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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】人工装具の組織への固定
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220112BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018529645
(86)(22)【出願日】2016-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 US2016065196
(87)【国際公開番号】W WO2017100211
(87)【国際公開日】2017-06-15
【審査請求日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】14/961,885
(32)【優先日】2015-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515234196
【氏名又は名称】マイクロ インターベンショナル デバイシズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ピー.ホイットマン
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-334414(JP,A)
【文献】国際公開第2014/195786(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に突き刺さり固定されるように構成される遠位端に向かって先細りになる遠位端と、
近位ヘッドと、
前記遠位端及び前記近位ヘッドに一体的に接続される張力構成要素と、を具備する外科用アンカーであって、
前記張力構成要素は、前記遠位端が前記組織内に固定されているときに、前記近位ヘッドに力を付加するように構成され
前記張力構成要素は、前記遠位端及び前記近位ヘッドにオーバーモールドされるエラストマーを含む、外科用アンカー。
【請求項2】
前記張力構成要素はバネを備える、請求項1に記載の外科用アンカー。
【請求項3】
前記外科用アンカーは、前記組織に係合し、近位方向の移動に抵抗するように構成される、請求項1に記載の外科用アンカー。
【請求項4】
前記張力構成要素は、展開された前記外科用アンカーの前記近位ヘッドに前記力を付加し、前記外科用アンカーの前記近位ヘッドを遠位方向に付勢する、請求項1に記載の外科用アンカー。
【請求項5】
前記近位ヘッドは非変形材料を含む、請求項1に記載の外科用アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年12月7日に出願された米国特許出願第14/961,885号の優先権を主張し、その全体を参考として援用する。
【0002】
米国特許出願第14/961,885号は、2014年12月7日に出願された米国仮特許出願第62/088,680号の出願日の利益を主張し、その全体を参照として組み込むものであり、さらに、2015年6月11日に出願された米国特許出願第14/737,408号の一部継続出願であり、その出願日の利益を主張し、その全体を参照することにより組み込むものである。米国特許出願第14/737,408号は、2014年6月11日に出願された米国仮特許出願第62/010,680号の出願日の利益を主張し、その全体を参照することにより組み込むものである。
【0003】
さらに、以下の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2014年7月1日に出願された米国特許出願第14/321,476号、2014年6月10日に出願された米国特許出願第14/301,106号、2013年3月15日に出願された米国特許出願第13/843,930号、2014年3月17日に出願されたPCT出願第PCT/US14/30868号、2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,769号、2010年1月20日に出願された米国仮特許出願第61/296,868号、2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,766号、2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,777号及び2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,774号。
【0004】
本発明は、人工装具を組織に固定するための固定装置及び固定方法ならびに固定システム及び固定方法に関する。
【背景技術】
【0005】
心臓弁逆流(即ち、心臓弁の適切な閉鎖の障害)又は心臓弁狭窄(即ち、心臓弁の適切な開放の障害)のいずれかに起因する心臓弁の不全に対処するために、心臓弁の置換が開発されている。心臓弁の修復及び交換の初期の取り組みには観血的手術が含まれていたが、最近の開発には経皮的な外科的応用が含まれている。
【0006】
しかし、経皮的な心臓弁の修復には、いくつかの欠点があることがわかっている。例えば、経皮的修復は、手術手技の変更を伴い、手術の利点を制限する可能性がある。環状リングには、有効性を欠く場合があり、侵食、穿孔、及び冠状動脈血栓症のリスクがある。エッジ・トゥ・エッジ修復(edge‐to‐edge repair)が技術的に要求される可能性があり、長期の耐久性に欠ける場合がある。個別の弁の不全に応じて、異なる修復技術を組み合わせる必要があり、手術がさらに複雑になり、その有効性を制限することがある。
【0007】
対照的に、心臓弁置換術は、特定の利点を提供し、心臓弁修復に関連するリスクを制限し、さらに広い範囲の患者に適応する。しかし、心臓弁置換術を観血的手術によって実施する解決法は、患者に重大なリスクをもたらす。このため、侵襲性の低い経皮的心臓弁置換術が必要とされている。
【0008】
既存の経皮的な解決法には、経皮的に挿入された心臓弁人工装具を記載している特許文献1(米国特許第7,621,948号明細書)が挙げられる。この人工装具は、移植位置に送達するためにカテーテル内で折り畳むことができる。別の経皮的な解決法は、特許文献2(米国特許出願公開第2013/0144378号明細書)に記載されているCardiAQ Valve Technologies,Inc.から入手可能である。他の経皮的人工弁には、Neovasc Tiara、Valtech Cardiovalve、ValveXchange、Lutter Valveのほか、Medtronic、Inc.及びEdwards Lifesciences Corporationの弁が挙げられる。
【0009】
経皮的な心臓弁の置換を提供するには、送達のためにカテーテル内に折り畳まれ、移植部位に適切に適合して弁としての機能を果たすためにカテーテルから出現し得る移植片の提供が課題となっている。このため、移植弁は、カテーテル内に折り畳まれるのに充分なほど小さくなければならないが、移植に際して、心室流を妨害するほど大きくはなく、弁の機能を提供するのに充分なほど大きくなければならない。
【0010】
さらに、移植部位は、不規則な形状を形成したり、弁を固定するカルシウムが不足していたり、あるいは移植弁を適切な向きに固定するのを困難にしたりする可能性があるため、心臓弁移植片を移植部位に固定することは課題が多い。
【0011】
さらに、移植の長年にわたる外科的方法及び大動脈弁人工装具の設計は、過去数十年にわたって安全で信頼性が高いものであることを示してきたが、このような人工装具の設計及び外科的方法と同一のものを僧帽弁置換へ移行させることは、安全性と信頼性の両面できわめて不充分なものである。
【0012】
この障害の理由は単純なものである。大動脈弁と僧帽弁は、多くの実質的な点で異なるということである。例えば、手術可能な患者の体内では、大動脈弁は、剛性が高めの石灰化組織からなるのに対し、僧帽弁は、心臓周期全体にわたってある程度まで拡張及び収縮する筋肉組織からなる。この一見無害な差は、大動脈人工装具が僧帽弁領域で機能しなくなるいくつかの原因のうちの1つである。即ち、大動脈人工装具は、半径方向の圧力に依存して特定の位置に「圧力嵌め」することができる。しかし、僧帽弁は、大動脈領域での係合の手段として径方向の圧力に追随するのに必要な剛性と、大きさの一貫性に欠けている。
【0013】
特定の心臓手術では人工装具を確実に固定するための径方向の圧力が有効ではないことはこのほか、そのような手術の侵襲性を暗示するものであった。例えば、特定の固定方法と、縫合に依存するあらゆる方法の場合、固定装置又は縫合糸を緊張させる必要があることにより、手術が他の方法で必要とされるよりもはるかに侵襲的であることを一般に必要としてきた。その理由は単純である。外科医が、使用されるアンカー又は縫合糸を手動で緊張させるために、人工装具にいっそう直接的にアクセスすることを必要とすることになるからである。
【0014】
人工装具に関連する心臓手術のもう一つのジレンマは、半径方向の圧力が適切な固定手段として役立たない状況が生じたときに、個々の心臓によって劇的に構造が異なることに起因するものである。例えば、僧帽弁を囲む内部組織と冠状静脈洞との間の距離、回旋動脈又は電気生理学的伝導系は、患者によって実質的に異なる。さらに、特定のアンカー又は縫合糸が人工装具を確実に固定するのに必要とする深さは、手術可能な組織とこのような脆弱な構造との間に存在しないことが多い。このジレンマによって引き起こされる潜在的な健康上のリスクは、この空間での現在の技術によって充分に対処されておらず、隣接する近くの心臓機能を損傷するリスクを冒さずに人工装具を一貫して固定するのに必要な展開深さを維持するであろう固定技術を想像することは困難である。
【0015】
上記の例は、心臓内の外科治療上の別の意義を持つものとして効果的に長年にわたって使用されてきた大動脈弁置換技術が使用できないことを強調するのに役立つ。侵襲性のレベルが上がることと、構造的に一貫性のないことが意味するものとに起因する欠点は、現在世界的に増加している心臓病患者に対して未だ解決されていない多くの問題のうちの2つである。しかし、このようなずれはいずれも、上記の構造的に一貫性のないことの欠陥を補うことのできる独自の固定技術によって克服することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第7,621,948号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0144378号明細書
【発明の概要】
【0017】
以下に説明する装置及び外科的方法論は、3つの主要な構成要素、即ち、展開機構、アンカー及び人工装具を有すると考えることができる。同時に、このような3つの特徴は、人工弁をヒトの心臓の軟組織に確実に到達させて固定するために使用され、その結果、人工装具は、心臓弁の不全又は狭窄などの疾病に対処することができる。TCAT(経カテーテル固定技術)アンカーは、人工装具を僧帽弁などの部位に固定する上記の構造的及び機能的な困難を克服するのに役立つのに対し、上記の独自の設計によって、薄型展開システムは手術の侵襲性が最小限になることを保証する。
【0018】
径方向の圧力が大動脈弁人工装具の固定のための実行可能な手段であることがわかっている場合、アンカーが、僧帽弁置換術での最も有効な固定方法として役立つことになる。アンカーの設計は、心臓内の人工装具の固定又は縫合に関連するさまざまな問題に対処するものである。先ず、張力構成要素が、アンカーの設計にて2つの目的を果たす。即ち、展開後にアンカーヘッド構成要素を遠位方向に引っ張ることにより、さらに確実に返しを設定することができ、さらに、心臓周期全体にわたって心臓が変動しているにもかかわらず、人工装具の心臓の組織への接触をさらに一定にする状態を維持することができる。これは、移植部位に人工装具を最も効果的に固定するために、他の固定技術又は縫合方法が張力を必要とする場合、アンカーがそれ自体に張力を付与することを意味する。これにより、患者への侵襲が非常に少ないレベルで手順を完了させることができ、回復時間を短縮し、有害な結果を最小限に抑えることが可能になる。
【0019】
さらに、アンカーの独自の設計、即ちその張力構成要素に関する設計は、特に僧帽弁置換術の場合に、弁置換手術に起因する困難の多くを克服し得る。即ち、この設計は、特にそのような組織が拡張及び収縮する場合に、人工装具と心臓の組織との間の一定した接触を促進するのにいっそう適している。アンカーの設計はこのほか、僧帽弁の周囲の組織を引っ張って人工装具と並置させることによって、人工装具の外側周囲周りを流れる血液に起因する健康上のリスクを低減するのにいっそう適している。言い換えれば、僧帽弁を取り囲む壁が心臓周期の間に拡張するとき、引っ張りバネ要素は、アンカーの返しを取り囲む軟組織への潜在的な損傷を最小限に抑えながら、生成されるであろう隙間を最小にするように、その外側への力に対抗することができる。
【0020】
以下に説明するアンカーは、この張力構成要素を適用する際に、人工弁への能動的な固定を提供する。例えば、ネジを使用する従来のアンカー装置が、軟組織内に適切に固定されないことになる。人工弁の能動的固定は、アンカーに一体的に形成された張力構成要素を有する、以下に説明するアンカーの独自設計の恩恵を受けて、アンカーが組織内に展開された後に介入なしに自発的な張力が生ずるのを可能にする。
【0021】
以下に、能動的固定(即ち、アンカー展開)を使用して弁を生来の心臓組織に固定する、規格に準拠した弁をさらに説明する。以下に説明する人工弁は、例えば、弁を構成するフレームの壁厚を変化させることによって、剛性を変化させてもよい。弁は、さらに剛性のある環状リングと、さらにいっそう剛性のあるリーフレット柱又は支柱の上方の流入側に適合してもよい。弁がその流入側で柔軟かつ可鍛性(展延性、malleable)である場合、人工装具が心臓弁の生来の組織に適用されると、人工装具は、その形状を生来の組織の形状に適合させて形成し得る。そのような可鍛性弁(展性のある弁、malleable valve)の利点には、弁の流入路をいっそう良好に密封し、人工装具内への組織の成長を向上させることができる点が挙げられる。さらに、いっそう剛性の高い環状セル及びリーフレット柱は、弁の疲労が最大である、弁の流出側での支持を強固にすることを可能にする。
【0022】
このため、本発明の例示的な実施形態によれば、人工弁装置を組織に固定するためのシステムが提供される。
【0023】
例示的な実施形態では、外科用アンカーが、組織に突き刺さり固定されるように構成される遠位端に向かって先細りになる遠位端と、近位ヘッドと、遠位端と近位ヘッドに一体的に接続される張力構成要素と、を具備する。張力構成要素は、遠位端が組織内に固定されているときに、近位ヘッドに力を付加するように構成される。
【0024】
張力構成要素は、遠位端及び近位ヘッドにオーバーモールドされるエラストマーを含んでもよい。張力構成要素はバネを備えてもよい。アンカーは、組織に係合し、近位方向の移動に抵抗するように構成されてもよい。張力構成要素は、展開されたアンカーの近位ヘッドに力を付加し、アンカーの近位ヘッドを遠位方向に付勢してもよい。近位ヘッドは非変形材料を含んでもよい。
【0025】
例示的な実施形態では、外科装置がアンカーを備える。このアンカーは、組織を突き刺して固定するように構成される遠位先端に向かって先細になる遠位端と、人工弁の対応するアンカー受容部の幅よりも大きい幅を有する近位ヘッドと、遠位端と近位ヘッドとの間の張力構成要素と、を備える。アンカーの遠位端は、展開装置によって、人工弁の対応するアンカー受容部を通して、人工弁に隣接する組織に打ち込まれるように構成され、さらに、展開されたアンカーの近位ヘッドの近位端が対応するアンカー受容部に並置されるように構成され、その結果、アンカーが組織内で展開された後、張力構成要素は、引っ張り力をアンカーの近位ヘッドに付加する引っ張り状態になり、人工弁のアンカー受容部に作用する近位ヘッドが人工弁を組織に接近させることになる。
【0026】
例示的な実施形態では、展開装置が、人工弁を格納状態で収容する空洞を覆う格納式シースと、複数の展開アームであって、各アームが外科用アンカーを収容する空洞を備える展開アームと、力伝達装置と、力伝達装置を展開アームに接続するシャフトと、を具備する。展開アームの各々は、展開装置の軸と一直線に並ぶ格納位置から、軸から放射状に離れるように方向付けられる展開位置に回転するように構成され、力伝達装置は、シャフト及び展開アームを通して力を付加して、展開アームの空洞から外科用アンカーを組織に打ち込むように構成される。
【0027】
力伝達装置は、バネ、膨張性ガス及び/又は圧縮流体のうちの少なくとも1つを具備してもよい。力伝達システムは、膨張性ガスを収容するキャニスタと、膨張性ガスの放出を制御するように構成されるソレノイドと、を具備してもよい。
【0028】
展開アームの各々は、シャフトを介して力伝達装置に連通するピンを備えてもよい。ピンは、力を力伝達装置から、展開アームの空洞に収容される外科用アンカーに伝達するように構成される。ピンは、アンカーを組織に打ち込むように構成されてもよい。人工弁は、格納式シースによって移植部位に送達されてもよい。人工弁装置は、格納式シースに挿入するために折り畳まれ、格納式シースが後退して人工弁を露出した後に自己拡張する。
【0029】
展開装置は、アンカーの展開前及びアンカーの展開中に人工弁を適切な位置に保持する少なくとも1つの人工装具グリップを備えてもよい。人工弁装置は、格納式シースによって移植部位に送達されてもよい。人工弁装置は、格納式シースに挿入するために折り畳まれ、格納式シースが後退して人工弁装置を露出した後に展開アームによって拡張可能である。人工弁は、アンカーの展開と同時に開放されるように構成されてもよい。アンカーに及ぼされる引っ張り駆動力及び押圧駆動力のいずれかは、展開アームからアンカーを打ち込んでもよい。
【0030】
例示的な実施形態では、人工弁が、複数のアンカー受容部と、人工弁の近位方向に配置される複数の流入セルであって、流入セルは可鍛性である、流入セルと、円形の流出路を形成する、人工弁の内側に配置される複数の環状セルであって、環状セルは流入セルよりも剛性が高い、環状セルと、環状セルと一体であり、人工弁の流出方向に環状セルを越えて遠位方向に延びる複数のリーフレット柱であって、リーフレット柱は環状セルよりも剛性が高い、リーフレット柱と、を具備する。
【0031】
複数の流入セルは遠位方向に放射状に延びてもよい。アンカー受容部の各々は、組織を突き刺して固定するように構成される遠位先端に向かって先細になる遠位端と、近位ヘッドと、遠位端と近位ヘッドとの間に配置される張力構成要素と、を備えるアンカーを受容するように構成されてもよい。アンカー受容部は、アンカーの遠位端がアンカー受容部を通って周囲組織内に通過できるようにするのに充分なほど大きく、近位ヘッドがアンカー受容部を通過するのを妨げるのに充分なほど小さく、その結果、アンカーの展開後、張力構成要素は、アンカー受容部及び組織に対抗して引っ張り状態に置かれ、人工弁を組織と並置させる。
【0032】
人工弁は、リーフレット柱間に接続される弁リーフレットと、織り被覆(woven covering)とをさらに具備してもよい。
【0033】
例示的な実施形態では、人工弁が、人工弁の近位方向に配置される複数の流入セルと、流入セルから放射状に延びる複数のリング支柱と、を具備する。リング支柱は、後退したときに人工弁に対して平らに置かれ、展開されたときに弁の流入セル周りにリングを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図2】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト及びバネアームの図。
図3】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図4】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図5】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図6】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図7】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図8】本発明の例示的な実施形態による、心臓弁置換人工装具、アプリケータシャフト、バネアーム及びドライバの図。
図9】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具の図。
図10】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具の図。
図11】本発明の例示的な実施形態によるアンカーの図。
図12】本発明の例示的な実施形態によるアンカーの図。
図13】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの図。
図14】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図15】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図16】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図17】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図18】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図19】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの図。
図20】本発明の例示的な実施形態による心臓弁置換人工装具のドライバの断面図。
図21A】緩和状態のTCATアンカー2101の「ボールソケットの実施形態」の断面図であり、構成要素として、アンカーキャップ2102、アンカーキャップスイベル2103、引っ張りバネ2104及びアンカーヘッド2106を示す。個々の返し(barb)105も示される。
図21B図21Aと同一の実施形態の断面図ではない図。
図21C図21Aの等角投影図。
図21D】組み立てる前であるかのように、TCATアンカー2101の構成要素を個々に示す「ボールソケットの実施形態」の分解図。
図22A】引っ張り状態のTCATアンカー2101の「ボールソケットの実施形態」の断面図であり、構成要素として、アンカーキャップ2102、アンカーキャップスイベル2103、引っ張りバネ2104、3つの返し2105及びアンカーヘッド2106を示す。
図22B図22Aと同じ実施形態及び引っ張り状態のTCATアンカー2101の図。
図22C図22Aの等角投影図。
図22D図22Aの分解図。
図23A】弛緩位置にあるTCATアンカー2310の「角度の付いた」実施形態の断面図であり、構成要素として、参照符号の付与された、アンカーヘッド2106、アンカーキャップ2312、アンカーキャップスイベル2313、引っ張りバネ2104及び返し2105を示す。
図23B図23Bは、図23Aに記載のものと同一の実施形態の従来のデモンストレーションを示す図。
図23C図23Aに示されるようなTCATアンカー2310の等角投影図。
図23D】弛緩状態の引っ張りバネ2104とともに、TCATアンカー2310の個々の構成要素を示す図。
図24A】参照符号の付与された、引っ張り状態の引っ張りバネ2104と、アンカーヘッド2106、アンカーキャップ2312、アンカーキャップスイベル2313及び返し2105とともに、TCATアンカー2310の「角度の付いた」実施形態を示す断面図。
図24B】従来通りに示された図24Aと同一のTCATアンカー2310の図。
図24C図24Aとは別のTCATアンカー2310の斜視図。
図24D図24Aの分解図。
図25A】TCAT展開機構100の断面図であり、構成要素として時計回りに、再装填ノブ109、ノブ保持リング105、カム101、可動カテーテル112、トルク可動カテーテルヘッド113、プッシャワイヤ108、ハンドル104、展開圧縮バネ102、ラッチベース107、解除ボタン圧縮バネ103及び解除ボタン110を示す。
図25B】TCAT展開機構100の従来例の図。この図では、再装填ノブ109、可動カテーテルアセンブリ112、トルク可動カテーテルヘッド113、ハンドル104及び解除ボタン110のみが示される。
図25C】組み立て前のTCAT展開機構100の構成要素に特化したレンダリングであり、以下の構成要素には参照符号が付与されている。TCATアンカー2101、可動カテーテルアセンブリ112、プッシャワイヤ108、展開圧縮バネ102、ラッチベース107、ラッチ106、解除ボタン圧縮バネ103、ネジ111、解除ボタン110、カム101、再装填ノブ109、ノブ保持リング105、ハンドル104及びトルク可動カテーテルヘッド113。
図26A】弛緩状態のTCATアンカー2620の標準図であり、アンカーヘッド2106、返し2105、引っ張りバネ2104及びアンカーキャップスイベル2103を強調する。
図26B図26AのTCATアンカー2620を引っ張り状態にした図。
図27A】小穴2701を備えた人工装具2700の図であり、単一のTCATアンカー2620が引っ張り状態になっていることを特徴とする。
図27B】小穴2701を有する人工装具2700の図であり、単一のTCATアンカー2620がその弛緩状態にある。
図27C図27Aの断面図。Xは、人工装具2700が僧帽弁置換術で使用されている場合などの組織の領域を示すために使用される。
図28A】「3個のアンカー」の実施形態であるTCAT展開機構2800と、記載されたTCATアンカー2620、展開アーム2805、人工装具ホルダ2802及びハンドル2804を備える人工装具2700との構成要素に特化した「分解」図。
図28B図28Aの断面図。
図28C】人工装具2700を保持するTCAT展開機構2800の近位端の詳細断面図。TCATアンカー2620、人工装具ホルダ2802、人工装具グリップ2803及びプッシャワイヤ2808がそれぞれ示される。
図29A】「分解」形式のTCAT展開機構2900の「7個のアンカー」の実施形態を示す図。解除ロッド2906、人工装具2700、TCATアンカー2620、解除ラッチ2905、人工装具ホルダ2902及びハンドル2904の各々が特定される。
図29B図29Aの断面図。
図29C】人工装具2700に係合するTCAT展開機構2900の近位端の詳細断面図。プッシャワイヤ2908、TCATアンカー2620、解除ロッド2906及び解除ラッチ2905に番号が付与される。
図30A図30Aは、組み立て前であるかのように示されている、「作動前」のTCAT展開機構3000の構成要素に特化した図である。
図30B図30Aの装置の断面図。
図30C図30Aの代替図。
図30D図30Aと同一の実施形態の2つの異なる図。
図31A】組み立て前であるかのように示された「再起動可能な」TCAT展開機構3100の構成要素に特化した図。
図31B図31Aの装置の断面図。
図31C図31Aの装置の標準図。
図31D図31Aの装置を異なる視点から見た図。
図32A】本発明の例示的な実施形態による、人工弁のためのフレームの図。
図32B】本発明の例示的な実施形態による人工弁の図。
図32C】本発明の例示的な実施形態による、人工弁でのアンカー受容部の図。
図33A】本発明の例示的な実施形態によるTCATアンカーの図。
図33B図33AのTCATアンカーの近位端からの軸方向図。
図33C図33AのTCATアンカーの断面図。
図34A】本発明の例示的な実施形態による人工弁送達システムの図。
図34B】アンカー展開前の図34Aの人工弁送達システムの図。
図34C】アンカー展開後の図34Aの人工弁送達システムの図。
図34D】格納式シースを後退させる前の図34Aの人工弁送達システムの図。
図34E】格納式シースを後退させた後の図34Aの人工弁送達システムの図。
図35】本発明の例示的な実施形態による、人工弁用フレームの図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下でさらに詳細に説明するように、本発明の例示的な実施形態が、人工装具をヒトの心臓の組織に固定するために、独自のカテーテルベースの送達機構によって、特別に設計されたTCATアンカーの有効かつ確実な展開を可能にする。
【0036】
図1は、例示的な実施形態では弾性であり得るリング10を有する心臓弁置換人工装具1を示す。図1は、アプリケータシャフト21及びバネアーム22を有するアプリケータ20をさらに示す。バネアーム22は、アプリケータシャフト21の遠位端に固定されてもよく、アプリケータシャフト21の遠位端を置換人工装具1のリング10に接続されてもよい。図1は、以下でさらに詳細に説明するように、ドライバ40をさらに示す。
【0037】
一般に理解されるように、例えば、本明細書に完全に開示されているかのように参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,621,948号に記載されるように、本発明の置換人工装具1は、最初に置換人工装具1を、カテーテルの空洞内に嵌合するように、圧潰位置又は折り畳み位置に圧潰することによって移植部位に送達してもよい。圧潰されるか折り畳まれた人工装具を備えるカテーテルは、移植部位へ経皮的に前進させられる。カテーテルの遠位端が移植部位に隣接すると同時に、圧潰した人工装具は、カテーテルの遠位端を通って押されるか押し込まれ得る。
【0038】
心臓弁置換人工装具1は、図1図10に示すように、圧潰した人工装具がカテーテルの遠位端から現れると、リング10が非圧潰形態又は拡張形態に弾性的に戻るように、変形可能なプラスチック又はニチノールなどの柔軟な弾性材料で形成されてもよい。リング10を備える人工装具1は、移植部位内で操作され得る。ここで、この人工装具は移植部位内の所定の位置に押し込まれ得る。
【0039】
図1図10にさらに示すように、リング10は、本発明の例示的な実施形態では、不規則な形状(例えば、非円形)であり得る移植部位の形状に適合させられ得る。図1図10に示す例示的な実施形態では、リング10は、非円形の不規則な形状に形成される。このようにして、本発明の心臓弁置換人工装具は、さまざまな心臓弁障害に対処するために、さまざまな移植部位に適合させることができる。
【0040】
図2に示すように、心臓弁置換人工装具1は、弁機能を果たすリーフレット30をさらに備える。リーフレット30は、リング10に接続され、弁支柱31によって適切な位置にさらに保持される。リーフレット30は、第1の流体流れ方向の流体の流れを防止し、第2の流体流れ方向の流体の流れを可能にするように構成される。
【0041】
図2図8は、置換人工装具1の移植部位の組織への固定の例示的な実施形態を示す。
【0042】
図2に示すように、置換人工装具1は、リング10がほぼ完全に拡張された形態で、カテーテルから拡張される。アプリケータシャフト21は、リング10の近位方向から遠位側に延びる。バネアーム22は、アプリケータシャフト21の遠位端に接続され、その結果、アプリケータシャフト21の遠位端は、バネアーム22によってアプリケータシャフト21の軸周りに形成される円錐形状の頂点を形成する。アプリケータシャフト21は、移植部位に送達されると同時に、アプリケータシャフト21を近位方向に引っ張ることによってリング10を移植部位の組織内に押し込むために使用されてもよく、その結果、近位方向の力がバネアーム22に伝達され、次にリング10に対して近位方向及び半径方向に力を加える。バネアームは、バネ又はバネ状リボンのようなバネ要素23を備えるため、各バネアームは、他のバネアームとは無関係に力を吸収するために可撓性である。このようにして、リング10は、任意の移植組織の形状に合致するように不規則な形状を達成することがさらに可能である。図2図8は、さまざまな程度まで延伸するか圧縮されるさまざまなバネアーム22を示す。
【0043】
図3に示すように、ドライバ40は、人工装具1が移植部位の適所に配置されると同時に、作動してリング10を移植部位の組織に固定してもよい。ドライバ40は、アンカー出口42を有する発射アーム41と、ガイド43とを備える。ドライバ40は、アプリケータシャフト21に沿って摺動するか、さもなければ移動するように操作され得る。ガイド43及び発射アーム41は、図3に示すように、アプリケータシャフト21をはさんで両側に位置づけられる。
【0044】
図4に示すように、ドライバ40はアプリケータシャフト21の遠位端に移動し、アプリケータシャフト21はバネアーム22と接触する。
【0045】
図5に示すように、発射アーム41は、アプリケータシャフト21によって規定される軸に沿う位置から回転して、アプリケータシャフト21から半径方向に離れるように方向付けられた位置に至り、その結果、発射アームのアンカー出口42がリング10に向かうように方向付けられるように構成される。
【0046】
図6に示すように、発射アーム41は、アンカー50を、アンカー出口42を通して打ち込むように構成されてもよい。アンカー50は、リング10を通って、移植部位の周囲組織内に打ち込まれ、リング10を移植部位の組織に固定するか締結してもよい。
【0047】
図7に示すように、アンカー50がリング10及び周囲の組織内に打ち込まれると同時に、発射アーム41を回転させて、アプリケータシャフト21によって規定された軸と沿う位置に戻し、その結果、図8に示すように、ドライバ40をアプリケータ20の遠位端から後退させてもよい。
【0048】
本発明の例示的な実施形態では、アンカー50の打ち込みは、アンカー50をリング10周りに打ち込むように、ドライバ40及び発射アーム41によって繰り返されてもよい。追加のアンカーがリング10及び周囲の組織内に押し込まれる位置に装填され得るように、複数のアンカー50をアンカーのカートリッジ又はトレイ内に装填してもよい。ドライバ40は、各アンカー50の打ち込みを、リング10の周囲の各バネアーム22の位置を指標としてもよい。代替案では、アプリケータシャフト21は、ドライバ40が各アンカー50の打ち込みの指標となり得る溝をはじめとするマーキングを有してもよい。
【0049】
図9に示すように、心臓弁置換人工装具1は、アプリケータ20、ドライバ40又はアンカー50がない状態で、単独で示される。
【0050】
図10は、ドライバ40がリング10の周囲への複数のアンカー50の打ち込みを完了した後、さらにアプリケータシャフト21及びバネアーム22を備えるアプリケータ20が引き抜かれた後の心臓弁置換人工装具1を示す。アプリケータ20を引き抜くために、アプリケータシャフト21は、遠位方向に移動して、バネアーム22をリング10の遠位側をさらに越えて延ばし、バネアーム22によって形成された円錐構造を圧潰してもよい。バネアーム22は、圧潰すると同時に、アプリケータシャフト21の引き抜きと共にリング10を通過することが可能になってもよく、その結果、アプリケータ20全体が移植部位から引き抜かれてもよい。
【0051】
アンカー50は、各々が本明細書に完全に開示されているかのようにその全体が参照により組み込まれる、2010年1月20日に出願された米国特許仮出願第61/296,868号、2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,766号、2013年3月14日に出願された米国特許出願第13/828,256号、2013年3月15日に出願された米国特許出願第13/843,930号、2014年6月10日に出願された米国特許出願第14/301,106号、2014年12月7日に出願された米国特許仮出願第62/088,680号及び2015年6月11日に出願された米国特許出願第14/737,408号に記載のアンカーのいずれかであってもよい。
【0052】
例えば、図11は、組織内に打ち込まれるように構成されるアンカー又は移植片200を示す。アンカー200は、波形本体201を備える。本体201は、本体201の長さに沿って軸方向に延びる溝203を備える。このため、複数の溝203が、本体201周りに円周方向に延びるとき、複数の隆起205と交互になる。さらに、アンカー本体201は、一対の翼部又は分割部分207及び208を備える。分割部分207及び208は、それぞれの割れ目又は切れ目209によって本体201内に形成される。この点に関して、割れ目209は、本体201の中に半径方向に切り込みを入れ、軸方向に延びることによって、形成されてもよい。このため、2つの分割部分207及び208は、遠位位置で本体201の残りの部分に取り付けられ、自由端に向かって延びる。自由端は、曲面に沿って複数の鋭い突出部を備える。このような点は波形のために形成される。特に、隆起205は、図11の差し込み部分側面図に示すように、組織を把持してアンカー200の遠位方向の摺動を防止するのに有利な鋭い突出部を形成する。各分割部分207及び208は、図示のように3つのそのような突出部を備えるが、アンカー200は、1つ以上の分割部分が単一の鋭い突出部を備える任意の他の数の突出部を有するように設計されてもよいことに留意されたい。例えば、さらに多くの鋭い突出部が望まれる場合、本体201は、さらに高密度に波形に形成され得る(即ち、さらに多くの溝203及び隆起205を交互に設け得る)、及び/又は切れ目又は薄片の角度が調整され得る。さらに、突出部の近位側延長部の長さは、隆起205に対する溝203の深さを変化させることによって調節してもよい。
【0053】
分割部分207及び208は、組織への遠位方向の挿入を実質的に妨げないが、組織と係合することによって挿入位置からの近位方向の移動に抵抗する。分割部分207及び208の尖った近位端及び/又は鋭利な近位端と、分割部分の近位端の交互の隆起とを組み合わせることにより、性能が改善されることがわかった。
【0054】
さらに、分割部分又は翼部207及び208は、互いから軸方向にオフセットされる。例えば、分割部分207は、軸xxに沿った位置に軸方向に配置され、分割部分208は、軸xxに沿った位置bに軸方向に配置される。これにより、非オフセット構成と比較して、本体201の他の部分の構造強度を大きくすることができる。特に、切れ目は遠位方向に進むにつれて連続的に半径方向内向きに進行するため、非オフセット部分では、切れ目の遠位端での断面にて実質的に材料の量が減少するであろう。これにより、本体の軸に沿った点又は領域が機械的に脆弱になり、特に寸法の小さいアンカーでは、機械的に故障する可能性がある。アンカー200は、アンカー200を組織から近位方向に引き込む動きに抗して固定するために一対の翼部207及び208を利用しているが、任意の数の翼部を設けてもよく、翼部207及び208の代わりに、あるいはそれに加えて、(少なくとも1つの)任意の他の適切な固定構造、例えば、固定用フィラメントを設けてもよい。
【0055】
アンカー200の遠位先端は、ピラミッド型であり、尖った先と、尖った先に収束する縁によって分離された複数の面とを有する。4つの平坦面が設けられているが、任意の適切な数の表面を設けてもよく、1つ以上の表面又は全表面が非平坦であってもよいことが理解されるべきである。
【0056】
アンカー200は、翼部207、208の本体201との接点によって形成されるか、さもなければ翼部207、208が遠位端から近位方向及び半径方向外側に延びるか、遠位端に遠位方向に延びるアンカー200のエリアによって形成される1つ以上の肩部を備えてもよい。図11に示すように、翼部207、208は、弛緩した非圧縮位置を有するが、本体201に接近して第2の圧縮位置に圧縮してもよい。さらに、本体201は、近位端に及ぼされる力が翼部207、208及び遠位端に対する本体又はステム201の位置に影響を及ぼす可能性があるように、可撓性であってもよい。
【0057】
アンカー200は、例えば、射出成形又は押出し成形によって本体201を先ず波形に形成し、その後に、例えば、本体201の側面に半径方向に切れ目を入れることによって分割部分207及び208を形成することによって製造されてもよい。図示のように、近位の最初の切り込み位置からアンカー200の遠位端に向かって徐々に減少し、最終的には線形になる本体201の長手方向軸xxに対する(近位入口点での)角度で湾曲する。図示の例の割れ目又は切れ目は、本体201の長手方向軸xxに対して湾曲するかさまざまな角度で作成されるが、線形切れ目を含む任意の適切な切れ目が作成されてもよいことを理解されたい。
【0058】
アンカー200は、本体201の径方向の周囲に等間隔に配置された2つの翼部又は分割部分を備えるが、単一の分割部分を含む任意の数の分割部分が、アンカー200の径方向の周囲に任意の適切な間隔を置いて設けられてもよい。
【0059】
最新の製造プロセスは、ナノテクノロジーに近い用途に適応している。これにより、アンカーを、過去数年間には可能ではなかったような大きさと複雑さで製造することが可能になる。アンカー200は、吸収性又は非吸収性のいずれかのポリマーの射出成形により形成され、その後、翼部207及び208の特徴を付加するために(例えば、切断によって)加工されてもよい。アンカー200はポリマーで形成されるが、例えば金属又は複合材料などの適切な材料を使用してもよい。アンカー200は、例えば1ミリメートル又は約1ミリメートルの直径と、例えば5~10ミリメートルの範囲内の長さとを有してもよい。いくつかの例示的な実施形態によれば、直径は1ミリメートル未満である。いくつかの例示的な実施形態によれば、直径は0.8~1.2ミリメートルの範囲である。しかし、他の寸法が提供されてもよいことが理解されるべきである。
【0060】
本発明の例示的な実施形態では、図12に示すアンカー4200が説明される。アンカー4200は、遠位先端4230と、遠位先端4230の基部から近位方向に延びるステム4201とを備える。ステム4201は、遠位先端4230の基部を肩部4240で接合する。翼部又は返し4207、4208は、遠位先端4230の基部から近位方向に延び、ある程度半径方向に延び、肩部4240で遠位先端4230の基部に接合する。返し4207、4208は、遠位先端4230から自由端に近位方向及び半径方向に延びる。自由端は、図12に示すように、半径方向外側にさらに広がってもよい。上記の翼部又は分割部分207、208とは異なり、翼部又は返し4207、4208は、アンカーの本体への切れ目又は割れ目から形成されないため、ステム4201の厚さは、返し4207、4208の包含によって影響を受けない可能性がある。翼部又は返し4207、4208は、図12に示す弛緩された非圧縮位置を有してもよい。非圧縮位置では、返し4207、4208は付勢されず、返し開口Wを有する。返し4207、4208は、ステム4201にさらに近づくように圧縮されてもよい。圧縮が大きいほど、返しがステムに接近するように、さまざまな量の圧縮を返しに適用してもよい。返し4207、4208は、アンカーが展開されると同時に組織と係合するように、返しの自由端に突出部を備えてもよい。2つの返し4207、4208が示されているが、任意の数の返しが設けられてもよいことを理解されたい。同じように、1つの鋭い突出部を含む任意の数の突出部を返しの自由端に設けてもよい。
【0061】
ステム4201は、返し4207、4208及び遠位先端4230に対して可撓性であり、湾曲又は撓曲できるものであってもよい。硬質又は剛性のステムを有するアンカーと比較して、可撓性ステムは、一旦組織内に配置されると、アンカー4200に作用する力の異なるプロファイルを提供する。返し及び遠位先端に対して屈曲可能な可撓性シャフトが、アンカーのこのような構成要素の間に一体成形ヒンジを形成する。アンカーにその近位端から作用する力は、可撓性ステムによって少なくとも部分的に吸収され、その結果、アンカーの翼部又は返しに対するこのような力の影響が低減され得る。特定の組織環境では、可撓性シャフトがアンカーによるレバー作用を防止する可能性がいっそう高くなり、これにより、アンカーが部分的又は全体的に組織から引き抜かれることを防止する可能性がある。
【0062】
さらに、アンカー50、200、4200は、各々が本明細書に完全に開示されているかのようにその全体が参照により組み込まれ、2010年1月20日に出願された米国仮特許出願第61/296,868号、2011年1月20日に出願された米国特許出願第13/010,766号及び2014年6月10日に出願された米国特許出願第14/301,106号に開示される締結具をはじめとする類似する移植片の特徴のいずれかを備え、開示される任意の機構を用いて打ち込まれてもよい。
【0063】
アンカーを発射するために、力伝達システムをドライバの近位端に配置してもよい。力伝達システムは、バネ、ガス、圧縮流体などのほぼ瞬間的に力を伝達する任意の機構を使用してもよい。力は、適用例に応じて、剛性シャフト又は可撓性シャフトであり得るドライバのシャフトを介して伝達される。この力は、シャフトの遠位端の発射機構を移動させるのに使用され、アンカーに駆動力を及ぼしてアンカーを発射アームから人工弁及び周囲組織に打ち込む。駆動力は、ドライバの遠位方向に力を向ける押し込み力伝達システム、あるいは適用例に応じてドライバの近位方向に力を向ける引っ張り力伝達システムから生じ得る。
【0064】
本発明の例示的な実施形態では、図13図20に示すように、アプリケータ周りに複数の発射アームを設けてもよい。図13及び図14は、管状ガイド63周りに環状に配置された複数の発射アーム61を遠位端に有するドライバ60を示す。ガイド63は、ガイド43とほぼ同じようにアプリケータシャフトを取り囲んでもよい。発射アーム61は、ドライバに対して後退した位置にあり、ドライバの軸に平行である。図14はこのほか、発射アーム61に設けられたアンカー4200を示す。窓64は、アンカー出口からリング10及び周囲組織内に打ち込まれる前の弛緩位置にある発射アーム61に返し4207、4208を格納することを可能にする。
【0065】
図15及び図16は、発射アームが格納位置から発射位置に移動したドライバ60を示す。図13及び図14の格納位置から図15及び図16の発射位置への発射アームの移動は、例えば、ネジ又は摺動機構をはじめとする任意の機械的操作による並進力を手動によって作動させるか電気的に作動させることによって達成されてもよい。発射アーム61は、ヒンジに近接する位置及びドライバ60の遠位端から放射状に外側に開くように、ドライバ60の遠位端にてこのドライバにヒンジ止めされる。発射アームの発射位置は、ドライバ60の軸からの90度未満の角度に置かれてもよい。発射アーム61が鋭角に置かれると、傾斜したアンカーをリング10及び周囲組織へ送達することを可能にし、このため、周囲組織でのアンカーの配置をさらに高度に制御可能にする。
【0066】
図16に示すように、発射アーム61は発射機構65及びフィンガ66を備え、アンカー4200を、アンカー出口62を通して打ち込む。ガイド63は発射機構65及びフィンガ66に接続されているため、ガイドに近位方向又は引っ張り方向の力を付加することは、発射機構65及びフィンガ66に近位方向に付加される力に変換されることになる。フィンガ66は、アンカー4200の肩部4240に当接し、引っ張り力をガイド63及び発射機構65からアンカー4200に伝達してもよい。
【0067】
図17図18図19及び図20は、アンカー4200の発射を示す。アンカー4200は、近位方向又は引っ張り方向の力を付加することによって発射され、ガイド63をドライバ60に対して近位方向に引っ張る。図17及び図18に示すように、ガイド63は、発射アーム61のヒンジ付き端部とほぼ同じ高さになるように引き込まれ、図19及び図20に示すように、ガイド63は、発射アーム61のヒンジ付き端部に対して窪んだ位置に引き込まれる。ガイド63を引き抜く近位方向の力は、発射機構65に伝達され、次にフィンガ66に伝達され、フィンガ66は、アンカー4200の肩部4240に駆動力を伝達し、アンカー出口62を通してアンカー4200をリング10及び周囲組織に打ち込む。このようにして、発射アーム61のいずれもが同時にアンカー4200を発射してもよい。
【0068】
図21A図22Dは、TCATアンカー2101の「ボールソケット」型のものを示す。ここで、図21A図21Dは、弛緩状態の引っ張りバネ2104を示し、図22A図22Dは引っ張り状態の引っ張りバネ2104を示す。このような図では、TCATアンカー2101は同一の設計であり、圧縮の代替状態を示しているにすぎないことに注目すべきである。図23A図24Dは、TCATアンカー10の「角度付き」型のものを示す。ここで、図23A図23Dは弛緩状態の引っ張りバネ2104を示し、図24A図24Dは引っ張り状態の引っ張りバネ2104を示す。ここでも、図23A図23D及び図24A図24Dはいずれも、同じ設計であるが代替状態にあるTCATアンカー2310を示す。TCATアンカー2101及び2310は異なる実施形態であるが、特徴(即ち、アンカーヘッド2106、返し2105及びバネ2104)に目を向けると、両者の構成は同一である。
【0069】
図26A及び図26Bは、適切に利用するには図27A図27Cの人工装具2700と共に使用することを必要とするであろうことから、以後、「ボールヘッド」構成と呼ばれる、圧縮状態と引っ張り状態それぞれのTCATアンカー2620の第3の実施形態を提供する。この型のものは、図21A図21D及び図22A図22Dのように、TCATアンカー2620がアンカーキャップ2102を欠いているという点で、「ボールソケット」構成とわずかに異なるにすぎない。人工装具2700は、TCATアンカー2620を受容するように設計された小穴2701を特徴とし、アンカーキャップスイベル2103は、任意の数のさまざまな展開角度で小穴内に堅固に嵌合することになる。この実施形態では、展開後に引っ張りバネ2104によって及ぼされる力は、アンカーキャップスイベル2103を人工装具の小穴2701内に堅固に保持する働きをすることになる。
【0070】
TCATアンカー2101又は2310は、1つの独立したTCATアンカーを形成するために一緒に組み立てられ得る4つの個別に成形された構成要素として製造されてもよい。このような構成要素は、例示的な実施形態では、ポリプロピレンをはじめとする何らかのポリマーから成形されてもよい。しかし、引っ張りバネ2104の構成要素は、金属系材料から構成されてもよい。図21Aに示唆されるように、装置の一実施形態は、アンカーヘッド2106のネジ山付き遠位部分周りに引っ張りバネ2104の近位端を単に回転させ、アンカーキャップスイベル2103のネジ山付き近位部分周りに引っ張りバネ2104の遠位端を装着することによって組み立てられ得る。この実施形態では、構成要素の間に圧力嵌めが用いられなかった場合、アンカーキャップ2102が、例えば接着剤をはじめとする何らかの固定手段を必要とする可能性も否定できない。アンカーキャップ2102及びアンカーキャップスイベル2103は、さらに単純化されたTCATアンカー構成の単一要素として成形される可能性も否定できない。これに対して、この実施形態は、4つの個々の構成要素が堅固に保持されることを保証するために、バネ2104のコイルの張力によって生成される力のみを必要とするであろう。TCATアンカー2620は、アンカーキャップ2102の構成要素がなくても、同じ方法で製造され組み立てられ得る。
【0071】
TCAT展開機構100は、図25A図25Cに示すように、図25Cの構成要素に特化した表示で示唆したものと同じように構成され得る。この場合もまた、構成要素は、バネ及びネジの構成要素の場合には、ポリマー材料又はステンレス鋼から成形されてもよい。ハンドル104のいずれかの端部にあるノブ保持リング105は、部分的に圧潰可能であり、可動カテーテルアセンブリ112の遠位端及び再装填ノブ109の近位端の定位置に固定可能である。次に、ノブ保持リング105は、部分的に圧潰してハンドル104内に挿入されるためにある程度の内圧を必要とする。ここで、ノブ保持リングは、所定の位置に配置されるときに内向きの力がない場合、ハンドル104の内部の対応する溝内に拡張するであろう。ノブ保持リングは、拡張すると、ハンドル104が可動カテーテルアセンブリ112及び再装填ノブ109に堅固に取り付けられた状態を維持することを確実にするであろう。構成要素の大部分が同じように組み立てられ得る。ここでは、再装填ノブ109の内部の対応するラッチがカム101の近位端の外側の係止溝にねじ込まれる。同じようなロック機構が、カム101をラッチベース107に接続するほか、ラッチベース107を解除ボタン110に接続する機能を果たし得る。この実施形態では、ネジ111がラッチ106をラッチベース107に固定するのに必要となるであろうが、さもなければ、上記のように、自己固定要素が装置を組み立てる主な手段となり得る。
【0072】
図25A図28A及び図29AのTCAT展開機構と、図21A図23A及び図26AのTCATアンカーをいずれも以下で説明する。TCAT展開機構100は、柔軟な実施形態であり、「ボールソケット」構成、「角度の付いた」構成及び「ソケット」構成それぞれで利用することができる。このような特定の例は概念的に包括的であると解釈されるべきではなく、むしろ、このような例に含まれる材料の任意の組み合わせ又は再編成が開示されたものと考えるべきである。
【0073】
このため、図25A図25B及び図25Cに示すTCAT展開機構100の実施形態は、TCATアンカー2101によって人工心臓をヒトの心臓の組織に堅固に固定するために利用されてもよい。一旦人工装具が心臓内に適切に配置されると、TCAT配置機構100は、経中隔的又は経大腿的に、さもなければ状況に応じて観測されてもよい。展開機構100は、この例示では直径が12フレンチである薄型可動カテーテル112を特徴とし、この可動カテーテルは、人工装具の部位に効果的に導入するために利用することができる。
【0074】
このカテーテル112は、TCATアンカー2101を、受容的固定部位を特徴とする人工装具と一直線に並ばせ、一直線に並ぶと同時にTCAT展開機構100を解除ボタン110によって発射するために、動脈、静脈又は切開部を通して誘導されてもよい。この構成では、解除ボタン110を押すと、その力をラッチ106に移行させる解除ボタン圧縮バネ103によって展開圧縮バネ102の迅速な減圧が開始され、これにより展開圧縮バネ102がその圧縮状態から解放される。圧縮バネ102の急速な膨張によって付加される力は、カム101に作用し、次にプッシャワイヤ108を、カテーテル112の現在の湾曲を維持する近位方向に駆動して、さらにその駆動力を発射部位のTCATアンカー2101に送達する。
【0075】
図21Aに示すように、この型のTCATアンカー2101は、展開前にプッシャワイヤ108を収容するように設計された、一直線に並ぶ中空セグメントを有するアンカー2101、アンカーキャップ2102及びアンカーキャップスイベル2103を特徴とする。また、図21Aの引っ張りバネ2104は、バネであるという性質上中空であり、必ずしも同一直径の内部管を有する必要はないにもかかわらず、プッシャワイヤ108が通過することができる。発射プロセスは、プッシャワイヤ108が近位方向の駆動力をTCATアンカー2101に送達すると終了する。プッシャワイヤ108の近位方向の力がTCATアンカー2101をその所望の深さに打ち込んだ後、プッシャワイヤ108はTCATアンカー2101から引き抜かれ、引っ張りバネ2104は、対抗する力がアンカーキャップ2102及びアンカーキャップスイベル2103に近位方向に付加されるように、アンカー2101を遠位方向に引っ張る。このように力が対向した結果、次の2つの要素が生じる。アンカー2101の引き込みにより、その返し2105が心臓の軟組織内に堅固に設定され、その上、アンカーキャップ2102及びアンカーキャップスイベル2103は人工装具と同一平面上に引っ張られ、即ち、人工装具の内部プロファイル内の妨害位置が確実に排除される。
【0076】
TCAT配置機構100は、移植される人工装具を最も確実に固定するのに必要な数のTCATアンカー2101を発射するために使用されてもよい。この実施形態では、TCAT展開機構100は、アンカーを簡単に再装填し、展開圧縮バネ102を復元することによって、連続発射のために準備することができる。装置は、再装填ノブ109を回すことによって再装填される。このとき、円運動が内部に取り付けられたカム101を回動させる。カム101の円運動は、そのカムの角度の付いた外側の溝によって、展開圧縮バネを圧縮状態に戻す。このような溝は、装置のカム101部分が再装填ノブ109から遠位方向に離れるようにする。この設計により、1つのTCATアンカー2101の展開の後、TCAT展開機構が、新たなTCATアンカー2101を再装填し、第2の展開のための装置を準備するために再装填ノブ109を数回ねじりさえすればよいということが保証される。
【0077】
図28A図28C及び図29A図29Cにそれぞれ示されるTCAT展開機構2800及び2900の2つの別々の実施形態は、人工装具2700が適所に保持されている間に複数のTCATアンカー2620を発射するために上記と同一の発射シーケンスを利用する。このような実施形態は、経中隔処置にて使用されてもよく、固定プロセスでの特定の変数を排除するのに役立つであろう。このような連結形態、TCAT展開機構2800及び2900の主な利点には、人工装具を1つの装置によって適所に設定し、保持し、固定し得るということが挙げられる。即ち、図28Cに記載されるように、TCAT展開機構2800は、人工装具ホルダ2802に人工装具グリップ2803を用いて、人工装具2700をアンカー展開の前及びアンカー展開の間に定位置に堅固に保持するであろう。これは、人工装具2700が展開プロセス全体を通じて目標位置に留まることをさらに確実にする。この展開プロセスは、個々又は複数のアンカー展開からなる任意のシーケンスから構成されてもよい。
【0078】
さらに、この設計は、僧帽弁と、移植される人工装具2700との間の大きさの相違に関する問題を克服するのに役立つものであり得る。例えば、僧帽弁が外側に弛緩しているか、大きさが拡張されているために、僧帽弁置換術を必要とする手術可能な患者の身体によくみられる問題である。実際には、弁をその理想的な大きさ及び構造に戻すために僧帽弁人工装具が必要とされ得るというのが、外科的介入が必要な主な理由の1つである。これは、最初の固定が人工装具を弁の1つの端部と並置させると同時に、必然的にその向かい側の固定部位からさらに引き離すことになるため、アンカーが個別に発射されるときに、固定技術に問題を生じさせることが知られていた。しかし、TCAT展開機構2800は、図29の実施形態のように、展開機構によって保持されている状態を維持している間に、TCATアンカーを人工装具内に発射することによってこのジレンマを回避する。この特徴により、外科医は、TCATアンカー2620を僧帽弁の1つの壁に発射し、さらに、次のTCATアンカー2620を展開する前に、人工装具を引っ張って向かい側の壁と並置させるために、解除ラッチ2905を介して人工装具を把持する状態を維持することができる。この方法の繰り返しは、人工装具が周辺組織と並置されている間に、人工装具を保持又は位置決めするための二次装置の助けを借りずに、各アンカーを発射することを可能にする。
【0079】
TCAT展開機構100について説明した初期発射シーケンスは、図28A図28C及び図29A図29Cで説明した実施形態では、近位方向の力がプッシャワイヤ108に移行する時点まで類似している可能性も否定できない。プッシャワイヤ108に付加される力は、例えば、人工装具ホルダ2802内の1つ以上の個々のプッシャワイヤ[ブランチ]2808上に移送されてもよい。そのようなプッシャワイヤ2808の各々は、先に説明した実施形態とほぼ同じように、さらには各アンカーが多数(図28Aでは3つ)の展開アーム2805のうちの1つに収容されている状態で、TCATアンカー2620内の受容部シリンダ内で終端する。展開アーム2805は、最初の展開後に人工装具を最も確実に固定するために、対向する角部に展開力を発生させるように角度を付けてもよく、これにより上記の展開の困難性を克服する。発射シーケンスはこのほか、一度に任意の数のアンカーを展開し、さまざまな角部のいずれかでそのようなアンカーを展開するように修正されてもよい。
【0080】
TCAT展開機構3000は、装置の「予め装填された」実施形態に従って、図30A図30Dに示される。この特定の設計の図解によれば、展開機構3000は、展開圧縮バネ102をアンカーの展開と展開の間に圧縮するための再装填ノブ109を必要としないであろう。代わりに、個々の展開圧縮バネ3003がプッシャ3007と接触して収容されるように、ハンドル3004を組み立てることができ、その結果、個々の展開圧縮バネ3002がボタン3011によって解放され、必要なシーケンスがどのようなものでも、発射と発射の間に装置を再装填することを必要とせずにさまざまなアンカーを発射することが可能になり得る。「予め装填された」装置の残りの構成要素は、「7個のアンカー」の実施形態の図29A図29Dに示されるものと同じように見える可能性も否定できない。即ち、人工装具2700は、解除ラッチ2905及び解除ロッド2906によって依然として固定されている可能性があり、人工装具ホルダ3002は、人工装具ホルダ2902と同じように、展開前に複数のプッシャワイヤ2908と、対応するTCATアンカー2620とを収容し得る。人工装具ホルダ3002は、その遠位端が複数のプッシャ3007を受容し、その展開力を内部プッシャワイヤ108に移行させるように設計される可能性もあるという点で従来の変形例とは異なってもよい。図30Aは、人工装具ホルダ3002をハンドル3004に固定するためにネジ3018を利用する構成を示す。上記の「予め装填した」例示的な実施形態は、外科医が全TCATアンカー2620を同一の装置に収容することを可能にし、展開と展開の間に装置を再装填することを必要としないようにすることによって、手術時間を短縮するのに役立つ可能性がある。
【0081】
TCAT展開機構3100は、図31A図31Dにてさまざまな視点から図示されており、それ自体は技術の別の構成を示すものであるが、図29A図29Dの「7個のアンカー」の展開機構2900の変形として考えることができる。これまでに挙げた図の場合のように、任意の複数のアンカーが利用される可能性があるが、図31A図31Dに示す「再装填可能」な実施形態もまた、7つのTCATアンカー2620を必要とする。「再装填可能」なTCAT展開機構3100は、展開圧縮バネ102がその力をカム3101に伝達する点までは、TCAT展開機構100とほぼ同じ初期発射シーケンスを有する。ここで、カム3101は、展開圧縮バネ102から複数のプッシャ3108(図31Aでは7つのプッシャ3108)のうちの1つに力を送達するように設計されてもよい。このようなプッシャ3108は、人工装具ホルダ3103に収容された対応するプッシャワイヤ2908のそれぞれと一直線に並ぶ可能性があり、発射シーケンスはここでも上記の展開機構2900の説明と一致する必要があるであろう。装置は、先に説明したように、再装填ノブ109をひねることによって再装填されるが、図31Bのインデックスラッチ3115を特徴とする点で他の設計にはないものである。カム3101はハンドル3104の内部に回転可能にキー止めされるため、インデックスラッチ3115をトリガして、ハンドル、ひいてはカム3101をプッシャ3108及び人工装具ホルダ3103に対して回転させることができる。この特徴により、装置3100のユーザが、自分の発射したいアンカーをさまざまなアンカーのうちから選択することができるようになるであろう。これは、場合によっては、インデックスラッチ3115を選択されたアンカーと一直線に並べることによって、あるいは、場合によっては、人工装具ホルダ3103上のマーキングと一直線に並べ得るハンドル上の何らかの表示マーキングによって実施される。アンカーの展開後、装置は、展開される次のTCATアンカー2620を選択するために、再装填ノブ109によって再装填され、その後、インデックスラッチ3115によって回転されるハンドルによって再装填され得る。
【0082】
図32Aは、一体型であり、自己拡張し、規格に準拠した経カテーテル弁であり得る人工弁のためのフレームを示す。フレーム3200は、流入セル3210、環状セル3220、増強強度環状セル3225、リーフレット柱又は弁支柱3230、アンカー受容部3240及び組織係合部材3250を備える。一実施形態では、フレーム3200は、最終的に人工弁とともに展開されることになる、フレームの「平坦化」型を示す。言い換えれば、フレーム3200は、円筒状に接続される前の人工弁のフレームを示す。流入セル3210は、円筒状に形成されると、人工弁の流入を受け入れる。環状セル3220は、人工弁からの流出を受け入れるであろうフレームのセルに対応する。リーフレット柱3230は、フレーム3200を適切な位置に保持するために設けられる。さらに、例示的な実施形態では、リーフレット柱3230はこのほか、人工弁のリングに接続されたリーフレットを適切な位置に保持する。(図示しない)弁リーフレットは、リーフレット柱3230に対向して配置され、その結果、第1の流体流れ方向に流れる流体が、リーフレット同士を互いに向かって付勢し、弁を閉じ、第1の流体流れ方向の流体の流れを妨げ、第2の流体流れ方向に流れる流体が、リーフレット同士を互いから離れる方向に付勢し、弁を開き、第2の流体流れ方向の流体の流れを可能にする。例示的な実施形態では、増強強度環状セル3225は、フレーム3200のリーフレット柱3230のうちの2つの間に配置される。さらに、各リーフレット柱3230は、対応するアンカー受容部3240と連動して、フレーム3200と、対応する人工弁とを周囲組織に固定する。環状セル3220の間と、増強強度環状セル3225の間と、リーフレット柱3230の間とに配置された組織係合部材3250が、フレーム3200を周囲組織に固定するためにさらに設けられる。一実施形態では、フレーム3200の要素は、1つ以上の形状記憶合金、例えば、ニチノール、バネ荷重鋼をはじめとする合金又は適切な特性を有する材料を含んでもよい。さらに、フレーム3200の要素は、エラストマー(例えば、熱可塑性ポリウレタン又は「TPU」)の薄い壁で覆われてもよい。別の実施形態では、フレーム3200は、増強強度環状セル3225なしで利用され、代わりに、各リーフレット柱3230の間の環状セル3220を利用するだけである可能性がある。
【0083】
図32Bは人工弁を示す。人工弁3205は、流入セル3210、環状セル3220、リーフレット柱3230、リング3260及びリング小穴3265を含む。一実施形態では、リング3260はリング10とほぼ同じものである。図32Bは、バルブ3205と、円筒状に接続された後のフレーム3200とを示す。例示的な実施形態では、流入セル3210は、円筒状に接続された後、遠位方向に放射状に延びる。さらに、一実施形態では、リーフレット柱3230の各々は、リング3260の小穴3265に嵌合するように構成される。
【0084】
図32Cは、人工弁のアンカー受容部を示す。図32Cに示すように、アンカー受容部3240の各々は、アンカーを受容するアンカーターゲット3245を備える。例示的な実施形態では、周囲組織に人工弁を固定するために、アンカー受容部3240を人工弁のリング(例えば、図32Bのリング3260)上に配置し得る。このため、アンカーを、リング3260を通して、移植部位の周囲組織内に打ち込み、リング3260を移植部位の組織に固定又は締結してもよい。別の例示的な実施形態では、アンカー受容部3240は、図32Aのフレーム3200の流入セル3210とリーフレット柱3230との間に配置される。
【0085】
流入セル3210は、例えばバルブフレームが切り出される一体成形体の壁厚を変化させることによって、環状セル3220又はリーフレット柱3230よりも柔軟かつ可鍛性にすることができる。壁厚の薄くなった流入セル3210は、管状弁形状に形成されると、心臓弁の周囲の生来の組織に対して柔軟かつ可鍛性の状態を維持する。これにより、流入セル3210が生来の組織に対してさらに正確に形成され、同組織の形状を形成することが可能になり、そのため、流入路の密封をさらに確実にし、人工装具内での組織成長をさらに良好にすることを可能にする。一方、フレームは、薄めの流入セルから、流入セル3210より剛性が低く厚めの環状セル3220に移行し、次いで、厚めで剛性の高いリーフレット柱3230にさらに移行してもよい。弁の流出側は弁の疲労が大きくなるため、環状セル3220及びリーフレット柱3230の剛性が増大することにより、生来の弁組織に対する支持が強固になる。本明細書に記載の能動的固定システム(即ち、アンカー展開)は、さまざまなレベルの剛性を有するこの弁構造を可能にする。
【0086】
図33A図33Cは、返し2105を有するアンカーヘッド2106と、アンカーキャップ3303とを備えるアンカー3300を示す。例示的な実施形態では、アンカーキャップ3303は、アンカーヘッド2106の近位端の上にオーバーモールドされる。例示的な実施形態では、アンカーキャップ3303は、張力特性を有する熱可塑性ウレタン、シリコンをはじめとするエラストマー材料から作成されてもよく、変形不能な近位端をさらに備えてもよい。変形不能な人工装具端部は、近位端を例えば人工弁装置と並置したときに近位端に力を付加する張力構成要素が、人工弁装置を組織と並置させることができるようにするために使用される。このため、アンカーキャップ3303は、展開後にアンカーヘッド構成要素に対して遠位方向に引っ張る力を及ぼし、返しをさらに確実に設定し、人工装具を、心臓周期全体にわたる組織の変動にもかかわらず、組織とさらに一定に接触する状態に維持できるようにする。
【0087】
例示的な実施形態では、アンカー2101、2310、2620及び3300のアンカーヘッド2106(即ち、アンカーの遠位端)は、組織を突き刺すように構成された遠位先端に向かって先細になっている。さらに、アンカー2101、2310、2620及び3300の(少なくとも1つの)返し2105は、遠位端から自由端まで近位方向かつ半径方向外側に延びる。さらに、(アンカー2101及び2620の)アンカーキャップスイベル2103及び(アンカー2310の)2313のほか、(アンカー2101の)アンカーキャップ2102、(アンカー2310の)2312及び(アンカー3300の)3303のいずれもが、アンカー受容部(即ち、図32A及び図32Cの3240)の幅よりも大きい幅を備える。このため、アンカーの近位端(即ち、2102、2103、2312、2313及び/又は3303)は、任意の数のさまざまな展開角度でアンカー受容部内に確実に嵌合されてもよい。
【0088】
図34A図34Eは人工弁送達システムを示す。人工装具展開機構3400は、ハンドル3401、格納式シース3402及び弁3403を備える。本発明の弁3403は、まず、人工装具をカテーテルの空洞内(例えば、格納式シース3402内)に嵌合するように弁3403を圧潰位置又は折り畳み位置に圧潰することによって移植部位に送達されてもよい。一実施形態では、第1のモードにて、圧潰した弁3403は格納式シース3402内で覆われた状態を維持する。第2のモードにて、格納式シース3402は近位端に向かって後退し、圧潰した弁3403を露出させる。圧潰した弁3403は、一旦拡張されると、圧潰されていない状態又は拡張された状態に弾性的に戻ってもよい。
【0089】
図34Bは、アンカー展開前の図34Aの人工弁送達システムを示す。図34Bに示すように、人工装具展開機構3400は、展開アーム3404(すなわち、発射アーム)、アンカー3300及び遠位先端3406をさらに備える。アンカーを発射するために力伝達システムを使用してもよい。力伝達システムは、バネ、ガス、圧縮流体などのほぼ瞬間的な力伝達の任意の機構を使用してもよい。力は、適用例に応じて、硬質シャフト又は可撓性シャフトであり得るドライバのシャフトを介して伝達される。この力は、シャフトの遠位端の発射機構を移動させるために使用される。発射機構は、次にアンカーに駆動力を付加して、アンカーを展開アームから弁3403及び周囲組織に打ち込む。この駆動力は、ピン3407によって伝達されて、アンカー3300の近位端に力を付加してもよい。駆動力は、適用例に応じて、ドライバの遠位方向に力を向ける押圧力伝達システム、あるいはドライバの近位方向に力を向ける引っ張り力伝達システムに由来するものであってもよい。例示的な実施形態では、人工弁送達システム3400は、アンカー3300を人工弁3403内に発射するために引っ張り力伝達システムを利用する。例示的な実施形態では、アンカー3300を、展開アーム3404によって同時に発射してもよい。別の例示的な実施形態では、アンカー3300は異なる時間に発射される。例示的な実施形態では、展開アーム3404は、人工弁3403が拡張状態に戻った後に、格納式シース3402によって覆われ、発射位置に移動するときに、格納位置(すなわち、格納式シース3402と平行)にある。言い換えれば、展開アーム3404は、格納式シース3402によって規定される軸と一直線になる位置から、格納式シース3402から半径方向に離れるように向けられた位置に回転するように構成され、その結果、展開アームは、バルブ3404のアンカー受容部の方に向けられる。例示的な実施形態では、アンカー3300が展開された後、展開アーム3404は、格納式シース3402と一直線に並ぶ位置に戻り、(遠位先端3406と共に)弁3403を通過してハンドル3401の方向に向かう。このように、遠位先端3406が弁3403を通過した後のある時点で、格納式シース3402はその元の状態に戻り、このため、格納された展開アーム3404を覆う。
【0090】
観血的手術で使用される弁は、一般に、そのようなリング又はカラーを備えるが、そのようなカラーは、経カテーテル僧帽弁修復及び経カテーテル大動脈弁修復に使用される引き込み可能及び展開可能な弁でこれまで達成できるものではなかった。図35は、弁フレームの別の例示的な実施形態を示す。流入セル3510は、弁本体から半径方向に離れて延びるリング支柱3515を備える。弁の格納状態又は圧潰状態では、リング支柱3515は弁本体と同一平面にある。しかし、弁が展開されると、リング支柱は、図示のように、遠位方向及び近位方向の交互のパターンで拡張する。リング支柱は、バネ荷重鋼又はニチノールのような形状記憶合金で作成されてもよい。展開状態では、リング支柱は、弁本体の流入路周りにリング又はカラーを形成し、そのため、周囲組織に密閉圧力を及ぼすのに役立ち、弁への組織の良好な成長を可能にする。直線状の平坦な後退位置にあるリング支柱3516の例も図35に示される。
【0091】
一実施形態では、アンカー50、200、2101、2310、2620、3300及び4200のいずれかを、本発明の展開機構100、2800、2900、3000、3100及び3400のいずれかとともに利用し得る。別の例示的な実施形態では、アンカー2101、2310、2620及び3300のいずれかの遠位端が対応するアンカー受容部を通って周囲組織内に打ち込まれた後、それぞれのアンカーの近位端は、対応するアンカー受容部と並置され、その結果、近位端がアンカーの遠位端に引っ張り力を及ぼすように構成される。
【0092】
さらに、本明細書に記載の任意の移植可能な要素、例えば、心臓弁置換人工装具1又は人工弁3205及び3403のアンカー50、200、2101、2310、2620、3300及び4200、リング10及び3265、リーフレット30、弁支柱31又はリーフレット柱3230をはじめとする任意の要素のいずれかが、例えば特定の適用例に応じて、患者の体内に吸収可能な材料又は非吸収性材料によって全体的又は部分的に形成されてもよい。例えば、このような要素は、ポリグリコール酸(PGA)又はPGA共重合体で形成されてもよい。このような要素はこのほか、あるいはこれとは別に、ポリエステル及び/又はナイロン及び/又は他の(少なくとも1つの)ポリマーの共重合体で形成されてもよい。さらに、このような要素は、1つ以上の形状記憶合金、例えば、ニチノール、バネ荷重鋼をはじめとする、適切な特性を有する合金又は材料を含有してもよい。
【0093】
吸収性材料は、さまざまな移植片の誤った発射又は不適切な配置の可能性がある場合に有利であり得る。例えば、ドライバが意図しない位置でアンカー50、200、2101、2310、2620、3300及び4200を打ち込むか、あるいは組織がアンカー50、200、2101、2310、2620、3300及び4200を適切に受け入れない状況では、アンカー50、200、2101、2310、2620、3300及び4200は、必要ではない場合であっても、最終的に患者の体内に吸収されるため、比較的無害であろう。
【0094】
本発明を特定の実施例及び例示的な実施形態を参照して説明してきたが、上記の説明は決して限定するためのものではないことを理解されたい。さらに、本明細書に記載の特徴は、任意の組み合わせで使用してもよい。
なお、本発明には、以下の実施形態が含まれる。
〔実施形態1〕
組織に突き刺さり固定されるように構成される遠位端に向かって先細りになる遠位端と、
近位ヘッドと、
前記遠位端と前記近位ヘッドに一体的に接続される張力構成要素と、を具備する外科用アンカーであって、
前記張力構成要素は、前記遠位端が前記組織内に固定されているときに、前記近位ヘッドに力を付加するように構成される、外科用アンカー。
〔実施形態2〕
張力構成要素は、前記遠位端及び前記近位ヘッドにオーバーモールドされるエラストマーを含む、実施形態1に記載の外科用アンカー。
〔実施形態3〕
前記張力構成要素はバネを備える、実施形態1に記載の外科用アンカー。
〔実施形態4〕
前記アンカーは、前記組織に係合し、近位方向の移動に抵抗するように構成される、実施形態1に記載の外科用アンカー。
〔実施形態5〕
前記張力構成要素は、展開された前記アンカーの前記近位ヘッドに前記力を付加し、前記アンカーの前記近位ヘッドを遠位方向に付勢する、実施形態1に記載の外科用アンカー。
〔実施形態6〕
前記近位ヘッドは非変形材料を含む、実施形態1に記載の外科用アンカー。
〔実施形態7〕
アンカーを具備する外科装置であって、
前記アンカーは、
組織を突き刺して固定するように構成される遠位先端に向かって先細になる遠位端と、
人工弁の対応するアンカー受容部の幅よりも大きい幅を有する近位ヘッドと、
前記遠位端と前記近位ヘッドとの間の張力構成要素と、を備え、
前記アンカーの前記遠位端は、展開装置によって、前記人工弁の前記対応するアンカー受容部を通して、前記人工弁に隣接する組織に打ち込まれるように構成され、さらに、展開された前記アンカーの前記近位ヘッドの近位端が前記対応するアンカー受容部に並置されるように構成され、その結果、前記アンカーが組織内で展開された後、張力構成要素は、引っ張り力を前記アンカーの前記近位ヘッドに付加する引っ張り状態になり、前記人工弁の前記アンカー受容部に作用する前記近位ヘッドが前記人工弁を前記組織に接近させることになる、外科装置。
〔実施形態8〕
人工弁を格納状態で収容する空洞を覆う格納式シースと、
複数の展開アームであって、各アームが外科用アンカーを収容する空洞を備える展開アームと、
力伝達装置と、
前記力伝達装置を前記展開アームに接続するシャフトと、を具備する展開装置であって、
前記展開アームの各々は、前記展開装置の軸と一直線に並ぶ格納位置から、前記軸から放射状に離れるように方向付けられる展開位置に回転するように構成され、
前記力伝達装置は、前記シャフト及び前記展開アームを通して力を付加して、前記展開アームの前記空洞から前記外科用アンカーを組織に打ち込むように構成される、展開装置。
〔実施形態9〕
前記力伝達装置は、バネ、膨張性ガス及び/又は圧縮流体のうちの少なくとも1つを具備する、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態10〕
力伝達システムは、
膨張性ガスを収容するキャニスタと、
前記膨張性ガスの放出を制御するように構成されるソレノイドと、を具備する、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態11〕
前記展開アームの各々は、前記シャフトを介して前記力伝達装置に連通するピンを備え、前記ピンは、前記力を前記力伝達装置から、前記展開アームの前記空洞に収容される外科用アンカーに伝達するように構成される、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態12〕
前記ピンは、前記アンカーを組織に打ち込むように構成される、実施形態11に記載の展開装置。
〔実施形態13〕
前記人工弁は、前記格納式シースによって移植部位に送達され、前記人工弁は、前記格納式シースに挿入するために折り畳まれ、前記格納式シースが後退して前記人工弁を露出した後に自己拡張する、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態14〕
前記展開装置は、アンカーの展開前及びアンカーの展開中に前記人工弁を適切な位置に保持する少なくとも1つの人工装具グリップを備える、実施形態13に記載の展開装置。
〔実施形態15〕
前記人工弁は、前記格納式シースによって移植部位に送達され、前記人工弁は、前記格納式シースに挿入するために折り畳まれ、前記格納式シースが後退して前記人工弁を露出した後に前記展開アームによって拡張可能である、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態16〕
前記人工弁は、アンカーの展開と同時に開放されるように構成される、実施形態15に記載の展開装置。
〔実施形態17〕
前記アンカーに及ぼされる引っ張り駆動力及び押圧駆動力のいずれかは、前記展開アームから前記アンカーを打ち込む、実施形態8に記載の展開装置。
〔実施形態18〕
人工弁であって、
複数のアンカー受容部と、
前記人工弁の近位方向に配置される複数の流入セルであって、前記流入セルは可鍛性である、流入セルと、
円形の流出路を形成する、前記人工弁の内側に配置される複数の環状セルであって、前記環状セルは前記流入セルよりも剛性が高い、環状セルと、
前記環状セルと一体であり、前記人工弁の流出方向に前記環状セルを越えて遠位方向に延びる複数のリーフレット柱であって、前記リーフレット柱は前記環状セルよりも剛性が高い、リーフレット柱と、を具備する人工弁。
〔実施形態19〕
前記複数の流入セルは遠位方向に放射状に延びる、実施形態18に記載の人工弁。
〔実施形態20〕
前記アンカー受容部の各々は、組織を突き刺して固定するように構成される遠位先端に向かって先細になる遠位端と、近位ヘッドと、前記遠位端と前記近位ヘッドとの間に配置される張力構成要素と、を備えるアンカーを受容するように構成され、
前記アンカー受容部は、前記アンカーの前記遠位端が前記アンカー受容部を通って周囲組織内に通過できるようにするのに充分なほど大きく、前記近位ヘッドが前記アンカー受容部を通過するのを妨げるのに充分なほど小さく、その結果、前記アンカーの展開後、前記張力構成要素は、前記アンカー受容部及び前記組織に対抗して引っ張り状態に置かれ、前記人工弁を前記組織と並置させる、実施形態18に記載の人工弁。
〔実施形態21〕
前記リーフレット柱間に接続される弁リーフレットをさらに具備する、実施形態18に記載の人工弁。
〔実施形態22〕
織り被覆をさらに具備する、実施形態18に記載の人工弁。
〔実施形態23〕
人工弁であって、
前記人工弁の近位方向に配置される複数の流入セルと、
前記流入セルから放射状に延びる複数のリング支柱と、を具備する人工弁であって、
前記リング支柱は、後退したときに前記人工弁に対して平らに置かれ、展開されたときに前記弁の前記流入セル周りにリングを形成する、人工弁。
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