IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7001713カメラモジュール型自動焦点アクチュエータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】カメラモジュール型自動焦点アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20220112BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220112BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20220112BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G02B7/02 Z
G02B7/04 D
G03B30/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019560266
(86)(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 IB2018052773
(87)【国際公開番号】W WO2018203173
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】102017000048138
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517067202
【氏名又は名称】アクチュエーター・ソリュ―ションズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ケプファー
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-280879(JP,A)
【文献】国際公開第2008/117958(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178152(WO,A1)
【文献】特開2008-020813(JP,A)
【文献】特開2008-276750(JP,A)
【文献】国際公開第2009/118791(WO,A1)
【文献】特開2009-122603(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001972(WO,A1)
【文献】特表2018-522256(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0094723(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0032070(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
G02B 7/02
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定式支持部材(1;1´)と、
光軸(A)に沿って移動するように前記固定式支持部材(1;1´)に滑動可能に受容されている可動式レンズ担体(2;2´)と、
前記可動式レンズ担体(2;2´)を前記光軸(A)に沿って第1の方向に移動させるように活性化されるように配置されている1つ以上の形状記憶合金製ワイヤ(4;7)と、
前記光軸(A)のみに対して平行とされる復帰力を、1つ以上の前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)の活性化によって決定される前記第1の方向の反対方向である第2の方向に作用させるように、前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)との間に取り付けられている第1の弾性復帰要素(3;5;6;8)と、
前記第1の弾性復帰要素(3;5;6;8)と同一とされる少なくとも1つの第2の弾性復帰要素(3;5;6;8)であって、前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)との間に取り付けられており、且つ、前記光軸(A)に関して対称な位置それぞれに配置されている少なくとも1つの前記第2の弾性復帰要素(3;5;6;8)と、
を備えているカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータにおいて、
前記可動式レンズ担体(2;2´)が、1つ以上の前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)の作動の際における前記第1の弾性復帰要素及び前記第2の弾性復帰要素(3;5;6;8)の変形に起因する前記第1の弾性復帰要素及び前記第2の弾性復帰要素(3;5;6;8)の機械的作用を介して、前記第1の方向に移動するように、1つ以上の前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)がそれぞれ、前記第1の弾性復帰要素及び前記第2の弾性復帰要素(3;5;6;8)のうち一の弾性復帰要素に機械式で直接固定されている第1の端部と、前記第1の端部に固定されている前記一の弾性復帰要素(3;5;6;8)、他の弾性復帰要素(3;5;6;8)、又は前記固定式支持部材(1;1´)に機械式で直接固定されている第2の端部とを有していることを特徴とするカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項2】
前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)とが、前記光軸(A)に対して垂直な平面内において略正方形状又は略矩形状とされ、前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)とが、前記光軸(A)に対して平行に延在している少なくとも4つの案内ポスト(1a;1a´)を介して、滑動可能に結合されており、
前記案内ポスト(1a;1a´)が、回転部材が前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)との間に配置されていない状態で、0.08°の最大傾斜を担保する寸法公差で、前記可動式レンズ担体(2;2´)に形成されている対応溝(2a;2a´)に係合することを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項3】
前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータが、二組に分かれて配置されている4つの同一の前記弾性復帰要素(3;5)を含んでおり、
組それぞれの2つの前記弾性復帰要素(3;5)が、前記光軸(A)に関して対称に配置された状態で、前記光軸(A)に対して平行な共通する平面に配置されており、
2つの直線状の前記形状記憶合金製ワイヤ(4)が、同一の組の2つの前記弾性復帰要素(3;5)の間に、水平に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項4】
前記弾性復帰要素(3)それぞれが、金属から作られている可撓性ストリップを含んでおり、
前記可撓性ストリップが、比較的低い位置の最外側部分において前記固定式支持部材(1;1´)に固定されている第1の端部(3a)と、比較的高い位置の最内側部分において前記可動式レンズ担体(2;2´)に固定されている第2の端部(3b)とを備えていることを特徴とする請求項3に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性復帰要素それぞれが、自身の端部(5b)に対して最も外側の位置に頂点(5a)を備えている水平V字状可撓性コネクタ(5)から成ることを特徴とする請求項3に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項6】
前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータが、前記固定式支持部材(1;1´)に固定されていると共に前記可動式レンズ担体(2;2´)に固定された頂部頂点(6b)と垂直方向において位置合わせされている底部頂点(6a)を具備する、2つの同一の菱形状弾性復帰要素(6)と、前記菱形状弾性復帰要素(6)のうち一方の菱形状弾性復帰要素の内部にそれぞれ取り付けられている2つの前記形状記憶合金製ワイヤ(4)とを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項7】
前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータが、水平V字状可撓性コネクタ(5)から成る4つの同一の前記弾性復帰要素を含んでおり、
前記水平V字状可撓性コネクタ(5)が、自身の端部(5b)に対して最も外側の位置に頂点(5a)を具備し、
4つの同一の前記弾性復帰要素が、二組に分かれて配置されており、組それぞれの2つの前記弾性復帰要素が、前記光軸(A)に関して対称に取り付けられた構成で、前記光軸(A)を含む共通平面に配置されており、
単一の形状記憶合金製ワイヤ(7)が、4つのすべての前記弾性復帰要素を前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータの周囲に沿って逐次的に接続するために水平に取り付けられている前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項8】
前記カメラモジュールのための自動合焦アクチュエータが、2つの同一のレバー-ロッド式弾性復帰要素(8)であって、前記固定式支持部材(1;1´)に回動可能に支持されるレバー(8a)と、前記可動式レンズ担体(2;2´)の水平な中央部分において前記レバー(8a)と前記可動式レンズ担体(2;2´)との間で回動されるロッド(8b)とをそれぞれ含んでいる、前記レバー-ロッド式弾性復帰要素(8)と、前記固定式支持部材(1;1´)と前記レバー(8a)との間に固定されている前記形状記憶合金製ワイヤ(4)であって、前記固定式支持部材(1;1´)と前記可動式レンズ担体(2;2´)と前記レバー(8a)と前記ロッド(8b)との間における回動式接続部(9a,9b,9c)が、少なくとも1つの前記回動式接続部(9a,9b,9c)が捩じりバネとして機能するようにプラスチック材料から作られた膜状ヒンジとして構成されている、前記回動式接続部(9a,9b,9c)とを含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項9】
少なくとも1つの前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)がそれぞれ、一方の端部に、通常アクチュエータ動作において高剛性な接続部材として機能するような構成を有しているバネを含んでおり、
前記バネが、前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)が移動不能な前記可動式レンズ担体2;2´)を強制的に動作させる場合に前記形状記憶合金製ワイヤ(4;7)の収縮を吸収するのに十分な長さを有しているフェイルセーフ部材として機能することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【請求項10】
前記弾性復帰要素(3;5;6;8)が、14GPa~15GPaの縦弾性係数を有するガラス繊維強化プラスチックから作られていることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の形状記憶合金製ワイヤをアクチュエータ要素として具備するカメラモジュールのための、特に携帯電話のカメラモジュールに関連する新規の且つ改良された自動焦点(AF)アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、形状記憶合金製ワイヤをアクチュエータ要素として利用することは、重量、電力消費、コストの観点において、他のアクチュエータ要素に対して様々な利点を有している。
【0003】
これら利点は、カメラモジュールの分野においても既に認識されており、例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3のような、様々な特許出願の主題とされる。これら特許文献すべてが、レンズ担体(当該技術分野ではレンズバレルとも呼称される)と接触しており且つカメラモジュールハウジング又は支持部材に固定されている、形状記憶合金製ワイヤを具備するカメラモジュールを記載している。形状記憶合金(SMA)製ワイヤのジュール効果による制御された加熱によって、レンズ担体がハウジングに対して移動される。形状記憶合金製ワイヤの長さに応じて、光軸に沿った成分を有する張力が作用されるからである。
【0004】
SMAワイヤの長さ変化が、SMA材料自体の物理的特性によって、SMAワイヤの長さの約2%~8%の僅かな変化に制限されるので、SMAワイヤが移動方向に対して平行に配置されている場合には、レンズ担体が十分な程度に移動することは困難である。理論上、十分な長さのワイヤを利用することによって移動の任意の程度が実現可能とされるが、このことは、作動装置が許容することができない大きさになることを示唆している。
【0005】
しかしながら、SMAワイヤの長さを光軸に対して鋭角に配置させることによって、SMAワイヤの長さの所定の変化に対する光軸に沿った移動の程度が大きくなる。このことは、光軸に沿った移動の程度が光軸に沿って分解されたSMAワイヤの実際の長さ変化より大きくなるように、SMAワイヤの長さ変化がSMAワイヤの配向を変化させるので、SMAワイヤが斜めに配向されていることによって、ギヤリングが効果的に実現されるからである。
【0006】
例えば特許文献4は、作動装置の制限された大きさについての実際的な制約の範囲内で、光軸に沿ったレンズ担体の移動の程度を最大化することに関連している。当該特許文献で提案される解決手段は、2つの長さを有する一組のSMAワイヤであって、共通する箇所でレンズ担体又は支持部材に結合されており、且つ、光軸に関する径方向で見ると異符号の光軸に対して鋭角で当該共通する箇所から延在している一組のSMAワイヤを利用することである。
【0007】
ワイヤの鋭角が、上述のギヤリングの効果を生み出し、光軸に沿って延在しているワイヤと比較して移動の程度を高めることができる。しかしながら、SMAワイヤの長さを光軸に対して鋭角に配置させることは、SMAワイヤが光軸に対して垂直な成分を有する軸外力を発生させ、レンズ担体を横方向に変位又は傾斜させる点において不利である。
【0008】
レンズ担体を支持部材に支持すると共に光軸に沿ったレンズ担体の移動を案内するための懸架システムは、このような軸外力に耐えることができるように構成されているが、懸架システムは、高い摩擦力を有しており、小型ではないという傾向にある。例えば、このような懸架システムのうち一のタイプは、軸受要素と軌道との間における反作用によって発生する軸外抵抗によって、可動軸受要素が軌道に接触すると共に軌道に沿って走行する軸受とされるが、軸受は、比較的大きい摩擦力を有する比較的大型の懸架システムのうち一のタイプとされる。
【0009】
特許文献1及び2は、ハウジングとレンズ担体との間における摩擦現象とアクチュエータの耐用寿命に関する関連する課題とを解消していないが、このような状況は、代わりに特許文献3では、ハウジングとレンズ担体との間に挿置されている転がり軸受と、転動部材とレンズ担体との間における接触を確保するための光軸に対して垂直な成分を有する復帰力とによって認識されている。上述の大型化の問題に加えて、このような顕著に大きく且つ一定の垂直成分は、構造体に負荷を発生させるので、例えばAFカメラモジュールのような高頻度で利用される作動システムでは、早期故障となるか、又は改良された構成部品を利用することによって、例えば必要以上に大きいワイヤを利用することによって補修することになる。
【0010】
他の欠点は、幾つかの要素の製造及び相互結合と転動部材の正確な位置決めとを必要とする、このような機械的構造の製造に関連する。これにより、アクチュエータの製造コストは一層高くなるが、アクチュエータの信頼性は低下する。適切に協働することが要求される部品が多く存在し、これら多くの部品に関連する問題が、アクチュエータの性能に影響を及ぼすか、アクチュエータの故障を招くからである。
【0011】
代替的な構成は、ベースから延在している円筒状部材を具備する当該ベースであって、円筒状部材の壁に形成されていると共に円筒状部材の内部に滑動可能に取り付けられたレンズ担体の光軸に対して平行に延在している2つの対向するスリットを備えている当該ベースを含んでいるAFカメラモジュールを表わす特許文献5に開示されている。2つの支持バーが、スリットの上方の位置において円筒状部材の上側端部から外方に突出しており、フックバーが、スリット同士の中間において円筒状部材の外周から突出している。突起は、スリットを貫通して円筒状部材の外部に延在するように、レンズ担体の外周に形成されており、導電性材料に形成されたバネが、その下側端部がベースの頂面に固定されており且つその上側端部が突起に固定されている状態において、突起の外側端部分に据え付けられている。
【0012】
さらに、SMAワイヤの第1の端部及び第2の端部それぞれが、突起に接続されており、電力がバネに供給された場合に電流がSMAワイヤに沿って流れるように当該バネに電気的に接続されているので、SMAワイヤが短くなる。SMAワイヤは、一方の突起に固定されている第1の端部から一方の端部の上方に位置する支持バーに至るまで延在しているが、フックバーに至るまで下方に延在するように当該支持バーにおいて下方に屈曲されており、SMAワイヤは、他方の反対側の支持バーに至るまで上方に延在するように復帰バーを中心として上方に屈曲されている。SMAワイヤは、SMAワイヤの第2の端部が当該突起に固定されるように他方の突起に至るまで下方に延在している。
【0013】
従って、電流がSMAワイヤに印可されることによってSMAワイヤの長さが減少した場合には、突起がスリットに沿って上方に移動するので、レンズ担体が上方に移動する。このような状態において、SMAワイヤに印可される電流が遮断された場合に、バネの復元力によって突起が下方に移動され、これによりレンズ担体が下方に移動される。
【0014】
このような配置では、SMAワイヤは、光軸に対して垂直な成分を有する軸外力を発生させない。軸外力は、ベースと一体化されている支持バー及びフックバーに作用するからである。しかしながら、これらバーの周りに3回屈曲されたSMAワイヤの蛇行経路は、応力及び摩擦力がこれら屈曲位置に集中するので、カメラモジュールの信頼性及び有効性に悪影響を及ぼす。
【0015】
レンズ担体が光軸に沿って変位可能な距離を増大させることを目的とした他の代替的な配置は、特許文献6に開示されている。当該特許文献は、光軸に関して対向する支持部材に配置された共通する電極同士の間に固定されている2つの対称的なSMAワイヤを利用する解決手段を開示している。非活性状態では、SMAワイヤは、光軸を含む平面内において弓状の又は屈曲した構成を有しており、活性化された場合においてのみ、平坦な構成(光軸に対して垂直な構成)に到達する。SMAワイヤが不活性化された場合におけるレンズ担体の復帰運動は、レンズ担体を支持部材に接続している弾性変形可能部材によって実現される。
【0016】
また、当該解決手段では、SMAワイヤが、支持部材をレンズ担体に接続させており、応力集中を示す中央部分において90°屈曲された状態において、光軸に対して垂直な平面における経路に追従する。
【0017】
特許文献7は、幾分類似するAF機構を開示している。基部プレートとレンズ担体及び駆動アームを具備する頂部プレートとを含んおり、レンズ担体が、基部プレートと頂部プレートとの間で移動可能とされ、且つ、頂部バネによって基部プレートに向かって付勢され、駆動アームが、レンズ担体を保持するパンタグラフ式構造体を有している。単一のSMAワイヤが、四角状のリングのように形成されており、四角状のリングの第1の2つの対向する角部に配置された駆動アームの2つの変位入力部の上に、且つ、SMAワイヤの両端が固定された第4の角部に対抗する第3の角部において頂部プレートと基部プレートとの間に取り付けられた引張ガイドの周りに延在している。
【0018】
SMAワイヤの長さが短縮されるように電流がSMAワイヤに印可された場合に、このような短縮をさせる力が、2つの変位入力部に作用し、駆動アームを圧縮するための圧縮力に変換される。引張ガイドと他方の2つの対向する角部に位置する電極とが移動することができないので、駆動アームは、頂部バネの付勢力に抗して、光軸の方向においてレンズを上方に押す。言うまでもなく、SMAワイヤが不活性化された場合に、レンズ担体が、頂部バネによって基部プレートに向かって下方に押し戻される。
【0019】
従って、このような解決手段であっても、SMAワイヤは、(駆動アームを介して)支持部材(支持プレート)をレンズ担体に接続しており、応力集中を示す中央部分(引張ガイド)で90°に屈曲された状態で、光軸に対して垂直な平面内の経路に追従する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公報第2007/113478号パンプレット
【文献】国際公報第2011/122438号パンプレット
【文献】米国特許第8159762号明細書
【文献】欧州特許第1999507号明細書
【文献】国際公開第2008/117958号パンフレット
【文献】日本国特許第5304896号明細書
【文献】欧州特許第2003489号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、レンズ担体の移動を最大にする小型構造を提供しつつ、SMAベースの自動合焦におけるコスト、複雑さ、信頼性、応力集中、及び摩擦力の観点で、従来技術に依然として存在する欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
当該目的は、請求項1に記載の特徴を有するカメラモジュールのための自動合焦アクチュエータによって達成される。
【0023】
本明細書では、“実質的に(substantially)”との用語は、例えば幅、長さ、厚さ、直径等のような構成パラメータを含む標準的な製造誤差、一般に5%未満の誤差のような最小の変化が存在することを示すものである。
【0024】
このようなアクチュエータの構造の第1の重要な利点は、構造体に負荷をかけると共に移動の際に高い摩擦力を発生させる不安定な軸外力を実質的に発生させることなく、活性化されたSMAワイヤの長さの変化を完全に有効活用し且つ増大させることができることである。これにより、従来技術における回転部材を省くことができる。
【0025】
第2の重要な利点は、SMAワイヤが、SMAワイヤが活性化されている際にSMAワイヤに応力集中を発生させる変形しない部材の周りで屈曲しないことである。これにより、アクチュエータの信頼性及び耐用寿命を高めることができる。
【0026】
第3の利点は、このようなアクチュエータの構造が一層単純化されることである。これにより、より少ない部品点数で頑丈な部品を用いることができるので、製造コストが安くなり、信頼性を高めることができる。
【0027】
更なる他の利点は、レンズ担体及び支持部材のための材料を慎重に選択する結果として得られる。当該材料は、レンズ担体を支持部材で滑らかに滑動させることを確実にする。これにより、低い摩擦力、低い粒子発生、低いスティックスリップ、落下試験に対する高い耐性、及び動的な傾斜に対する耐性を得ることができる。
【0028】
本発明におけるAFアクチュエータのこれら利点及び他の利点については、当業者であれば、添付図面を参照しつつ、様々な実施例の以下の詳細な説明から理解可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1a】本発明におけるAFアクチュエータの支持部材及びレンズ担体を滑動可能に結合するための実施可能な構成の斜視図である。
図1b】本発明におけるAFアクチュエータの支持部材及びレンズ担体を滑動可能に結合するための実施可能な構成の斜視図である。
図2a】非活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第1の実施例の正面図である。
図2b】活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第1の実施例の正面図である。
図3a】非活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第2の実施例の斜視図である。
図3b】活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第2の実施例の斜視図である。
図4a】非活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第3の実施例の正面図である。
図4b】活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第3の実施例の正面図である。
図5a】非活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第4の実施例の正面図である。
図5b】活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第4の実施例の正面図である。
図6a】非活性化状態の単一のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第5の実施例の斜視図である。
図6b】活性化状態の単一のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第5の実施例の斜視図である。
図7a】非活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第6の実施例の正面図である。
図7b】活性化状態のSMAワイヤを具備するAFアクチュエータの第6の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記図面では、構成要素の寸法及び寸法比は正確でない場合があり、幾つかの実施例では図面の理解を高めるために、例えば形状記憶合金製ワイヤの直径に関して変更されている場合がある。
【0031】
図1a及び図1bはそれぞれ、固定式支持部材1,1′と、AFアクチュエータの光軸に沿って往復運動するために固定式支持部材1,1′によって支持且つ案内される可動式レンズ担体2,2′と、を滑動可能に結合するための2つの実施可能な装置についての、分解された状態の斜視図及び組み立てられた状態の斜視図である。
【0032】
一般に、固定式支持部材1,1′と可動式レンズ担体2,2′とは、プラスチック材料から作られており、光軸に対して垂直な平面において略正方形状の形状とされ、固定式支持部材1,1′から光軸に対して平行に延在しており且つレンズ担体2,2′に形成された対応溝2a,2a′に係合している少なくとも4つの案内ポスト1a,1a′を介して、滑動可能に結合されている。案内ポスト/対応溝の結合は、アクチュエータの大きさを最小限度に抑えるために、好ましくはアクチュエータの角部に形成されている。例えば、アクチュエータは、二重光(double optics)で利用する場合には矩形状の形状を有しており、さらなる結合が、2つのレンズ群の間において長辺側に設けられている。
【0033】
固定式支持部材1,1′と可動式レンズ担体2,2′とは、固定式支持部材に結合された場合にレンズ担体の最大傾斜が0.08°であることを保証する寸法公差を実現するために、(抵抗、滑り因子、及び温度安定性に関して)プラスチック材料を入念に選定した上で、高精度の型を利用して射出成形されている。図1aに表わす構成と図1bに表わす構成との差異は、第一に、案内ポスト1aが固定式支持部材に一体的に成形されており、ひいてはプラスチック材料から作られていることであり、第二に、案内ポスト1a′が固定式支持部材1′に圧入された金属製プレートであって、温度安定性を有すると共に最良の滑り因子を提供する金属製プレートであることである。
【0034】
図2a及び図2b、図3a及び図3b、図5a及び図5b、並びに図7a及び図7bは、図1aに表わす固定式支持部材1とレンズ担体2とが滑動可能に結合されている、本発明におけるアクチュエータの4つの異なる実施例を表わす。しかしながら、図1bに表わす固定式支持部材1′とレンズ担体2′とが滑動可能に結合されている類似する実施例を想到することができることは明白である。
【0035】
プラスチック材料は、上述の利点を、すなわち摩擦が低いこと、粒子の発生が低く抑えられること、スティックスリップが小さいこと、及び落下試験についての抵抗が高いことを提供するように選定される。これにより、固定式支持部材と可動式レンズ担体との間に配置されている、引用された従来技術に基づくアクチュエータに設けられた転動要素を省略することに貢献することができる。出願人は、固定式支持部材をポリブチレン・テレフタレート(例えばCelanese CorporationのCelanex(登録商標)2002-2)から作ること、且つ、可動式レンズ担体をポリオキシメチレン共重合体(例えばCelanese CorporationのHostaform(登録商標)C 27021)から作ることが、材料の良好な組み合わせであることを発見した。
【0036】
本発明におけるアクチュエータについての図2a及び図2bに表わす第1の実施例は、2つの組を形成して配置されている4つの同一の弾性復帰要素3を含んでいる。組それぞれの2つの弾性復帰要素3は、光軸Aに対して平行とされる共通平面に包含されており、取付装置が、光軸Aに関して対称に配置されており、2つの直線状の形状記憶合金製ワイヤ4それぞれが、同一の組の2つの弾性復帰要素3の間に好ましくは水平に取り付けられている。これら図面の正面図は、関連する形状記憶合金製ワイヤ4を具備する弾性復帰要素3から成る一の組のみを表わすが、アクチュエータの反対側も同様に構成されている。
【0037】
弾性復帰要素3それぞれが、好ましくは金属製の可撓性ストリップを含んでおり、可撓性ストリップが、側最外部分において固定式支持部材1に固定されている第1の端部3aと、上側最内部分において可動式レンズ担体2に固定されている状態で取り付けられている第2の端部3bとを備えている。より具体的には、第1の端部3aが、固定式支持部材1に滑動可能に取り付けられており、第2の端部3bは、可動式レンズ担体2の底縁部に沿って配置された中央ソケット2bにおいて可動式レンズ担体2に係止されている。
【0038】
図2aに表わす静止状態では、アクチュエータは、いわゆる無限焦点位置に位置しており、形状記憶合金製ワイヤ4が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ4が短縮され、互いに対して接近するように引っ張り合っている弾性復帰要素3を介してレンズ担体2に力を作用させるので、レンズ担体2が上方に移動され、これによりレンズが図2bに表わすいわゆるマクロ位置で合焦する(すなわち、直近の平面に合焦する)ようになる。無限焦点位置とマクロ位置とは、2つのAF端位置を表わしているので、AFアクチュエータが実現可能な調整量に対応している。
【0039】
電流の供給が停止された場合に、同一の弾性復帰要素3がSMAトラクションに対向する垂直方向復帰力を作用させているので、レンズ担体2を無限焦点位置に引き戻す。本発明におけるこのようなAFアクチュエータの構成によって、弾性復帰要素3が、軸外力の発生を防止するように、光軸に対して平行とされる方向のみに力を作用させることは重要である。
【0040】
位置センサ及び読み出し体、例えばレンズ担体2に設けられた磁石と支持部材1に設けられたホールセンサとが、AFアクチュエータの動作中に正確な平衡位置を決定するために設けられている。また、ホールセンサ読み出し体によるジュール効果を介してSMAワイヤ4を活性化するために、制御ユニット、例えば可撓性を有するプリント回路基板がSMAワイヤ4の端子を通じて電流をSMAワイヤ4に供給することができる。
【0041】
さらに、SMAワイヤ4は、図示の如く弾性復帰要素3の第1の端部3aに近接した位置において弾性復帰要素3に接続されているが、SMAワイヤ4が、支持部材1に固定可能とされる弾性復帰要素3の中央近くの比較的高い位置にも配置されている(すなわち、第1の端部3aは支持部材1に滑動可能に取り付けられていない)ことに留意すべきである。これにより、レンズ担体2が垂直方向に変位し、その結果として、SMAワイヤ4の端部同士の間に含められる弾性復帰要素3の中央部分のみが変形する。
【0042】
図3a及び図3bに表わす第2の実施例は、このような装置の変形例を表わす。当該変形例では、第1の端部3aが支持部材1に沿って滑動しないが、内方に回動可能とされる。より具体的には、当該実施例では、弾性復帰要素3は、一層傾斜した状態で取り付けられているので、弾性復帰要素3それぞれの第2の端部3bは、レンズ担体2の頂縁部に沿って配置された中央ソケット2Bにおいて、レンズ担体2に係止されている。さらに、弾性復帰要素3それぞれは、形状記憶合金製ワイヤ4が活性化されていない場合に、第1の端部3aの取付位置から、少なくとも第2の端部3bの取付位置が配置されている高さに至るまで略垂直方向に延在している直立部3cをさらに含んでいる。第2の端部3bは、上述の高さにおいて、直立部3c同士の間に取り付けられている(すなわち、図3aでは、SMAワイヤ4は第2の端部3bと水平方向において位置合わせされている)。
【0043】
第2の実施例の動作は、第1の実施例の動作と実質的に同一である。すなわち、形状記憶合金製ワイヤ4が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ4が短縮され、第1の端部3aを内方に回動させひいては接近するように移動させることによって、中央ソケット2を通じて上方に移動されるレンズ担体2に力を作用させるように内方に回動する直立部3cを互いに対して接近するように引っ張り合う(図3b参照)。SMAワイヤ4が不活性化された場合に、弾性復帰要素3が、図3aに表わす静止位置に至るまでレンズ担体2を引き戻す。
【0044】
図4a及び図4bに概略的に表わす第3の実施例では、弾性復帰要素の形状が相違する。相違点とは、弾性復帰要素5それぞれが、好ましくは垂直方向に位置合わせされた位置において支持部材1及びレンズ担体2に接続されている端部5bに対する最外側部分に頂点5aを具備する水平V字状可撓性コネクタから構成されていることである。また、形状記憶合金製ワイヤ4は、好ましくは組それぞれの2つの水平V字状可撓性コネクタ5の頂点5a同士の間に取り付けられているが、異なる高さで水平に取り付けるか、傾斜した状態で取り付けることもできる。
【0045】
第3の実施例の動作は、第1の実施例及び第2の実施例の動作と実質的に同一である。すなわち、形状記憶合金製ワイヤ4が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ4が短縮され、頂点5aを互いに接近するように引っ張り、これにより水平V字状可撓性コネクタのVの形状が広げられ、レンズ担体2が端部5bを通じて上方に移動される(図4b参照)。SMAワイヤ4が不活性化されると、弾性復帰要素5が、レンズ担体2を図4aに表わす静止位置に至るまで引き戻す。
【0046】
組それぞれの2つの弾性復帰要素5の正確な形状及び位置が、2つの弾性復帰要素5が近接し、及び/又は、Vの形状の辺が長くなる点において、アクチュエータの特定の要件に従って明確に変化する。
【0047】
この点において、このような装置の変形例は、図5a及び図5bの第4の実施例に表わされている。端部5bが組それぞれの2つの弾性復帰要素5が単一の菱形状弾性要素6として一体化されるように接触する。より具体的には、当該実施例は、2つの同一の菱形状弾性復帰要素6及び2つの直線状の形状記憶合金製ワイヤ4のみを含んでいる。菱形状弾性復帰要素6は、支持部材1に固定された底部頂点6aを有しており、底部頂点6aは、レンズ担体2の頂縁部に近接した状態でレンズ担体2に固定された頂部頂点6bに垂直方向に位置合わせされている。形状記憶合金製ワイヤ4それぞれが、好ましくは2つの水平方向において位置合わせされた中間頂点6c同士の間で、一方の菱形状弾性復帰要素6の内部に取り付けられている(しかしながら、形状記憶合金製ワイヤ4は、異なる高さにおいて水平に取り付けられているか、又は傾斜した状態で取り付けられている場合もある)。
【0048】
第4の実施例の動作は、第3の実施例の動作と実質的に同一である。すなわち、形状記憶合金製ワイヤ4が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ4が短縮され、中間頂点6cを互いに対して接近するように引っ張り、これにより菱形状弾性復帰要素6の菱形状が幅狭且つ背高となり、レンズ担体2が頂部頂点6bを通じて上方に移動される(図5b参照)。SMAワイヤ4が不活性化されると、菱形状弾性復帰要素6は、レンズ担体2を図5aに表わす静止位置に至るまで引き戻す。
【0049】
第3の実施例で弾性復帰要素として利用される同一の4つの水平V字状可撓性コネクタ5は、図6a及び図6bに表わす第5の実施例でも利用されるが、異なる配置を有している。実際には、第3の実施例では、このような水平V字状可撓性コネクタ5が、組それぞれの2つの弾性復帰要素が光軸に対して平行とされる共通平面に包含された状態で、二組で配置されている一方、第5の実施例では、水平V字状可撓性コネクタ5は、組それぞれの2つの弾性復帰要素が共通平面に包含された状態で、二組で配置されているが、共通平面が光軸を含んでいる(すなわち、2つの共通平面が光軸で交差している)。
【0050】
レンズ担体(図示しない)が組それぞれの2つの弾性復帰要素5の間に配置されているので、この場合には、SMAワイヤを組それぞれの2つの弾性復帰要素5の頂点5aの間に配置させることができない。これにより、単一の形状記憶合金製ワイヤ7が、4つすべての弾性復帰要素5の頂点5aをアクチュエータの周囲に沿って逐次的に接続するように、水平に取り付けられている(しかしながら、形状記憶合金製ワイヤ7が、異なる高さで水平に取り付けられている場合もある)。
【0051】
言うまでもなく、第5の実施例の動作は、第3の実施例の動作と実質的に同一である。すなわち、形状記憶合金製ワイヤ7が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ7が短縮され、4つすべての頂点5aを光軸に向かって引っ張るので、頂点5aは互いに対して接近し、これにより弾性復帰要素5それぞれのV字形状が広げられ、レンズ担体2は端部5bを通じて上方に移動される(図6b参照)。SMAワイヤ7が不活性化されると、弾性復帰要素5はレンズ担体2を図6aに表わす静止位置に至るまで引き戻す。
【0052】
第5の実施例がEP2003489に開示される解決手段とは異なる方法で動作することに留意すべきである。SMAワイヤは、復帰力を発生させるようには貢献しない駆動アームのパンタグラフ構造体に作用するが、このような解決手段は、重ね合されたバネだけでは実現することはできない。SMAワイヤは、ワイヤの長さの減少が2つの対向する降伏した変位入力部に伝達するように、降伏していない張力ガイドの周りに屈曲される。
【0053】
最後になる図7a及び図7bに表わす第6の実施例は、第6の実施例が2つの同一のレバー-ロッド式弾性復帰要素8及び2つの直線状の形状記憶合金製ワイヤ4のみを含んでいる点において、第4の実施例に類似している。レバー-ロッド式弾性復帰要素8それぞれは、支持部材1に回動可能に支持されるレバー8aと、レンズ担体2の中央部分においてレバー8aとレンズ担体2との間で回動されるロッド8bとを含んでいる。これら要素の間の回動式接続部9a,9b,9cは、プラスチック材料から作られたフィルムヒンジであって、SMAワイヤ4が不活性化されると復帰力を発揮するように捩じりバネとして機能するフィルムヒンジを通じて実現されている。
【0054】
図示の実施例では、図7aに表わす静止位置を参照すると、レバー8aは、アクチュエータの中央の左側に延在している直立部1bの頂部に配置された第1のピボット9aを介して、支持部材1の基部からレンズ担体2の頂縁部に至るまで、略水平に回動可能に支持部材1に支持されている。さらに、ロッド8bは、第2のピボット9bを介したレバー8aの右端と第3のピボット9cを介したレンズ担体2の水平中央部分との間で略垂直方向に回動される。一方、SMAワイヤ4は、SMAワイヤ4の伸長を最大にするように、案内ポスト1aの基部に近接した支持部材1の右側の角部とレバー8aの左端との間に固定されている。
【0055】
上記に鑑みて、第6の実施例の動作について容易に理解することができる。形状記憶合金製ワイヤ4が通電によって加熱された場合に、形状記憶合金製ワイヤ4は短縮され、第1のピボット9aの下方を通過する作用線においてレバー8aの左端を引っ張る。これにより、レバー8aが反時計回りに回転するので、レンズ担体2がロッド8bを通じて上方に移動され、第3のピボット9cを中心とする反時計周りの回転が僅かに発生する(図7b参照)。SMAワイヤ4が不活性化されると、弾性復帰要素8は、3つのピボット9a,9b,9cにおける捩じりバネの作用を通じて、レンズ担体2を図7aに表わす静止位置に至るまで引き戻すので、レバー8a及びロッド8bが逆回転される。捩じりバネの力に従って、且つ、レンズ担体2を静止位置に復帰させる際に克服すべき摩擦量に従って、2つ又は1つの捩じりバネのみが必要とされる。
【0056】
レバー8aが第2のピボット9bを介して直接、レンズ担体2に回動可能に支持されるので、ロッド8b及び第3のピボット9cを省略可能であることに留意すべきである。しかしながら、レバー8aが第1のピボット9aを中心として回転する結果として、第2のピボット9bが僅かに水平方向に変位することに起因して、軸外力及び捩じり効果がレンズ担体2に発生するので、ロッド8bを設けることが、弾性復帰要素8の完全な軸力を得るために必要とされる。
【0057】
上記に鑑みて、言うまでもなく、本発明のすべての実施例では、第5の実施例を除いて、1つ以上のSMAワイヤ4が、最大の信頼性及び有効性を備えた非常に単純な直線状の構成を有している。第5の実施例であっても、環状のSMAワイヤ7は、SMAワイヤが活性化された場合であっても応力集中を発生させない降伏している弾性復帰要素5の周りに屈曲されている。
【0058】
本発明におけるAFアクチュエータは、特定のタイプの形状記憶合金製ワイヤに限定される訳ではなく、ジュール効果によって活性化される任意の形状記憶合金製ワイヤであれば有効活用することができる。Nitinol(登録商標)として当該技術分野で広く知られているNi-Ti合金で作られた形状記憶合金製ワイヤを利用することが望ましい。当該形状記憶合金製ワイヤは、10μm~200μm(好ましくは30μm~75μm)の範囲の直径を有しており、例えばSAES Getters S.p.A.によってSmartflex(登録商標)として市販されている。
【0059】
第3~第5の実施例で利用されるV字状可撓性コネクタ5及び菱形状弾性復帰要素6の材料に関しては、当該材料は、SMAワイヤによって引っ張られた場合に大きく変形しないような十分な耐性を有していれば、任意の材料で良い。好ましい材料としては、繊維ガラス強化プラスチック(FRP)、すなわち強化繊維が特にガラス繊維である場合の繊維強化プラスチックのタイプ、最も好ましくは14GPa~15GPaの縦弾性係数を有するタイプが挙げられる。
【0060】
また、好ましくは、本発明におけるAFアクチュエータは、好ましくは形状記憶合金製ワイヤ4の一端において形状記憶合金製ワイヤ4それぞれに、通常アクチュエータ動作において高剛性な接続部材として機能するような堅さを有しているバネ(図示しない)を設けることによって、機械的故障に対する信頼性及び耐性を確保するための安全機能を含んでいる。しかしながら、バネは、形状記憶合金製ワイヤ4が移動することができないレンズ担体2に載置された状態で強制的に動作される場合に、形状記憶合金製ワイヤ4の収縮を吸収するのに十分な長さを有しているフェイルセーフ部材として機能する。例えば、形状記憶合金製ワイヤ4が450MPa未満の応力に耐えることができる場合には、バネは、応力レベルが450MPaに到達すると動作開始するように選定されるので、このような応力レベルに到達する前には、バネは著しく長い訳ではない。
【0061】
類似する安全機能が、SMA部分に固定することによって接続されている弾性部分を組み込むことによって、第5の実施例の単一の“環状の”SMAワイヤ7に適用可能であることに留意すべきである。
【0062】
本発明におけるアクチュエータの上述した図示の実施例が様々な変形例に適用可能な例であることは明白である。特に、支持部材1,1′とレンズ担体2,2′との滑動可能な結合部の正確な形状及び位置は若干変更可能であり、構造の対称性が維持される限り、弾性復帰要素3,5,6,8の形状及び位置も若干変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 固定式支持部材
1a 案内ポスト
1b 直立部
1′ 固定式支持部材
1a′ 案内ポスト
2 可動式レンズ担体
2a 対応溝
2b 中央ソケット
2′ 可動式レンズ担体
2a′ 対応溝
3 弾性復帰要素
3a 第1の端部
3b 第2の端部
3c 直立部
4 形状記憶合金製ワイヤ
5 弾性復帰要素
5a 頂点
5b 端部
6 菱形状弾性復帰要素
6a 底部頂点
6b 頂部頂点
6c 中間頂点
7 形状記憶合金製ワイヤ
8 レバーロッド弾性復帰要素
8a レバー
8b ロッド
9a 回動式接続部(第1のピボット)
9b 回動式接続部(第2のピボット)
9c 回動式接続部(第3のピボット)
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b