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特許7001618エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20220112BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220112BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20220112BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20220112BHJP
   A23F 3/14 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L5/00 H
A23L5/00 K
A23L29/00
A23F3/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018557750
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2017045249
(87)【国際公開番号】W WO2018117002
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2016247631
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】山本 憲司
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀貴
【審査官】戸来 幸男
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
A23F 3/00-3/42
FSTA/CAplus/REGISTRY/AGRICOLA/
BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピガロカテキンガレート、及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品であって、
エピガロカテキンガレート含有量が0.40~16mg/100mLであり、
シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.35mg/100mLである、前記飲食品。
【請求項2】
前記エピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、請求項1に記載の飲食品。
【請求項3】
前記シクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、請求項1又は2に記載の飲食品。
【請求項4】
前記エピガロカテキンガレート含有量が0.40~11mg/100mLであり、
前記シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.055mg/100mLであり、
前記エピガロカテキンガレート含有量(mg/100mL)(X)と、前記シクロプロリルトレオニン含有量(mg/100mL)(Y)が、Y≧0.0034×X-1.106及びY≧0.00009×X1.7421を満たす、請求項1に記載の飲食品。
【請求項5】
シクロプロリルトレオニンが動植物由来ペプチド熱処理物として配合されたものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項6】
前記動植物由来ペプチド熱処理物が、大豆ペプチド、茶ペプチド、ホエイペプチド、又はコラーゲンペプチドから得られたものである、請求項5に記載の飲食品。
【請求項7】
茶飲料である、請求項1~6のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項8】
容器詰めされたものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の飲食品。
【請求項9】
飲食品の製造方法であって、
(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、
(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、
を含む、前記製造方法。
【請求項10】
工程(a)において調整されるエピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(b)において調整されるシクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
飲食品におけるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減する方法であって、
(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、
(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、
を含む、前記方法。
【請求項13】
工程(a)において調整されるエピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(b)において調整されるシクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、請求項12又は13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品に関する。より詳しくは、エピガロカテキンガレート含有量が特定の範囲内にあり、シクロプロリルトレオニン含有量が特定の範囲内にある飲食品、前記飲食品の製造方法、及び飲食品におけるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
エピガロカテキンガレートなどのカテキン類は、コレステロール上昇抑制作用剤やα-アミラーゼ活性阻害作用等の生理作用を有することが報告されている(特許文献1及び2)。またそれ以外にも、抗酸化作用、殺菌作用、抗がん作用、高血圧低下作用、血糖値上昇抑制など多様な生理作用が知られており、カテキン類を効果的に摂取できる飲料のニーズが高まっている(特許文献3)。
【0003】
一方、飲料に対する消費者の嗜好も多岐に渡り、最近では、飲用性が高められた飲料が好まれる傾向にある。カテキン類含量が高められた飲料は、カテキン類の生理作用が期待できる飲料であるが、苦味や渋味が強く、一度に大量を飲用したい場合には適するものではない。そのため、飲用性を高めるには、カテキン類の含有量を低く抑える必要があるが、この場合、飲料の呈味が薄くなり、水っぽくなるため、美味しさの点で満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭60-156614号公報
【文献】特開平3-133928号公報
【文献】特開2001-97968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、飲食品中のエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味が低減された、良好な味わいを有する飲食品を提供することなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、環状ジペプチドの一種であるシクロプロリルトレオニンの利用に着目した。まず、本発明者らは、シクロプロリルトレオニンを単独で飲食品に用いた場合には、収斂味が強すぎて好ましく摂取できないことを見出した。しかし、驚くべきことに、本発明者らは一定量のエピガロカテキンガレートを含有する飲食品に対して、シクロプロリルトレオニンを一定量配合することで、シクロプロリルトレオニンの収斂味を感じることなく、エピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)エピガロカテキンガレート、及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品であって、
エピガロカテキンガレート含有量が0.40~16mg/100mLであり、
シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.35mg/100mLである、前記飲食品。
(2)前記エピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、(1)に記載の飲食品。
(3)前記シクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、(1)又は(2)に記載の飲食品。
(4)前記エピガロカテキンガレート含有量が0.40~11mg/100mLであり、
前記シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.055mg/100mLであり、
前記エピガロカテキンガレート含有量(mg/100mL)(X)と、前記シクロプロリルトレオニン含有量(mg/100mL)(Y)が、Y≧0.0034×X-1.106及びY≧0.00009×X1.7421を満たす、(1)に記載の飲食品。
(5)シクロプロリルトレオニンが動植物由来ペプチド熱処理物として配合されたものである、(1)~(4)のいずれかに記載の飲食品。
(6)前記動植物由来ペプチド熱処理物が、大豆ペプチド、茶ペプチド、ホエイペプチド、又はコラーゲンペプチドから得られたものである、(5)に記載の飲食品。
(7)茶飲料である、(1)~(6)のいずれかに記載の飲食品。
(8)容器詰めされたものである、(1)~(7)のいずれかに記載の飲食品。
(9)飲食品の製造方法であって、
(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、
(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、
を含む、前記製造方法。
(10)工程(a)において調整されるエピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、(9)に記載の製造方法。
(11)工程(b)において調整されるシクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、(9)又は(10)に記載の製造方法。
(12)飲食品におけるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減する方法であって、
(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、
(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、
を含む、前記方法。
(13)工程(a)において調整されるエピガロカテキンガレート含有量が0.90~11mg/100mLである、(12)に記載の製造方法。
(14)工程(b)において調整されるシクロプロリルトレオニン含有量が0.0050~0.055mg/100mLである、(12)又は(13)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、飲食品中のエピガロカテキンガレート特有の後に引く不快な収斂味やシクロプロリルトレオニン特有の収斂味が低減された、良好な味わいを有する飲食品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.飲食品
本発明の一態様は、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する飲食品であって、エピガロカテキンガレート含有量が特定の範囲内にあり、シクロプロリルトレオニン含有量が特定の範囲内にある前記飲食品である。
【0010】
1-1.エピガロカテキンガレート
エピガロカテキンガレートはフラボノイド類の1つである。特に、(-)-エピガロカテキンガレートは、緑茶植物Camellia Sinesisの葉に含まれる主要なポリフェノールであり、抗酸化作用、抗突然変異作用、抗菌作用、抗アレルギー作用等の種々の生理作用を有することが知られている。
【0011】
本発明の飲食品におけるエピガロカテキンガレートの含有量は特に限定されないが、エピガロカテキンガレートの含有量が多すぎるとシクロプロリルトレオニンによるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味の低減効果が得られにくくなる場合がある。本発明の飲食品におけるエピガロカテキンガレート含有量の下限値は、飲食品100mLに対して0.4mg以上、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは0.9mg以上、さらにより好ましくは1.0mg以上である。また、本発明の飲食品におけるエピガロカテキンガレート含有量の上限値は、飲食品100mLに対して16mg以下、好ましくは15mg以下、より好ましくは11mg以下、さらにより好ましくは10mg以下、特に好ましくは8.0mg以下である。典型的には、本発明の飲食品におけるエピガロカテキンガレート含有量の範囲は、飲食品100mLに対して0.4~16mg、好ましくは0.5~15mg、より好ましくは0.9~11mg、さらにより好ましくは1.0~10mg、特に好ましくは1.0~8.0mgである。
【0012】
エピガロカテキンガレート含有量は公知の方法で測定することができ、例えばHPLC法などによりに測定することができる。
【0013】
本発明で用いるエピガロカテキンガレートは、その形態や製造方法等によって特に制限されるものではないが、エピガロカテキンガレートは、例えば、特開2001-97968号公報に記載された方法にしたがって緑茶葉から抽出・精製を行うことにより製造することができる。或いは、本発明においては、エピガロカテキンガレートの粗精製物を用いてもよい。これには、茶葉、好ましくは緑茶葉からの抽出物及び当該茶葉の粉砕品が含まれる。また、当該抽出物には茶飲料、特に緑茶飲料が含まれる。
【0014】
また、エピガロカテキンガレートはカテキン類の一つである。カテキン類とは、エピガロカテキンガレート以外にも、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、及びガロカテキンガレートを含めた総称を表す。本発明の飲食品においては、エピガロカテキンガレートの含有量が前記範囲を満たしていればよく、その他のカテキン類の含有量は特に限定されない。
【0015】
本発明においては、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量が前記の範囲内にあれば、エピガロカテキンガレート含有量の調整方法は特に限定されない。例えば、市販品や合成品のエピガロカテキンガレートを用いることや、エピガロカテキンガレートを含有する原料(茶飲料など)を用いることもできる。また、市販品や合成品のエピガロカテキンガレート、又はエピガロカテキンガレートを含有する原料の一種のみを用いることや、それらの二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0016】
1-2.シクロプロリルトレオニン
本発明におけるシクロプロリルトレオニンは環状ジペプチドの一種であり、プロリンとトレオニンとが脱水縮合することにより生成したジケトピペラジン構造を有する化合物のことをいう。
【0017】
本発明におけるシクロプロリルトレオニンは、薬理学的に許容される任意の塩(無機塩及び有機塩を含む)の形態であってもよく、例えば、シクロプロリルトレオニンのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩、ピクリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)等が挙げられるが、これらに限定されない。シクロプロリルトレオニンの塩は、当該分野で公知の任意の方法により、当業者によって容易に調製され得る。なお、本明細書において、「シクロプロリルトレオニン又はその塩」をまとめて、単に、「シクロプロリルトレオニン」と称する場合がある。
【0018】
本発明で用いるシクロプロリルトレオニンは、当該分野で公知の方法に従って調製することができる。例えば、化学合成法や酵素法、微生物発酵法により製造されてもよく、直鎖状のプロリルトレオニンを脱水及び環化させることにより合成されてもよく、特開2003-252896号公報やJournal of Peptide Science, 10, 737-737, 2004に記載の方法に従って調製することもできる。例えば、動植物由来タンパク質を含む原料に酵素処理や熱処理を施して得られる動植物由来ペプチドを、さらに高温加熱処理することで、シクロプロリルトレオニンを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を得ることができる。これらの点から、本発明で用いるシクロプロリルトレオニンは、化学的又は生物的に合成されるものであってもよいし、或いは動植物由来ペプチドから得られるものであってもよい。
【0019】
本発明の飲食品におけるシクロプロリルトレオニン含有量は特に限定されないが、シクロプロリルトレオニン含有量が多すぎるとシクロプロリルトレオニン特有の後を引く不快な苦味が強くなりすぎて、好ましく摂取できなくなる場合がある。本発明の飲食品におけるシクロプロリルトレオニン含有量の下限値は、飲食品100mLに対して0.0020mg以上、好ましくは0.0021mg以上、より好ましくは0.0050mg以上、さらにより好ましくは0.0053mg以上である。また、本発明の飲食品におけるシクロプロリルトレオニン含有量の上限値は、飲食品100mLに対して、好ましくは0.35mg以下、より好ましくは0.32mg以下、0.055mg以下、さらにより好ましくは0.053mg以下である。典型的には、本発明の飲食品におけるシクロプロリルトレオニン含有量の範囲は、飲食品100mLに対して0.0020~0.35mg、好ましくは0.0021~0.32mg、より好ましくは0.0050~0.055mg、さらにより好ましくは0.0053~0.053mgである。
【0020】
シクロプロリルトレオニン含有量は公知の方法で測定することができ、例えば、LC-MS/MS法などによりに測定することができる。
【0021】
本発明においては、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量が前記の範囲内にあれば、シクロプロリルトレオニン含有量の調整方法は特に限定されない。例えば、市販品のシクロプロリルトレオニンを用いることや、化学合成法や酵素法、微生物発酵法により製造された合成品のシクロプロリルトレオニンを用いることや、シクロプロリルトレオニンを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を用いることができる。また、市販品や合成品のシクロプロリルトレオニンや、シクロプロリルトレオニンを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物の一種のみを用いることや、それらの二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
動植物由来ペプチド熱処理物にはシクロプロリルトレオニン以外にも多種多様の環状ジペプチドが含まれるため、動植物由来ペプチド熱処理物と用いて飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を調整する場合には、前記飲食品中にシクロプロリルトレオニン以外の環状ジペプチドも配合される。しかしながら、本発明では、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量が所定の範囲内にあれば、エピガロカテキンガレート特有の後に引く不快な収斂味が顕在化され、当該飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を特定の範囲内に調整することで、他の環状ジペプチドの含有量にかかわらず、エピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味が低減される。
【0023】
1-3.動植物由来ペプチド熱処理物
本明細書において「動植物由来ペプチド」は特に限定されないが、例えば、大豆ペプチド、茶ペプチド、麦芽ペプチド、ホエイペプチド、コラーゲンペプチド等を用いることができる。これらのうち、本発明では大豆ペプチド及び茶ペプチドが好ましい。動植物由来ペプチドは、公知の方法を用いて動植物由来のタンパク質又はタンパク質を含む原料から調製したものを用いてもよく、或いは市販品を用いてもよい。
【0024】
1-3-1.大豆ペプチド
本明細書でいう「大豆ペプチド」とは、大豆タンパク質に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。原料となる大豆(学名:Glycine max)は品種や産地などの制限なく用いることができ、粉砕品などの加工品段階のものを用いることもできる。
【0025】
1-3-2.茶ペプチド
本明細書でいう「茶ペプチド」とは、茶(茶葉や茶殻を含む)抽出物に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる茶由来の低分子ペプチドをいう。抽出原料となる茶葉としては、茶樹(学名:Camellia sinensis)を用いて製造された茶葉の葉、茎など、抽出して摂取可能な部位を使用することができる。また、その形態も大葉、粉状など制限されない。茶葉の収穫期についても、所望する香味に合わせて適宜選択できる。
【0026】
1-3-3.麦芽ペプチド
本明細書でいう「麦芽ペプチド」とは、麦芽又はその粉砕物から得られる抽出物に酵素処理や熱処理を施し、タンパク質を低分子化することによって得られる麦芽由来の低分子ペプチドをいう。原料となる麦芽ペプチドは、品種や産地などの制限なく用いることができるが、特に大麦の種子を発芽させた大麦麦芽が好適に用いられる。なお、本明細書では大麦麦芽のことを単に麦芽と表記することもある。
【0027】
1-3-4.ホエイペプチド
ホエイペプチドの原料は、特に限定されないが、例えば、乳清タンパク質であるWPC(ホエイ・プロテイン・コンセントレート)、WPI(ホエイ・プロテイン・アイソレート)等が挙げられる。ホエイペプチドは、これらの乳清タンパク質を酵素等で分解したものをいう。分解度は種々あるが分解度が低いと、乳臭が強くなり溶解後の液性が不透明(白濁)であるという傾向を有する。一方、分解度が高いと溶解時の液性が透明になるが、苦味・渋味が増加するという傾向を有する。
【0028】
1-3-5.コラーゲンペプチド
本明細書でいう「コラーゲンペプチド」とは、コラーゲン又はその粉砕物を酵素処理や熱処理を施し、コラーゲンを低分子化することによって得られる低分子ペプチドをいう。コラーゲンは動物の結合組織の主要なタンパク質であり、ヒトを含めた哺乳類の身体に最も大量に含まれるタンパク質である。
【0029】
1-3-6.動植物由来ペプチド熱処理物
上述した通り、動植物由来ペプチドを高温加熱処理することで、シクロプロリルトレオニンを豊富に含む動植物由来ペプチド熱処理物を得ることができる。本明細書において「高温加熱処理」とは、100℃以上の温度かつ大気圧を超える圧力下で一定時間処理することを意味する。高温高圧処理装置としては、耐圧性抽出装置や圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
【0030】
高温加熱処理における温度は、100℃以上である限り特に限定されないが、好ましくは100℃~170℃、より好ましくは110℃~150℃、さらにより好ましくは120℃~140℃である。なお、この温度は、加熱装置として耐圧性抽出装置を用いた場合には抽出カラムの出口温度を測定した値を示し、加熱装置としてオートクレーブを用いた場合には、圧力容器内の中心温度の温度を測定した値を示す。
【0031】
高温加熱処理における圧力は、大気圧を超える圧力である限り特に限定されないが、好ましくは0.101MPa~0.79MPa、より好ましくは0.101MPa~0.60MPa、さらにより好ましくは0.101MPa~0.48MPaである。
【0032】
高温加熱処理時間は、シクロプロリルトレオニンを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは15分~600分程度、より好ましくは30分~500分程度、さらにより好ましくは60分~300分程度である。
【0033】
また、動植物由来ペプチドの高温加熱処理条件は、シクロプロリルトレオニンを含む処理物が得られる限り特に限定されないが、好ましくは[温度:圧力:時間]が[100℃~170℃:0.101MPa~0.79MPa:15分~600分]、より好ましくは[110℃~150℃:0.101MPa~0.60MPa:30分~500分]、さらにより好ましくは[120℃~140℃:0.101MPa~0.48MPa:60分~300分]である。
【0034】
なお、得られた動植物由来ペプチド熱処理物に対して、所望により、濾過、遠心分離、濃縮、限外濾過、凍結乾燥、粉末化等の処理を行ってもよい。また、動植物由来ペプチド熱処理物中の特定のシクロプロリルトレオニンが所望の含有量に満たなければ、不足する特定のシクロプロリルトレオニンについては他の動植物由来ペプチドや市販品、合成品を用いて適宜追加することもできる。
【0035】
1-4.エピガロカテキンガレート含有量とシクロプロリルトレオニン含有量の関係
本発明の飲食品は、飲食品中のエピガロカテキンガレート特有の後に引く不快な収斂味やシクロプロリルトレオニン特有の収斂味を低減し、良好な味わいを有する飲食品を提供するという観点から、エピガロカテキンガレート含有量が0.40~11mg/100mLであり、シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.055mg/100mLであり、エピガロカテキンガレート含有量(mg/100mL)(X)と、前記シクロプロリルトレオニン含有量(mg/100mL)(Y)が、Y≧0.0034×X-1.106及びY≧0.00009×X1.7421を満たすことが好ましい。
【0036】
1-5.飲食品の種類
本発明の一態様は、エピガロカテキンガレート含有量が特定の範囲内にあり、シクロプロリルトレオニン含有量が特定の範囲内にある飲食品である。
【0037】
エピガロカテキンガレート含有量と、シクロプロリルトレオニン含有量の好ましい範囲は前記した通りであり、エピガロカテキンガレート含有量と、シクロプロリルトレオニン含有量を前記範囲に調整することにより、飲食品中のエピガロカテキンガレート特有の後に引く不快な収斂味が低減された、良好な味わいを有する飲食品を得ることができる。
【0038】
また、シクロプロリルトレオニンは、GLP-2分泌促進作用やTRPV1刺激作用などを有することが確認されており(PCT/JP2016/069084及びPCT/JP2016/070639)、本発明の飲食品は、GLP-2分泌促進用やTRPV1刺激用の飲食品とすることもできる。また、GLP-2分泌促進やTRPV1刺激に関する機能の表示を付した飲食品とすることもできる。
【0039】
本発明の飲食品の種類は特に限定されないが、例えば、食品、飲料、飲食品組成物、食品組成物、飲料組成物等が挙げられる。本発明の飲食品は、飲料であることが好ましい。また、飲料の種類は特に限定されず、例えば、清涼飲料、非アルコール飲料、アルコール飲料等が挙げられる。飲料は、炭酸ガスを含まない飲料であってもよく、炭酸ガスを含む飲料であってもよい。炭酸ガスを含まない飲料として、例えば、茶飲料、コーヒー、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク等が挙げられるが、これらに限定されない。炭酸ガスを含む飲料として、例えば、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、及び果汁風味が付与された炭酸水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、本発明の飲料は、茶飲料であることが好ましい。
【0040】
本発明でいう茶飲料とは、茶樹(学名:Camellia sinensis)の主に葉や茎を用いて製造された緑茶、紅茶、烏龍茶、プアール茶などの茶、これら茶にさらに玄米、麦類、その他各種植物原料をブレンドしたもの、或いは、茶樹以外の各種植物の主に葉や茎、地下茎、根、花、果実などの原料や,それらをブレンドしたものを、水系溶媒で抽出して得られた液体の飲料をいう。
【0041】
本発明の茶飲料は、不発酵茶(緑茶など)、半発酵茶(烏龍茶など)、発酵茶(紅茶など)を含むが、具体的には、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、甜茶等の蒸し製の不発酵茶(緑茶);嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶;包種茶、鉄観音茶、烏龍茶等の半発酵茶;紅茶、阿波番茶、プアール茶などの発酵茶等の茶類を挙げることができる。また、茶葉としては、抽出して摂取可能な部位であれば何ら制限されず、葉、茎など適宜使用することができる。また、その形態も大葉、粉状など制限されない。本発明の茶飲料は、好ましくは烏龍茶および紅茶である。
【0042】
1-6.他の成分
本発明の飲食品は、上記に示した各種成分のほか、飲食品の種類に応じて、各種添加剤等が配合されていてもよい。各種添加剤としては、例えば、上記以外の糖類等の甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、食物繊維、pH調整剤、品質安定剤等が挙げられる。
【0043】
1-7.容器詰め飲食品
本発明の飲食品は、必要に応じて殺菌等の工程を経て、容器詰めすることができる。例えば、飲食品を容器に充填した後に加熱殺菌等を行う方法や、飲食品を殺菌してから無菌環境下で容器に充填する方法などを用いることができる。
【0044】
容器の種類は特に制限されず、例えば、ペットボトルなどの樹脂製容器、紙パックなどの紙容器、ガラス瓶などのガラス容器、アルミ缶やスチール缶などの金属製容器、アルミパウチなど、通常、飲食品に用いられる容器であればいずれも用いることができる。
【0045】
2.飲食品の製造方法
ある態様では、本発明は飲食品の製造方法であって、(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、を含む、前記製造方法である。また、前記工程(a)で調整される、飲食品中のエピガロカテキンガレートの含有量は、0.4~16mg/100mL、0.5~15mg/100mL、0.9~11mg/100mL、1.0~10mg/100mL、又は1.0~8.0mg/100mLとすることもできる。さらに、前記工程(b)で調整される、飲食品中のシクロプロリルトレオニンの含有量は、0.0020~0.35mg/100mL、0.0021~0.32mg/100mL、0.0050~0.055mg/100mL、又は0.0053~0.053mg/100mLとすることもできる。
【0046】
また、前記製造方法では、エピガロカテキンガレート含有量が0.40~11mg/100mLを満たすように調整する工程や、シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.055mg/100mLを満たすように調整する工程、エピガロカテキンガレート含有量(mg/100mL)(X)とシクロプロリルトレオニン含有量(mg/100mL)(Y)が、Y≧0.0034×X-1.106及びY≧0.00009×X1.7421を満たすように調整する工程などを含めることもできる。
【0047】
本発明の飲食品の製造方法において、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの含有量の調整方法は特に限定されず、例えば、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを配合して、前記含有量を所定の範囲に調整することができる。エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの配合方法は特に限定されず、例えば、市販品又は合成品のエピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを配合してもよく、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する原料などを配合してもよい。なお、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの含有量範囲などについては上記した通りである。
【0048】
本発明で製造される飲食品の種類は、前述の通り、特に限定されないが、本発明において好ましい飲食品は飲料であり、例えば、清涼飲料、非アルコール飲料、アルコール飲料等が挙げられる。飲料は、炭酸ガスを含まない飲料であってもよく、炭酸ガスを含む飲料であってもよい。炭酸ガスを含まない飲料として、例えば、茶飲料、コーヒー、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク等が挙げられるが、これらに限定されない。炭酸ガスを含む飲料として、例えば、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、及び果汁風味が付与された炭酸水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、本発明で製造される飲料は、茶飲料であることが好ましい。
【0049】
本発明の飲食品の製造方法には、飲食品に通常配合する添加剤等を配合する工程や、飲食品を容器詰めする工程を含めることもできる。なお、添加物や容器の種類は上記した通りであり、容器詰めの方法については公知の方法を用いることができる。
【0050】
本発明の飲食品の製造方法において、前記の各種工程は、どの順序で行ってもよく、最終的に得られた飲食品における含有量や重量比などが所定の範囲にあればよい。
【0051】
3.飲食品におけるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減する方法
ある態様では、本発明は飲食品におけるエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味を低減する方法であって、(a)エピガロカテキンガレートを配合して、飲食品中のエピガロカテキンガレート含有量を0.40~16mg/100mLに調整する工程、及び、(b)シクロプロリルトレオニンを配合して、飲食品中のシクロプロリルトレオニン含有量を0.0020~0.35mg/100mLに調整する工程、を含む、前記方法である。また、前記工程(a)で調整される、飲食品中のエピガロカテキンガレートの含有量は、0.4~16mg/100mL、0.5~15mg/100mL、0.9~11mg/100mL、1.0~10mg/100mL、又は1.0~8.0mg/100mLとすることもできる。さらに、前記工程(b)で調整される、飲食品中のシクロプロリルトレオニンの含有量は、0.0020~0.35mg/100mL、0.0021~0.32mg/100mL、0.0050~0.055mg/100mL、又は0.0053~0.053mg/100mLとすることもできる。
【0052】
また、前記方法では、エピガロカテキンガレート含有量が0.40~11mg/100mLを満たすように調整する工程や、シクロプロリルトレオニン含有量が0.0020~0.055mg/100mLを満たすように調整する工程、エピガロカテキンガレート含有量(mg/100mL)(X)とシクロプロリルトレオニン含有量(mg/100mL)(Y)が、Y≧0.0034×X-1.106及びY≧0.00009×X1.7421を満たすように調整する工程などを含めることもできる。
【0053】
前記方法において、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの含有量の調整方法は特に限定されず、例えば、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを配合して、前記含有量を所定の範囲に調整することができる。エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの配合方法は特に限定されず、例えば、市販品又は合成品のエピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを配合してもよく、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンを含有する原料などを配合してもよい。なお、エピガロカテキンガレート及びシクロプロリルトレオニンの含有量範囲などについては上記した通りである。
【0054】
前記方法における飲食品の種類は、前述の通り、特に限定されないが、本発明において好ましい飲食品は飲料であり、例えば、清涼飲料、非アルコール飲料、アルコール飲料等が挙げられる。飲料は、炭酸ガスを含まない飲料であってもよく、炭酸ガスを含む飲料であってもよい。炭酸ガスを含まない飲料として、例えば、茶飲料、コーヒー、果汁飲料、乳飲料、スポーツドリンク等が挙げられるが、これらに限定されない。炭酸ガスを含む飲料として、例えば、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、及び果汁風味が付与された炭酸水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、本発明で製造される飲料は、茶飲料であることが好ましい。
【0055】
前記方法には、飲食品に通常配合する添加剤等を配合する工程や、飲食品を容器詰めする工程を含めることもできる。なお、添加物や容器の種類は上記した通りであり、容器詰めの方法については公知の方法を用いることができる。
【0056】
前記方法において、前記の各種工程は、どの順序で行ってもよく、最終的に得られた飲食品における含有量や重量比などが所定の範囲にあればよい。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例1:シクロプロリルトレオニン含有量がエピガロカテキンガレートの後に引く不快な収斂味に及ぼす影響の評価
飲料中のシクロプロリルトレオニンの含有量とエピガロカテキンガレート含有量を様々に変えてサンプル飲料を調製し、それぞれについて官能評価試験を行った。各サンプル飲料の調製方法及び官能評価試験の方法を以下に示す。
【0059】
<サンプル飲料1~34>
サンプル飲料中のシクロプロリルトレオニン含有量が0、0.0021、0.0053、0.021、0.053、0.32、又は1.0mg/100mLとなり、サンプル飲料中のエピガロカテキンガレート含有量が0、0.1、0.5、1、5、8、10、15、又は20mg/100mLとなるように、シクロプロリルトレオニン(原液濃度:1mg/mL)及びエピガロカテキンガレート(原液濃度:10mg/mL)を混合しサンプル飲料1~34を調製した。なお、エピガロカテキンガレートはナカライテスク社製の規格特級で純度>98%のものを使用し、シクロプロリルトレオニンはBechem社製の純度>99%のものを使用した。
【0060】
<サンプル飲料35~38>
サンプル飲料に茶ペプチド熱処理物(茶エキス)50mg、大豆ペプチド熱処理物(大豆エキス)20mg、コラーゲンペプチド熱処理物(コラーゲンエキス)200mg、又はホエイペプチド熱処理物(ホエイエキス)15mgを配合し、かつサンプル飲料中のエピガロカテキンガレート含有量が5.0mg/100mLとなるように、エピガロカテキンガレートと、前記ペプチド熱処理物を混合してサンプル飲料35~38を調製した。尚、各種ペプチド熱処理物は下記方法で調製した。
【0061】
(1)大豆ペプチド熱処理物の調製
大豆ペプチド熱処理物として、大豆ペプチドを加熱処理した後に凍結乾燥したものを用いた。大豆ペプチド熱処理物は、大豆ペプチドを液体中にて高温高圧処理して製造した。具体的には、大豆ペプチド(ハイニュートAM、不二製油社製)3gに、約15mlの蒸留水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、0.31MPa、3時間高温高圧処理を加えた。その後に凍結乾燥することで粉末の大豆ペプチド熱処理物(大豆エキス)を得た。
【0062】
(2)茶ペプチド熱処理物の調製
植物体として、鹿児島県産の一番茶茶葉(品種:やぶきた、全窒素:6.3%)を用いた。この茶に対して、まず、水溶性タンパク質を低減する前処理(3回の前抽出)を行った。すなわち、茶10gに対して、熱湯200gを加えて適宜攪拌し、5分間抽出を行った。抽出終了後、140メッシュでろ過し、抽出残渣(茶滓)を回収した。この茶滓に対して、200gの熱湯を注ぎ5分間抽出を行って茶滓を回収した。再度、この茶滓に対して同様に抽出処理を行い茶滓を回収した。
【0063】
次に、この前抽出を行った茶(茶滓)に対して、酵素による分解処理を行った。茶滓(全量)に対して50℃の湯を200g注ぎ、プロテアーゼ(商品名:プロチンNY100、大和化成社製)を1g添加し、攪拌子で攪拌(300rpm)しながら、55℃のウォーターバス内にて3時間反応させた。その後、95℃、30分間保持して酵素を失活させた。
【0064】
この酵素処理液を固液分離せずに茶液体混合物の形態で、加熱処理を施した。加熱処理は、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、3時間の高温高圧流体による加熱処理とした。処理後の液体を140メッシュでろ過し、茶ペプチド熱処理物を得た。その後に凍結乾燥することで粉末の茶ペプチド熱処理物(茶エキス)を得た。
【0065】
(3)コラーゲンペプチド熱処理物の調製
コラーゲンペプチド(MDP1、ニッピ社)を蒸留水に250mg/mLとなるよう加え、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、0.31MPa、10時間高温高圧処理を加えて、コラーゲンペプチド熱処理物を得た。
【0066】
(4)ホエイペプチド熱処理物の調製
ホエイペプチドPeptigenIF-3090(アーラフーズ社製、平均分子量300~400)、平均分子量440のホエイペプチド、又はカゼインペプチドCU2500A(森永乳業社製、平均分子量375)3gに30mlの蒸留水を加え、オートクレーブ(トミー精工社製)に入れて、135℃、0.31MPa、3時間高温高圧処理を加えて、ホエイペプチド熱処理物を調製した。
【0067】
<サンプル飲料39~43>
サンプル飲料39~43は市販品の茶飲料(緑茶)に、シクロプロリルトレオニン(化学合成品)又は各種ペプチド熱処理物を配合して調製した。シクロプロリルトレオニンは原液濃度:1mg/mLの溶液を0.021mL配合し、各種ペプチド熱処理物は前記の方法で調製したものを配合した。
【0068】
<官能評価試験>
サンプル飲料1~43について、専門パネラー3名による官能評価を実施した。具体的には、各専門パネラーごとに下記基準に基づいて点数付けを行い、その平均点を表1~3に示した。平均点3点以上のものが好ましい飲料であると判定した。
【0069】
(官能評価の基準)
5点:シクロプロリルトレオニンによる効果が顕著にあり、エピガロカテキンガレート由来の不快な苦味が除去されるだけでなく後味に複雑な厚みが付与されて良くとても好ましく飲用できる。
4点:シクロプロリルトレオニンによる効果があり、エピガロカテキンガレート由来の後味の不快な苦味が改善され、好ましく飲用できる。
3点:エピガロカテキンガレート由来の後に引く苦味がシクロプロリルトレオニンで改善されており、飲用できる。
2点:エピガロカテキンガレート由来の後に引く苦味はややマスキングされているものの苦味を感じる、好ましく飲用することはできない。
1点:エピガロカテキンガレート由来の後に引く単調な苦味が強すぎる、又はシクロプロリルトレオニン由来の不快な収斂味を感じ、好ましく飲用することはできない。
0点:エピガロカテキンガレート由来の後に引く苦味を感じず、課題なし。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
表1に記載の通り、エピガロカテキンガレートの含有量とシクロプロリルトレオニン含有量が本発明の範囲内にある飲料は官能評価点が全て3点以上であり、飲料中のエピガロカテキンガレート由来の後に引く不快な苦味が低減され、飲用性に優れていることが明らかとなった。また、表2に記載の通り、各種ペプチド熱処理物を使用してシクロプロリルトレオニン含有量を調整した場合にも、本発明の効果が得られることが示された。さらに、表3に記載の通り、市販品の茶飲料に化学合成品のシクロプロリルトレオニンや各種ペプチド熱処理物を配合して、エピガロカテキンガレート含有量とシクロプロリルトレオニン含有量を調整した場合にも本発明の効果が得られることも示された。従って、本発明によると、飲食品中のエピガロカテキンガレートの含有量とシクロプロリルトレオニン含有量を本発明の範囲内に調整することで、エピガロカテキンガレート特有の後に引く不快な苦味が低減され、好ましい味わいを有する飲食品を実現できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、飲食品中のエピガロカテキンガレート由来の後に引く不快な苦味が低減された、良好な味わいを有する飲食品を調製する新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。