(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】車両用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/203 20060101AFI20220112BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20220112BHJP
【FI】
B60R21/203
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2018234731
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173161(WO,A1)
【文献】特開2014-069730(JP,A)
【文献】特開2011-037398(JP,A)
【文献】特開2007-131056(JP,A)
【文献】特開平09-011837(JP,A)
【文献】特開平10-071911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/203
B60R 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前方のダッシュボード側から車体後方の運転席側へ向けて展開膨張される運転席エアバッグを有する車両用エアバッグ装置であって、
操舵用ハンドルを有し、上記運転席に対し、上記ダッシュボード内へ格納可能に設置される操舵機構と、
上記運転席前方のウインドシールドと上記操舵用ハンドルの設置位置との間の所定場所に位置させて設けられ、上記運転席エアバッグを収納するための収納スペースと、
該収納スペースに設けられ、上記運転席エアバッグにこれを展開膨張させるインフレータガスを導入するインフレータと、
上記収納スペースと上記ウインドシールドとの間に固定して設けられ、上記運転席と向かい合う立面を有する反力受け壁とを備え、
前記収納スペースの所定場所は、前記操舵機構を設置したとき、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の操舵機構用コラムカバー内であり、
上記運転席エアバッグは、展開膨張時、少なくとも上記反力受け壁の上記立面に支持された状態であることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、少なくとも該収納スペースに面する部分の前記ダッシュボードであることを特徴とする
請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、前記操舵機構用コラムカバー上に設けられることを特徴とする
請求項1に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記運転席エアバッグ内には、前記操舵機構を設置したときの前記操舵用ハンドルのハンドル面を基準面として、当該基準面またはその近辺に沿わせるようにして、車体前方側と車体後方側とに仕切る仕切り部材が設けられ、該仕切り部材にはインフレータガスを流通させる連通孔が形成されることを特徴とする
請求項1~3いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項5】
車体前方のダッシュボード側から車体後方の運転席側へ向けて展開膨張される運転席エアバッグを有する車両用エアバッグ装置であって、
操舵用ハンドルを有し、上記運転席に対し、上記ダッシュボード内へ格納可能に設置される操舵機構と、
上記運転席前方のウインドシールドと上記操舵用ハンドルの設置位置との間の所定場所に位置させて設けられ、上記運転席エアバッグを収納するための
2つの収納スペースと、
該収納スペースに設けられ、上記運転席エアバッグにこれを展開膨張させるインフレータガスを導入するインフレータと、
上記収納スペースと上記ウインドシールドとの間に固定して設けられ、上記運転席と向かい合う立面を有する反力受け壁とを備え、
前記運転席エアバッグ内には、前記操舵機構を設置したときの前記操舵用ハンドルのハンドル面を基準面として、当該基準面またはその近辺に沿わせるようにして、車体前方側と車体後方側とに仕切る仕切り部材が設けられ、該仕切り部材にはインフレータガスを流通させる連通孔が形成され、
上記運転席エアバッグは、展開膨張時、少なくとも上記反力受け壁の上記立面に支持された状態であることを特徴とする車両用エアバッグ装置。
【請求項6】
2つの前記収納スペースの
いずれか一方の所定場所は、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の前記ダッシュボート内であることを特徴とする
請求項5に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側の前記ダッシュボード上に設けられることを特徴とする
請求項6に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項8】
2つの前記収納スペースのいずれか他方の所定場所は、前記操舵機構を設置したとき、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の操舵機構用コラムカバー内であることを特徴とする請求項5に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、少なくとも該収納スペースに面する部分の前記ダッシュボードであることを特徴とする請求項8に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項10】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、前記操舵機構用コラムカバー上に設けられることを特徴とする請求項8に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記運転席エアバッグには、前記仕切り部材から車体前方に位置させて、インフレータガスを外部に排出するベントホールが形成されることを特徴とする
請求項4~10いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項12】
前記運転席エアバッグは、展開膨張時、下面に、車体下方へ臨む凹み部が現れる形態であることを特徴とする
請求項1~11いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項13】
前記凹み部は、前記操舵機構が設置されているときに、
展開膨張時、前記操舵用ハンドルに覆い被さって該操舵用ハンドルが納まるように設定されることを特徴とする
請求項12に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項14】
前記運転席エアバッグは、展開膨張時、前記凹み部の車体前方側下面に、下方へ迫り出す下向き凸部が現れる形態であることを特徴とする
請求項12または13に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項15】
前記運転席エアバッグは、
展開膨張時、下面に、車体下方へ臨む凹み部が現れ、かつ、前記凹み部の車体前方側下面に、下方へ迫り出す下向き凸部が現れる形態であり、
前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、
前記凹み部は、前記操舵用ハンドルに覆い被さって該操舵用ハンドルが納まるように設定され、かつ、前記下向き凸部が前記操舵機構用コラムカバーに面するように設定されることを特徴とする
請求項1~4または8~10いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項16】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、前記操舵用ハンドルを、車体幅方向から、少なくとも部分的に覆うサイドチャンバを有する形態であることを特徴とする
請求項1~15いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項17】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、上記運転席側に位置する車体後方側の部分が前記操舵用ハンドルの下端よりも下方へ達する形態であることを特徴とする
請求項1~16いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【請求項18】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、さらに前記操舵用ハンドルで支持された状態であることを特徴とする
請求項1~17いずれかの項に記載の車両用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵用ハンドルのデザインの多様化に拘わらず、運転席エアバッグについて、当該運転席エアバッグを支持して乗員を受け止める反力を、適切かつ十分に確保することが可能であり、また、車室内に操舵機構が設置される場合はもちろんのこと、設置されない場合であっても、運転席エアバッグを適切に設置し的確な乗員保護機能を発揮させることが可能な車両用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
座席に着座している乗員を保護できるように、エアバッグを、座席前方の様々な位置から車体後方へ向けて展開膨張させるようにした車両用エアバッグ装置は、各種のものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、エアバッグを、インストルメントパネルの上面から車体後方の座席へ向けて膨張展開させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】ドイツ公開公報第10 2016 219 071 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の衝突時、座席から移動する乗員を保護するエアバッグのうち、ダッシュボードから展開膨張する助手席エアバッグは、主に当該ダッシュボードとフロントウインドシールドから支持作用を受け、これらに反力をとって、進入してくる乗員を受け止める。
【0006】
また、エアバッグのうち、例えばホーンボタンなど、ステアリングホイールから展開膨張する運転席エアバッグは、主に当該ステアリングホイールとフロントウインドシールドから支持作用を受け、これらに反力をとって、進入してくる乗員を受け止める。
【0007】
このように、車体各部でエアバッグを支持し、エアバッグが乗員を受け止めることができることによって、乗員保護が達成されるようになっている。
【0008】
近年、自動運転により操縦される自動車の開発が推進されている。自動運転では、操舵操作が軽減される。このため、ステアリングホイールは、簡便な操舵操作ができればよく、これまでの大型なホイール形状のステアリングホイールから、例えば小型な長方形状の操舵用ハンドルなど、デザインが多様化することが考えられる。
【0009】
ステアリングホイールに代わって小型なハンドルが採用されるようになると、これまでとは異なり、この種の小型なハンドルでは、運転席エアバッグについて、当該運転席エアバッグを支持して乗員を受け止める反力を、適切かつ十分に確保できなくなることが考えられる。加えて、運転席エアバッグを、当該小型なハンドルに組み込んで収納することも難しくなると考えられる。
【0010】
さらに自動運転の開発が進めば、操舵機構自体についても、常時車室内に設置する必要性が低下し、操舵機構を車体のいずれかの場所に格納可能として、車室内から撤去できるようにすることも考えられる。
【0011】
このようになると、もはやこれまでのように、運転席エアバッグを、操舵機構のハンドル等と組み合わせて設置すること自体が不可能となり、運転席エアバッグ及びインフレータ等からなるエアバッグモジュールの設置について、どのようにして乗員保護機能を確保するかも含めて、見直す必要性が出てくるものと考えられる。
【0012】
自動車の自動運転への移行を考慮し、以上のような課題に関する対策が望まれている。そしてこのような課題解決の対策は、運転者による操舵操作がまったく必要なくなって、操舵機構そのものがなくなった場合における解決策ともなるものである。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、操舵用ハンドルのデザインの多様化に拘わらず、運転席エアバッグについて、当該運転席エアバッグを支持して乗員を受け止める反力を、適切かつ十分に確保することが可能であり、また、車室内に操舵機構が設置される場合はもちろんのこと、設置されない場合であっても、運転席エアバッグを適切に設置し的確な乗員保護機能を発揮させることが可能な車両用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置は、車体前方のダッシュボード側から車体後方の運転席側へ向けて展開膨張される運転席エアバッグを有する車両用エアバッグ装置であって、操舵用ハンドルを有し、上記運転席に対し、上記ダッシュボード内へ格納可能に設置される操舵機構と、上記運転席前方のウインドシールドと上記操舵用ハンドルの設置位置との間の所定場所に位置させて設けられ、上記運転席エアバッグを収納するための収納スペースと、該収納スペースに設けられ、上記運転席エアバッグにこれを展開膨張させるインフレータガスを導入するインフレータと、上記収納スペースと上記ウインドシールドとの間に固定して設けられ、上記運転席と向かい合う立面を有する反力受け壁とを備え、前記収納スペースの所定場所は、前記操舵機構を設置したとき、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の操舵機構用コラムカバー内であり、上記運転席エアバッグは、展開膨張時、少なくとも上記反力受け壁の上記立面に支持された状態であることを特徴とする。
【0015】
前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、少なくとも該収納スペースに面する部分の前記ダッシュボードであることが望ましい。前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、前記操舵機構用コラムカバー上に設けられることが好ましい。前記運転席エアバッグ内には、前記操舵機構を設置したときの前記操舵用ハンドルのハンドル面を基準面として、当該基準面またはその近辺に沿わせるようにして、車体前方側と車体後方側とに仕切る仕切り部材が設けられ、該仕切り部材にはインフレータガスを流通させる連通孔が形成されることが望ましい。
【0016】
また、本発明にかかる車両用エアバッグ装置は、車体前方のダッシュボード側から車体後方の運転席側へ向けて展開膨張される運転席エアバッグを有する車両用エアバッグ装置であって、操舵用ハンドルを有し、上記運転席に対し、上記ダッシュボード内へ格納可能に設置される操舵機構と、上記運転席前方のウインドシールドと上記操舵用ハンドルの設置位置との間の所定場所に位置させて設けられ、上記運転席エアバッグを収納するための2つの収納スペースと、該収納スペースに設けられ、上記運転席エアバッグにこれを展開膨張させるインフレータガスを導入するインフレータと、上記収納スペースと上記ウインドシールドとの間に固定して設けられ、上記運転席と向かい合う立面を有する反力受け壁とを備え、前記運転席エアバッグ内には、前記操舵機構を設置したときの前記操舵用ハンドルのハンドル面を基準面として、当該基準面またはその近辺に沿わせるようにして、車体前方側と車体後方側とに仕切る仕切り部材が設けられ、該仕切り部材にはインフレータガスを流通させる連通孔が形成され、上記運転席エアバッグは、展開膨張時、少なくとも上記反力受け壁の上記立面に支持された状態であることを特徴とする。
【0017】
2つの前記収納スペースのいずれか一方の所定場所は、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の前記ダッシュボート内であることが望ましい。前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側の前記ダッシュボード上に設けられることが好ましい。2つの前記収納スペースのいずれか他方の所定場所は、前記操舵機構を設置したとき、前記操舵用ハンドルの設置位置から車体前方側の操舵機構用コラムカバー内であることが望ましい。前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、少なくとも該収納スペースに面する部分の前記ダッシュボードであることが好ましい。前記反力受け壁は、前記収納スペースから車体前方側で、前記操舵機構用コラムカバー上に設けられることが望ましい。前記運転席エアバッグには、前記仕切り部材から車体前方に位置させて、インフレータガスを外部に排出するベントホールが形成されることが望ましい。前記運転席エアバッグは、展開膨張時、下面に、車体下方へ臨む凹み部が現れる形態であることが望ましい。前記凹み部は、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、前記操舵用ハンドルに覆い被さって該操舵用ハンドルが納まるように設定されることが好ましい。
【0018】
前記運転席エアバッグは、展開膨張時、前記凹み部の車体前方側下面に、下方へ迫り出す下向き凸部が現れる形態であることが望ましい。
【0019】
前記運転席エアバッグは、展開膨張時、下面に、車体下方へ臨む凹み部が現れ、かつ、前記凹み部の車体前方側下面に、下方へ迫り出す下向き凸部が現れる形態であり、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、前記凹み部は、前記操舵用ハンドルに覆い被さって該操舵用ハンドルが納まるように設定され、かつ、前記下向き凸部が前記操舵機構用コラムカバーに面するように設定されることが好ましい。
【0020】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、前記操舵用ハンドルを、車体幅方向から、少なくとも部分的に覆うサイドチャンバを有する形態であることが望ましい。
【0021】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、上記運転席側に位置する車体後方側の部分が前記操舵用ハンドルの下端よりも下方へ達する形態であることが好ましい。
【0022】
前記運転席エアバッグは、前記操舵機構が設置されているときに、展開膨張時、さらに前記操舵用ハンドルで支持された状態であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる車両用エアバッグ装置にあっては、操舵用ハンドルのデザインの多様化に拘わらず、運転席エアバッグについて、当該運転席エアバッグを支持して乗員を受け止める反力を、適切かつ十分に確保することができ、また、車室内に操舵機構が設置される場合はもちろんのこと、設置されない場合であっても、運転席エアバッグを適切に設置し的確な乗員保護機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明にかかる車両用エアバッグ装置の好適な実施形態が適用された自動車の車室内であって、運転席に対し、操舵機構が設置されている場合を示す部分斜視図である。
【
図2】
図1に適用された車両用エアバッグ装置の第1の作動態様を示す側面図である。
【
図3】
図1の車室内に設置された操舵用ハンドルを示す概略図である。
【
図4】
図2に示した車両用エアバッグ装置の概略側断面図である。
【
図5】
図2に示した車両用エアバッグ装置に適用されている運転席エアバッグを説明する説明図である。
【
図6】
図1に適用された車両用エアバッグ装置の第2の作動態様を示す側面図である。
【
図7】
図6に示した車両用エアバッグ装置の概略側断面図である。
【
図8】
図1に適用された車両用エアバッグ装置に採用される仕切り部材を示す正面図である。
【
図9】
図1に適用された車両用エアバッグ装置であって、操舵機構が格納されている場合の第3の作動態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグ装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1及び
図2に示すように、自動車1には、走行方向前方(以下、車体前方という)のフロントウインドシールド2の直下に、走行方向後方(以下、車体後方という)へ迫り出す形態で、硬質合成樹脂製のダッシュボード3が設けられる。
【0026】
ダッシュボード3から車体後方へ距離を隔てた位置に、運転席や助手席(いずれも図示せず)が設けられる。
【0027】
ダッシュボード3は、フロントウインドシールド2に面する上面3aと、上面3aの車体後方側端縁から下方へ向けて形成され、車体後方の運転席側に面する前面3bと、前面3bの下端縁から車体前方へ向けて形成され、運転席等に着座した乗員の足下を包囲する下面3cとを有する。ダッシュボード3は、運転席に対し、車体前方に設けられる。運転席は、ダッシュボード3に対し、車体後方に設けられる。
【0028】
運転席については、ダッシュボード3の前面3bから運転席側へ向けて、車体後方へ向かって操舵機構用コラムカバー4が突設される。
【0029】
コラムカバー4内には、操舵機構を構成する各種部品が収納される。コラムカバー4の車体後方側端部には、操舵機構の一部をなす操舵用ハンドル5が設けられる。操舵用ハンドル5による操舵操作は、コラムカバー4内の操舵機構を介して、自動車1の車輪に伝達される。
【0030】
操舵用ハンドル5は、多様なデザインで形成され、例えば
図3にも示すように、車輪の中立位置で、車幅方向に横長な長方形状のコンパクトな形態で形成され、長方形状の図心位置にホーンボタン5aが設けられる。
【0031】
操舵用ハンドル5を含む操舵機構全体は、ダッシュボード3の前面3bに形成された穴部3dを介して、車体の前後方向に移動可能(
図2中、矢印Xで示す)に構成される。
【0032】
これにより、操舵機構は、運転席に対し、ダッシュボード3内へ格納可能に、すなわち、設置した状態と、
図9に示すように、ダッシュボード3内へ押し込んで格納した状態との、2つの位置で固定できるように構成される。
【0033】
自動車1に備えられる運転席エアバッグA,Bは、車体前方のダッシュボード3側から車体後方の運転席側へ向けて展開膨張される。
【0034】
運転席に対し、操舵機構(コラムカバー4)及び操舵用ハンドル5は上述したように、設置したり、ダッシュボード3内に格納したりすることができる。運転席エアバッグA,Bの構成に関する以後の説明は、特段の記述がない限り、操舵用ハンドル5を含む操舵機構が運転席に対し、設置されている状態に基づく。しかしながら、運転席エアバッグA,Bの作動は、運転席に対し、操舵機構が設置されているか、格納されているかは問われない。
【0035】
折り畳まれて収納状態とされた運転席エアバッグA,Bは、
図1に示すように、運転席前方のフロントウインドシールド2と、操舵用ハンドル5の設置位置との間の所定場所に位置させて設けられた収納スペースAs,Bsに収納される。
【0036】
収納スペースAs,Bsには、運転席エアバッグA,Bにインフレータガスを導入して、当該運転席エアバッグA,Bを展開膨張させるインフレータ6が設けられる。インフレータ6は、運転席エアバッグA,B内に組み込んで設けられる。
【0037】
衝突信号がハーネス7を介してインフレータ6に入力されると、インフレータ6はインフレータガスを運転席エアバッグA,B内に放出し、これにより運転席エアバッグA,Bは展開膨張される。
【0038】
収納スペースAs,Bsの所定場所は、本実施形態では、操舵機構の設置時及び格納時それぞれに対応させて、2つの箇所に設定される。
【0039】
図1及び
図2に示すように、第1の収納スペースAsは、操舵用ハンドル5の設置位置から車体前方側のダッシュボード3内とされる。
【0040】
第1の収納スペースAsは、第1の運転席エアバッグAを展開させる開口部8が
図1及び
図2に示すように、フロントウインドシールド1に臨むダッシュボード3の上面3aに設けられる。開口部8は、図示しない可動リッドにより開放可能に封鎖される。
【0041】
また、第2の収納スペースBsは、
図1及び
図6に示すように、操舵用ハンドル5の設置位置から車体前方側のコラムカバー4内とされる。
【0042】
第2の収納スペースBsは、第2の運転席エアバッグBを展開させる開口部9が、フロントウインドシールド2もしくはルーフに臨むコラムカバー4の上面に設けられる。開口部9は、図示しない可動リッドにより開放可能に封鎖される。
【0043】
第2の収納スペースBs及びその内部に収納される第2の運転席エアバッグBは、操舵機構が運転席に対して設置されているときに、それに対応して使用可能となる。
【0044】
他方、第1の収納スペースAs及びその内部に収納される第1の運転席エアバッグAは、操舵機構が設置されたとき及び格納されたとき、双方に対応して使用可能である。
【0045】
従って、第1の収納スペースAsと第1の運転席エアバッグAは必須であり、第2の収納スペースBsと第2の運転席エアバッグBは、追加的に備えられる。第2の収納スペースBs及び第2の運転席エアバッグBは、備えなくてもよい。
【0046】
運転席に対し、操舵機構が設置されるときには、第1及び第2の収納スペースAs,Bsのいずれか一方から、第1及び第2の運転席エアバッグA,Bのいずれかが展開膨張される。
【0047】
操舵機構が格納されたときには、第1の収納スペースAsから第1の運転席エアバッグAが展開膨張される。
【0048】
図1及び
図2に示すように、第1の収納スペースAsに収納される第1の運転席エアバッグAの展開膨張に対応させて、第1の収納スペースAsとフロントウインドシールド2との間には、第1の反力受け壁10が設けられる。
【0049】
第1の収納スペースAsは、ダッシュボード3の上面3aに設けられていて、第1の反力受け壁10は、ダッシュボード3の上面3aに、第1の収納スペースAsから車体前方側に位置させて設けられる。
【0050】
第1の反力受け壁10は、展開膨張した第1の運転席エアバッグAを、フロントウインドシールド2と共に支持し、当該運転席エアバッグAが車体前方に進入してくる運転者を受け止めるための反力を確保するために、ダッシュボード3に強固に固定して設けられる。
【0051】
第1の反力受け壁10には、第1の運転席エアバッグAを支持する際に発生する反力の向きを運転席へ方向づけるために、運転席と向かい合う立面10aが形成される。第1の反力受け壁10には、各種の計器類や運転補助のためのインジケータ類を設けるようにしてもよい。
【0052】
図1及び
図6に示すように、第2の収納スペースBsに収納される第2の運転席エアバッグBの展開膨張に対応させて、第2の収納スペースBsとフロントウインドシールド1との間には、第2の反力受け壁11が設けられる。
【0053】
第2の収納スペースBsは、コラムカバー4の上面に設けられていて、第2の反力受け壁11は、第2の収納スペースBsから車体前方側となるダッシュボード3のうち、少なくとも第2の収納スペースBsに面するダッシュボード3の前面3bの部分とされる。
【0054】
第2の反力受け壁11は、展開膨張した第2の運転席エアバッグBを、フロントウインドシールド1と共に支持し、当該第2の運転席エアバッグBが車体前方に進入してくる運転者を受け止めるための反力を確保するために、ダッシュボード3によって構成される。
【0055】
第2の反力受け壁11は、ダッシュボード3の前面3bであって、この前面3bは、第2の運転席エアバッグBを支持する際に発生する反力の向きを運転席へ方向づけるための運転席と向かい合う立面となる。
【0056】
第2の反力受け壁11は、図示しないけれども、コラムカバー4の上面に、第1の反力受け壁10と同様な設置態様で、第2の収納スペースBsから車体前方側に位置させて設けるようにしてもよい。この場合、第2の反力受け壁11には、第1の反力受け壁10と同様に、第2の運転席エアバッグBを支持する際に発生する反力の向きを運転席へ方向づけるために、運転席と向かい合う立面が備えられる。
【0057】
第1の反力受け壁10や第2の反力受け壁11を備えた当該構成では、運転席エアバッグA,Bは、展開膨張時、少なくともこれら反力受け壁10,11が備える立面10a(ダッシュボード3の前面3b)によって支持された状態が確保され、このような支持状態による立面からの反力をもって、運転者を受け止めるようになっている。
【0058】
一方、動くことが求められる可動リッドとは異なり、第1及び第2の反力受け壁10,11は、不動状態に固定して設けられることが好ましい。
【0059】
第1及び第2の運転席エアバッグA,Bのいずれにあっても、
図2,
図4及び
図5に示すように、展開膨張したときに、車体下方に面する下面12に、車体下方へ臨む凹み部13が現れる形態に構成される。
【0060】
図5には、運転席エアバッグA,Bの展開膨張時の外形形態が示されている。
図5(A)は、側面視、
図5(B)は底面視、
図5(C)は、正面視を示している。
【0061】
この凹み部13は、次のようにして形成される。
【0062】
運転席エアバッグA,Bの底面12を形成する底面布14には、四角形状の開口14aが形成される。
【0063】
底面布14の開口14aに対し、開口14aの車体幅方向両側の一対の縁辺14bそれぞれに底辺15aが縫製される、おおよそ三角形状の一対の側面布15と、開口14aの車体前後方向両側の一対の縁辺14cに端縁16aが縫製され、側面布15の二辺15b,15cに亘って側縁16bが縫製される帯状布16とが適用される。
【0064】
図4,
図5及び
図7に示すように、側面布15の三角形状は、車体幅方向から見たときに、操舵用ハンドル5の車体上下方向寸法よりも大きな高さ寸法であって、底辺15aを除く二辺15b,15cのうち、車体後方側の一辺15bは、帯状布16が操舵用ハンドル5のハンドル面S(
図4及び
図6参照)に沿うように設定される。
【0065】
三角形状の車体前方側の一辺15cは、三角形状の頂角周辺で帯状布16に張りを持たせるように、凹み部13の車体前方側下面で帯状布16が下方へ湾曲して迫り出す下向き凸部17が現れるように、下向きに湾曲した曲線に設定される。
【0066】
運転席エアバッグA,Bの底面布14に四角形状の開口14aを形成し、一対の側面布15を、この開口14aの車体幅方向両側の一対の縁辺14bそれぞれに縫製し、帯状布16の一対の端縁16aそれぞれを、この開口14aの車体前後方向両側の一対の縁辺14cに縫製し、さらに、帯状布16と側面布15を互いに縫製することによって構成される凹み部13は、
図4及び
図6に示すように、第1の収納スペースAsや第2の収納スペースBsから展開膨張したとき、主に側面布15の外形寸法によって得られる凹み部13の容量により、操舵用ハンドル5に覆い被さって当該凹み部13内に操舵用ハンドル5が納まるようになっている。
【0067】
また、側面布15の一辺15cの、下向きに湾曲させた曲線によって設定される凹み部13の下向き凸部17により、運転席エアバッグA,Sの展開膨張時、操舵用ハンドル5から車体前方に連続して位置されるコラムカバー4の上面に、帯状布16が面するように設定される。
【0068】
運転席エアバッグA,Bは、
図5に示すように、操舵用ハンドル5が納まるように設けられる凹み部13側方における車体幅方向の少なくとも一方側、好ましくは両側の容量が大きく設定されることにより、展開膨張時に、操舵用ハンドル5を車体幅方向から、少なくとも部分的に、望ましくは全体を覆うサイドチャンバ18を有する形態に構成される。
【0069】
運転席エアバッグA,Bは、
図4及び
図7に示すように、凹み部13を形成する側面布15の頂角位置に操舵用ハンドル5の上端が納まった展開膨張時の外形形態に関し、側面布15で位置が規定された帯状布16と、これに相対向する運転席エアバッグA,Bの運転席側に位置する車体後方側の後面19とで区画形成されるチャンバ部分Az,Bzが、操舵用ハンドル5の下端よりも下方へ達する形態とされる(図中、寸法Zで示す)。
【0070】
さらに、運転席エアバッグA,B内には、
図4及び
図7に示すように、当該運転席エアバッグA,Bの内部を、車体前方側チャンバAf,Bfと車体後方側チャンバAr,Brとに仕切る仕切り部材20が設けられる。
【0071】
仕切り部材20は、操舵機構を設置したときの操舵用ハンドル5のハンドル面Sを基準面として、当該基準面に沿わせるようにして、もしくは基準面近辺に沿わせるようにして設けられる。
【0072】
仕切り部材20には、
図4,
図7及び
図8に示すように、車体前方側の収納スペースAS,BS位置で運転席エアバッグA,Bに導入されるインフレータガスを、車体前方側チャンバAf,Bfから、運転席側の車体後方側チャンバAr,Brへ向けて流通させたり(図中、矢印Ffで示す)、運転者を受け止めることで圧力が上昇する車体後方側チャンバAr,Brからインフレータガスを車体前方側チャンバAf,Bfへ向けて流通させる(図中、Frで示す)連通孔21が形成される。
【0073】
また、運転席エアバッグA,Bには、
図2等に示すように、仕切り部材20から車体前方側の車体前方側チャンバAf,Bfに位置させて、運転席エアバッグA,B内の圧力上昇を緩和するためにインフレータガスを運転席エアバッグA,B外部へ排出するベントホール22が形成される。
【0074】
本実施形態に係る車両用エアバッグ装置では、運転席に対し、操舵用ハンドル5を含む操舵機構が設置されているときには、第1及び第2の運転席エアバッグA,Bのいずれかが、第1の収納スペースAsもしくは第2の収納スペースBsから展開膨張し、立面10aを有するダッシュボード3上の第1の反力受け壁10もしくは第2の反力受け壁11であるダッシュボード3の前面3a、並びにフロントウインドシールド2に加えて、操舵用ハンドル5によって支持された状態となり、これによって、運転者を受け止めたときの運転席エアバッグA,Bに対し反力が得られるようになっている。
【0075】
他方、
図9に示すように、操舵機構が運転席に対し格納されているときには、第1の収納スペースAsから展開膨張する第1の運転席エアバッグAは、立面10aを有するダッシュボード3上の第1の反力受け壁10及びフロントウインドシールド2によって支持された状態となり、これによって、運転者を受け止めたときの第1の運転席エアバッグAに対し、反力が得られるようになっている。
【0076】
次に、本実施形態にかかる車両用エアバッグ装置の作用について説明する。
【0077】
まず、運転席に対し、操舵機構が設置されている場合であって、ダッシュボード3内の第1の収納スペースAsに収納される第1の運転席エアバッグAが作動されるときは、
図2及び
図4に示すように、第1の運転席エアバッグA内にインフレータ6からインフレータガスが導入され、第1の運転席エアバッグAにより可動リッドが開放されて、車体前方側チャンバAfが先行して展開膨張し、引き続き、仕切り部材20の連通孔21を通じて流通するインフレータガスにより、車体後方側チャンバArが展開膨張する。
【0078】
第1の運転席エアバッグAは、展開膨張するとき、ダッシュボード3上の、運転席と向かい合う立面10aを有する第1の反力受け壁10と、フロントウインドシールド2と、操舵用ハンドル5で支持された状態となり、車体前方のダッシュボード3側から車体後方の運転席側に方向づけされて展開膨張される。
【0079】
すなわち、フロントウインドシールド2と組み合わせた第1の反力受け壁10により、運転席エアバッグAが、車体上方へ逃げたり、車体前方へ逃げることを防止することができる。
【0080】
第1の運転席エアバッグAは、その下面12に凹み部13が現れる形態であり、この凹み部13は、操舵用ハンドル5に覆い被さって当該操舵用ハンドル5が納まるように設定されているので、ダッシュボード3内の第1の収納スペースAsから展開膨張する第1の運転席エアバッグAであっても、操舵用ハンドル5を乗り越えるようにして、運転席の運転者から操舵用ハンドル5を遮ることができ、運転者を保護することができる。また、この凹み部13により、操舵用ハンドル5に、第1の運転席エアバッグAの支持反力を生じさせることができる。
【0081】
第1の運転席エアバッグAは、凹み部13の車体前方側の下面に、下向き凸部17が現れる形態であり、この下向き凸部17がコラムカバー4などに接することで、第1の運転席エアバッグAが操舵用ハンドル5を乗り越える作用を促進することができる。
【0082】
また、この下向き凸部17は、コラムカバー4に面するように設定されているので、当該下向き凸部17がコラムカバー4に上方から接するなどし、これによって、操舵用ハンドル5を乗り越えた第1の運転席エアバッグAの姿勢を安定させることができ、運転者の保護機能を高めることができる。
【0083】
第1の運転席エアバッグAは、運転席側に位置する車体後方側チャンバArが操舵用ハンドル5の下端よりも下方へ達する形態であるので、運転者と操舵用ハンドル5との間に車体後方側チャンバArが止まり、これにより、運転者に首の押し上げ作用が生じることを防止できて、乗員傷害値を低減することができる。
【0084】
このようにして展開膨張した第1の運転席エアバッグAは、第1の反力受け壁10と、フロントウインドシールド2と、操舵用ハンドル5から支持作用を受け、これらに反力をとって、進入してくる運転者を確実かつ十分に受け止めることができ、優れた乗員保護機能を発揮することができる。
【0085】
また、第1の運転席エアバッグAは、仕切り部材20の連通孔21を介して、インフレータガスが車体前方側チャンバAfと車体後方側チャンバArとの間を行き来できるので、運転者の進入で内圧が高まった車体後方側チャンバArからインフレータガスを車体前方側チャンバAfへ戻すことができ、これにより、保圧効果が得られ、乗員傷害値を低減することができる。
【0086】
車体前方側チャンバAfには、ベントホール22が形成されているので、運転者の位置が操舵用ハンドル5に接近している場合に、インフレータガスの排出を速やかにすることができ、さらに乗員傷害値を低減することができる。
【0087】
第1の運転席エアバッグAは、操舵用ハンドル5の車体幅方向両側に、サイドチャンバ18を有するので、第1の運転席エアバッグAへの運転者の進入が車体前方へ向けて真っ直ぐでない場合であっても、適切に運転者を受け止めることができ、また、運転者が操舵用ハンドル5と干渉することを防止することができる。
【0088】
また、このサイドチャンバ18を備える形態の運転席エアバッグA,Bであれば、助手席エアバッグとして採用することもできる。
【0089】
次に、コラムカバー4内の第2の収納スペースBsに収納される第2の運転席エアバッグBが展開膨張する場合について説明すると、
図6及び
図7に示すように、可動リッドを開放した第2の運転席エアバッグBは、第2の収納スペースBsの車体前方側に位置するダッシュボード3の前面3bの部分(立面)である第2の反力受け壁11と、フロントウインドシールド2と、操舵用ハンドル5で支持された状態となり、車体前方のダッシュボード3側から車体後方の運転席側に方向づけされて展開膨張される。
【0090】
この場合も、フロントウインドシールド2と組み合わせ第2のた反力受け壁11により、第2の運転席エアバッグBが、車体上方へ逃げたり、車体前方へ逃げることを防止することができる。
【0091】
コラムカバー4内に収納され、そこから展開膨張される第2の運転席エアバッグBであっても、第2の反力受け壁11と、フロントウインドシールド1と、操舵用ハンドル5から支持作用を受け、これらに反力をとって、進入してくる運転者を確実かつ十分に受け止めることができ、優れた乗員保護機能を発揮することができる。
【0092】
第2の運転席エアバッグBは、凹み部13など、第1の運転席エアバッグAと同じ構成を備えているので、第1の運転席エアバッグAで得られる既述の作用効果を奏することはもちろんである。
【0093】
他方、操舵機構が運転席に対して格納されているときには、
図9に示すように、上述した第1の収納スペースAsから展開膨張する第1の運転席エアバッグAが、第1の反力受け壁10とフロントウインドシールド1から支持作用を受け、これらに反力をとって、進入してくる運転者を確実かつ十分に受け止めることができ、優れた乗員保護機能を発揮することができる。
【0094】
以上説明した本実施形態にかかる車両用エアバッグ装置にあっては、操舵用ハンドル5のデザインの多様化に拘わらず、運転席エアバッグA,Bについて、当該運転席エアバッグA,Bを支持して運転者を受け止める反力を、適切かつ十分に確保することができ、また、車室内に操舵機構が設置される場合はもちろんのこと、設置されない場合であっても、いずれかの運転席エアバッグA,Bを適切に設置し的確な乗員保護機能を発揮させることができる。
【0095】
以上に述べた車両用エアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
2 フロントウインドシールド
3 ダッシュボード
3b ダッシュボードの前面
4 操舵機構用コラムカバー
5 操舵用ハンドル
6 インフレータ
10 第1反力受け壁
10a 立面
11 第2の反力受け壁
12 運転席エアバッグの下面
13 凹み部
17 下向き凸部
18 サイドチャンバ
20 仕切り部材
21 連通孔
22 ベントホール
A 第1の運転席エアバッグ
B 第2の運転席エアバッグ
As 第1の収納スペース
Bs 第2の収納スペース
Az,Bz 操舵用ハンドルの下端よりも下方へ達するチャンバ部分
S 操舵用ハンドルのハンドル面