IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノバルティス アーゲーの特許一覧

特許7001617無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法
<>
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図1
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図2
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図3
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図4
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図5
  • 特許-無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】無線通信デバイスを含む収容装置およびその操作方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/073 20060101AFI20220112BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20220112BHJP
   A61J 1/14 20060101ALI20220112BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20220112BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220112BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20220112BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20220112BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G06K19/073 045
A61J1/00 430
A61J1/14
B65D25/20 K
G06K19/077 152
G06K19/073 081
G06K19/07 230
G06K19/077 304
G06K19/077 240
H04B5/02
H04B1/59
G06K19/073 090
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018555762
(86)(22)【出願日】2017-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2017055825
(87)【国際公開番号】W WO2017186402
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-02-12
(31)【優先権主張番号】16167131.8
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16172924.9
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント,アンドルー
【審査官】梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-117933(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0254665(US,A1)
【文献】特開2008-239282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/073
A61J 1/00
A61J 1/14
B65D 25/20
G06K 19/077
G06K 19/07
H04B 5/02
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体物質または液体を受け入れる内部を備える容器本体(110)と、
1つまたは複数の巻線の形で配置された導体(145)によって形成された近距離アンテナ(141)、コントローラ(600)、およびデータ記憶領域(670)を含む近距離無線通信システムで構成された第1の無線通信システム(210)と、
第1の感知・切替え装置(143)および第2の感知・切替え装置(280)と
を備えた収容装置(100)であって、
前記第1の感知・切替え装置(143)が、前記第1の無線通信システム(210)の主要動作モードを無効にする第1のプリセット状態を含むように構成され、前記第1の感知・切替え装置(143)が、最初の開放イベントの際に、前記第1のプリセット状態を、不可逆的に解除するように構成され、
前記第2の感知・切替え装置(280)が、前記第1の無線通信システム(210)の前記主要動作モードを無効にする第2のプリセット状態を含むように構成され、前記第2の感知・切替え装置(280)が、取出しイベントの際および収容装置(100)の中身の取出し動作を参照するそれぞれの取出しイベントの持続時間の間のみ、前記第2のプリセット状態を解除するように構成されており、前記容器内部からの最初の取出し動作およびその後のいずれかの取出し動作がそれぞれ前記取出しイベントを始動し、
(i)前記第1のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの代替動作モードを有効にすることを含み、または
(ii)前記第1のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの完全に無効にされた操作可能性を含み、前記第2のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの代替動作モードを有効にすることを含む、前記収容装置(100)。
【請求項2】
前記第1のプリセット状態または前記第2のプリセット状態が、前記データ記憶領域(670)に対する前記コントローラ(600)の無効にされたアクセス可能性を含む、請求項1に記載の収容装置(100)。
【請求項3】
前記近距離無線通信システムが、前記データ記憶領域(670)とは異なるさらなるデータ記憶領域(680)を含み、前記さらなるデータ記憶領域(680)に対するアクセス可能性が、前記データ記憶領域(670)に対するアクセス可能性が無効にされたときに有効にされ、前記さらなるデータ記憶領域(680)に対するアクセス可能性が、前記データ記憶領域(670)に対するアクセス可能性が有効にされたときに無効にされる、請求項2に記載の収容装置(100)。
【請求項4】
前記第1の感知・切替え装置(143)が、前記近距離アンテナ(141)に並列に接続された破断可能な導電性ループ(143)を備え、アパーチャ(126)の最初の開放によって前記破断可能な導電性ループ(143)が破断するように配設され、
前記破断可能な導電性ループ(143)が、電子構成部品(270)、または前記破断可能な導電性ループ(143)においてループ状にされた1つを超える電子構成部品で構成された回路を備え、前記電子構成部品(270)または前記回路により、範囲外の領域にある、前記近距離アンテナ(141)の共鳴周波数をシフトする、請求項1に記載の収容装置(100)。
【請求項5】
前記第1の感知・切替え装置(143)が、一端で、前記データ記憶領域(670)および/またはさらなるデータ記憶領域(680)の選択接続ライン(650)に接続された破断可能な導電性ループ(143)を備える、請求項2または3に記載の収容装置(100)。
【請求項6】
前記第2の感知・切替え装置(280)が、前記近距離アンテナ(141)の前記導体(145)へとループ状にされた接触スイッチ(280)を備え、
前記接触スイッチ(280)が、取出し動作のために機械的力が掛けられると回路を閉路するように構成されている、請求項1に記載の収容装置(100)。
【請求項7】
前記第2の感知・切替え装置(280)が、前記データ記憶領域(670)および/またはさらなるデータ記憶領域(680)の選択接続ライン(650)に接続された接触スイッチ(280)を備え、
前記接触スイッチ(280)が、取出しのために機械的力が掛けられると回路を閉路または開路するように構成されている、請求項2または3に記載の収容装置(100)。
【請求項8】
前記第1のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの完全に無効にされた操作可能性を含み、
前記収容装置は、
さらなる導体によって形成されるさらなる近距離アンテナ(530)を含むさらなる近距離無線通信システム(510)を備えるさらなる無線通信システム(520)と、
前記さらなる無線通信システム(520)の操作可能性を有効にするプリセット状態を含むように構成された第3の感知・切替え装置(540)であって、最初の開放イベントまたは取出しイベントの際にそのプリセット状態を解除するように構成されている前記第3の感知・切替え装置(540)と
をさらに備える、請求項1に記載の収容装置。
【請求項9】
前記第3の感知・切替え装置(540)が、最初の開放または取出しによってさらなる破断可能な導電性ループ(540)を破断するように配設された、前記さらなる破断可能な導電性ループ(540)を備える、請求項8に記載の収容装置。
【請求項10】
無効にされた操作可能性のプリセット状態を含むように構成された第2の無線通信システム(430)をさらに備え、
前記第1の無線通信システム(210)が、前記主要動作モードのとき、前記第2の無線通信システム(430)の前記プリセット状態を解除するように構成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の収容装置。
【請求項11】
前記第1の無線通信システム(210)が、前記第2の無線通信システム(430)の前記プリセット状態を不可逆的に、または、前記第1の無線通信システム(210)によって決定される期間の間だけ、または、前記主要動作モードが有効にされる期間の間だけ、解除するように構成されている、請求項10に記載の収容装置。
【請求項12】
前記第2の無線通信システム(430)が、IEEE 802.11(無線LAN)システム、またはデジタルマルチプレクサ(DMX)インターフェースシステム、またはデジタル調光照明インターフェース(DALI(登録商標))システム、またはZigBee(登録商標)システム、またはブルートゥース(登録商標)システムのうち少なくとも1つを含む、請求項10に記載の収容装置(100)。
【請求項13】
エネルギー蓄積素子(420)をさらに備え、前記第2の無線通信システム(430)が、前記エネルギー蓄積素子(420)によって電力供給されるように構成された、請求項10~12のいずれか1項に記載の収容装置(100)。
【請求項14】
容器本体(110)と、近距離無線通信システムで構成された第1の無線通信システム(210)と、前記第1の無線通信システム(210)の主要動作モードを無効にする第1のプリセット状態を含む第1の感知・切替え装置(143)および前記第1の無線通信システム(210)の前記主要動作モードを無効にする第2のプリセット状態を含む第2の感知・切替え装置(280)とを有する収容装置(100)の無線通信システムを操作する方法であって、
最初の開放イベントの際に、不可逆的に前記第1の感知・切替え装置(143)の前記第1のプリセット状態を解除するステップ、および
取出しイベントの際および収容装置(100)の中身の取出し動作を参照するそれぞれの取出しイベントの持続時間の間のみ、前記第2の感知・切替え装置(280)の前記第2のプリセット状態を解除するステップ
を含み、
前記容器内部からの最初の取出し動作およびその後のいずれかの取出し動作がそれぞれ前記取出しイベントを始動し、
(i)前記第1のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの代替動作モードを有効にすることを含み、または
(ii)前記第1のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの完全に無効にされた操作可能性を含み、前記第2のプリセット状態は、前記近距離無線通信システムの代替動作モードを有効にすることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、収容装置に関し、特に、医薬品を収容または分配する収容装置に関する。収容装置は、無線通信デバイスを備え、製品の非接触認証および追跡に有用である。
【背景技術】
【0002】
非接触認証のため、NFCとも呼ばれる「近距離通信」の技術が提案されてきた。近距離無線通信(NFC)は、家庭用電子製品、モバイルデバイス、およびPCにおけるインタラクティブな利用向けに開発されてきた短距離無線通信技術である。この技術は、近接している2つのデバイス間でのデータの交換を可能にするものであり、「無線周波数識別デバイス(RFID)」に関する近接型カード規格の拡張である。
【0003】
NFCベースの通信は、2つのNFC実体間で確立されてもよく、一方は、製品に取り付けられた非接触タグとして働き、他方は、固定デバイスに、またはモバイルデバイス、例えば、スマートフォンにすら埋め込まれ得る、非接触NFCリーダ/ライタとして働く。RFIDラベル上のNFCエンティティから読み取られ、またはNFCエンティティに対して書き込まれ得るデータ記憶容量は膨大であるが、NFC用のRFIDラベルは、単純であってバッテリ電力が不要なことから、非常に小さく安価にすることができる。
【0004】
RFIDラベルを保持する収容装置は、一意の識別番号(ID)、製品タイプ、製造日、貯蔵寿命、製造場所などの製品関連情報を、RFIDラベル上のNFCデバイスに書き込むことによって、製造場所において自動的にまたは手動で個別化することができる。医薬品に関しては、この情報を、例えば貯蔵寿命をチェックするため、薬局で読み取って確認することができる。例えば、貯蔵場所から取り出した日や、患者の名前、生年月日などの患者の詳細といったさらなる情報を、NFCデバイスに書き込むことによって追加することができる。
【0005】
欧州特許第1402470号明細書は、医療用容器に取り付けられたRFIDラベルについて開示しており、RFIDラベルは、NFC実体を表し、正方形のアンテナの中央に位置する集積回路と、製造後に容器を最初に開いたときに破断するRAIDシールとしての、容器に取り付けられた剥離式または切取り式カバーの上に置かれた破断可能な導電性ループとを備える。導電性ループの中断は、医療用容器のRFIDラベルと対通信しているとき、非接触NFCリーダ/ライタによって検出可能である。
【0006】
さらに、製品が最初に開かれた後にRFIDラベルに保持されているデータが読み取られないようにする、いわゆる「不正開封防止(tamper-evidence)」の機能性を有するRFIDラベルが知られている。この処置は、製品が開かれたときにRFIDアンテナが破断されることによって達成される。
【0007】
しかしながら、実際には、開かれた後のRFIDラベルに保持されているデータに対するアクセス可能性を無効にすることは、1つを超える単位の固体物質または液体用量を収容しているレセプタクルに関して、適切な解決策ではないことが示されている。他方で、承認されていない人、例えば配送を依頼された人員によってデータが読取り可能なことは、重大であることが分かっている。
【0008】
上記のことを鑑みて、上述の制限を克服するための解決策が求められていた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
様々な実施形態において、好ましくは医薬品向けの収容装置が開示される。さらなる実施形態では、収容装置は、固体物質または液体を受け入れる内部を含む容器本体と、1つまたは複数の巻線の形で配置された導体によって形成された近距離(NFC)アンテナ、コントローラ、およびデータ記憶領域を含む近距離無線通信システム(NFC)で構成された、第1の無線通信システムとを備える。収容装置は、第1の感知・切替え装置および/または第2の感知・切替え装置をさらに備える。第1の感知・切替え装置は、第1の無線通信システムの主要動作モードを無効にする第1のプリセット状態を含むように構成され、第1の感知・切替え装置は、容器本体のアパーチャを一番最初に開放することによって好ましくは始動される最初の開放イベントの際に、その第1のプリセット状態を解除するように、好ましくは不可逆的に解除するように構成される。第2の感知・切替え装置は、第1の無線通信システムの主要動作モードを無効にする第2のプリセット状態を含むように構成され、第2の感知・切替え装置は、取出しイベントの際にその第2のプリセット状態を解除するように構成される。さらなる実施形態では、第2の感知・切替え装置は、取出しイベントの持続時間の間のみ、その第2のプリセット状態を解除するように構成される。
【0010】
さらなる他の実施形態では、第1のプリセット状態および/または第2のプリセット状態は、近距離(NFC)アンテナまたは近距離無線通信システム(NFC)の完全に無効にされた操作可能性を含む。
【0011】
他の実施形態では、第1のプリセット状態および/または第2のプリセット状態は、近距離(NFC)アンテナまたは近距離無線通信システム(NFC)の代替動作モードを、好ましくは非標準化動作モードを有効にすることを含む。
【0012】
さらなる他の実施形態では、第1のプリセット状態または第2のプリセット状態は、データ記憶領域に対するコントローラの無効にされたアクセス可能性を含み、好ましくは、近距離無線通信システム(NFC)は、データ記憶領域とは異なるさらなるデータ記憶領域を含み、さらなるデータ記憶領域に対するアクセス可能性が、データ記憶領域に対するアクセス可能性が無効にされたときに有効にされ、さらなるデータ記憶領域に対するアクセス可能性が、データ記憶領域に対するアクセス可能性が有効にされたときに無効にされる。
【0013】
さらなる実施形態では、第1の感知・切替え装置は、最初の開放時に破断する破断可能な導電性ループを備える。
【0014】
さらなる他の実施形態では、第1の感知・切替え装置は、近距離(NFC)アンテナに並列に接続される破断可能な導電性ループを備え、アパーチャの最初の開放によって破断可能な導電性ループを破断するように配設される。
【0015】
他の実施形態では、破断可能な導電性ループは、電子構成部品、または破断可能な導電性ループにおいてループ状にされた1つを超える電子構成部品で構成された回路を備え、電子構成部品または回路により、近距離無線通信(NFC)規格によって提案される範囲外、好ましくはNFC範囲外の領域にある、近距離(NFC)アンテナの共鳴周波数をシフトする。
【0016】
さらに他の実施形態では、破断可能な導電性ループは、破断可能な導体の1つまたは複数の巻線、好ましくは補助近距離(NFC)アンテナを形成する複数の巻線を含む。
【0017】
さらなる他の実施形態では、第1の感知・切替え装置は、一端で、データ記憶領域および/またはさらなるデータ記憶領域の選択接続ラインに、好ましくはデータ記憶領域および/またはさらなるデータ記憶領域のアドレス接続ラインに接続され、最初の開放によって破断可能な導電性ループを破断するように配設された、破断可能な導電性ループを備える。
【0018】
さらなる実施形態では、第2の感知・切替え装置は、容器内部からの最初の取出し動作によってのみ取出しイベントを始動するように、または容器内部からの最初の取出し動作およびその後のいずれかの取出し動作それぞれによって取出しイベントをそれぞれ始動するように構成される。
【0019】
さらなる他の実施形態では、第2の感知・切替え装置は、近距離(NFC)アンテナの導体へとループ状にされた接触スイッチを備え、接触スイッチは、取出し動作のために機械的力が掛けられると回路を閉路するように構成される。
【0020】
さらなる他の実施形態では、第2の感知・切替え装置は、データ記憶領域および/またはさらなるデータ記憶領域の選択接続ラインに、好ましくはデータ記憶領域および/またはさらなるデータ記憶領域のアドレス接続ラインに接続される接触スイッチを備え、接触スイッチは、取出し動作のために機械的力が掛けられると回路を閉路または開路するように構成される。
【0021】
他の実施形態では、収容装置は、さらなる導体によって形成されるさらなる近距離(NFC)アンテナを含むさらなる近距離(NFC)通信システムを含む、さらなる無線通信システムをさらに備える。収容装置は、さらなる無線通信システムの操作可能性を有効にするプリセット状態を含むように構成された、第3の感知・切替え装置も備え、第3の感知・切替え装置は、最初の開放イベントまたは取出しイベントの際にそのプリセット状態を、好ましくは不可逆的に解除するように構成され、好ましくは、第3の感知・切替え装置は、最初の開放または取出しによってさらなる破断可能な導電性ループを破断するように配設された、さらなる破断可能な導電性ループを備える。
【0022】
さらに他の実施形態では、収容装置は、無効にされた操作可能性のプリセット状態を含むように構成された、第2の無線通信システムをさらに備え、第1の無線通信システムは、主要動作モードのとき、第2の無線通信システムのプリセット状態を解除するように構成され、好ましくは、第1の無線通信システムは、第2の無線通信システムのプリセット状態を不可逆的に、または第1の無線通信システムによって決定される期間の間だけ、または主要動作モードが有効にされる期間の間だけ、解除するように構成される。
【0023】
さらなる実施形態では、第2の無線通信システムは、IEEE 802.11(無線LAN)システム、またはデジタルマルチプレクサ(DMX)インターフェースシステム、またはデジタル調光照明インターフェース(DALI)システム、またはZigBee(登録商標)システム、または好ましくはブルートゥース(登録商標)ローエナジー(BTLE)システムとして構成されたブルートゥースシステムのうち少なくとも1つを含む。
【0024】
さらなる他の実施形態では、収容装置はエネルギー蓄積素子をさらに備え、第2の無線通信システムは、エネルギー蓄積素子によって電力供給されるように構成される。
【0025】
さらなる実施形態では、少なくとも第1の無線通信システムは、RFIDラベルを形成するキャリア層上に置かれる。
【0026】
本開示の別の態様では、好ましくは医薬品向けの、収容装置の無線通信システムを操作する方法が提供される。収容装置は、容器本体と、近距離無線通信システム(NFC)で構成された第1の無線通信システム(210)とを有する。第1の感知・切替え装置は、第1の無線通信システムの主要動作モードを無効にする第1のプリセット状態を含み、および/または第2の感知・切替え装置は、第1の無線通信システムの主要動作モードを無効にする第2のプリセット状態を含み、方法は、好ましくは容器本体(110)のアパーチャ(126)の一番最初の開放によって始動される最初の開放イベントの際に、好ましくは不可逆的に、第1の感知・切替え装置(143)の第1のプリセット状態を解除すること、および/または取出しイベントの際に、第2の感知・切替え装置(280)の第2のプリセット状態を解除することを含む。
【0027】
本発明またはその実施形態の他の態様、目的および利点は、以下の図面と併せて詳細な説明を読むことによって明白となるであろう。
【0028】
図面中、類似の参照符号は、一般に、異なる図を通じて同じ部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わり、一般に、基礎となる原理を例証することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】RFIDラベルを蓋上に保持している、封止状態および開放状態それぞれのケースを示す概略図である。
図2図2Aは、導電性ループを備えたRFIDラベルを示す概略図である。図2Bは、コンデンサなどの受動電子構成部品を含む導電性ループを備えたRFIDラベルを示す概略図である。図2Cは、導電性ループおよび圧力作動式スイッチを備えたRFIDラベルを示す概略図である。
図3図3Aは、一端に分離可能なカバーを、他端に起動ボタンまたは指示ボタンを備えた、ほぼ円筒形状の薬剤注射器デバイスを示す概略図である。図3Bは、注射器デバイスの起動ボタンを示す概略図である。
図4】高性能容器の再有効な通信装置を示す概略図である。
図5】第1のNFCシステムおよびさらなるNFCシステムの構造的要素を示す概略ブロック図である。
図6】切替え可能なデータ記憶領域を有する第1のNFCシステムの構造的要素を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の詳細および実施形態を例証として示す、添付の図面を参照する。
【0031】
「例示の」という語は、本明細書では、「例、事例、または実例としての役割を果たす」ことを意味するのに使用される。「例示」として本明細書に記載するいずれの実施形態または設計も、他の実施形態または設計よりも好ましいかもしくは有利であるものと必ずしも解釈されない。
【0032】
ある面または表面「の上」に形成される堆積材料に関して使用される「~の上」という語は、本明細書では、示唆される面または表面「上に直接」、例えばそこと直接接触して堆積材料が形成されてもよいことを意味するのに使用されてもよい。ある面または表面「の上」に形成される堆積材料に関して使用される「~の上」という語は、本明細書では、示唆される面または表面と堆積材料との間に1つもしくは複数の追加層が配置されて、示唆される面または表面「上に間接的に」堆積材料が形成されてもよいことを意味するのに使用されてもよい。
【0033】
図1は、閉鎖状態および開放状態それぞれの単純な収容装置100を概略図で示している。収容装置100は、普通の畝状の厚紙であってもよく、また安全な貯蔵および搬送のために多数のパッケージまたは流体レセプタクルを内部に収容することができる、立方体ケース110(以下、ケース110と称する)などの容器本体を含む。ケース110は、ケース110の縁部130の1つに沿って角度を付けられ、それとともにケース110の蓋125としての役割を果たす上面120を含み、蓋125は、ケース110のアパーチャ126が好ましくは再閉鎖可能であるように、ケース110のアパーチャ126を閉じる。
【0034】
蓋125は、蓋125の角度を付けられた側とは反対側の縁部の上を、蓋125の表面からケース110の前側壁150まで下向きに延在する、RFIDラベル140を保持する。RFIDラベル140は、長方形のキャリア層142上に複数の入れ子状の巻線の形で配置された導体145によって形成された、NFCアンテナ141を備えたNFCシステムを含み、それについては以下の図面と関連してさらに詳細に記載する。
【0035】
RFIDラベル140は、第1の感知・切替え装置を表し、キャリア層142によってやはり保持され、対向する端部部分を有する長手方向の延長部を有する、破断可能な導電性ループ143をさらに含む。RFIDラベル140は、対向する端部部分のうち一方が蓋125の表面上に配置され、他方が前側壁150上に配置されるようにして、ケース110に固着される。
【0036】
RFIDラベル140はケース110に固着されており、それによって、ケース110を充填し蓋125を閉じた後にケースを封止しているので、破断可能な導電性ループ143は、図の左側によって示されるように破断されていない。破断可能な導電性ループ143は、図の右側によって示されるように、蓋125を持ち上げることによってケース110が封止後に最初に開放されるまで、破断されないままである。
【0037】
そのようにしてアパーチャ126を一番最初に開放して、破断可能な導電性ループ143を破断することは、最初の開放イベントであり、それによって、容器の状態が開放されていない状態から開放状態へと不可逆的に移行する。
【0038】
図2Aは、任意の容器に、例えば前の図面に示されているようなケース110に取り付けられてもよい、RFIDラベル140を示している。RFIDラベル140は、近距離無線通信(NFC)アンテナ141(以下、NFCアンテナ141と称する)と、電子NFCデバイス210とによって構成され、両方とも、長手方向に延在する長方形のキャリア層142の一端220の領域に配設される。以下、NFCシステムおよび電子NFCデバイスという用語が同義語として使用される限りにおいて、電子NFCデバイス210はNFCシステム(210)を完全に表すように取り扱われることに留意されたい。
【0039】
NFCアンテナ141を形成する導体145は、長方形であってもよい内周の周りに、1つまたは複数の入れ子状の巻線の形で配置されている。導体145は、入れ子状の巻線の内周に位置する第1の端部230と、外周に位置する第2の端部240とを含む。導体145の第1の端部230および第2の端部240は両方とも、長方形のキャリア層142の一端220の反対側に位置する。
【0040】
第1の端部230は、導体145の第2の端部240が配置されている側の巻線を橋絡する橋絡素子250に電気的に接続され、それによって導体145の両方の端部230、240が外周で互いの近くで電気的にアクセス可能である。
【0041】
電子NFCデバイス210は、外周に配置され、橋絡素子250を介して導体145の第1の端部230に、また導体145の第2の端部240に電気的に接続される。
【0042】
第1の感知・切替え装置を表す破断可能な導電性ループ143はまた、キャリア層142の上に配置され、電子NFCデバイス210から、長方形のキャリア層142の一端220とは長手方向で反対側である、長方形のキャリア層142の別の端部まで延在する。
【0043】
電子NFCデバイス210と長方形のキャリア層142の他端との間の領域において、図案化した鋏と組み合わせて図面に示されている破線の切断線260は、RFIDラベル140をその一部が前側壁150上に延在している状態で蓋125の表面上に位置させることができる方法の推奨であるものとして理解されたい。破線の切断線260は、蓋125の前縁部と位置合わせされるものと推測され、それによって、蓋125が開放されたとき、RFIDラベル140が、また続いて破断可能な導電性ループ143が、破線の切断線260に沿って切断される。
【0044】
破断可能な導電性ループ143は、基本的に、2つの並列の導体経路で構成され、それらの一端でそれぞれ電子NFCデバイス210に接続され、それぞれの他端で互いに対して接続される。それぞれの他端は、電子NFCデバイス210の遠位側に置かれる。
【0045】
破断可能な導電性ループ143は、それとともに、NFCアンテナ141を形成する導体145に並列に接続される。したがって、破断可能な導電性ループ143は、破断されない限り、低抵抗の短絡回路をNFCアンテナ141に提供している。
【0046】
結果として得られる作用として、NFCアンテナ141は、NFC電子デバイス210にエネルギーを提供できなくなり、それによって結果的に、NFCリーダ/ライタ(図示なし)によって実施される読取りまたは書込みの試行によるアクセスが不能になる。換言すれば、プリセット状態では、NFCアンテナ141の操作可能性は完全に無効にされ、NFC通信は実施できない。
【0047】
アパーチャ126の一番最初の開放が行われるときなど、最初の開放イベントの際、プリセット状態は解除され、つまりプリセット状態が終わり、NFCアンテナ141が有効になり、それとともにNFC電子デバイス210がNFC規格によるデバイスの最大操作可能性を獲得し、それがデバイスの主要な操作可能性であり、または換言すれば、NFC電子デバイス210の主要動作モードである。
【0048】
開示全体を通して、「解除する」という用語は、制限を含むことがある初期状態が終わり、それに続いて初期状態の制限を含まない別の状態が有効になるという意味で、「管理解除する」という用語と等価として使用される場合がある。
【0049】
導電性ループ143の破断は、最初の開放イベントを電子的に認識し、即ち感知し、それに反応する、例えばオンにする、複雑ではない例である。詳細には、最初に、破断可能な導電性ループ143の破断が感知され、次に、NFCアンテナ141またはNFCデバイス210が有効にされ、例えばオンにされる。特定の実施形態では、感知手段が切替え手段とは別個である、より複雑な装置が提供されてもよいことに留意されたい。しかしながら、説明を簡単にするため、反応、例えば切替えによって、例えば破断可能な導電性ループ143の破断の感知が再開されるので、感知の態様については本明細書全体を通してほとんど無視されている。いずれにしても、導電性ループ143の破断は、通信アクセス可能性を始動する有効化運動量と見なすことができる。
【0050】
上述したRFIDラベル140の一実施形態では、破断可能な導電性ループ143によって例示的に表される、第1の感知・切替え装置のプリセット状態は、NFCシステムの非標準化動作モードを有効にすることを含む。したがって、破断可能な導電性ループ143が破断されていないときでもなお、非標準化通信が実施可能である。非標準化通信の場合、修正された非NFC標準化リーダ/ライタ(図示なし)が他の特性を超えて調節されて、NFCアンテナ141を短絡している破断可能な導電性ループ143を通して、記載したRFIDラベル140上の電子NFCデバイス210に電力供給するのに十分な、極磁界強度を提供する。
【0051】
さらなる実施形態では、破断可能な導電性ループ143自体が、1つを超える入れ子状の巻線を有するNFCアンテナとして配置され、それが、非NFC標準化リーダ/ライタ(図示なし)による、RFIDラベル140上のNFCデバイス210に対するアクセス可能性を改善する助けとなることがある。破断されていない破断可能な導電性ループ143は並列にNFCアンテナ141に接続されるので、破断可能な導電性ループ143は、それ自体がアンテナとして配置されているとき、並列接続されたNFCアンテナ141との組み合わせで、非NFC標準化リーダ/ライタ(図示なし)によるNFCデバイス210に対するアクセスを可能にしてもよい、一種のNFCアンテナを形成してもよい。
【0052】
このように、棚から取り出したRFIDラベルを使用することができ、RFIDラベルの作成前の書込みプロセスが不要なので、製造およびパッキング中の、破断されていない破断可能な導電性ループ143を有するRFIDラベル140に対するデータの書込みが容易になる。
【0053】
図2Bは、任意の容器に、例えば図1に示されているようなケース110に代替的に取り付けられてもよい、RFIDラベル140を示している。RFIDラベル140は、前の図面のうち1つに非常に類似した形で構成されているので、その説明に関しては、冗長さを回避するために、図2Aに関連して提供されたものの大部分を参照することができる。
【0054】
図示されたRFIDラベル140は、その破断可能な導電性ループ143が電気的に一貫しているという点でのみ、上述したものとは異なる。上述した破断可能な導電性ループ143の構造に加えて、RFIDラベル140の破断可能な導電性ループ143はここではコンデンサ270を含む。したがって、NFCアンテナ141は、破断可能な導電性ループ143が破断されたとき、コンデンサ270によって、正確には、破断可能な導電性ループ143のオーム抵抗、コンデンサ270、および破断可能な導電性ループ143の反応構成要素で構成される直列接続によって短絡される。
【0055】
NFCアンテナ141に対するかかる並列接続によって、RFIDラベル140上のNFCアンテナ141の共鳴周波数が元の周波数から離れてシフトするが、それは良好な結合のために、13.56MHzのNFC標準化搬送周波数に少なくとも近接した周波数であるべきである。結論として、RFIDラベル140上のNFC実体と、国際規格にしたがって働くNFCリーダ/ライタ(図示なし)との通信は、破断可能な導電性ループ143が破断されない限り阻害される。
【0056】
しかしながら、RFIDラベル140を保持するように定められた容器、例えば図1に示されるようなケース110の、充電およびパッケージングの過程で使用されてもよい、修正された非NFC標準化リーダ/ライタ(図示なし)は、RFIDラベル140の破断可能な導電性ループ143のコンデンサ270によって生じる、シフトされた非標準化共鳴周波数を調節することが可能になる。それとともに、非NFC標準化リーダ/ライタは、RFIDラベル140上の電子NFCデバイス210にエネルギーを供給し、書込みおよび/または読取り動作を実施することが可能になる。
【0057】
破断可能な導電性ループ143が破断されるとすぐに、つまり破断可能な導電性ループ143によって例示的に表される第1の感知・切替え装置のプリセット状態が解除されると、即ち停止されると、RFIDラベル140上のNFCシステムはその主要動作モードを獲得し、標準化されたNFCリーダ/ライタ(図示なし)によってアクセス可能になる。
【0058】
コンデンサ270は、上述した実施形態の意味においてNFCアンテナ141の共鳴周波数の変化をもたらす、あらゆる電子構成部品または電子構成部品の任意のアセンブリの単なる一例として見なされるものであることに言及すべきである。
【0059】
図2Cは、任意の容器に、例えば図1に示されているようなケース110に代替的に取り付けられてもよい、RFIDラベル140を示している。RFIDラベル140は、前の図面に非常に類似した形で構成されているので、その説明に関しては、冗長さを回避するために、図2Aおよび/または図2Bに関連して提供されたものの大部分を参照することができる。
【0060】
RFIDラベル140は、圧力作動式スイッチ280によって例示的に表される、第2の感知・切替え装置280の上述したRFIDラベルと区別され、RFIDラベル140は第1の感知・切替え装置143を必ずしも有さなくてもよい。
【0061】
第2の感知・切替え装置280は、概して、容器本体の内部に収容された固体物質または液体に対するアクセスが行われるまで、換言すれば取出しまたは送達が行われるまで、NFCシステム210の主要動作モードを無効にする役割を果たす。それにより、一番最初のアクセスによって、それ以降維持される主要動作モードを有効にするか否か、または各アクセスごとに、アクセス動作が完了すると終了する主要動作モードを有効にするか否かが、必要に応じて決まる。
【0062】
提供される例では、圧力作動式スイッチ280(以下、スイッチ280と称する)は、常時開接点タイプのものであり、NFCアンテナ141を形成する導体145へとループされる。スイッチ280は、好ましくは、キャリア層142上のNFCアンテナ141の外周に配置される。スイッチ280上に向けられた矢印によって図面中で記号化されている圧力を掛けると、スイッチの接点が閉じ、即ちスイッチ280のプリセット状態が解除され、それとNFCアンテナ141の導体145とが接続され、結果としてNFCアンテナ141が動作可能になる。
【0063】
スイッチ280は、例えば、様々な修正が当該分野において知られている、基板接点設計によって実現することができる。かかる基板接点設計は、共通の面上に、例えばキャリア層142上に両方とも配置された2つの隣接した導体経路で原則的に構成され、それによって導電素子が隣接した接点経路の両方と同時に接触するようにされて、スイッチ280を閉じる。
【0064】
スイッチ280を備えたRFIDラベル140は、スイッチ280が起動されるまで機能しないように、即ちNFCリーダ/ライタ(図示なし)と通信しないようにされる。スイッチ280は、プリセット状態(例えば、オフ状態)と、それに続く、圧力の行使が終わった場合であっても維持される起動後の状態(例えば、オン状態)とを有する、オフオンスイッチタイプのものであることができる。スイッチ280はまた、押しボタンタイプのものであることができ、その場合のスイッチ280は、圧力の行使によってスイッチ280が起動されている間だけ、以下の状態をとる。その押しボタンタイプのスイッチ280によって、取出し動作が実施されるときの、容器からの各取出し動作、即ち送達動作の間の通信が可能になり、それによって適時の追跡が可能になり、さらに、容器が空になるまでに何回の取出し動作が利用可能かを追跡することが可能になる。
【0065】
第2の感知・切替え装置280は、特に、第1の感知・切替え装置143が提供されない場合、第1の感知・切替え装置143に関して記載したような非標準化動作モードとしての、代替動作モードを有効にするプリセット状態も含んでもよい。上述のタイプおよび実施形態のいずれかによる、第1および第2の切替え装置143、280の両方を備えたRFIDラベル140の場合、取出し動作によるスイッチ280の起動は、RFIDラベル140をNFCリーダ/ライタ(図示なし)と通信するように動作可能にするために、(例えば、破断可能な導電性ループ143の破断によって認識される)最初の開放イベントに加えて起こるべきさらなるイベントであってもよい。
【0066】
しかしながら、異なるプリセット状態を第1および第2の感知・切替え装置143、280に提供するのが適切なこともあり、例えば、第1の感知・切替え装置143のプリセット状態は、NFCシステム210の完全に無効にされた動作可能性を含んでもよく、第2の感知・切替え装置280のプリセット状態は、NFCシステム210の有効にされた非標準化動作モードを含んでもよい。
【0067】
図3Aは、液体医薬品を収容するものと考えられる、容器の一例としての、自己注射器デバイス300の2つの状態を示している。自己注射器デバイス300(以下、自己注射器300と称する)は、基本的に円筒形状を有し、頂部カバー部分310と底部カバー部分320とを有する。
【0068】
頂部カバー部分310は、円筒の軸線に沿って底部カバー部分320に向かう方向に向けられた圧力を行使すると、自己注射器300を起動する、起動部として解釈される。底部カバー部分320は、注射針(図示なし)を包む接触チューブ340を保護し、自己注射器デバイス300のアパーチャを閉鎖している、取外し可能な保護キャップ330を含む。
【0069】
自己注射器300はRFIDラベル140を外表面上に保持しており、RFIDラベル140は、電子NFCデバイスおよびNFCアンテナ(両方とも図示なし)とは別に、破断可能な導電性ループ143によって表される第1のスイッチ装置143と、キャリア層142上に配置されたスイッチ(図示なし)によって表される第2の感知・切替え装置とを含む。
【0070】
破断可能な導電性ループ143は、底部カバー部分320にある保護キャップ330上に延在し、自己注射器300を最初に開放するときに保護キャップ330が取り外されると破断される。スイッチは、頂部カバー部分310の作動部に挿入される、キャリア層142の延長部350上に置かれる。
【0071】
図3Bは、前の図面に示された自己注射器300の頂部カバー部分310にある作動部を詳細斜視図で示している。作動部は、トリガ構成要素360と下方に配置されているアンビル構成要素370とで構成される。両方とも基本的に円板状であり、互いに平行に配置され、それぞれの中心点が円筒軸に配向されている。
【0072】
トリガ構成要素360とアンビル構成要素370との間には、キャリア層142の延長部350が配設され、延長部350は、中心点の周りに位置するスイッチ280の基板接点を保持している。アクチュエータ構成要素380は、トリガ構成要素360とキャリア層142の延長部350との間に配設され、スイッチ280上に位置する。
【0073】
自己注射器300を起動して用量を送達するのに、即ち取り出すのに必要な圧力は、トリガ構成要素360に掛けられる。圧力は、トリガ構成要素360からアクチュエータ構成要素380に運ばれ、それがRFIDラベル140のスイッチ280をアンビル構成要素370に対して圧迫することによって、スイッチ280が閉じられる。
【0074】
上記では、自己注射器300を起動して送達させるのに圧力が必要であると説明されているが、圧力は、トリガ構成要素360の頂部に必ずしも加えられる必要はない。別の方法として、例えば、自己注射器300をその外壁で持つことによって加えられてもよい。そのような場合、トリガ構成要素360は、スイッチ280が閉じた結果として作動されたとき、指示目的でのみ使用されてもよい。その種の実施形態では、トリガ構成要素360は最初の送達の過程で作動させられるべきであり、その後、スイッチ280は恒久的に閉じたままである。図4は、液体医薬品を収容した注射器などの再有効なモジュールとして非常に複雑な収容装置(図示なし)に統合されてもよく、センサ(例えば、温度センサ、加速度センサ、圧力センサ)およびリアルタイムクロックデバイスとしての多数の測定手段をさらに備え、またさらにはセンサおよびリアルタイムクロックデバイスから提供されるデータを収集するマイクロコントローラを備える、通信装置400の一実施形態を概略斜視図で示している。
【0075】
通信装置400は、第1の無線通信システムとして、例えば円筒状/管状容器のシールの一部である、円板状プレート410に収納された電子NFCデバイス210に接続される、NFCアンテナ141を有するNFCシステム210を含む。
【0076】
第1の無線通信システム210に加えて、第2の無線通信システム430も円板状プレート410に収納される。いくつかの実施形態によれば、第2の無線通信システム430は、例えば、(1)デジタルマルチプレクサ(DMX)インターフェースプロトコル、(2)IEEE 802.11(Wi-Fi)プロトコル、(3)ブルートゥースプロトコル、(4)デジタル調光照明インターフェース(DALI)プロトコル、(5)ZigBeeプロトコル、および/または(6)それらのうち任意の1つもしくは複数の組み合わせを含む、広範囲の無線通信プロトコルのうちいずれかを利用して、通信するように構成されてもよい。さらなる実施形態では、第1の無線通信システムは、システムオンチップとして利用可能な、ブルートゥースローエナジーシステム(BTLE)である。
【0077】
通信装置400は、現在のNFCシステムとは異なり、また場合によってはNFCシステムよりも能力がある通信タイプのものである、別のシステムの自動作動を可能にする、NFC通信の標準化プロトコルの形で提供される特徴を利用するようにされてもよい。
【0078】
この特徴に基づいて、電子NFCデバイス210およびNFCアンテナ141で構成されるNFC実体は、NFCリーダ/ライタ(図示なし)と通信しているとき、プレート410に収納された第2の無線通信システム430、例えば上述したブルートゥースローエナジーシステムを起動させることができるようになる。プレート410に収納されたブルートゥースシステムの起動の過程で、ブルートゥースシステムは、ブルートゥース範囲内で到達可能な別のブルートゥースシステム(図示なし)とのペアリングを要求する。
【0079】
第2の無線通信システム430(以下、ブルートゥースローエナジーシステムによって表される)の電源に関して、エネルギー貯蔵素子420(プレート410の上に破線で示される)が設けられる。エネルギー貯蔵素子420は、NFCシステム210によるブルートゥースローエナジーシステム430の起動の過程で、ブルートゥースローエナジーシステム430の電源ピン(図示なし)に接続される、電池、コンデンサ、またはアキュムレータであってもよい。
【0080】
ブルートゥースローエナジーシステム430の電源ピンに対するエネルギー貯蔵素子420の接続は、電子NFCデバイス210によって起動可能なパワーオンスイッチ(図示なし)によって達成されてもよい。パワーオンスイッチは、電子NFCデバイス210に統合されてもよい。
【0081】
ブルートゥースまたは無線LANとしての高性能無線システムによって、NFCシステムよりもはるかに広い通信範囲が可能になるが、それらの電源に関する要求も高くなる。この意味で、NFCシステムは、第2の無線通信システムが必要なときのみ有効にされるように処理してもよく、それによってエネルギー貯蔵素子420の持続性が改善される。さらに、NFCシステムによってのみ、第2の無線通信システムが作動させられる、即ち有効にされるので、セキュリティが大幅に改善される。
【0082】
代替実施形態は、基本的に、第1および/または第2の感知・切替え装置にしたがって、第2の無線通信システムを有効にするように構成されてもよい、追加の感知・切替え装置を提供してもよい。追加の感知・切替え装置はさらに、NFCシステムによって有効にするのとは独立して、またはそれと併せてのみ、第2の無線通信システムの動作を可能にするように構成されてもよい。
【0083】
現在利用可能なNFCシステムは比較的単純に保たれているので、高性能な処理能力は有していない。しかしながら、それらの能力は、他の無線通信システムによって、例えば、高性能な機能、解析、および暗号法も可能にする、上述したようなブルートゥースおよびWiFiシステムによって提供することができる。
【0084】
図5は、第1の通信システム210に加えて提供されるさらなる無線通信システム520を含み、第1の通信システム210およびさらなる通信システム520がそれぞれ、それぞれのNFCシステム210、510によって表される、一実施形態の構造を概略ブロック図で示している。さらなる無線通信システム520は、それに加えて、上述した実施形態のいずれかに含まれてもよく、最初の開放イベントおよび/または取出しイベントが行われる前に標準化された通信を可能にし、好ましくはその後無効にされる、通信システムとしての役割を果たす。
【0085】
この意味で、実施形態は、最初の開放イベントおよび/または取出しイベントが起こる前の、例えばRFIDラベル140上に位置する、NFCシステム210との通信に関する解決策を提供し、それにより、最初の開放イベントおよび/または取出しイベントが起こる前に電子NFCデバイス510に書き込まれたあらゆるデータは、最初の開放イベントおよび/または取出しイベント後、標準化された通信によってアクセス不能である。換言すれば、第1の通信システム210およびさらなる通信システム520のうち1つのみが、任意の時点で有効にされる主要動作モードを有する。
【0086】
図面の右側は、図1ならびに図2A図2B、および図2Cに関して既に記載したような、第1の無線通信システム210の基本要素、特に電子NFCデバイス210と、NFCアンテナ141と、NFCアンテナ141に並列に接続された破断可能な導電性ループ143によって表される第1の感知・切替え装置143、280とを示している。図示される実施形態は第1の感知・切替え装置143に関連するが、第2の感知・切替え装置280に対して実現されるように簡単に修正することができる。
【0087】
図面の左側は、さらなる電子NFCデバイス510と、さらなるNFCアンテナ530と、さらなる破断可能な導電性ループ540によって表される第3の感知・切替え装置540とを含む、さらなるNFCシステム510によって表される、さらなる無線通信システム520の基本要素を示している。さらなる破断可能な導電性ループ540は、さらなるNFCアンテナ530と直列で接続される。破断可能な導電性ループ143、540は両方とも互いに近接して配置されて、破断可能な導電性ループ143、540のいずれかの破断が他方にも影響することが確保される。
【0088】
図6は、最初の開放イベントおよび/または取出しイベントが起こる前に電子NFCデバイス210に書き込まれたデータが、最初の開放イベントおよび/または取出しイベント後に通信によってアクセス不能になることを確保する、代替のより安価な解決策を提供する、一実施形態の構造を単純な概略ブロック図で示している。
【0089】
図面は、図1ならびに図2A図2B、および図2Cに関して基本的に記載したような第1の無線通信システム210の基本要素、特に電子NFCデバイス210と、NFCアンテナ141と、破断可能な導電性ループ143によって表される第1の感知・切替え装置143とを示している。図示される実施形態は第1の感知・切替え装置143に関連するが、第2の感知・切替え装置280に対して実現されるように簡単に修正することができる。
【0090】
電子NFCデバイス210を詳細に見てみると、アナログおよびデジタルプロセッサ(図示なし)を含むコントローラ部600と、アドレス接続ライン630およびデータ接続ライン620を有するデジタルデータ記憶部610と、コントローラ部600およびデータ記憶部610に直流を供給する電源部660とが示されている。直流は、誘導を通してNFCアンテナ141によって受信される電流から発生する。
【0091】
コントローラ部600は、マイクロコントローラと見なすことができ、複数のアドレス接続ライン630および複数のデータ接続ライン620によって、データ記憶部210に接続される。アドレス接続ライン630のうち1つのアドレス接続ライン650、好ましくは、データ記憶部210内のデータ記憶領域のバイナリアドレス指定に使用される全てのビットのうち最上位ビットを保持する最上位アドレス接続ラインは、プルアップ抵抗640を介して、電源部660によって提供される正電位に接続される。破断可能な導電性ループ143は、その一端でアドレス接続ライン650に、他端で電源部660によって提供される接地電位に接続される。
【0092】
最上位アドレス接続ラインは、データ記憶領域を第1および第2のデータ記憶領域680、670に区別するのに使用されるので、最上位アドレス接続ラインは、第1または第2のデータ記憶領域680、670のどちらかを有効にする、選択接続ライン650と見なすことができる。
【0093】
破断可能な導電性ループ143が破断されない限り、電源部660からの接地電位はアドレス接続ライン650に供給され、それによって第1または第2のデータ記憶領域680、670のうち1つが選択される。破断可能な導電性ループ143が破断されると、電源部660の正電位は、プルアップ抵抗640を介してアドレス接続ライン650に供給され、それによって、第1および第2のデータ記憶領域680、670のうち、以前に破断可能な導電性ループ143が破断されていないときには選択されていなかった方の、データ記憶領域が選択される。
【0094】
本発明について特定の実施形態を参照して特に図示し記載してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更が行われてもよいことが、当業者には理解されるべきである。このように、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の等価の意味および範囲内にある全ての変更が包含されるものとする。
【符号の説明】
【0095】
100 収容装置
110 ケース
120 上面
125 蓋
126 アパーチャ
130 縁部
140 RFIDラベル
141 NFCアンテナ
142 キャリア層
143 導電性ループ
145 導体
150 前側壁
210 電子NFCデバイス
220 一端
230 第1の端部
240 第2の端部
250 橋絡素子
260 切断線
270 コンデンサ
280 スイッチ
300 自己注射器
310 頂部カバー部分
320 底部カバー部分
330 保護キャップ
340 接触チューブ
350 延長部
360 トリガ構成要素
370 アンビル構成要素
380 アクチュエータ構成要素
400 通信装置
410 プレート
420 エネルギー貯蔵素子
430 第2の無線通信システム
510 NFCデバイス
520 無線通信システム
530 NFCアンテナ
540 導電性ループ
600 コントローラ部
610 データ記憶部
620 データ接続ライン
630 アドレス接続ライン
640 プルアップ抵抗
650 1つのアドレス接続ライン
660 電源部
670 データ記憶領域
680 データ記憶領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6