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特許7001613広視野のホログラフィックスキューミラー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】広視野のホログラフィックスキューミラー
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/32 20060101AFI20220112BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220112BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G02B5/32
G02B5/00 Z
G02B5/26
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018550324
(86)(22)【出願日】2017-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017020087
(87)【国際公開番号】W WO2017176389
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2018-10-17
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】62/318,917
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/174,938
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2016/048499
(32)【優先日】2016-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/407,994
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/435,676
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514057592
【氏名又は名称】アコニア ホログラフィックス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】エアーズ, マーク アール.
(72)【発明者】
【氏名】ウルネス, アダム
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, ケンネス イー.
(72)【発明者】
【氏名】シュロッタウ, フリソ
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】関根 洋之
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-300480(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/32
G02B 5/00
G02B 5/18
G02B 5/26
G03H 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子媒体に存在する格子構造を含む光学反射デバイスであって、
前記格子構造は入射光を反射光として反射するように構築され、
前記入射光は400nm~700nmの範囲の第1の波長を含み、
前記反射光は前記第1の波長を含み、
前記第1の波長の前記入射光及び前記第1の波長の前記反射光は、反射軸によって二等分された角度を形成し、
前記格子構造は前記反射軸を中心として方向付けられた複数の格子を含み、前記反射軸は前記格子媒体の面法線に対してスキュー角を形成し、前記複数の格子は、前記第1の波長の前記入射光を反射可能な内部入射角の範囲が13.1°~47.6°となるように構成され、前記スキュー角は、2.0°より大きく、
前記反射軸は、前記入射光が内部入射角の前記範囲で前記格子構造に入射するときに、1°未満変化し
記複数の格子における各格子は、異なるビーム間記録ビーム角と共に記録され、記録波長において異なる格子周波数を有する、
光学反射デバイス。
【請求項2】
前記反射軸は、前記入射光が少なくとも30°にわたる内部入射角の範囲で前記格子構造に入射するときに、1°未満変化する、請求項1に記載の光学反射デバイス。
【請求項3】
前記入射光は第2の波長を含み、
前記反射光は前記第2の波長を含み、
前記第2の波長は、前記第1の波長とは少なくとも50nm異なる、
請求項1又は2に記載の光学反射デバイス。
【請求項4】
前記入射光は第3の波長を含み、
前記反射光は前記第3の波長を含み、
前記第3の波長は、前記第1の波長及び前記第2の波長の各々とは少なくとも50nm異なる、
請求項3に記載の光学反射デバイス。
【請求項5】
前記第1の波長は赤色領域に存在し、前記第2の波長は緑色領域に存在し、前記第3の波長は青色領域に存在する、請求項4に記載の光学反射デバイス。
【請求項6】
前記入射光は、前記光学反射デバイスの内側から前記格子構造に入射し、
前記反射光は前記光学反射デバイスを出る、
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学反射デバイス。
【請求項7】
前記格子媒体に隣接した少なくとも1枚の基板を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学反射デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1枚の基板は2枚の基板を含み、前記格子媒体は前記2枚の基板の間に配置されている、請求項7に記載の光学反射デバイス。
【請求項9】
前記格子媒体は、少なくとも100μm厚のフォトポリマー媒体を含み、前記2枚の基板は、前記入射光の少なくとも60%、及び前記反射光の少なくとも60%を透過する、請求項8に記載の光学反射デバイス。
【請求項10】
前記格子媒体は第1の屈折率を有し、前記2枚の基板は、前記第1の屈折率の0.1以内である第2の屈折率を有する、請求項8に記載の光学反射デバイス。
【請求項11】
400nm~700nmの範囲の第1の波長の入射光によって、格子媒体に存在する格子構造を照明することであって、前記入射光は前記格子構造で反射して前記第1の波長の反射光を生成する、ことを含む方法であって、
前記入射光及び前記反射光は、前記格子媒体の面法線に対して少なくとも2.0°だけ傾いた反射軸によって二等分された角度を形成し、
前記格子構造は前記反射軸を中心として方向付けられた複数の格子を含み、前記反射軸は前記格子媒体の面法線に対してスキュー角を形成し、前記複数の格子は、前記第1の波長の前記入射光を前記第1の波長の前記反射光として反射可能な内部入射角の範囲が13.1°~47.6°となるように構成され、前記スキュー角は少なくとも2.0°であり、
前記反射軸は、前記入射光が内部入射角の前記範囲で前記格子媒体内の前記格子構造に入射するときに、1°未満変化し、
前記複数の格子における各格子は、異なるビーム間記録ビーム角と共に記録され、記録波長において異なる格子周波数を有する、方法。
【請求項12】
前記反射軸は、前記入射光が少なくとも30°にわたる内部入射角の範囲で前記格子構造に入射するときに、1°未満変化する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記格子構造を照明することは、
前記入射光を前記格子媒体の中に結合することと、
前記入射光を前記格子媒体内で内部全反射させることと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記格子構造を照明することは、
前記入射光を、前記格子媒体を介して前記格子構造まで導くこと
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記入射光及び前記反射光は、前記第1の波長とは少なくとも50nm異なる第2の波長を含み、前記入射光及び前記反射光は、前記第1の波長及び前記第2の波長の各々とは少なくとも50nm異なる第3の波長を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記格子媒体の面法線に対して25°の角度で前記格子媒体から出た反射光を結合すること
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法の下で、2016年4月6日に出願された「Skew Mirrors,Methods of Use,and Methods of Manufacture」と題する米国特許出願第62/318,917号、及び2015年8月24日に出願された「Multiwavelength Diffraction Grating Mirrors,Methods of Use,and Methods of Manufacture」と題する米国特許出願第62/209,290号の優先権を主張する、2016年6月6日に出願された「Skew Mirrors,Methods of Use,and Methods of Manufacture」と題する米国特許出願第15/174,938号の一部継続出願である、2016年8月24日に出願された「Skew Mirrors,Methods of Use,and Methods of Manufacture」と題するPCT/US16/48499の一部継続出願である。本出願はまた、米国特許法の下で、2016年12月16日に出願された「Wide Field of View Skew Mirror」と題する米国特許出願第62/435,676号、及び2016年10月13日に出願された「TIGER Prisms and Methods of Use」と題する米国特許出願第62/407,994号の優先権を主張する。これら出願の各々は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィックスキューミラーは、入射光が当たる表面に対して垂直である必要のない反射軸で入射光を反射する、ホログラフィック光学素子である。換言すると、ホログラフィックスキューミラーの反射軸は、ホログラフィック光学素子の面法線と平行である又は一致する必要がない。反射軸と面法線との間の角度は反射軸角と称され、ホログラフィックスキューミラーの所望の適用に基づいて選択され得る。
【0003】
本開示では、通常であれば「回折」が適切な用語と考えられ得る場合に、用語「反射」及び同様の用語が用いられることがある。この「反射」の使用は、スキューミラーが呈するミラー様の特性と整合性があり、紛らわしい場合もある専門用語を回避するのに役立つ。例えば、格子又はスキューミラーが入射光を「反射」するように構築されていると言う場合、従来の当業者は、格子構造が入射光を「回折」するように構築されると言う方を好むことがある。なぜなら格子構造は一般に、回折によって光に作用すると考えられているからである。しかし、「回折」という用語のこのような使用は、「入射光が実質的に一定の反射軸で回折される」などの印象を生じさせ、紛らわしくなり得る。
【0004】
したがって、入射光が格子構造によって「反射」されると言う場合、本開示の利益を与えられる当業者は、格子構造は実際には回折機構によって「反射」されることを理解するであろう。従来の誘電体ミラーは一般に、回折がこのような反射で果たす主要な役割にもかかわらず、光を「反射する」と言うため、このような「反射」の使用は光学では前例のないことではない。したがって当業者は、大部分の「反射」が回折の特性を含み、スキューミラー又はその構成要素による「反射」も回折を含むことを理解している。
【発明の概要】
【0005】
本技術の実施形態は、限定ではないが、ホログラフィックスキューミラー、ホログラフィック入力/出力カプラー、及び他のホログラフィック光学反射デバイスを含む、ホログラフィック光学素子を含む。1つの例は、格子媒体に存在する格子構造を含む光学反射デバイスである。この格子構造は、主として入射光を反射光として反射するように構築され、入射光及び反射光の両方は、第1の波長を含む。第1の波長の入射光及び第1の波長の反射光は、反射軸によって二等分された角度を形成し、この角度は、入射光が少なくとも15°にわたる内部入射角の範囲で格子媒体に入射するときに、1°未満変化する。加えて、反射軸は格子媒体の面法線とは少なくとも2.0°異なる。
【0006】
この光学反射デバイスのいくつかの実装形態では、反射軸は、入射光が少なくとも30°にわたる内部入射角の範囲で格子媒体に入射するときに、1°未満変化する。同様に、格子構造は、メートル当たり少なくとも2.00×10ラジアンの範囲にわたる格子周波数(|K|)を有する、1つ以上のホログラムを含み得る。
【0007】
いくつかの場合では、入射光及び反射光の両方は、第1の波長とは少なくとも約50nm異なる第2の波長を含む(例えば第1の波長は、第2の波長よりも50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、又は更にはそれ以上大きくてもよい)。これらの場合のいくつかでは、入射光及び反射光は、第1の波長及び第2の波長の各々とは少なくとも約50nm異なる第3の波長を含む(例えば第1の波長は第2の波長よりも50~100nm大きくてよく、第2の波長は第3の波長よりも50~100nm大きくてもよい)。例えば、第1の波長は電磁スペクトルの赤色領域内に存在し、第2の波長は緑色領域内に存在し、第3の波長は青色領域内に存在してもよい。
【0008】
光学反射デバイスの格子構造は、メートル当たり少なくとも1.68×10ラジアン、メートル当たり少なくとも5.01×10ラジアン、又はメートル当たり少なくとも1.24×10ラジアンの範囲にわたる格子周波数(|K|)を有する、1つ以上のホログラムを含み得る。例えば、格子構造は、メートル当たり5.10×10ラジアンより大きく、メートル当たり3.15×10ラジアン未満の範囲にわたる格子周波数(|K|)を有する、1つ以上のホログラムを含み得る。
【0009】
いくつかの例では、格子構造は少なくとも9個のホログラムを含む。これらのホログラムの平均隣接数|ΔK|は、5.0×10rad/m~1.0×10rad/mの間の範囲に存在し得る。
【0010】
光学反射デバイスは、出力カプラーとして作用するように構成又は構築されてよく、入射光は、光学反射デバイスの内側から格子構造に入射し、反射光は光学反射デバイスから出る。
【0011】
光学反射デバイスは、格子媒体に隣接する少なくとも1枚の基板を更に含むことができる。例えば、光学反射デバイスは、2枚の基板を含むことができ、格子媒体がその2枚の基板の間に配置される。この場合、格子媒体は少なくとも100μm厚のフォトポリマー媒体を含み、2枚の基板は入射光の少なくとも60%、及び反射光の少なくとも60%を透過することができる。格子媒体及び2枚の基板の屈折率は、互いの約0.1以内であってよい。
【0012】
本技術の他の実施形態は、光学反射デバイスを使用する方法を含む。本方法は、第1の波長の入射光によって、格子媒体内に存在する格子構造を照明することを含む。この入射光は、格子構造で反射して第1の波長の反射光を生成する。入射光及び反射光は、格子媒体の面法線に対して少なくとも約2.0°傾斜した反射軸によって、二等分された角度を形成する。この反射軸は、入射光が少なくとも15°にわたる内部入射角の範囲にある格子媒体内の格子構造に入射するときに、1°未満変化する。いくつかの場合、反射軸は、入射光が少なくとも30°にわたる内部入射角の範囲で格子媒体に入射するときに、1°未満変化する。
【0013】
この方法の例では、格子構造を照明することは、例えばホログラフィック入力カプラー、プリズム、又は縁部カップリングを介して、入射光を格子媒体に結合することと、入射光を格子媒体内で全内部反射させることと、を含む。換言すると、格子媒体は入射光を格子構造まで少なくとも途中まで導くことができる。
【0014】
上述のように、入射光及び反射光は、第1の波長とは少なくとも約50nm異なる第2の波長を含み得る。入射光及び反射光はまた、第1及び第2の波長の各々とは少なくとも約50nm異なる第3の波長を含み得る。
【0015】
本方法の例は、格子媒体の面法線に対して約25°の角度で格子媒体から出た反射光を結合することも含み得る。反射ビームが少なくとも部分的に人間の目を照明するように、格子媒体は、この反射光を人間の目に向けて、格子媒体と光学的に連通させて結合することができる。これらの場合では、格子構造を照明することは、反射した画像が人間の目で視認できるように、格子構造を画像で照明することを含んでもよい。
【0016】
本技術の別の例は、撮像する方法を含む。この方法は、人間の目と光学的に連通した格子構造を含む格子媒体を配置することを含む。この格子媒体は、面法線を画定する近接面を有する。可視像は、格子媒体の中に結合され、格子媒体内の少なくとも1つの全内部反射を介して格子構造に導かれる。この格子構造は、面法線に対して少なくとも約2°の角度を形成する反射軸で、可視像を反射する。可視像は、人間の目に向う近接面を介して、格子媒体の外で結合される。この可視像は、少なくとも約30°の自由空間における視野にわたる。
【0017】
本技術の更に別の例は、ホログラフィック格子を感光性媒体に書き込む方法を含む。この方法は、感光性媒体を、第1のプリズムの傾斜面と第2のプリズムの傾斜面との間に配置することを含む。第1のビームは、感光性媒体の第1の面及び第1のプリズムの傾斜面を介して、感光性媒体に結合される。この第1のビームは、第1の表面の面法線に対して第1の角度を形成する。第2のビームは、感光性媒体の第2の表面及び第2のプリズムの傾斜面を介して、感光性媒体に結合される。この第2のビームは、第1の角度と実質的に等しい大きさで、第2の表面の面法線に対して第2の角度を形成する。いくつかのケースで、この方法は、感光性媒体の第3のビーム及び第4のビームに干渉して、感光性媒体の中に第2のホログラフィック格子を形成することも含む。
【0018】
本技術の更に別の例は、第1の次元において少なくとも約50°の視野にわたって可視光を反射するように構築された、少なくとも1つの格子を有するホログラフィック光学素子を備えたデバイスを含む。視野は、ホログラフィック光学素子の外側で測定され、ホログラフィック光学素子の面法線を実質的に中心とする。格子は、面法線に対して少なくとも約15°~約45°の角度に方向付けられた格子ベクトルを有する。
【0019】
いつかの実装形態において、ホログラフィック光学素子は、約400nm~約700nmの範囲の波長の可視光を視野にわたって反射するように構築された、単一の格子を含む。他の実装形態では、ホログラフィック光学素子は複数の格子を含み、その各々は、視野内の異なる角度で、可視光の1つの波長の入射光を反射するように構築されている。これらの実装形態において、デバイスは、複数の格子を可視光で照明するために、ホログラフィック光学素子と光学的に連通した少なくとも1つの光源も含む。
【0020】
視野は、第1の次元に直交する第2の次元において少なくとも約30°であってよい。加えて、反射軸と面法線とで形成される角度は、約20°~約40°であってよい。ホログラフィック光学素子は、可視光に感応する光開始剤を実質的に含まなくてもよい。
【0021】
本技術の別の例は、光を反射する方法を含む。この方法は、ホログラフィック光学素子の少なくとも1つの格子を可視光で照明することを含む。格子は、少なくとも約50°の視野にわたって、光の少なくとも一部を反射する。この視野は、ホログラフィック光学素子の面法線に対して、少なくとも約15°~約45°の角度を形成する反射軸を中心とする。
【0022】
本技術の更に別の例は、ホログラフィック光学素子を作る方法(及び結果として得られるホログラフィック光学素子)を含む。この方法は、ホログラフィック記録媒体内で第1のビーム及び第2のビームに干渉して第1の格子を形成することを含む。ホログラフィック記録媒体は平坦な表面を有する。第1の格子は、少なくとも約50°の視野にわたって第1の可視波長の入射光を反射するように構築される。この視野は、ホログラフィック光学素子の平坦な表面の面法線に対して、少なくとも約15°~約45°の角度を形成する反射軸を中心とする。いくつかの場合では、第1のビーム及び第2のビームに干渉することは、第1のビームをホログラフィック記録媒体に、第1のプリズムの傾斜面を介して結合することと、第2のビームをホログラフィック記録媒体に、第2のプリズムの傾斜面を介して結合することと、を含む。
【0023】
本技術の更に別の例は、複数の反射格子を有するホログラフィック光学素子を備えるデバイスを含む。複数の反射格子の中の各反射格子は、ホログラフィック光学素子の面法線と約15°~45°の角度を形成する格子ベクトルK、及びメートル当たり少なくとも2.00×10ラジアンの格子周波数(|K|)を有する。
【0024】
前述の概念と、以下でより詳細に説明する更なる概念の全ての組み合わせは(これらの概念が相反しなければ)、本明細書で開示する発明の主題の一部である。特に、本開示の最後に記載する特許請求の範囲の主題の全ての組み合わせは、本明細書で開示する発明の主題の一部である。参照によって組み込まれている任意の開示にも記載され得る、本明細書で使用される専門用語は、本明細書で開示される詳細な概念と最も一致する意味と適合させるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
当業者は、図面は主に説明が目的であり、本明細書で開示する発明の主題の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。図面は必ずしも一定の縮尺に則っておらず、いくつかの例では、本明細書で開示される発明の主題の様々な態様は、異なる特徴の理解を促すために、誇張又は拡大して示すことがある。図面では、同様の参照番号は全体的に同様の特徴を指す(例えば機能的に類似した要素、及び/又は構造的に類似した要素)。
【0026】
図1】比較的狭い視野のホログラフィックスキューミラーを示す。
【0027】
図2A】入射ビームがない場合と入射ビームがある場合の、図1に示したホログラフィックスキューミラーのk空間表現をそれぞれ示す。
図2B】入射ビームがない場合と入射ビームがある場合の、図1に示したホログラフィックスキューミラーのk空間表現をそれぞれ示す。
【0028】
図3A】ホログラフィックスキューミラーを作るのに適した面内ホログラフィック記録システムを示す。
図3B】ホログラフィックスキューミラーを作るのに適した面内ホログラフィック記録システムを示す。
【0029】
図4A図3A及び図3Bそれぞれの面内ホログラフィック記録形状を使用してホログラフィックスキューミラーを作るk空間表現を示す。
図4B図3A及び図3Bそれぞれの面内ホログラフィック記録形状を使用してホログラフィックスキューミラーを作るk空間表現を示す。
【0030】
図5A】面外ホログラフィックスキューミラー書き込み形状の実空間斜視図を示す。
図5B図5A及び図5Cそれぞれに示した実空間ビューのk空間表現を示す。
【0031】
図5C】面外ホログラフィックスキューミラー書き込み形状の実空間斜視図を示す。
図5D図5A及び図5Cそれぞれに示した実空間ビューのk空間表現を示す。
【0032】
図6】面内及び面外ホログラフィックスキューミラー記録形状の両方で実現可能な角度記録帯域を示すプロットである。
【0033】
図7A】広視野を有するホログラフィックスキューミラーを書き込むための、全内部グレージング・エクステンション・ローテーション(TIGER)プリズム間に挟まれた、ホログラフィック記録媒体の異なるビューを示す。
図7B】広視野を有するホログラフィックスキューミラーを書き込むための、全内部グレージング・エクステンション・ローテーション(TIGER)プリズム間に挟まれた、ホログラフィック記録媒体の異なるビューを示す。
図7C】広視野を有するホログラフィックスキューミラーを書き込むための、全内部グレージング・エクステンション・ローテーション(TIGER)プリズム間に挟まれた、ホログラフィック記録媒体の異なるビューを示す。
【0034】
図7D図7A図7Cのホログラフィック記録形状に使用されるTIGERプリズムの斜視図を示す。
【0035】
図8A】TIGERプリズムを伴うホログラフィック記録システム、及び図7A図7Cに示した面外ホログラフィック記録形状を示す。
図8B】TIGERプリズムを伴うホログラフィック記録システム、及び図7A図7Cに示した面外ホログラフィック記録形状を示す。
図8C】TIGERプリズムを伴うホログラフィック記録システム、及び図7A図7Cに示した面外ホログラフィック記録形状を示す。
【0036】
図9A】楔の対を用いた角度補正を示す。
図9B】楔の対を用いた角度補正を示す。
図9C】楔の対を用いた角度補正を示す。
【0037】
図10】面外ホログラフィック記録システムを用いて作られた、60°の対角視野(53.4°の水平視野、31.6°の水平視野、及び16:9のアスペクト比)を有するホログラフィックスキュー入力/出力カプラーの平面図を示す。
【0038】
図11図10のホログラフィックスキューミラーにおける、1番目及び228番目の格子の記録ビームのk空間表現を示す。
【0039】
図12】53.4°の視野のホログラフィックスキューミラー出力カプラーの、スキューミラー内部角記録帯域のプロットである。
【0040】
図13】53.4°の水平視野及び31.6°の垂直視野を有する波導管に結合された、実験的に実現されたホログラフィックスキュー出力カプラーを示す。
【0041】
図14図13のホログラフィックスキューミラーの変調伝達関数(MTF)プロットを集めた図である。
【0042】
図15】広視野のホログラフィックスキューミラーを備えた頭部搭載型ディスプレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ホログラフィックスキューミラー
【0044】
図1は、ホログラフィックスキューミラー100の実空間表現を示す。このホログラフィックスキューミラー100は、コロラド州ロングモントのAkonia Holographics LLC社のTapestry(登録商標)ホログラフィックフォトポリマー媒体、又は独国LeverkusenのCovestro AG社のBayfol(登録商標)HX200感光性の自己現像型フォトポリマーフィルムなどの、ホログラフィック格子媒体110に記録された格子構造120を含む。格子構造120は、多くの個別のホログラフィック格子を含むことができ、その各々は、狭い範囲の角度及び/又は波長にわたって光を反射する。
[0001]
この場合、格子構造120は、スキュー軸121及び反射軸の両方を画定する多数のホログラフィック格子を含む。各ホログラフィック格子の格子ベクトルは、スキュー軸121と平行であるか又は一致しており、スキュー軸121は、ホログラフィック格子媒体110の面法線111に対してスキュー角φを形成する。上記で略説したように、各ホログラフィック格子は、内部入射角の特定の範囲にわたって、特定の波長又は波長範囲で光を反射する。内部入射角は、ホログラフィック格子媒体110の内部で測定したときの、格子構造120への入射角である。各ホログラフィック格子が入射光を反射する軸は、反射軸と呼ばれる。
[0002]
各ホログラフィック格子の反射軸は、例えば約0.1°未満、0.01°未満、0.001°未満だけ、波長を伴うスキュー軸121から僅かに変化することがある。この非常に僅かな変化を考慮して、スキュー軸/反射軸は、スキューミラーを作ることを言及するとき(例えばホログラムをスキューミラー格子媒体に記録することを示すとき)に、スキュー軸と呼ばれることがあり、スキューミラーの光反射特性に言及するときに、反射軸と呼ばれることがある。
【0045】
ホログラムの平均スキュー角(ホログラムの集合の平均スキュー角を含む)は、反射軸角と実質的に同一であり、スキュー角又は平均スキュー角が、反射軸角の1.0°、0.1°、0.05°、0.02°、0.0167°(1分角)以下であることを意味する。本開示の利益から、当業者は、スキュー角及び反射軸角は、理論的に同一となり得ることを認識するであろう。しかし、システムの精度及び正確さの限界、ホログラムの記録中に発生する記録媒体の収縮、及び他のエラー原因のために、ビーム角の記録に基づいて測定又は推定されたスキュー角、又は平均スキュー角は、入射角及びスキューミラーによって反射した光の反射角によって測定された反射軸角と、完全には一致しない場合もある。このばらつきは、単一のホログラムのレベルで生じ、ホログラムの厚さに反比例する。それにもかかわらず、媒体の収縮及びシステムの不完全性が、推定するスキュー角及び反射軸角におけるエラーの原因となる場合であっても、ビーム角の記録に基づいて決定されたスキュー角は、入射光及びその反射の角度に基づいて決定された反射軸角の、1.0°、0.1°、0.05°、0.02°、0.0167°以下にすることができる。
【0046】
図1では、可視光の入射ビーム101'が、スキュー軸121に対して角度θ'で、ホログラフィック格子媒体110の表面112に当たる。このビーム101'は、単色、多色、又は広帯域の可視光線であってもよい。ホログラフィック格子媒体110は周囲の空気よりも高い屈折率を有するため、入射ビーム101'が表面112で屈折して屈折入射ビーム101を形成する。屈折した入射ビーム101は、スキュー軸121に対して角度θで、体積ホログラム120を照明する。角度θは、内部入射角とも呼ばれる。なぜなら、これはホログラフィック格子媒体110の内部で測定された、体積ホログラム120への入射角度だからである。
【0047】
体積ホログラム120は、スキュー軸121に対して角度θで、屈折した入射ビーム101の少なくとも一部を反射する。角度θは、内部反射角とも呼ばれ、図1で示したような内部入射角θと等しい。換言すると、スキュー軸121は、内部入射角θの倍に等しい角度を二等分する。
【0048】
屈折した入射ビーム101の反射した部分は、主反射ビーム103と呼ばれる。主反射ビーム103は、ホログラフィック格子媒体110の表面112に当たる。主反射ビーム103は、この境界で屈折して、スキュー軸121に対して角度θ'で、屈折した主反射ビーム103'を形成する。ホログラフィック格子媒体110の外側の自由空間で測定された、ホログラフィックスキューミラーの視野は、外部反射角θ'の範囲によって決定される。
【0049】
ホログラフィックスキューミラーのk空間表現
【0050】
図2A及び図2Bは、入射ビーム101及び主反射ビーム103がある場合とない場合の、図1に示したホログラフィックスキューミラー100のk空間表現をそれぞれ示す図である。当業者は容易に理解するように、k空間表現は複数の同心円を含み、その各々は、ホログラフィック媒体の特定の波長における光の光伝播ベクトル又は波動ベクトルを表す、k球体の二次元投影である。波動ベクトルの長さは、
【数1】
で表すことができ、nは屈折率、及びλは波長である。
【0051】
ホログラフィック格子媒体110を含む一般的な分散性媒体では、波動ベクトル(したがってk球体の半径)は、波長が短いほど長い。したがって、最も内側の円290は、ホログラフィック格子媒体110における赤色光の波動ベクトルを表し、2番目に内側の円291は、ホログラフィック格子媒体110における緑色光の波動ベクトルを表し、外側から2番目の円292は、ホログラフィック格子媒体110における青色光の波動ベクトルを表し、最も外側の円293は、ホログラフィック格子媒体110における記録波長で波動ベクトルを表す。
【0052】
図2A及び図2Bは体積ホログラム120も示し、体積ホログラム120は線分状の分布としてk空間に現われ、その分布は、反射/スキュー軸121と平行である。図2Bはまた、体積ホログラムの格子ベクトルに対する、入射屈折ビーム101及び主反射ビーム103の波動ベクトルも示す。k空間では、主反射ビーム103の波動ベクトルは、体積ホログラムの格子ベクトルと、入射屈折ビーム101の波動ベクトルとの合計である。
【0053】
面内ホログラフィックスキューミラー記録システム
【0054】
図3A及び図3Bは、スキューミラー記録システム300を示す。スキューミラー記録システム300は、面内記録プリズム330a及び330b(まとめて面内記録プリズム330)を用いて、一対の透明基板(図示せず)の間に配置したホログラフィック記録媒体310の中に、光を結合する。記録ビーム331とも呼ばれる信号ビーム331a及び参照ビーム331bが、面内記録プリズム330が存在しなければ基板と空気との境界において全内部反射(TIR)を生成することになる角度で、ホログラフィック記録媒体310の中に導入され得るように、記録媒体310及び基板は面内記録プリズム330の間に挟まれる。面内記録プリズムは一般に基板と屈折率が整合され、プリズム330と基板(図示せず)との間に屈折率整合流体が適用され、プリズム/基板の境界における反射及び屈折を軽減することができる。実際には、屈折率整合は、ホログラフィック記録媒体310、基板、及びプリズム330の屈折率が約0.1以下以内であることを意味してよい。
【0055】
ミラー350a及び350b(まとめてミラー350)は、記録ビーム331a及び331bそれぞれを反射して、プリズム330a及び330bそれぞれを介してホログラフィック記録媒体310に入れる。各ミラー350a、350bは、記録ビーム331a、331bが対応するプリズム330a、330bの基体を照明するように、対応する記録ビーム331a、331bを導くように方向付けられる。記録ビーム331は、空気/基体の境界面で屈折し、次にホログラフィック媒体310の中に伝播することができ、そこで記録ビーム331が干渉して、ホログラフィック記録媒体310によって記録された(反射)格子を生成する。ホログラフィック記録媒体310及びプリズム330は、並進運動ステージ(図示せず)を使用して、ミラー350に対してz軸に沿って前後に並進運動し、ミラー350は、図3Bに示すように、スキューミラーを構成する一連の格子を記録するために回転する。
【0056】
図3A及び図3Bは、面内プリズムの場合の、グローバル座標又は記録器座標(x,y,z)も示す。図3A及び図3Bに示すグローバル座標の原点は、ホログラフィック記録媒体310の記録層の中心における出力カプラーの中心として定義される。記録のためのグローバル角度θは、ホログラフィック記録媒体310/プリズム330a内のx軸に対する記録ビーム331aの角度と定義する。他の記録ビーム331bの公称角度は、180°-θ(表示せず)であり、そのため記録された格子ベクトルは、x軸と実質的に位置合わせされていることに留意されたい。ホログラフィック記録媒体310/プリズム330a内の記録ビーム331間の角度、すなわちビーム間角度は、αと表示されている。グローバルスキュー角とは、xとz軸との間の角度であり、φと表示されている。
【0057】
本開示の利益から、当業者は、面内プリズムの場合、次式によって標準座標(ホログラフィック記録媒体310の参照フレームにおける直交座標)をグローバル座標に変換できることを確認するであろう。
【数2】
【0058】
グローバル座標から標準座標への変換も容易に導出できる。
【0059】
グローバル座標フレームでは、ホログラフィック記録媒体310の面法線は、z軸に対して角度φ(グローバルスキュー角)を形成する。換言すると、ホログラフィック記録媒体310とz軸との間の角度は、ホログラフィックスキューミラーのスキュー軸を設定する。このスキュー軸は、例えばホログラフィック記録媒体310及びプリズム330を、適切なステージ及びマウントを用いて、記録ビーム331に対して回転させることによって、変化させることができる。
【0060】
ホログラフィックスキューミラー、並びにホログラフィックスキューミラーの製造方法及び使用方法に関する更なる情報は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2016年6月6日に出願された「Skew Mirrors,Methods of Use,and Methods of Manufacture」と題する米国特許出願第15/174,938号を参照されたい。
【0061】
面内記録を伴う視野の制約条件
【0062】
残念ながら、一般的に面内記録システムは、広視野のホログラフィックスキューミラーを作るために使用することはできない。これは、幾何学形状と、ホログラフィックスキューミラーの体積ホログラフィック格子を記録するために使用するビームの波長とに課される制約のためである。これらの制約には、スキュー角、反射角を決定する格子周波数、及び、通常は電磁スペクトルの濃青色領域にある記録ビーム波長(例えば400nm~430nm)と、通常は電磁スペクトルの可視領域にある読み取りビーム波長との間の差、が挙げられる。
【0063】
上記で略説したように、格子波動ベクトルの大きさ|K|として表すことができるホログラフィック格子の格子周波数は、その反射角を決定する。格子周波数が小さいほど、反射角は大きくなる。スキューミラーにとって、格子構造における格子ベクトルの大きさの範囲を大きくすることは、視野を増加又は広げるために必要である。しかし、ホログラフィック記録媒体の屈折率及びスキュー角の両方は、図3A及び図3Bに示すような面内プリズムを介してアクセスされ得る、記録角度の範囲を制限する。スキュー角と、記録ビーム同士の間の角度との特定の組み合わせについて記録ビームの一方又は両方は、ホログラフィック記録媒体の表面と平行になることがあり、ホログラフィック記録媒体内の記録ビームに干渉することが不可能でなくとも困難になる。
【0064】
これらの幾何学形状の制約がいかにホログラフィックスキューミラーの視野を限定するかを理解するために、図3A及び図3Bに示す面内記録システム300を検討する。図3Bに示すように、1つの記録ビーム331b'が記録媒体310の表面に対して、他の記録ビーム331a'によって作られるグレージング角よりも急な(高い)グレージング角を成す。このグレージング角を増加させることで、ホログラフィック記録媒体によって記録されたホログラフィック格子の空間周波数(大きさ)を減少させ、次にスキューミラーの視野を広げる。残念ながら、グレージング角を増加させることは、記録品質を低下させることがある。なぜなら、それによってプリズム330とホログラフィック記録媒体310との間の収差、及び屈折率の不整合の影響を大きくするからである。
【0065】
更に、スネルの法則が、最大グレージング角を制限することがある(正確な制限は、記録波長、記録媒体及び周囲の媒体の屈折率、並びにスキュー角に依拠する)。この制限を超えると、記録ビーム331b'は、ホログラフィック記録媒体310に結合する代わりに、ホログラフィック記録媒体310から反射することがある。グレージング角の上限は、より低い周波数のホログラムを記録する能力を制限することがあり、これは、いくつかの色、特に大きいスキュー角のスキューミラーの視野を制限することがある。
【0066】
図4A及び図4Bは、図3A及び図3Bそれぞれの面内記録形状の、k空間表現を示す。図4Aでは、記録ビーム331a及び331bはホログラフィック記録媒体に入射し、それによってそれらの波動ベクトルはビーム間の角度αを形成し、ホログラフィック格子を、スキュー軸421と平行である格子ベクトルKと共に記録する。図4Bでは、記録ビーム331a'及び331b'はホログラフィック記録媒体に入射し、それによってそれらの波動ベクトルは、ビーム間の角度α'を形成し、ホログラフィック格子を、スキュー軸421とも平行である格子ベクトルK'と共に記録する。
【0067】
格子ベクトルのサイズは、対応するホログラフィック格子が入射光を反射する内部入射角を決定する。より小さい格子を有するホログラフィック格子は、スキュー軸から測定した、より大きい内部入射角で光を反射し、より大きい格子を有するホログラフィック格子は、スキュー軸から測定したときに、より小さい内部入射角で光を反射する。考えられる最大の格子ベクトルは、記録ビームの波動ベクトルが逆平行で、かつスキュー軸421と位置合わせされたときに記録される。対応するホログラフィック格子は、スキュー軸421に沿って格子媒体に入射する光を逆反射する(ホログラフィックスキューミラーでは「直入射」)。
【0068】
記録ビーム331b'とx軸との間の角度が縮小するので、ビーム間角度αも縮小し、格子ベクトルKのサイズを減少させ、可能な視野を広げる。しかし最後には、記録ビーム331b'とx軸との間の角度は小さくなりすぎて、記録ビーム331b'は、ホログラフィック記録媒体310の中に屈折して入る代わりに、ホログラフィック記録媒体310の表面と平行になる。換言すると、記録ビーム331b'の格子ベクトルがkと位置合わせされるとき、すなわち記録ビーム331b'がホログラフィック記録媒体310の表面と平行であるときに、制限が発生する。このとき、もはや記録ビーム331b'は、ホログラフィック記録媒体310内で他の記録ビーム331a'とは、反射格子を記録するために干渉しない。これは、格子ベクトルの最小サイズ、したがって視野を制限する。スキュー軸を回転させることで、この効果を補償することができるが、許容スキュー角/視野の組み合わせの範囲も制限する。
【0069】
要約すると、図3A図3B図4A、及び図4Bは、面内記録形状における許容スキュー角と許容視野との間のトレードオフを示す。一般的に、面内記録では大きいスキュー角又は大きい視野を有することは可能であるが、両方は可能でない。
【0070】
記録ビーム同士間のアクセス可能な最小角度差は、記録ビーム及び読み取りビームの波長、並びにホログラフィック記録媒体の分散に、部分的に依拠する。多くのホログラフィック記録媒体は、例えば405nmの濃青色波長の格子を記録するため、及び、より長い波長の可視光の影響を受けないように、最適化される。しかし、面内記録システムにおいて、可視波長で広視野を生成するのに十分低い空間周波数における、反射格子を生成するのに十分小さい角度差で、ホログラフィック記録媒体内の濃青色のビームに干渉することは、困難又は不可能である。
【0071】
記録ビームの波長を増大させると、この課題が緩和するが、より長い波長光に感応するホログラフィック記録媒体も必要となる。しかし、より長い波長光のためにホログラフィック記録媒体の感度を上げることによって、ホログラフィック記録媒体が、可視波長での不完全なブリーチングをより受けやすくなる。これは、可視光に敏感な光開始剤を伴うホログラフィック記録媒体は、可視光に露光されると重合することがあり、したがって可視波長で動作するホログラフィック光学素子を作るにはあまり適さないためである。更に、可視光に感応する光開始剤によって、望ましくない可視光の収光度を格子媒体に生じさせることがある。このため、ホログラフィック記録媒体は、可視波長で光を反射するスキューミラーへの使用には適さない。
【0072】
広視野ホログラフィックスキューミラーを作るための面外記録
【0073】
上記で説明したように、形状は、面内記録システムでホログラフィックスキューミラーに書き込むため、アクセス可能なビーム間角度(したがって最大視野)の範囲を制限する。しかし、本発明者らは、面内記録システムによってアクセスされる面から面法線を傾けることにより、より小さいビーム間角度にアクセスすることが可能であることを認識した。換言すると、媒体をスキュー軸の周りに90°回転させることで、図3A図3B図4A、及び図4Bに示す制約条件を緩和する。
【0074】
図5A図5Dは、いかに記録ビーム531a及び531b(まとめて記録ビーム531)を、ホログラフィック記録媒体310のx-z面にあるy軸の周りに回転させるかを示し、面内記録形状で可能であるよりも短いホログラフィック格子を記録することを可能にする。図5A及び図5Cは、記録システムの座標系フレームのz軸(すなわちホログラフィック記録媒体510のy軸)で傾けたホログラフィック記録媒体510に入射した、記録ビーム531の異なる視点からの実空間ビューを示す。記録ビーム531は、x-z面にもある格子ベクトルを記録するために、x-z面内で回転する。
【0075】
図5B及び図5Dは、図5A及び図5Cそれぞれで示す実空間ビューのk空間表現を示す図である。図5B及び図5Dの両図に示すように、記録ビーム531の波動ベクトルは、ホログラフィック記録媒体510内での記録ビームの運動量を表すk空間591のオフアクシススライスを形成する、x-z面内にある。面内記録形状と同様に、記録ビーム531間のビーム間角度を変えることで、格子ベクトルの長さが変化する。最長の格子ベクトル(最大|K|)は、記録ビーム531がx軸に沿って反対方向に伝搬するときに書き込まれ、最短の格子ベクトル(最小|K|)は、記録ビーム531'がz軸(y軸)に沿って共に伝搬するときに発生する。図5Aに示すように、これは両記録ビーム531'のグレージング条件となる。
【0076】
当業者は、図5A図5Cが、記録ビーム及びスキュー角の多くの考えられる向きのうちの1つのみを示していることを理解するであろう。スキュー角及び各記録ビームは、書き込み波長及びホログラフィック記録媒体の屈折率によって課せられた制約内で、望むように調整して、ホログラフィック格子を様々な空間周波数で記録することができる。ホログラフィック格子の正確な数及び空間周波数は、とりわけホログラフィックスキューミラーの所望の視野に依拠する。
【0077】
面内記録対面外記録
【0078】
図6は、特定の記録形状に対する、面外記録対面内記録プリズムの能力を示すプロットである。プロットは、53.4°の水平視野を支持するスキュー軸φ=-30.25°を伴う、導波頭部搭載ディスプレイ(HMD)スキューミラー出力カプラーの空間格子周波数を示す。水平軸は格子周波数(rad/m)で、垂直軸は、格子ベクトル/スキュー角に対するブラッグ整合角を示す。5本の曲線は、5つの異なる示された波長のブラッグ整合角を示し、曲線690はホログラムが記録される(405nm)ときの波長、曲線691は463nm(青色)の波長、692は522nm(緑色)の波長、曲線693は622nm(赤色)の波長、及び曲線694は860nmの波長である。47.75°及び12.75°における水平線は、色によってコード化された、赤色、緑色、及び青色の波長に必要な空間格子周波数の範囲を区分している。
【0079】
面内記録プリズムを用いて、参照ビームのグレージング条件は、実線矢印で示すように、書き込み波長曲線が59.75°(=90°-φ)と交差するときに発生する。これは、面内記録システムが、実線矢印の左側にある格子を記録できないことを意味する。実線矢印の右側に近い格子は、参照ビームが非常に浅い角度で屈折率整合した境界上に入射するために、劣化を被ることがある。
【0080】
しかし面外記録を用いると、書き込み波長曲線がプロットの左縁部で90°交差するまで、グレージング条件は発生しない。白抜き矢印で示される最低書き込み角度は、参照ビーム及び信号ビームの両方の内部境界に対して約22°となり、容易に実行可能な角度である。
【0081】
面外ホログラフィックスキューミラー記録システムのTIGERプリズム
【0082】
図7A図7Cは、広視野でホログラフィックスキューミラーを記録できる、面外ホログラフィック記録システム700の異なる斜視図を示す。このホログラフィック記録システム700では、ホログラフィック記録媒体710は、一対の全内部グレージング・エクステンション・ローテーション(TIGER)プリズム730a及び730b(まとめてTIGERプリズム730)の間に配置される。ホログラフィック記録媒体710はまた、一対の透明基板(図示せず)の間に挟まれてもよく、プリズム730に接触している透明基板の表面には、屈折率整合流体が配置される。これらの基板は、可視波長で、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上の光を透過できる。TIGERプリズム730は、全内部反射(TIR)及びグレージング角の制約のために面内記録形状を用いてはアクセスできない角度で、記録ビームをホログラフィック記録媒体710に導入することを可能にする。
【0083】
図7A図7C(及び図5A図5D)はまた、記録ビーム731a及び731b(図5A図5Dでは531a及び531b)の対称性を示している。より具体的には、これらの図は、記録ビームとホログラフィック記録媒体710の面法線との間の角度の大きさが実質的に等しいことを示している。換言すると、記録ビーム731aが、ホログラフィック記録媒体の面法線に対して第1の角度(例えば32°)を形成する場合、記録ビーム731bとホログラフィック記録媒体の面法線とは、同じ大きさ(例えば-32°)の角度を形成する。(ここで、記録ビーム731は平行であり、したがって一致する/平行な面法線を有する、ホログラフィック記録媒体710の表面に入射する。)これは、図5A図5Dに示すように、記録ビーム731がホログラフィック記録媒体710に対して回転するため、成立する。
【0084】
図7Dに示すように、各TIGERプリズム730は、プリズム基体に対して傾斜したプリズム主面732a、732b(まとめて主面732)を有する。この例では、プリズム730及びホログラフィック記録媒体710がスキューミラー記録システム内に存在するときに、各TIGERプリズム730の主面732は、ホログラフィック記録媒体710に平行かつ直近にある六角形の面である。主面730の傾斜は、図5A図5Dに示すような、面外記録ビーム角及びスキュー角にアクセスすることを可能にする。
【0085】
TIGERプリズム730は、ガラスの直方体又は矩形プリズムを2つのセクションに切断して撮像することによって視認することができる。直方体の切断は、直方体の面(プリズム面734a及び734b)の内の一方の隣接する辺と、直方体の反対面(プリズム面736a及び736b)の他の2つの辺に接続する別の対角線とを接続する、対角線を接合する面に沿っている。結果として得られる直方体のセクションは、TIGERプリズム730の一致した対を形成する。
【0086】
実際、TIGERプリズムは、面外記録角度にアクセス可能に角度を付けられた斜面又はファセットを有する限り、任意の好適な形状であってよい。例えば、TIGERプリズムは、平行六面体及び直角(幾何学的プリズム)を含む、任意の好適な多面体のセクションとして形成され得る。同様に、面/ファセットは、望みのように方向付け又は角度付けすることができ、必ずしも多面体を対称分割したものになる必要はない。面(及びホログラフィック記録媒体)はまた、湾曲していて、例えば球状、円筒状、又は円錐状の表面の少なくとも一部を形成してもよい。任意に湾曲した表面又は反った表面を含む、他の表面も可能である。
【0087】
TIGERプリズムの傾斜した主面732及び他の面(面734及び736など)を使用して、図7A図7Cに示す2つの異なる座標系を画定することができる。図3A及び図3Bに示す面内記録システムのように、軸x、y、及びzは、TIGERプリズム730の基準フレーム内の直交座標である。軸x、y、及びzは、ホログラフィック記録媒体710の基準フレーム内の直交座標(別名標準座標)であり、z軸はホログラフィック記録媒体710の表面に対して垂直に延びる。軸x、y、及びzは、図5A図5Dに示すk空間軸k、k、及びkの実空間での相当物である。
【0088】
図7Cは、TIGERプリズムの場合に標準座標軸がいかにスキューミラー記録器のプリズムと位置合わせされるかを示している。より具体的には、図7Cは、z軸に沿ったTIGERプリズム730のビューを示し、ホログラフィック記録媒体710がφと等しい角度でそれらの間に挟まれている。示した形状では、φは負の符号(例えばφ=-30.25°)を有することに留意されたい。ホログラフィック記録媒体710は、y軸に対して傾いているので、標準座標からグローバル座標への変換について、TIGERプリズム記録システム700は、図3A及び図3Bに示す面内記録システム300とは異なる。本開示の利益から、当業者は、標準座標をTIGERプリズムの場合のグローバル座標に、式(2)によって変換できること確認するであろう。
【数3】
【0089】
最悪の場合の角度を記録ビーム331bグレージング角に課する図3A及び図3Bの「面内」構成とは対照的に、TIGERプリズム730は、記録媒体710をx軸の周りに回転させることができ、記録媒体731a及び731bのグレージング角の間の「差を分割」する。TIGERプリズム構成700及び面内構成300は両方とも、x軸と位置合わせされた格子ベクトルを記録することができ、したがって、同等の書き込まれたスキューミラーが得られる。しかし、TIGERプリズム構成700は、より小さい記録角度にもアクセスすることができ、それによって、面内構成よりも低い空間周波数の格子を記録することができる。
【0090】
図8A図8Cは、TIGERプリズムベースのスキューミラー記録器800を示す。スキューミラー記録器800は、広視野ホログラフィックスキューミラーを作るために、TIGERプリズム730を使用して図7A図7Cに示す記録形状700を実装する。これは、記録ビーム731a及び731bそれぞれを、マウント860のTIGERプリズム730同士の間に取り付けられたホログラフィック記録媒体710に向ける、ミラー850a及び850b(まとめてミラー850)を含む。TIGERプリズムベースのスキューミラー記録器800はまた、ホログラフィック記録媒体730に対する記録ビーム731の角度、及び並進運動の位置合わせを調整するためのステージを含む。これらのステージは、3つのゴニオメータ870a~870c(まとめてゴニオメータ870)と、垂直並進ステージ880と、各ミラー850の回転ステージ872a及び872b(まとめて回転ステージ872)と、取り付けられたホログラフィック記録媒体710及びTIGERプリズム730を前後に移動させるための、水平並進運動ステージ(図示せず)と、を含むことができる。
【0091】
面内記録プリズムの場合、屈折補正及び他の調整は一般に、ミラー350を回転させ、ホログラフィック記録媒体を並進運動させることによって実行される。しかし、TIGERプリズムを用いると、ミラー850を回転させること、又はホログラフィック記録媒体を並進運動させることでは調整できない、所望の面外角度の調整ができる。これは、TIGERプリズムスキュー記録器800に、ゴニオメータ870及び垂直ステージ880など他のアクチュエータを装着させ、面外角度調整を実行できるためである。
【0092】
第1のゴニオメータ870aは、第1の回転ステージ872aの上方の回転ミラー850aの下方に配置され、ミラー850aを、ミラー面の水平中間線に実質的に位置合わせされた軸の周りで回転させることを可能にする。第1のゴニオメータ870aの作動によって、x-z面から数度まで、記録ビーム731aを上下に反射させることができる。同様に、第2のゴニオメータ870bは、記録ビーム731bもミラー850bによって独立して上下に反射できるように配置されている。同様に、第3のゴニオメータ870cは、第1及び第3のゴニオメータ870a、870cの組み合わせが任意の所望のビーム731a高さと垂直角度との組み合わせを(機械的制限内で)生成することができるように、回転ミラー850aの上流側のミラー(符号は付さず)を上下に傾けることができる。垂直ステージ880は、記録媒体710を含む全体のプリズムパッケージ860の高さを上昇又は下降させることができる。
【0093】
補正を実行するための補足的な方法は、記録ビーム731bの経路を調整するための更なるゴニオメータ(図示せず)を追加して、第1及び第3のゴニオメータ870a、870cが所望の高さと垂直角度との組み合わせを生成するのとほぼ同様にして、任意の所望の高さと垂直角度との組み合わせを生成するものである。
【0094】
図9は、回転マウントで一対の光学楔を使用して、この屈折補正を実現する別の方法を示している。この一対の光学楔は、互いに対して位置合わせして、1つの楔で実現できる大きさの2倍の大きさの円錐内の角度を実現することができる。
【0095】
本開示の利益から、当業者は、この構成では、小さい任意の垂直角度成分を各記録ビームの中に導入することが可能となり、一方でビームと記録媒体との間の重複も維持することを認識するであろう。例えば、参照ビーム731bの所望の垂直角度成分を、ゴニオメータ870bを使用して設定し、次に参照ビーム731bが所望の記録領域を通過するように、垂直ステージの高さを設定することができる。次に、信号ビーム731aが、垂直ステージによって設定された高さと一致する高さにおいて、所望の垂直角度で導入されるように、ゴニオメータ870a及び870cを設定することができる。通常は、数度の垂直角度範囲及び数センチメートルの垂直運動のみで、所望の屈折補正及び他の調整を実行するのに十分である。
【0096】
面外ホログラフィックスキューミラーのビーム間角度及びスキュー角の選択
【0097】
図8A図8Cに示す面外スキューミラー記録器800を使用して、ホログラフィック記録媒体の体積内の1つ以上の体積ホログラムを記録することによって、広視野ホログラフィックスキューミラーを作ることができる。これらのホログラムを記録するために選択されるビーム間角度及びスキュー角は、所望の視野及びホログラフィックスキューミラーの作動波長範囲に依拠する。
【0098】
いくつかの場合では、面外スキューミラー記録器800は、多くの個別の格子を記録するために使用され得る。これら格子の各々は、異なる狭い範囲の入射角にわたって、1つ以上の波長の光を主として反射する。これらの範囲の入射角が、互いに重なるか、又は接近する場合、格子は広範囲の入射角にわたって光を反射して、広視野をもたらすことになる。あるいは、ホログラフィックスキューミラーは、ビーム間角度が変化する際に、一対の記録ビーム間の干渉を連続的に記録することによって書き込まれるホログラフィック格子を含み得る。この連続的に記録された格子は、広範囲の入射角にわたって光を反射して、広視野をもたらす。格子の他の組み合わせも、例えば特定の角度範囲にわたって光を反射するが、それ以外を反射しないか、又は特定の波長範囲にわたって反射するが、それ以外は反射しない、ホログラフィックスキューミラーを生成することが可能である。
【0099】
少なくとも1つの例では、スネルの法則のベクトル形状を使用して、記録媒体とプリズムとの間の内部境界における屈折の際の、記録ビームの方向を計算することができる。ホログラフィーの当業者が理解するように、スネルの法則のベクトル形状は、2つ以上の座標軸に非ゼロ成分を含む角度でプリズム面などの光学的境界に当たる光線に、何が起こるかを表している。スネルの法則のベクトル形状は、次のような表面においてもたらされる屈折を示す。
【数4】
ここで
【数5】
は光境界の単位法線ベクトル、
【数6】
は正規化された入射及び屈折した線方向ベクトルであり、n及びnは第1及び第2の材料の屈折率である。TIGERプリズムでは、このような屈折は通常、グローバル座標系の2つ以上の軸に非ゼロ成分を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、屈折率は、記録媒体などの光学要素同士の間で一致せず、記録プリズムはスネルの法則を用いて補正される。例えば、記録露光中に、記録媒体710内の信号ビーム(図7A図7D図8A図8C)に対して、内部線方向ベクトル
【数7】
が望ましいことがある。外部角を決定するために、媒体710内の内部角θ
【数8】
を生成するために適用されなければならない。このために、スネルの法則が記録プリズム730aと記録媒体710との間の内部境界で適用され、プリズム730a内の光線方向ベクトルである
【数9】
を決定することができる(小さい屈折の不一致でさえ、大きい屈折を生成することがあることに留意されたい)。次に、スネルの法則を再び記録プリズム730bの外部表面で適用して、
【数10】
から外部光線方向ベクトル
【数11】
を決定してよい。したがって、外部光線の方向ベクトル
【数12】
は、回転ミラー850bによって設定され得るθを直接決定する。同様に、回転ミラー850aの角度は、所望の基準光線方向ベルトル
【数13】
から、記録プリズム730aの内面及び外面を介してトレースすることによって決定することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、屈折補正以外の理由で、記録角度に対する調整を行うことができる。他の調整の例として、分散補償、媒体収縮事前補償、及び変調用変成機能(MTF)又はカラープレーン分離を改善するための経験的調整が挙げられる。例えば、これらの調整は、機器誤差、収縮、屈折率不整合などを補償するために実行することができる。このようなエラーは、(不完全な)ホログラムを用いて完全な試験スキューミラーを書き込むことによって、及びホログラムの不完全性を、試験スキューミラーの角度分散を波長の関数として測定することによって究明することで、経験的に判定することができる。これらの測定値を用いて、設計角度を調整することができる。一旦設計角度が調整されると、実際上不完全性を含まないホログラフィックスキューミラーを記録することが可能になる。
【0102】
広視野のホログラフィックスキューミラー
【0103】
実際に、面外スキューミラー記録器は、ホログラフィック記録媒体内のホログラフィック格子のうちの1つ以上(例えば10、100、又は1000)を記録することによって、広視野のホログラフィックスキューミラーを作り出すことができる。角度走査ビームの単一連続露光における単一の格子とは反対に、一連の露光にわたって格子の個別なセットを書き込むことは、いくつかの利点を提供する。第1に、露光中の振動を抑制又は補償する必要性が低減される。第2に、連続格子に比べて、入射光をスペクトル的に二段抽出するという犠牲を払って、個別の格子は屈折率の変化Δnを保存する(個別の格子が光照明スキューミラーに反射くし型関数を適用する)。第3に、光源のスペクトルに一致させる格子の間隔を入念に選ぶことで、デバイスがより効率的になる。
【0104】
図10は、面外書き込み形状を用いて作られた、広視野ホログラフィック入力/出力カプラー1000を示している。ホログラフィックスキュー入力/出力カプラー1000は、約100ミクロン以上の厚さであってよいホログラフィック格子媒体1010に記録されたホログラフィック格子構造1020を含む。格子構造1020は228個の格子を含み、それらの各々は異なるビーム間記録ビーム角と共に記録され、したがって、記録波長において異なる格子周波数(|K|)を有する。これらの格子は、ホログラフィック格子媒体1010の面法線1011に対して約φ=-30.25°のスキュー角を形成するスキュー軸1021を中心として方向付けられる。実際には、他のスキュー角、例えば2.0°、5.0°、10.0°、15.0°、30.0°、45.0°、60.0°などより大きいスキュー角が可能である。スキュー角は、約15.0°~45.0°(例えば約20.0°~約40.0°、約25.0°~約35.0°、約27.5°~約32.5°など)の範囲であってよい。
【0105】
また、格子は、ホログラフィックスキューミラー1000で、反射軸1021から測定すると入射角θRAI=34.5°の範囲の、13.1°~47.6°の入射角の範囲で、実質的に一定である反射軸1021で内部入射光を反射させる。これは、約θFOV=54.3°のホログラフィック格子媒体の外側の空気中で測定された視野に相当する。スキュー軸1021に対して13.1°~47.6°で測定した角度範囲(約34.5°の角度範囲)にわたる、斜線領域内1001を伝搬する光線が、格子構造1020を照明する。格子構造1020は、主としてこの光を斜線領域1003の中に反射する。斜線領域1003は、スキュー軸1021の他方側で同じ角度範囲(-13.1°~-47.6°)にわたる。第3の斜線領域1003の主反射光は、表面1020で屈折して第4の斜線領域1003'に入り、約54.3°の水平視野にわたる。
【0106】
図10を参照すると、これは、スキュー軸1021から測定した47.6°の角度で、光線1091に続く入射光が、光線1091とスキュー軸1021の周りで対称である光線1093に沿って、格子構造1020から反射することを意味する。この主反射光1093は、表面1012において光線1093'に沿って屈折する。同様に、光線1081'に続く入射光が、スキュー軸1021から測定した角度13.1°で光線1081に沿って、ホログラフィックスキューミラー1000の表面1012から全内部反射する。格子構造1020は、スキュー軸1021の周りで光線1081と対称である光線1083に沿って、この入射光を反射する。この主反射光1083は、表面1012において光線1083'に沿って屈折する。
【0107】
図11は、格子を記録するために使用される記録ビームの波動ベクトルと共に、1番目の格子KG1及び228番目の格子KG228の格子ベクトルのk空間表現を示す。格子ベクトル及び波動ベクトルが、405nmの記録波長で約1.5471の屈折率を有するホログラフィック格子媒体1020のk球体1191に対して示されている。平面内に投影すると、格子ベクトル及び波動ベクトルの先端が楕円上に位置する。第1の格子R1及びR2それぞれの、第1及び第2の記録ビーム波動ベクトルは、反射軸1021に対してホログラフィック格子媒体で角度32.0°及び148.0°をそれぞれ形成し、約4.1×10rad/mの格子周波数の第1の格子を生成する。228番目の格子の波動ベクトルR1228及びR2228は、スキュー角1021に対してホログラフィック格子媒体で角度64.1°及び115.9°をそれぞれ形成し、約2.1×10rad/mの格子周波数の228番目の格子を生成する。各格子ベクトルは、面法線1011に対して-30.25°に角度付けられている。
【0108】
図10の格子構造1020における、この格子ベクトルは、約2.0×107rad/mの格子周波数範囲にわたる。他の格子周波数及び格子周波数の範囲も可能であり、実際、格子周波数の範囲又は最大格子周波数と最小格子周波数との差は、約2.00×10ラジアン/メートル~約3.15×10ラジアン/メートル(例えば約2.00×10ラジアン/メートル、1.68×10ラジアン/メートル、5.01×10ラジアン/メートル、1.24×10ラジアン/メートル、3.15×10ラジアン/メートル、又は任意の他の値又は部分範囲)であってよい。
【0109】
格子は、k空間内で均一に又は不均一に離隔されてもよい。約2.1×10rad/m、及び約4.1×10rad/mの格子周波数を伴う、均一に離隔された約228個の格子について、隣接する格子ベクトル間の格子周波数の差は、約8.68×10rad/mである。約5.0×10rad/m、及び1.0×10rad/mの範囲内の間隔を含む、他の間隔も可能である。例えばホログラフィックスキューミラーが、ある波長又は角度の光を反射すべきであるが、その他は反射すべきではない場合は、不均一な間隔も可能である。例えば、格子周波数は、入射光のスペクトル、及び/又は効率を上げるための予想される入射角の範囲に基づいて、選択してよい。
【0110】
角格子が異なる格子周波数を有するため、各格子は異なる入射角から異なる主反射角へ光を反射する。可能な入射角の範囲は、格子周波数範囲に依拠し、視野を決定する。例えば各格子は、1つの波長(例えば460nm、518nm、又は618nm)、2つの波長(例えば460nm及び518nm、又は518nm及び618nm)、3つの波長(例えば460nm、518nm、及び618nm)、又はそれより多い波長の光を反射することができる。格子は、可視波長、近赤外線(NIR)波長、近紫外線波長、又はそれらの組み合わせの光を反射することができる。これにより、スキューミラーは、狭帯域光(例えばレーザーからの光)、広帯域光(例えば有機発光ダイオード(OLED)からの光)、及び更には自然光(例えば太陽光)を反射できる。
【0111】
入力/出力カプラーのため、スキュー軸は、例えば図10に示すように面法線の近くの角度で、格子媒体を出入りする光を結合するように選択され得る。これらの場合、スキュー角は、全内部反射の臨界角に基づいてよい。この臨界角は、空気と格子媒体との間の境界であり、約40.81°(例えば、可視波長でn=1.53)である。
【0112】
表1は、228個の均一な間隔の格子の各々についての、記録ビーム角及び格子周波数を列挙している。第1の記録ビーム角θR1及び第2の記録ビーム角θR2は、記録媒体の面法線に対して-30.25°のスキュー角を有するスキュー軸を基準とする。したがって、表1に列挙された格子ベクトルは、記録媒体の面法線に対して-30.25°に方向付けられ、この記録媒体は、全228個の格子が記録された後の格子媒体と称される。θR1及びθR2が媒体710内で測定され、プリズム730がないこと以外は、図7Bに示すように、θR1及びθR2は、θGR1及びθGR2それぞれに類似する。
【0113】
全体として、表1の228個の格子は、反射軸に対して13.1~47.6°の範囲(34.5°の範囲)の入射角で、実質的に一定の反射軸で460nm、518nm、及び618nmの入射光を反射するように構築される。反射軸は、面法線に対して-30.25°の角度の反射軸を有する。格子は、3つの重複するサブセットにグループ分けすることができ、その各々は、ある入射角の範囲で、特定の波長の入射光を反射軸で反射するように構築される。
【0114】
格子1~146を含むサブセット1は、反射軸に対して13.1~47.7°の範囲の入射角で、実質的に一定の反射軸で460nm又はほぼ460nm(例えば460nmを中心に20~40nmの帯域にわたる)の入射光(プローブ光と称され得る)を反射するように構築される。格子1~228(すなわち表1の格子全て)は全体として、反射軸に対して13.1~59.8°の範囲(46.7°の範囲)の入射角で、実質的に一定の反射軸で460nmの入射光を反射することができる。13.1~47.6°の範囲は、実質的に一定の反射軸に対して共通の入射角で、青色光、グレーン光、及び赤色光を反射するように構築されたスキューミラーを対象とする。
【0115】
格子53~182を含むサブセット2は、反射軸に対して12.8~47.7°の範囲の入射角で、実質的に一定の反射軸で518nmの入射光を反射するように構築される。全体として、格子43~228は、反射軸に対して3.1~55.6°の範囲(52.5°の範囲)の入射角で、実質的に一定の反射軸で518nmの入射光を反射することができる。13.1~47.6の範囲は、本説明の目的を対象とする。
【0116】
格子120~228を含むサブセット3は、反射軸に対して12.5~47.6°の範囲の入射角で、実質的に一定の反射軸で618nmの入射光を反射するように構築される。格子112~228は、反射軸に対して3.0~47.6°の範囲(44.6°の範囲)の入射角で、実質的に一定の反射軸で618nmの入射光を反射するように構築される。13.1~47.6の範囲は、本説明の目的を対象とする。
【0117】
少なくとも格子198~228は、図3A及び図3Bに示すような面内記録を用いて記録することはできない。なぜなら、面内記録形状は許容できない記録ビーム角である90°になり、記録媒体の面法線より相対的に大きいからである。実質的には、格子115~198は、理論的には可能であるが、記録ビーム角がグレージング条件に近づく(すなわち90°に近づく)ため、面内アーキテクチャを使用することは問題となる可能性がある。図7A図7Cに示すようなTIGERプリズムを使用する面外記録は、表1の全ての格子を書き込み可能にする。
【0118】
記録ビーム角及び露光時間の選択
【0119】
面外書き込み形状を伴うホログラフィックスキューミラーを作るために、コンピュータコードを使用して、書き込みビーム角及び露光時間を計算することができる。下記のコンピュータコードのスニペットは、対角視野から水平及び垂直視野を計算する。上述のように、このホログラフィックスキューミラー1000は、60°の対角視野(ホログラフィック記録媒体1020の外部で測定)を有する。変数gアスペクト=9/16の場合、アスペクト比は16:9であり、多くのディスプレイに共通である。
g.dFoV = 60; % diagonal angle
g.dia = 2 * tand(g.dFoV/2); % diagonal size @ dist=1.0
g.width = g.dia * cos(atan(g.aspect));
g.height = g.dia * sin(atan(g.aspect));
g.vFoV = 2 * atand(g.height/2);
g.hFoV = 2 * atand(g.width/2);
【0120】
60°の対角視野及び16:9のアスペクト比は、53.4°の水平視野及び31.6°の垂直(ブラッグ縮退)視野(これもホログラフィック記録媒体の外部で測定)に相当する。(方向の選択は任意であり、反転させる、すなわち水平視野を31.6°にし、垂直視野を53.4°にすることもできる。)約1.5の屈折率(例えばn=1.53)のホログラフィック記録媒体では、媒体の内側で測定されたホログラフィック格子における水平入射角の範囲は、約35°(例えば34.17°)である。
【0121】
図12は、異なるコンピュータコードによって生成された曲線のセットを示し、各カラー帯域のホログラム(ホログラフィック格子)を例示している。これらの曲線は、53.4°の水平視野を有するホログラフィック出力カプラーの、スキューミラー内部角波長帯域1201a~1201eを表す。左帯域1201aは、赤色光を反射するホログラムを表す。中間帯域1201cは、全ての3色帯域に使用されるホログラムを表す。中間左帯域1201bは、緑色及び赤色帯域で共有されるホログラムを表す。中間右帯域1201dは、青色及び緑色帯域で共有されるホログラムを表す。そして、右帯域1201eは、青色光を反射するホログラムを表す。
【0122】
コードは、表1の下に示す記録パラメータの表も生成した。パラメータは、それぞれ620nm、520nm、及び460nmを中心とする、赤色、緑色、青色(RGB)色帯域で、出力カプラーの53.4°の水平視野を支持するために選択した。
【0123】
表1の228個の行は、図7A図7D及び図8A図8Cに示す面外書き込み形状及びシステムを用いてスキューミラーをプログラムするための228種の露光に対応している。第1の列のグローバル角度は、回転ミラー850a(図8A)によって設定された、媒体内部のx軸に対する信号ビーム731a(図7A)の角度θを示す。回転ミラー850bは、媒体内部の角度180°-θで参照ビーム731bを送達するために設定される。列3の調整角度は、ゴニオメータ870を設定して、媒体内の両ビーム731の示された面外角度成分を生成するために使用する。信号ビームが上向き角度で送達され、参照ビームが同じ大きさで下向き角度で送達され、その逆も成り立つように、この調整は2つのビーム731に対して等しい大きさであるが、反対の符号である。記録媒体710の中心が記録ビーム731の交差部となるように、直線ステージ及び垂直ステージ880が設定される。次にシャッタを開いて、記録媒体710を列2に示す時間の間露光する。表1の全ての露光を記録した後、記録媒体710をスキューミラー記録器から取り外し、露光直後に非干渉性のUVLED光源で後硬化させる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0124】
実験実証
【0125】
図13は、表1に示すパラメータに従って組み立てられたホログラフィックスキューミラー出力カプラー1300(例えば図10に示す出力カプラー1000など)を伴う、スラブ導波路1350を示す。ホログラフィックスキュー出力カプラー1300は、53.4°の水平視野及び31.6°の垂直視野(ブラッグ縮退)を有していた。スキューミラー出力カプラーは、表1のパラメータに従って記録媒体にプログラムした。光学的に平坦な導波路パッケージは、Akonia formulation AK291フォトポリマー媒体の500μmの記録層1310を伴う、2つの1"×2"500μm厚のEagle XG ガラス基板1354を使用して組み立てられた。これらの基板は、両方向に入射する可視光の約90%を透過させる。TIGERプリズムスキュー記録器は、平行にした信号及び概ね40mm径の参照ビームを、各ビームを概ね2mW/cmの光パワーで送達した。各ビームは、測定値25×21mm(幅×高さ)の矩形の開口によってアポダイズされた。
【0126】
得られた導波路1350及び出力カプラー1300をテストして、その特性を検証した。光学接着剤を使用して結合プリズムを導波路1350の左(x<0)端に取り付け、画像1301を、既製のピコプロジェクタを使用して結合プリズムを介して導波路に投影した。この画像を、記録層内で、基板境界での全内部反射を介して出力カプラー1300内の格子に導いた。これらの格子は、面法線に対して約-30.25°の角度を形成する反射軸で、画像をカプラー1300の外に(例えば目に向けて)反射する。出力画像1303'を、53.4°の水平視野を概ね確認するために目視検査をした(ピコプロジェクタは30°までの視野しか有さないので、手動で回転させて導波路範囲の両端部を調べた)。
【0127】
変調伝達関数(MTF)試験を視野にわたって実行して、投影された画像の品質を検証した。図14は、視野にわたって測定されたMTFの9つのプロットを集めた図である。図内のプロット位置は視野内の位置に対応している(すなわち左上のプロットは視野の左上に、中央は中央に対応する等)。図14の水平軸の各プロットは空間周波数(サイクル/度)であり、垂直軸はコントラスト比(CR)である。濃い線は垂直MTFに相当し、薄い線は水平MTFに相当する。劣化の大部分はプロジェクタのレンズに起因し、これは、出力カプラーによって悪影響を受けない垂直MTFのCRが低いことによって実証される。
【0128】
スキューミラーベースの頭部搭載ディスプレイ
【0129】
図15は、見る人の目1599に画像を投影するための、広視野スキューミラーベースのカプラーを備える頭部搭載ディスプレイ1500を示す。1つ以上のレーザー又は発光ダイオード(LED)によって照明され、アイウェアのつる1504の中又はアイウェアのつる1504に沿って配置されるマイクロディスプレイなどの、画像ソース1502は、アイウェアのつる1504に実質的に平行方向に、1つ以上の色(例えば赤色、緑色、及び青色光)で画像光1501を放出する。一対の透明基板1512の間に挟まれた格子媒体に記録された格子構造を含む、スキュー入力カプラー1510は、光をスラブ波動路1520に結合する。(プリズム又は縁部結合を使用して、画像ソース1502からの光1501をスラブ波動路1520に結合することもできる。)スラブ波動路1520は、図10に示すようなスキュー出力カプラー1530に、この光1511を導く。
【0130】
このスキュー出力カプラー1530は、透明基板1512の間に挟まれた更なる格子媒体に記録された別の格子構造を含む。スキュー出力カプラー1530は、見る人が知覚したときに、例えば水平に約50°及び垂直に約30°に及ぶ広視野にわたって、見る人に向けてこの光1531を結合する。これにより、見る人に広視野の画像を知覚させることができる。図15に示すように、スキュー入力カプラー1510は、約+30.25°のスキュー角を有し、スキュー出力カプラー1530は、約-30.25°のスキュー角を有する(例えば図10に示すスキュー入力/出力カプラーなど)。
【0131】
結論
【0132】
様々な発明の実施形態を本明細書で説明かつ図示してきたが、当業者は、様々な他の方法、並びに/又は、機能を実行するために、及び/若しくは結果を得るための構造、並びに/又は、本明細書で説明した1つ以上の利点を容易に着想するであろう。これらの変更及び/又は修正の各々は、本明細書で説明した発明の実施形態の範囲内にあるものとする。より一般的には、本明細書で説明した全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成は例示的であり、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、発明の教示が用いられる特定の用途に依拠するであろうことを、当業者は容易に理解するであろう。当業者は、本明細書で説明された特定の発明の実施形態に対する多くの均等物について、認識することになるか、又は、単なる通常の実験のみを使用して確認することが可能となるであろう。したがって、前述の実施形態は例としてのみ提示されること、及び、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内で、発明の実施形態が特に記載され請求されたもの以外を実行し得ることを理解されたい。本開示の発明の実施形態は、本明細書で説明した各個別の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、これらの特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は材料が互いに相反しない場合、2つ以上のこれらの特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0133】
上述の実施形態は、多くの任意の方法で実施できる。例えば、本明細書で開示した技術の設計及び製造の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを用いて実施され得る。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに提供されるか、又は複数のコンピュータの中で分配されるかのいずれかで、任意の好適なプロセッサ又はプロセッサの集合体で実行することができる。
【0134】
本明細書で強調された様々な方法又はプロセス(例えば上記で開示した技術の設計及び製造)を、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の1つを利用する、1つ以上のプロセッサで実行可能なソフトウェアとして、コード化してもよい。加えて、このようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラム言語、及び/又はプログラミングツール若しくはスクリプティングツールのいずれかを用いて書き込むことができ、フレームワーク又は実際の機械で実行される実行可能な機械言語コード、又は中間コードとして編集されてもよい。
【0135】
この点において、様々な発明コンセプトを、1つのコンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えばコンピュータメモリ、1つ以上のプロッピーディスク、コンパクトディスク、光学ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ若しくは他のセミコンダクタデバイスの回路構成、又は他の非一時的媒体若しくは有形コンピュータ記憶媒体)として具現化することができ、1つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサで実行されるときに、上述した発明の様々な実施形態を実施する方法を実行する1つ以上のプログラムと共に符号化され得る。コンピュータ可読媒体又はメディアは、移動可能であってよく、それによって、その中に記憶されたプログラムを1つ以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサでロードして、上述した本発明の様々な態様を実行することができる。
【0136】
用語「プログラム」又は「ソフトウェア」若しくは「コード」は、コンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために利用して上述の実施形態の様々な態様を実施できる、任意のタイプのコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令を指すための、一般的な感覚で本明細書で用いられる。加えて、1つの態様に従って、実行されたときに本発明の方法を実行する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサに常駐する必要はなく、いくつかの異なるコンピュータ又はプロセッサに中でモジュラー方式で分配され、本発明の様々な態様を実行できることを理解すべきである。
【0137】
コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなど、多くの形態であってよい。概して、プログラムモジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、及び特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データタイプを実装するデータ構造などを含み得る。通常、プログラムモジュールの機能性は、所望の様々な実施形態に組み合わせてもよく、又は割り当ててもよい。
【0138】
また、データ構造を、任意の適切な形式でコンピュータ可読媒体に記憶してもよい。図を簡略化するために、データ構造が、データ構造の位置を介して関係するフィールドを有するよう示されることがある。このような関係は、フィールド間の関係を搬送するコンピュータ可読媒体内の場所と共に、フィールドの記憶を割り当てることによって同様に達成され得る。しかし、任意の好適な機構を用いて、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用を介することを含む、データ構造のフィールド間の情報の関係を確立してもよい。
【0139】
また、様々な発明コンセプトが、例が提供された1つ以上の方法として具現化され得る。方法の一部として実行された行為は、任意の好適な方法で順序づけてよい。したがって、たとえ例示の実施形態では連続した行為として示されていても、実施形態は例示と異なる順序で行為が実行されるように構築されてもよく、いくつかの行為を同時に実行することを含んでよい。
【0140】
ここで定義され使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文書中の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味にわたって定めていることを理解すべきである。
【0141】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される不定冠詞[a]及び「an」は、そうでないことを明記しない限り、「少なくとも」を意味するものと理解すべきである。
【0142】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるフレーズ「及び/又は(and/or)」は、結合した要素、すなわち、ある場合には結合して存在する要素、他の場合には分離して存在する要素の「どちらか又はどちらも」を意味することを理解すべきである。「及び/又は」と共に記載された複数の要素は、同じように、すなわち結合した要素のうちの「1つ以上」と解釈すべきである。具体的に識別されたそれらの要素と関係するか、又は関係しないかのいずれかで、「及び/又は」節によって具体的に識別された要素以外の、他の要素が任意で存在する。したがって、非限定の例として、「含んでいる(comprising)」などのオープンエンドの言葉と共に使用するとき、「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、Aのみ(任意でB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態ではBのみ(任意でA以外の要素を含む)を指し、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意で他の要素を含む)を指す。
【0143】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、「又は(or)」は上記で定義したように「及び/又は」と同じ意味を有することを理解すべきである。例えば、リストのアイテムを分離するとき、「又は」又は「及び/又は」は包括的、すなわち、いくつかの要素又は要素のリスト、並びに任意で更なるリスト外のアイテムの内の、少なくとも1つを含むが、1つより多くも含むものと解釈され得る。対照的に、「のうちの1つだけ(only one of)」若しくは「のうちの唯一(exactly one of)」、又は特許請求の範囲で使用される「からなる(consist of)」など、明確に唯一であることを示す用語は、いくつかの要素又は要素のリストのうちの、ただ1つの要素の含包を指すことになる。一般的に、本明細書で使用する用語「又は」は、「どちらか一方(either)」、「のうちの1つ(one of)」、「のうちの1つだけ」、又は「のうちの唯一」などの排他的用語が先行する場合、排他的選択(すなわち一方又は他方であるが、両方ではない)を示すものとしてのみ解釈され得る。「から本質的になる(consisting essentially of)」が特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるような通常の意味を有し得る。
【0144】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、1つ以上の要素のリストに関連するフレーズ「少なくとも1つ(at least one)」は、要素のリストの任意の1つ以上の要素から選択された少なくとも1つの要素だが、要素のリスト内で具体的に列挙された各全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しないことを意味すると理解すべきである。この定義はまた、具体的に識別されたそれらの要素に関連するか、又は関連しないかのいずれかで、要素のリスト内で具体的に識別された要素以外で、フレーズ「少なくとも1つ」が指す要素を任意で提示させる。このように、非限定の例として、「A及びBの内の少なくとも1つ」(換言すると「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は換言すると「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意で1つより多くを含み、Bを含まない(及び任意でB以外を含む)Aを指し、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意で1つより多く含み、Aを含まない(及び任意でA以外の要素を含む)Bを指し、更に別実施形態では、少なくとも1つ、任意で1つより多くを含むA、及び少なくとも1つ、任意で1つ以上より多くを含むB(及び任意で他の要素を含む)を指す。
【0145】
特許請求の範囲、並びに上記の明細書では、「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」、「保持している(carrying)」、「有している(having)」、「含有している(containing)」、「関わる(involving)」、「保持している(holding)」、「から構成される(composed of)」などの移行句は、オープンエンド、すなわち含むが限定しないことを意味することを理解されたい。米国特許商標庁の特許調査手順マニュアルのセクション2111.03に記載されているように、移行句「からなる」及び「から本質的になる」だけが、クローズ又はセミクローズの移行句となり得る。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15