を含む、壁貼付部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の壁貼付部材の施工方法であって、
前記被着領域、及び、前記壁における前記被着領域が重ねられる領域のうち少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、
塗布された接着剤及び前記接着部材層を用いて前記壁に前記壁貼付部材を貼り付ける工程と、を含む、壁貼付部材の施工方法。
【請求項4】
前記壁のうち前記被着領域が重ねられる領域において、前記壁の表面に設けられた壁紙を剥がす工程を含み、
前記貼り付ける工程では、前記壁紙を剥がした領域において、前記塗布する工程で塗布した接着剤を用いて前記壁貼付部材を貼り付ける、請求項3に記載の前記壁貼付部材の施工方法。
【請求項5】
壁と、
下側に位置し且つ前記壁における該壁と床との境界に沿って延びる下端縁及び上側に位置する上端縁を有すると共に、前記壁の表面に接する接着剤層と、
下側に位置し且つ前記接着剤層の上端縁に沿って延びる下端縁及び上側に位置する上端縁を有すると共に、前記壁の表面に接する接着部材層と、
上側に位置し該接着部材層の上端縁と一致する上端縁及び下側に位置し該接着剤層の下端縁と一致する下端縁を有すると共に、前記接着剤層の表面及び前記接着部材層の表面にそれぞれ接し、樹脂製であり且つ帯状の基材層と、を含み、
前記基材層は、該接着剤層及び該接着部材層を介して該壁に固定され、
該基材層の上端縁と下端縁との間の幅は、該基材層の長手方向において不均一である、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巾木や腰壁等の壁貼付部材、この壁貼付部材の製造方法や施工方法、及び、構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁に貼り付けられる壁貼付部材として巾木が公知である(特許文献1)。例えば、
図20に示すように、化粧幅木101は、合成樹脂板102と、合成樹脂板102の下端に接続された舌状体103と、を有する。また、化粧幅木101の形状は、帯状であり、上端縁と下端縁の幅が長手方向において一定な矩形状である。この矩形状の巾木は、施工職人が壁面に施工する際、壁面に接着剤を矩形状に真っ直ぐに塗布した後、貼付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、新たなデザイン提案として、上端縁が波形に形成されるなど従来の矩形状とは異なる異形形状の壁貼付部材を開発するに至った。しかしながら、施工職人が施工する際、波形などの巾木の形状に合わせて接着剤を壁に塗布することが困難であることが分かった。これは、巾木だけでなく、腰壁などの壁貼付部材全般においても同様である。
【0005】
本発明は、異形形状であると共に、容易に施工可能な壁貼付部材、壁貼付部材の製造方法、壁貼付部材の施工方法、及び、構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁貼付部材は、壁における該壁と床との境界から所定幅で広がる領域を覆った状態で前記壁に貼り付け可能な帯状の壁貼付部材であって、樹脂製であり且つ帯状の基材層と、前記基材層の一面の一部に設けられる接着部材層と、を備え、前記基材層は、前記壁に貼り付けられた状態においてそれぞれ上側及び下側に位置する上端縁及び下端縁を有し、前記基材層の下端縁は、前記基材層の長手方向に沿って延びる直線状であり、前記基材層の幅は、該基材層の長手方向において不均一であり、前記基材層の一面の前記基材層の下端縁から所定幅において広がる領域は、前記壁への貼り付けの際に接着剤が直接又は間接に塗布されることにより前記壁に被着される被着領域であり、前記接着部材層は、前記基材層の一面の前記被着領域よりも前記基材層の上端縁側に配置されている。
【0007】
かかる構成によれば、基材層の幅が長手方向において不均一であるので、壁貼付部材を異形形状とすることができる。また、壁貼付部材における上端側に接着部材層が配置されているため、壁貼付部材の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域であることにより、異形形状の壁貼付部材の施工が容易になる。
【0008】
本発明の壁貼付部材の製造方法は、前記壁貼付部材の製造方法であって、所定幅で長尺帯状に形成された基材原反部材の一面に所定幅で該基材原反部材の長尺方向に延びる接着部材帯状層を設ける工程と、前記接着部材層の幅が該接着部材層の長手方向において不均一となるよう、前記接着部材帯状層及び前記基材原反部材を切断する工程と、を含む。
【0009】
かかる構成によれば、接着部材帯状層が設けられた基材原反部材を、接着部材層の幅が長手方向において不均一となるよう切断することで、壁貼付部材における上端縁側に接着部材層が配置された壁貼付部材、即ち、壁貼付部材の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が単純な形状の被着領域である壁貼付部材を製造することができるため、異形形状であると共に施工が容易な壁貼付部材を製造することができる。
【0010】
本発明の壁貼付部材の施工方法は、前記壁貼付部材の施工方法であって、前記被着領域、及び、前記壁における前記被着領域が重ねられる領域のうち少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、塗布された接着剤及び前記接着部材層を用いて前記壁に前記壁貼付部材を貼り付ける工程と、を含む。
【0011】
かかる構成によれば、壁貼付部材における上端縁側に接着部材層が配置されているため、壁貼付部材の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域、或いは、壁における被着領域が重ねられる領域であることから、異形形状の壁貼付部材を容易に施工することができる。
【0012】
また、前記壁貼付部材の施工方法は、前記壁のうち前記被着領域が重ねられる領域において、前記壁の表面に設けられた壁紙を剥がす工程を含み、前記貼り付ける工程では、前記壁紙を剥がした領域において、前記塗布する工程で塗布した接着剤を用いて前記壁貼付部材を貼り付けてもよい。
【0013】
かかる構成によれば、被着領域と重なる領域において壁紙を剥がすことで、被着領域を強固に接着することができる。
【0014】
本発明の構造体は、壁と、下側に位置し且つ前記壁における該壁と床との境界に沿って延びる下端縁及び上側に位置する上端縁を有すると共に、前記壁の表面に接する接着剤層と、下側に位置し且つ前記接着剤層の上端縁に沿って延びる下端縁及び上側に位置する上端縁を有すると共に、前記壁の表面に接する接着部材層と、上側に位置し該接着部材層の上端縁と一致する上端縁及び下側に位置し該接着剤層の下端縁と一致する下端縁を有すると共に、前記接着剤層の表面及び前記接着部材層の表面にそれぞれ接し、樹脂製であり且つ帯状の基材層と、を含み、前記基材層は、該接着剤層及び該接着部材層を介して該壁に固定され、該基材層の上端縁と下端縁との間の幅は、該基材層の長手方向において不均一である。
【0015】
かかる構成によれば、基材層の幅が長手方向において不均一であるので、基材層を異形形状とすることができる。また、基材層における上端側に接着部材層が配置されているため、施工の際に接着剤の塗布することで得られる接着剤層が、接着部材層よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域であることにより、異形形状の基材層を容易に施工することで構造体が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明によれば、異形形状であると共に、容易に施工可能な壁貼付部材、壁貼付部材の製造方法、壁貼付部材の施工方法、及び、構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る壁貼付部材の平面図である。
【
図4】
図4は、壁に貼り付けられた状態の前記壁貼付部材の斜視図である。
【
図5】
図5は、前記壁貼付部材の製造方法における準備工程を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、前記壁貼付部材の製造方法における接着部材帯状層を設ける工程を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、前記壁貼付部材の製造方法における切断工程を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、前記壁貼付部材の施工方法における壁紙を剥がす工程を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、前記壁貼付部材の施工方法における離型紙の端部を剥がす工程を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、前記壁貼付部材の施工方法における壁貼付部材を貼り付ける工程及び離型紙の端部を除いた領域を剥がす工程を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、変形例に係る壁貼付部材の平面図であり、
図12(a)は上端縁が三角波状である態様を示し、
図12(b)は上端縁がランダムな波状である態様を示し、
図12(c)は上端縁が矩形波状である態様を示す。
【
図13】
図13は、変形例に係る壁貼付部材の平面図であり、
図13(a)は上端縁の中央が突出した態様を示し、
図13(b)は上端縁が下端縁に対して傾斜した態様を示す。
【
図17】
図17は、変形例に係る壁貼付部材の製造方法における切断工程を説明するための図である。
【
図18】
図18は、変形例に係る壁貼付部材の製造方法における切断工程を説明するための図である。
【
図19】
図19は、変形例に係る壁貼付部材の製造方法における切断工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図10を参照しつつ説明する。壁貼付部材1は、
図1、
図3に示すように、異形形状を有する帯状の部材である。壁貼付部材1は、
図2に示すように、樹脂製であり且つ帯状の基材層2と、基材層2の一面20の一部21に設けられる接着部材層3と、を備える。本実施形態の壁貼付部材1は、接着部材層3の基材層2が設けられた一面30とは反対側の他面31に設けられた離型紙4を備える。
【0019】
壁貼付部材1は、壁8における床との境界から広がる領域を覆った状態で壁8に貼り付け可能である。具体的に、壁貼付部材1は、
図4に示すように、壁8における壁8と床9との境界αから所定幅で広がる領域である貼り付け領域80を覆った状態で、壁8に貼り付け可能である。例えば、複数の壁貼付部材1は、基材層2の長手方向において並んだ状態で、且つ、隣り合う基材層2の長手方向における端縁を互いに突き合せた状態で、壁8に貼り付け可能である。壁貼付部材1は巾木や腰壁等の部材であり、本実施形態の壁貼付部材1は巾木を例示している。
【0020】
本実施形態の壁8の表面には、壁紙81が設けられている。また、本実施形態において、壁貼付部材1を貼り付けられる壁8表面の貼り付け領域80の幅は、境界αに垂直な方向における寸法である。即ち、本実施形態の貼り付け領域80の幅は、壁の高さ方向に沿った寸法である。
【0021】
さらに、本実施形態の貼り付け領域80は、壁紙81が剥がされた部位と、壁紙81が設けられた部位と、を含む。また、この貼り付け領域80の幅は、境界αの延びる方向において不均一であり、且つ上端縁24の異形形状によって連続的に変化する。尚、貼り付け領域80のうち壁紙が剥がされた部位の幅は、境界αの延びる方向において均一である。
【0022】
壁貼付部材1は、基材層2と接着部材層3と離型紙4とから構成されており、壁8貼り付けられた状態においては、離型紙4が取り除かれ基材層2と接着部材層3のみの構成となっている。壁貼付部材1の投影形状は、基材層2の投影形状と一致している
壁貼付部材1が壁8に貼り付けられた状態において、基材層2は、それぞれ、上側及び下側に位置する上端縁24及び下端縁23を有する。また、基材層2の幅は、基材層2の長手方向において上端縁24の異形形状によって不均一である。尚、基材層2の幅とは、基材層2の長手方向と直交する方向における基材層2の寸法であり、例えば、下端縁23と上端縁24との間の寸法である。基材層2は、下端縁23が直線状に形成され、上端縁24が下端縁23と平行ではない異形形状に形成される。さらに、基材層2の一面20の下端縁23から所定幅において広がる領域は、壁8への取り付けの際に接着剤が直接又は間接に塗布されることにより壁8に被着される被着領域25である(
図1及び
図2参照)。尚、被着領域25の幅(所定幅)は、一定であってもよいし、不均一であってもよいが、施工時に接着剤を塗布し易いことから一定のほうが好ましい。本実施形態の被着領域25の幅は、一定である。具体的に、被着領域25には、直接に接着剤が塗布される、又は、被着領域25が壁8における接着剤が塗布される領域に重ねられることで間接に接着剤が塗布される。また、本実施形態においては、壁8に貼り付けられた壁紙81は、貼り付け領域81における被着領域25と重なる部位の表面から除かれているのが好ましい。貼り付け領域81における被着領域25と重なる部位に壁紙81が無いことにより、この部位に対する接着剤の塗布性が向上し施工性が向上し、壁貼付部材1と壁8との接着力もより高いものとなる効果も得られる。
【0023】
本実施形態の基材層2の幅は、基材層2の長手方向において上端縁24の異形形状によって連続的に変化する。巾木の場合、基材層2の幅は、例えば、3cm程度以上60cm以下であり、好ましくは、6cm以上40cm以下である。基材層2の厚みは、0.5mm以上5.0mm以下であり、好ましくは、1.5mm以上3.0mm以下である。また、腰壁の場合、基材層2の幅は、例えば、60cm以上100cm以下である。
【0024】
また、基材層2の長手方向の長さは、特に限定されず、
図1に示すような短尺でもよいし、長尺でもよい。短尺は、長さが30cm以上150cm未満であり、生産性に優れる。長尺は、長さが150cm以上50m以下であり、施工性に優れる。
【0025】
本実施形態の基材層2の材料は、軟質又は硬質の樹脂である。軟質樹脂を用いることによって、壁貼付部材が柔軟性や可撓性を有することとなり、平面のみならず曲面の壁へも貼り付けることが可能となる。上記樹脂としては、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。耐久性に優れ、製造効率に優れることから、塩化ビニル樹脂が好ましい。樹脂は、非発泡でもよいし、発泡されていてもよい。上記樹脂には、各種添加剤が含まれ、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが必要に応じて配合される。
【0026】
また、本実施形態の基材層2の厚み方向において一面20と反対側に位置する他面22は、基材層2が露出した無地であるが、意匠層が積層されていてもよい。意匠層は、印刷フィルム、塩ビ被覆糸織物、塗料などによって構成され、模様や図柄、色彩などが表されている。塩ビ被覆糸織物とは、ポリエステル系樹脂などの芯材に、塩化ビニル系樹脂などの被覆層を設けた糸を用いた織物である。
【0027】
また、基材層2又は意匠層の上からエンボス加工を行って、表面に凹凸を付与してもよい。この凹凸の種類は特に限定されないが、例えば、木目調、石目調、テキスタイル調等が挙げられる。
【0028】
さらに、基材層2の他面22には、基材層2又は意匠層の表面に、紫外線硬化樹脂などの表面保護層や各種ワックスを設けることが好ましい。
【0029】
本実施形態の基材層2における下端縁23側に位置する下端部230は、基材層2の幅方向における下側に位置する部位ほど、基材層2の厚み方向において一面20から離れるように湾曲した部分である(
図2及び
図3参照)。そのため、下端部230は、壁貼付部材1が壁8に貼り付けられた状態において、基材層2の幅方向における下側に位置する部位ほど、壁8から離れるように湾曲する。また、本実施形態の下端部230は、幅方向における下側に位置する部位ほど、厚みが小さくなっている。本実施形態の基材層2における下端部230よりも上端縁24側に位置する上側領域26は平板状である。
【0030】
下端縁23は、基材層2の長手方向に沿って延びる直線状である。本実施形態の下端縁23の略全体は、壁貼付部材1が壁8に貼り付けられた状態において、床9と接触する。
【0031】
上端縁24は、例えば、基材層2の長手方向に沿って延びる曲線状である。本実施形態の上端縁24は、波状、例えば、正弦波状である。また、本実施形態の上端縁24は、上方に突出した突出部位240と、下方に凹入した凹入部位241と、を有する(
図1参照)。突出部位240は、帯状の上端縁24の幅方向における中央に位置する仮想線L1よりも上方に位置する部位である。凹入部位241は、上端縁24の幅方向における中央に位置する仮想線L1よりも下方に位置する部位である。
【0032】
被着領域25は、基材層2の一面20の下端縁23から所定幅において、例えば、長方形状に広がっている(
図3参照)。また、被着領域25の上端縁250及び下端縁251は、いずれも、直線状である。
【0033】
接着部材層3は、基材層2の一面20の被着領域25よりも上端縁24側に配置されている。また、本実施形態の基材層2の幅方向における接着部材層3の幅W1は、基材層2の幅方向における被着領域25の幅W2よりも狭い。さらに、本実施形態の接着部材層3は、基材層2の一面20のうち上端縁24における突出部位240の最上端2400から上端縁24における凹入部位241の最下端2410よりも下方の領域まで覆っている。本実施形態の接着部材層3の下端縁32は、基材層2の長尺方向に沿った直線状である。
【0034】
また、本実施形態の接着部材層3は、非硬化性接着剤を含む層である。ここで、硬化性接着剤とは、化学反応または溶媒の揮発などによって非可逆的に硬化して接着させる接着剤をいう。非硬化性接着剤とは、経時的な硬化を伴わない粘着などによる接着剤をいう。本明細書では、非硬化性接着剤には、粘着剤(感圧接着剤)のみならず、熱可塑性樹脂接着剤をも含むものとする。粘着剤(感圧接着剤)は、溶液、熱などの作用を必要とせず、常温で短時間、わずかな圧力をかけるだけで他の表面に接着できる接着剤である。熱可塑性樹脂接着剤としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)などのホットメルト接着剤が挙げられる。
【0035】
接着部材層3は、粘着剤、ホットメルト接着剤などを含んで構成される。たとえば、本実施形態の接着部材層3は、樹脂製の織布基材の両面に粘着剤が設けられた両面粘着テープである。樹脂製の織布基材は、透明であっても透明でなくてもよいが、施工後に目立たないことから透明であることが好ましい。粘着剤としては、アクリル系、ラテックス系などが挙げられるが、低温接着性、非変色性の観点からアクリル系が好ましい。より具体的に、本実施形態の接着部材層3は、織布基材としてポリエチレンクロスが用いられ、その両面にアクリル系粘着剤が設けられた両面粘着テープである。ポリエチレンクロスは、表面に微細な凹凸が形成されるので、両面粘着テープの接着力を向上させることができる。一般的に壁紙は、表面に汚れ防止のためにコーティング層が形成されていることが多いけれども、本実施形態の接着部材層3は、コーティング層の上からであっても強固に接着することができる。接着部材層3は、厚みが0.20mm以上0.50mm以下が好ましい。この上限値以下であると、施工後に壁貼付部材1を見た際、接着部材層3のある部分とない部分とで段差が視認され難くなる。
【0036】
離型紙4は、接着部材層3を被覆することにより、壁8と異なる領域に接着部材層3が貼りつくことを防ぐ部材である。たとえば離型紙4は、パルプにフッ素樹脂などがコーティングされて構成される。本実施形態の離型紙4は、施工時に施工職人が引っ張ることにより接着部材層3から剥がされることから、引っ張っても切断されない強度を有することが好ましい。
【0037】
上述の壁貼付部材1は、接着部材帯状層が重ねられた基材原反部材を切断することによって製造される。以下、この壁貼付部材1の製造方法について
図5~
図7を用いて説明する。
【0038】
まず、準備工程として、所定幅の長尺帯状の基材原反部材12を形成する(
図5参照)。基材原反部材12は、例えば、押出成形により形成される。本実施形態の製造方法では、この押出成形の際に、基材原反部材12の幅方向における一方の端部は、幅方向における一方側に位置する部位ほど、厚み方向において湾曲した形状となる。
【0039】
また、基材原反部材12の表面に、印刷フィルムのラッピング、塩ビ被覆糸織物の貼付け、グラビア印刷、インクジェット印刷などを行うことによって、意匠層を設けることができる。さらに、基材原反部材12又は意匠層の上に、硬化前の紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させて表面保護層を形成してもよい。これによって、効率よく壁貼付部材を製造することができる。
【0040】
次に、接着部材帯状層13を設ける工程として、所定幅で長尺帯状に形成された基材原反部材12の一面120に、所定幅で基材原反部材12の長尺方向に延びる接着部材帯状層13を設ける(
図6参照)。この接着部材帯状層13は、例えば、接着部材帯状層13の幅方向における一端縁131が基材原反部材12の幅方向における一端縁121に重なった状態で配置される。
【0041】
次に、接着部材帯状層13及び基材原反部材12を切断する工程である切断工程として、接着部材層3の幅が接着部材層3の長手方向において不均一となるよう、基材原反部材12、及び、接着部材帯状層13を切断する(
図7参照)。尚、本実施形態の離型紙4を備えた壁貼付部材1は、例えば、基材原反部材12に接着部材帯状層13が配置された後、接着部材帯状層13の基材原反部材12が設けられた一面130とは反対側の他面132に離型紙帯状体14を重ねた後、基材原反部材12、及び、接着部材帯状層13と共に、離型紙帯状体14を切断することで製造される。
【0042】
また、意匠層及び表面保護層の形成は、前記準備工程で行ってもよいが、切断工程の後に行ってもよい。切断工程の後に行うことによって、切断面を覆って意匠層及び表面保護層を形成することができ、意匠性及び耐久性に優れた壁貼付部材1を製造することができる。
【0043】
以上の壁貼付部材1の製造方法によれば、接着部材帯状層13が設けられた基材原反部材12を、接着部材層3の幅が長手方向において不均一となるよう切断することで、壁貼付部材1における上端縁24側に接着部材層3が配置された壁貼付部材1、即ち、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が単純な形状の被着領域25である壁貼付部材1を製造することができるため、異形形状であると共に施工が容易な壁貼付部材1を製造することができる。尚、壁貼付部材1が異形形状であるとは、壁貼付部材1の形状が、従来の帯状の幅木や腰壁の形状(上端縁と下端縁とが略直線でかつ平行に延びた巾木や腰壁の形状)と異なることである。
【0044】
以上の壁貼付部材1は、基材層2の被着領域25、及び、壁8における被着領域25が重ねられる重なり領域82のうち少なくとも一方に接着剤が塗布された後、塗布された接着剤及び接着部材層3を用いて壁に貼り付けられる。以下、壁貼付部材1の壁8への施工方法の例について、
図8~
図10を用いて説明する。
【0045】
本実施形態の壁貼付部材1の施工の際には、まず、壁紙81を剥がす工程として、壁8のうち基材層2の被着領域25が重ねられる重なり領域82において、壁紙81を剥がす(
図8参照)。具体的に、壁紙81を剥がす工程として、壁紙81のうち上方の位置に切れ目を入れた後、壁紙81を引っ張ることにより、重なり領域82における壁紙81を剥がす。壁紙81の切れ目の形状は、例えば、境界αに沿って延びる直線状である。また、壁紙81の切れ目の位置は、境界αから壁貼付部材1の被着領域の幅W2だけ上方の位置に略等しい。本実施形態の壁紙81の切れ目の位置は、境界αから被着領域25の幅W2だけ上方の位置から若干下方の位置、例えば、約5mm下方の位置である。本実施形態の重なり領域82は、長尺の帯状、例えば、長方形状である。
【0046】
次に、接着剤を塗布する工程として、壁紙81が剥がされた貼り付け領域80、又は壁貼付部材1の被着領域25に接着剤を塗布する。塗布が容易で接着剤の硬化が早いなど施工性に優れることから、接着剤を貼り付け領域80に塗布するのが好ましい。接着剤の塗布は、櫛目ごて、又はコーキングガンにより行われる。施工性の観点から、基材層2が軟質樹脂の場合、櫛目ごてが好ましく、硬質樹脂の場合、コーキングガンが好ましい。接着剤83は、硬化することにより機能を発揮する硬化性接着剤であり、例えば、ビニル共重合樹脂系溶剤形やゴム系ラテックス形の接着剤である。また、この接着剤は、硬化までに数十分程度の時間を要する。
【0047】
次に、塗布された接着剤83及び接着部材層3を用いて壁貼付部材1を貼り付ける工程として、接着剤83を塗布した貼り付け領域80及びその上方に、壁貼付部材1を貼り付ける。具体的に、離型紙4の摘み部40を形成する工程として、離型紙4のうち基材層2の長手方向における少なくとも端部、例えば、約1cm~9cmの端部のみを接着部材層3から剥がして、後述する摘み部40とする。次に、壁貼付部材1を貼り付ける工程として、基材層2の被着領域25を、接着剤を塗布した貼り付け領域80に一致するよう重ねて位置決めし、軽く押圧して壁貼付部材1が壁から剥がれないようにする(
図9参照)。尚、この押圧により、貼り付け領域80に塗布された接着剤は、接着部材層3の下端縁32まで広がる。離型紙4は、摘み部40以外の領域で接着部材層3を覆っているので、壁貼付部材1が壁に強固に接着されることなく、微調整など位置決めが容易になる。また、軽く押圧した後でも、簡単に剥がして位置を変更させることができる。次に、離型紙4を剥がす工程として、離型紙4の摘み部40を摘まんで離型紙4の全体を剥がし(
図10参照)、壁貼付部材1をローラーで圧着する。このとき、離型紙4が引っ張っても切断されない強度を有すると、離型紙4の除去を一度に行うことができるので、より効率的に作業を行うことができる。
【0048】
以上の壁貼付部材1によれば、壁貼付部材1の幅が不均一となっている、具体的には、基材層2の上端縁24が波状となっているため、壁貼付部材1が異形形状となっている。また、壁貼付部材1における上端縁24側の部位に接着部材層3が配置されているため、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層3よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域25、具体的には、長方形状の被着領域25であることから、異形形状の壁貼付部材1の施工が容易になる。
【0049】
また、以上のような施工方法により、被着領域25に塗布された接着剤83は、
図11に示すように、硬化して接着剤層84を形成し、基材層2を壁8の表面に固定する。基材層2は、接着剤層84及び接着部材層3を介して壁8と一体の構造体85となる。この構造体85においては、基材層2の上端縁24と接着部材層3の上端縁33とはほぼ一致し、基材層2の下端縁23と接着剤層84の下端縁840とはほぼ一致する。このため、構造体85における基材層2、接着部材層3、及び、接着剤層84の全体の上端縁と下端縁との間の幅は、壁貼付部材1と同様に長手方向において不均一である。
【0050】
このような構造体85は、壁8と、下側に位置し且つ前記壁8における該壁8と床9との境界αに沿って延びる下端縁840及び上側に位置する上端縁841を有すると共に、壁8の表面に接する接着剤層84と、下側に位置し且つ接着剤層84の上端縁841に沿って延びる下端縁32及び上側に位置する上端縁33を有すると共に、壁8の表面に接する接着部材層3と、上側に位置し接着部材層3の上端縁33と一致する上端縁24及び下側に位置し接着剤層3の下端縁840と一致する下端縁23を有すると共に、接着剤層84の表面及び接着部材層3の表面にそれぞれ接し、樹脂製であり且つ帯状の基材層2と、を含む。
【0051】
以上の壁貼付部材1の施工方法によれば、壁貼付部材1における上端縁24側に接着部材層3が配置されているため、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域25、或いは、壁8における被着領域25が重ねられる重なり領域82であることから、異形形状の壁貼付部材1を容易に施工することができる。
【0052】
本実施形態の壁貼付部材1の施工方法によれば、壁8における重なり領域82において壁紙81を剥がすことで、被着領域25において壁8に壁貼付部材1をより強固に接着することができる。
【0053】
また、本実施形態の壁貼付部材1の施工方法によれば、施工の途中まで接着部材層3が離型紙4により覆われているため、持ち運びや施工を容易に行うことができる。具体的には、接着部材層3が壁8以外の部材や壁8における所望の位置と異なる位置に誤って接着されることを抑えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態の壁貼付部材1の施工方法によれば、基材層2の被着領域25を、硬化していない接着剤83が塗布された壁8の重なり領域82に重ねることができるため、壁貼付部材1が重ねられた状態においても、接着剤が硬化するまで前の流動性のある状態の間に壁貼付部材1の貼り付け位置や壁貼付部材1の向きを微調整することができる。
【0055】
本実施形態の壁貼付部材1の施工方法によれば、壁紙81は、境界αから壁貼付部材1の被着領域25の幅W2だけ上方の位置から約5mm下方の位置まで剥がされるため、接着部材層3と壁紙81とは、約5mmの幅において重なることになる。これにより、壁貼付部材1の寸法に誤差が生じていても、基材層2の一面20の全体が接着部材層3或いは塗布された接着剤83により貼り付けられる。
【0056】
また、本実施形態の壁貼付部材1の施工方法によれば、壁貼付部材1が壁8に重ねられた状態において、塗布された接着剤83の上方に、例えば、両面粘着テープである接着部材層3が設けられるため、施工の際に接着剤83が硬化する前の流動性のある状態の際に壁貼付部材1の上端縁24方向に移動するのをブロックして被着領域25内に留めることができる。このため、壁貼付部材1からはみ出すことを抑えることができる。接着剤の硬化後には、壁貼付部材1は、接着部材層3と硬化した接着剤によって、ひずみが少なく、安定した状態で固定される。
また、壁貼付部材1は、腰壁の場合であっても上述のように巾木と同様に施工することができる。巾木は、上下の幅が腰壁よりも狭いので、接着剤の塗布面積が小さく、短時間での施工が可能となる。腰壁は、接着剤の塗布面積が大きくなるけれども、接着剤の硬化前に位置合わせなど問題なく行うことができ、施工性に優れる。また、一般的に腰壁は、壁に貼り付けた後、上端縁を見切り材で覆って、上端縁からはみ出した接着剤を隠すことが多いが、本発明の壁貼付部材1は、腰壁の場合であっても、接着部材層3によって接着剤のはみ出しが抑制されるので、見切り材が不要となり、短時間で施工することができる。
【0057】
尚、本発明の壁貼付部材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0058】
例えば、壁貼付部材1の基材層2における上端縁24は、正弦波以外の波状であってもよい。具体的に、上端縁24は、
図12(a)に示す三角波状、
図12(b)に示す振幅や位相等がランダムな波状、
図12(c)に示す矩形波状、のこぎり波状等であってもよい。また、上端縁24は、波状以外の直線状や曲線状であってもよい。具体的に、上端縁24は、
図13(a)に示す二つの直線により構成され且つ基材層2の長手方向における中央が上方に突出する形状、即ち、直線状の山形状、
図13(b)に示す基材層2の長手方向における一方側ほど基材層2の幅が小さくなるような直線状、即ち、下端縁23に対して傾斜した斜線状等であってもよい。また、上端縁24は、円弧状等であってもよい。以上の壁貼付部材1によっても、壁貼付部材1を異形形状とすることができる。
【0059】
尚、基材層2の上側領域の上端部は、壁貼付部材1が壁8に貼り付けられた状態において、壁8側に近づくように延びる形状、例えば、壁8側に近づくように湾曲した形状となっていてもよい。加えて、上端部の湾曲部分が目立たないように先端に行くにつれて細い、例えば鳥の嘴状となっていることが好ましい。このような壁貼付部材1によれば、基材層2の上側領域の上端部が接着部材層3の上端部の少なくとも一部を覆っているため、壁貼付部材1を斜め上方から見たとしても接着部材層3が見えにくく、壁貼付部材1の外観が好ましくなる。また、基材層2の上側領域の上端部は、他面22側において滑らかに湾曲していてもよい。基材層2の上側領域の上端部は、基材原反部材12を温めた刃を用いて切断することで、上側領域26の上端部260が鍔状であり且つ他面22側において滑らかに湾曲した形状としてもよい。
【0060】
接着部材層3は、
図14に示すように、基材層2の一面20のうち上端縁24における突出部位240の最上端2400よりも下方位置から、上端縁24における凹入部位241の最下端2410よりも下方の領域まで覆っていてもよい。従って、このような壁貼付部材1においても、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層3よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域25、具体的には、上端縁250及び下端縁251が直線状な被着領域25であることから、異形形状の壁貼付部材1の施工が容易になる。さらに、この壁貼付部材1によれば、基材層2の上側領域26の全体が平板状であったとしても、斜め上方から壁貼付部材1を見ても接着部材層3が見えにくく、壁貼付部材1の外観が好ましくなる。
【0061】
また、接着部材層3の下端縁32は、
図15に示すように、接着部材層3の長尺方向における一方側の部位ほど下方に位置する直線状であってもよい。このような壁貼付部材1において、基材層2の被着領域25の上端縁250及び下端縁251は、直線状である。従って、このような壁貼付部材1においても、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層3よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域25、具体的には、上端縁250及び下端縁251が直線状な被着領域25であることから、異形形状の壁貼付部材1の施工が容易になる。
【0062】
さらに、接着部材層3は、
図16に示すように、基材層2の一面20のうち上端縁24における最上端242よりも下方の位置から上端縁24における最下端243よりも上方の位置まで広がっていてもよい。このような壁貼付部材1においても、壁貼付部材1における上端縁24側の部位に接着部材層3が配置されているため、壁貼付部材1の施工の際に接着剤の塗布が必要な領域が、接着部材層3よりも下側に位置する単純な形状を有する被着領域25、具体的には、上端縁250の少なくとも一部が直線状な被着領域25であることから、異形形状の壁貼付部材1の施工が容易になる。
【0063】
壁貼付部材1の製造方法において、接着部材帯状層13は、例えば、接着部材帯状層13の幅方向における一端縁131が基材原反部材12の幅方向における一端縁121に重ならない状態で配置されてもよい。この場合、例えば、
図17に示すように、接着部材帯状層13の幅方向における一端縁131に交差する正弦波に沿って接着部材帯状層13及び基材原反部材12を切断することで、
図14に示した壁貼付部材1を製造することができる。
【0064】
また、
図18に示すように、接着部材帯状層13を基材原反部材12の幅方向における中央位置に配置し、且つ、接着部材帯状層13の幅方向における中央位置において正弦波に沿って接着部材帯状層13及び基材原反部材12を切断することで、
図1~
図3に示した壁貼付部材1を製造することができる。さらに、
図19に示すように、接着部材帯状層13を基材原反部材12の幅方向における中央位置に配置し、ランダムな波に沿って接着部材帯状層13及び基材原反部材12を切断することで、
図16に示した壁貼付部材1を製造することができる。この場合、上下方向において反転させたときに重なるランダムな波に沿って接着部材帯状層13及び基材原反部材12を切断することで、同一の壁貼付部材1が二つ得られる。このような場合において、一つの基材原反部材12及び一つの接着部材帯状層13から、二つの壁貼付部材1を同時に製造することができる。
【0065】
上記実施形態の壁貼付部材1の製造方法では、接着部材帯状層13が設けられた基材原反部材12を刃により切断していたが、接着部材帯状層13が設けられた基材原反部材12を打ち抜くことで幅が不均一な壁貼付部材1が形成されてもよい。
【0066】
壁貼付部材1の施工方法は、壁貼付部材1が塗布した接着剤と接着部材層3とにより壁8に貼り付けることができる範囲で、各施工工程を省いたり、各施工工程の順序を入れ替えたりすることができる。例えば、壁貼付部材1の施工方法において、基材層2の被着領域25、及び、壁8における重なり領域82のうち少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、塗布された接着剤を用いて被着領域25を重なり領域82に貼り付ける工程と、接着部材層3を壁8に貼り付ける工程と、離型紙4を接着部材層3から剥がす工程と、の順序は入れ替わってもよい。或いは、壁貼付部材1の施工方法は、離型紙4の摘み部40を形成する工程を含まなくてもよい。具体的に、壁貼付部材1の施工方法において、壁紙81を剥がす工程の後に、基材層2の被着領域25や壁8における重なり領域82に接着剤を塗布する工程を行い、離型紙4を剥がす工程を行った後に、接着部材層3を壁8に貼り付ける工程を行ってもよい。また、壁貼付部材1の施工方法において、離型紙4を剥がす工程を行った後に、壁紙81を剥がす工程を行い、さらに、基材層2の被着領域25や壁8における重なり領域82に接着剤を塗布する工程を行った後に、接着部材層3を壁8に貼り付ける工程を行ってもよい。尚、接着剤の塗布の後に壁紙81を剥がす場合、壁貼付部材1のみ、具体的には、基材層2の被着領域25のみに接着剤を塗布すればよい。
【0067】
また、壁貼付部材1の施工方法は、壁紙81を剥がす工程を含まなくてもよい。或いは、壁貼付部材1が離型紙4を備えていなくてもよく、この場合、壁貼付部材1の施工方法は、離型紙4を剥がす工程を含まなくてもよい。例えば、壁貼付部材1の施工方法は、壁紙81を剥がす工程を含まない場合、基材層2の被着領域25及び壁8の重なり領域82の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、塗布された接着剤を用いて被着領域25を重なり領域82に貼り付ける工程と、離型紙4を接着部材層3から剥がす工程と、接着部材層3を壁8に貼り付ける工程と、を含んでもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…壁貼付部材、12…基材原反部材、120…一面、121…一端縁、13…接着部材帯状層、130…一面、131…一端縁、132…他面、14…離型紙帯状体、2…基材層、20…一面、21…一部、22…他面、23…下端縁、230…下端部、24…上端縁、240…突出部位、2400…最上端、241…凹入部位、2410…最下端、242…最上端、243…最下端、25…被着領域、250…上端縁、251…下端縁、26…上側領域、3…接着部材層、30…一面、31…他面、32…下端縁、33…上端縁、4…離型紙、40…摘み部、8…壁、80…貼り付け領域、81…壁紙、82…重なり領域、83…接着剤、84…接着剤層、840…下端縁、841…上端縁、85…構造体、9…床、101…化粧幅木、102…合成樹脂板、103…舌状体、L1…仮想線、W1、W2…幅、α…境界