(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】降温塗料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20220113BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220113BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220113BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220113BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220113BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20220113BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
C09D7/43
(21)【出願番号】P 2020090726
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】201911075260.4
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519020764
【氏名又は名称】寧波瑞凌新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningbo Radi-Cool Advanced Energy Technologies Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 88, Dongfeng Road, Fenghua District, Ningbo City, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 栄貴
(72)【発明者】
【氏名】楊 宇龍
(72)【発明者】
【氏名】陳 孝行
(72)【発明者】
【氏名】黄 錦岳
(72)【発明者】
【氏名】万 容兵
(72)【発明者】
【氏名】王 明輝
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513508(JP,A)
【文献】特開2017-031322(JP,A)
【文献】特開2012-57179(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111187570(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0340082(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106349913(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80-85重量の水性ポリウレタン樹脂分散体と、
0.3-0.5重量の第1分散剤と、
0.3-0.5重量の第2分散剤と、
0.5-1.0重量の消泡剤と、
0.5-2重量の増稠剤と、
2-6重量の
セシウム・タングステンブロンズと、
0.2-1重量の
第1シリカと、
0.1-2重量の
前記第1シリカより粒子の大きさが小さい第2シリカと、
0.2-0.5重量のカップリング剤と、
8-18重量の蒸留水とを含む、ことを特徴とする透明降温塗料。
【請求項2】
前記水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、粒子
の大きさは10nm-60nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項3】
前記第1分散剤は、アニオン高分子分散剤である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項4】
前記第2分散剤は、アニオン性ナトリウム塩分散剤である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項5】
前記カップリング剤は、2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤である、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項6】
前記増稠剤は、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤、ヒドロキシエチルセルロース増稠剤の一つである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項7】
前記透明降温塗料の塗-4カップ粘度は、30s-80sである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項8】
前記
セシウム・タングステンブロンズの粒子
の大きさは、20nm-80nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項9】
前記
第2シリカの粒子
の大きさは、15nm-35nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項10】
前記
第1シリカの粒子
の大きさは、4μm-15μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の透明降温塗料。
【請求項11】
請求項1に記載の透明降温塗料の調製方法であり、
各成分が、比重に従って計量されるステップ(1)と、
前記蒸留水、前記第1分散剤、前記第2分散剤、前記カップリング剤、及び70%重量の前記消泡剤を第1攪拌速度で添加するステップ(2)と、
前記ステップ(2)において、前記
セシウム・タングステンブロンズと前記
第2シリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成するステップ(3)と、
引き続き3-5重量蒸留水と前記増稠剤を第1攪拌速度で水性ポリウレタン樹脂に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成するステップ(4)と、
混合物Aと混合物Bを第2攪拌速度で混合させ、前記
第1シリカと残りの30%重量の前記消泡剤を添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得るステップ(5)とを含む、ことを特徴とする透明降温塗料の調製方法。
【請求項12】
ステップ(2)において、前記第1攪拌速度は、300r/min-400r/minである、ことを特徴とする請求項11に記載の透明降温塗料の調製方法。
【請求項13】
ステップ(5)において、前記第2攪拌速度は、400r/min-600r/minである、ことを特徴とする請求項11に記載の透明降温塗料の調製方法。
【請求項14】
透明降温塗層であって、
当該透明降温塗層は、請求項1-10のいずれか1項に記載の透明降温塗料
により形成され、
当該透明降温塗層の厚さは、6μm-20μmであり、
当該透明降温塗層は、8μm-13μmの放射率が90%より大きく、
近赤外波長域の阻隔率は、75%より大きく、
可視光波長域の光透過率は、75%より大きく、
ヘーズは、15%より小さい、ことを特徴とする透明降温塗層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降温塗料の分野に関し、特に低い赤外線透過及び高い遠赤外線窓放射の透明降温塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー消費の激化、激しい地球温暖化、エアコンの莫大なエネルギー消費に従って、様々な断熱ガラスと塗料が精力的に開発された。透明断熱塗料の断熱原理は、透明断熱塗料によって形成された塗層が可視光帯域の光を透過し、太陽エネルギーの割合が高い700nmから2500nmの近赤外線帯域で高い阻隔(反射と吸収を含む阻隔)性能を有し、さらに、被遮蔽物の内部の熱が低減され、透明な断熱の目的が達成される。
【0003】
伝統な透明断熱塗料は、断熱の目的を達成するために透明断熱塗料によって形成された塗層の800nm~1200nmの近赤外線帯域エネルギーの吸収にのみ依存しているが、透明断熱塗層の熱吸収は自己発熱を引き起こして2次熱伝導も引き起こし、断熱効率を低下させ、透明な断熱塗層の放射率は大気輻射窓口帯域(8μm-13μm)で低く、輻射によって自己降温できないため、塗層温度が高すぎると透明な断熱塗層の破裂を引き起こす可能性があり、塗料の耐用年数に影響を与える。
【0004】
既存の透明断熱塗料は、ナノスズ酸化物アンチモンまたは高価なインジウムスズ酸化物で形成されており、これらの透明断熱塗料によって形成された透明断熱塗層は、800nm~1200nmの近赤外帯域での吸収率と反射率はどちらも低いため、このような透明断熱塗料は、800nm~1200nmの近赤外線帯域での遮断率が低くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解决しようとする課題は、低い赤外線透過及び高い遠赤外線窓放射の透明降温塗料を提供し、先に述べた塗料冷却効果を良好にし、そのコストを下げることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
透明降温塗料は、80-85重量の水性ポリウレタン樹脂分散体と、0.3-0.5重量の第1分散剤と、0.3-0.5重量の第2分散剤と、0.5-1.0重量の消泡剤と、0.5-2重量の増稠剤と、2-6重量のナノセシウム・タングステンブロンズと、0.2-1重量のマイクロシリカと、0.1-2重量のナノシリカと、0.2-0.5重量のカップリング剤と、8-18重量の蒸留水とを含む。
【0007】
上記の技術案において、さらには、前記水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、粒子径は10nm-60nmである。
【0008】
上記の技術案において、さらには、前記第1分散剤は、アニオン高分子分散剤である。
【0009】
上記の技術案において、さらには、前記第2分散剤は、アニオン性ナトリウム塩分散剤である。
【0010】
上記の技術案において、さらには、前記カップリング剤は、2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤である。
【0011】
上記の技術案において、さらには、前記増稠剤は、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤、ヒドロキシエチルセルロース増稠剤の一つである。
【0012】
上記の技術案において、さらには、前記透明降温塗料の塗-4カップ粘度は、30s-80sである。
【0013】
上記の技術案において、さらには、前記ナノセシウム・タングステンブロンズの粒子径は、20nm-80nmである。好適な粒子径のナノセシウム・タングステンブロンズを選択して塗料に断熱効果と透明度を増加させることができる。
【0014】
上記の技術案において、さらには、前記ナノシリカの粒子径は、15nm-35nmである。
【0015】
上記の技術案において、さらには、前記マイクロシリカの粒子径は、4μm-15μmである。
【0016】
上記の技術案において、さらには、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカ、前記ナノセシウム・タングステンブロンズの形状は、いずれも球状や楕球状である。従って、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体は、ナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカ、マイクロシリカとの相溶性がよりよい。
【0017】
粒子径の15nm-35nmのナノスケールシリカと粒子径の4μm-15μmのマイクロスケールシリカとの相乗作用により、ナノスケールシリカとマイクロスケールシリカとが水性ポリウレタン樹脂分散体におけるフォノンが強化されフロイントリッヒ共振が強化され、透明降温塗料が全体の大気透過窓口(8μm-13μm)での放射率(90%以上)を向上し、透明降温塗料が可視光での光透過率とヘーズ(曇り度)に影響を与えない。
【0018】
前記透明降温塗料の調製方法は、各成分は比重に従って計量されるステップ(1)と、前記蒸留水、前記第1分散剤、前記第2分散剤、前記カップリング剤、及び70%重量の前記消泡剤を第1攪拌速度で添加するステップ(2)と、前記ステップ(2)において、前記ナノセシウム・タングステンブロンズと前記ナノシリカを添加し続け、均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成するステップ(3)と、引き続き3-5重量蒸留水と前記増稠剤を第1攪拌速度で前記水性ポリウレタン樹脂に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成するステップ(4)と、混合物Aと混合物Bを第2攪拌速度で混合させ、前記マイクロシリカと残りの30%重量の前記消泡剤を添加し均一に分散させてから、透明降温塗料を得るステップ(5)とを含む。
【0019】
上記の技術案において、さらには、ステップ(2)において、前記第1攪拌速度は、300r/min-400r/minである。上記の技術案において、さらには、ステップ(3)において、1~3重量の沈降防止剤をさらに含む。
【0020】
上記の技術案において、さらには、ステップ(5)において、前記第2攪拌速度は、400r/min-600r/minである。低速攪拌は、マイクロスケールシリカ微小球の破裂を効果的に防止することができる。
【0021】
透明降温塗層において、前記透明降温塗層は技術案1-10に記載の透明降温塗料がシャワーコーティングやブレードコーティングの方式により形成され、前記透明降温塗層の厚さは、6μm-20μmであり、前記透明降温塗層は、8μm-13μmの放射率が90%より大きく、近赤外波長域の阻隔率は、75%より大きく、可視光波長域の光透過率は、75%より大きく、ヘーズは、15%より小さい。
【0022】
以往の技術と比べて、本発明は、以下の有益な効果を奏することができる。本発明は、前記塗料にはナノセシウム・タングステンブロンズ微粒が添加され、伝統な断熱塗料ATOとITOに対して、コストが低く、本発明に記載の塗料からなる塗層の降温効果がよりよい。
【0023】
具体的には、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体の表面には、アミド基(-NCO-)とエステル基(-COO-)があるため、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体の粒子径、ナノセシウム・タングステンブロンズ粉末、マイクロシリカ、ナノシリカの寸法を制御して、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体とナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカ、マイクロシリカとの相溶性がよりよい。ナノ粒子の凝集がヘーズの増加と可視光波長域の光透過率の減少につながることと比べて、本願は、さらにナノセシウム・タングステンブロンズ粉末、マイクロシリカ、ナノシリカがポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体に均一且つ安定に分散される。前記透明降温塗料のスペクトル応答は、0.3μm-25μmの波長で2単位数段に亘る。さらには、ナノセシウム・タングステンブロンズ粉末、マイクロシリカ、ナノシリカがポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体でのフォノンが強化されフロイントリッヒが共振する。本発明の透明降温塗料は、全体大気透過窓口(8μm-13μm)において非常に強い放射率(90%以上)を有し、近赤外波長域において高い阻隔率(75%以上)を有し、そして可視光波長域の光透過率は75%より大きく、ヘーズは15%より小さく、アプリケーションシナリオがさらに広くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明における前記透明降温塗料の調製方法のフローチャートである。
【
図2】本発明における実施例4と比較例3の太陽光波長域での光透過率のグラフである。
【
図3】本発明における実施例4と比較例3の大気ウィンドウ(8μm-13μm)波長域での放射率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施例と図面を合わせて本発明を以下にさらに説明する。
【0026】
本発明の前記透明降温材料の組成は、以下のようになる。
【0027】
本発明の前記透明降温材料の組成は、80-85重量の水性ポリウレタン樹脂分散体と、0.3-0.5重量の第1分散剤と、0.3-0.5重量の第2分散剤と、0.5-1.0重量の消泡剤と、0.5-2重量の会合型ポリウレタン増稠剤と、2-6重量のナノセシウム・タングステンブロンズと、0.2-1重量のマイクロシリカと、0.1-2重量のナノシリカと、0.2-0.5重量のカップリング剤と、8-18重量の蒸留水とを含む。
【0028】
前記ナノセシウム・タングステンブロンズは、酸素八面体という特殊な構造を有する。好ましくは、前記水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、その表面には、アミド基(-NCO-)とエステル基(-COO-)がある。このアミド基とエステル基は、酸素八面体の特殊な構造を有するナノセシウム・タングステンブロンズが、前記水性ポリウレタン樹脂分散体に均一且つ安定に分散される。
【0029】
好ましくは、前記水性ポリウレタン樹脂分散体の粒子径は、10nm-60nmである。
【0030】
前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカをよりよく分散させるために、好ましくは、前記第1分散剤はアニオン高分子分散剤であり、具体的にはポリアクリルアミド/マレイン酸アンモニウムカルバメートコポリマーである。前記アニオン高分子分散剤には前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカ表面に吸着したアンカー基と溶媒化鎖を有し、前記アンカー基とは、前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカと極性も構造も似ているグループであるので、すぐに解膠でき、前記溶媒化鎖は立体障害を提供するので、前記第1分散剤の存在は、前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカが前記水性ポリウレタン樹脂分散体での分散をより安定させる。
【0031】
好ましくは、前記第2分散剤はアニオン性ナトリウム塩分散剤であり、具体的にはアクリル酸ナトリウム塩分散剤であり、前記アニオン性ナトリウム塩分散剤はよりよい解膠効果を有し、且つ電荷反発を提供して前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカを前記水性ポリウレタン樹脂分散体に安定させる。
【0032】
好ましくは、前記カップリング剤は2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤であり、前記2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解されてシラノールを形成して、前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカの表面に吸着されて縮合カップリングして親油化処理を施して、それを前記水性ポリウレタン樹脂分散体とのよりよい相溶性及び保存安定性を有させ、前記2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤は、塗料と透明基板(例えば、ガラス)とがカップリングを形成することを促進でき、透明基板との附着力を増加させ、耐候性を向上する。
【0033】
前記第1分散剤、前記第2分散剤、前記カップリング剤の三つの材料は、前記ナノセシウム・タングステンブロンズ、前記ナノシリカ、前記マイクロシリカの間に立体障害及び電荷反発が存在して、それを前記水性ポリウレタン樹脂分散体に安定に分散させる。
【0034】
好ましくは、前記消泡剤は、ポリエーテルシロキサンコポリマーである。
【0035】
好ましくは、前記ナノセシウム・タングステンブロンズの粒子径は、20nm-80nmである。
【0036】
好ましくは、前記ナノシリカの粒子径は、15nm-35nmである。
【0037】
好ましくは、前記マイクロシリカの粒子径は、4μm-15μmである。
【0038】
好ましくは、前記増稠剤は、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤、ヒドロキシエチルセルロース増稠剤の一つである。
【0039】
好ましくは、前記増稠剤は非イオン型会合型ポリウレタン増稠剤であり、前記増稠剤は0.8-1.5重量であり、透明降温塗料における水の含有量が大きいため、流動性も大きく、増稠剤を添加して塗料の粘度を調整でき、施工する時の透明降温塗料の垂れ現像をさらに防止し、施工する時のレベリング性が保証され、平坦の塗層を形成し、そして透明降温塗料に優れた保存安定性を与えることができ、また増稠剤は透明降温塗料により形成された塗層が可視光波長域での光透過率に影響を与えることができる。
【0040】
好ましくは、前記透明降温塗料の塗-4カップ粘度は30s-80sである。透明降温塗料の塗-4カップ粘度は30s-80sである時に、透明降温塗料は施工する時のレベリング性がよく垂れが現れないことが保証され、透明降温塗料により形成された塗層が可視光波長域での光透過率に影響を与えない。
【0041】
好ましくは、塗料には不凍剤がさらに含まれ、この不凍剤は、例えばエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコールから選ばれる少なくとも1つであり、5℃未満または0℃未満で保存した時に塗料が凝固する現像が現れない。好ましくは、塗料には沈降防止剤が含まれ、例えば変性ポリ尿素溶液であり、塗料における粒子物は保存する時に良好な懸濁性を保持し沈殿を避ける。前記沈降防止剤の用量は1-3重量である。
【0042】
本発明においてナノセシウム・タングステンブロンズCs0.3WO3粉末を用い、セシウム・タングステンブロンズは正六面体構造であり、この実施例が採用するセシウム・タングステンブロンズの粒子径は20nm-80nmであり、その断熱効果と透明度がより優れる。セシウム・タングステンブロンズは、800nm-1000nm波長域での平均赤外阻隔率は90%と高く、赤外放射率が高く粒子径範囲が15nm-35nmであるナノシリカ粉と粒子径範囲が4μm-15μmであるマイクロスケールSiO2微小球を選択することにより、8μm-13μm赤外放射率は90%以上と高い。本発明に記載の塗料は極めて高い近赤外阻隔率を有し、ATO、ITO断熱塗料と比べて、断熱効果は10%-15%増加した。そして、15nm-35nmのナノシリカと4μm-25μmマイクロスケールシリカ微小球を添加して、可視光とヘーズの影響が小さい条件で、大気ウィンドウ8μm-13μmの赤外放射を増加させ、その冷却効果を増加させる。
【0043】
透明降温塗料の調製方法は、
各成分が、比重に従って計量されるステップ(1)と、
蒸留水、アニオン高分子分散剤、アクリル酸ナトリウム塩分散剤、水性シランカップリング剤KH450、70%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを300r/min-400r/minの攪拌速度で添加するステップ(2)と、
ステップ(2)において、ナノセシウム・タングステンブロンズとナノシリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成するステップ(3)と、
3-5重量蒸留水と増稠剤を300r/min-400r/minの攪拌速度で水性ポリウレタン樹脂分散体に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成するステップ(4)と、
混合物Aと混合物Bを400r/min-600r/minの攪拌速度で混合させ、マイクロシリカと残りの30%重量の消泡剤を添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得るステップ(5)とを含む。
【0044】
塗料における成分含有量に対して、幾つかの実施例を以下に示す。
【0045】
実施例1:
80重量で粒子径は30nmのポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、0.3重量のアニオン高分子分散剤であり、0.3重量のアクリル酸ナトリウム塩分散剤であり、0.5重量のポリエーテルシロキサンコポリマーであり、0.5重量の非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤であり、2重量で粒子径は20nmのナノセシウム・タングステンブロンズであり、0.2重量で粒子径は4μmのマイクロシリカであり、0.1重量で粒子径は15nmのナノシリカであり、0.2重量の2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤であり、8重量の蒸留水である。
【0046】
ステップ(1):各成分が、比重に従って計量される。
【0047】
ステップ(2):蒸留水、アニオン高分子分散剤、アクリル酸ナトリウム塩分散剤、水性シランカップリング剤KH450、70%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを350r/minの攪拌速度で添加する。
【0048】
ステップ(3):ステップ(2)において、ナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成する。
【0049】
ステップ(4):蒸留水、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤を350r/minの攪拌速度で水性ポリウレタン樹脂分散体に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成する。
【0050】
ステップ(5):混合物Aと混合物Bを550r/minの攪拌速度で混合させ、マイクロシリカと残りの30%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得る。
【0051】
前記透明降温塗料により形成された塗層の厚さは6μmである。
【0052】
実施例2:
82重量で粒子径は10nmのポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、0.4重量のアニオン高分子分散剤であり、0.4重量アクリル酸ナトリウム塩分散剤であり、0.7重量のポリエーテルシロキサンコポリマーであり、0.9重量の非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤であり、4重量で粒子径は40nmのセシウム・タングステンブロンズであり、0.5重量で粒子径は6μmのマイクロシリカであり、0.5重量で粒子径は20nmのナノシリカであり、0.3重量の2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤であり、10重量の蒸留水である。
【0053】
ステップ(1):各成分が、比重に従って計量される。
【0054】
ステップ(2):蒸留水、アニオン高分子分散剤、アクリル酸ナトリウム塩分散剤、水性シランカップリング剤KH450、70%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを300r/minの攪拌速度で添加する。
【0055】
ステップ(3):ステップ(2)において、ナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成する。
【0056】
ステップ(4):蒸留水、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤を300r/minの攪拌速度で水性ポリウレタン樹脂分散体に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成する。
【0057】
ステップ(5):混合物Aと混合物Bを500r/minの攪拌速度で混合させ、マイクロシリカと残りの30%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得る。
【0058】
前記透明降温塗料により形成された塗層の厚さは、10μmである。
【0059】
実施例3:
83重量で粒子径は50nmのポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、0.4重量のアニオン高分子分散剤であり、0.4重量アクリル酸ナトリウム塩分散剤であり、0.8重量のポリエーテルシロキサンコポリマーであり、1.1重量の非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤であり、5重量で粒子径は60nmのセシウム・タングステンブロンズであり、0.9重量で粒子径は10μmのマイクロシリカであり、0.8重量で粒子径は25nmのナノシリカであり、0.4重量の2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤であり、14重量の蒸留水である。
【0060】
ステップ(1):各成分が、比重に従って計量される。
【0061】
ステップ(2):蒸留水、アニオン高分子分散剤、アクリル酸ナトリウム塩分散剤、水性シランカップリング剤KH450、70%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを380r/minの攪拌速度で添加する。
【0062】
ステップ(3):ステップ2において、ナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成する。
【0063】
ステップ(4):蒸留水、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤を380r/minの攪拌速度で水性ポリウレタン樹脂分散体に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成する。
【0064】
ステップ(5):混合物Aと混合物Bを420r/minの攪拌速度で混合させ、マイクロシリカと残りの30%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーに添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得る。
【0065】
前記透明降温塗料により形成された塗層の厚さは15μmである。
【0066】
実施例4:
85重量で粒子径は60nmのポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、0.5重量のアニオン高分子分散剤であり、0.5重量のアクリル酸ナトリウム塩分散剤であり、1.0重量のポリエーテルシロキサンコポリマーであり、2重量の非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤であり、6重量で粒子径は80nmのセシウム・タングステンブロンズであり、1重量で粒子径は15μmのマイクロシリカであり、2重量で粒子径は35nmのナノシリカであり、0.5重量の2,3-エポキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤であり、18重量の蒸留水である。
【0067】
ステップ(1):各成分が、比重に従って計量される。
【0068】
ステップ(2):蒸留水、アニオン高分子分散剤、アクリル酸ナトリウム塩分散剤、水性シランカップリング剤KH450、70%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを360r/minの攪拌速度で添加する。
【0069】
ステップ(3):ステップ(2)において、ナノセシウム・タングステンブロンズ、ナノシリカを添加し続けて均一に攪拌してから、サンドグラインダーに入れて1時間研磨して、混合物Aを形成する。
【0070】
ステップ(4):蒸留水、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤を360r/minの攪拌で水性ポリウレタン樹脂分散体に添加して均一に分散させて、混合物Bを形成する。
【0071】
ステップ(5):混合物Aと混合物Bを480r/min攪拌速度で混合させ、マイクロシリカと残りの30%重量のポリエーテルシロキサンコポリマーを添加して均一に分散させてから、透明降温塗料を得る。
【0072】
前記透明降温塗料により形成された塗層の厚さは20μmである。
【0073】
実施例5:
実施例5は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、カーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体の粒子径が5nmであることだけである。
【0074】
実施例6:
実施例6は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、カーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体の粒子径が70nmであることだけである。
【0075】
実施例7:
実施例7は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、分散体がポリエステル型水性ポリウレタン樹脂であることだけである。
【0076】
実施例8:
実施例8は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、分散体がポリエーテル型水性ポリウレタン樹脂であることだけである。
【0077】
本発明は、以下のような比較例を提供する。
【0078】
比較例1:
比較例1は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、水性ポリウレタン樹脂分散体が75重量であり、ナノセシウム・タングステンブロンズが1重量であることだけである。
【0079】
比較例2:
比較例2は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、水性ポリウレタン樹脂分散体が88重量であり、ナノセシウム・タングステンブロンズが7重量であることだけである。
【0080】
比較例3:
比較例3は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、第1分散剤を含有していないことだけである。
【0081】
比較例4:
比較例4は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、マイクロシリカが2重量であり、ナノシリカが3重量であることだけである。
【0082】
比較例5:
比較例5は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、マイクロシリカとナノシリカを含有していないことだけである。
【0083】
比較例6:
比較例6は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、ポリエーテルシロキサンコポリマーを含有していないことだけである。
【0084】
この透明降温塗料の相溶性はよくなく、凝集現像がある。
【0085】
比較例7:
比較例7は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体を採用せず、水性アクリレート乳液を分散体として採用することだけである。
【0086】
この透明降温塗料の相溶性はよくなく、凝集現像がある。
【0087】
上記の実施例及び比較例により得られた塗料を透明基材に塗布されて塗層サンプルを形成するとともに、各塗層サンプルの可視光の光透過率、ヘーズ、近赤外阻隔率、大気ウィンドウ放射率をテストする。
【0088】
塗-4カップ粘度のテスト:国家際準GB/T1723用塗-4カップ粘度計法に従って、塗料の塗-4カップ粘度を測定する。
【0089】
【0090】
表1から分かるように、比較例1-7塗料に対して、実施例1-8塗料は、全体大気透過窓口での放射率が、いずれも90%以上であり、近赤外波長域での阻隔率が、いずれも75%以上であり、可視光波長域での光透過率が、いずれも75%より大きく、ヘーズが15%より小さい。さらには、実施例1-4が採用する水性ポリウレタン樹脂分散体は、ポリカーボネート型水性ポリウレタン樹脂分散体であり、粒子径は10nm-60nmである時に、この塗料の対応する放射率、阻隔率、光透過率、ヘーズは、いずれもより優れており、比較例6-7から分かるように、透明降温塗料の相溶性はよくなく、輻射降温塗料により形成された塗層の可視光の光透過率とヘーズに影響を与える。
【0091】
比較例8:
比較例8は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、増稠剤を含有していないことだけである。
【0092】
比較例9:
比較例9は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、増稠剤がアルカリ膨潤アクリル増稠剤であることだけである。
【0093】
比較例10:
比較例10は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、増稠剤が変性尿素溶液増稠剤であることだけである。
【0094】
比較例11:
比較例11は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、増稠剤が0.3重量であることだけである。
【0095】
比較例12:
比較例12は、実施例2と基本的に同じである。異なるのは、増稠剤が2.3重量であることだけである。
【0096】
表2:実施例1、2、4と比較例8-12の性能テスト
【0097】
表2から分かるように、比較例8の塗料に対して、実施例2において増稠剤を添加する時に、塗料の塗-4カップ粘度が高く、施工する時に垂れ現像がない。比較例9において、増稠剤はアルカリ膨潤アクリル増稠剤である時に、アルカリ膨潤アクリル増稠剤は分散剤と類似する構造を有し、そのうち酸性基はナノセシウム・タングステンブロンズ、マイクロシリカ、ナノシリカに強く作用し、分散剤におけるアンカー基とナノセシウム・タングステンブロンズ、マイクロシリカ、ナノシリカに対する競合的吸着を形成することにより、橋式凝こうを引き起こして、ナノセシウム・タングステンブロンズ、マイクロシリカ、ナノシリカが塗料での安定に影響を与え、塗-4カップ粘度が高く、レベリング性が悪く、塗料の成膜効果と塗料により形成された塗層が可視光波長域での光透過率に影響を与える。比較例10において、増稠剤は変性尿素溶液増稠剤である時に、この増稠剤が分散剤との相溶性が悪く、塗料において相溶が形成されなく、塗層光透過率が低下してしまい、塗料の塗-4カップ粘度が高く、レベリング性が悪く、塗料の成膜効果と塗料により形成された塗層が可視光波長域での光透過率に影響を与える。以上の分析から分かるように、本発明において、非イオン性会合性ポリウレタン増稠剤を採用することが好ましい。
【0098】
実施例1、2、4と比較例8、11、12によれば、本発明における増稠剤の添加量は0.5-2重量であることが好ましいことが検証され、この時にその塗-4カップ粘度とレベリング性がよい。これは、増稠剤添加量が少なすぎる(0.5重量より低い)と、塗料の塗-4カップ粘度が低すぎて、施工する時に垂れ易く、増稠剤添加量が多すぎる(2重量より高い)と、塗料の塗-4カップ粘度が高すぎて、施工する時にレベリング性が悪く、塗料の成膜効果と塗料により形成された塗層が可視光波長域での光透過率に影響を与えるためである。
【0099】
最後に、上記は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本発明は、前述の実施例を参照して詳細に説明されたが、当業者にとって、それらは前述の実施例に記載の技術案を依然として修正することができ、またはそのうちの一部の技術的特徴を同等に置き換えることができ、本発明の精神および原則内で行われるいかなる修正、同等の置換、改良なども、本発明の保護範囲に含まれるものとする。