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特許7001710耐熱性が改善された水性乾燥積層体結合剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】耐熱性が改善された水性乾燥積層体結合剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20220112BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220112BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20220112BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20220112BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220112BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J175/04
C09J175/06
C09J175/08
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019555483
(86)(22)【出願日】2017-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 CN2017080065
(87)【国際公開番号】W WO2018187935
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】チェン、マイ
(72)【発明者】
【氏名】パン、ユアンチア
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シンホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、カオピン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、シンチュン
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092009(JP,A)
【文献】特開2003-064341(JP,A)
【文献】特開平09-003431(JP,A)
【文献】特開2001-200029(JP,A)
【文献】特開2017-110126(JP,A)
【文献】特開平07-157742(JP,A)
【文献】特開2015-120819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267903(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107001574(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分結合剤組成物であって、
(a)(i)少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、水分散性ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールおよびそれらの混合物からなる群より選択される、第1の成分の固体部分全量を基準として0.1重量%~10重量%のポリオール、
(ii)第1の成分の固体部分全量を基準として重量%~32重量%のロジン樹脂、および
(iii)ポリマー全量を基準として、20重量%~60重量%の少なくとも1つのスチレンモノマーの残基、0℃未満のTgを有する40重量%~80重量%の少なくとも1つのアクリルモノマーの残基、1重量%~4重量%の(メタ)アクリル酸の残基、および0.5重量%未満のヒドロキシル含有モノマーの残基を有する、第1の成分の固体部分全量を基準として58重量%~96重量%のポリマーを含む
固体部分を有する水性混合物である第1の成分と、
(b)水分散性ポリイソシアネートを含む第2の成分と、を含み、
前記第2の成分は、前記第1の成分に対して、1:1~8:1のNCO/NCO反応性基モル比で存在する、二成分結合剤組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが5,000~2,000,000の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、ポリプロピレングリコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオールが、100~7,500の数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ロジン樹脂が、原料ロジンを変性、水素化、不均化および重合することによりそれぞれ得られる変性ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンおよび重合ロジン、ならびに原料ロジンをアルコールまたはエポキシ化合物でエステル化することにより得られるロジンエステルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ロジン樹脂が、1,000~50,000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ロジン樹脂が、1~50KOHmg/gの酸価を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、それらの異性体、およびそれらの混合物に基づくポリイソシアネートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも2つの基材層が結合剤の層によって互いに結合される積層物品の作製方法であって、前記少なくとも2つの基材層を請求項1に記載の結合剤組成物で結合することを含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の結合剤組成物により少なくとも2つの基材層を結合する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性アクリレート/ウレタンハイブリッド組成物を使用する二液型アクリルウレタン結合剤に関する。本開示は、積層接着剤としての使用に特に適しており、例えば、可撓性フィルム、アルミニウム箔および他の基材を積層するのに適している。
【背景技術】
【0002】
溶剤ベースのポリウレタンは、良好な耐熱性と耐湿性を実現するための積層接着剤として広く使用されてきた。近年、増え続ける新しい技術的用途に対応するために、市販の接着剤(例えば、接着剤およびプライマーを含む)の選択を拡大することが望まれるようになった。化学溶剤の放出を減らすとともに、取り扱いを容易にするという要望により、改善された水性接着剤系の需要が高まっている。広く使用されている用途で人気のあったそのような系の1つは、ラテックス系であり、すなわち、水性分散液またはエマルジョンである。特に魅力的なのはアクリルラテックス系であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現在の水性接着剤は、それらの耐熱性によって制限され、ジッパー挿入およびスタンドアップパウチなどの中性能の高需要パッケージの要件をほとんど満たすことができない。
【0004】
改善された耐熱性を有する水性接着剤を提供することが望ましい。
【0005】
本開示は、(a)(i)少なくとも2つのヒドロキシル基を含み、水分散性ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオールおよびそれらの混合物からなる群より選択される0.1%~10%のポリオール、(ii)3%~32%のロジン樹脂、および(iii)20%~60%の少なくとも1つのスチレンモノマーの残基、0℃未満のTgを有する40~80%の少なくとも1つのアクリルモノマーの残基、1~4%の(メタ)アクリル酸の残基、および0.5%未満のヒドロキシル含有モノマーの残基を有する58%~96%のポリマーを含む固体部分を有する水性混合物である第1の成分と、(b)水分散性ポリイソシアネートを含む第2の成分と、を含み、第2の成分は、第1の成分に対して、1:1~8:1のNCO/NCO反応性基モル比で存在する、二成分結合剤組成物に関する。本開示はさらに、基材上にコーティングを生成するための方法に関する。この方法は、結合剤組成物の層を適用することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の組成物および方法は、2つ以上の可撓性または剛性基材の積層を可能にする。本開示は、疎水性であり、芳香族モノマー残基を含む二液型水性結合剤組成物に関する。パート1は、ロジン樹脂と、スチレン型モノマー、疎水性アクリルモノマーおよびカルボキシル官能性アクリルモノマーの共重合体とを含む。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル官能性アクリルモノマーの含有量は、本開示において厳しく制限されている。水分散性または水溶性ポリオールがパート1中に混合され、水分散性ポリイソシアネートを含むパート2と架橋するためのヒドロキシル基を提供する。
【0007】
2つのパートは、(積層用機械に適用する場合など)表面に接触する前に混合される。結合剤は1つの基材に適用され、好ましくは、基材の別の層が適用される前にオーブンを通して乾燥される。次に、積層体は、例えば、周囲温度で硬化され得る。ラテックス中のポリオールは、好ましくは、ポリイソシアネートとともに硬化し、アクリルコ共重合体およびウレタンのハイブリッド系を形成する。共重合体は、高温で望ましい耐熱性および耐湿性を達成するのに役立つ。
【0008】
得られる結合剤は、優れた耐熱性、耐薬品性および耐環境性、ならびに幅広い温度(例えば、好ましくは少なくとも-10℃~+120℃)および湿度範囲に亘る接着性を示す。結合剤は、好ましくは、8時間以上の混合後に有用な可使時間を有し、取り扱いおよび適用が容易である。いくつかの実施形態において、結合剤は、第1の基材と接触され、第2の基材は、また、結合剤と接触されて積層体を形成する。結合剤は、高速で優れた機械的安定性を有する。
【0009】
特に明記しない限り、本明細書中で言及される全ての百分率は、重量によるものであり、温度は℃である。本明細書中で使用される場合、「結合剤」は、少なくとも第1の材料、好ましくは、第2の材料にもそれ自体を接合させるのに適した薬剤である。第1および第2の材料は同じであっても異なっていてもよい。材料の複数の層が、結合剤を使用して結合され得る。「結合剤」は、接着剤、プライマー、または表面に結合するための任意の他の適切なコーティングを包含する。本明細書中で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートをいう。「ラテックス」または「ラテックス組成物」は、例えば、乳化重合などの従来の重合技術によって調製され得る水不溶性ポリマーの分散液をいう。用語「アクリルモノマー」は、アクリロニトリル(AN)、アクリルアミド(AM)およびそのN置換型誘導体、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、およびそれらのエステル、並びにイタコン酸(IA)を意味する。AAおよびMAAのエステルとしては、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸エチルヘキシル(EHMA)、メタクリル酸ラウリル(LMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸イソブチル(IBA)、アクリル酸エチルヘキシル(EHA)およびアクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、並びにAAまたはMAAの他のエステルが挙げられるが。これらに限定ない。用語「スチレンモノマー」は、芳香族基、好ましくはスチレン(Sty)および置換スチレン、例えばα-メチルスチレン(AMS)で置換されたエチレン性不飽和モノマーを意味する。
【0010】
本開示の第1の成分である水性混合物は、好ましくはラテックスであり、これはエチレン性不飽和モノマーのポリマーの粒子の水ベースの分散液である。ポリマーは、第1成分の固体部分の58~96%の量で提供される。いくつかの実施形態において、ポリマーの量は、95%以下、または93%以下、または92%以下、または90%以下である。いくつかの実施形態において、ポリマーの量は少なくとも56%、または少なくとも65%、または少なくとも70%である。アクリルおよびスチレンモノマー以外に、適切なモノマーには、例えば、ビニル(例えば、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの酢酸塩;アルコール;ポリ二塩化ビニル、ポリ塩化ビニルなどの塩化物)が含まれ得る。ラテックスは典型的には、約10~1000cps、およびより好ましくは、20~500cpsの範囲の粘度を示すであろう。ラテックス中の固形分は、5~95%の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、ラテックス中の固形分は、20~80%、または30~70%、または40~60%の範囲である。いくつかの実施形態において、ラテックスのポリマーは、5000~2,000,000、または100,000~2,000,000の重量平均分子量を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも1つのスチレンモノマーの20~60%、または50%以下の残基を有する。本開示の一実施形態において、ポリマーは、少なくとも1つのスチレンモノマー、好ましくは、スチレンの23~45%の残基を有する。ポリマーは、0℃未満のTgを有する少なくとも1つのアクリルモノマーの40~80%の残基を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、少なくとも一つのC-C12アクリル酸アルキルエステルモノマーの50~80%の残基を有する。いくつかの実施形態において、C-C12アクリル酸アルキルエステルモノマー(単数または複数)は、そのBA、EHA、IBA、LMA、またはそれらの組み合わせである。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリマーは1~4%の(メタ)アクリル酸の残基を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、1~3%の(メタ)アクリル酸の残基、および最も好ましくは、1.5~2.5%の残基を有する。いくつかの実施形態において、ポリマー中の(メタ)アクリル酸残基は、アクリル酸の残基である。
【0013】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、0.5%未満のヒドロキシル含有モノマーの残基を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、0.3%未満のそのような残基、または0.2%未満の残基を有するか、もしくはポリマーはヒドロキシル含有モノマーの残基を実質的に含まない。ヒドロキシル含有モノマーの例として、例えば、HEMA、HEA、ビニルアルコール、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)およびアクリル酸ヒドロキシプロピルが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマーは、アミノ含有モノマーを実質的に含まない。いくつかの実施形態において、ポリマーは、カルボン酸基以外のイソシアネート反応性基の0.5%未満、または0.2%未満を有するか、もしくはポリマーは、カルボン酸基以外のイソシアネート反応性基を実質的に含まない。
【0014】
安定性を提供するとともに、粒径を制御できるように、界面活性剤が、(例えば、乳化重合または分散重合で使用するために)本開示の結合剤組成物中に必要に応じて使用され得ることが理解されよう。従来の界面活性剤として、アニオン性または非イオン性乳化剤またはそれらの組み合わせが含まれる。典型的なアニオン性乳化剤として、アルカリまたはアンモニウムアルキル硫酸塩、アルカリまたはアンモニウムアルキルエーテル硫酸塩、アルカリまたはアンモニウムアルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸の塩、スルホコハク酸塩のエステル、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、および複合有機リン酸エステルの塩または遊離酸が含まれるが、これらに限定されない。典型的な非イオン性乳化剤として、ポリエーテル、例えば、直鎖および分岐鎖アルキルおよびアルキルアリールポリエチレングリコールおよび並びにポリプロピレングリコールエーテルおよびチオエーテルを含む酸化プロピレンエチレンおよび酸化プロピレン縮合物、約7~約18個の炭素原子を含むアルキル基を有するとともに、約4~約100個のエチレンオキシ単位を有するアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、およびソルビタン、ソルビド、マンニタン、およびマンニドを含むヘキシトールのポリオキシアルキレン誘導体が含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0.1~3重量%以上のレベルで、本開示のポリマー組成物において使用され得る。
【0015】
ポリマー組成物が、ヒドロキシル官能性を提供するために水分散性ポリオールと混合される。水分散性ポリオールは、1~50%の範囲の任意の量で撹拌しながら、室温で水溶液またはエマルジョンを形成するものである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオールまたはそれらの混合物であり得る。ポリオールは、複数のヒドロキシル官能基を有し、したがって少なくとも2つのヒドロキシル基を含むだろう。好ましいポリオールは、ジオール、トリオールまたはそれらの混合物から選択される。ポリオールは十分に不揮発性であるため、混合操作中にイソシアネートとの反応に完全にまたは少なくとも部分的に利用可能である。ポリオールはまた、水溶性または水分散性である。いくつかの実施形態において、ポリオールは、100~7,500、または150~5,000、または200~1,000の数平均分子量を有するであろう。いくつかの実施形態において、分子量は1500未満、または600未満である。いくつかの実施形態において、ポリオールは、400MWポリプロピレングリコールなどのポリプロピレングリコール(PPG)である。いくつかの実施形態において、ポリオールは、第1の成分の固体部分の0.1~10%の量で提供される。いくつかの実施形態において、ポリオールの量は、5%以下、または3%以下、もしくは2%以下、または1.5%以下である。いくつかの実施形態において、ポリオールの量は少なくとも0.3%である。いくつかの実施形態において、ポリオールの量は少なくとも0.4%、または少なくとも0.6%である。成分の固体部分は不揮発性部分であり、典型的にはポリマーおよび他の不揮発性添加剤、例えば界面活性剤、顔料、難燃剤を含み、水および他の溶剤を除外する。
【0016】
ポリマーラテックスは、さらにロジン樹脂と混合される。ロジン樹脂は、固体または水分散性で存在してもよい。水分散性ロジン樹脂は、1~60%の範囲の任意の量で攪拌しながら、室温で水溶液またはエマルジョンを形成する樹脂である。本開示において使用されるロジン樹脂は、a)変性、b)水素化または不均化、およびc)ガムロジン、トールオイルロジンおよびウッドロジンなどの原料ロジンからの重合またはエステル化の少なくとも1つの方法によって処理される。ロジン樹脂が上記の少なくとも2つの方法によって処理される場合、方法b)およびc)の処理順序は特に限定されず、それらの両方が使用される場合のみ、変性法は、直接である必要はないが、重合化法が伴われる必要がある。ロジン樹脂の適切な例として、原料ロジンを変性、水素化、不均化および重合することによってそれぞれ得られる変性ロジン、水素化ロジン、不均化ロジンおよび重合ロジン、さらに、原料ロジンをアルコールまたはエポキシ化合物を用いてエステル化することによってロジンエステルが含まれる。変性ロジンの好適な例としては、原料ロジンを不飽和酸で変性することによって得られる不飽和変性ロジン、および原料ロジンをフェノールで変性することによって得られるフェノール変性ロジンが挙げられる。不飽和酸の適切な例としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸およびマレイン酸が挙げられる。フェノールの適切な例としては、フェノールおよびアルキルフェノールが挙げられる。変性方法は特に限定されず、原料ロジンをフェノール類または不飽和酸と混合してそれらを加熱する方法が、通常、採用される。
【0017】
原料ロジンおよびアルコールからロジンエステルを調製するためのアルコールの適切な例としては、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどの一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンなどの四価アルコール、および並びにジペンタエリスリトールなどの六価アルコール挙げられる。好ましくは、アルコールはグリセリンであり、より好ましくは、アルコールはペンタエリスリトールである。ロジンエステルのエステル化方法は特に限定されず、原料ロジンをアルコール類と混合し、任意のエステル化触媒の存在下で混合物を加熱する方法が採用される。不均化ロジンから調製されたロジンエステル(すなわち、不均化ロジンエステル)および高分子から調製されたロジン(すなわち、高分子ロジンが好ましい)。
【0018】
ロジン樹脂は、第1の成分の固体部分の3~32%の量で提供される。いくつかの実施形態において、ロジン樹脂の量は、30%以下、または28%以下、もしくは25%以下、または20%以下である。いくつかの実施形態において、ロジン樹脂の量は、少なくとも3%、または少なくとも6%、もしくは少なくとも8%である。
【0019】
ロジン樹脂の酸価および軟化点は、その種類に依存して異なる。酸価は通常1~50KOH mg/g、または1~15KOH mg/gであり、軟化点は25℃~200℃、または60℃~190℃である。
【0020】
いくつかの実施形態において、ロジン樹脂の分子量は1,000~50,000、好ましくは、2,000~10,000である。
【0021】
他の粘着付与樹脂が、本開示のロジン樹脂を置換するために使用され得、同様の性能を達成する。他の粘着付与樹脂の適切な例としては、テルペンおよび変性テルペン、脂肪族、C脂肪族樹脂、C芳香族樹脂、およびC/C脂肪族/芳香族樹脂などの脂環式および芳香族樹脂。水素化炭化水素樹脂、テルペンフェノール樹脂、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0022】
必要に応じて、従来のイオン性または非イオン性界面活性剤が、ロジン樹脂の調製において使用され得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤は陰イオン界面活性剤であり、陰イオン界面活性剤の適切な例は、スルホン酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、陰イオン界面活性剤は、アルキルモノエステルスルホコハク酸塩などのスルホン酸塩およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル分岐リン酸塩などのリン酸塩である。
【0023】
いくつかの実施形態において、ロジン樹脂の調製において、ロジン樹脂は有機溶剤を実質的に含まない、すなわち、それは、ロジン樹脂、有機溶剤の総重量に基づいて、3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、もしくは0.5重量%未満または0.2重量%未満、または0.1重量%未満である。本開示のロジン樹脂に規定の範囲内で存在し得る溶剤は、ヒドロカルビル溶剤であり、好ましくは芳香族溶剤であり、より好ましくはトルエンである。
【0024】
本開示の第2の成分であるポリイソシアネートは、任意の適切なポリイソシアネートである。いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートまたはそれらの混合物である。いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートはジイソシアネートである。適切なポリイソシアネートの例としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、それらの異性体またはそれらの混合物に基づくものが挙げられる。ポリイソシアネートおよびポリオールのプレポリマーがまた、使用され得る。脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは水溶性または水分散性であり、すなわち、それは、室温で1~50%の範囲の任意の量で撹拌しながら、室温で水溶液またはエマルジョンを形成するだろう。
【0025】
ポリイソシアネートは、第1の成分の総重量に基づいて1重量%~5重量%の割合で結合剤中に存在する。
【0026】
イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対する相対比率は、1:1~8:1のNCO/NCO反応性基のモル比内で、必要に応じて変更可能である。NCO反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基およびカルボキシル基が挙げられる。一部の実施形態では、NCO/NCO反応性基のモル比は少なくとも3:1である。いくつかの実施形態において、NCO/NCO反応性基のモル比は、5:1以下である。いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートは、ポリオールがイソシアネート基に対して上記の好ましい割合で存在する状態で、ラテックス中の固形分1部に対してポリイソシアネート0.01~0.8(およびより好ましくは0.1~0.3)部までの量で提供される。得られる混合物全体のpHは、好ましくは5~9、およびより好ましくは6~8である。
【0027】
本開示の結合剤の他の任意の成分としては、共溶剤、凝集剤、顔料または他の着色剤、充填剤、強化剤(例えば繊維)、分散剤、湿潤剤、ワックス、触媒、発泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、難燃剤、接着促進剤、酸化防止剤、殺生物剤、凝集剤、または安定剤から選択される薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの任意の成分(必要に応じて)は、成分間の非互換性を生じさせない任意の追加順序で追加され得る。水性担体中に溶解しない成分(例えば、顔料および充填剤)は、ミキサー(必要に応じて高せん断ミキサー)を用いて、ラテックスまたは水性担体もしくは共溶剤中に分散され得る。組成物のpHは、攪拌しながら酸または塩基を添加することによって調整され得る。塩基の例としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。酸の例としては、酢酸、ギ酸、塩酸、硝酸、およびトルエンスルホン酸挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
上記から推測されるように、本開示の系は、好ましくは結合剤を形成するために基板への適用前または適用中に、適切なミキサー(例えば、電気的、空気圧的、または他の方法で動力付与される機械的ミキサー)を用いて混合される2成分の使用を企図する。したがって、ラテックス/ポリオール混合物は、通常、ポリイソシアネートとは別に包装されるだろう。混合は、適用プロセスの前に、適用プロセス中に、または適用プロセスの結果としてなど、プロセス中の任意の適切な時間で行われ得る。本ステップの全ては、周囲の室温条件下で実行され得る。必要に応じて、加熱または冷却が採用されてもよい。
【0029】
本開示の結合剤は、基材を一緒に結合するのに有用である。基材は、類似の材料または異なる材料であってもよい。湿式積層プロセスが可能であるが、好ましくは、結合剤は、複数の基材層の乾式材積層に特に有用である。好ましい実施形態において、結合剤の層が第1の基材層に適用され、水が(例えば、加熱空気などを用いて)除去され、得られる乾燥された結合剤層は、第2の基材層で覆われ、2つの基材が結合剤の乾燥された層によって一緒に結合された積層品を形成する。好ましい実施形態において、基材層は、基材材料のロールの形態で提供される。シートは、厚さ1~10ミルのオーダーであり得る。より小さい厚み(例えば、1ミクロン以上のオーダー)と同様に、より大きな厚みがまた可能である。
【0030】
本開示の組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷、従来のまたはエアレススプレー、ロールコーティング、ブラシコーティング、巻線ロッドコーティング、ナイフコーティング、またはコーティングプロセス(例えば、カーテン、フラッド、ベル、ディスク、およびディップコーティングプロセス)などの従来の適用技術を用いて所望の基材に適用され得る。結合剤を用いたコーティングは、エッジに沿って、または断続的な位置でなど、表面全体または表面の一部のみに行われ得る。一旦基材に適用されると、組成物は、例えば熱流および空気流の適用、または実質的に全ての残留水を除去するためのいくつかの他の適切なアプローチなどによって、乾燥される。
【0031】
本開示は、結合剤の有利に長いポットライフから利益を得る。したがって、結合剤の成分が混合された後、基材への適用前に数時間の経過が許容される場合があると考えられる。例えば、一実施形態において、耐用年数は少なくとも8時間(より好ましくは少なくとも12~24時間)であり、したがって、少なくとも8時間が基材への適用前に経過し得る。
【0032】
結合剤組成物は、トップコートまたは他の中間コートとして他の適切な用途を見出すことができ、したがってそれらを塗料、インク、プラスチックなどに潜在的に有用にすることが可能である。本開示の結合剤組成物は、高密度、低密度、または中密度のプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホンまたはそれらの混合物から選択されるタイプの)、紙、木材および再構成木材製品、ポリマー被覆基材、ワックス被覆板紙、厚紙、パーティクルボード、織物、皮革、および金属(アルミニウム、鉄およびその他の非鉄)、金属化プラスチック(例えば、金属化プラスチックフィルム)などの多種多様な1つまたは複数の適切な基材上で使用され得る。結合剤は、包装およびシーリング用途のために特に魅力的である。例えば、一態様において、プラスチックフィルム、金属フィルム、または金属化プラスチックフィルムは、本開示の接着剤を用いて(例えば、そのエッジに沿って、または断続的な位置でなどの、その表面の全体または少なくとも一部の上に)積層される。そのような1つの用途において、食品がボイルインバッグ(boil-in-bag)調製用に包装され得るか、または得られる積層体が、いくつかの他の物品を密封または包装するために使用され得る。
【実施例
【0033】
I.原材料
フィルム:実施例において使用される基材として、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPP、厚さ18μm)、真空蒸着ポリエチレンテレフタレートポリエステルフィルム(VMPET、厚さ12μm)フィルム、および広東ナンチェンカンパニー(Guangdong Nan Cheng Company)から市販されているポリエチレンフィルム(PE、厚さ60μm)が挙げられる。
【0034】
実施例において使用される成分には、以下の表1に記載されているものが含まれる。
【表1】
【0035】
II.試験方法
水性の接着剤およびBOPP、VMPET、PEフィルムが、前処理なしで使用される。接着剤をBOPPフィルムにコーティングし、VMPETフィルムと組み合わせて、乾燥重量で2.0g/mの量のBOPP/VMPET 2層積層体を得て、乾燥させる。次いで、2層積層体に、乾燥重量で2.0g/mの量で水性接着剤をコーティングし、PEフィルムと組み合わせて、BOPP/VMPET/PE3層積層体を得る。BOPP/VMPET/PE3層積層体を50℃で2日間硬化させた後、試験を行った。
【0036】
i)結合強度(BS):
本開示の積層体を、Instron社から入手可能な5943 Series Single Column Table Top Systemを用いる250mm/分のクロスヘッド速度下でのT-剥離試験のために金属ステンシルを用いて、25mm幅×10cm長さのストリップに切断する。試験中、各ストリップのテールを指で僅かに引っ張り、テールが剥離方向に対して90度のままであることを確認する。各サンプルについて3つのストリップを試験し、その平均値を計算する。結果はN/15mm単位である。値が高いほど、結合強度は高くなる。
【0037】
ii)ヒートシール強度(HS)
積層体を、140℃のシール温度および300Nの圧力下で1秒間(または220℃のシール温度および300Nの圧力下で0.5秒間)、Brugger Companyから入手可能なHSG-Cヒートシール機中でヒートシールし、その後冷却され、Instron社から入手可能な5943 Series Single Column Table Top Systemを用いる250mm/分のクロスヘッド速度下でのヒートシール強度試験のために、25mm幅×10cm長さのストリップに切断する。各サンプルについて3つのストリップを試験し、その平均値を計算する。結果はN/15mm単位である。値が高いほど、ヒートシール強度が向上する。
【0038】
III.実施例
470.25gのアクリル共重合体エマルジョン(固形分44%のBA-スチレン共重合体)を、マグネチックスターラー付きの1リットルボトルに入れ、次に、4.75gのポリオール(ポリエーテルジオール)と25gのSUPER ESTER(登録商標)E-865NTロジン樹脂をボトルに注ぎ、20分間攪拌した。混合組成物が分配されたら、10gのCOREACTANT CR 3Aポリイソシアネートを混合エマルジョン中に滴下し、混合物をさらに20分間攪拌する。
【0039】
例示的な接着剤の例IE1、IE2、IE3およびIE4、および比較例の接着剤の例CE1、CE2およびCE3を、表1に記載された成分を用いて調製する。上記と同じ混合プロセスを、表2に記載された組成による成分を使用する以外、各実施例について繰り返す。
【表2】
【0040】
例示的な接着剤の例IE1、IE2および比較例の接着剤の例CE1を、それぞれVMPETおよびPE60フィルムにコーティングし、さらなる試験のためにVMPET/PE602層積層体を得る。
【0041】
例示的な接着剤の例IE1、IE2、IE3およびIE4、および比較例の接着剤の例CE1、CE2およびCE3を、それぞれBOPP、VMPETおよびPE60フィルムにコーティングし、さらなる試験のためのBOPP/VMPET/PE60積層体を得る。
【0042】
IV.結果
表3に示すように、例示的な接着剤の例IE1およびIE2は、比較例の接着剤の例1のヒートシール強度に比し、140℃および220℃で有意に改善されたヒートシール強度を有する。
【表3】
【0043】
表4に示すように、例示的な接着剤の例IE1、IE2、IE3、およびIE4は、比較例の接着剤の例CE1、CE2、およびCE3のヒートシール強度に比し、220℃で有意に改善されたヒートシール強度を有する。
【表4】