IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デューク ユニバーシティの特許一覧

特許7001575B細胞の増加及び評価方法並びに疾患治療のための増加B細胞の使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】B細胞の増加及び評価方法並びに疾患治療のための増加B細胞の使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0781 20100101AFI20220128BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220128BHJP
【FI】
C12N5/0781
C12Q1/02
A61P37/06
A61P29/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P1/04
A61P37/08
A61P11/14
A61P11/06
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P19/08
A61K35/17 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018223109
(22)【出願日】2018-11-29
(62)【分割の表示】P 2015531231の分割
【原出願日】2013-09-06
(65)【公開番号】P2019047814
(43)【公開日】2019-03-28
【審査請求日】2019-01-04
(31)【優先権主張番号】61/697,663
(32)【優先日】2012-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/795,889
(32)【優先日】2013-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/707,256
(32)【優先日】2012-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】テダー トーマス エフ
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 歩
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 朝光
(72)【発明者】
【氏名】クンティコフ エフグエニ
(72)【発明者】
【氏名】ポエ ジョナサン シー
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/019041(WO,A2)
【文献】特開2011-092142(JP,A)
【文献】Nature Communications,2011年09月06日,Vol.2, No.465,pp.1-11
【文献】The Journal of Immunology,2006年,Vol.177, No.8,pp.5236-5247
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD5を発現するB10細胞並びにCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞を含む組成物であって、前記B10細胞の50%超がIL-10産生能をもつB10細胞である、組成物。
【請求項2】
自己免疫疾患を有する対象の治療、器官、組織若しくは細胞の移植拒絶又は関連する慢性移植片対宿主病の予防若しくは治療、アレルギー性疾患又は炎症性疾患の治療、又は、組換えタンパク質、治療薬タンパク質又は異種タンパク質を受容する対象の治療に使用するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
疾患が、多発性硬化症、狼瘡、関節炎、炎症性腸疾患、強皮症、喘息、脳炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性異常、敗血症ショック、肺線維症、未分化型脊椎関節症、未分化型関節症、炎症性骨溶解、及び慢性ウイルス性若しくは細菌性感染症に起因する慢性炎症から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が投与される対象の自己B10細胞を含む、請求項1-3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
106-1010個のB10細胞を含む、請求項1-4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
対象で諸症候開始前、その最中、又はその開始後に投与される、請求項1-5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらにIL-4を含む、請求項1-6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
フィーダー細胞がさらにVCAM-1及びCD44、或いは、CD24、IL-7、Mst1又はTslpから選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、請求項1-7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
フィーダー細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、又は他の間葉系若しくは間質細胞である、請求項1-8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
CD40アゴニストが、CD154、CD154のフラグメント、又はCD40と反応する抗体、アプタマー又はポリペプチド、又はそれらのフラグメントである、請求項1-9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
B細胞生存促進因子が、フィーダー細胞、BAFF(BLyS)、BAFFフラグメント、APRIL、CD22リガンド、CD22モノクローナル抗体、又はそれらのフラグメントの少なくとも1つから選択される、請求項1-10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
さらにIL-21を含む、請求項1-11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
B10細胞がさらにD24及びCD27を発現する、請求項1-12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
B10細胞がヒトB10細胞である、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B細胞の増加及び評価方法並びに疾患治療のための増加B細胞の使用方法に関する。
関連出願の相互引用
本特許出願は、米国仮特許出願No.61/697,663(2012年9月6日出願)、米国仮特許出願No.61/707,256(2012年9月28日出願)、及び米国仮特許出願No.13/795,889(2013年3月12日出願)(前記文献はいずれも参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国立衛生研究所助成金番号A1057157及びU19 A156363により米国政府の資金提供を受けて達成された。米国は本発明に一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
B細胞は、抗原特異的抗体を産生することによって免疫応答を調節することは周知である。しかしながら、特殊なB細胞サブセットはまた、調節性B細胞の存在を担保しながら免疫応答を負の方向に調節することができる。阻害性サイトカインのインターロイキン-10(IL-10)を発現する能力を有する、ヒト及びマウスの調節性B細胞(B10細胞)が同定された。希少ではあるけれども、B10細胞はマウスの抗原特異的炎症及び細胞依存自己免疫疾患の強力な負の調節因子である。B10細胞のIL-10産生は、全身的免疫抑制を誘発することなく、抗原特異的免疫応答をin vivoで調節する。したがって、B10細胞は炎症又は自己免疫疾患の調節若しくは制御で有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で提供されるものは、ex vivoでB細胞を増加させる方法、増加B細胞を含む組成物、並びに増加B細胞組成物を病的状態若しくは症状の評価又はスクリーニング及び本明細書に記載の疾患の治療のために使用する方法である。対象動物から採集及び単離したB細胞をIL-21と接触させ、培養し又はインキュベートすることによって、IL-10を産生することができるB10細胞をex vivoで増加させる方法が本明細書で提供される。得られた増加ポリクローン性B細胞を該培養から収集又は単離することができ、B10細胞の選別のために更なる採集に付すことができる。
B細胞をex vivoで増加させる方法は、対象動物から採集したB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子(例えばBAFF(BlyS))を発現するフィーダー細胞とIL-4の存在下で接触させ、得られた細胞を続いてCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子(例えばBAFF(BlyS))を発現するフィーダー細胞とIL-21の存在下で接触させる工程を含み、前記工程は該増加B細胞の収集又は単離の前に実施される。該増加ポリクローン性B細胞はまた更なる選別に付すことができる。例えば、該増加ポリクローン性B細胞は、B10細胞の単離のために更なる選別に付すことができる。
【0004】
本明細書に記載する方法によって製造される増加B細胞及びB10細胞を含む組成物もまた提供される。該方法により製造された増加B細胞を含む組成物を更なる選別に付し、B10細胞を含む組成物を製造することができる。増加B細胞及び/又はB10細胞の組成物を、多様な疾患又は症状を治療する多様な方法で用いることができる。本明細書に記載する増加ポリクローン性B細胞及びB10細胞組成物を含む医薬組成物もまた提供される。
自己免疫疾患、アレルギー性異常、炎症性異常又は免疫不全を有する対象動物を治療する方法もまた提供される。該方法は、本明細書に記載の増加B細胞又はB10細胞を含む組成物の治療的に有効な量を、自己免疫疾患、アレルギー性異常、炎症性異常又は免疫不全の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む。
器官、組織若しくは細胞移植物拒絶又は関連する移植片対宿主病を予防若しくは治療するために対象動物を処置する方法もまた提供される。該方法は、該B細胞及び/又はB10細胞組成物を含む組成物の治療的に有効な量を、移植物拒絶又は移植片対宿主病の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む。
【0005】
組換えタンパク質、治療用タンパク質又は異種タンパク質を受容する対象動物を処置する方法もまた提供される。該方法は、本明細書に記載のB細胞及び/又はB10細胞を含む組成物の治療的に有効な量を、遺伝性異常、移植、アレルギー、炎症又は自己免疫性異常の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む。
B10細胞機能を対象動物で評価する方法もまた提供される。これらの方法では、B細胞は対象動物由来のサンプルから採集され、IL-21と少なくとも24時間接触される。該B細胞を続いて試験して該細胞がIL-10を産生できるか否かを決定するか、及び/又は正常なB細胞機能を有するコントロールと比較して産生されたIL-10の量及び/又はIL-10を産生できる培養中の細胞のパーセンテージが決定される。IL-10を発現するB細胞はB10細胞である。該B細胞は、CD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子(例えばBAFF)を発現するフィーダー細胞とIL-4の存在下で接触させ、引き続いてIL-21と接触させることができ、前記接触は該細胞のIL-10産生能力の評価の前に実施される。
本明細書で提供されるB10細胞機能を評価する方法を用いて自己免疫又は炎症性疾患を診断することができ、さらに前記方法を用いて対象動物の疾患又は症状の病期を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1は、IL-21が調節性B10細胞機能を誘発することを示すデータセットである。図1Aは、IL-21がB10細胞のIL-10産生及び分泌を誘発することを示すデータのFACS分析ドットプロット及びグラフのセットである。野生型マウスから精製した脾臓CD19+B細胞を培地だけで又は表示の組換えサイトカイン若しくはLPSとともに培養した。IL-10コンピテントB細胞を可視化するために、LPS、PMA、イオノマイシン+モネンシン(L+PIM)を該培養に添加し、5時間後に細胞を単離し、CD19 mAbで染色し、透過性にし、細胞質IL-10発現のために染色し、フローサイトメトリーで分析した。代表的なヒストグラムによって、表示ゲート内のIL-10+細胞頻度が、モネンシン(Mon.)だけで培養した細胞で示されるバックグラウンド染色と併せて示されている。棒グラフは、別個のマウスを用いた3つの独立した実験から得られた、48又は72時間における平均(+/-SEM)IL-10+B細胞頻度又は培養上清液のIL-10濃度を表示している。図1A及び1Dのサンプル平均間の有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図1B図1Bは、IL-21がCD1dhiCD5+B細胞のIL-10産生を誘発することを示すドットプロットセットである。野生型マウス由来の精製脾臓CD1dhiCD5+又はCD1dloCD5-B細胞を培地単独又はIL-21含有培地で48時間培養し、その後、図1AのようにIL-10+B細胞頻度をアッセイした。
図1C図1Cは、B10細胞がIL-21Rを発現することを示すグラフセットである。野生型マウスから精製したCD19+脾細胞をL+PIMとともに5時間培養した後で、細胞表面CD19及びIL-21R並びに細胞質IL-10を染色してIL-10コンピテントB10細胞を識別した(ドットプロット、左パネル)。野生型マウス由来のIL-10+及びIL-10-B細胞による代表的なIL-21Rの発現が、IL-21R-/-マウス(灰色ヒストグラム)由来コントロールB細胞との比較で示されている。これらの結果は、別個のマウスを用いた3つの独立した実験を表している。
図1D図1Dは、IL-21Rの発現はMOG免疫に続くB10細胞のin vivo増加のために必要であることを示すグラフセットである。B10細胞数は、PBS又はMOG35-55免疫後7日で野生型、IL-21R-/-又はCD19-/-マウスで評価した。代表的なフローサイトメトリーヒストグラムが示されている。棒グラフは、平均(+/-SEM)B10細胞頻度を示す(グループにつき3匹以上のマウス)。図1A及び1Dのサンプル平均間の有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図2A図2は、B10細胞は、EAEの重症度の調節にIL-10、IL-21R、CD40及びMHC-II発現を必要とすることを示すデータセットである。図2Aは、実験プロトコル及びMOG35-55投与後に生じた多様なマウスにおける疾患重症度を示す。0日目にCD19-/-マウス又は野生型(WT)マウスをMOG35-55で免疫する1日前に、該CD19-/-マウスは、食塩水(PBS)又は精製脾臓CD1dhiCD5+又はCD1dloCD5-B細胞(野生型、IL-10-/-、IL-21R-/-、CD40-/-、又はMHC-II-/-マウスのいずれかに由来する)を投与された。その後、疾患の重症度について前記マウスを毎日採点した。上の2つのグラフは同じ実験のデータを示すが、曲線を重ね合せてあり、したがって単一グラフでは見にくいので分離させた。図2A-2Cでは、値は各グループ3匹以上のマウスの平均(+/-SEM)症候スコアを示し、3つの独立した実験で類似する結果が得られた。サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05。
図2B図2Bは、B10細胞は、0日目のMOG35-55免疫の7日前にCD20又はコントロールmAbで処置した野生型マウスのEAE重症度の調節にMHC-IIの発現を必要とすることを示すグラフセットである。マウスはまた、MOG35-55免疫の1日前に、PBS又はCD20-/-若しくはMHC-II-/- CD20-/-マウスのどちらかに由来する精製CD1dhiCD5+B細胞を投与された。2つのグラフは同じ実験に由来するが、重ね合わされた曲線を見やすくするために分離させた。図2A-2Cでは、値は各グループ3匹以上のマウスの平均(+/-SEM)症候スコアを示し、3つの独立した実験で類似する結果が得られた。サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05。
図2C図2Cは、活性化MHC-II-/-B細胞は野生型マウスの疾患重症度を軽減できないことを示すグラフである。野生型又はMHC-II-/-マウス由来の精製CD1dhiCD5+B細胞を、アゴニスト作用をもつCD40 mAbと48時間培養してB10pro細胞成熟を誘発し、LPSは培養の最後の5時間の間に添加された。野生型マウスは、0日目のMOG35-55免疫の1日前にPBS又はCD1dhiCD5+B細胞のどちらかを投与された。図2A-2Cでは、値は各グループ3匹以上のマウスの平均(+/-SEM)症候スコアを示し、3つの独立した実験で類似する結果が得られた。サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05。
図3A図3は、B10細胞増加及びT細胞媒介自己免疫の調節を示すデータセットである。図3Aは、B10細胞は、抗原特異的T細胞のin vivo増殖の調節にIL-10、IL-21R、CD40及びMHC-IIの発現を必要とすることを示すドットプロット及びグラフのセットである。0日目のMOG35-55免疫の1日前に、CD19-/-レシピエントマウスは、コントロールとしてPBS、又はナイーブ野生型(WT)、IL-10-/-、IL-21R-/-、CD40-/-、若しくはMHC-II-/-マウス、或いはEAE(28日目)を有する野生型マウスに由来する精製CD1dhiCD5+又はCD1dloCD5-B細胞を投与された。免疫4日後に、染料(CFSE)標識TCRMOGCD4+Thy1.1+T細胞をCD19-/-レシピエントマウス移した。5日後に、末梢リンパ節のCD4+Thy1.1+T細胞を増殖について分析し、得られたCFSE稀釈の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。棒グラフは、分裂TCRMOGT細胞の平均(+/-SEM)数を示す。図3A及び3Bでは、サンプル平均間の有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図3B図3Bは、B10細胞は、抗原特異的T細胞のサイトカイン産生のB10細胞の調節にIL-10、IL-21R、CD40及びMHC-II発現を必要とすることを示すドットプロット及びグラフのセットである。表示のマウスに由来する精製CD1dhiCD5+B細胞を、0日目のMOG35-55免疫の1日前にCD19-/-レシピエントマウスに移し、TCRMOGThy1.1+ CD4+T細胞は4日目に移した。14日後に、リンパ節のThy1.1+CD4+T細胞をIL-17及びIFN-γ産生について細胞内サイトカイン染色によって分析し、得られた代表的なフローサイトメトリーの結果を示す。棒グラフは、各グループにつき3匹のマウスによるサイトカイン発現細胞の平均(+/-SEM)頻度を示す。図3A及び3Bでは、サンプル平均間の有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図3C図3Cは、自己抗原(Ag)特異的B10細胞機能のモデルを示す。B細胞は、適切なBCRシグナルを始動する自己抗原を捕捉し(工程1)、IL-10コンピテントB10pro細胞の進化を促進する。免疫応答の間(工程2)、B10pro細胞は、T細胞活性化及びCD40/CD154相互作用を誘発する同族相互作用を介して抗原特異的T細胞にペプチドを提示する。活性化T細胞は局部的にIL-21を産生でき、前記は近位のB10細胞IL-21Rと結合する(工程3)。IL-21RシグナルはB10細胞のIL-10産生及びエフェクター機能を誘発し(B10eff、工程4)、前記は抗原特異的T細胞機能を負の方向に調節できる(工程5)。
図4A図4は、IL-21は調節性B10細胞の増加をex vivoで駆動することを示すデータセットである。図4AはB10細胞のin vitro進化を示すドットプロットセットである。精製脾臓B細胞をCD154/BLySを発現するNIH-3T3細胞単層上で外因性IL-4の存在下に培養し、続いて新しいNIH-3T3-CD154/BLyS細胞上で外因性IL-21とともに表示のとおり3又は5日間培養した。続いて該細胞を単離し、モネンシンとともに5時間培養し、細胞質IL-10発現のために染色した。表示ゲート内の代表的なIL-10+細胞の頻度を示す。類似する結果が10以上の実験で得られた。
図4B図4Bは、IL-21がB10細胞増加をin vitroで駆動することを示す棒グラフと線グラフの重ね合せである。B細胞を図4Aのように培養し、細胞を毎日培養から採集した。棒線の値は、3つの独立した実験に由来する平均(+/-SEM)B細胞数及びB10細胞数、又はB10細胞頻度(実線)を示す。図4B、4D及び4Fでは、サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図4C図4Cは、IL-21誘発B10細胞はCD5を発現することを示すドットプロットセットである。野生型B細胞を図4Aのように9日間培養し、CD5及びCD19発現について染色した。続いて、CD5+及びCD5-B細胞を細胞仕分けによって精製し、さらに細胞質IL-10染色の前にモネンシンとともに5時間培養した。提示した結果は3つの独立した実験の代表的なものである。
図4D図4Dは、IL-21誘発B10エフェクター細胞はEAEの開始及び進行を阻害することを示すグラフセットである。IL-21誘発B10細胞(CD5+CD19+)又は非B10細胞(CD5-CD19-)を図4Cのように単離し、さらに図2のようなMOG免疫及びEAE誘発の前/後、-1、7、14又は21日目(矢印)に野生型マウスに適宜移した。図4D及び4Fでは、値は各グループ3匹以上のマウスの平均(+/-SEM)症候スコアを表し、類似する結果が3つの独立した実験で得られた。図4B、4D及び4Fでは、サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図4E図4Eは、B10細胞のin vitro増加はIL-21R及びCD40発現並びin vivoBCRシグナリングを必要とすることを示す棒グラフである。野生型、IL-21R-/-、CD40-/-、MHC-II-/-、CD19-/-、又はMD4マウスから単離した精製脾臓B細胞を図4Aのように培養し、平均(+/-SEM)細胞数を培養後に定量した。値は3つの独立した実験の平均(+/-SEM)を表す。培養中のIL-10+B細胞頻度はカッコ内に示されている。
図4F図4Fは、IL-21誘発B10細胞はEAE阻害にIL-10及びMHC-II発現を必要とすることを示すグラフセットである。IL-10-/-又はMHC-II-/-マウス由来のB細胞を図4Aのように培養し、図4CのようにCD5+又はCD5-細胞に分け、さらに図4DのようにMOG35-55免疫前に野生型マウスに適宜移した。図4D及び4Fでは、値は各グループ3匹以上のマウスの平均(+/-SEM)症候スコアを表し、類似する結果が3つの独立した実験で得られた。図4B、4D及び4Fでは、サンプル平均間で有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図5A図5は、IL-21は調節性B10細胞機能を誘発することを示すデータセットを提示する。図5Aは、IL-21はB10細胞のIL-10産生及び分泌を誘発することを示す棒グラフセットである。野生型マウスから精製した脾臓CD19+B細胞を、培地だけで又は表示のサイトカインとともに48又は72時間培養した。IL-10コンピテントB細胞を可視化するために、モネンシンを培養中に5時間添加し、その後で該細胞を単離し、CD19 mAbで染色し、透過性にし、細胞質IL-10発現のために染色してフローサイトメトリーで分析した。棒グラフは、3つの独立した実験で別個のマウスから得た48及び72時間の平均(+/-SEM)IL-10+B細胞頻度又は数を示す。培地対サイトカインサンプル間の有意な差が示されている;*はp<0.05;**はp<0.01。
図5B図5Bは、IL-21R発現はB10又はB10pro細胞の進化にそれぞれ必要とされないことを示すドットプロット及び棒グラフのセットである。野生型及びIL-21R-/-図5B)マウス由来の精製脾臓B細胞を、モネンシン単独又はL+PIMとともに5時間培養してB10細胞頻度を定量した。また別に、アゴニスト作用をもつCD40 mAbとともに48時間該細胞をex vivoで培養し、培養の最後の5時間L+PIMを添加した後でB10+B10pro細胞頻度を決定した。代表的なヒストグラム及び棒グラフは、同等な結果を有する2つの実験の1つでIL-10を発現するB細胞の平均(+/-SEM;1グループにつき3匹以上のマウス)パーセンテージ及び数を示している。
図5C図5Cは、CD40発現はB10又はB10pro細胞の進化にそれぞれ必要とされないことを示すドットプロット及び棒グラフのセットである。野生型及びCD40-/-図5C)マウス由来の精製脾臓B細胞を、モネンシン単独又はL+PIMとともに5時間培養してB10細胞頻度を定量した。また別に、アゴニスト作用をもつCD40 mAbとともに48時間該細胞をex vivoで培養し、培養の最後の5時間L+PIMを添加した後でB10+B10pro細胞頻度を決定した。代表的なヒストグラム及び棒グラフは、同等な結果を有する2つの実験の1つでIL-10を発現するB細胞の平均(+/-SEM;1グループにつき3匹以上のマウス)パーセンテージ及び数を示している。
図5D図5Dは、MHC-II発現はB10又はB10pro細胞の進化にそれぞれ必要とされないことを示すドットプロット及び棒グラフのセットである。野生型及びMHC-II-/-図5D)マウス由来の精製脾臓B細胞を、モネンシン単独又はL+PIMとともに5時間培養してB10細胞頻度を定量した。また別に、アゴニスト作用をもつCD40 mAbとともに48時間該細胞をex vivoで培養し、培養の最後の5時間L+PIMを添加した後でB10+B10pro細胞頻度を決定した。代表的なヒストグラム及び棒グラフは、同等な結果を有する2つの実験の1つでIL-10を発現するB細胞の平均(+/-SEM;1グループにつき3匹以上のマウス)パーセンテージ及び数を示している。
図6図6は、T濾胞性ヘルパー細胞はCD19-/-マウスに存在することを示すドットブロット及び棒グラフのセットである。野生型及びCD19-/-マウスの脾臓CD4+T細胞におけるCXCR5hiPD1+細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。棒の値は、3匹のマウスのCD4+T細胞における平均(+/-SEM)CXCR5hiPD1+細胞頻度を表す。サンプル平均間の有意な差が示されている;*はp<0.05。
図7図7は、表示の培養時間後のB細胞及びB10細胞の合計数並びに培養により産生されたIL-10の量を示すグラフである。精製ヒト血液B細胞を、NIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞単層上で外因性ヒトIL-4(2ng/mL)とともに7日間培養した。IL-4(2ng/mL)を含む追加培地を2日目及び4日目に該培地に添加した。続いてB細胞を単離し、新しいNIH-3T3-CD154/BlyS細胞上で外因性ヒトIL-21(10ng/mL)とともに表示のように5日間培養した。続いて前記細胞を単離し、CpG+PIBとともに5時間培養し、細胞表面CD19及び細胞質IL-10発現のために染色した。棒の値は、2つの独立した実験から得られた平均(+/-SEM)CD19+B細胞及びB10細胞の数、又はB10細胞頻度(実線)を表す。
図8図8は、精選フィーダー細胞上でヒトB細胞のみがクラスターを形成し増殖することを示す写真セットである。安定的にヒトCD154及びBLySを発現するA459ヒト上皮細胞を単一細胞としてプレートし、増加させてコロニーにし、続いてIL-4の存在下で精製ヒトB細胞と9日間共培養した。図8Aは、増殖性B細胞コロニーを発生させ支援する能力を有する代表的なA459-CD154/BLyS細胞クローンを示す。図8Bは、B細胞のクラスター形成/増殖を支援しない代表的なA549娘細胞クローンを示す。散在するいくつかの生存B細胞が認められる(矢印)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
調節性B細胞のB10細胞サブセットはそれらのIL-10発現能力によってヒト及びマウスで機能により定義されてきた。ex vivoで5時間のホルボールエステル及びイオノマイシン刺激の後でIL-10を発現する能力をもつB細胞は機能的にB10細胞と定義され、それらは、他のメカニズムを介して免疫応答を調整する他の調節性B細胞から区別される。B10細胞はナイーブマウスでは低頻度(1-5%)で見出されるが、自己免疫により増加する。脾臓B10細胞は、マイナーなCD1dhiCD5+(CD24+CD27+)B細胞亜集団内で希少B10始原(B10pro)細胞とともに優先的に見出される(B10pro細胞は、アゴニスト作用をもつCD40モノクローナル抗体(mAb)とともにin vitroで培養されている間に誘発されてIL-10コンピテントになる)。ヒト及びマウスB10細胞のIL-10産生能力は、後天的及び先天的免疫応答と同様に炎症及び自己免疫疾患を負の方向に調節するそれらの能力の中核となるものであるが、in vivoでIL-10産生を制御する生理学的シグナルは不明である。
B10細胞の免疫調節は抗原特異的であり、B細胞抗原受容体(BCR)特異性はB10細胞進化に多大な影響を与える。BCRシグナリングを正の方向に又は負の方向に調節する受容体又は経路もまた、B10細胞数をin vivoで調整することができる。例えば、CD19欠損(CD19-/-)マウスは本質的に調節性B10細胞を欠き、前記は、接触過敏時に及び多発性硬化症の実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)モデルで炎症及び疾患諸症候の悪化をもたらす。IL-10そのものはB10細胞の進化に必要とされない。なぜならば、IL-10受容体遺伝子を発現する能力を有するB細胞は通常IL-10-/-マウスでは進化しないからである。B10細胞数もまた、T細胞欠損ヌードマウス及び主要組織適合複合体クラスII(MHC-II)又はCD40分子(同族B細胞-T細胞相互作用に重要である)の発現不全を示すマウスで正常である。結果として、適切なBCRシグナルは、IL-10コンピテントB10細胞になるB細胞を選別すると考えられる。生来の病源体誘発シグナルもまた調節性B10細胞のin vivo進化に影響を及ぼす。B10細胞のIL-10産生がin vivoでどのように調節されるかについては、その他のことはほとんど明らかではなく、どのようにしてそのような希少B細胞がそのような強力なin vivo作用を発揮し、抗原特異的T細胞機能を炎症及び自己免疫時に選択的に阻害するのかは不明なままである。
【0008】
多発性硬化症のマウスモデルを用いて、我々は、in vivoで自己免疫疾患を抑制する機能的なIL-10分泌エフェクター細胞へのB10細胞の成熟は、T細胞とのIL-21及びCD40依存同族相互作用を必要とすることを本明細書で示す。さらにまた、CD40及びIL-21受容体シグナルのex vivo供給は4百万倍までB10細胞の進化及び増加を引き起こし、さらにIL-10を産生するB10エフェクター細胞を発生させることができる(前記エフェクター細胞は、自己免疫疾患が確立したマウスに移したとき疾患諸症候を劇的に抑制する)。したがって、自己B10細胞のex vivo増加及び再輸液は、自己免疫疾患及び従来の治療法に耐性を示す他の症状に対する新規で効果的なin vivo治療を提供し得る。
さらに我々はまたヒトB細胞及びB10細胞はex vivoで増加させることができることを示す。B細胞を正常なヒト血液から採集し、マウスB細胞の増加に用いた方法と同じ方法を用いてex vivoで増加させた。実施例で述べるように、B細胞数は130倍増加したが、一方、B10細胞は5-6000倍増加した。したがって、これらの例は、該方法を用いて、応答性B細胞又はB10細胞の添加が治療方法となり得るヒトの疾患又は症状の自己由来治療に有用であり得るex vivo増加B細胞を作製できることを示している。
【0009】
B細胞をex vivoで増加させる方法
本明細書に記載されるものは、ポリクローン性B細胞(具体的にはB10細胞)をex vivoで増加させる方法である。該方法は、対象動物からB細胞を採集する工程及びそれらをIL-21とともにインキュベートする工程を含む。図1では、B10細胞は、IL-21(100ng/mL)とのex vivoインキュベーションの48時間後に2倍を超えて、さらに72時間インキュベーション後には3倍を越えて増加した。該方法はさらに、CD40リガンド(CD154)及びB細胞生存促進因子、例えばBAFF(BLyS(本明細書では互換的に用いられる))、又はCD40リガンド及び/又はBAFFを発現するフィーダー細胞とのインキュベーションを含み、B細胞及びB10細胞の更なる増加をもたらすことができる。実施例に示すように、B細胞は、IL-4との第一のインキュベーションと前記に続くIL-21を含む第二のインキュベーションによって更なる増加を生じることができる。これらの工程の一方又は両方がフィーダー細胞及び場合によってCD40リガンド及び/又はBAFFを含むことができる。本明細書に記載の方法を用いて全B細胞が増加されるが、B10細胞はこれらの方法を用いてより高頻度で増加された。さらに、該B10細胞は、LPS又は別の刺激性シグナルによる更なるex vivo刺激を必要とすることなくIL-10を産生することができた。適切には、該B細胞はヒトB細胞である。
【0010】
本明細書に記載のB細胞の増加方法のまた別の実施態様では、B細胞は対象動物から採集され、続いてCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子(例えばBAFF)を発現するフィーダー細胞上でIL-4の存在下でインキュベートされる。このインキュベーション期間は2日から10日以上続くことができ、IL-4の量は最適化され得る。該方法では、2ng/mLのIL-4が用いられたが、0.5ng/mLから100ng/mL又は1ng/mLから50ng/mLを用いてもよい。該方法では、IL-4インキュベーション期間は4から7日であったが、9日もまた有用であることが示された。得られた細胞を、増加B細胞を採集する前に、続いてCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子(例えばBAFF)を発現するフィーダー細胞上でIL-21の存在下でさらに2日から8日以上インキュベートした。実施例では、10ng/mL又は100ng/mLのIL-21が用いられたが、5ng/mLから1000ng/mL、適切には10から50ng/mLのIL-21を用いてもよい。該方法では、IL-21インキュベーション期間は5日であったが、より長時間又は短時間も用いることができる。本方法で用いられるIL-4及びIL-21の実際の量及びインキュベーション若しくは培養時間の長さは当業者が決定でき、培養条件(培養培地及びサイトカインが時間経過中に補充されるか否か、培養時間の長さ及び他の培養条件を含む)に左右されるであろう。実施例では、本方法を用いて全ポリクローン性B細胞及びB10細胞が増加されるであろう。しかしながら、培養は単独B細胞又は単離B細胞セットで開始することができ、続いてこれらをex vivoで増加させてモノクローン性、オリゴクローン性又はポリクローン性B細胞集団にする。該B細胞は本明細書に記載の培養条件下で抗体を産生し、したがって該方法を用いて、抗体産生B細胞のモノクローン性、オリゴクローン性又はポリクローン性集団について選別することができる。適切には、該B細胞はマウスB細胞である。適切には、該B細胞はヒトB細胞である。
【0011】
該方法で用いられるB細胞は対象動物の多様な領域から採集でき、前記領域には、対象動物の血液、脾臓、腹腔、リンパ節、骨髄、自己免疫疾患部位、炎症部位、又は移植物拒絶を受けている組織が含まれるが、ただしこれらに限定されない。細胞は、当業者が利用できる任意の手段によって該対象動物から採集することができる。該採集細胞集団はB細胞を含むはずであるが、混合細胞集団であってもよい。対象動物はBリンパ球をもつ任意の動物であり得る。前記は、適切には哺乳動物、適切には家畜動物、例えばウマ、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ、又はニワトリであり、適切にはヒトである。また別には、細胞は幹細胞から誘導することができ、前記には、B細胞幹細胞、骨髄幹細胞、胚性幹細胞及び誘導多能性幹細胞が含まれ(ただしこれらに限定されない)、それらは、本明細書に記載の方法で使用する前にB細胞又はB始原細胞に進化させるために適切に分化させられてある。例えば以下を参照されたい:Carpenter et al., 2011, Blood 117: 4008-4011。
【0012】
B細胞は、非B細胞の除去又は細胞表面マーカー(例えばIgM、IgD、IgG、IgA、IgE、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD40、CD72、CD79a又はCD79b)又はこれら細胞表面分子の組み合わせ(CD1d、CD5、CD9、CD10、CD23、CD24、CD27、CD38、CD48、CD80、CD86、CD138又はCD148を含む)の選別によって対象動物から単離できる。増加させたB細胞は該方法によるex vivo培養の後でこれらマーカーについて選別することによって採集するか、又は特異的なB細胞タイプ(例えばB10細胞)は、ex vivo増加の前又は後でこれらのマーカーを単独で又は組み合わせて用いて選別できる。B10細胞は、CD1d、CD5、CD24、CD27又は前記の組み合わせについて選別することによって採集できる。いくつかの実施態様では、B10細胞はIL-21とのインキュベーション後にIL-10を産生することができ、したがって、IL-10産生について選別することによって選別、単離又は採集することができる。他の実施態様では、B10細胞は、IL-10産生のために、例えばLPS又はPMA及びイオノマイシンによる更なる刺激を与えることを必要とし得る。B10細胞を刺激してIL-10を産生させる方法は当業界で公知であり、LPS又はCpGオリゴヌクレオチドによる刺激が含まれる。
【0013】
本明細書で用いられるように、B細胞の増加は、該細胞の増殖の刺激とともに該細胞のアポトーシス又は他の死滅の予防を含む。本明細書で用いられるように、“培養する”及び“インキュベーション”は、指示された付加物(フィーダー細胞、サイトカイン、アゴニスト、他の刺激性分子又は培地(緩衝剤、塩、糖、血清又は多様な他の構成物質を含むことができる))と一緒に、細胞が細胞培養培地中で37℃及び5%CO2にてある期間の間維持されることを示すために用いられる。細胞を接触させるということは、指示された付加物と接触した状態で、細胞を培養しインキュベートし又は他の態様に置くことを示す。適切には、本明細書で用いられるインキュベーション又は培養期間は少なくとも48時間であるが、8日、10日又は11日以上までの任意の長さの時間であり得る。実施例で示すように、1つの培養期間を超えて用いることができる。実施例では、マウスB細胞の増加については、IL-4による培養は期間が4日でありIL-21による培養は5日であった。ヒトB細胞については、IL-4による増加は7日の培養期間とその後のIL-21との5日の培養であった。培養又はインキュベーション期間は、適切な増加を可能にするため、別個のサブセットの種々の細胞密度又は頻度を調節するため、さらに適切な細胞の使用タイミングを研究者に許容するために変動させることができることは当業者には理解されよう。したがって、厳密な培養の長さは当業者が経験的に決定することができる。
【0014】
本明細書で用いられるように、“単離”は、一群の細胞がインキュベーション培地、フィーダー細胞又は他の非B細胞から分離されることを指すために用いられる。単離は、得られた単離細胞が一定レベルの純度又は均質性を有することを言わんとするものではない。細胞は、当業者が利用できる任意の手段を用いて採集、単離又は選別することができる。例えば、B細胞は、適切にインキュベートした後で非接着性細胞について選別することによって接着性細胞から採集できる。細胞はまた、FACS仕分けによって又は抗体被覆磁性ビーズと弁別的に結合する能力によって、細胞表面マーカーの発現について選別することができる。混合集団で細胞を選別する手段は当業者には周知である。
CD40アゴニストの非限定的な例には、CD40抗体及びそのフラグメント、CD40リガンド(CD154)及びそのポリペプチドフラグメント、小分子、合成薬、ペプチド(環状ペプチドを含む)、ポリペプチド、タンパク質、核酸、アプタマー、合成若しくは天然の無機分子、模倣薬剤、及び合成若しくは天然の有機分子が含まれる。ある種の実施態様では、CD40アゴニストはCD40抗体である。該CD40抗体は任意の形態であり得る。CD40に対する抗体は当業界では公知である(例えば以下を参照されたい:Buhtoiarov et al., 2005, J. Immunol. 174:6013-22;Francisco et al., 2000, Cancer Res. 60:3225-31;Schwulst et al., 2006, 177:557-65(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる))。該CD40アゴニストはCD40リガンドであり得る。さらに該CD40アゴニストは、フィーダー細胞の表面で発現されるか、又は可溶性であり得る。
【0015】
BAFF(BLyS)は、当業者に公知の方法を用いてフィーダー細胞により発現させることができる。BLySは表面で発現させるか、又は細胞表面から切り出した後で可溶性にすることができる。また別には、BAFFは、培養でB細胞生存を促進する種々の因子と入れ替えられる。前記種々の因子にはフィーダー細胞、BAFFフラグメント、APRIL、CD22リガンド、CD22モノクローナル抗体又はそのフラグメントが含まれる。
実施例で用いられるフィーダー細胞は線維芽細胞であるが、他のフィーダー細胞を当該方法で用いてもよい。フィーダー細胞は、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、又は他の間葉系若しくは間質細胞であり得る。該方法で用いられるインキュベーション又は培養期間は、当該方法の各工程について2から10日又は11日以上であり得る。適切には、インキュベーション時間は3から7日の間、適切には、前記時間は4から5日である。実施例に記載するように、フィーダー細胞は、当該方法で最適なB細胞増加を可能にするために、おそらく追加のシグナル(CD40アゴニスト及びBAFF以外のもの)を供給することを要求される。B細胞増加を最適にするためにフィーダー細胞によって供給される他の因子の予備的分析は、下記の実施例及び表1に含まれる。要約すれば、CD40アゴニスト及びBAFFに加えて、該フィーダー細胞は最小限VCAM-1及びCD44をCD44アゴニスト及びBAFFの他に発現する。フィーダー細胞によるCD24、インターロイキン-7(IL-7)、Mst1及びTslpの発現増加は、ex vivo増加中にB細胞数を増加させることができるフィーダー細胞と相関性を有する。同様に、フィーダー細胞におけるある種の分子のダウンレギュレーションは、B細胞増加を支援する能力の増加と相関性を有する。特に、フィーダー細胞におけるCD99、TGFBI、CXCR7、Dlk1、Jag1及びNotch1のダウンレギュレーションは、B細胞のex vivo増加をより良好に支援することができる細胞と相関性を有する。したがって、当業者は、B細胞のex vivo増加をより良好に支援できるフィーダー細胞を選別するか、又は遺伝子操作により作り出すことができる。当該情報もまた、最適なB細胞ex vivo増加のために生フィーダー細胞を必要としないB細胞増加手段の考案のために用いることができる。
【0016】
該方法は、2倍から5x106倍のB細胞(特にB10細胞)増加を可能にし得る。細胞は培養期間後に選別され、一切の非B細胞を除去するか、又はB細胞について若しくは特定のB細胞サブセット(例えばB10細胞)について肯定的に選別することができる。B10細胞は、該増加方法の完了後に全B細胞の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%又はそれより多くを占めることができる。B10細胞表面マーカーの細胞表面発現について細胞を選別した後、該細胞の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%を超えるものが、IL-10を産生できるB10又はB10pro細胞である。
【0017】
増加B細胞を含む組成物
本明細書に記載の方法を用いて作製された増加ポリクローン性B細胞を含む組成物もまた提供される。ある特徴では、該組成物は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%のB10若しくはB10pro細胞を含む。他の特徴では、該組成物は、抗体産生B細胞を含むように選別される。該組成物は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%の抗体産生B細胞を含むことができる。
該増加B細胞含有組成物を用いて医薬組成物を作製できる。上記に記載の増加B細胞及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。医薬的に許容できる担体は、細胞のin vivo投与に適切な任意の担体である。該組成物での使用に適切な医薬的に許容できる担体の例には、緩衝溶液、グルコース溶液、油系又は細胞培養系液体が含まれるが、ただしこれらに限定されない、該組成物に追加される成分は、適切には例えば賦形剤、例えば安定化剤、保存料、希釈剤、乳化剤及び滑沢剤を含み得る。医薬的に許容できる担体又は希釈剤の例には、安定化剤、例えば炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、シュクロース、グルコース、デキストラン)、タンパク質(例えばアルブミン又はカゼイン)、タンパク質含有物質(例えばウシ血清又は脱脂乳)及び緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤)が含まれる。
【0018】
該増加B細胞組成物は、他の処置(例えば小分子、ポリペプチド、抗体、アプタマー又は他の治療薬)と一緒に共投与できる。本明細書に記載の組成物と別の治療薬との共投与は任意の順序で、同時に又は単一組成物の部分として投与できる。該2つの組成物は、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、20時間、1日、2日、4日、7日、2週間、4週間又は前記を超える投与時間の差で一方の組成物が他方の組成物の前に投与されるように処理することができる。
別の実施態様では、B細胞又はB10細胞集団はモノクローン性であるか、又は単離した単一細胞若しくは単離したB細胞サブセットからオリゴクローンとして増加させることができる。ある特徴では、該組成物は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%のモノクローン性B細胞又はB10細胞を含む。他の特徴では、該組成物は抗体産生B細胞を含むように選別される。該組成物は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%の抗体産生B細胞を含むことができる。別の特徴では、該組成物は、モノクローン性又はオリゴクローン性の抗原特異的B細胞を含むように選別される。該組成物は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%のB細胞(前記B細胞は単一タンパク質又は他の抗原性物質に対して特異的であるか又は前記に対する抗体を産生する)を含むことができる。別の特徴では、該組成物は、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%を超える、又は実質的に100%のB細胞を含むことができ、前記B細胞は、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-12、IL-13、IL-17、IFNγ、IL-23又はTNF-αを発現することによって調節性活性を示すことができる。
【0019】
別の実施態様では、特定の疾患に巻き込まれるある種の抗原に応答するB細胞又はB10細胞集団を作製することができる。該B細胞は、該抗原とのその後の遭遇に応答して治療性抗体又他のサイトカインを産生することができる。該B10細胞集団は、ある種の抗原で感作されたとき、その後の該抗原との遭遇時に治療量のIL-10を産生できる。そのような抗原特異的B細胞又はB10細胞集団を養子移入方法で用いることができる。前記養子移入方法では、対象動物はある種の抗原で免疫されるか又は以前に免疫されてあり、前記対象動物の抗原感作細胞が単離され、本明細書に記載の方法によってex vivoで増加され、同じ又は別の対象動物に移植される。また別には、ある対象動物のB細胞又はB10細胞集団を単離し、その後ex vivo又はin vitroで疾患特異的抗原により感作することができる。続いて該感作細胞集団を本来の又は別の対象動物に当業界で公知の任意の方法によって移植することができる。さらに別の実施態様では、該抗原特異的B細胞又はB10細胞集団を移植可能な免疫調整装置に添加することができる。この実施態様にしたがえば、移植された細胞集団は、宿主内で抗原に遭遇したとき移植された細胞に応じて、意図的に局所化されたIL-10、抗体又は別のサイトカインの産生をもたらすことができる。さらに別の特徴では、B細胞又はB10細胞集団及び疾患特異的抗原はともに1つの移植可能な免疫調整装置に配置され、続いて前記装置を、該細胞集団の治療効果(すなわちIL-10産生、抗体産生又はサイトカイン産生)が必要とされるレシピエントのある位置に移植することができる(したがって該疾患に対して増幅された応答をin vivoで生じる)。
【0020】
別の特徴では、ある種の疾患特異的抗原をCD40アゴニスト又はTLRアゴニストと連係して投与することができる。該治療薬剤は抗体(特にCD40抗体)又はLPS又はCpGオリゴデオキシヌクレオチドであり得る。他の特徴では、該治療薬剤は、B細胞CD40受容体又はTLRと相互作用する小分子、ポリペプチド、DNA又はRNAである。
任意の疾患、異常又は症状に由来する任意の抗原を本発明の方法にしたがって用いることができる。例示的抗原には、細菌、ウイルス、寄生生物抗原、アレルゲン、自己抗原及び腫瘍関連抗原が含まれるが、ただしこれらに限定されない。DNA系ワクチンが用いられる場合、抗原は典型的には投与されるDNA構築物の配列によってコードされるであろう。また別には、抗原が複合物として投与される場合、該抗原は典型的には該投与複合物中に含まれるタンパク質であろう。特に抗原はタンパク質抗原、ペプチド、不活化全生物などを含むことができる。
【0021】
用いることができる抗原の具体的な例には以下に由来する抗原が含まれる(ただしこれらに限定されない):肝炎A、B、C又はD、インフルエンザウイルス、リステリア(Listeria)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、結核症、野兎病、バリオラ・メージャー(Variola major(天然痘))、ウイルス性出血熱、ペスト菌(Yersinia pestis(ペスト))、HIV、ヘルペス、パピローマウイルス、及び伝染性因子に付随する他の抗原。他の抗原には、自己免疫症状、炎症症状、アレルギー、喘息及び移植物拒絶に付随する抗原が含まれる。自己免疫疾患及び炎症性疾患の非限定的な例は以下で提供される。上記に記載したように、疾患特異的抗原で感作されたB10細胞集団は単独で投与するか、又は他の治療薬剤(例えばCD40アゴニスト又はTLR、特にCD40抗体)と連係して投与でき、前記は病的状態の治療用又は免疫抑制用の治療ワクチン若しくは予防ワクチンとして使用される。同様に、疾患特異的又は微生物特異的抗原で感作された増加B細胞組成物はそのような病的状態又は微生物に対する免疫を付与し得る。
別の実施態様では、B10細胞サブセットは将来の移植物ドナーに由来する抗原で感作され、したがって移植レシピエントのB10細胞によるIL-10産生レベルを増加させることができる。移植レシピエントのB10細胞サブセットによるIL-10産生増加は該移植レシピエントにおける移植物に対する免疫/炎症応答の低下をもたらす。移植におけるB10細胞の役割は下記でより完全に記載される。
【0022】
増加B細胞組成物を使用する方法
該増加B細胞組成物を疾患又は症状を有する対象動物を治療する方法で用いることができる。B細胞及び特にB10細胞のそのような養子移入は、広範囲の多様な疾患の抑制に有効であり得る。前記疾患には、自己免疫疾患、炎症性疾患、又はB細胞若しくはB10細胞集団の対象動物の導入によって治療し得る一切の他の疾患が含まれる(ただし前記に限定されない)。B細胞又はB10細胞の養子移入はさらに、細胞及び/又は組織の移植に付随する免疫/炎症応答を最小限にするために利用することができる。
例示的な養子移入プロトコルでは、最初に標的ドナーから混合細胞集団が抽出される。適切にはB細胞が選別され、より適切にはB10細胞及びB10pro細胞が対象動物から選別される。ドナーから単離される細胞はドナー内のそれらが存在する任意の位置から単離でき、当該位置には、上記でより完全に記載されたドナーの血液、脾臓、リンパ節、及び/又は骨髄が含まれる(ただしこれらに限定されない)。当該適用に応じて、細胞は、健常なドナー、疾病罹患ドナー(緩解期又は活動病期にある)から、又は死亡ドナーの器官、血液若しくは組織から抽出できる。後者の事例では、ドナーは器官ドナーである。さらに別の実施態様では、細胞は該対象動物から入手され、増加及び/又は活性化され、該対象動物に戻され得る。
【0023】
採集されたリンパ球は、B細胞マーカー又はB10細胞特異的細胞マーカー(例えば以前に記載されたもの、例えばCD1d、CD5、CD24及びCD27)を基にしてフローサイトメトリー又は他の細胞分離技術によって分離され、続いてレシピエントに輸液され得る。以下の国際特許出願もまた参照されたい:PCT/US2009/002560、PCT/US2011/46643及びPCT/US2011/066487(前記文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)。また別には、細胞は将来の使用のために保存することができる。この実施態様のある特徴では、ドナー及びレシピエントは同じ対象動物である。この実施態様の別の特徴では、ドナーはレシピエント以外の他の対象動物である。この実施態様のさらに別の特徴では、“ドナー”はレシピエント以外の多数のドナーを含み、前記多数のドナー由来のB10細胞はプールされる。上記で考察されるように、ドナーから入手されたB細胞は本明細書で提供する方法を用いて増加される。細胞はまた、レシピエントに投与する前に濃縮されるか、又は当業者が利用できる方法によって上昇レベルのIL-10を産生させることができる。
【0024】
ドナーがレシピエント以外の対象動物である、本明細書で意図される増加B細胞の使用方法では、該レシピエント及びドナーは組織適合性である。組織適合性は、主要組織適合複合体(MHC)と称される遺伝子セットにおいて同じ又はほぼ同じ対立遺伝子を有する特性である。これらの遺伝子はほとんどの組織で抗原として発現される。移植された細胞及び/又は組織がレシピエントに拒絶されるとき、免疫系の応答の大部分がMHCタンパク質を介して開始される。MHCタンパク質は外来抗原のT細胞への提示に中心的に関与し、T細胞表面の受容体はこのタイプのタンパク質の認識に適切な唯一のものである。MHCは個体間で高度に可変性であり、したがって宿主のT細胞は外来MHCを認識して高頻度で移植組織の拒絶を引き起こす強力な免疫応答をもたらすことができる。レシピエント及びドナーが組織適合性であるとき、レシピエントによるB10細胞集団の拒絶の可能性は最小限である。
【0025】
対象動物にB細胞又はB10細胞集団を導入することによって治療できる疾患又は異常の治療及び/又は抑制で有効なB細胞又はB10細胞の量は、標準的な臨床技術によって決定できる。投薬量は、治療されるべき疾患のタイプ、該疾患の重症度及び進行過程、投与される組成物、B細胞又はB10細胞集団を導入する目的、レシピエントが受けた以前の治療方法、レシピエントの病歴及び現在の症状、並びに担当医師の判断に左右されるであろう。例えば、ある具体的な対象動物のための固有の用量は、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与のタイミング及び態様、排泄速度、併用される医薬、及び治療が施される目下の異常の重症度に左右される。ある患者のための投薬量は、通常的な考察を用いて、例えば本発明の組成物の種々の活性を、例えば適切な通常の薬理学的又は予防的プロトコルの手段によって一般的に比較することにより決定することができる。組成物として投与される細胞数もまた経験的に決定できる。
B10細胞集団は、当該疾患にふさわしい治療レジメンで、例えば病状の緩和のために1日又は数日にわたって1用量若しくは数用量を、又は疾患の進行を抑制しかつ疾患の再発を予防するために長期間にわたって周期的用量を投与することができる。例えば、該組成物は、4時間、6時間、8時間、12時間、1日、2日、3日、4日、1週間、2週間、又は3週間以上離して2回以上投与することができる。処方物として用いられるべき厳密な用量もまた、投与経路、疾患又は異常の重症度、及び疾患が性質として慢性であるか否かで左右され、医師の判断及び各患者の環境にしたがって決定されるべきである。
【0026】
ある対象動物の最大投薬量は、望ましくない又は耐え得ない副作用を引き起こさない最大投薬量である。個々の予防レジメン又は治療レジメンに関して変動因子の数は大きく、相当な用量範囲が予想される。投与ルートもまた投薬量要求に影響を与える。該組成物の投薬は、処置前の諸症候と比較して該症状の諸症候を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%軽減するか、又は諸症候は治療されずに残ると予想される。特に意図されることは、医薬調製物及び組成物は、治癒を提供することなく該疾患の諸症候を一時的に和らげるか若しくは緩和できるか、又はいくつかの実施態様では該疾患若しくは異常を治癒するために用いることができるということである。有効用量は、in vitro又は動物モデルのテスト系から得られる用量応答曲線に外挿することによって決定できる。ヒト対象動物で用いることが可能な非限定的な例示的用量は、少なくとも4x104、少なくとも4x105、少なくとも4x106、少なくとも4x107、少なくとも4x108、少なくとも4x109、又は少なくとも4x1010B細胞/m2の範囲である。ある種の実施態様では、ヒト対象動物の治療で用いられる用量は約4x108から約4x1010B細胞/m2の範囲である。
【0027】
本明細書に記載の方法で使用するために、該組成物は、当業者に公知の任意の手段によって投与され得る。前記手段には、腹腔内、非経口的、静脈内、筋肉内、皮下又は髄腔内手段が含まれるが、ただしこれらに限定されない。したがって、該組成物は適切には注射可能処方物として処方され得る。本発明による対象動物への該組成物の投与は、用量依存態様で有益な作用を示すようである。したがって、広い制限範囲内ではあるが、該組成物のより大量の投与は、より少量の投与より増強された有益な生物学的作用を達成すると期待される。さらにまた、毒性が認められるレベル以下の投薬量で有効性もまた期待される。
別の特徴では、ドナーから入手されたB細胞又はB10細胞は所望の位置でレシピエントに導入され、したがって該B細胞又はB10細胞集団の治療効果(すなわちIL-10産生又は抗体分泌)を特異的に目標とすることができる。そのような技術は、移植可能な免疫調整装置を用いて達成できる。前記装置は、例えばバーチャルリンパ節、例えば米国特許出願公開No.2003/0118630、国際出願N.WO1999/044583、米国特許6,645,500号(前記は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されたものである。この実施態様にしたがえば、B細胞又はB10細胞集団は上記に記載したようにドナーから単離され、移植可能免疫調整装置に添加され、続いて前記装置は、B細胞又はB10細胞集団の治療効果(すなわち抗体又はIL-10産生)が必要とされる位置でレシピエントに移植され得る。
【0028】
“治療する”、“治療すること”又は“~の治療”(又は文法的に等価の用語)という用語は、対象動物の症状の重症度が軽減されるか、又は少なくとも部分的に改善又は緩和されるか、及び/又は少なくとも1つの臨床症候のある程度の緩和、軽減又は低下が達成されるか、及び/又は症状の進行の抑制若しくは先送り及び/又は疾患若しくは不快の開始の予防若しくは先送りが存在することを意味する。“治療する”、“治療すること”又は“~の治療”(又は文法的に等価の用語)という用語はまた自己免疫疾患又は異常を管理することを意味する。したがって、“治療する”、“治療すること”又は“~の治療”(又は文法的に等価の用語)という用語は予防的及び療養的治療レジメンの両方を指す。 本明細書で用いられるように、“十分量”又は具体的な結果の達成“のために十分な量”は、所望の効果を生じるために有効である本発明の多数のB、B10又はB10エフェクター細胞を指す(前記所望の効果は場合によって治療的効果である(すなわち治療的に有効な量の投与による))。例えば、“十分量”又は“のために十分な量”は、対象動物の症状の重症度を変化させるために有効な量であり得る。
本明細書で用いられる“治療的に有効な”量は、対象動物に何らかの改善又は利益を提供する量である。言い換えれば、“治療的に有効な”量は、少なくとも1つの臨床症候で何らかの緩和、軽減及び/又は低下を提供する量である。本発明の方法によって治療できる異常に付随する臨床的諸症候は当業者には周知である。さらにまた、該治療効果は、何らかの利益を対象動物に提供するかぎり完結的又は治癒的である必要がないことは当業者には理解されよう。個体を“治療する”ために要求される細胞の“治療的に有効な”数は、当業者に周知のように、B細胞の供給源、血液採集時の患者の免疫学的状態、治療時の個体の症状、及び治療時における免疫抑制薬剤若しくは物質による治療的処置レベルに左右されるであろう。
【0029】
本方法で治療できる具体的な疾患又は症状
自己免疫疾患
IL-10レベルの下降に付随する疾患及び症状は本発明のこの特徴にしたがって治療できる。IL-10のレベル低下は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)自己免疫疾患及び炎症性疾患で示されている:乾癬(Asadullah et al., 1998, J. Clin. Investig. 101:783-94;Nickoloff et al., 1994, Clin. Immunol. Immunopathol., 73:63-8;Mussi et al. 1994, J. Biol. Regul. Homeostatic Agents)、慢性関節リウマチ(Jenkins et al., 1994, Lymphokine Cytokine Res. 13:47-54;Cush et al., 1995, Arthritis Rheum. 38:96-104;Al Janadi et al., 1996, J. Clin. Immunol. 16:198-207)、アレルギー性接触皮膚炎(Kondo et al., 1994, J. Investig. Dermatol. 103:811-14;Schwarz et al., 1994, J. Investig. Dermatol. 103:211-16)、炎症性腸疾患(Kuhn et al., 1993, Cell 75:263-74;Lindsay and Hodgson, 2001, Aliment. Pharmacol. Ther. 15:1709-16)、及び多発性硬化症(Barrat et al., 2002, J. Exp. Med. 195:603-16;Cua et al., 2001, J. Immunol. 166:602-8;Massey et al., 2002, Vet. Immunol. Immunopathol. 87:357-72;Link and Xiao, 2001, Immunol. Rev. 184:117-28)。
本発明のこの方法にしたがって任意のタイプの自己免疫疾患を治療できる。“自己免疫疾患又は異常”という用語は、対象動物自体の細胞、組織及び/又は器官に対する該対象動物の免疫反応によって引き起こされる細胞、組織及び/又は器官の損傷を特徴とする対象動物の症状を指す。“炎症性疾患”という用語は、炎症、好ましくは慢性炎症を特徴とする対象動物の症状を指すために“炎症性異常”という用語と互換的に用いられる。自己免疫異常は炎症を伴うことも伴わないこともある。さらにまた、炎症は自己免疫異常によって生じることも生じないこともある。したがって、ある種の異常は自己免疫及び炎症性異常の両方を特徴とし得る。
【0030】
例示的な自己免疫疾患又は異常には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アレルギー性接触皮膚炎、薬剤に対するアレルギー反応、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡及び関連皮膚疾患、心筋症、セリアック病、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄多発性神経症、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷アグルチニン病、クローン病、皮膚壊死性細静脈炎、円板状狼瘡、多形性紅斑、本態性混合クリオグロブリン血症、線維筋痛-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーヴズ病、ギレイン-バール病(Guillain-Barre)、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性/自己免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、免疫学的肺疾患、免疫学的腎疾患、IgA神経症、若年性関節炎、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、メヌエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型又は免疫媒介真性糖尿病、重症筋無力症、天疱瘡関連異常(例えば尋常性天疱瘡)、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多発性腺症候群、リウマチ性多発性筋痛、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、強皮症、ショーグレン症候群、スティッフマン症候群、脊椎関節症、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、紅斑性狼瘡、全身性血管炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血小板減少症、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、血管炎(例えば疱疹状皮膚炎血管炎)、白斑、ヴェーゲナー肉芽腫症。
【0031】
ある種の特徴にしたがえば、本明細書に記載のB10細胞組成物で治療される患者又は患者集団は、ある種の活動性を有する自己免疫疾患又は異常を有し得る。該自己免疫疾患又は異常の活動性は、当業者に公知の多数の因子を評価することによって測定できる。当業界で周知の活動性尺度と関連して患者の自己免疫又は異常の活動性を決定する方法を、本明細書に記載の医薬組成物及び方法と連係して利用することができる。
例えばアメリカリウマチ学会スコア(American College of Rheumatologists Score;ACRスコア)を用いて、患者又は患者集団の慢性関節リウマチの活動性を決定できる。この方法にしたがえば、患者は改善と相関性を有するスコアが与えられる。例えば、ACRが規定する因子で20%の改善を有する患者はACR20スコアが与えられるであろう。このスコア付与及び別のスコア付与を本明細書に記載するB10細胞機能を評価する方法と組み合わせて用いることができる。
【0032】
炎症性及びアレルギー性疾患
本明細書に記載の方法にしたがって任意のタイプの炎症性疾患を治療することができる。炎症性疾患の非限定的な例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):喘息、脳炎(encephilitis)、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性異常、敗血症ショック、肺線維症、未分化型脊椎関節症、未分化型関節症、関節炎、炎症性骨溶解、及び慢性ウイルス性若しくは細菌性感染症に起因する慢性炎症。
本発明の方法は、ヘルパーT(Th)1媒介炎症応答関連疾患の治療を目的とするがTh2媒介炎症応答関連疾患の治療は目的としない治療方法を包含する。この実施態様のまた別の特徴では、本発明の方法は、Th1媒介炎症応答関連疾患ではなくTh2媒介炎症応答関連疾患の治療を目的とする治療方法を包含する。
【0033】
移植
IL-10は、虚血/再灌流損傷(Deng et al., 2001, Kidney Int. 60:2118-28)、移植片対宿主病、及び移植関連死(Baker et al., 1999, Bone Marrow Transplant 23:1123-9; Holler et al., 2000, Bone Marrow Transplant 25:237-41)を抑制できる。したがって、本発明のある実施態様は、その必要がある患者でIL-10のレベルを高めることによって移植関連疾患/症状の治療に密接に関係する。
ある実施態様では、内因性IL-10のレベルは、本明細書に記載の方法により作製したB10細胞セット(例えばB10細胞)を投与することによって、器官移植を受けた対象動物で高められる。B10細胞集団は当該患者自身から単離することができる(すなわち該対象動物がドナーである)。また別には、B10細胞は当該対象動物ではないドナーから単離され得る。B10細胞のドナーは当該器官のドナーと同じでもよく、又はB10細胞集団は数人のドナーからプールされてもよい。
【0034】
本発明の組成物及び方法で用いられる治療レジメン及び用量は多数の因子を基準にして選択され、前記因子には、例えば患者が液性又は細胞性拒絶を発達させるリスクがあることを示す臨床的徴候、又はそのような拒絶が発達しつつあることを示す臨床的証拠が含まれる。“液性”及び“抗体媒介”という用語は本明細書では互換的に用いられる。患者が液性又は細胞性拒絶を発達させるリスクを評価する基準は、当業界の知識及び技量にしたがって確立される。ある実施態様では、正の補体依存細胞傷害性又は抗グロブリン強化補体依存細胞傷害性クロスマッチは、患者が液性拒絶の高いリスクを有することを示す。ある実施態様では、正のクロスマッチ又は以前の正の補体依存細胞傷害性又は抗グロブリン強化補体依存細胞傷害性クロスマッチは、患者が液性拒絶の中等度のリスクを有することを示す。ある実施態様では、負のクロスマッチは、患者が低リスクの液性拒絶を有することを示す。同様に、細胞性移植拒絶のリスクを確定させる当業者に公知の確立された基準が存在する。
【0035】
別の実施態様では、移植片拒絶を予防する必要がある移植レシピエントは、移植前に検出可能な循環性抗HLAアロ抗体を有する患者又は患者集団として認定され得る。別の実施例では、該患者又は患者集団は、移植前にパネルの反応性抗体を有すると者として認定される。移植レシピエントにおける移植後の検出可能な循環性抗HLAアロ抗体の存在もまた、液性又は細胞性拒絶を治療する必要がある患者又は患者集団の認定に用いることができる。液性又は細胞性拒絶を治療する必要がある患者又は患者集団はまた、移植レシピエントが液性若しくは細胞性拒絶を発達させるリスクがあるか又は液性若しくは細胞性拒絶を既に発達させたことを示す他の臨床基準にしたがって認定され得る。液性拒絶の初期段階はまた、循環性抗ドナーアロ抗体及びC4d沈着を特徴とするサイレント反応、又は循環性抗ドナーアロ抗体、C4d沈着及び組織病変を特徴とする準臨床的拒絶であり得る。後期段階では、該レシピエントは、当業界の知識及び技量にしたがって特徴付けられる、例えば循環性抗ドナーアロ抗体、C4d沈着、組織病変及び/又は炎症性細胞浸潤及び移植片機能不全によって、液性又は細胞性拒絶の臨床的指標を提示する患者又は患者集団として認定される。
本発明は、移植片対宿主病(GVHD)又は液性若しくは細胞性拒絶エピソードの発生率、重症度又は持続期間を減少させるために有効な組成物、治療処方物、方法及びレジメンを提供する。ある種の実施態様では、本発明の組成物及び方法は、固形組織又は器官移植片の虚血性再灌流損傷に対する宿主応答を減弱させるために有効である。好ましい実施態様では、本発明のB10エフェクター細胞組成物及び方法は、移植レシピエントにおける移植片の生存を長引かせるために有効である。
【0036】
本発明は、当該レシピエントに対して自系、同種異系又は異種である移植片を包含する。本発明に包含される移植片のタイプは組織及び器官移植片を含み、前記移植片には骨髄移植片、末梢幹細胞移植片、皮膚移植片、動脈及び静脈移植片、膵臓小島細胞移植片、器官移植物(腎臓、肝臓、肺臓、膵臓、甲状腺及び心臓)、並びに多数の器官系由来組織を組み込んだ混成組織移植片(指、手足、身体領域及び顔面組織を含むが、ただしこれらに限定されない)が含まれる。“移植片”及び“移植物”という用語は本明細書では互換的に用いられる。ある実施態様では、自系移植片は骨髄移植片、動脈移植片、静脈移植片又は皮膚移植片である。ある実施態様では、同種異系移植片は骨髄移植片、角膜移植片、腎移植物、膵小島細胞移植物、又は腎臓及び膵臓の一体移植物である。ある実施態様では、移植片は異種移植片であり、好ましくはドナーはブタである。本発明の組成物及び方法はまた、非生物学的移植片又はインプラント(人工関節、ステント又はペースメーカー装置を含むが、ただしこれらに限定されない)に対する有害な免疫応答を抑制するために用いることができる。
本発明のB10エフェクター細胞組成物及び方法を用いてGVHD又は液性若しくは細胞性拒絶を治療又は予防することができ、移植又は移植される個々の組織タイプに対する必要性を最初に生じさせた個々の適応症を考慮する必要はない。しかしながら、移植又は移植される組織タイプに対して必要性を生じさせた当該適応症はGVHD及び移植片拒絶の治療又は予防のための包括的な療養レジメンの基礎を提供でき、当該包括的レジメンは本発明のB10エフェクター細胞組成物及び方法を含む。
【0037】
他の症状を有するヒト対象物を治療する本発明の治療処方物及びレジメンは別の箇所に記載されている。同様に、個々の患者又は患者集団のための適切な治療レジメンは当業者が決定できる。具体的な実施態様では、治療レジメンは、移植前条件付けレジメン、移植後維持レジメン、又は急性若しくは慢性拒絶のための移植後治療レジメンである。ある種の実施態様では、移植物に対して液性若しくは細胞性応答を発達させるリスクが低いと評価される患者のためのレジメンと比較して、液性若しくは細胞性免疫応答を発達させるリスクが高いか又は中等度と評価される患者のための個々のレジメンは変動する。
ある種の実施態様では、個々のレジメンは移植拒絶の段階にしたがって変動し、液性又は細胞性拒絶の後期段階にある患者のためにはよりアグレッシブな治療方法が指示される。液性拒絶の段階は当業界の知識及び技量にしたがって分類され得る。例えば、液性拒絶の段階は以下の基準にしたがってI期からIV期の1つに分類できる。I期潜伏性応答は循環性抗ドナーアロ抗体(特に抗HLA抗体)を特徴とし;II期サイレント反応は循環性抗ドナーアロ抗体(特に抗HLA抗体)及びC4d沈着を特徴とするが組織学的変化又は移植片機能不全は伴わず;III期準臨床的拒絶は循環性抗ドナーアロ抗体(特に抗HLA抗体)及びC4d沈着並びに組織病変を特徴とするが移植片機能不全は伴わず;IV期液性拒絶は循環性抗ドナーアロ抗体(特に抗HLA抗体)、C4d沈着、組織病変及び移植片機能不全を特徴とする。同様に、細胞性拒絶の基準は当業界の実務者に公知である。
【0038】
当業界で標準的なプロトコルを用いて用量応答曲線を作製し、個々のレジメン(例えば移植前の条件付けレジメン及びGVHD又は液性若しくは細胞性拒絶の予防及び治療のための移植後レジメン)で使用する組成物の有効量を決定できる。一般的には、液性又は細胞性拒絶を発達させるリスクが高い患者及び1つ以上の臨床指標を既に示している患者はより高い用量及び/又はより頻繁な投与を必要とし、それらは、リスクが高くないか又は活発な拒絶の指標を示さない患者と比較してより長期間にわたって投与されるであろう。 本発明のB10エフェクター細胞組成物及び方法は、GVHD又は液性若しくは細胞性拒絶を治療又は予防するために、単独で又は他の治療薬剤若しくは治療レジメンと組み合わせて用いることができる。GVHD又は液性若しくは細胞性拒絶を治療又は予防するための他の療養レジメンは、例えば抗リンパ球療法、ステロイド療法、抗体枯渇療法、免疫抑制療法及び血漿交換の1つ以上を含むことができる。抗リンパ球療法は、抗胸線細胞グロブリン(サイモグロブリンとも称される)の移植レシピエントへの投与を含むことができる。抗リンパ球療法はまた、T細胞(及びB細胞表面抗原を含む)に対向する1つ以上のモノクローナル抗体の投与を含むことができる。そのような抗体の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):OKT3TM(ムロモナブ-CD3)、CAMPATHTM-1H(アレムツズマブ)、CAMPATHTTM-1G、CAMPATHTM-lM、SIMULECTTM(バシリキシマブ)、及びZENAPAXTM(ダクリズマブ)。
【0039】
ステロイド療法は、以下から成る群から選択される1つ以上のステロイドの移植レシピエントへの投与を含むことができる:コーチゾール、プレドニソン、メチルプレドニソロン、デキサメタゾン及びインドメタシン。好ましくは、該ステロイドの1つ以上はコルチコステロイドであり、前記にはコーチゾール、プレドニソン及びメチルプレドニソロンが含まれる(ただし前記に限定されない)。
抗体枯渇療法は、例えば静脈内免疫グロブリンの移植レシピエントへの投与を含むことができる。抗体枯渇療法はまた、移植前にex vivoで適用される移植片の免疫吸着療法を含むことができる。免疫吸着は、任意の適切な技術(例えばタンパク質Aアフィニティー)又は抗体系アフィニティー技術(T細胞又はB細胞表面マーカーに対向する抗体(例えば抗CD3抗体)を用いる)を用いて達成できる。
免疫抑制療法は、1つ以上の免疫抑制剤の投与を含むことができ、前記は例えば以下を阻害する:サイトカイン転写(例えばシクロスポリンA、タクロリムス)、ヌクレオチド合成(例えばアザチオプリン、マイコフェノレートモフェチル)、増殖因子シグナルトランスダクション(例えばシロリムス、ラパマイシン)、及びT細胞IL-2受容体(例えばダクリズマブ、バシリキシマブ)。具体的な実施態様では、本発明の組成物及び方法と組み合わせて用いられる免疫抑制剤には以下の1つ以上が含まれる:アドリアマイシン、アザチオプリン、ブスルファン、シクロホスファミド、シクロスポリンA(“CyA”)、サイトキシン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキセート、マイコフェノレートモフェチル(MOFETIL)、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)、ラパマイシン及びタクロリムス(FK506)。免疫抑制剤はまた補体阻害剤を含むことができ、前記は例えば、可溶性補体受容体-1、抗C5抗体、又はClsの小分子阻害剤(例えばBuerkeらが記載したもの(Buerke et al. J. Immunol., 167:5375-80, 2001))である。ある実施態様では、本発明の組成物及び方法は、液性又は細胞性拒絶を抑制する1つ以上の療養レジメンと組み合わせて用いられる。前記レジメンには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):タクロリムス及びマイコフェノレートモフェチル療法、免疫吸着、静脈内免疫グロブリン療法、及び血漿交換。
【0040】
ヒト移植レシピエントでGVHD及び液性又は細胞性拒絶を治療又は予防する組成物及び方法が提供される。該組成物及び方法は、移植の必要性を生じさせた個々の適応症に関係なく用いることができる。同様に、GVHD及び液性又は細胞性拒絶の治療及び予防における本明細書で提供される組成物及び方法の使用は、移植を意図される又は移植された個々の組織タイプによって制限されない。
ある実施態様では、ヒト移植レシピエントで液性又は細胞性拒絶を予防する組成物及び方法が提供され、ここで該移植レシピエントは、液性又は細胞性拒絶を発達させるリスクが高くなった患者又は患者集団と認定される。そのような患者はまた“感作されている”と称することができる。感作患者の認定基準は習熟医師には公知である。そのような基準は、例えばHLA抗原に対する循環性抗体(例えば抗HLAアロ抗体)の検出可能レベルを有する患者を含むことができる。そのような基準はまた、以前に移植、妊娠又は多数の輸血の経験がある患者を含むことができる。液性拒絶のリスクが高くなっている患者にはまた、ドナー-レシピエントHLAマッチングが不完全である者、及びABO不適合である移植物を有する者が含まれる。感作個体は、移植前の前処理又は条件付けのための好ましい候補対象者である。感作個体はまた、液性及び細胞性拒絶の予防のための移植後維持レジメンのための好ましい候補対象者である。
【0041】
ある実施態様では、本発明のB10細胞組成物及び方法は、急性又は慢性拒絶の治療のための療養レジメンを含むか、又は前記療養レジメンと併用される。該拒絶は、I期、II期、III期又はIV期液性若しくは細胞性拒絶を特徴とし得る。
ある実施態様では、本発明のB10細胞組成物及び方法は、初期液性拒絶の治療のために療養レジメンを含むか、又は前記療養レジメンと併用される。具体的な実施態様では、該初期液性拒絶はI期、II期又はIII期拒絶である。初期液性拒絶の臨床指標は当業界の知識及び技量にしたがって決定され、例えば、患者における循環性ドナー特異的抗HLA抗体の発達、抗体活性における補体マーカーの存在(例えば移植片生検におけるC4d及びC3dの沈着)、及び移植片生検における抗HLA抗体の存在が含まれ得る。初期液性拒絶の他の指標は習熟医師には公知であり、例えば、抗内皮抗体(特に抗ビメンチン抗体)の発達、及び非古典的MHCクラスI関連鎖A(MICA)アロ抗体の発達が含まれ得る。ある実施態様では、該組成物及び方法は、部分的には移植片機能不全を特徴とする液性又は細胞性拒絶の治療のための療養レジメンを含むか、又は前記と併用される。具体的な実施態様では、液性又は細胞性拒絶の治療を必要とする患者又は患者集団は、移植片機能不全のための当業界で公知の基準にしたがって認定される。他の実施態様では、液性又は細胞性拒絶のための治療を必要とする患者又は患者集団は、組織移植片のタイプに固有の他の基準(例えば組織学的基準)にしたがって認定される。当業者はそのような基準を認識しているであろう。
【0042】
生物製剤を投与される対象動物の治療
組換え体、治療タンパク質又は異種タンパク質を投与される対象動物を治療する方法もまた提供される。当該方法は、本明細書に記載のB10細胞の治療的に有効な量を、遺伝的異常、移植、アレルギー、炎症、又は自己免疫異常のための治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む。具体的には、B10細胞は、生物製剤又は他の治療薬(前記に対して対象動物が抗薬剤抗体を生じる可能性があるか又は既に生じている)とともに共投与され得る。
病院に到達する生物製剤療法の数は増加し続けているので、レシピエントがこれら薬剤に対して免疫応答をしばしば発達させるということはますます理解されるところである(免疫応答は薬剤の有効性に対して潜在的な臨床的衝撃を有する)。生物製剤に対する免疫応答は、一般的には、抗薬剤抗体(ADA)の検出及び特徴付け並びに薬剤曝露とADAの関係、ADAの有効性及び安全性の評価によってモニターされる。ADAの検出は必ずしも臨床的な結果が存在することを意味しない。しかしながら、ADAが薬剤有効性及び患者の安全性に対する挑戦であり得る事例の数は増加している。
したがって、ADAの産生を回避するために、B10細胞組成物を生物製剤療法と併用(生物製剤療法の前後に共投与)することができる。
【0043】
B10細胞機能の評価
対象動物でB10細胞機能を評価する方法もまた本明細書で提供される。当該方法は、ex vivoでB細胞を増加させる方法のために、上記で考察した対象動物からB細胞を採集する工程並びにCD40アゴニスト及びIL-21の存在下で該細胞を培養する工程を含む。本明細書に記載の任意のB細胞増加方法を利用して、B10細胞機能を対象動物で評価することができる。該細胞をIL-21と接触させた後、該細胞をアッセイして該細胞がIL-10を産生することができるか否かを決定する。IL-10を生成できる細胞のパーセンテージ及び/又は該細胞によって産生されるIL-10の量を決定できる。該決定は、細胞をIL-21と接触させた後、又は細胞を別の刺激性分子若しくは分子の組み合わせ(例えば抗原又はLPS)と接触させた後で実施できる。IL-10を産生する細胞のパーセンテージ、又は産生されるIL-10の量を当業者に利用可能な任意の方法によって決定できる。
IL-10の量又はIL-10を産生する細胞のパーセンテージを決定し、コントロールと比較することができる。適切には、コントロールは、該対象動物から入手した細胞と同様に処理した健康なドナー由来のB細胞を含む正常コントロールである。また別には、コントロールは、健康なドナー細胞が入ると予想される数値範囲によって示され得る。対象動物のB10細胞機能は、健康なドナーと比較して正常、活性過剰又は不全であり得る。工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージの2標準偏差内、適切には3標準偏差内であるならば、該B10細胞は正常である。工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージよりも2標準偏差を超えて、適切には3標準偏差を超えて低ければ、該B10細胞は不全である。工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージよりも2標準偏差を超えて、適切には3標準偏差を超えて高ければ、該B10細胞は活性過剰である。B10細胞機能が正常でないならば、当該方法を用いて、当該対象動物がB10細胞に影響を及ぼす疾患又は症状を有するか若しくは有する蓋然性が高いと診断するか又は指示することができる。
以下の実施例は例示することのみを意図し、本発明又は添付の特許請求の範囲を制限しようとするものではない。本明細書に引用した全ての参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0044】
B10細胞をin vivoで調節するシグナルを同定するために、B細胞機能に影響することが知られているサイトカインとともに精製B細胞を培養した。IL-21による刺激は2.7から3.2倍高いB10細胞頻度及び4.4から5.3倍高いIL-10分泌(p<0.01)を48及び72時間でそれぞれ誘発したが、IL-4、6、10、12、23又は27は誘発しなかった。一方、インターフェロン-γ(IFN-γ)又は形質転換成長因子-β(TGF-β)はIL-10+B細胞頻度を56%低下させた(p<0.05;図1A)。実際、IL-21は、in vitro刺激を必要としないでB10細胞のIL-10産生を誘発し(図5A)、さらにB細胞のIL-10分泌をリポ多糖類(LPS)刺激と類似するレベルで誘発した(図1A)。IL-21はまた、脾臓CD1dhiCD5+B細胞サブセット内のIL-10+B 細胞の3倍増加(B10pro及びB10細胞が濃縮されている)を誘発したが、CD1dloCD5-サブセットでは有意な数のIL-10+B 細胞の誘発をもたらさなかった。細胞をサイトカインだけで培養したときは、48又は72時間アッセイでB細胞分裂は存在するとしてもほとんど検出できなかった。B細胞増殖の誘発のためにマイトジェン(例えば抗IgM抗体又はLPS)を添加したときでさえ、48時間ではなお増殖はほとんど認められなかったが、ただしB10細胞は72時間でもっとも増殖性の高い細胞である。IL-21はB10細胞生存を促進しなかったが、その代わりに非B10細胞のアポトーシスを加速し、一方でB10細胞はもっぱら傷つけられずに残った。最終的な結果は、B10細胞数は、他のサイトカインと比較してIL-21によって優先的に増加するということであった。これと一致して、IL-21は状況依存態様でB細胞アポトーシス又は分化を誘発し、in vitro分化及びより完全に活性化したB細胞の増加を駆動する。以下を参照されたい:Spolski, R. & Leonard, W. J. Interleukin-21: basic biology and implications for cancer and autoimmunity. Annu Rev Immunol 26, 57-79, 2008;及びOzaki, K. et al. Regulation of B cell differentiation and plasma cell generation by IL-21, a novel inducer of Blimp-1 and Bcl-6. J. Immunol. 173, 5361-5371, 2004。IL-21はまたT細胞IL-10産生の強力な誘発因子であることが知られており、T細胞由来IL-21はB細胞エフェクター機能で多数の重要な役割を果たす。B10及び非B10細胞の両方が細胞表面IL-21受容体(IL-21R)を同様なレベルで発現した(図1C)。これにもかかわらず、ex vivoにおけるB10及びB10+B10pro細胞及びCD1dhiCD5+B細胞数は、IL-21R欠損(IL-21R-/-)、野生型、MHC-II-/-及びCD40-/-マウスで類似していた(図5B-D)。しかしながら、IL-21R発現は、EAE誘発のためのミエリン稀突起神経膠細胞糖タンパク質ペプチド(MOG35-55)免疫に続くB10細胞増加に必要であった(図1D)。したがって、IL-21Rが発生させたシグナルはin vivo及びin vitroでのB細胞IL-10分泌を誘発し、in vivoでのB10細胞増加に必要であった。
【0045】
B10細胞がそれらの調節性機能のin vivo誘発のためにIL-21を必要とするか否かを、MOG35-55免疫によるEAE誘発の前にCD19-/-マウスへIL-21R-/-B細胞を養子移入することによって決定した。CD19-/-マウスはB10細胞欠損であるので(図1D)、それらのEAE疾患の重症度は悪化する(図2A)。野生型CD1dhiCD5+B細胞の養子移入はCD19-/-マウスにおけるEAE重症度を標準化させた。対照的に、IL-10-/-若しくはIL-21R-/-マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞又は野生型CD1dloCD5-非B10細胞の移入は疾患を改変させなかった。CD4+T細胞はIL-21の主要な供給源であるので、我々は、同族B10-T細胞相互作用がまたEAEのB10細胞媒介抑制を制御するか否かを決定した。MOG免疫前におけるMHC-II-/-又はCD40-/-マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞のCD19-/-マウスへの移入はEAE疾患重症度を軽減しなかった(図2A下段右の2つのパネル)。IL-21R-/-、CD40-/-又はMHC-II-/-マウス由来のCD1dloCD5-B細胞もまた影響を示さなかった。EAEはまた、CD20mAbによって成熟B細胞を枯渇させた野生型マウスで悪化した。しかしながら、CD20-/-マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞の移入はこのモデルにおける疾患重症度を標準化したが、ただしMHC-II-/-CD20-/-マウス由来のものは標準化をもたらさず、CD20-/-又はMHC-II-/-CD20-/-マウス由来のCD1dloCD5-B細胞は影響を示さなかった(図2B)。同様に、野生型マウス由来のin vitro活性化CD1dhiCD5+B細胞の養子移入は、野生型マウスでEAE重症度を顕著に軽減させ、一方、活性化MHC-II-/-CD1dhiCD5+又は野生型CD1dloCD5-B細胞は影響を示さない(図2C)。したがって、調節性B10細胞機能はIL-10発現、IL-21RシグナリングをCD40及びMHC-II相互作用と同様に必要とし、それによって抗原特異的B10細胞のエフェクター機能が潜在的に説明される。
【0046】
活性化CD1dhiCD5+B細胞によって産生されるIL-10はin vitroにおける抗原特異的CD4+T細胞のIFN-γ及びTNF-α発現を阻害する。同族B10-T細胞相互作用がin vivoにおける抗原特異的T細胞増殖を調節するか否かを決定するために、B10細胞機能をMOG35-55免疫CD19-/-マウスで評価した(前記D19-/-マウスは、MOG35-55ペプチドに特異的な抗原受容体(TCRMOG)を発現するトランスジェニックマウスに由来する染料標識CD4+T細胞の養子移入が実施されていた)。以下を参照されたい:Bettelli, E. et al. Myelin oligodendrocyte glycoprotein-specific T cell receptor transgenic mice develop spontaneous autoimmune optic neuritis. J. Exp. Med. 197, 1073-1081, 2003。ナイーブ野生型マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞は、in vivo染料稀釈によって測定したとき、TCRMOGCD4+T細胞の増殖を有意に低下させた(図3A)。EAEを示すマウスから得られたCD1dhiCD5+B細胞は一層強力なT細胞増殖阻害因子であったが、一方、野生型マウス由来CD1dloCD5-B細胞又はIL-10-/-、IL-21R-/-、CD40-/-若しくはMHC-II-/-マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞は作用を示さなかった。ナイーブ又は抗原経験歴を有する野生型マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞は、MOG35-55免疫CD19-/-マウスでTCRMOGCD4+T細胞のIFN-γ及びIL-17産生を有意に低下させたが、一方、IL-10-/-、IL-21R-/-、CD40-/-若しくはMHC-II-/-マウス由来のCD1dhiCD5+B細胞は低下させなかった(図3B)。T細胞のIL-17産生を阻害するB10細胞の能力は特に重要である。なぜならば、病理原性TH17T細胞はEAEを誘発し、IL-21を産生することができるからである。MOG35-55誘発EAEを有するマウスから単離されたT濾胞性ヘルパー細胞の大半はIL-21を発現し、CD19-/-マウスはT濾胞性ヘルパー細胞を有する(図6)。したがって、B10及びT細胞は、抗原特異的疾患の最適な調節のためにレシプロカルなIL-10及びIL-21産生中に緊密な相互作用を要求するかもしれない(図3C)。
【0047】
T濾胞性ヘルパー細胞はおそらくIL-21の供給源であるけれども、これまでのところB10細胞が胚中心構成成分であることを指し示すものは存在せず、ほとんどのデータはこの考えに反対を唱えている。第一に、B10細胞BCRは主として生殖細胞系列であり、適度な頻度のIgVH及びIgVL変異を含む(Maseda, D. et al. Regulatory B10 cells differentiate into antibody-secreting cells after transient IL-10 production in vivo. J. Immunol. 188, 1036-1048, 2012)。第二に、B10細胞数は、EAE誘発中の初期に胚中心発生前に増加する(Matsushita, T., Horikawa, M., Iwata, Y. & Tedder, T. F. Regulatory B cells (B10 cells) and regulatory T cells have independent roles in controlling EAE initiation and late-phase immunopathogenesis. J. Immunol. 185, 2240-2252, 2010)。第三に、B10細胞GL-7発現は脾臓の濾胞性B細胞に類似し、GL-7high胚中心B細胞には類似しない(Matsushita, 2010)。さらにまた、B10pro+B10細胞数の劇的な増加を示すトランスジェニックマウスの特徴は、胚中心が存在せず免疫後ですらB細胞アイソタイプスイッチングもほとんど存在しないということである(Poe, J. C. et al. Amplified B lymphocyte CD40 signaling drives regulatory B10 cell expansion in mice. PLoS ONE 6, e22464, 2011)。これらのマウスのB10細胞はまた脾臓の辺縁帯及び濾胞領域の両方にわたって配置される。
【0048】
T細胞由来IL-21及びCD40シグナルがB10細胞増加及びIL-10産生を駆動することを立証するために、マウスのB10細胞in vivo増加及びB細胞in vitro増加を促進する条件を用いてB細胞を培養した。以下を参照されたい:Poe, 2011 and Nojima, T. et al. In-vitro derived germinal centre B cells differentially generate memory B or plasma cells in vivo. Nature Comm. 2, 465, 2011。CD40(CD154)及びBLySのためのT細胞リガンドを発現するNIH-3T3細胞単層上でB細胞をIL-4の存在下で4日間培養し、IL-10コンピテントB10細胞へとB10pro細胞の成熟を誘発した。続いてこのB細胞を新鮮なNIH-3T3-CD154/BLyS細胞上で外因性IL-21とともに5日間培養した(前記成分はすべて最適なB10細胞増加及びIL-10産生誘発に必須であった)(図4A)。9日間の培養後、B細胞及びB10細胞数は25000倍及び4,000,000倍にそれぞれ増加し、B細胞の38%が活発にIL-10を産生した(図4B)。培養中のIL-10+B細胞の極めて大多数がCD5を発現し(図4C)、それらの精製を容易にし、in vitroのB10細胞数におけるIL-21の劇的な作用を強めた。
in vitro増加CD5+B10細胞はそれらの調節機能を維持した。CD5+B10細胞の移入は、野生型マウスでEAE疾患の重症度を、疾患の諸症候の出現後に投与したときでさえ劇的に軽減させ、一方、CD5-B細胞は作用を示さなかった(図4D)。B10細胞のin vitro増加はIL-21及びCD40シグナルの両方を必要としたが、MHC-II発現は要求されなかった(図4E)。しかしながらin vitro増加MHC-II-/-CD5+B10細胞及びIL-10-/-CD5+B細胞はEAEの疾患重症度を調節せず(図4F)、さらにまたT細胞媒介疾患の調節におけるIL-10及び同族相互作用の必要性を立証付けた。B10細胞は、CD19-/-マウス又はMD4トランスジェニックマウス(卵のリゾチームに特異的な固定BCRを有する)由来のB細胞のin vitro培養中に増加せず、さらにまたB10細胞発生におけるBCR特異性及びシグナリングの重要性を強調した。そうでなければ、in vitro増加B10エフェクター細胞は、疾患の開始及び進行の両方における強力な調節因子であった。
【0049】
この実験は、CD40シグナルは、IL-21駆動B10細胞増加及びエフェクター細胞発生に関してB10pro細胞のIL-10コンピテンスの獲得を誘発することを示す。B10細胞の発達で極めて重要なこれらのチェックポイントは局在化IL-10産生に至り、前記局在化IL-10産生は、同族相互作用の間に不利な免疫抑制をもたらすことなく抗原特異的T細胞応答を鈍らせることができる(図3C)。B10細胞によるin vivoでの一過性IL-10産生はさらにまたIL-10分泌の作用を制限することができる。B10エフェクター細胞はまた、いったんMOG35-55免疫により炎症及び組織破壊が開始すれば、MOGに加えて自己抗原に対するT細胞応答を調節することができる。ヒト及びマウスB10細胞はまたマクロファージ及び樹状突起細胞機能の強力な調節因子であるので、B10エフェクター細胞のT細胞誘発もまた、単球及び樹状突起細胞活性を抑制することによってEAE緩解に寄与することができる。これらの集積結果は、なぜEAEがIL-21シグナリングの非存在下で悪化するかについて部分的な説明になり得る。対照的に、TGF-β及びIFN-γは、これまでのin vitroの発見を基にすればB10細胞のin vivo増加をつりあわせることができる(図1A)。調節性T細胞はEAEの最中にそれぞれ別個の調節層を提供する。なぜならば、中枢神経系におけるそれらの発現、蓄積、及び抑制的活性はB10細胞が存在しないとき正常だからである。これらの集積シグナルのin vitro反復は数百万倍のB10細胞の増加及びそれら細胞の強力なB10エフェクター細胞への成熟を誘発し、前記は確立された自己免疫疾患を元に戻す(図4)。BCR特異性に加えて、MHC-II発現は、最初に調節性II型単球について述べたように、EAE時におけるB10エフェクター細胞調節機能にとって重要なチェックポイントのままであった。自己免疫疾患は多起源性であり、自己抗原は患者及び疾患で多様であるので、ヒト血液B10pro及びB10エフェクター細胞の希少プールのin vitro増加は、重篤な自己免疫疾患の個体に将来の強力な免疫療法を提供し得る。
【0050】
ヒトB10細胞のin vitro増加:IL-21及びCD40シグナルがヒトB細胞のin vitro増加を駆動するか否かを決定するために、精製血液B細胞(1x106/mL)を、CD40のマウスT細胞リガンド(mCD154)及びヒトBLyS(hBLyS)を発現するマイトマイシンC処理NIH-3T3細胞のコンフルエントな単層上でIL-4(2ng/mL)の存在下に7日間培養し、IL-10コンピテントB10細胞へのB10pro細胞の成熟を誘発した。続いて該B細胞を新しいNIH-3T3-mCD154/hBLyS細胞単層上で外因性のヒトIL-21(10ng/mL)とともに5日間培養した。マウスCD154はヒトCD40と結合し(Bossen et al. 2006 J. Biol. Chem. 281:13964-13971)、さらにマウスCD154はマウス及びヒトCD40の両方を介してシグナルを誘発するので(Armitage et al. 1992 Nature 357:80-82;及びYasui et al. 2002 Intl. Immunol. 14:319-329)、マウスCD154を発現するNIH-3T3細胞をマウス及びヒトの両実験に用いた。対照的に、ヒトCD154はマウスCD40と結合しない(Bossen et al. 2006)。同様にヒトBLySはヒト及びマウス受容体(BCMA、TACI及びBAFF-R)の両方と結合するようであるので(Bossen et al. 2006)、ヒトBLySがマウス及びヒトB細胞増加に用いられた。12日の培養期間の後で、B細胞数は130倍(+/-17)増加したが、B10細胞数は5-6000倍増加し、該B細胞の13-16%がホルボールエステル、イオノマイシン及びブレフェルジン-Aによる5時間の刺激後にIL-10を発現した(図7)。これらの結果は、マウスB細胞及びB10エフェクター細胞のin vitro増加に関する初期の結果と一致し、さらにこの培養系はヒトに転用できることを示している。
【0051】
我々のマウス実験で発生したように、培養系及びプロトコルの更なる洗練がヒト血液B細胞及びB10エフェクター細胞の最大増加のために必要となろう。ヒトB10細胞のex vivo増加のための同種細胞培養系の開発で顕著な進展があった。ヒト初代線維芽細胞及びBSL1-レベル間質細胞株の増殖及び形態学的特性を評価した後、我々は盛んなヒト血液B細胞のクラスター形成及び増殖を支援する2つの細胞株を同定した。ヒトCD154及びヒトBLyS発現の安定的トランスフェクションとその後の数回のクローン選別の後で、我々は、B細胞増加を支援する能力が3T3に匹敵する、A549ヒト上皮細胞株及びHS-5ヒト骨髄間質細胞株のサブクローンを同定した。マウスB10細胞培養系の場合のように、全てのフィーダー細胞株又はそれらのサブクローンが、安定的で等価のCD154/BLys発現にもかかわらずB細胞/B10細胞発現を支援する能力を有するわけではない。数回のサブクローニングが適切なクローンの単離に必要である(適切なクローンは遺伝的に安定であり、未同定の可溶性及び/又は膜結合性因子を介してB細胞のex vivo増加を支援する)。例えば、同じ親の単一細胞サブクローンに由来するA549-CD154/BLyS細胞の2つの娘クローンが、in vitroでB細胞生存及び増加を支援するそれらの能力に劇的な相違を有する(図8)。安定なCD154/BLyS発現及び多数回の選別にもかかわらず、ヒトEA.hy926内皮細胞株は適切なB細胞増加を支援することができない。種々の組織起源をもつ他のBSL1-レベルヒト細胞株もまた潜在的な間質細胞として開発されつつある(前記にはSK-LMS-1ヒト線維芽細胞株が含まれる)。
【0052】
B細胞ex vivo増加で必要とされるフィーダー細胞補充因子:マウス及びヒトB細胞並びにB10エフェクター細胞のin vitro増加中における我々の発見は、この培養系はヒトに転用できるが、ただ単に外因性IL-4及びIL-21の添加又はCD154及びBLySのフィーダー細胞発現に依存しているわけではないことを示している。これらの因子の各々を最大のB細胞及びB10細胞発現のために最適化させ、さらに種々のB細胞亜集団を種々の等級レベルのCD40-CD154相互作用に弁別的に応答させねばならない(Neron et al. 2005, Immunology 116:454-463)。さらにまた、追加の因子を培養に添加するか又はフィーダー細胞で発現させて、B細胞及びB10細胞増加をさらに最適化させることができる。
【0053】
もっとも重要なことは、マウスNIH-3T3(Swiss)線維芽細胞、マウス3T3-Balb/c線維芽細胞又はヒトEA Hy.926内皮細胞(Li et al. 1998, J Exp Med. 188:1385-1390;及びEdgell et al. 1983, Proc Natl Acad Sci, USA 80:3734-3737)が全て等価というわけではないことである。例えば、CD154+BLyS+NIH-3T3及び3T3-Balb/c線維芽細胞は劇的なB細胞活性化及び増殖を誘発し、活性化B細胞の大半は間質細胞に接着し大きなブドウ状クラスターを形成することができた。対照的に、EA Hy.926内皮細胞は劇的なB細胞活性化を誘発できるだけで、該活性化B細胞は間質細胞に接着することはできなかった。しかしながら、引き続いて我々は、EA Hy.926細胞は血管細胞接着分子1(VCAM-1)を発現しないが、両線維芽細胞株は構成的にVCAM-1することを決定した(下記表1)。重要なことには、我々は、間質細胞へのB細胞接着は該培養系におけるそれらの最初の活性化及び増加のために必要であることを決定した。VCAM-1は、Bリンパ球血液産生に至る間質細胞とB細胞前駆細胞との間の分子相互作用に絶対的に重要である(Kinicade et al. 1989, Annu Rev Immunol. 7:111-143;及びKinicade, 1992, Semin Immunol. 3:379-390)。同様に、CD44のヒアルロン酸及び潜在的な他の分子との結合は、B細胞の骨髄間質細胞との接着及びその後に続く長期骨髄培養におけるリンパ血液産生に必要である(Lesley et al. 1992, J Exp Med. 175:257-266)。NIH-3T3及び3T3-Balb/c線維芽細胞は両方とも構成的にCD44を発現する(表1)。したがって、有効な間質細胞は適切な細胞表面分子を発現し、及び/又はB細胞付着のための適切な基質を提供しなければならない。したがって、最適なB細胞及びB10細胞増加のための間質細胞は、最小限CD154、BLyS、VCAM-1及びCD44又は機能的に等価の他の分子を発現し、外因性IL-4及びIL-21は添加されるか、又はこれらのサイトカインは最適なレベルで間質細胞によって産生されよう。
【0054】
最適なCD154及びBLyS発現について機能的に選別されたトランスフェクト実施間質細胞培養はB細胞増加を支援することができたが、同様なCD154及びBLyS発現にもかかわらず、種々のトランスフェクタントのバッチ、個々のクローン、及びそれらのサブクローン間で絶大な不均質性が存在した。B細胞増加を支援する種々のトランスフェクタントの能力におけるこの絶大な不均質性は、各CD154+BLyS+間質細胞集団内で多大な細胞的及び機能的不均質性が存在するという我々の発見によって最終的に説明された。予想に反することではあったが、間質細胞はシグナリング分子を発現しサイトカインを分泌することができ、それらシグナリング分子及びサイトカインそのもののいくつかに応答することができ、培養に添加された外因性サイトカインに応答することができ、さらにそれらはそれらの培養条件に応じて分化潜在能力を維持できることがよく認識される。
我々のトランスフェクト実施間質細胞集団で、我々は、該細胞のわずかなサブセットだけが激しいB細胞接着及びクローン増加を支援できるということを決定した。頻度は、細胞の全てがCD154発現しBLySを分泌するにもかかわらず一般的には間質細胞の1%未満であった。これらの間質細胞培養は一般的には20倍を超えるB細胞増加を誘発できた。しかしながら、機械的単離によって、我々は、上記に記載したように25,000倍までの広い範囲に及ぶB細胞増加を均質的に支援する最適な細胞を単離できた(図4)。最大のB細胞及びB10細胞増殖のために最適化された間質細胞は、表現型的、形態学的及び増殖における特徴を基準にして機械的に単離することができる。例えば、B細胞接着及びロゼット形成を支援する個々の間質細胞を単離することによってB細胞増加を支援するより高い能力を有する間質細胞を濃縮することが可能であった。B細胞増加のために最適な間質細胞を単離するためのまた別の機械的手段には、単一細胞クローニング技術、細胞表面分子の発現又はそれらの喪失を基準にした細胞のフローサイトメトリー単離、及び/又は当業者に公知の他の技術が含まれ、当該技術に続いて最適なB細胞増加を支援する間質細胞の機能的な同定が実施される。
【0055】
骨髄微小環境及び間質細胞は、与えられるB細胞前駆細胞又はB細胞が増殖するか、分化するか又はアポトーシスするかについて正の影響又は負の影響を与えることができる。例えば、リンパ球の成長を支援するいくつかの間質細胞は、前B細胞の偶発的アポトーシスを90%抑制し、一方、他の間質細胞クローンはリンパ球のアポトーシスを誘発し得るか又は外観的に不活性であり得る(Borghesi et al. 1997 J Immunol 159:4171-4179)。我々の研究でB細胞増加に用いられた間質細胞についても同様な観察が得られた。例示として、マウスCD154及びヒトBLySを発現する3つの代表的なクローンが示される。1つは3T3-Balb/c親細胞由来トランスフェクトクローンであり、2つは親NIH-3T3細胞に由来するトランスフェクトクローン(1及び2)である(表1)。これらの実験実施時に、クローン#1 3T3-Balb/c細胞は、NIH-3T3細胞起源のクローン1及び2(前記は相対的に有効性はより低かった)と比較して最適なB細胞増加を支援した。それらの親3T3細胞と比較したこれら3クローンのマイクロアレイ分析は、同一条件下で培養した細胞間で顕著な分子不均質性を示した。いくつかの分子の発現はアップレギュレートされ又はダウンレギュレートされ、前記は最適なB細胞増加と相関していた。しかしながら、サブクローン間の分子不均質性のレベルはもっとも予想に反する発見であった。おそらく機能を有すると思われる分子的相違の例は下記に示す。
【0056】
顕著にB細胞を増加させる潜在能力を有する3T3細胞でアップレギュレートされた分子にはCD24(マウスの熱安定性抗原としてもまた知られている)が含まれていた。CD24は、30から70kDaの範囲の不均質な分子量を有するグリコシルホスファチジル固着膜タンパク質である。成熟タンパク質は長さがわずかに27から30アミノ酸であり、該タンパク質の分子量の大半は大きなN-及びO-結合グリコシル化から成る。CD24は、B細胞及びそれらの前駆細胞並びに好中球によって、神経組織で及びある種の上皮細胞で発現される。CD24はムチン様接着分子として機能し、細胞対細胞相互作用を促進及び調節することができる。クローン#1 3T3-Balb/c細胞による間質細胞IL-7発現増加は、B10及びB細胞増加に極めて重要であり得る。IL-7は通常極めて低レベルで間質細胞によって生成されるが、前記は初期B細胞前駆細胞の複製及び他の重大な発生的機能のために必須の刺激である。クローン#1 3T3-Balb/c細胞はまたマクロファージ刺激1(Mst1)(Ste20様キナーゼ又はSTK4(セリンスレオニンキナーゼ4)としてもまた知られ、ドロソフィラ・ヒッポ(Drosophila Hippo)のヒトオルトローグである)を発現した。STK4は、細胞増殖及びアポトーシスを制御する高度に保存された経路の中心的カスパーゼ3活性化構成員である。重要なことには、STK4欠損マウス由来のリンパ球及び好中球はミトコンドリア膜の潜在能力の甚大な低下及びアポトーシスに対する感受性増加を示す。Mst1はまた、in vivoでのリンパ球トラフィキング中のリンパ球の内皮細胞との接着で決定的な役割を有し、Mst1-/-マウスは低栄養末梢類リンパ組織及び脾臓の辺縁帯B細胞減少を示す。胸線間質リンホポイエチン(Tslp)タンパク質は主としてある種の間質細胞及び線維芽細胞によって産生され、骨髄系列細胞に作用して、T細胞系列の発達及びT細胞サブセット(調節性T細胞を含む)に影響を及ぼす因子を産生する。TSLPはまた胎児の造血始原細胞のB細胞への分化を支援することができる。TSLPは、TSLP受容体及びIL-7Rα鎖で構成されるヘテロダイマー受容体複合体を介してシグナルを発すると提唱され、TSLP及びIL-7は共通のいくつかのシグナリング経路に影響し得ると示唆されている。
【0057】
多数の間質細胞分子はおそらく、B細胞の増殖、分化及び間質細胞との相互作用に負の影響を与えるか、又はB細胞のアポトーシスを誘発する。CD99は、大半の白血球(B細胞を含む)と同様に内皮細胞によって発現される。CD99は接着分子として機能し、さらに細胞内分子シクロフィリンAとも相互作用する(シクロフィリンAは炎症性シグナリング経路に複雑に巻き込まれる)。ホモタイプCD99-CD99相互作用は、血管外遊出時の単球と内皮細胞間で示された。CD99シグナリングはB細胞増加に有害であり得る。なぜならば、抗CD99モノクローナル抗体を用いた初期B細胞へのCD99の連結はアポトーシスを誘発するからである。同様に、CD99シグナリングは胸線内の発達中のT細胞のアポトーシスを誘発する。CD99のマウスホモローグ(D4と称される)とそのリガンド(白血球によって広範囲に発現される2つずつ組を形成した免疫グロブリン様2型受容体)との間の相互作用は胸線細胞のアポトーシスを誘発する主要メカニズムである。
【0058】
第二の例として、形質転換増殖因子ベータ-誘発(Tgfbi)発現が、クローン#1 3T3-Balb/c細胞及びクローン#1 NIH-3T3細胞の両方でそれらの親細胞と比較してダウンレギュレートされる。形質転換増殖因子ベータ-誘発(TGFBI)タンパク質は、I型、II型及びIV型コラーゲンと結合する形質転換増殖因子ベータ-によって誘発される分泌RGD-含有タンパク質であり、したがって細胞接着を阻害し得る。RGDモチーフは、細胞接着を調整する多くの細胞外マトリックスタンパク質で見出され、該モチーフは、細胞-コラーゲン相互作用時にいくつかのインテグリンのためにリガンド認識配列として機能する。TGFBIはメラノーマ細胞の侵襲性増殖を調節する接着性相互作用を阻害することができる。TGFBI発現の低下は、細胞増殖、腫瘍進行及び血管形成に関係している。
第三の例では、間質細胞のCXCR7転写物が、クローン#1 3T3-Balb/c細胞及びクローン#1 NIH-3T3細胞の両方でダウンレギュレートされる。CXCR7(以前にはRDC1)は、CXCL12(以前にはSDF-1)ケモカインのための受容体として機能する(前記ケモカインはB細胞と結合し、一連の正常プロセス及び病的プロセスを調節できる)。CXCR7はCXCL12のスカベンジャー受容体として機能し、CXCL12はまた両親株の3T3細胞株によって通常的に産生される。したがって、CXCR7発現の間質細胞における低下は、該培養系でCXCL12のB細胞結合を促進し得る。
【0059】
細胞表面分化調節タンパク質もまた最適なB細胞増加に対して逆効果を招き得る。デルタ様1及びジャグド1発現及びそれらの共有受容体Notch1は、クローン#1 3T3-Balb/c細胞で非トランスフェクト親細胞と比較してダウンレギュレートされる。Notch、デルタ様及びジャグドタンパク質はB細胞の発達及び活性化で枢要的役割を果たす。例えば、間質細胞で発現されるデルタ様1によるB細胞におけるNotch-1嵌合は抗体分泌細胞へのB細胞分化を促進し、一方、Notch-1とジャグド1との相互作用はこのプロセスで抑制性である。さらにまた、Notchとデルタ様1との相互作用はB細胞抗原受容体及びCD40シグナリングと協力的に作用して、B細胞増殖及びアイソタイプスイッチングを強化する。さらにまた、辺縁帯B細胞発達には、デルタ様1とB細胞発現Notch-2との相互作用が絶対的に要求される。B細胞発達の他の局面は、Notch/デルタ様/ジャグド相互作用によって負の方向に調節される。例えば、デルタ様1を発現する3T3線維芽細胞は脂肪細胞分化のために間質細胞として作用するが、デルタ様発現が抑制されるか又はインターロイキン-7(IL-7)がまた培養に提供される場合には、初期B細胞分化のみを支援する。したがって、B細胞の発達及び機能におけるNotch/デルタ様/ジャグド連合の役割は複雑であるが、これらのタンパク質はB細胞及びB10細胞増加の決定的な調節因子であり得る。
【0060】
したがって、B細胞及びB10細胞を最大に増加させる間質細胞は、培養に添加される外因性IL-4及びIL-21と一体になって、最適密度のCD154、BLyS、VCAM-1及びCD44、又は他の機能的に等価の分子を、表1に概略した分子のいくつか又は全ての最適な発現とともに最適に発現させることができる。B細胞及びB10細胞増加に影響を及ぼす分子の各々がより明確に規定されるとき、間質細胞によって内因的に発現される他の因子及び培養に添加される外因的刺激と一体となった各分子の機能を評価することは極めて重要である。これら正の又は負の調節因子の累積効果はまた、これらシグナルがB細胞及びB10細胞増加中に存在するタイミングに左右されるであろう。
【0061】
表1:B細胞及びB10細胞増加のために最適化された間質細胞によって発現される転写物
【0062】
【表1-1】
【0063】
【表1-2】
【0064】
全RNAを親3T3細胞及びそれらのcDNAトランスフェクトサブクローンからTRIzol(Invitrogen-Molecular Probes)を用いて抽出し、相対的な転写物レベルはGeneChip分析(Affymetrix Mouse Genome 430 2.0 GeneChips; Affymetrix, Santa Clara, CA)によって並行して定量した。アレイの全品質パラメーターが製造業者の推奨する範囲内であることが確認された。直線的な相対的発現レベルが各ラインについて示されている。各遺伝子チップにおける反復プローブの結果が示されている。
【0065】
方法
マウス:C57BL/6、IL-10-/-(B6.129P2-Il10tmlCgn/J)(Kuhn, et al., Interleukin-10-deficient mice develop chronic enterocolitis. Cell 75, 263-274, 1993)、CD40-/-(B6.129P2-CD40 tm1Kik /J)及びMD4(C57BL/6-Tg(TghelMD4)4Ccg/J)マウスはジャクソンラボラトリー(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)から得た。MHC-II-/-(B6.129-H2-Ab1 tm1Jae B2m tmGru N17)マウス(Taconic Farms, Inc., Hudson, NY)は記載のとおりであった(Grusby, M. J. et al. Mice lacking major histocompatibility complex class I and class II molecules. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 90, 3913-3917, 1993)。CD19-/-マウスはC57BL/6のバックグラウンドで14世代にわたって戻し交配した。以下を参照されたい:Sato, S., Ono, N., Steeber, D. A., Pisetsky, D. S. & Tedder, T. F. CD19 regulates B lymphocyte signaling thresholds critical for the development of B-1 lineage cells and autoimmunity. J. Immunol. 157, 4371-4378, 1996;及びSato, S., Steeber, D. A., Jansen, P. J. & Tedder, T. F. CD19 expression levels regulate B lymphocyte development: human CD19 restores normal function in mice lacking endogenous CD19. J. Immunol. 158, 4662-4669, 1997。IL-21R-/-マウスは記載のとおりであった。以下を参照されたい:Ozaki, K. et al. A critical role for IL-21 in regulating immunoglobulin production. Science 298, 1630-1634, 2002。TCRMOGトランスジェニックマウスThy1.2+(Bettelli, E. et al. Myelin oligodendrocyte glycoprotein-specific T cell receptor transgenic mice develop spontaneous autoimmune optic neuritis. J. Exp. Med. 197, 1073-1081, 2003)(Dr. V. K. Kuchroo(Harvard Medical School, Boston, MA)により提供)はC57BL/6.Thy1.1マウスと交配され、Thy1.1発現T細胞を生じた。全てのマウスを特定病原体フリーバリヤー施設で繁殖させ、6-12週齢で用いた。デューク大学動物飼育使用委員会(Duke University Animal Care and Use Committee)が全実験を承認した。
【0066】
細胞の調製:穏やかに細切することによって脾臓及び末梢リンパ節(両腋窩及び鼡径リンパ節)由来の単一細胞懸濁物を作製し、該細胞を70mmの細胞ろ過器(BD Biosciences, San Diego, CA)に通し、続いてパーコール勾配(70/37%)遠心分離を実施した。リンパ球を37:70%界面から収集し、洗浄した。MACS(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)を用い、製造業者の指示にしたがいリンパ球集団を精製した。CD19 mAb被覆マイクロビーズ及びCD4+T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)を用いて、B細胞及びCD4+T細胞をそれぞれ精製した。必要な時には、二度目に新しいMACSカラムを用いて細胞を濃縮し95%を超える細胞純度を得た。
【0067】
免疫蛍光分析:FITC-、PE-、PE-Cy5-、PE-Cy7-、又はAPC-結合CD1d(1B1)、CD4(H129.19)、CD5(53-7.3)、CD19(1D3)、B220(RA3-6B2)及びThy1.1(OX-7)mAbはBDバイオサイエンシーズ(BD Biosciences)から得た。PE-結合IL-21R(4A9)mAbはバイオリージェンド(BioLegend, San Diego, CA)から得た。細胞内染色は、IL-10(JES5-16E3)、IL-17(17B7)及びIFN-γ(XMG1.2)と反応するmAb(いずれもeBioscienceより)及びCytofix/Cytopermキット(BD Biosciences)を用いた。バックグラウンド染色は、非反応性、アイソタイプ一致コントロールmAb(Caltag Laboratories, San Francisco, CA)を用いて評価した。2色から6色免疫蛍光分析のために、単一細胞懸濁物(106細胞)を予め決定した最適なmAb濃度で4℃にて20分間、記載にしたがって染色した。以下を参照されたい:Yanaba et al. 2008, Immunity 28, 639-650;Matsushita et al. 2008, J. Clin. Invest. 118, 3420-3430;Matsushita et al. 2010, J. Immunol. 185, 2240-2252;Matsushita and Tedder 2011, Methods Mol. Biol. 677, 99-111;及びZhou et al. 1994, Mol. Cell. Biol. 14, 3884-3894。血中赤血球は、染色後にFACSTM溶解溶液(FACSTM Lysing Solution, Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いて溶解させた。
B細胞の細胞内IL-10発現は免疫蛍光染色で可視化し、記載にしたがってフローサイトメトリーによって分析した。以下を参照されたい:Yanaba et al. 2008, Immunity 28, 639-650;及びMatsushita and Tedder 2011, Methods Mol. Biol. 677, 99-111。簡単に記せば、単離白血球又は精製細胞を、完全培地(10% FCS、200μg/mLペニシリン、200 U/mLストレプトマイシン、4 mM L-グルタミン及び5x10-5M 2-メルカプトエタノール(いずれもGibco(Carlsbad, CA)より)を含むRPMI 1640培養液)に、LPS(10μg/mL、大腸菌血清型0111: B4, Sigma)、PMA(50ng/mL;Sigma)、イオノマイシン(500ng/mL;Sigma)及びモネンシン(2μM;eBioscience)とともに、48ウェルの平底プレートで5時間再懸濁させた。いくつかの実験では、細胞を48時間、アゴニスト作用をもつ抗マウスCD40 mAb(1μg/mL;HM40-3 mAb;BD Pharmingen)とともに記載にしたがってインキュベートした(Yanaba et al. 2009, J. Immunol. 182, 7459-7472)。IL-10の検出のためには、Fc受容体をマウスFc受容体mAb(2.4G2;BD PharMingen)で封鎖し、細胞表面染色の前にLIVE/DEAD(商標)フィクサブルヴァイオレット死細胞染色キット(LIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stain Kit)(Invitrogen-Molecular Probes)を用いて死細胞を検出した。染色細胞を固定し、さらにCytofix/Cytoperm kit (BD PharMingen)を製造業者の指示にしたがって用いて透過性にし、PE-結合マウス抗IL-10 mAbで染色した。IL-10-/-マウスの脾臓細胞が陰性コントロールとして供され特異性を明示し、さらにバックグラウンドIL-10染色レベルを確立させた。T細胞の細胞内サイトカイン染色のためには、リンパ球を染色前に5時間ブレフェルジンA(BFA、1μL/mL;eBioscience)の存在下でPMA(50ng/mL;Sigma, St. Louis, MO)及びイオノマイシン(1μg/mL;Sigma)でin vitro刺激した。リンパ球のフォワード及びサイド光散乱特性を有する生存細胞を、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson)又はBD FACSCantoTMII(BD Biosciences)を用いて分析した。
【0068】
in vitro B細胞培養:精製脾B細胞(1x106/mL)をRPMI 1640培養液で培養し、その後B10細胞数及び培養上清液のIL-10濃度を決定した。前記RPMI 1640培養液は以下を含んでいた:10% FBS、2 mM L-グルタミン、ペニシリン(100 I.U./mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)及び50μM 2-メルカプトエタノール、並びに以下のいずれか:組換え体IFN-γ(10ng/mL・・ IL-4(2ng/mL)、IL-6(10ng/mL)又はIL-21(100ng/mL)(e-Bioscience);TGF-β(10ng/mL)、IL-10(10ng/mL)、又はIL-12(10ng/mL)(R&D systems, Minneapolis, MN)、又はIL-23(20ng/mL)及びIL-27(100ng/mL)(Biolegend)、又はLPS(10μg/mL)。IL-10濃度はELISAで決定した。別個の実験で、精製脾細胞をCD154及びBLyS発現NIH-3T3細胞とともに記載にしたがって培養し、外因性組換えIL-4(2ng/mL)又はIL-21(10ng/mL)を培養に加えた(Nojima et al. 2011, Nature Comm. 2, 465 and Tedder et al. in Leukocyte Typing V: White Cell Differentiation Antigens. Vol. 1 (eds S. F. Schlossman et al.) 483-504, Oxford University Press, 1995)。養子移入実験のためには、培養CD5+及びCD5-B細胞を細胞仕分け(FACSVantage SE, Becton Dickinson)で精製し、95-98%の純度を得た。精製後、1x106の細胞を直ちに各レシピエントマウスにi.v.で移入した。いくつかの実験では、CD40 mAb(クローンHM40-3;ハムスター、アザイド/エンドトキシンフリーではない(BD Pharmingen, San Jose, CA))を表示のように培養に添加した。
【0069】
EAE誘発:EAEは6から8週齢の雌マウスで以下によって誘発した:加熱死菌マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)H37RA(Difco, Detroit, MI)の200μgを含むCFA中に乳化させた100μgのMOG35-55ペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK; NeoMPS, San Diego, CA)による0日目の皮下免疫(以下を参照されたい:Matsushita et al. 2008, J. Clin. Invest. 118, 3420-3430 and Matsushita et al. 2010, J. Immunol. 185, 2240-2252)。追加的に、マウスは、0.5mLのPBS中の200ngの百日咳毒素(List Biological Laboratories, Campbell, CA)を0及び2日目にi.p.に投与された。以下の0から6ポイントの採点系により、疾患の臨床徴候を毎日評価した:記載されたとおり、0は正常、1は尾の弛緩性、2は立直り反射及び/又は歩行の障害、3は部分的な後肢麻痺、4は全後肢麻痺、5は部分的前肢麻痺を伴う後肢麻痺、6は瀕死状態(Fillatreau et al. 2002, Nat. Immunol. 3, 944-950)。瀕死マウスには疾患重症度スコア6を与え安楽死させた。
【0070】
養子移入実験:ナイーブマウス又はEAEマウス(28日目)から得たB細胞を初めにCD19 mAb被覆マイクロビーズを用いて濃縮し、細胞表面CD19、CD1d及びCD5発現について染色し、記載のように純度95-98%のCD1dhiCD5+及びCD1dloCD5-B細胞を細胞仕分けで精製した(以下を参照されたい:Matsushita 2011, Methods Mol. Biol. 677, 99-111;及びYanaba et al. 2008, Immunity 28, 639-650)。精製後、CD1dhiCD5+又はCD1dloCD5-B細胞(1x106)を直ちにレシピエントマウスにi.v.で移入した(B10細胞は移入細胞の13-20%及び<0.1%を占めた)。いくつかの実験では、ドナーThy1.1 CD4+ T細胞をTCRMOGトランスジェニックマウスのプールした脾臓及びリンパ節から単離し、続いてCFSE VybrantTMCFDA SE蛍光染料(5μM;CFSE; Invitrogen)で標識し、Thy1.2コンジェニックレシピエントに静脈内移入した(5x106/マウス)。養子移入後5日して、TCRMOGCD4+T細胞をフローサイトメトリーで評価した。
【0071】
統計分析:全データが平均(+/-SEM)として示される。サンプル平均間の相違の有意さは、スチューデントt検定を用いて決定した。
本明細書に引用した全ての参考文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
次に、本発明の態様を示す。
1. IL-10を産生することができるB10細胞をex vivoで増加させる方法であって、対象動物から採集したB細胞をIL-21と接触させる工程及び該B10細胞を単離する工程を含む、前記方法。
2. さらに細胞をCD40アゴニストと接触させる工程を含む、上記1に記載の方法。
3. さらにB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞と接触させる工程を含む、上記1に記載の方法。
4. さらに最初にB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞とIL-4の存在下で接触させる工程を含む、上記3に記載の方法。
5. B細胞生存促進因子がBAFF(BLyS)である、上記3又は4に記載の方法。
6. 以下の工程を含む、B細胞をex vivoで増加させる方法:
a)対象動物から採集したB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞とIL-4の存在下で接触させる工程;
b)工程(a)のB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞とIL-21の存在下で接触させる工程;及び
c)工程(b)のB細胞を単離する工程。
7. さらに工程(c)のB細胞からB10細胞を単離する工程を含む、上記6に記載の方法。
8. B10細胞が、CD1d、CD5、CD24又はCD27の細胞表面発現について選別することによって単離される、上記1-5又は7に記載の方法。
9. フィーダー細胞がさらにVCAM-1及びCD44を発現する、上記3-8のいずれか1項に記載の方法。
10. フィーダー細胞がさらにCD24、IL-7、MST1又はTs1pの少なくとも1つを発現する、上記3-9のいずれか1項に記載の方法。
11. フィーダー細胞が、コントロールフィーダー細胞よりも少なくとも2倍少ないCD99、CXCR7、Dlk1、Jag1、Notch1又はTGFBIを発現する、上記3-10のいずれか1項に方法。
12. B細胞が、対象動物の血液、脾臓、腹腔、リンパ節、骨髄、自己免疫疾患部位、炎症部位、又は移植物拒絶を示す組織から採集される、上記1-11のいずれか1項に記載の方法。
13. 上記1-12のいずれか1項に記載の方法であって、B細胞が、該方法で使用する前に、非B細胞の除去、又は細胞表面IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD40、CD72、CD79a、CD79b、CD1d、CD5、CD9、CD10、CD23、CD27、CD38、CD48、CD80、CD86、CD138、CD148、若しくはそれらの組み合わせについての選別によって単離される、前記方法。
14. CD40アゴニストが、CD154、CD154のフラグメント、又はCD40と反応する抗体、アプタマー又はポリペプチド、又はそれらのフラグメントである、上記2-13のいずれか1項に記載の方法。
15. B細胞生存促進因子が、フィーダー細胞、BAFF(BLyS)、BAFFフラグメント、APRIL、CD22リガンド、CD22モノクローナル抗体、又はそれらのフラグメントの少なくとも1つから選択される、上記3-14のいずれか1項に記載の方法。
16. フィーダー細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、又は他の間葉系若しくは間質細胞である、上記3-15のいずれか1項に記載の方法。
17. B細胞を3から10日間IL-4と接触させる、上記4-16のいずれか1項に記載の方法。
18. B細胞を4から8日間IL-21と接触させる、上記1-17のいずれか1項に記載の方法。
19. B10細胞がIL-10を産生しているか、又はIgM、IgD、IgG、IgA、IgE、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD40、CD72、CD79a、CD79b、CD1d、CD5、CD9、CD10、CD1d、CD23、CD27、CD38、CD48、CD80、CD86、CD138、CD148、若しくはそれらの組み合わせを含む細胞表面分子の弁別的発現を基準に単離される、上記1-5又は7-18のいずれか1項に記載の方法。
20. 上記1-5又は7-19のいずれか1項に記載の方法であって、B10細胞が、該方法の後で単離された全B細胞の10%以上である、前記方法。
21. 単離B10細胞の50%超が、IL-10産生能をもつB10細胞である、上記1-5又は7-19のいずれか1項に記載の方法。
22. 上記1-21のいずれか1項に記載の方法によって製造される細胞を含む組成物。
23. 前記細胞の90%超がB10細胞である、上記22に記載の組成物。
24. 上記22又は23に記載の組成物及び医薬的に許容できる担体を含む医薬組成物。
25. 自己免疫異常を有する対象動物を治療する方法であって、上記22-24のいずれか1項に記載の組成物の治療的に有効な量を、自己免疫異常の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
26. 自己免疫疾患が、多発性硬化症、狼瘡、関節炎、炎症性腸疾患及び強皮症から選択される、上記25に記載の方法。
27. 器官、組織若しくは細胞の移植拒絶又は関連する慢性移植片対宿主病を予防若しくは治療するために対象動物を処置する方法であって、上記22-24のいずれか1項に記載の組成物の治療的に有効な量を、移植拒絶又は移植片対宿主病の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
28. アレルギー性異常又は炎症性異常を有する対象動物を治療する方法であって、上記22-24のいずれか1項に記載の組成物の治療的に有効な量を、アレルギー又は炎症の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
29. 炎症性異常が、喘息、脳炎、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性異常、敗血症ショック、肺線維症、未分化型脊椎関節症、未分化型関節症、関節炎、炎症性骨溶解、及び慢性ウイルス性若しくは細菌性感染症に起因する慢性炎症から選択される、上記28に記載の方法。
30. 組換えタンパク質、治療薬タンパク質又は異種タンパク質を受容する対象動物を処置する方法であって、上記22-24のいずれか1項に記載の組成物の治療的に有効な量を、遺伝性異常、移植、アレルギー、炎症又は自己免疫性異常の治療を必要とする対象動物に投与する工程を含む、前記方法。
31. 組成物が自己B細胞を含む、上記25-30のいずれか1項に記載の方法。
32. 10 6 から10 10 の間でB細胞が組成物で対象動物に投与される、上記25-31のいずれか1項に記載の方法。
33. 組成物が、対象動物で諸症候開始前、その最中、又はその開始後に投与される、上記25-32のいずれか1項に記載の方法。
34. 以下の工程を含む、B10細胞機能を対象動物で評価する方法:
a)対象動物由来のサンプルからB細胞を採集する工程;
b)B細胞をIL-21及びCD40アゴニストと接触させる工程;及び
c)B細胞がIL-10を産生できるか否かを決定する工程。
35. IL-21とともに培養する前に、さらにB細胞をCD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞とIL-4の存在下で接触させる工程を含む、上記34に記載の方法。
36. 細胞を、CD40アゴニスト及びB細胞生存促進因子を発現するフィーダー細胞とIL-21の存在下で接触させる、上記34又は35に記載の方法。
37. さらに、産生されたIL-10の量又はIL-10を産生できる細胞のパーセンテージを正常なB細胞機能を有するコントロールと比較する工程、及び対象動物でB10細胞機能が正常であるか又は異常であるかを決定する工程を含む、上記34-36のいずれか1項に記載の方法。
38. さらに、対象動物が正常B10細胞、不全B10細胞又は活性過剰B10細胞を有すると診断する工程を含む、上記34-37のいずれか1項に記載の方法。
39. 工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージの2標準偏差内にあれば、該B10細胞は正常であり、工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージよりも2標準偏差を超えて低ければ、該B10細胞は不全であり、さらに工程(c)のIL-10を産生できるB10細胞のパーセンテージが、正常集団のIL-10を産生できるB10細胞の平均パーセンテージよりも2標準偏差を超えて高ければ、該B10細胞は活性過剰である、上記38に記載の方法。
40. B細胞が、対象動物の血液、脾臓、腹腔、リンパ節、骨髄、自己免疫疾患部位、炎症部位、又は移植拒絶を示す組織から採集される、上記34-39のいずれか1項に記載の方法。
41. B細胞が、非B細胞の除去、又は細胞表面IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、CD19、CD20、CD21、CD22、CD24、CD40、CD72、CD79a、CD79b、CD1d、CD5、CD9、CD10、CD23、CD27、CD38、CD48、CD80、CD86、CD138、CD148、若しくはそれらの組み合わせについての選別によって単離される、上記34-40のいずれか1項に記載の方法。
42. CD40アゴニストが、CD154、CD154のフラグメント、又はCD40と反応する抗体、アプタマー、ポリペプチド又はそれらのフラグメントである、上記34-41のいずれか1項に記載の方法。
43. B細胞生存促進因子が、フィーダー細胞、BAFF(BLyS)、BAFFフラグメント、APRIL、CD22リガンド、CD22モノクローナル抗体、又はそれらのフラグメントの少なくとも1つから選択される、上記34-42のいずれか1項に記載の方法。
44. フィーダー細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、メラニン細胞、又は他の間葉系若しくは間質細胞である、上記34-43のいずれか1項に記載の方法。
45. B細胞を3から10日間IL-4と接触させる、上記35-44のいずれか1項に記載の方法。
46. B細胞を4から8日間IL-21と接触させる、上記35-45のいずれか1項に記載の方法。
47. さらに、前記比較を、対象動物がB10細胞機能に影響する疾患又は症状を有するか否かを診断するために使用することを含む、上記38-46のいずれか1項に記載の方法。
48. 疾患又は症状が、自己免疫疾患、移植片対宿主病、移植拒絶、抗薬剤抗体、又は炎症性異常である、上記47に記載の方法。
49. 本明細書に実質的に開示及び記載された方法及び組成物。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8