(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液及びその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12P 1/04 20060101AFI20220128BHJP
A23L 31/00 20160101ALI20220128BHJP
A61K 8/9728 20170101ALI20220128BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220128BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20220128BHJP
C12R 1/25 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12P1/04 Z
A23L31/00
A61K8/9728
A61K8/9789
A61Q7/00
C12R1:25
(21)【出願番号】P 2020129828
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2020-07-31
(31)【優先権主張番号】202010351090.4
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC CCTCC M2016002
(73)【特許権者】
【識別番号】519401712
【氏名又は名称】オクスロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堺 孝子
(72)【発明者】
【氏名】ヨン リー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ウェイ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105695363(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103393121(CN,A)
【文献】特開2013-136551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-06
A23L 31/00-15
A61K 8/00-99
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CABA/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)で、発酵液の原材料を発酵させることを含み、前記原材料が果物・野菜、穀物、益智仁、茶葉を含
み、
前記果物・野菜として、キウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを含み、前記穀物として、キビ、ダイズおよびコムギを含む、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液の調製方法。
【請求項2】
キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は(10~30):(10~35):(5~30):(10~35):(5~25)であり、(10~30):(15~20):(5~25):(15~20):(10~25)であるのが好ましい;及び/又は
、
キビと、ダイズと、コムギの重量比は(10~50):(10~50):(5~50)であり、(15~50):(10~20):(25~30)であるのが好ましい;
さらに好ましくは、前記原材料は、
果物・野菜20~75重量部、
穀物10~35重量部、
益智仁5~30重量部、
茶葉3~35重量部、
スクロース5~20重量部
を含む請求項1に記載の調製方法、
【請求項3】
茶葉抽出液、益智仁抽出液およびスクロースを含有する混合液Aを提供すること;
新鮮なキウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを取り、塊状に切った後、前記混合液Aに入れ、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCCM 2016002)を接種して発酵させ、濾過して、果物・野菜の発酵液を得ること;
蒸したあるいは茹でたキビ、ダイズ、コムギを取り、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCCM 2016002)を接種して発酵させ、濾過して、穀物発酵液を得ること;
前記果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を均一に混合し、濾過して、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を得ること
を含む請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
果物・野菜の発酵液を調製するための発酵温度は16℃~45℃である;好ましくは、まず、密閉条件下で3~10日発酵させ、ガス抜きした後、再び20~90日発酵させる;及び/又は、
穀物発酵液を調製するための発酵温度は16℃~40℃である;好ましくは、まず、密閉条件下で3~15日程度発酵させ、ガス抜きした後、再び15~90日発酵させる;及び/又は、
前記果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を(1.0~6.0):(1.0~4.0)の重量比で均一に混合し、さらに濾過して、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を調製する 請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
1)80℃~100℃の精製水40~80重量部を取り、茶葉3~55重量部と益智仁5~30重量部を入れ、茶汁混合液を得、20℃~40℃までに冷却した後、スクロース5~40重量部を加え、撹拌して溶解させた後静置し、甘い茶汁混合液を得ること;
2)新鮮なキウイフルーツ10~30重量部、ブッシュカ10~35重量部、バンジロウ5~30重量部、セキチョウハク10~35重量部、サンショウコン5~25重量部を取り、浄水で洗浄して消毒し、自然乾燥させた後、小さな塊状に切って、前記甘い茶汁混合液に入れ、その後、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCCM 2016002)菌液を接種する;密閉し、温度16℃~45℃、湿度35%~80%の条件下で3~10日発酵させる;開封してガス抜きし、撹拌する;密閉状態下で引き続き20~90日発酵させる;発酵が完了したら、材料を濾過して、果物・野菜の発酵液を得ること;
3)キビ10~50重量部、ダイズ10~50重量部、コムギ5~50重量部をとって混合し、洗浄した後、
蒸す又は茹でて、自然冷却させた後、精製水40~60重量部に入れ、前記果物・野菜の発酵液5~30重量部を加え、密閉し、温度16~40℃、湿度30%~80%の条件下で3~15日発酵させる;開封してガス抜きし、撹拌し、密閉状態下で引き続き15~90日発酵させる;発酵が完了したら、材料をすりつぶし、自然に沈降させてから濾過し、穀物発酵液を得ること;
4)前記果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を(1.0~6.0):(1.0~4.0)の重量比で均一に混合して撹拌し、超音波により滅菌した後、さらに濾過して、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を調製すること
を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液からさらに調製される無細胞無菌液、又は液体の無菌濾液、又は無菌上清液、又は
前記複合発酵液の濃縮物もしくは乾燥生成物である、発酵製品。
【請求項8】
請求項6に記載の複合発酵液又は請求項7に記載の発酵製品の毛髪用製品の製造における使用;好ましくは、抜け毛予防、滋養育毛の機能を有する毛髪用製品の製造における使用。
【請求項9】
請求項6に記載の抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液又は請求項7に記載の発酵製品を含む毛髪用製品。
【請求項10】
ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCCM 2016002)の毛髪用製品の製造における使用
;ここで、前記ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)で、発酵液の原材料を発酵させることを含み、前記原材料が果物・野菜、穀物、益智仁、茶葉を含み、
前記果物・野菜として、キウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを含み、前記穀物として、キビ、ダイズおよびコムギを含む;好ましくは、抜け毛予防、滋養育毛の機能を有する毛髪用製品の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪用製品に関するものであり、具体的には、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液及びその調製方法と使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
髪は人間の外見で重要な役目を担うだけではなく、人間の健康の重要な指標でもある。人々は、抜け毛予防、滋養育毛などの機能を有する毛髪用製品を必要としている。現在、例えば、伝統的な医薬品であるミノキシジルなどの、化学成分を添加した育毛養毛類・抜け毛予防類製品が市場で流通している。この種類の製品を不適切に使用すると、人体の機能に一定の危害を及ぼす可能性がある。現在、漢方薬を薬物治療の代替技術として開発し使用しているが、一部の伝統的なプロセスは、原料における有効成分を破壊する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施例は、毛髪用製品として使用できる発酵液、特に抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該発酵液は、新鮮な野菜・果物と天然な穀物をベース原料として選用し、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)で発酵させて調製されるものである。本発明の実施例が提供する発酵液は、前記ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70の作用下で、一側面では、少なくとも使用する新鮮な野菜・果物と天然な穀物の原料における高分子物質を、人体により吸収されやすい低分子物質に分解できる;及び/又は、一側面では、少なくとも使用する原料に含まれていない二次代謝産物及び/又は含有量が極めて少ない物質を生成する;及び/又は、別の側面では、少なくとも人体に有益な成分の種類及び/又はその含有量を増やす;及び/又は、更に別の側面では、少なくとも発酵液における亜硝酸塩の残存量を減らす点において、その他の類似の菌株より顕著に優れている。要するに、前記ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)の作用下で、本発明の実施例で得られる発酵液の品質は使用する原材料より大幅に向上している。実験により、本発明の実施例が提供する発酵液が、少なくとも抜け毛予防、滋養育毛の機能において比較的良好な作用を有し、毛髪用製品又は毛髪用製品の原料として開発し利用できることが証明されている。
【0005】
本発明に係るラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70は、Lactobacillus paraplantarum GUFHSL-70と命名され、当該菌株の純粋培養物は、すでに2016年01月04日に中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託され、寄託機関の住所は中国武漢武漢大学であり、受託番号はCCTCC M 2016002である。本発明に係るラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)はすでに公開番号CN105695363Aの中国発明特許に開示されている。
【0006】
具体的に、本発明の実施例は、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)で、発酵液の原材料を発酵させることを含み、前記原材料が果物・野菜、穀物、益智仁、茶葉を含む、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液の調製方法を提供する。
【0007】
本発明で使用する用語について、益智仁、茶葉は果物・野菜に該当しないだけでなく、穀物にも該当しない。
【0008】
本発明において、前記益智仁(Fructus Alpinae Oxyphyllae)は、ショウガ科植物である益智Alpinia oxyphylla Miq.の果実を乾燥させたものである。その品質基準については、中国薬局方をご参照ください。
【0009】
本発明のいくつかの実施例において、前記果物・野菜として、キウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを選用する。
【0010】
本発明において、前記サンショウコン(Physalis alkekengi L.)はナス科植物であるサンショウコン属のサンショウコンの成熟した果実である。
【0011】
前記セキチョウハク(Asparagus officinalis)はユリ科アスパラガス属の草本植物であるアスパラガスの若芽である。
【0012】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は(10~30):(10~35):(5~30):(10~35):(5~25)である。
【0013】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は(10~30):(15~20):(5~25):(15~20):(10~25)である。
【0014】
いくつかの具体的な実施例において、キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は10:15:10:20:10である。
【0015】
いくつかの具体的な実施例において、キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は30:20:5:15:25である。
【0016】
いくつかの具体的な実施例において、キウイフルーツと、ブッシュカと、バンジロウと、セキチョウハクと、サンショウコンの重量比は20:20:25:20:25である。
【0017】
本発明のいくつかの実施例において、前記穀物として、キビ、ダイズおよびコムギを選用する。いくつかの比較的好ましい実施例において、キビと、ダイズと、コムギの重量比は(10~50):(10~50):(5~50)である。
【0018】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キビと、ダイズと、コムギの重量比は(15~50):(10~20):(25~30)である。
【0019】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キビと、ダイズと、コムギの重量比は15:20:25である。
【0020】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キビと、ダイズと、コムギの重量比は20:10:30である
【0021】
いくつかの比較的好ましい実施例において、キビと、ダイズと、コムギの重量比は50:20:30である。
【0022】
本発明において、前記キビは稷の成熟した果実であり、稷の学名はPanicum miliaceum L.である。
【0023】
本発明において、前記ダイズの学名はGlycine max(Linn.) Merr.であり、黄豆と通称される。
【0024】
本発明のいくつかの実施例において、前記茶葉として、紅茶、緑茶、藤茶、プーアル茶、白茶の1種又は複数種を選用してもよい。
【0025】
いくつかの実施例において、前記発酵液の原材料はさらに糖を含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施例において、前記糖として、スクロースを選用してもよく、具体的には、赤砂糖、白砂糖、黒砂糖の1種又は複数種であってもよい;その主な作用は、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70に炭素源を提供し、発酵菌の菌株の成長と繁殖を促進し、発酵プロセスを加速させることである。
【0027】
本発明のいくつかの実施例において、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)で、上記の果物・野菜、穀物、益智仁、茶葉、又はさらに糖を含んでなる原料、或いはこれらの原料で調製される混合物を発酵させる。
【0028】
本発明において、一般的に使用される原料はさらに水を含み、精製水が好ましい。
【0029】
本発明のいくつかの実施例において、前記原材料は、
果物・野菜20~75重量部、
穀物10~35重量部、
益智仁5~30重量部、
茶葉3~35重量部、
スクロース5~20重量部
を含む。
さらに、精製水40~80重量部も含む。
【0030】
実験により、上記配合の原料を選用することで、抜け毛予防、滋養育毛の機能をより良好に向上できることが証明されている。
【0031】
本発明のいくつかの実施例において、上記の抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液の調製方法は、
茶葉抽出液、益智仁抽出液およびスクロースを含有する混合液Aを提供すること;
綺麗なキウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを取り、塊状に切った後、上記の混合液Aに入れ、上記のラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70を接種して発酵させ、濾過して、果物・野菜の発酵液を得ること;
蒸したあるいは茹でたキビ、ダイズ、コムギを取り、上記のラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70を接種して発酵させ、濾過して、穀物発酵液を得ること;
前記果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を均一に混合し、滅菌及び/又は濾過を行い、前記抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を得ること
を含む。
【0032】
具体的に、前記茶葉抽出液は、当分野の通常の方法で調製でき、例えば、80℃~100℃の精製水で茶葉を抽出し、茶葉抽出液を得る。
【0033】
具体的に、前記益智仁抽出液は、当分野の通常の方法で調製でき、例えば、80℃~100℃の精製水で益智仁を抽出し、益智仁抽出液を得る。
【0034】
本発明のいくつかの実施例において、80℃~100℃の精製水で茶葉と益智仁を同時に抽出し、抽出液に糖を加え、混合液Aを調製することもできる。より具体的には、80℃~100℃の精製水40~80重量部を取り、茶葉3~55重量部と益智仁5~30重量部を加え、抽出して抽出液を得、さらに、糖5~40重量部を加え、撹拌し溶解させた後静置し、混合液Aを得る。20℃~40℃までに冷却してから使用できる。
【0035】
本発明のいくつかの実施例において、雑菌が混入することを回避するために、綺麗に洗浄したキウイフルーツ、ブッシュカ、バンジロウ、セキチョウハクおよびサンショウコンを消毒(例えばアルコールで消毒)してから塊状に切る。
【0036】
本発明のいくつかの実施例において、果物・野菜の発酵液を調製するための発酵温度は16℃~45℃である。一般的には、まず、密閉条件下で3~10日発酵させ、ガス抜きした後、再び(密閉)20~90日発酵させる(1~5日おきに1回撹拌してもよい)。通常、発酵過程において、環境湿度を35%~80%に保持する。
【0037】
本発明のいくつかの実施例において、穀物発酵液を調製するための発酵温度は16℃~40℃である。一般的には、まず、密閉条件下で3~15日発酵させ、ガス抜きした後、再び15~90日発酵させる(1~7日おきに1回撹拌してもよい)。通常、発酵過程において、環境湿度を30%~80%に保持する。
【0038】
本発明のいくつかの実施例において、前記果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を(1.0~6.0):(1.0~4.0)の重量比で均一に混合する。本発明のいくつかの実施例において、混合発酵液における微生物細胞を破砕するために、さらに超音波を採用して得られた混合液に対して滅菌を行う。超音波滅菌の別の利点は、混合発酵液における栄養成分又は有効成分を実質的に破壊しないことにあり、なお、複数種のヘアケアに有益な成分を放出できることにある。
【0039】
本発明のいくつかの実施例において、超音波で滅菌処理を行った後、さらに濾過(さらに混合発酵液における不純物及び破砕していない微生物細胞を除去)し、本発明の前記発酵液を得る。
【0040】
穀物発酵液を調製する時、前記果物・野菜の発酵液(ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70を含有し、滅菌していないもの)を接種して発酵させることにより、発酵期間を大幅に短縮できることを意外に見出した。
【0041】
本発明のいくつかの実施例において、上記発酵液の調製方法は、
1)80℃~100℃の精製水40~80重量部を取り、茶葉3~55重量部と益智仁5~30重量部を入れ、茶汁混合液を得、20℃~40℃までに冷却した後、スクロース5~40重量部を加え、撹拌して溶解させた後静置し、甘い茶汁混合液を得ること;
2)新鮮なキウイフルーツ10~30重量部、ブッシュカ10~35重量部、バンジロウ5~30重量部、セキチョウハク10~35重量部、サンショウコン5~25重量部を取り、浄水で洗浄し(例えば浄水で1~6回濯いだ後、さらに、滅菌水で1~4回濯ぎ)、消毒して(例えば、消毒アルコールで果物の表面を3~6回拭き)、自然乾燥させた後、小さな塊状に切って、上記の甘い茶汁混合液に入れ、その後、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌液(例えば5~30重量部)を接種する;密閉し、温度16℃~45℃、湿度35%~80%の条件下で3~10日発酵させる;開封してガス抜きし、撹拌(例えば5~30min)する;密閉状態下で、引き続き20~90日発酵させる(1~5日おきに開封してガス抜きし、一回撹拌することが好ましい);発酵が完了したら、材料を濾過して、果物・野菜の発酵液を得ること;
3)キビ10~50重量部、ダイズ10~50重量部、コムギ5~50重量部を取って混合し、洗浄した(例えば、浄水で綺麗に濯ぎ、過剰にこする必要はなく、水を少し切った)後、蒸したり茹でたりして、自然冷却させた後、精製水40~60重量部に入れ、上記の果物・野菜の発酵液5~30重量部を加え、密閉し、温度16~40℃、湿度30%~80%の条件下で3~15日発酵させる;開封してガス抜きし、撹拌(例えば5~30min)し、密閉状態下で、引き続き15~90日発酵させる(1~7日おきに開封してガス抜きし、一回撹拌することが好ましい);発酵が完了したら、材料をすりつぶし、自然に沈降させてから濾過し、穀物発酵液を得ること;
4)上記の果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を(1.0~6.0):(1.0~4.0)の重量比で均一に混合・撹拌し、超音波により滅菌した後、さらに濾過して、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を調製すること
を含む。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、使用されるラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌液における生菌数は3.0×108CFU/mL程度である。
【0043】
本発明のいくつかの実施例において、果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を均一に混合した後、超音波で滅菌し、無細胞又は無菌の状態になるまでさらに濾過する。
【0044】
本発明は、上記方法で調製される発酵液も提供する。
【0045】
本発明は、上記方法で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液からさらに調製される無細胞無菌液、又は液体の無菌濾液、又は無菌上清液、又はその濃縮物もしくは乾燥生成物である、発酵製品も提供する。
【0046】
通常、当分野の通常の方法を採用して前記発酵液を濃縮又は乾燥(例えば凍結乾燥または噴霧乾燥)してもよい。
【0047】
本発明は、上記方法で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液または発酵製品の毛髪用製品の製造における使用、特に抜け毛予防、滋養育毛の機能を有する毛髪用製品の製造における使用も提供する。
【0048】
本発明は、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)の毛髪用製品の製造における使用、特に抜け毛予防、滋養育毛の機能を有する毛髪用製品の製造における使用も提供する。
【0049】
本発明は、上記方法で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液または発酵製品を含む、毛髪用製品も提供する。さらに、当該毛髪用製品は、当分野(化粧品分野)で使用できるその他の原料と補助材料をさらに含む。
【0050】
本発明は、新鮮な野菜・果物と天然な穀物をベース原料として選用し、その原料の種類と配合はいずれも、実験に基づく鋭意検討の結果であり、原料の栄養成分は十分に保たれている;かつ、特定の発酵プロセスを行うことで原料を抽出し、プロバイオティクスのラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)を発酵菌の菌株として採用し、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70の作用下で、高分子を人体により吸収されやすい低分子に分解し、普通の植物にない又は含有量が極めて少ない、大量な二次代謝産物が生成する。GUFHSL-70ラクトバチルス・パラプランタラムは、発酵液における亜硝酸塩の残存量を低減することにも寄与し、また、発酵した原材料の品質も大きく向上し、有益な成分の種類及び含有量が増加し、不純物の含有量が減少するか、あるいは除去される。本発明で得られる発酵液は、抜け毛予防、滋養育毛の機能において比較的良好な作用を有し、毛髪用製品又は毛髪用製品の原料として開発し利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を組み合わせて本発明について詳細に説明する。
【0052】
以下で使用するラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌液を、CN105695363Aに開示された方法で調製し、菌液における生菌数は3.0×108CFU/mL程度である。
【実施例】
【0053】
[実施例1]
本実施例は、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を提供し、調製方法は下記の通りである。
1)100℃の精製水70重量部を取り、紅茶の茶葉20重量部と益智仁10重量部を入れ、茶汁混合液を得、20℃までに冷却した後、白砂糖20重量部を加え、撹拌して溶解させた後静置し、甘い茶汁混合液を得た。
2)その後、新鮮なキウイフルーツ10重量部、ブッシュカ15重量部、バンジロウ10重量部、セキチョウハク20重量部、サンショウコン10重量部を取り、浄水で2回濯いだ後、さらに滅菌水で2回濯いでから、消毒アルコールで果物の表面を3回拭き、果物の表面が乾燥した後、小さい塊状に切って、上記の甘い茶汁混合液に入れ、その後、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌液15重量部を接種した。温度27℃、湿度65%の条件下で5日密閉して保存した後、発酵槽を開け、ガス抜きして5min撹拌し、その後、2日おきに一回撹拌し、30日後に発酵が完了したら、材料を濾過して、果物・野菜の発酵液を得た。
3)キビ15重量部、ダイズ20重量部、コムギ25重量部を取り、浄水で綺麗に濯ぎ、過剰にこする必要はなく、少し水を切ってから蒸し、自然冷却させてから、精製水40重量部に入れ、上記の果物・野菜の発酵液10重量部を加え、発酵槽で発酵させ、温度20℃、湿度50%の条件下で3日ほど発酵させた。発酵槽を開け、ガス抜きして10min撹拌し、その後、2日おきに一回撹拌し、15日ほどの発酵が完了したら、器具で穀物をすりつぶし、その後、自然に沈降させてから濾過し、穀物発酵液を得た。
4)上記の果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を1.5:1.0の重量比で均一に混合して撹拌し、得られた混合発酵液を超音波により滅菌して(混合発酵液における微生物細胞を破砕するために)、濾過し(さらに混合発酵液における不純物及び破砕していない微生物細胞を除去し)、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を得た。
本実施例で調製される複合発酵液は、少なくとも抜け毛予防、滋養育毛の機能を有し、毛髪用製品の製造に使用できる。
【0054】
[実施例2]
本実施例は、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を提供し、調製方法は下記の通りである。
1)90℃の精製水60重量部を取り、紅茶と藤茶との混合茶葉20重量部及び益智仁25重量部を入れて淹れることにより茶汁混合液を得、26℃までに冷却した後、赤砂糖と白砂糖との混合糖20重量部を加え、撹拌して溶解させた後静置し、甘い茶汁混合液を得た。
2)新鮮なキウイフルーツ20重量部、ブッシュカ20重量部、バンジロウ25重量部、セキチョウハク20重量部、サンショウコン25重量部を取り、浄水で3回濯いだ後、さらに滅菌水で3回濯いでから、消毒アルコールで果物の表面を2回拭き、果物の表面が乾燥した後、小さい塊状に切って、上記の甘い茶汁混合液に入れ、その後、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌液20重量部を接種した。温度28℃、湿度75%の条件下で7日密閉して保存した後、発酵槽を開け、ガス抜きして15min撹拌し、その後、3日おきに一回撹拌し、60日後に発酵が完了したら、材料を濾過した。果物・野菜の発酵液を得た。
3)キビ50重量部、ダイズ20重量部、コムギ30重量部を取って混合し、浄水で綺麗に濯ぎ、過剰にこする必要はなく、少し水を切ってから蒸し、自然冷却させた後、精製水45重量部に入れ、上記の果物・野菜の発酵液20重量部を加え、発酵槽で発酵させ、温度28℃、湿度65%の条件下で7日ほど発酵させた。発酵槽を開け、ガス抜きして20min撹拌し、その後、3日おきに一回撹拌し、30日ほどの発酵が完了したら、器具で穀物をすりつぶし、その後、自然に沈降させてから濾過した。穀物発酵液を得た。
4)最後に、果物・野菜の発酵液と穀物発酵液を1.0:1.5の割合で均一に混合して撹拌し、得られた混合発酵液を超音波により滅菌した後、さらに濾過し、抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液を得た。
【0055】
本実施例で調製される抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液は、少なくとも抜け毛予防、滋養育毛の機能を有し、毛髪用製品の製造に使用できる。
【0056】
[比較例1]
本比較例は、果物・野菜の発酵液を提供し、その調製方法は実施例1(ステップ2)と同じであった。
【0057】
[比較例2]
本比較例は、穀物発酵液を提供し、その調製方法は実施例1(ステップ3)と同じであった。
【0058】
[比較例3]
本比較例は、養毛発酵液を提供し、その調製方法と実施例1との相違は、ラクトバチルス・パラプランタラムGUFHSL-70(CCTCC M 2016002)菌が酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)に置き換えられたことのみであった;そのうち、使用される酵母菌液における生菌数は3.0×108CFU/mL程度である。
【0059】
実施例1、2の抜け毛予防、滋養育毛の複合発酵液、比較例1~3で調製した発酵液について、効果を下記のように検証した。
【0060】
[実験1]
6~8週のオスのC57BL/6マウスを実験動物として選用し、実験群、ブランク対照群に分けた;実験群では、それぞれ実施例1、2、比較例1~3で調製した発酵液を使用し、ブランク対照群では、滅菌水を使用した。各群8匹にして、背中の3×4cmの毛を剃ってから、21日継続して投与し、最後にマウスを安楽死させた後、新たに生えた毛髪の長さを測定し、また、試験領域の毛包を計数した。実験結果を下記の表1に示す。
【0061】
【0062】
表1から、実施例1、2の発酵液を用いた毛髪が伸びた長さ、毛包の数が、ブランク群と顕著に異なり、かつ比較例1、2、3より顕著に優れることが分かる。実験結果は、本発明の実施例1、2が提供する発酵液が、抜け毛予防、養毛、育毛の機能を有することを示している。
【0063】
[実験2]
チロシナーゼに対する発酵液の活性化効果を検出することにより、発酵液の烏髪作用を説明する。
【0064】
以下で使用するチロシナーゼ溶液は、酵素活性の単位が250u/mLである。以下で使用するドーパミン溶液の濃度は0.5mg/mLである。
【0065】
実験を、実験群、ブランク対照群に分けた;実験群では、それぞれ実施例1、2、比較例1~3で調製した発酵液100μL、及びチロシナーゼ溶液50μLを加えた;ブランク対照群では、PBS溶液100μLとチロシナーゼ溶液50μLを加えた;その後、各混合液を37℃の恒温水槽に入れて5分間インキュベートし、さらに、それぞれドーパミン溶液50μLを加えてから、引き続き2分間インキュベートし、その後、直ちにマイクロプレートリーダーで490nmにおける光学密度(OD値、OD値が大きいほど濃度又は活性が高い)を測定し、サンプルごとに検出を8回行い、平均値を取った。検出結果を下記の表2に示す。
【0066】
【0067】
その結果、チロシナーゼに対する実施例1、2の発酵液の活性化効果が、ブランク対照群と比較例1、2より顕著に優れることを見出し、本発明の発酵液が比較的良好なチロシナーゼ活性を促進させる作用を有し、烏髪作用を有し、さらに、烏髪製品又は原料としても利用できることが示されている。
【0068】
本発明の実施例は新鮮な果物と野菜及び天然な穀物を採用し、原材料の栄養成分を十分に保留し、特殊なプロセスにより処理されていない原材料も有害な化学物質の残存を回避できている。新鮮な果物・野菜と穀物には多くのビタミン、タンパク質、アミノ酸及び人体が必要とする微量元素が含まれており、頭皮や髪が必要とする栄養成分を補い、新鮮な果物と野菜にはさらに複数種の抗酸化、抗アレルギー・抗炎症、血管を活性化させるなどの作用を有する物質が含まれており、頭皮に働くことができ、頭皮の健康に有益であり、毛包の活性化と髪の再生を促進する。原料が発酵されたため、各種の有益な成分が発酵液に溶け、プロバイオティクスの作用下で、高分子が人体により吸収されやすい低分子に分解し、かつ、多くの二次代謝産物は頭皮や髪の健康に有益である。従って、本発明の前記発酵液は抜け毛予防、滋養育毛の毛髪用製品に使用でき、ポジティブな促進作用を有する。
【0069】
上述のように、本発明の実施例で得られる複合発酵液は比較的良好な抜け毛予防、滋養育毛の作用を有する。
【0070】
上記において、一般的な説明及び具体的な実施形態で本発明を詳しく説明したが、本発明に基づき、いくつかの補正や改善を行い得ることは、当業者にとって自明である。従って、本発明の趣旨から逸脱しない範疇で行ったこれらの補正や改善は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に属する。
【受託番号】
【0071】
寄託機関名:中国典型培養物保蔵センター
受託番号:CCTCCM2016002
受託日付:20160104
【0072】