(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-19
(54)【発明の名称】クリックパッド及びこれを備えた電子機器
(51)【国際特許分類】
H01H 13/52 20060101AFI20220112BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
H01H13/52 F
G06F1/16 312L
(21)【出願番号】P 2019183595
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2020-09-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 2019年 7月18日 掲載アドレス https://jpn.nec.com/press/201907/20190718_01.html 公開者 日本電気株式会社 公開された内容 クリックパッドを備えたパーソナルコンピュータについての発表
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 直久
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/094484(WO,A1)
【文献】特開2012-129142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/52
G06F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に操作面を備えるとともに、裏面側にドーム形状とされたメンブレン式のスイッチ部を備えたクリックパッドモジュールと、
電子機器の本体に設けられ、前記スイッチ部に対向する対向部と、
前記スイッチ部と前記対向部との間に設けられた弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、
無負荷状態において前記スイッチ部及び前記対向部のそれぞれに当接しているクリックパッド。
【請求項2】
表面側に操作面を備えるとともに、裏面側にドーム形状とされたメンブレン式のスイッチ部を備えたクリックパッドモジュールと、
電子機器の本体に設けられ、前記スイッチ部に対向する対向部と、
前記スイッチ部と前記対向部との間に設けられた弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材は、前記スイッチ部を内部に収容して閉空間を形成する容器形状とされているクリックパッド。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記スイッチ部に当接する当接部と、該当接部に接続されるとともに周囲よりも厚肉とされた補強部と、を備えている請求項1に記載のクリックパッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のクリックパッドを備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリックパッド及びこれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコンのような電子機器には、ポインティングデバイスとしてのタッチパッドにクリック機能を付加したクリックパッドが設けられているものがある。このクリックパッドの表面(操作面)をユーザが指で押圧することによってクリックパッドが押し下げられ、クリックパッドの裏側に設けられたスイッチ部が動作する。スイッチ部としては、ドーム形状とされたメンブレン式のスイッチが使用されている。ドーム形状とされたスイッチ部は、動作時にドーム形状の頂点が凹み、そして形状復帰する際にクリック音を発する。
【0003】
特許文献1には、スイッチ部に設けられた金属製の固定接点と可動接点との間に金属よりも柔軟な材質の導電層を設けることによって、固定接点と可動接点との間での衝突音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、固定接点と可動接点との衝突音の発生は抑制することができるが、ドーム形状とされたスイッチ部の変形に伴うクリック音を抑制することができない。
【0006】
また、スイッチ部で発生したクリック音は、電子機器の筐体内で響き、耳障りな音となるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、クリック音を低減することができるクリックパッド及びこれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るクリックパッドは、表面側に操作面を備えるとともに、裏面側にドーム形状とされたメンブレン式のスイッチ部を備えたクリックパッドモジュールと、電子機器の本体に設けられ、前記スイッチ部に対向する対向部と、前記スイッチ部と前記対向部との間に設けられた弾性部材と、を備え、前記弾性部材は、無負荷状態において前記スイッチ部及び前記対向部のそれぞれに当接している。
【0009】
本発明の一態様に係る電子機器は、上記のクリックパッドを備えている。
【発明の効果】
【0010】
弾性部材によってクリック音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るノートブック型パソコンを示した斜視図である。
【
図2】クリックパッドモジュールの裏面側を示した斜視図である。
【
図3】本体側筐体のクリックパッドモジュールが設置される領域を示した部分拡大斜視図である。
【
図4】
図3の切断線IV-IVにおける断面図である。
【
図5】スイッチ部と凸部における詳細構造を示した部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示されているように、本実施形態に係るノート型パソコン(電子機器:以下、単に「ノートPC」という。)1は、クラムシェル型とされた携帯型の情報処理装置である。ノートPC1は、本体側筐体(本体)2と、ディスプレイ側筐体3とを備えている。
【0013】
本体側筐体2は、板状体とされ、入力部5等を備えている。入力部5は、ユーザによる入力操作を行うためのユーザインターフェースであり、文字、コマンド等の入力を受け付ける各種キーより構成されるキーボード9や、画面上のカーソルを移動させたり、各種メニューを選択するクリックパッド10を備えている。本体側筐体2内には、CPUやメモリ等から構成された制御部が設けられている。
【0014】
ディスプレイ側筐体3は、本体側筐体2に対応する大きさを有する板状体とされている。ディスプレイ側筐体3は、画像を表示するディスプレイ7等を備えている。ディスプレイ7は、入力される表示データをビデオ信号に変換し、変換したビデオ信号に応じた各種情報を表示画面に表示する。なお、ディスプレイ7は、タッチパネルの機能を備えていても良い。
【0015】
本体側筐体2とディスプレイ側筐体3との間には、これら筐体2,3同士を一側部回りに回動可能に接続するヒンジ部6が設けられている。ヒンジ部6によって、本体側筐体2に対してディスプレイ側筐体3が重なり合った閉状態と、本体側筐体2に対してディスプレイ側筐体3が離間した開状態(
図1の状態)とが実現されるようになっている。
【0016】
<クリックパッド10の構成>
クリックパッド10は、表面に面状のタッチセンサを備えたタッチパッドにクリック機能を付加したものである。
図2には、クリックパッド10の主要構成部品であるクリックパッドモジュール12が示されている。クリックパッドモジュール12は、長手辺12aと短手辺12bを有する略四角形の板状体とされている。クリックパッドモジュール12の表面側(
図2では裏側)には、ユーザがアクセスする面状のタッチセンサが設けられている。クリックパッドモジュール12の裏面側(
図2では表側)には、メタルドーム(スイッチ部)14が設けられている。
【0017】
メタルドーム14は、クリックパッドモジュール12の長手辺12a側の略中央に設けられている。メタルドーム14は、
図3に示すように、本体側筐体2に形成されたクリックパッド用開口2aに設置された際に、本体側筐体2に形成した凸部(対向部)16の先端に対向する。凸部16は、クリックパッド用開口2aに臨む段部2bに設けられている。段部2bは、本体側筐体2の手前側に設けられ、本体側筐体2の表面2cよりも下方に退避した位置に設けられている。凸部16は、段部2bから表面2c側に向かって突出している。凸部16は、横断面が十字形状とされている。ただし、凸部16の横断面形状は十字形状に限定されるものではなく、例えば円形や四角形であっても良い。
【0018】
図4には、凸部16を通る切断線IV-IVにおける部分断面斜視図が示されている。同図から分かるように、メタルドーム14の先端(同図において下端)と凸部16の先端(同図において上端)とが対向する。
【0019】
図5には、メタルドーム14と凸部16における詳細構造が示されている。
メタルドーム14と凸部16との間には、減音用ゴム(弾性部材)20が設けられている。
【0020】
図6には、クリックパッドモジュール12と、メタルドーム14と、本体側筐体2とを分離した断面図が示されている。メタルドーム14の中心と凸部16の中心とが共通軸線L1上で一致するように設けられている。
【0021】
メタルドーム14は、
図6に示されているように、弾性変形可能なドーム形状の皿バネであり、例えばステンレス鋼やベリリウム銅、りん青銅等のバネ性を有する金属材料の薄板によって形成されている。メタルドーム14の頂部には、減音用ゴム20に当接するように下方へ突出する突出部14aが設けられている。なお、メタルドーム14は、金属製に限定されるものではなく、例えばドーム形状に形成した弾性変形可能な樹脂の内面に金属薄膜等の導電層を形成したものでも良い。
【0022】
減音用ゴム20は、中央に円柱部(当接部)20aを有している。円柱部20aの先端(
図6において上端)は、メタルドーム14の突出部14aの下端に当接している(
図5参照)。円柱部20aの中心軸線は、共通軸線L1上に設けられている。
減音用ゴム20は、
図6に示されているように、円柱部20aを内部に備えた内部空間20bを有する容器形状とされている。減音用ゴム20の周縁部20cは、クリックパッドモジュール12の基板12c側に接するように設けられる。周縁部20cは、例えば、接着などによりクリックパッドモジュール12の基板12cに接着される。これにより、減音用ゴム20の内部空間20bが閉空間となり、この内部空間20b内にメタルドーム14が収容される(
図5参照)。
【0023】
図7Aに示すように、減音用ゴム20には、円柱部20aを補強する補強部20dが設けられている。
図7Aは、
図5及び
図6の減音用ゴム20を下から見た底面図である。補強部20dは、円柱部20aを除く他の周囲の壁部よりも厚肉とされている。補強部20dとしては、円柱部20aを正面視した場合に、円柱部20aを中心として十字形状に設けられている。ただし、補強部20dは、円柱部20aを中心として放射状に設けられていれば良い。
【0024】
図7Bには、
図5及び
図6の減音用ゴム20を上から見た平面図が示されている。同図から分かるように、円柱部20aが中央に設けられ、減音用ゴム20の外形を形成するように周縁部20cが設けられている。
【0025】
図5に示したように、減音用ゴム20の円柱部20aは、メタルドーム14の突出部14aと凸部16との間にわたって設けられている。すなわち、クリックパッド10をユーザが押圧していない無負荷状態にて、円柱部20aの上端はメタルドーム14の突出部14aの下端に当接し、円柱部20aの下端は凸部16の上端に当接している。ただし、円柱部20aとメタルドーム14との間、及び、円柱部と凸部16との間には、多少の隙間は許容される。
【0026】
<本実施形態の作用効果>
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
ユーザがクリックパッドモジュール12の表面側の操作面を押し下げることによって、メタルドーム14が本体側筐体2に設けられた凸部16に近づく。このときに、メタルドーム14と凸部16との間に減音用ゴム20が設けられているので、メタルドーム14のドーム形状が変形したり形状復帰したりする際に発生するクリック音の周波数が低下させられる。これにより、ユーザに耳障りな高周波音を抑制することができる。
【0027】
減音用ゴム20の円柱部20aをメタルドーム14の突出部14aと凸部16との間に設けることによって、ドーム形状とされたメタルドーム14の変形に追随して円柱部20aも弾性変形することになり、メタルドーム14が発生するクリック音の周波数を低下させることができる。
【0028】
減音用ゴム20は、メタルドーム14を内部に収容して閉空間を形成する容器形状とされているので、メタルドーム14で発生したクリック音を減音用ゴム20で覆った閉空間内に閉じ込めることができる。これにより、本体側筐体2内でクリック音が響くことを抑制することができる。
【0029】
メタルドーム14の突出部14aに当接する円柱部20aを補強するように周囲よりも厚肉とされた補強部20dを設けることとしたので、メタルドーム14に押された際の円柱部20aの姿勢を一定に維持することができる。例えば、クリックパッドモジュール12の操作面をユーザが操作したときに、メタルドーム14の直上(すなわち
図5の共通軸線L1上)からずれた位置を押圧することがある。このとき、メタルドーム14が円柱部20aを所望の方向から傾いた方向に押すおそれがある。このような場合であっても、円柱部20aが補強部20dによって補強されているので、円柱部20aの姿勢が維持され、適正なクリック動作を行うことができる。
【0030】
なお、減音用ゴム20を用いて説明したが、メタルドーム14の変形に追随できる材質であれば、ゴムに代えて樹脂等の弾性部材を用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 ノートPC(電子機器)
2 本体側筐体(本体)
2a クリックパッド用開口
2b 段部
2c 表面
3 ディスプレイ側筐体
5 入力部
6 ヒンジ部
7 ディスプレイ
9 キーボード
10 クリックパッド
12 クリックパッドモジュール
12a 長手辺
12b 短手辺
12c 基板
14 メタルドーム(スイッチ部)
14a 突出部
16 凸部(対向部)
20 減音用ゴム(弾性部材)
20a 円柱部(当接部)
20b 内部空間
20c 周縁部
20d 補強部
L1 共通軸線