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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電力需給バランスを調整させる方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220112BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20220112BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/00 P
H02J7/35 K
H02J13/00 301A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020060479
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021157753
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】515320123
【氏名又は名称】コスモ石油マーケティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野辺 将司
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095983(JP,A)
【文献】特開2010-081722(JP,A)
【文献】特開2016-085531(JP,A)
【文献】特開2014-220892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/00
H02J 7/35
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能な充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電電力予測データとに基づき、メインサーバに電力需給バランスを調整させる方法であって、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、前記発電能力が前記総消費量を上回り始める発電過剰開始時刻の所定時間前に、前記充電可能車両の利用料金を変更前よりも利用料金を低くまたは基準料金よりも低く設定させることにより、前記発電過剰期間における前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整させる方法。
【請求項2】
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能な充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電電力予測データとに基づき、メインサーバに電力需給バランスを調整させる方法であって、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、前記発電過剰期間内に開始されるイベントの告知を、前記ユーザのユーザ端末へ通知させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メインサーバは、イベントを特定可能なイベント識別情報、開催場所、開始時刻を少なくとも含むイベント情報が記録されたイベントデータベースにアクセス可能であり、
前記メインサーバは、現在位置を出力可能なユーザ端末とネットワークを介して接続され、前記ユーザの現在位置を把握可能であり、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、
前記イベントデータベースから、前記発電過剰期間内に開始される前記イベント情報を抽出し、
前記ユーザ端末から取得した前記ユーザの現在位置から、抽出した前記イベント情報の開催場所から所定距離以内にいるユーザを特定し、
特定したユーザの前記ユーザ端末へ抽出した前記イベント情報に関する情報を通知する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記メインサーバは、前記充電可能車両を利用するユーザを、長時間をかけて往復移動を行う第一種ユーザと、宅配業者など短時間に往復移動を行う第二種ユーザと、に区別して登録されたユーザデータベースにアクセス可能であり、
前記メインサーバは、前記充電可能車両の位置情報を取得可能であり、
前記メインサーバは、駅などの公共交通機関の周辺に駐車している前記充電可能車両が所定台数を超えたまたは前記充電可能車両の総数に対して所定割合を超えたときに、または、所定割合を超えることが予測される時に、前記第一種ユーザに対する利用料金をそれまでよりも高くし、第二種ユーザに対する利用料金をそれまでより低くする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記利用料金を変動させたときに、前記利用料金の変動があったこと、または、変更後にユーザに適用される利用料金を、前記ユーザの端末に通知する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電予測データとに基づき、電力需給バランスを調整させる方法であって、
所定期間後に前記太陽光発電の発電能力が前記充電可能車両への充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回ることが予測されるときに、充電可能な状態の前記充電可能車両の台数を高めるように前記充電可能車両の利用料金を、基準料金または前記発電能力が前記総消費量を上回らないと予測される期間に設定される前記充電可能車両の利用料金よりも低く設定することにより、所定期間後の前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整する方法。
【請求項7】
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電予測データとに基づき、電力需給バランスを調整させる方法であって、
所定期間後に前記太陽光発電の発電能力が前記充電可能車両への充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、充電可能な状態の前記充電可能車両の台数を高めるように前記発電過剰期間内に開始されるイベントの告知を、前記ユーザのユーザ端末へ通知することにより、所定期間後の前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給バランスを調整させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより充電可能な車両の充電に太陽光発電を利用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-178237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで太陽光発電は、昼間に発電能力が大きくなり、夜間は発電できないという性質があり、一日を通じて発電能力に波がある。このため、昼間に余った電力は外部へ売電することが行われている。近年、太陽光発電設備の普及が進んでおり、これを有効利用することが検討されている。太陽光発電を主たる電力の供給源として多数の住戸に亘る電力網を検討する場合、上述したように発電能力に波があるため、昼間に生じた余剰電力が無駄になってしまう。しかしながらこうした余剰電力を全て蓄電に用いることができるほどの容量をもつ蓄電池を用意することは経済的ではない。
【0005】
そこで本発明者は、太陽光発電設備を有する各住戸などと契約して電力網を構築する運営会社が充電可能な車両(電動車両)を大量に保有し、この大量の電動車両のバッテリを蓄電池として利用しつつこの電動車両をユーザへ貸し出す仕組みを考えた。この場合でも、昼間の余剰電力を全て吸収できるほどの電動車両の台数を用意することは経済的ではない。そこでさらに発明者は、ユーザに電動車両を利用する働きかけを行うことにより、電動車両への充電電力を稼ぐことで、余剰電力を抑制できる仕組みを考えた。
【0006】
そこで本発明は、太陽光発電による電力を住戸などの一般消費と充電可能車両への充電に供給する電力網において、充電可能車両を利用しようとするユーザに働きかけることで太陽光発電の余剰電力を抑制できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能な充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電電力予測データとに基づき、メインサーバに電力需給バランスを調整させる方法であって、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、前記発電能力が前記総消費量を上回り始める発電過剰開始時刻の所定時間前に、前記充電可能車両の利用料金を変更前よりも利用料金を低くまたは基準料金よりも低く設定させることにより、前記発電過剰期間における前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整させる方法が提供される。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能な充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電電力予測データとに基づき、メインサーバに電力需給バランスを調整させる方法であって、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、前記発電過剰期間内に開始されるイベントの告知を、前記ユーザのユーザ端末へ通知させるように構成してもよい。
【0009】
上記方法において、
前記メインサーバは、イベントを特定可能なイベント識別情報、開催場所、開始時刻を少なくとも含むイベント情報が記録されたイベントデータベースにアクセス可能であり、
前記メインサーバは、現在位置を出力可能なユーザ端末とネットワークを介して接続され、前記ユーザの現在位置を把握可能であり、
前記メインサーバに、前記発電能力が前記総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、
前記イベントデータベースから、前記発電過剰期間内に開始される前記イベント情報を抽出し、
前記ユーザ端末から取得した前記ユーザの現在位置から、抽出した前記イベント情報の開催場所から所定距離以内にいるユーザを特定し、
特定したユーザの前記ユーザ端末へ抽出した前記イベント情報に関する情報を通知するように構成してもよい。
【0010】
上記方法において、
前記メインサーバは、前記充電可能車両を利用するユーザを、通勤や通学など長時間をかけて往復移動を行う第一種ユーザと、宅配業者など短時間に往復移動を行う第二種ユーザと、に区別して登録されたユーザデータベースにアクセス可能であり、
前記メインサーバは、前記充電可能車両の位置情報を取得可能であり、
前記メインサーバは、駅などの公共交通機関の周辺に駐車している前記充電可能車両が所定台数を超えたまたは前記充電可能車両の総数に対して所定割合を超えたときに、または、所定割合を超えることが予測される時に、前記第一種ユーザに対する利用料金をそれまでよりも高くし、第二種ユーザに対する利用料金をそれまでより低くするように構成してもよい。
【0011】
上記方法において、
前記利用料金を変動させたときに、前記利用料金の変動があったこと、または、変更後にユーザに適用される利用料金を、前記ユーザの端末に通知するように構成してもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電予測データとに基づき、電力需給バランスを調整させる方法であって、
所定期間後に前記太陽光発電の発電能力が前記充電可能車両への充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回ることが予測されるときに、充電可能な状態の前記充電可能車両の台数を高めるように前記充電可能車両の利用料金を、基準料金または前記発電能力が前記総消費量を上回らないと予測される期間に設定される前記充電可能車両の利用料金よりも低く設定することにより、所定期間後の前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整する方法が提供される。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
太陽光発電により発電される電力と、住戸へ供給する一般消費電力と、ユーザに貸し出す充電可能車両の充電に供する電力とを取り扱う、電力網で用いられる、
前記太陽光発電の発電能力を予測した発電能力予測データと、前記一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、前記充電可能車両への充電電力を予測した充電予測データとに基づき、電力需給バランスを調整させる方法であって、
所定期間後に前記太陽光発電の発電能力が前記充電可能車両への充電電力と前記一般消費電力とを合計した総消費量を上回ることが予測されるときに、充電可能な状態の前記充電可能車両の台数を高めるように前記発電過剰期間内に開始されるイベントの告知を、前記ユーザのユーザ端末へ通知することにより、所定期間後の前記充電電力を高めて電力の需給バランスを調整する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充電可能車両を利用しようとするユーザに働きかけることで太陽光発電の余剰電力を抑制できる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明が適用される事業を説明するための概略図である。
図2】本発明の電力の需給バランスを調整させる方法を実施するシステムのブロック図である。
図3】一日の発電能力と総消費電力の変遷を示すグラフである。
図4】一日の電動車両の利用料金の変遷を示すグラフである。
図5】イベントデータベースの一例を示す。
図6】朝から昼にかけてのある地域の電動車両の所在地を示す図である。
図7】夕方から夜にかけてのある地域の電動車両の所在地を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず本発明が適用される事業の概要を説明する。図1は、本発明が適用される事業を説明するための概略図である。図1に示したように、本事業を行う事業者が運営する電力網1には、一般住戸に設置された太陽光発電施設2と、電力を消費する一般消費者の住戸3と、本事業者が管理運営する充電可能な電動車両4(充電可能車両)と、が接続されている。なおこの電力網1には、余剰電力によって蓄電するための予備的な蓄電施設5が接続されていたり、電力の不足時に電力を購入したり余剰電力を売却するための他社の電力網6が接続されていてもよい。
【0017】
本事業者は、一般住戸に設置された太陽光発電施設2から電力を購入し、購入した電力を一般消費者の住戸3に提供する。また本事業は、購入した電力を、本事業者が管理運営する充電可能な電動車両4の充電に提供する。本事業は、太陽光発電施設2で生み出される一日のうちで変動する電力と、一日のうちで変動する一般消費電力および充電に供する電力とのアンバランスで生じる余剰電力を電動車両4へ充電することにより、電力の需給バランスを調整する。
【0018】
太陽光発電施設2を有するユーザは、電力網1への電力の売却に関する定期的な契約を本事業の事業者と結んでいる。例えば月間あるいは年間にわたって、単位あたりどのくらいの金銭で電力を売却するかといった契約を結んでいる。
【0019】
この電力網1から電力を購入する消費者は、電力の購入に関する定期的な契約を本事業の事業者と結んでいる。例えば月間あるいは年間にわたって、単位あたりどのくらいの金銭で電力を購入するかといった契約を結んでいる。なお電力網は、大規模店舗や小規模店舗、商業ビルなどへ電力を供給してもよい。
【0020】
電動車両4を利用しようとするユーザは、あらかじめ本事業の事業者と契約を結んでいる。例えば月額の基本料金に加えて、実際に電動車両4を利用するときは、1時間あたり事業者が指定する利用料金で利用する、といった契約が結ばれている。なお本発明は、利用料金が変動することを前提としているが、その他の契約条件に制約されるものではない。例えば、基本料金の有無は問わないし、利用料金が時間に応じて課金されるのではなく、使用電力に応じて利用料金が課金される態様であってもよい。
【0021】
なお電動車両4は、充電設備を有する駐車場に駐車したときにすぐに充電が開始されるように構成してもよいし、後述するメインサーバ13が充電開始のタイミングを制御できるように構成されていてもよい。また、電動車両4が住戸の駐車場に駐車している場合、電動車両4に搭載されているバッテリから住戸へ電力が供給されるように構成されていてもよい。
【0022】
なお本発明が想定している電動車両4とは、一人または二人乗りの小型の電動車両4である。本発明が想定している電動車両4とは、一回の走行距離が10km以下を見込んでおり、いわゆるラストワンマイルなどと呼ばれる用途で好適に用いられる電動車両4である。このため、電動車両4が一回のフル充電で走行できる距離は30km程度を想定している。
【0023】
本事業は、駅から所定距離以内に住む住民で一つの電力網1を構成し、このような電力網1を駅ごとに運用することを想定している。もっとも、ある電力網1から別の電力網1に電力を融通できるように構成してもよい。電動車両4は基本的には一つの電力網1の中で運用し続けるが、電動車両4が複数の電力網1間を移動することを妨げるものではない。
【0024】
なお、電力網1へ電力を売却するユーザは電力網1から電力を購入する契約や電動車両4を利用する契約を結ばなくてもよい。電力網1から電力を購入するユーザは電動車両4を利用する契約を結ばなくてもよい。
【0025】
この電力網1に供給される電力およびこの電力網1から供給する電力を監視するためのサーバが設けられていてもよい。このサーバは、太陽光発電施設2に設置された検出装置から、電力網1に供給される電力に関する情報を受け取り可能に構成されていてもよい。また、サーバは、電力網1から電力を購入するユーザの住戸に設置された検出装置から、電力網1から受け取った電力に関する情報を受け取り可能に構成されていてもよい。さらに、サーバは、電動車両4の各々から充電の可否および充電可能な容量に関する情報を受け取り可能に構成されていてもよい。
【0026】
図2は、電力の需給バランスを調整するために電動車両4の利用料金を調整するシステム10のブロック図である。図2に示したように、本システム10は、ユーザ端末11にネットワーク12を介して接続されたメインサーバ13と、メインサーバ13に接続された各種データベースで構成されている。メインサーバ13は、太陽光発電施設2の発電能力[W]を予測した発電能力予測データと、一般消費電力を予測した一般消費電力予測データと、電動車両4への充電電力を予測した充電予測データとに基づき、電力需給バランスを予測する。メインサーバ13は、予測した電力需給バランスに基づき、太陽光発電施設2の発電能力、一般消費電力、電動車両4への充電電力との間の電力の需給バランスを調整する。
【0027】
なお各々の電力網1に、電力の需給バランスを調整するメインサーバ13が一つずつ設けられていてもよいが、複数の電力網1をまとめて一つのメインサーバ13が設けられていることが好ましい。
【0028】
太陽光発電施設2の発電能力[W]は、既知の手法により予測することができる。一年間の日射量との相関関係が知られており、この相関関係を用いると太陽光による発電能力が予測できる。また、メインサーバ13は、太陽光発電施設2が設けられた地域と、その地域の天気予報を取得することにより、その地域の発電能力を予測することができる。
なお、メインサーバ13が契約したユーザから太陽光発電施設2の発電能力に関する情報を取得可能に構成されている場合には、過去の発電能力の変遷も加味して発電能力を予測することもできる。
【0029】
例えば、一般消費電力は、既知の手法により予測することができる。一週間の変動、平日と祝日あるいは四季を通じた人間の電力の消費行動と一般消費電力との相関関係が知られており、これらの相関関係を用いると、一般消費電力が予測できる。あるいは、本事業が電力網1を提供している地域における年間あるいは月間のイベントのスケジュールに基づき、一般消費電力を予測することができる。
なお、メインサーバ13が契約したユーザから消費電力に関する情報を取得可能に構成されている場合には、過去の消費電力の変遷も加味して一般消費電力を予測することもできる。
【0030】
電動車両4への充電電力は、本事業者が収集した過去の電動車両4の充電電力の変遷から予測することができる。あるいは、本事業者が収集した充電可能状態の電動車両4の台数から予測することができる。一台の電動車両4は一定の充電電力で充電されるが、充電可能状態の電動車両4の台数が増えると、充電電力が増大する。メインサーバ13は、この電動車両4への充電電力を制御することによって、電力の需給バランスを調整する。
【0031】
図3は、ある夏の平日においてメインサーバ13が予測した一日における太陽光発電による発電能力の変遷と、その日の一日における総消費電力の変遷を示したグラフである。なおここでは、電動車両4の充電のために供給した充電電力と、住戸3へ供給した一般消費電力とを合計した電力を総消費電力と呼んでいる。また図3では、本発明とは異なり、電動車両4の利用料金を変化させないという前提の下で充電に供される充電電力と一般消費電力を合計した総消費電力を示している。また図3における充電電力は、第二実施形態で説明するイベントの告知を行わないという前提のもとで充電に供される充電電力の予測を示している。
【0032】
図3に示した例では、太陽光発電施設2の発電能力は昼間に大きくなるが、0時から6時および18時から24時までは0[kW]である。太陽光発電施設2は夜間は発電できないからである。
一方で、総消費電力は、7時頃から9時頃にかけて最初のピークを見せた後に12時過ぎに向かって落ち込み、15時頃から徐々に増加して21時頃にピークを見せると予測される。例えば多くの人は朝起きてから出勤や通学のために家を出るまでの間に多くの電力が住戸3で消費されるが、昼間は在宅している人が少ないので住戸での消費電力は少ない。また、夕刻から夜にかけて多くの人が帰宅して、住戸3で電力を消費する。このため、総消費電力は図3に示したような変遷を見せると予測されている。
【0033】
ところで図示した例においては、7時頃から16時頃にかけて太陽光発電施設2による発電能力が一般消費電力を上回っており、この期間を発電過剰期間と呼ぶ。この7時から16時にかけての発電過剰期間は、太陽光発電施設2の発電能力に余剰が生じると予測されている。そこでメインサーバ13は、この発電過剰期間に電動車両4に充電できるように、電動車両4の利用料金を設定する。
【0034】
図4は、電動車両4の利用料金の変遷を示すグラフである。図4に示したように、本実施形態においてメインサーバ13は、太陽光発電施設2の発電能力が一般消費電力を上回り始める7時(発電過剰開始時刻)よりも一時間(所定時間)前の6時から、それまでの利用料金よりも電動車両4の利用料金を下げている。これは、7時になってから利用料金を下げたのでは遅すぎるからである。電動車両4には満充電以上に充電することができず、電動車両4が走行して電力を消費しない限り電動車両4に充電をすることができない。このため、7時には電動車両4の充電を開始したいので、7時より前にユーザに積極的に電動車両4を利用してもらい、充電可能状態の電動車両4の台数を増やすことにより充電電力を大きく確保している。
【0035】
このように本実施形態においては、メインサーバ13に、発電能力が充電電力と一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、発電能力が総消費量を上回り始める発電過剰開始時刻の所定時間前に、電動車両4の利用料金を変更前よりも利用料金を低くまたは基準料金よりも低く設定させる。これにより、発電過剰期間より前に充電可能となった電動車両4の台数を増やすことができ、充電電力を高めて電力の需給バランスが調整される。つまり図3において発電能力が総消費電力を上回っている発電過剰期間における総消費電力を引き上げ、総消費電力を発電能力と同等に引き上げることができる。
【0036】
本発明とは異なり、一般的な発想においては、昼間の過剰な発電能力を全て利用しようとする場合は、この過剰な発電能力を全て充電に用いることができるように電動車両4を多数運用したり、あるいは、大規模な固定蓄電設備を設けることになる。しかし、本発明によれば、過剰な台数の電動車両4を用意したり、大規模な固定蓄電設備を設ける必要がない。このため、比較的安価にユーザに上述したサービスを提供することができる。
【0037】
なお本発明は、電動車両4の利用料金の料金体系に特に制約されない。例えばユーザはどの時間帯も基準価格で電動車両4を利用できるが、発電過剰開始時刻の所定時間前にはこの基準価格から値引きされた値引き価格で利用可能であってもよい。あるいは、夜間など太陽光発電ができないときに生じうる消費電力過剰期間と、上述した発電過剰期間と、発電電力と総消費電力とがバランスした通常期間を設定し、各々の期間の開始時刻の所定時間前から設定される3つの異なる利用料金が設定されていてもよい。あるいは発電能力が過剰となる度合いに応じて利用料金が変動するような料金体系であってもよい。ただし本発明は時間単位ではない料金体系は適用しない。
また、メインサーバ13は、発電過剰開始時刻の所定時間前に、電動車両4の利用料金にキャッシュバックを発生させることにより、結果的に電動車両4の利用料金が低くなるように構成されていてもよい。
【0038】
メインサーバ13が電動車両4の利用料金を変動させた場合には、メインサーバ13は電動車両4の利用契約を結んでいるユーザ端末11に利用料金の変更を通知してもよい。あるいは、利用料金は常時特定のURL(Uniform Resource Locator)に表示されるように構成されており、メインサーバ13が電動車両4の利用料金を変動させたときに、該URLの利用料金を更新させるように構成されていてもよい。
【0039】
なお図3に示した例では、利用料金を変動させないという前提で総消費電力を予測したが、本発明はこれに限られない。例えば過去の充電実績と設定した利用料金の変遷を元に、総消費電力を予測して利用料金を低減する開始時刻を決定してもよい。
【0040】
また上述した実施形態では、過剰開始時刻の1時間前に電動車両4の利用料金を低く設定することと説明したが、本発明はこれに限られない。例えば過剰開始時刻の30分前、あるいは2時間前などに低く設定してもよい。あるいは、発電能力が多くなる夏季は過剰開始時刻の2時間前、そうではない春、秋、冬では過剰開始時刻の1時間前など、一年を通じて過剰開始時刻より前の所定期間が変動するように設定してもよい。あるいは、この所定期間は、過剰となる発電能力が所定値よりも大きくなると予測されるときに長く設定されてもよい。
【0041】
また本例では7時に過剰開始時刻となる例を説明したが、過剰開始時刻は一人を通じて変動する。また、当日の天気や、平日・祝日に応じて変動する。あるいは、当日予定されているイベントの有無や規模に応じて過剰開始時刻が変動することがある。
【0042】
<第二実施形態>
なお上述した第一実施形態においては、充電可能な電動車両4の台数を増やすために、電動車両4の利用料金を低く設定する例を説明したが、本発明はこれに限られない。次に説明する第二実施形態では、充電可能な電動車両4の台数を増やすために、各種イベントの告知を電動車両4のユーザに通知する。人々にイベントへ参加させることにより、人々の移動手段として電動車両4を使ってもらい、充電可能状態の電動車両4の台数を増やすことができる。
【0043】
例えばメインサーバ13は、発電能力が充電電力と一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、発電過剰期間内に開始されるイベントの告知を、電動車両4のユーザのユーザ端末11へ通知させてもよい。
【0044】
より詳しくは、メインサーバ13は、イベントを識別可能なイベント識別情報、開催場所、開始時刻を少なくとも含むイベント情報が記録されたイベントデータベースに接続されている。また、電動車両4の利用契約を結んだユーザからは、ユーザ端末11を通じてユーザの現在位置を取得してもよいことを承諾してもらう。そこでメインサーバ13は、ユーザ端末11を通じてユーザの現在位置を定期的に把握可能に構成されている。
【0045】
メインサーバ13は、発電能力が充電電力と一般消費電力とを合計した総消費量を上回る発電過剰期間が生じることが予測されるときに、イベントデータベースから、発電過剰開始時刻より所定時間前に開始されるイベント情報を抽出する。さらにメインサーバ13は、ユーザ端末11から取得したユーザの現在位置から、抽出したイベント情報の開催場所から所定距離以内にいるユーザを特定する。特定したユーザのユーザ端末11へ抽出したイベント情報を通知する。
【0046】
図5はイベントデータベースの例示である。例えば上述した例では、メインサーバ13が予測した日では、7時から16時までの間が発電過剰期間である。そこでメインサーバ13は、発電過剰期間内に開始されるイベントID(イベント識別情報):1~4を告知する対象となるイベント情報として抽出する。
【0047】
さらにメインサーバ13は、イベントID:1~4のイベントが開催される場所を特定し、各々の開催場所から所定距離以内に位置するユーザを特定する。この特定したユーザのユーザ端末11に、該当するイベント情報を通知する。メインサーバ13は、イベントの開始時間から所定時間前にイベント情報を通知するように構成してもよい。あるいはメインサーバ13は、ユーザが開催場所から所定距離以内に進入したと判定したときにイベント情報を通知するように構成してもよい。
メインサーバ13は、イベント情報として、イベントデータベースに記録されているイベント名やイベントの主催者が運営するホームページが表示されるURLを通知してもよい。
【0048】
<変形例1>
本発明は、通勤や通学に電動車両4の利用を積極的に促すため、図6に示すように朝から昼にかけて駅20の周辺に電動車両4が集まり、図7に示すように夕方から夜にかけては駅20の周辺から電動車両4がいなくなることが想定される。昼間に駅20の周辺に電動車両4が使用されないまま駐車し続けている場合には、充電可能状態の電動車両4の台数を大きく確保することが難しくなる。そこで、以下のような構成により、昼間に駅20の周辺に電動車両4が集中して駐車していても、充電可能状態の電動車両4の台数を大きく確保することができる。
【0049】
メインサーバ13は、電動車両4を利用するユーザを、通勤や通学など長時間をかけて往復移動を行う第一種ユーザと、宅配業者など短時間に往復移動を行う第二種ユーザと、に区別して登録されたユーザデータベースにアクセス可能に構成されている。またメインサーバ13は、電動車両4からその位置情報を取得可能に構成されている。
例えば一日のうちである駅を利用する間隔が6時間以上であるユーザを第一種ユーザとする。例えば朝7時に自宅周辺から該駅まで電動車両4を利用し、夕方18時に該駅から自宅周辺まで電動車両4を利用しようと考えているユーザを第一種ユーザとして設定する。
一方で、ある駅を利用する間隔が2時間以下であるユーザを第二種ユーザとする。例えば朝11時にある駅から住宅地を回ってピザを宅配するために電動車両4を利用し、1時間後に該駅に電動車両4を返却することを予定しているユーザを第二種ユーザとして設定する。
【0050】
メインサーバ13は、駅20などの公共交通機関の周辺に駐車している電動車両4が所定台数を超えたまたは電動車両4の総数に対して所定割合を超えたときに、または、所定割合を超えることが予測される時に、第一種ユーザに対する利用料金をそれまでよりも高くし、第二種ユーザに対する利用料金をそれまでより低くする。
【0051】
電動車両4は、メインサーバ13に定期的にその現在地を通知するように構成されている。メインサーバ13は、電動車両4の所在地を把握可能とされている。このような電動車両4の位置情報に基づき、メインサーバ13は電動車両4の偏在を把握することができる。
例えばA駅から300m以内の範囲に50台の電動車両4が集まってしまったときは、メインサーバ13はA駅から800m以内に位置する第一種ユーザに対する利用料金をそれまでよりも高くし、A駅から800m以内に位置する第二種ユーザに対する利用料金をそれまでよりも低くする。
【0052】
第一種ユーザは朝は住宅地から駅20に向かい、夕方は駅20から住宅地に戻るという行動様式をとる。このような第一種ユーザに電動車両4を提供するためには、昼間は駅20の周辺に一定数以上の電動車両4が駐車している必要がある。しかしながら、駅20に駐車したままでは充電可能状態とすることができない。
ところで、第二種ユーザは、例えば宅配便業者やピザの宅配などの宅配業者である。このような第二種ユーザは、第一種ユーザとは異なり、ある駅20の周囲の拠点から出発して再びその拠点に戻ってくるという行動様式をとる。このため、昼間にこの第二種ユーザに電動車両4を積極的に使用してもらえれば、充電可能状態の電動車両4の台数を大きく稼ぐことができる。
【0053】
またこのユーザデータベースには、第二種ユーザの活動拠点(宅配ピザであればその店の所在地)が登録されていることが好ましい。メインサーバ13は、活動拠点近くに電動車両4が集中して駐車しているあるいは駐車することが予測されるときに、第二種ユーザの現在地に関わらず、このユーザデータベースに基づき活動拠点が近い第二種ユーザを特定し、利用料金を低額に設定することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0055】
1 電力網
2 太陽光発電施設
3 住戸
4 電動車両(充電可能車両)
5 予備的な蓄電設備
6 他社の電力網
10 システム
11 ユーザ端末
12 ネットワーク
13 メインサーバ
20 駅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7