(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】吸入可能な液体のための吸入器デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 11/02 20060101AFI20220112BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A61M11/02 Z
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018522826
(86)(22)【出願日】2016-07-19
(86)【国際出願番号】 AU2016050636
(87)【国際公開番号】W WO2017011865
(87)【国際公開日】2017-01-26
【審査請求日】2019-07-18
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2015-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】518021919
【氏名又は名称】メディカル、ディベロップメンツ、インターナショナル、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL DEVELOPMENTS INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ、ローランド
(72)【発明者】
【氏名】エドワード、リナカー
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ビクター、レギン
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0083963(US,A1)
【文献】特開平11-342204(JP,A)
【文献】特開2009-219543(JP,A)
【文献】特開2007-195838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記
吸入器デバイスが長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)空気取り入れチャンバであって、前記空気取り入れチャンバに対して外部に位置する液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)吸入可能な液体を前記液体貯留容器から前記空気取り入れチャンバ内へ及び前記受動蒸発支持材料上へ送出するための液体入口穴と、
(5)前記長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(6)前記長尺本体をその長手方向軸に沿って前記基端部から部分的に分割して、前記マウスピースチャンバで終端し、前記空気取り入れチャンバの床と前記空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備える、吸入器デバイス。
【請求項2】
前記内部棚は、前記空気出口チャンバに対する前記空気取り入れチャンバの内容積を5:95~95:5又は10:90~90:10の範囲から選択される比率で分けるように前記長尺本体内に位置される請求項1に記載の吸入器
デバイス。
【請求項3】
前記液体貯留容器を保持するための貯留チャンバを更に備え、前記貯留チャンバは、吸入可能な液体を前記液体貯留容器から前記空気取り入れチャンバ内へ及び前記受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている請求項1又は2に記載の吸入器
デバイス。
【請求項4】
吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記
吸入器デバイスが長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)前記長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(5)前記長尺本体をその長手方向軸に沿って前記基端部から部分的に分割して、前記マウスピースチャンバで終端し、前記空気取り入れチャンバの床と前記空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備え、
前記液体貯留容器が、前記空気取り入れチャンバ内に位置されるとともに、開放時に吸入可能な液体を前記受動蒸発支持材料上へ放出するように位置される、吸入器デバイス。
【請求項5】
前記マウスピース端部の前記内部棚に当接される二方向弁を更に備え、前記マウスピース端部を通じた患者による呼吸は、
(a)患者による吸気時に、前記空気取り入れチャンバと前記マウスピースチャンバとの間で前記二方向弁を開いて、蒸発した液体を蒸気の形態で患者に送出するとともに、前記空気出口チャンバと前記マウスピースチャンバとの間で前記二方向弁を閉じ、
(b)患者による呼気時に、前記空気出口チャンバと前記マウスピースチャンバとの間で前記二方向弁を開いて、呼気を排気するとともに、前記空気取り入れチャンバと前記マウスピースチャンバとの間で前記二方向弁を閉じる、
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項6】
前記空気取り入れチャンバと前記マウスピースチャンバとの間に一方向弁を更に備え、及び/又は、前記マウスピースチャンバと前記空気出口チャンバとの間に一方向弁を更に備える請求項1から4のいずれか1項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項7】
前記貯留チャンバが前記空気取り入れチャンバに対して移動可能である請求項3、請求項3を引用する請求項5、及び請求項3を引用する請求項6のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項8】
前記貯留チャンバは、未開封の吸入可能な前記液体貯留容器を第1の位置に備え、前記貯留チャンバは、前記液体貯留容器を開放して吸入可能な液体を前記液体貯留容器から前記空気取り入れチャンバ内へ及び前記受動蒸発支持材料上へ送出するために第2の位置へ移動可能である
請求項3を引用する請求項5又は6に記載の吸入器
デバイス。
【請求項9】
前記空気入口穴が空気取り入れ制御手段を更に備える請求項1から8のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項10】
前記空気取り入れ制御手段は、前記空気入口穴を調整可能に覆うように位置される調整可能カバーの形態を成し、
前記調整可能カバーは、前記長尺本体の前記基端部に位置される回転可能なエンドキャップカバー、前記長尺本体の外周にわたって回転可能に装着されるスリーブカバー、スライド可能なカバー、及び、フラップカバーから成るグループから選択される請求項9に記載の吸入器
デバイス。
【請求項11】
前記受動蒸発支持材料は、前記空気取り入れチャンバを通じた少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている請求項1から10のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項12】
前記受動蒸発支持材料が中心部を有し、3つ以上の長手方向導管を形成するために3つ以上の径方向アームが前記中心部から前記空気取り入れチャンバの内面まで延びる請求項11に記載の吸入器
デバイス。
【請求項13】
前記液体貯留容器は、バイアル、アンプル、及び、蒸気不透過性の袋又はパケットから成るグループから選択される請求項1から12のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【請求項14】
前記吸入可能な液体が、鎮痛剤として使用するためのハロゲン化揮発性液体である請求項1から13のいずれか一項に記載の吸入器
デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入可能な液体のための吸入器デバイスに関し、特に、ハロゲン化揮発性液体などの吸入可能な揮発性液体の貯留及び/又は患者への投与のための、吸入器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
活性物質を備える又はそれ自体が活性物質である吸入可能な液体の貯留及び患者への投与は、一般に、課題を与える。患者の好み及び病院環境又は他の環境での必要に応じた自己投与又は投与の容易さに起因して、治療物質又は医薬物質などの活性物質は、しばしば、経口送出できるように錠剤及びカプセルの形態で、鼻送出できるようにスプレーの形態で、及び、経静脈的な送出ができるように液体製剤の形態で形成される。
【0003】
例えば呼吸器疾患を治療又は緩和するために患者の肺に活性物質を投与することが有利な場合、活性物質は、単独で又は鼻腔内経路と組み合わせて経口吸入経路により投与される場合がある。適した吸入器デバイスとしては、例えば、定用量吸入器及び乾燥粉末吸入器を挙げることができる。これらのタイプの経口吸入器デバイスは、一般に、活性物質を肺における所望の作用部位に送出するための加圧手段を必要とする。加えて、活性物質を含有する又はそれ自体が活性物質である液体は、通常、吸入経路による送出に適するように投与ポイントで吸入可能な呼吸用の形態への変換を要する。噴霧又はエアロゾル化により呼吸用のサイズの液滴へ変換するなど、液体を呼吸用の形態へ変換すること、或いは、蒸気を形成するために加熱することは、移動する機械的な加熱手段及び/又は電気手段を送出装置が含む必要があり、これにより、設計、製造の複雑さ、エンドユーザのコスト、操作性、及び/又は、患者の使用が増大する。
【0004】
活性物質としての又は活性物質を備える揮発性液体の使用が知られている。1つのそのような例はハロゲン化揮発性液体である。ハロゲン化揮発性液体は、麻酔(健忘、筋肉麻痺、及び/又は、鎮静を含む)及び/又は鎮痛を誘発する及び/又は維持するのに有用であると見なされてきたため、麻酔薬及び/又は鎮痛薬として有用となり得る。フッ素化物の麻酔特性は少なくとも1946年以来から知られてきた(Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204)。この後、1950年代にフルオロオクテン、ハロタン、及び、メトキシフルランが臨床用途に導入され、その後、現在幾つかの国で臨床的に使用されているエンフルラン、イソフルラン、セボフルラン、及び、デスフルランが開発された(Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3)。
【0005】
ハロゲン化揮発性液体は、全身麻酔のために使用される場合、気化器及び呼吸可能なキャリアガスの流れを含む送出システムを介して陽圧下で患者に送出される場合がある。より最近では、局所麻酔又は局部麻酔及び非吸入経路による送出で使用するためにハロゲン化揮発性液体が形成されてきた。例としては、皮内又は静脈内注射用微小液滴(例えば米国特許第4,725,442号明細書);髄腔内又は硬膜外送出のための水溶液(例えば、国際公開第2008/036858号パンフレット);スワブ、液滴、スプレー、又は、経粘膜送出のためのエアロゾル(例えば国際公開第2010/025505号パンフレット);経皮的、局所、口腔粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、皮下、神経周囲浸潤、くも膜下腔内、又は、硬膜外送出用の揮発性麻酔薬の揮発性、気化、又は、蒸発を減少させるのに有効な量の抽出溶媒を含む水性ベースの溶液(例えば国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2009/094459号パンフレット);医療用パッチへの製剤に適した組成物(例えば国際公開第2014/143964号パンフレット);局所、髄腔内、硬膜外、経皮的、局所、経口、関節内、粘膜、口腔、直腸、膣、筋肉内、膀胱内、及び、皮下送出のための溶液、懸濁液、クリーム、ペースト、油、ローション、ゲル、泡、ヒドロゲル、軟膏、リポソーム、エマルジョン、液晶エマルジョン、及び、ナノエマルジョンとしての製剤に適した組成物(例えば、国際公開第2008/070490号パンフレット、国際公開第2009/094460号パンフレット、国際公開第2010/129686号パンフレット)、及び、安定した注入可能な液体製剤(国際公開第2013/016511号パンフレット)としての製剤が挙げられる。
【0006】
揮発性液体の安全な貯留及び取り扱いのための主な考慮事項は、一般に、蒸気圧の上昇、容器のロバスト性、及び、容器シールの完全性を含む。また、揮発性液体の化学的性質は、活性物質が貯留時に容器材料を浸透する、可溶化する、或いはさもなければ、容器材料と反応することができれば重要でなり得る。ハロゲン化揮発性液体のための多数の貯留容器が、キャップ付きボトル大型タンク、出荷用容器などのガラスバイアルの代替物としての硬質ポリマー容器(例えば、国際公開第1999/034762号パンフレット、国際公開第2012/116187号パンフレット);液体麻酔薬を麻酔機又は気化器へ送出するための流体接続用のねじ付きスパウトを伴うガスケットレス弁アセンブリ及び柔軟な容器を備えた硬質ポリマーボトル(例えば、国際公開第2010/135436号パンフレット、国際公開第2013/106608号パンフレット、国際公開第2013/149263号パンフレット、国際公開第2015/034978号パンフレット);貯留された液体麻酔薬をスロット付き管を介して気化器に送出するためのキャップ付き膜を有する容器(国際公開第2009/117529号パンフレット);及び、蒸気バリア特性又は容器不活性を与える又は高めるための材料で随意的にコーティングされた硬質な高分子容器及びアルミニウム容器(例えば、国際公開第2002/022195号パンフレット、国際公開第2003/032890号パンフレット、国際公開第2010/129796号パンフレット)を含めて記載されてきた。
【0007】
ハロゲン化揮発性液体のような吸入不可能な形態の揮発性液体及び該揮発性液体を貯留するための容器を形成する際の様々な進歩にもかかわらず、吸入可能な形態の揮発性液体及び揮発性液体を貯留する及び/又は患者へ投与するための装置の必要性が依然として残る。
【0008】
吸入可能な医薬品のための新規な吸入器を設計しようとする試みは一般的に進行中である。例えば、国際公開第2008/040062号パンフレットは、吸入可能な液体及び粉末状固体を貯留する及び/又はユーザの口内又は鼻内に送出するための複雑な構造及び可動部品に依存する多様な吸入器デバイスの概念を記載する。記載される様々な装置は、加圧キャニスタ、アンプル、バイアル、及び、プランジャの形態の1つ又は2つの薬剤容器を保持するようになっている。装置は、装置の内壁に対して装置の外壁をスライドさせて薬剤容器から液体薬剤を送出することによって作動されるものとして記載される。幾つかの実施形態において、装置は、空気経路を開放するように展開する可動マウスピースを含む。また、この装置は、一方又は両方の吸気及び呼気の一方向の空気流を与えるための1つ以上の一方向弁を含むものとしても記載される(吸気及び呼気の流れを方向付ける一連の一方向弁も、一般に、国際公開第1997/003711号パンフレットに記載される装置の参照により組み入れられる国際公開第2007/033400号パンフレットに記載されている)。
【0009】
使用のために必要とされる際、国際公開第2008/040062号パンフレットの装置は、打ち抜き手段、すなわち、壊れやすい端部を有する投薬容器の2つの壊れやすい端部をそれぞれ穿孔するための2つのパンチによって薬剤を放出することができると主張されているが、加圧手段(例えば加圧キャニスタによる);壊れやすい手段(例えばストライカでアンプルを破裂させることによる又は壊れやすい膜又はバイアルのシールをパンチ手段で打ち抜くことによる);粉砕可能な手段(例えばバイアルをプランジャで粉砕することによる);取り外し手段(例えばバイアルからねじを外したキャップを取り除くことによる);及び、プランジング手段(例えばプランジャバレルから薬剤を押し込むことによる)を含む様々な他の手段が一般に記載される。
【0010】
しかしながら、ハロゲン化揮発性液体のような吸入可能な液体は、蒸気が蒸発し得る有効な空気チャンバを必要とするとともに、患者への送出のために空気/蒸気チャンバを通る効果的な空気流を可能にする。したがって、国際公開第2008/040062号パンフレットの例えば
図48A、48B、48C、49A、49B、50A、50B、51A、51B、56A、56B、57,58A、58B、58C及び58Dに記載されるような実施形態は、蒸発手段(又は芯)が液体貯留容器自体の壁によって放出された液体に効果的に曝されることが防止されるので、実際には機能しないと予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第4,725,442号明細書
【文献】国際公開第2008/036858号パンフレット
【文献】国際公開第2010/025505号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094460号パンフレット
【文献】国際公開第2009/094459号パンフレット
【文献】国際公開第2014/143964号パンフレット
【文献】国際公開第2008/070490号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129686号パンフレット
【文献】国際公開第2013/016511号パンフレット
【文献】国際公開第1999/034762号パンフレット
【文献】国際公開第2012/116187号パンフレット
【文献】国際公開第2010/135436号パンフレット
【文献】国際公開第2013/106608号パンフレット
【文献】国際公開第2013/149263号パンフレット
【文献】国際公開第2015/034978号パンフレット
【文献】国際公開第2009/117529号パンフレット
【文献】国際公開第2002/022195号パンフレット
【文献】国際公開第2003/032890号パンフレット
【文献】国際公開第2010/129796号パンフレット
【文献】国際公開第2008/040062号パンフレット
【文献】国際公開第1997/003711号パンフレット
【文献】国際公開第2007/033400号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Robbins、B.H.J Pharmacol Exp Ther(1946)86:197-204
【文献】Terrell、R.C.Anesthesiology(2008)108(3):531-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を与える、吸入可能な液体の貯留及び/又は患者への投与のための新規な吸入器デバイス、特に、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどのハロゲン化揮発性液体を送出するための吸入器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)外部液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)吸入可能な液体を外部液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するための液体入口穴と、
(5)長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、基端部に随意的に位置される少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(6)長尺本体をその長手方向軸に沿って基端部から部分的に分割して、マウスピースチャンバで終端し、空気取り入れチャンバの床と空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備える、吸入器デバイスが提供される。
【0015】
内部棚は、吸入器デバイス内の空気濾過手段の収容を可能にする。また、内部棚は、棚の内部位置を変化させることによって空気出口チャンバの内容積に対する空気取り入れチャンバの内容積の様々な比率をもたらすこともできる。内部棚は、平面であっても非平面であってもよい。内部棚は、長尺本体の一体形成された構成要素であってもよい。
【0016】
第1の態様に係る1つの実施形態において、装置は、
(7)マウスピース端部の内部棚に当接される二方向弁
を更に備え、マウスピース端部を通じた患者による呼吸は、
(a)患者による吸気時に、空気取り入れチャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を開いて、蒸発した液体を蒸気の形態で患者に送出するとともに、空気出口チャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を閉じ、
(b)患者による呼気時に、空気出口チャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を開いて、呼気を排気するとともに、空気取り入れチャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を閉じる。
【0017】
第1の態様に係る1つの実施形態では、空気入口穴及び液体入口穴が同じ穴である。第1の態様に係る別の実施形態では、空気入口穴及び液体入口穴が別個の穴である。
【0018】
第1の態様に係る1つの実施形態において、液体入口孔は、空気取り入れチャンバの屋根に位置される。別の実施形態において、液体入口穴は、空気取り入れチャンバの基端部に位置される。
【0019】
第1の態様に係る1つの実施形態において、装置は、液体貯留容器を内部で保持するための貯留チャンバを更に備え、貯留チャンバは、吸入可能な液体を液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっており、液体入口穴は、貯留チャンバと空気取り入れチャンバとの間に位置される。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)吸入可能液体貯留容器を保持するための貯留チャンバであって、貯留チャンバが吸入可能な液体を液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている、貯留チャンバと、
(5)空気濾過手段と少なくとも1つの空気出口穴とを備える空気出口チャンバと、
を備え、
貯留チャンバが基端部に位置され、空気取り入れチャンバが貯留チャンバとマウスピースチャンバとの間に介在して位置され、更に、空気出口チャンバがマウスピースチャンバ内に位置される、吸入器デバイスが提供される。
【0021】
第2の態様による1つの実施形態において、液体入口孔は、貯留チャンバと空気取り入れチャンバとの間に位置される。
【0022】
液体入口穴がなく、外部液体貯留容器が、空気取り入れチャンバ内に位置されるとともに、開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出するように位置される、本発明の第1の態様に係る装置も提供される。
【0023】
したがって、本発明の第3の態様によれば、吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、基端部に随意的に位置される少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(5)長尺本体をその長手方向軸に沿って基端部から部分的に分割して、マウスピースチャンバで終端し、空気取り入れチャンバの床と空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備え、
液体貯留容器が、空気取り入れチャンバ内に位置されるとともに、開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出するように位置される、吸入器デバイスが提供される。
【0024】
本発明の第1、第2、及び、第3の態様に係る1つの実施形態では、空気入口穴が空気取り入れ制御手段を更に備える。本発明の第1、第2、及び、第3の態様に係る1つの実施形態において、吸入可能液体貯留容器は、バイアル、アンプル、もしくは、蒸気不透過性の袋又はパケットから成るグループから選択される。
【0025】
本発明の第1、第2、及び、第3の態様に係る1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1、2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。好ましい実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【0026】
本発明の第1、第2、及び、第3の態様に係る1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバを通じた少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。好ましい実施形態において、受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバを通じた3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】メトキシフルランを投与するために現在使用されるGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)と称される従来技術の吸入器デバイスを示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図2A)及び線A-Aに沿う装置の断面図(
図2B)を示す。
【
図3】空気取り入れチャンバを備える長尺本体(
図3A)、空気濾過物質を備えるカートリッジに取り付けられる内部棚及び二方向弁の構成要素(
図3B)、並びに、空気出口チャンバ(
図3C)の部分をより良く例示するために
図2Aの吸入器デバイスの分解図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図4A)、及び、調整可能な回転できるカバーの形態を成す基端部に位置される空気取り入れ制御手段の拡大図(
図4B)を示す。
【
図5】2つの空気入口穴を備える調整可能なスリーブカバーの形態を成す本発明の一実施形態に係る空気取り入れ制御手段の斜視図(
図5A)、及び、2つの空気入口穴を備える調整可能なスクリューキャップカバーの形態を成す本発明の別の実施形態に係る他の空気取り入れ制御手段を第1の側から見たもの(
図5B)及び第2の側から見たもの(
図5C)を示す。
【
図6】本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図6A)及び線A-Aに沿う装置の断面図(
図6B)を示す。
【
図7】吸入器デバイスの構成要素をより良く例示するために
図6の吸入器デバイスの分解図を一方の視野から示す(
図7A)とともに、別の視野から示す(
図7B)。
【
図8】本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図8A)及び空気濾過手段を更に備える他の実施形態(
図8B)の分解図を示す。
図8A及び
図8Bの装置に示されるような本発明の一実施形態に係る受動蒸発支持材料の平面図(
図8C)及び斜視図(
図8D)も与えられる。
【
図9】装置作動プロセスを示すための本発明の一実施形態に係る吸入器デバイスの断面図を示す。液体貯留容器内に貯留された液体は、液体貯留容器が内部に配置又は収用される貯留チャンバを作動させることによって受動蒸発支持材料上へ放出されてもよい(
図9A)。貯留チャンバを作動させると、液体貯留容器が穴開け手段(
図9B)と係合し、穴開け手段は、液体貯留容器のシールを容器内に押し込んで、液体内容物を受動蒸発支持材料上へ放出する(
図9C)。
【
図10】本発明の一実施形態に係る活性炭顆粒を含有する濾過手段を備える吸入器デバイスの断面図を示す。液体貯留容器を穴開け手段と係合させて液体を受動蒸発支持材料上へ放出させることによる、液体貯留容器が内部に配置又は保持される貯留チャンバの作動が示される(
図10A)。患者による吸気時の空気取り入れチャンバ及びマウスピースチャンバを通じた空気/蒸気流の方向(
図10B)、及び、受動蒸発支持材料上への液体の放出後における患者による呼気時のマウスピースチャンバ及び空気出口チャンバの空気濾過手段を通じた空気/蒸気流の方向(
図10C)が矢印により示される。
【
図11】二方向弁の構成要素(
図11A)、その組み付け(
図11B)、完全に組み付けられた装置における二方向弁の断面図(
図11C)を例示するために本発明の一実施形態に係る二方向弁を示す。
【
図12】基端部からその構造を例示するために後方視野から非平面状の内部棚を備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイスを示す(
図12A及び
図12C)とともに、吸入器デバイスの構成要素を例示するために分解図を示す(
図12B)。
【
図13】アンプルの形態の吸入可能液体貯留容器を保持するための長尺本体の基端部に移動可能に接続される貯留チャンバを備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図13A)、及び、第1の位置にあって折ること又は同様の方法によって液体貯留容器を開放するための第2の位置へ移動できる未開封のアンプルを備える貯留チャンバの拡大図(
図13B)を示す。
【
図14】粉砕又は同様の方法での開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出する(
図14A)ために空気取り入れチャンバ内に配置されて受動蒸発支持材料内に位置されるアンプルの形態の液体貯留容器を備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図14B)を示す。
【
図15】リッピング、剥ぎ取り、引張、又は、同様の方法での開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出する(
図15B)ために空気取り入れチャンバ内に配置されて受動蒸発支持材料の上方に位置される蒸気不透過性の袋又はパケットの形態の液体貯留容器を備える本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(
図15A)を示す。
【
図16】本発明の一実施形態に係る装置(
図6~
図7)及び従来技術のGreen Whistle吸入器(
図1)によって送出されるメトキシフルランの比較濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
吸入可能な液体を投与するために役立つ吸入器デバイスは、一般に、患者に活性物質を送出するために受動的又は能動的な手段のいずれかによって作動すると考えられ得る。能動的手段を有する吸入器デバイスは、例えば、活性物質を噴霧する、気化する、及び/又は、一般に送出するために、加圧手段、移動手段、機械的手段、加熱手段、及び/又は、電気的手段を含んでもよい。これに対し、受動的手段を有する吸入器デバイスは、周囲条件での活性物質の気化又は蒸発、及び、活性物質を送出するための患者の呼吸のみに依存する。
【0029】
Analgizer(商標)吸入器デバイス(Abbott Laboratories Corporation)は、吸入可能な液体を送出するために受動的手段によって作動する装置の例である。USPTO TESSのデータベースによれば、Analgizer(商標)は、吸入麻酔の自己投与の管理のための吸入器に関して商標登録されて現在失効している商標であり、1968年に初めて使用された。Analgizer(商標)は、非常に単純な装置であり、マウスピースとポリプロピレンの吸収芯とを有し、断面で見て「スイスロール」形状に強固に巻かれた白い円筒形のポリエチレン開放端チューブから成っていた。吸入麻酔薬、すなわち、メトキシフルラン(15mL)が、使用直前に、吸入器の開放端の基部に流し込まれて、強固に巻回された芯上へ注がれた。患者は、その後、マウスピースを通して吸入することによって液体麻酔薬を自己投与することができた。
【0030】
Green Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)は、1990年代に開発され、それ以来、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで使用されてきた(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)。Green Whistle(商標)装置は、その設計の簡素さにおいてはAnalgizer(商標)と同様であるが、患者の呼気時の装置からの薬剤蒸気損失を防ぐための基端部の一方向弁と、吐き出された薬剤蒸気を濾過するためにマウスピースの希釈穴に外部から嵌め込まれるように設計される活性炭(AC’)チャンバとを含めるなど、特定の機能的改善を含む。基端部に対する付加的な設計変更は、送出されるべき薬剤用量を貯留するために使用されるガラスバイアルからのキャップの除去を助けるためのキャップラグの導入、断面で見て「S形状」芯上へ注がれる液体の広がりを促進するためのドーム、又は、ドームの代わりに、呼吸可能なガスラインの取り付けを可能にしてガスを装置に通すように方向付けるための入口ニップルを含んでいた。Green Whistle(商標)装置は、一人の患者の使用を目的として設計される。
【0031】
Methoxyflurane(Penthrox(登録商標)/(商標)、Medical Developments International Limited)は、モルヒネ及びフェンタニルなどの一般的な鎮痛剤に代わる非麻薬性鎮痛剤、すなわち非オピオイド鎮痛剤を提供する。また、メトキシルフランは、経口錠剤形態で又は経静脈的に患者に投与される鎮痛剤に代わるものを与え、したがって、臨床的状況、外科的状況(例えば術前及び術後)、及び/又は、緊急の状況において(例えば救急診療科及びトリアージ管並びに救急医療隊員や捜索救助隊などの第1応答者により)迅速な痛みの軽減が求められるときに特に有用となり得る。しかしながら、Green Whistle(商標)装置は、現在、メトキシフルランを投与するために市販されている唯一の装置である。装置の使用説明書によれば、投与者は、メトキシフルランボトルを直立状態に保持して、吸入器の基部を使用し、ボトルキャップを緩め、その後、吸入器を45°の角度に傾けてボトルの内容物を基部に流し込む前に装置を回転させつつ手でキャップを取り外すことが求められる。随意的にACチャンバが事前に又は後に外部から装置に取り付けられてもよい。装置が有効である間に、ステップ数及び別個の構成要素の数は、例えば高ストレス状況及び/又は緊急状況において投与者又は自己投与者にとって取り扱い上の困難をもたらす場合がある。
【0032】
本発明は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランなどの吸入可能な液体の貯留及び/又は患者への投与のための新規な吸入器デバイスを提供し、この装置は、既知の吸入器に優る1つ以上の利点又は改善を有する。
【0033】
定義
本明細書中において別段に定義されなければ、以下の用語は、以下の一般的な意味を有すると理解される。
【0034】
「活性物質」とは、治療物質及び非治療物質、並びに、それらを含む化合物、製剤、及び、組成物のことである。
【0035】
「緩和する」、「緩和」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を和らげる、少なくする、軽減する、良くする、又は、改善することを指す。
【0036】
「送出用量」とは、患者に投与するための吸入可能な液体又は活性物質の用量を指す。
【0037】
「フィルタ」、「フィルタリング」、及び、その変形は、呼気時に患者の呼気から吸入可能な揮発性液体蒸気を吸収、吸着、捕獲、捕捉、除去、掃去、又は、部分的又は完全に除去できる物質の能力を指す。
【0038】
「ハロゲン化揮発性液体」とは、(i)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を含む、或いは(ii)塩素(Cl)原子、臭素(Br)原子、フッ素(F)原子、及び、ヨウ素(I)原子から成るグループから選択される少なくとも1つのハロゲン原子を備える活性物質を含む活揮発性液体のことである。幾つかの実施形態では、ハロゲン化炭化水素、特にフッ素化炭化水素、及び、ハロゲン化エーテル、特にフッ素化エーテルが好ましい場合がある。幾つかの実施形態では、ハロゲン化エーテルが特に好ましい場合があり、ハロゲン化エーテルとしては、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「吸入可能な液体」とは、活性物質を含む液体、又は、それ自体が活性物質であって容易に吸入可能であるか又は患者によって吸入され得る或いは吸入されるようになっている液体のことである。幾つかの実施形態では、吸入可能な揮発性液体、特にハロゲン化揮発性液体が好ましい。
【0040】
「吸入」、「吸入可能」、及び、その変形は、例えば、これに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体の患者による取り入れを指し、経口吸入及び鼻吸入の両方を含む。幾つかの実施形態では、経口吸入が特に好ましい。
【0041】
「患者」とは、人の患者及び動物の患者の両方を指す。幾つかの実施形態では、人の患者が特に好ましい場合がある。したがって、患者への言及は、吸入可能な液体が投与される人又は動物を意味すると理解され、人の患者の場合には、自己投与による投与を含むと理解される。
【0042】
「医薬物質」とは、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因を治療するための薬剤、又は、薬剤を含む化合物、製剤、又は、組成物のことである。医薬物質という用語は、治療物質又は活性物質と互換的に使用することができる。
【0043】
「呼吸」、「呼吸の」、及び、それらの変形は、例えばこれに限定されないが、空気、呼吸可能な気体、吸入可能な液体、及び、活性成分などを患者が呼吸する、吸い込む、吸入する、及び、吐き出す行為を指す。
【0044】
「室温」とは、例えば10℃~40℃であってもよいが、より一般的には15℃~30℃の周囲温度のことである。
【0045】
「治療物質」とは、患者を治療することができる又は患者に治療的又は医学的な利益を提供する、或いは、患者における治療的使用のための規制及び/又は市場流通承認を有する又は必要とする活性物質、又は、活性物質を含む化合物、製剤、又は、組成物(生物学的な化合物、製剤、及び、組成物を含む)のことである。治療物質は医薬物質を含む。これに対し、「非治療物質」は、例えば無煙たばこ製品及び電子たばこのような治療的使用のための規制及び/又は販売承認を有さない又は必要としなくてもよい、或いは、認知された又は同定された治療的使用を有さないが、例えば栄養補助食品など、一般的な健康、幸福、又は、生理学的利益などの非治療的な理由のために患者により使用される場合がある活性物質を意味すると理解される。
【0046】
「治療する」、「治療」、及び、その変形は、患者の状態及び/又は疾患の症状及び/又は根本的な原因の緩和、調節、調整、又は、停止を指す。幾つかの実施形態において、治療は、防御的治療又は予防的治療を含んでもよい。
【0047】
「揮発性液体」とは、液体形態で主に存在するが、例えばそれらが室温及び通常の大気圧において周囲条件下で蒸気形態で部分的に存在するように蒸気を容易に形成し、蒸発し、又は、気化する物質のことである。
【0048】
実施形態
ここで、非限定的な例に関連して実施形態を説明する。
【0049】
吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)外部液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)吸入可能な液体を外部液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するための液体入口穴と、
(5)長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、基端部に随意的に位置される少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(6)長尺本体をその長手方向軸に沿って基端部から部分的に分割して、マウスピースチャンバで終端し、空気取り入れチャンバの床と空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備える、吸入器デバイスが提供される。
【0050】
本明細書中で使用されるような空気取り入れチャンバ及び空気出口チャンバの「床」及び「屋根」という用語の使用は、相対語のみであり、通常の作動のために意図されるような装置の向きに関する基準点としてのみ使用されることが理解される。通常の作動において、装置は、空気取り入れチャンバが例えば外部液体貯留容器から注ぐことによって吸入可能な液体を受けることができるように方向付けられることが想定される。
【0051】
1つの実施形態では、空気入口穴が空気取り入れ制御手段を更に備える。更なる実施形態では、空気取り入れ制御手段が調整可能なカバーである。
【0052】
1つの実施形態では、空気入口穴及び液体入口穴が同じ穴である。別の実施形態では、空気入口穴及び液体入口穴は別個の穴である。
【0053】
1つの実施形態において、液体入口孔は、空気取り入れチャンバの屋根に位置される。別の実施形態において、液体入口穴は、空気取り入れチャンバの基端部に位置される。
【0054】
1つの実施形態において、装置は、装置を通じて空気流/蒸気経路を方向付けるためにマウスピース端部の内部棚に当接される二方向弁を備え、その際、マウスピース端部を通じた患者による呼吸は、
(a)患者による吸気時に、空気取り入れチャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を開いて、蒸発した液体を蒸気の形態で患者に送出するとともに、空気出口チャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を閉じ、
(b)患者による呼気時に、空気出口チャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を開いて、呼気を排気するとともに、空気取り入れチャンバとマウスピースチャンバとの間で二方向弁を閉じる。
【0055】
1つの実施形態において、二方向弁は内部棚に上向きに当接し、内部棚に接続される。別の実施形態において、二方向弁は、内部棚に接続されずに内部棚に上向きに当接するように挿入される。
【0056】
別の実施形態において、装置は、装置を通じて空気流/蒸気経路を方向付けるために1つ以上の一方向弁を随意的に備える。更なる実施形態では、空気取り入れチャンバとマウスピースチャンバとの間に一方向弁が設けられ、及び/又は、マウスピースチャンバと空気出口チャンバとの間に一方向弁が設けられる。
【0057】
本発明で使用するのに適した液体貯留容器の例としては、バイアル、アンプル、又は、蒸気不透過性の袋又はパケットが挙げられるが、これらに限定されない。液体貯留容器は、例えば、蒸気不透過性フィルム、ポリマー、複合体、金属、及び、それらの組合せなどのハロゲン化揮発性液体の貯留に適合する本明細書中に記載されるガラス又は1つ以上の材料から形成されてもよい。
【0058】
投与の容易さ、特に自己投与を促進させるために、装置には、吸入可能な液体の貯留容器が予め装填されてもよい。
【0059】
したがって、他の実施形態において、装置は、吸入可能液体貯留容器を内部で保持するための貯留チャンバを更に備え、貯留チャンバは、吸入可能な液体を液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。
【0060】
1つの実施形態では、貯留チャンバが空気取り入れチャンバに対して移動可能である。1つの実施形態では、貯留容器が長尺本体の基端部に移動可能に接続される。
【0061】
1つの実施形態において、貯留チャンバは、未開封の吸入可能液体貯留容器を第1の位置に備え、この場合、貯留チャンバは、液体貯留容器を開放して吸入可能な液体を液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するために第2の位置へ移動可能である。
【0062】
液体貯留容器のタイプは、吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ送出する又は放出するために液体貯留容器がどのように開放され得るのかを決定する。例えば、スクリューキャップ蓋を有するバイアルは、蓋を緩めて開けることができ、プラグを有するバイアルは、プラグを抜くことによって、すなわち、プラグを引き抜く又はプラグをバイアルに押し込むことによって開けることができ、蒸気不透過性フィルムで密封されたバイアルは、穿孔又は穿刺によって開けることができ、アンプルは、折る又は破砕することによって開けることができ、蒸気不透過性の袋又はパケットは、リッピング、剥ぎ取る、引っ張る、穿孔する、又は、引き裂くことによって開けることができる。
【0063】
1つの実施形態において、液体貯留容器は、バイアル(好ましくはガラスバイアル)、アンプル(好ましくはガラスアンプル)、及び、蒸気不透過性の袋又はパケットから成るグループから選択される。
【0064】
1つの実施形態において、貯留チャンバは、液体貯留容器を開放位置へと押す、スライドさせる、又は、回転させることによって吸入可能な液体を空気取り入れチャンバ内へ送出する。
【0065】
1つの実施形態において、液体貯留容器は、スクリューキャップ蓋を備えるバイアルから選択され、また、貯留チャンバは、バイアルを第1の位置から第2の位置に移動させることによってバイアルを開放するようにキャップ蓋のねじを緩めるべく貯留チャンバを空気取り入れチャンバに対して回転させることにより、吸入可能な液体をバイアルから空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。
【0066】
1つの実施形態では、液体貯留容器がプラグを有するバイアルであり、貯留チャンバは、バイアルを第1の位置から第2の位置に移動させることによってバイアルを開放するように空気取り入れチャンバに対して貯留チャンバを押してプラグをバイアルに押し込むことによって吸入可能な液体をバイアルから空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。
【0067】
1つの実施形態では、液体貯留容器が蒸気不透過性フィルムで密封されたバイアルであり、貯留チャンバは、バイアルを第1の位置から第2の位置に移動させることによってバイアルを開放するようにフィルムを穿孔する又は穿刺することによって吸入可能な液体をバイアルから空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。
【0068】
1つの実施形態では、液体貯留容器がアンプルであり、貯留チャンバは、アンプルを第1の位置から第2の位置に移動させることによってアンプルを開放するように空気取り入れチャンバに対して貯留チャンバを回転してアンプルを折ることによって吸入可能な液体をアンプルから空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。1つの実施形態では、液体貯留容器が蒸気不透過性の袋又はパケットであり、貯留チャンバは、アンプルを第1の位置から第2の位置に移動させることによって袋又はパケットを開放するように空気取り入れチャンバに対して貯留チャンバを移動させて袋又はパケットをリッピングする、穿孔する、又は、引き裂くことにより吸入可能な液体を袋又はパケットから空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている。
【0069】
1つの実施形態において、貯留袋は、ハロゲン化揮発性液体を密封貯留するようになっている蒸気不浸透性フィルムから全体が形成される。貯留袋の全体が蒸気不透過性フィルムから形成される場合、貯留袋は蒸気不透過性フィルムの外周部をそれ自体に対してシールすることによって密封されてもよい。他の実施形態において、貯留袋は、ベース部を有する蒸気不透過性フィルムから形成され、この場合、蒸気不透過性フィルムはベース部と共にハロゲン化揮発性液体を密封貯留するようになっており、更にこの場合、ベース部は硬質又は半硬質である。
【0070】
1つの実施形態では、ベース部が本明細書中に記載されるようにポリマーから形成される。製造コストを低減するために、ベース部及び吸入器本体が同じポリマーから形成されてもよい。ベース部は、一般に平面状であるが、随意的にはハロゲン化揮発性液体を受けるためのレセプタクル部を備えてもよい。貯留袋がベース部を有する蒸気不透過性フィルムから形成される場合、貯留袋は、蒸気不透過性フィルムの外周部でベース部の周縁部をシールすることによって密封されてもよい。ベース部がレセプタクル部を備える場合には、ベース部の外周縁がレセプタクルのリップであってもよい。更に、レセプタクル部は、本明細書中の実施形態に更に記載されるように吸入器デバイス自体の一部を形成してもよい。
【0071】
1つの実施形態では、貯留袋が吸入器本体に締結するための外周部を備える。
【0072】
貯留袋が患者へのハロゲン化揮発性液体の投与のための吸入器デバイス内に位置される場合、貯留袋は、蒸気不透過性フィルム又はその一部を剥離、引っ張り、引き裂き、リッピング、穿孔、穴開け、又は、穿刺によって除去することにより開放されてもよい。
【0073】
剥離、引っ張り、引き裂き、又は、リッピングによる貯留袋の開放を助けるために、貯留袋は、随意的に、空気入口開口又は空気出口開口などの吸入器本体の開口を通じて突出し得るプルタブを備えてもよく、それにより、吸入可能な液体を放出するためにユーザによって貯留袋を把持して引っ張ることができ、その結果、貯留袋を開放するための装置自体の可動構成要素を避けることができる。したがって、1つの実施形態において、貯留袋は、蒸気不透過性フィルムを剥離する、引っ張る、引き裂く、又は、リッピングすることによって貯留袋を開放するようになっているプルタブを備える。プルタブは、蒸気不透過性フィルムに接続できるとともに貯留袋を開放するために必要な引張力又は剥離力に耐えることができる任意の適した材料から形成されてもよい。プルタブは、一体に形成されて蒸気不透過性フィルムに接続されてもよく、また、1つの実施形態では、プルタブが蒸気不透過性フィルムから一体形成される。また、プルタブは、独立に形成されて蒸気不透過性フィルムに接続されてもよく、また1つの実施形態では、プルタブが蒸気不浸透性フィルムとは異なる材料から形成される。
【0074】
穿孔、穴開け、又は、穿刺による貯留袋の開放を助けるために、袋は、装置の移動によって作動可能な穿孔手段、穴開け手段、又は、穿刺手段を随意的に備えてもよい吸入器本体と係合してもよい。
【0075】
また、吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)吸入可能液体貯留容器を保持するための貯留チャンバであって、貯留チャンバが吸入可能な液体を液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ送出するようになっている、貯留チャンバと、
(5)空気濾過手段と少なくとも1つの空気出口穴とを備える空気出口チャンバと、
を備え、
貯留チャンバが基端部に位置され、空気取り入れチャンバが貯留チャンバとマウスピースチャンバとの間に介在して位置され、更に、空気出口チャンバがマウスピースチャンバ内に位置される、吸入器デバイスも提供される。
【0076】
1つの実施形態では、空気入口穴が空気取り入れ制御手段を更に備える。更なる実施形態では、空気取り入れ制御手段が調整可能なカバーである。
【0077】
液体入口穴がなく、外部液体貯留容器が、空気取り入れチャンバ内に位置されるとともに、開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出するように位置される、本発明の第1の態様に係る装置も提供される。
【0078】
したがって、吸入可能な液体を患者に送出するための吸入器デバイスであって、前記装置が長尺本体を備え、長尺本体が、
(1)基端部と、
(2)マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部と、
(3)液体貯留容器から吸入可能な液体を受けるための受動蒸発支持材料と、少なくとも1つの空気入口穴とを備える空気取り入れチャンバと、
(4)長尺本体内に空気濾過手段を内部で受け入れるようになっているとともに、基端部に随意的に位置される少なくとも1つの空気出口穴を備える空気出口チャンバと、
(5)長尺本体をその長手方向軸に沿って基端部から部分的に分割して、マウスピースチャンバで終端し、空気取り入れチャンバの床と空気出口チャンバの屋根とを形成する内部棚と、
を備え、
液体貯留容器が、空気取り入れチャンバ内に位置されるとともに、開放時に吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出するように位置される、吸入器デバイスが提供される。
【0079】
本装置は、本明細書中に記載されるように1つ以上の利点又は改善を与えると考えられる。
【0080】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、空気取り入れチャンバ内で形成できる蒸気の量及び受動蒸発支持材料上を越える空気の量及び割合が薬剤送出及び患者投与のための重要な考慮事項であると考えている。したがって、使用中に吸入器デバイスの空気取り入れを制御することが望ましい場合がある。これは、部分的には、強すぎる、不快である、或いはさもなければ、概して不快であるために患者に使用し続けるのを思いとどまらせる第1の吸入用量の蒸気を患者が空気取り入れチャンバから受けるのを防止するのに役立つ。したがって、本装置の1つの利点は、患者がマウスピースを通じて吸入するときに空気入口穴を通じて受動蒸気支持材料の表面を横切って空気取り入れチャンバに引き込まれる空気の量を制御するための空気取り入れ制御手段を設けることによって患者に送出される蒸気の量を制御できることであると考えられる。
【0081】
1つの実施形態において、空気取り入れ制御手段は、空気入口穴を調整可能に覆う(すなわち、開閉する)ように位置される調整可能カバーの形態を成す。空気入口穴は、例えば空気流経路を与えるように露出され得る空気取り入れチャンバの溝又は穴によって、又は、調整可能カバーの溝又は穴と随意的に位置合わせできる溝又は穴によって、調節可能カバーが開放されるときに多くの方法で形成されてもよい。
【0082】
装置が患者の使用のために必要とされる際、調節可能カバーは、それが空気入口穴を完全に覆う閉鎖位置から、患者が吸入するにつれて蒸気を患者に送出するために空気が受動蒸発支持材料の表面を横切って空気取り入れ口に流れ込むことができるようにする部分開放位置又は完全開放位置へと徐々に調整されてもよい。1つの実施形態において、調整可能カバーは、長尺本体の基端部に位置される回転可能なエンドキャップカバー、長尺本体の外周にわたって回転可能に装着されるスリーブカバー、スライド可能なカバー、及び、フラップカバーから成るグループから選択される。回転可能なエンドキャップカバー及び回転可能なスリーブキャップカバーは、例えばねじ山構成又はスナップ嵌合結合構成によって装置の長尺本体の残りの部分と回転可能に係合するように着脱可能に締結されてもよい。
【0083】
また、調整可能カバーは、好適には、断続的な使用中に過剰な蒸気が空気入口穴を通じて逃げるのを防止するべく調節可能カバーが閉鎖位置にあるときに装置を一時的に及び/又は部分的に密封できるようにしてもよい。したがって、1つの実施形態において、調整可能カバーは、随意的に詰め物挿入体を備える回転可能なエンドキャップである。詰め物挿入体は、回転可能なエンドキャップが閉じられるときに密閉をもたらすのに役立つために圧縮性材料と蒸気不透過性フィルム又は箔とを備えてもよい。圧縮性材料の例としては、高分子発泡体又はLDPEなどのスポンジが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
蒸気不透過性フィルムの例としては、高分子フィルム、金属箔(例えば、アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金など)、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又はラミネートフィルムなどの箔を含むこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム又は金属箔から選択される単一層である。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、高分子フィルム、金属箔、及び、それらの共押出高分子フィルム及び/又は箔を含む組合せから選択される2つ以上の層を備えるラミネートフィルムである。ラミネートフィルムは、例えばLLDPEなどの適切な溶着可能な箔又は高分子フィルムから形成される溶着可能な層を備えてもよい。溶着可能な層は、ラミネートの層を一緒にシールすること及び/又は溶着可能な層を備える蒸気不透過性フィルムを装置に対してシールすることに役立ってもよい。溶着に適したプロセスとしては、熱溶着及び超音波溶着が挙げられる。
【0085】
1つの実施形態において、高分子フィルムは、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、高分子フィルムは、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、例えば二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)などの二軸延伸高分子を含むそれらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。1つの実施形態において、高分子フィルムは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される高分子を備える。
【0086】
1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムはPETを備える。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、PETと、金属箔層、好ましくはアルミニウム箔層とを備える。1つの実施形態では、蒸気不透過性フィルムが金属化PET(Met PET)を備える。
【0087】
1つの実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、外部から剥離可能なLLDPE層に接着される金属化PET層に接着された共押出高分子層を備える。更なる実施形態において、共押出高分子層は、二軸延伸高分子、好ましくはBOPPである。他の実施形態において、蒸気不透過性フィルムは、外部から剥離可能なLLDPE層に接着される金属化PET層に接着されたBOPPの層を備える。
【0088】
他の実施形態において、調整可能カバーは、調整可能カバーが閉鎖位置にあるときに空気入口穴を通じた空気の取り入れを完全に防止するのではなく制限するために通気孔を随意的に備える。
【0089】
使用時には、空気入口穴は、多くの方法で開放されてもよい。調整可能カバーは、例えば、調整可能カバーを長尺本体に対してねじる、旋回させる、回転させる、ねじを緩める、スライドさせる、跳ね上げる、引っ張る、回動させる、又は、ひっくり返すことによって開放されてもよい。空気流経路は、部分的に開放された又は完全に開放された空気入口開口をもたらすために調整可能カバーを長尺本体に対してねじる、旋回させる、回転させる、ねじを緩める、跳ね上げる、引っ張る、回動させる、又は、スライドさせる度合いによって調整可能に制御されてもよい。調整可能カバーは、空気取り入れチャンバの空気入口開口と調整可能に位置合わせするための1つ以上の空気入口開口を備えてもよい。
【0090】
また、装置の全体のサイズを実質的に増大させる必要なく、空気出口チャンバに対する空気取り入れチャンバのサイズを増減することが望ましい場合もある。したがって、本装置の1つの利点は、設計要件に応じて空気出口チャンバサイズに対する空気取り入れチャンバサイズの異なる比率を与えることができることであると考えられる。1つの実施形態において、内部棚は、空気出口チャンバに対する空気取り入れチャンバの内容積を5:95~95:5又は10:90~90:10の範囲から選択される比率で分けるように長尺本体内に位置される。一実施形態において、比率は、5:95,10:90,15:85、20:80、25:75、30:70、35:65、40:60、45:55;50:50、55:45、60:40、65:35;70:30、75:25;80:20,85:15,90:10及び95:5から成るグループから選択される。その間の比率も考えられる。
【0091】
1つの実施形態において、内部棚は、空気出口チャンバの内容積に対する空気取り入れチャンバの内容積を50:50,55:45,60:40,65:35;70:30,75:25;80:20,85:15,90:10及び95:5及びその逆から成るグループから選択される比率でもたらすように位置される。1つの実施形態では、空気出口チャンバに対する空気取り入れチャンバの相対的なサイズが>50%である。更なる実施形態において、空気出口チャンバの内容積に対する空気取り入れチャンバの内容積は、55:45,60:40,65:35;70:30及び75:25から成るグループから選択される比率にある。他の実施形態では、空気出口チャンバに対する空気取り入れチャンバの相対的なサイズが<50%である。更なる実施形態において、空気出口チャンバの内容積に対する空気取り入れチャンバの内容積は、45:55,40:60,35:65;30:70及び25:75から成るグループから選択される比率にある。1つの実施形態では、比率が50:50である。
【0092】
内部棚は、平面であっても非平面であってもよい。1つの実施形態では、内部棚が平面状である。しかしながら、依然として空気取り入れチャンバ内に受動蒸発支持材料を受け入れるとともに空気出口チャンバ内に空気濾過手段を受け入れつつ所望の比率を達成するためには、非平面形態が好ましい場合がある。1つの実施形態では、内部棚が非平面である。非平面形態の例は、1つ以上の凹陥部を備えてもよく、又は、長尺本体と同じ又は同様の断面プロファイル、例えば長尺本体が円筒形である場合に半円形の断面を採用してもよい。1つの実施形態において、内部棚は、平面又は非平面であり、随意的には1つ以上の凹陥部を備える。1つの実施形態において、内部棚は、非平面であり、長尺本体と同じ又は同様の断面プロファイルを採用する。
【0093】
注がれた液体の堆積部位を受動蒸発支持材料上へと方向付けて、その分布を堆積時点で改善することが望ましい場合もある。したがって、本装置の1つの利点は、注がれた液体の堆積部位を受動蒸発支持材料上へと方向付けることができること及び/又はその分布を堆積時点で改善できることであると考えられる。1つの実施形態では、液体入口穴が随意的な液体入口ガイドを備える。理論に拘束されることを望まないが、入口ガイドは、注がれた液体が入口ガイドを出る及び/又は蒸発手段とのその最初の接触部位の位置を方向付けるにつれて注がれた液体の表面張力を崩壊させる又は破壊するように設計されることにより受動蒸発支持材料全体にわたって注がれた液体の分布を改善できるという利点を与えると考えられる入口ガイドは、漏斗、溝、チャネル、シュートなどの形態を成してもよい。
【0094】
Analgizer(商標)装置内及びGreen Whistle(商標)装置内の蒸発手段は、本質的にそれらの装置全長にわたって長手方向に延びる。更に、それらの装置は、空気濾過手段を長尺本体内に内部で受けるようになっている内部に位置された空気出口チャンバを収容しない。したがって、本装置の1つの利点は、空気濾過手段を内部に収容するという付加的な利点を伴って、空気取り入れチャンバからの蒸気の送出に悪影響を及ぼすことなく、メトキシフランを投与するための従来の吸入器デバイスと比べて同様の全体サイズ又はより小さいサイズを維持できることであると考えられる。
【0095】
現在市場に出回っているGreen Whistle(商標)は、152mmの長さと27mmの直径とを有し、外付けのACチャンバは、78mmの長さ、25mmの幅、及び、35mmの高さを有する。ACチャンバなどの空気濾過手段を内部に収容するようになっている内部に位置される空気出口チャンバを備える本発明のプロトタイプ装置の寸法は、Green Whistle装置と同様の長さ及び直径を有する。
【0096】
装置内に内部で収容される二重チャンバ、すなわち、空気取り入れチャンバ及び出口チャンバの存在に起因して、同様の既知の装置と比べたときにより小さいサイズの空気取り入れチャンバは、幾つかの実施形態では、本発明者らによる適切な受動蒸発支持材料の設計を余儀なくさせてきた。受動蒸発支持材料のサイズ及び形状は、装置及び空気取り入れチャンバの全体のサイズ及び形状を特に考慮して選択されてもよい。
【0097】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。他の実施形態において、蒸発手段は、空気取り入れチャンバを通じた少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。好ましい実施形態において、蒸発手段は、空気取り入れチャンバを通じた3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっている。
【0098】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバを通じた単一の長手方向空気流/蒸気経路を形成するようになっており、その形態は、空気取り入れチャンバの床に対する平面ライニング、空気取り入れチャンバの内面の部分ライニング、及び、空気取り入れチャンバの内面の全ライニングから成るグループから選択される。
【0099】
他の実施形態において、受動蒸発支持材料は、少なくとも2つの独立した長手方向空気流/蒸気経路、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を空気取り入れチャンバを通じて形成するようになっている。少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できる断面形状の多数の例が想定されてもよく、そのうちの一部は以下の通りである。2つ、好ましくは3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路は、例えば、これらに限定されないが、少なくとも2つの独立した空気流/蒸気経路を形成できるA形、B形、S形、Z形、数字2、数字5、及び、数字8、並びに、空気取り入れチャンバを通じて3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を形成できるK形、M形、V形、W形、X形、Y形、及び、数字3などのアルファベットの文字又は1桁の数字から選択される断面形状を採用する受動蒸発支持材料によって形成されてもよい。
【0100】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている。経路は、受動蒸発支持材料それ自体を貫く独立した導管として形成されてもよく、又は、経路は、受動蒸発支持材料が空気取り入れチャンバの内面と接触することによって形成されてもよい。したがって、1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、3つ以上の長手方向導管を備え、この場合、導管は、受動蒸発支持材料内に形成され、又は、空気取り入れチャンバの内面と共に受動蒸発支持材料によって形成され、又は、それらの組合せである。
【0101】
3つ以上の独立した長手方向空気流/蒸気経路を与えるようになっている受動蒸発支持材料は、小さいチャンバサイズ及び/又は空気取り入れチャンバが貯留チャンバとマウスピースチャンバとの間に介在する実施形態に特に適し得る。したがって、本装置の1つの利点は、増大された数の空気/蒸気経路と注がれる液体が最初に接触できるより大きい面積の受動蒸発支持材料とを与えることによって注がれた液体を受動蒸発支持材料上へ受動蒸発支持材全体にわたって分配でき、それにより、例えば、メトキシフルレンを投与するために現在使用されるGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(Medical Developments International Limited)により必要とされるような液体注ぎ中の装置の回転の必要性を回避できることであると考えられる。
【0102】
1つの実施形態では、受動蒸発支持材料が中心部を有し、この場合、3つ以上の長手方向導管を形成するために3つ以上の径方向アームが中心部から空気取り入れチャンバの内面まで延びる。1つの例が
図8に示されており、この場合、受動蒸発支持材料(57)は、3つ以上の長手方向導管を形成するために中心部から蒸気チャンバの内面まで延びる3つ以上の径方向アームを備える。理論に拘束されることを望まないが、径方向アームは、中心部から空気取り入れチャンバ壁へ向けた外側への及びマウスピースチャンバへ向けたその全長にわたる液体の広がりを促進させることによって受動蒸発支持材料の表面からの蒸発を助けると考えられる。
【0103】
1つの実施形態において、受動蒸発支持材料は、貯留容器を開放して貯留容器の液体内容物を蒸発手段上へ放出するための穴開け手段を備える。穴開け手段の例としては、容器シールを容器内へ押し込んで液体内容物を放出するようになっている鈍端部を有するロッド、又は、容器シールを穿刺又は破壊して液体内容物を放出するためのテーパ状端部又は尖端部を有するロッドを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0104】
受動蒸発支持材料は、吸入可能な液体を吸収してそれを受動的に蒸気として放出するのに適した任意の材料から形成されてもよい。ウィッキング特性を有する材料が、本装置での使用にとって特に好ましい受動蒸発支持材料である。ウィッキング特性は、一般に、引き出し、拡散、引張又は別の方法によるものであろうと、材料の初期接触点から材料の全体にわたってであろうと、及び/又は、液体が材料の露出された表面領域から蒸発するにつれてであろうと、液体を分配することによって、材料がその表面からの液体の蒸発率又は気化率を促進させる又は高めることができる能力を含むように理解される。したがって、1つの実施形態では、受動蒸発支持材料がウィッキング材料である。1つの実施形態では、ウィッキング材料がウィッキングフェルト又は多孔質高分子材料である。好ましい実施形態では、ウィッキング材料がポリプロピレンウィッキングフェルトである。
【0105】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランを貯留して投与するのに特に有用であると考えられる。したがって、1つの実施形態では、吸入可能な液体がハロゲン化揮発性液体である。更なる実施形態において、ハロゲン化揮発性液体は、ハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン)、セボフルラン(フルオロメチル-2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルエーテル)、デスフルラン(2-ジフルオロメチル-1,2,2,2-テトラフルオロエチルエーテル)、イソフルラン(1-クロロ-2,2,2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2-クロロ-1,1、2-トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、及び、メトキシフルラン(2,2-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチルメチルエーテル)から成るグループから選択される。好ましい実施形態において、吸入可能な液体は、鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランである。
【0106】
本装置による患者への投与に適した吸入可能な液体の送出用量は、例えば、規制された承認用量を参照することによって決定されてもよい。鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの適切な送出用量は、一般に、15mL未満、好ましくは12mL未満である。1つの実施形態において、送出用量は、0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、2.5mL、3mL、3.5mL、4mL、4.5mL、5mL、5.5mL、6mL、6.5mL、7mL、7.5mL、8mL、8.5mL、9mL、9.5mL、10mL、10.5mL、11mL、11.5mL及び12mLから成るグループから選択される。1つの実施形態において、本装置による投与のためのメトキシフルランの送出用量は、1.5mL、3mL及び6mLから成るグループから選択される。
【0107】
投与中に患者のごく近傍の他人の曝露を減少させるために、吸入された蒸気の一部を含む呼気を濾過することが望ましい場合もある。したがって、本装置の1つの利点は、空気濾過手段を内部で受け入れるようになっている空気出口チャンバを設けることであると考えられる。1つの実施形態では、空気出口チャンバが空気濾過手段を備える。
【0108】
空気濾過手段の例としては、好ましくは粒状形態の活性炭(「AC」)が挙げられるが、これに限定されない。1つの実施形態では、空気濾過手段が好ましくは粒状形態の活性炭を備える。他の実施形態において、空気濾過手段は、好ましくは粒状形態の活性炭(「AC」)などの空気濾過物質及び/又は最適化された濾紙などの1つ以上のフィルタを備えるカートリッジである。カートリッジは、空気出口チャンバから挿入可能に取り外すことができてもよく、又は、空気出口チャンバ内に一体形成されてもよい。1つの実施形態において、空気濾過物質を備えるカートリッジは、例えば、空気出口チャンバ壁及び/又は内部棚のスライドガイド手段によって空気出口チャンバから挿入可能に取り外しできる。他の実施形態において、空気濾過物質を備えるカートリッジは、空気出口チャンバ壁及び/又は内部棚と一体に形成される。1つの実施形態では、空気出口チャンバが活性炭顆粒を内部で受けるようになっている。更なる実施形態では、活性炭顆粒が空気出口チャンバ内に存在する。
【0109】
装置は様々な材料から形成されてもよい。しかしながら、適した材料は、貯留及び/又は送出されるべき吸入可能な液体を基準にしてそれらの材料が化学的に不活性である、安定している、及び、不浸透性であるかどうかを考慮することによって選択されてもよい。材料は、FDAのような規制当局による医療グレード人体使用のための承認された基準を満たすかどうかを基準にするなどして医療機器用途へのそれらの適合性に基づき選択されてもよい。
【0110】
本装置は、ハロゲン化揮発性液体を貯留する及び/又は投与するのに特に有用であると想定される。したがって、1つの実施形態において、装置は、ハロゲン化揮発性液体、特に鎮痛剤として使用するためのメトキシフルランの貯留及び/又は患者への送出に適合する1つ以上の材料から形成される。
【0111】
本装置を形成するのに適し得る材料の例としては、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(ナノ複合材料を含む)、金属(その合金を含む)、及び、それらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム及びその合金を含む)、及び、それらの組合せから形成される。更なる実施形態において、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー、すなわち、コポリマーを含む)、複合材料(粘土と組み合せた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料で随意的に内部が裏打ちされ又はコーティングされる。
【0112】
本装置の1つの利点は、吸入可能な液体の貯留及び/又は投与に必要な個々の構成要素又は部品の数が最小であるという観点から操作が容易であることに加え、製造が比較的単純で低コストであることであると考えられる。例えば、装置の長尺本体は、単一の製造部品として形成されてもよい。1つの実施形態において、内部棚は、長尺本体の一体形成された構成要素である。
【0113】
装置の実施形態は、例えば本明細書中に記載されるような空気取り入れ制御手段、空気濾過手段、及び/又は、取り外し可能なエンドキャップなどの付加的な製造部品を必要としてもよい。各製造部品は、同一又は異なる材料から別々に形成されてもよい。1つの実施形態において、装置の別個に製造された部品は、高分子材料、金属(例えば、アルミニウム、ニッケル)、及び、金属合金(例えば、ステンレス鋼)から成るグループから選択される材料から独立に形成される。
【0114】
高分子は、射出成形、ブロー成形、及び、押出プロセスによる本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムの大規模製造に特に適している。また、それらの高分子は、3D印刷技術による更に小さい規模での本装置の製造に適している。更に、高分子は、装置の廃棄後にリサイクルされてもよい。
【0115】
本明細書中に記載される本装置及び高分子フィルムを形成するのに用いる高分子の例としては、以下の高分子及びそれらの組合せ(共押出高分子を含む)、すなわち、ポリプロピレン(「PP」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、及び、高密度ポリエチレン(「HDPE」)を含むポリエチレン(「PE」)、二軸延伸ポリプロピレン(「BOPP」)、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテン、ポリシクロメチルペンテンなどのポリオレフィン;ポリエチレンナフタレート(「PEN」)、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)((「PETE」)としても知られる)、ポリエチレンテレフタレートポリエステル(「PETP」)、ポリエチレンイソフタレート(「PEI」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリトリメチレンテレフタレート(「PTT」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(「PCT」)などの高分子フタル酸エステル;製造後にフッ素化される(例えば成形後フッ素化)高分子、フッ素化エチレン-プロピレン、クロロトリフルオロエチレン(「Kel-F」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)を含むフッ素化高分子;酢酸セルロース、ポリオキシメチレン(「POM」)を含むポリエステル、及び、ポリエチレンテレフタレートグリコール共ポリエステル(「PETG」)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートグリコール改質体(「PCTG」)、及び、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタル酸(「PCTA」)などのコポリマーを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル;アモルファスナイロンを含むナイロン;ポリビニルアルコール(「PVA」)及びエチレンビニルアルコール(「EVOH」)を含むポリビニル;ポリエーテルスルホン(「PES」)を含むポリスルホン;及び、デンプン、セルロース、及び、タンパク質を含む天然高分子を挙げることができるが、これらに限定されない。また、適切な高分子は、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満の水蒸気透過率(「MVTR」、水蒸気透過率「WVTR」としても知られる)を有する高分子を含んでもよい。
【0116】
したがって、1つの実施形態では、装置が1つ以上の高分子から形成され、この場合、装置は、高分子(ホモポリマー及びヘテロポリマー(コポリマーとしても知られる)を含む)及びその組合せ(共押し出し高分子を含む)、複合材料(粘土と組み合わせた高分子などのナノ複合材料を含む)、金属(アルミニウム、ニッケル、及び、それらの合金を含む)、酸化物(酸化アルミニウム、酸化ケイ素を含む)、スプレーコーティング、樹脂(エポキシフェノール樹脂及びDuPontの商標であるSurlyn(登録商標)などのアイオノマー樹脂を含む)、ラッカー及びエナメルから成るグループから選択される1つ以上の材料を伴う随意的な内部ライニング又はコーティングを更に備える。
【0117】
1つの実施形態において、高分子は、ポリオレフィン、高分子フタル酸エステル、フッ素化高分子、ポリエステル、ナイロン、ポリビニル、ポリスルホン、天然高分子、及び、それらの共押し出し高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、高分子は、100g/m2/24h未満、好ましくは50g/m2/24h未満のMVTRを有する。1つの実施形態において、ポリオレフィンは、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、及び、それらの共押し出し高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、高分子フタル酸エステルは、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT及びBOPPなどのそれらの共押し出し高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態において、フッ素化高分子は、Kel-F、PTFE、及び、それらの共押し出し高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態において、ポリエステルは、セルロースアセテート、POM、及び、PETG、PCTG、PCTAを含むテレフタル酸エステル基を含有するポリエステル、並びに、それらの共押し出し高分子を含む組合せから成るグループから選択される。1つの実施形態では、ナイロンがアモルファスナイロンである。一実施形態では、ポリビニルは、PVA、EVOH及びそれらの共押出高分子を含む組合せから選択される。1つの実施形態では、ポリスルホンがPESである。1つの実施形態において、天然高分子は、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押し出し高分子を含む組合せから成るグループから選択される。
【0118】
1つの実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、BOPP、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される単一の高分子から形成される。他の実施形態において、装置は、PP、PE、LDPE、LLDPE、HDPE、4-メチルペンテン、ポリメチルペンテンポリシクロメチルペンテン、PEN、PET、PETP、PEI、PBT、PTT、PCT、Kel-F、PTFE、セルロースアセテート、POM、PETG、PCTG、PCTA、ナイロン、PVA、EVOH、デンプン、セルロース、タンパク質、及び、それらの共押出高分子を含む組合せから成るグループから選択される2つ以上の高分子から形成される。1つの実施形態において、装置は、HDPE、PET、及び、それらの組合せから成るグループから選択される高分子から形成される。1つの実施形態では、装置がPETを備える。
【0119】
装置の長尺本体は、一般に、その長さに沿って同じ断面形状をとってもよい。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円形、半円形、楕円形、半楕円形、長円形、卵形、正方形、長方形、台形、三角形、及び、これらの組合せから成るグループから選択される。また、角張った角を有する形状が丸みを帯びた角に取って代えられてもよく、例えば、角張った角が丸みを帯びた角に取って代えられる長方形は、丸みを帯びた長方形形状と称されてもよい。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円筒形、長方形、丸みを帯びた長方形、台形、及び、丸みを帯びた台形から選択される。1つの実施形態において、長尺本体の断面形状は、円筒形、長方形、丸みを帯びた長方形、台形、及び、丸みを帯びた台形から選択され、この場合、円筒形が特に好ましい。
【0120】
1つの実施形態では、基端部が長尺本体と一体的に形成される。他の実施形態では、基端部は、取り外し可能なエンドキャップを備え、或いは、回転可能なエンドキャップカバー、スライド可能なカバー又はフリップカバーなどの調整可能なエンドキャップカバーである。
【0121】
マウスピース端部の断面形状は、長尺本体の残りの部分と同じであってもよく又は異なっていてもよい。1つの実施形態では、マウスピースがマウスピース穴に向かって先細りになっている。好ましい実施形態において、マウスピース穴の断面形状は、従来のエアロゾル又はネブライザーフェイスマスクに適合するようになっている。
【0122】
吸入可能な液体を装置を使用して患者が自己投与できるため、装置は、患者の手首又は首の周りに配置するためのラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを随意的に備えてもよい。したがって、1つの実施形態において、装置は、ラニヤード及びそれに取り付くためのポイントを備える。
【0123】
実施例1
図1は、Penthrox(商標)/(登録商標)(メトキシフルラン)を鎮痛剤として送出するためにオーストラリアで現在使用される従来技術のGreen Whistle(商標)吸入器デバイス(1)(Medical Developments International Limited)(1.5mL又は3mL、スクリューキャップを伴う茶色のガラスバイアル貯留容器)を示す。使用のために必要とされる際には、送出用量のメトキシフランが装置の基端部(3)に流し込まれる。用量が蒸発手段(図示せず)上への送出のために基端部に流し込まれた後、メトキシフルランは、患者がマウスピース(2)を通じて空気/蒸気混合物を吸入することにより鎮痛薬を自己投与できるように蒸発する。患者がマウスピースを通じて呼吸し続ければ、任意の呼気/蒸気混合物は、活性炭を収容する外的に取り付けられるチャンバ「ACチャンバ」(4)を介して装置から抜け出る。
【0124】
実施例2
図2Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(5)を示す。また、この装置は、図示されないが患者による吸入時に吸入可能な液体を受けるとともに空気/蒸気混合物を送出するために存在すると理解される内部に収容される受動蒸発支持材料を空気取り入れチャンバ内に備える。装置は、マウスピース端部(6)と、長尺本体と一体に形成されて空気出口穴(9)を含む基端部(7)とを備える。2つの空気入口穴(8)には、液体入口穴(10)と同じ穴である1つの入口穴が設けられる。通気孔(11)を備えるフラップカバーの形態を成す空気取り入れ制御手段が、空気入口穴(8)/液体入口穴(10)を覆うその閉鎖位置で示される。マウスピースチャンバ(12)、空気取り入れチャンバ(13)、空気出口チャンバ(14)、端部通気孔(15a)及び(15b)を備えるカートリッジ(15)の形態を成す空気濾過手段、及び、空気濾過手段が取り付けられる内部棚(16)などの装置の内部特徴の一部を示すために、線A-Aに沿う装置の断面図が
図2Bに示される。
図3A、
図3B、及び、
図3Cは、一緒に見たときに、装置の構成要素の一部をより良く例示するために装置の分解図を示す。空気取り入れチャンバ(13)の壁及び屋根を形成する長尺本体の外側シェル部、及び、マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部の上端部が、
図3Aに示される。フラップカバーは、液体を外部液体貯留容器から空気取り入れチャンバ内へ流し込む及び該チャンバ内に収容される受動蒸発支持材料上へ注ぐことができるようにする開放位置(17)で示される。空気出口チャンバ(14)の壁及び床を形成する長尺本体の外側シェル部、及び、マウスピースチャンバを備えるマウスピース端部の下端部が、
図3Cに示される。
図3Bに示されるように、カートリッジが取り付けられる内部棚(16)は突起(16a)も備える。突起は、空気取り入れチャンバ/マウスピースチャンバとマウスピースチャンバ/空気出口チャンバとの間の所定の位置に二方向弁(18)を保持するために、弁ホルダ(19)の受け部と連結するようになっている。二方向弁は、PETなどの可撓性のある空気/蒸気不透過性高分子材料から形成される。
【0125】
実施例3
図4Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(20)を示す。また、この装置は、図示されないが患者による吸入時に吸入可能な液体を受けるとともに空気/蒸気混合物を送出するために存在すると理解される内部に収容される受動蒸発支持材料を空気取り入れチャンバ内に備える。マウスピース端部(21)内のマウスピースチャンバ(21a)は、内部棚(25)に取り付けられる二方向弁装置によって空気取り入れチャンバ(22)及び空気出口チャンバ(23)から分離される。空気出口チャンバは空気濾過手段(24)を備える。また、装置は、回転可能なエンドキャップカバー(27)の形態で長尺本体の基端部(26)に位置される空気取り入れ制御手段も備える。
図4Cは、回転可能な基部(29)に取り付けられる又は基部(29)と一体に形成される空気入口カバー(29a)を含むその構成要素をより良く例示するために調整可能な回転可能エンドキャップカバーの拡大図を示す。回転可能な基部は、随意的に、基部を回転させるのに役立つようにグリップ(29b)を備えてもよい。空気取り入れは、この特定の例では液体入口穴としても機能する空気入口穴(28)を覆う空気入口カバーの一部を調整するべく基部を回転させることによって制御されてもよい。また、回転可能な基部は、随意的に液体貯留バイアルからスクリューキャップを取り外すのに役立つようにキャップ除去ラグ(29c)を備えてもよい。回転可能な基部は、ねじ山構成又はスナップ嵌合結合構成(図示せず)によって長尺本体の基端部に着脱可能に締結されてもよい。
【0126】
実施例4
図5Aは、2つの空気入口穴(31)を備える調整可能なスリーブカバー(30)の形態を成す本発明の一実施形態に係る空気取り入れ制御手段の斜視図を示す。調整可能なスリーブカバーは、ねじ山構成(32)によって長尺本体に回転可能に締結される。
【0127】
また、2つの空気入口穴(34)を備える調整可能なスクリューキャップカバー(33)の形態を成す本発明の別の実施形態に係る空気取り入れ制御手段も第1の側及び第2の側からそれぞれ見て
図5B及び5Cに示される。調整可能なスクリューキャップカバーは、ねじ山構成によって長尺本体の基端部に回転可能に締結される。
【0128】
調整可能なスリーブカバー(30)及び調整可能なスクリューキャップカバー(33)のねじ山構成は、単一のねじ山構成であってもよく、或いは代わりに、二重のねじ山構成であってもよい。二重のねじ山構成の利点は、回転数を最小限に抑えることによって開放を容易にすることである。
【0129】
実施例5
図6Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(35)を示す。液体貯留バイアル(36)が装置装填位置で示され、この場合、吸入可能な液体内容物が液体入口穴(37)に流し込まれる。この例では、液体入口穴が空気入口穴としても機能する。マウスピース端部(38)及び空気出口穴(40)を有する取り外し可能なキャップ(39)の形態の基端部も示される。
図6Bは、マウスピースチャンバ(41)、空気取り入れチャンバ(45)、空気出口チャンバ(42)、端部通気孔(43a)及び(43b)を備えるカートリッジ(43)の形態を成す空気濾過手段、及び、空気濾過手段が取り付けられる内部棚(44)などの装置の内部特徴の一部を示すために、線A-Aに沿う装置の断面図を示す。また、注がれた液体を受動蒸発支持材料(47)上に堆積させるのに役立つための液体入口ガイド(46)も示される。受動蒸発支持材料は、空気取り入れチャンバの屋根から延びる随意的な隔壁と共に内部棚と一体的に形成されるV形状支持体の形態を成す位置決め手段(48)によって所定位置に保持されてV形状で空気取り入れチャンバ内に位置される。二方向弁(49)及び突起(50)を含む分解された構成要素をより良く例示するために第1の視野及び逆方向からの装置の分解図が
図7A及び
図7Bに示され、突起(50)は、空気取り入れチャンバ/マウスピースチャンバとマウスピースチャンバ/空気出口チャンバとの間の所定の位置に弁を保持するために内部棚(51)の受け部と連結するようになっている。二方向弁は、PETなどの可撓性のある空気/蒸気不透過性高分子材料から形成される。
【0130】
実施例6
図8Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(52)の分解図を示す。空気出口チャンバ(図示せず)は、マウスピース端部(53)に位置されて、空気出口穴(54)を備える。一方向弁(55)が、マウスピースチャンバと、空気取り入れチャンバ(56)、受動蒸発支持材料(57)、及び、原位置で吸入可能液体貯留バイアル(59)と共に示される貯留チャンバ(58)を備える長尺本体の部分との間に位置される。
【0131】
実施例7
図8Bは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(60)の分解図を示す。例6の装置とは対照的に、空気濾過手段(63)を備える空気出口チャンバがマウスピース端部(61)内に位置される。空気出口チャンバを受け入れるために、マウスピース端部は、例6の装置のマウスピース端部よりも比較的長い。空気出口チャンバは、空気濾過手段の空気出口穴(64)と位置合わせするための空気出口穴(62)を備える。一方向弁(55a)が、マウスピースチャンバと、空気取り入れチャンバ(65)、受動蒸発支持材料(57)、及び、原位置で吸入可能液体貯留バイアル(59)と共に示される貯留チャンバ(58)を備える長尺本体の部分との間に位置される。他の一方向弁(55b)がマウスピースチャンバと空気出口チャンバへの入口との間に位置される。
【0132】
実施例8
図8C及び
図8Dは、本発明の一実施形態に係る受動蒸発支持材料(57)の上面図及び斜視図をそれぞれ示す。受動蒸発支持材料は、3つ以上の長手方向導管を形成するために中心部から蒸気チャンバの内面まで延びる3つ以上の径方向アームを備える。
【0133】
実施例9
図9Aは、装置作動プロセスを示すための本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(66)の断面図を示す。貯留チャンバ内に位置される液体貯留容器(72)内に貯留される吸入可能な液体は、液体貯留容器が内部に保持される容器ホルダ(73)を作動させることによって受動蒸発支持材料(69)上へ放出されてもよい。矢印の方向の基端部に対する回転内側押圧作用による容器ホルダの作動により、
図9Bに示すように、液体貯留容器が穴開け手段(70)と係合する。その結果、穴開け手段は、
図9Cに示されるように、吸入可能な液体を受動蒸発支持材料上へ放出するために容器シール(71)を貯留容器内に押し込む。
【0134】
実施例10
図10Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(74)の断面図を示す。装置は、活性炭顆粒(76)を含む空気濾過手段(75)を備える。液体貯留容器(80)が内部に保持される容器ホルダ(81)を備える貯留チャンバは、基端部を矢印の方向に押すことによって作動される。その結果、液体貯留容器は、穴開け手段(79)と係合して、液体を受動蒸発支持材料(79)上へ放出する。受動蒸発支持材料(78)上への液体の放出後の患者による吸入時の空気/蒸気流の方向が
図10Bに示される。矢印によって示されるように、吸入空気/蒸気は、患者への送出のために、貯留チャンバ、空気取り入れチャンバ、一方向弁、及び、マウスピースチャンバを通じて流れる。患者による呼気時の空気/蒸気流の方向が
図10Cに示される。矢印によって示されるように、呼気/蒸気は、マウスピースチャンバ、一方向弁、空気出口チャンバの空気濾過手段を通じて流れた後、空気出口穴(77)を介して装置から出る。
【0135】
実施例11
本発明の一実施形態に係る二方向弁の構成要素及びそれらの装置内での組み立てが
図11A、
図11B、及び、
図11Cに示される。カートリッジ(83)の形態を成す空気濾過手段が取り付けられる内部棚(82)は突起(86)も備える。突起は、弁ホルダ(87)の受け部(88)及び二方向弁(85)の受け部(86)と連結して二方向弁を所定位置に保持するようになっている。
図11Bは、長尺本体の下端部に形成される空気出口チャンバ(84)内に位置される二方向弁の組み立てられた構成要素を示す。
図11Cは、マウスピース端部(89)の空気取り入れチャンバ(91)/マウスピースチャンバ(90)とマウスピースチャンバ(90)/空気出口チャンバ(84)との間に位置される完全に構成された装置の組み立てられた二方向弁を示す。二方向弁は、PETなどの可撓性のある空気/蒸気不透過性高分子材料から形成される。
【0136】
実施例12
図12Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(92)の背面斜視図を示す。空気出口チャンバ及びAC容積のそれぞれの大きさを最大にするために、内部棚(93)は、非平面状であるとともに、受動蒸発支持材料を支持する半円形断面形状を有する凹陥部を備える。空気取り入れチャンバ内へ流し込まれて受動蒸発支持材料上へ注がれる液体の送出を助けるために大きな漏斗状のガイド(94)が設けられる。基端部には空気出口穴(95)が位置される。
【0137】
図12Bは、
図12Aの装置の内部棚、並びに、二方向弁(96)、ACを空気出口チャンバ内に保持するためのメッシュ(97)、及び、棚の半円形凹陥部の周囲に巻かれた受動蒸発支持材料(98)を含む関連する構成要素の切り欠き側面図を示す。
【0138】
図12Cは、受動蒸発支持材料を所定位置に保持してその上方に空隙を設けるための随意的なリブ又はピン又は同様のもの(99)を伴う
図12Aの吸入器デバイスの背面図を示す。装置の空気出口チャンバ(100)は、
図1の従来技術のGreen Whistle吸入器の外部ACチャンバ内に収容されるACの容積に等しい約28mLの容積のACを保持することができる。
【0139】
実施例13
図13Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(101)の斜視側面図を示す。装置は、該装置の長尺本体の基端部に移動可能に接続される貯留チャンバ(102)を備える。貯留チャンバは、図示の矢印の方向に回転できる。
【0140】
貯留チャンバの拡大図が
図13Bに示され、この図は、アンプル(104)の首部を保持する第1の位置から所定位置に保持されるアンプルの首部を破壊させて液体を空気取り入れチャンバ内へ及び受動蒸発支持材料上へ放出させる第2の位置(105)へと貯留チャンバが図示の矢印の方向に回転されるときに移動されるガラスアンプル(103)内に貯留される吸入可能な液体を更に例示する。
【0141】
実施例14
図14Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(106)の斜視図を示す。受動蒸発支持材料内に包まれるアンプルの形態の液体貯留容器が空気取り入れチャンバ(107)内に位置される。ユーザが図示の矢印の方向にボタン(110)を押し下げることによりアンプルを破砕して液体をアンプルから放出する際に空気取り入れチャンバを通じてAC(109)を備える空気出口チャンバから出る空気/蒸気流の方向を制御するために、二方向弁(108)が設けられる。
【0142】
図14Bは、受動蒸発支持材料(112)内に包まれるアンプル(111)の拡大図を示し、その目的は、アンプルの破砕によってもたらされる任意の断片又は破片が潜在的に空気/蒸気流に入ることを防止することである。
【0143】
実施例15
図15Aは、本発明の一実施形態に係る吸入器デバイス(113)の斜視図を示す。蒸気不透過性の袋又はパケット(114)の形態を成す液体貯留容器が、空気取り入れチャンバ内に位置されて、受動蒸発支持材料(115)よりも上側に位置決めされる。タブ(116)を図示の矢印の方向に引っ張って袋を開放することによって液体が受動蒸発支持材料上へと放出される。空気取り入れチャンバを通過してAC(118)を備える空気出口チャンバから出る空気/蒸気流の方向を制御するために二方向弁(117)が設けられる。
【0144】
図15Bは、タブ(116)を引っ張ることによって図示の矢印の方向で剥離されて開放される袋(114)の拡大図を与える。
【0145】
実施例16
吸入器デバイスがメトキシフルランを送出できる能力は、肺波形発生システムなどの呼吸シミュレータシステムを用いて検査されてもよい。
【0146】
外部ACチャンバが取り付けられたGreen Whistle装置及び本発明に係るプロトタイプ装置(
図6~
図7)によるメトキシフルランの送出(%濃度)は、肺波形発生システムを用いて測定された。Prototype装置は、HDPE同等の材料を使用してラピッドプロトタイプとして製造された。
【0147】
両方の装置が以下のように検査された。肺波形発生器が「大人」流量条件(毎分14回の呼吸)に設定され、濃度ロギングソフトウェア及びDatexセンサが開始された。各検査ごとにメトキシフルラン(3mL)が装置に流し込まれ、それにより、送出されるべきメトキシフルランがポリプロピレン製の芯に予め取り込まれ、その後、装置のマウスピース端部が肺波形発生器の開口に挿入された。最初の呼吸濃度のために最初の1分間、その後、定常状態試験のために次の20分間、集中ロギングが開始された。
【0148】
結果が
図16に与えられる。いずれの場合も、装置がメトキシフルランを送出した。しかしながら、両方の装置によって送出されたメトキシフルランの最初の第1の呼気濃度は、同じレベルで始めるが、プロトタイプ装置は、Green Whistle装置よりも長い期間にわたって定常状態レベルを維持することが分かった。したがって、プロトタイプ装置は、より低い濃度のメトキシフルランをより長い期間にわたって送出することが分かった。これに対し、Green Whistle装置は、より短い期間にわたってより高い定常状態レベルでメトキシフランを最初に送出し、その後、急速に減少してプロトタイプ装置により達成されるメトキシフルランの定常状態濃度を下回ることが分かった。
【0149】
この明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって、文脈が別段に必要としなければ、「備える(comprise)」という単語及び「備える(comprises)」や「備えている(comprising)」などのその変形は、述べられた整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを含むことを意味するが、任意の他の整数又はステップ或いは一群の整数又はステップを排除することを意味しないものと理解される。
【0150】
この明細書における任意の従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の任意の事項への言及は、この明細書が関連する対象分野における共通の一般的知識の一部を従前の刊行物又はそれから導き出される情報或いは既知の事項が形成するという確認又は承認又は任意の形態の示唆として解釈されず、また、解釈されるべきでない。