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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】直列形経鼻送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/02 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61M11/02 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020139519
(22)【出願日】2020-08-20
(62)【分割の表示】P 2018513344の分割
【原出願日】2016-09-09
(65)【公開番号】P2020185475
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】62/216,789
(32)【優先日】2015-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513221307
【氏名又は名称】インペル ニューロファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー.フークマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー フラー
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ コーリング
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3704812(US,A)
【文献】米国特許第3921857(US,A)
【文献】特開昭50-078912(JP,A)
【文献】国際公開第2014/179228(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
先端、化合物を収容するバイアル、及び、前記バイアルからくみ上げられた化合物を受け取るための用量チャンバを含むハウジングと、
作動により前記バイアルから化合物を移動させる定量ポンプと、
前記用量チャンバからの出口を提供するために前記用量チャンバと結合されたノズルと、
前記用量チャンバに結合され、推進剤キャニスタから推進剤を受け取るように構成された拡散器と、
前記推進剤キャニスタの一部を保持するように構成されたアクチュエータグリップと、
アクチュエータであって、前記ハウジングの圧縮時に前記バイアルからの化合物の放出を制御するとともに、化合物が前記用量チャンバから前記ノズルを出るときに、推進剤が化合物を同伴するように、作動の際に放出される化合物の大部分が前記用量チャンバに入った後、前記推進剤キャニスタからの推進剤の放出を制御するアクチュエータと、
を備えるデバイス。
【請求項2】
前記定量ポンプを前記バイアルに固定するポンプ取付具をさらに備える請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記定量ポンプに結合された逆止弁をさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ハウジングに係合しているノーズコーンをさらに含む請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記拡散器は環状である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記拡散器は多孔質材料である請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡散器は前記用量チャンバの底を形成する請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
先端、及び、化合物を収容するバイアルから化合物を受け取るための用量チャンバを含むハウジングと、
前記用量チャンバからの出口を提供するために前記用量チャンバと結合されたノズルと、
作動により前記バイアルから化合物を移動させる定量ポンプと、
アクチュエータであって、前記ハウジングの圧縮時に前記バイアルからの化合物の放出を制御するとともに、化合物が前記用量チャンバから前記ノズルを出るときに、推進剤が化合物を同伴するように、作動の際に放出される化合物の大部分が前記用量チャンバに入った後、進剤キャニスタからの推進剤の放出を制御するアクチュエータと、
を備えるデバイス。
【請求項9】
前記推進剤キャニスタは、前記アクチュエータによって作動される推進剤弁を有し、前記推進剤キャニスタは、前記用量チャンバと流体連通している請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記用量チャンバに結合され、推進剤キャニスタから推進剤を受け取るように構成された拡散器をさらに含む請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
鼻腔の嗅覚領域への化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
先端、化合物を収容するバイアル、及び、前記バイアルからくみ上げられた化合物を受け取るための用量チャンバを含むハウジングと、
前記用量チャンバからの出口を提供するために前記用量チャンバと結合されたノズルと、
作動により前記バイアルから化合物を移動させる定量ポンプと、
推進剤を収容する推進剤キャニスタと、
アクチュエータであって、前記ハウジングの圧縮時に前記バイアルからの化合物の放出を制御するとともに、化合物が前記用量チャンバから前記ノズルを出るときに、推進剤が化合物を同伴するように、作動の際に放出される化合物の大部分が前記用量チャンバに入った後、前記推進剤キャニスタからの推進剤の放出を制御するアクチュエータと、
を備えるデバイス。
【請求項12】
内部用量装填チャネルと、ばねと、をさらに含み、
前記拡散器が前記内部用量装填チャネルと前記用量チャンバとの間にある請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記推進剤キャニスタは、前記アクチュエータによって作動される推進剤弁を有し、前記推進剤キャニスタは、前記用量チャンバと流体連通している請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
拡散器をさらに備える請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
内部用量装填チャネルをさらに含み、
前記拡散器は、前記内部用量装填チャネルの外壁と前記用量チャンバの内壁との間に着座される請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
内部用量装填チャネルをさらに含み、
前記拡散器は、前記内部用量装填チャネルの外壁と前記用量チャンバの内壁との間に着座される請求項10に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化合物の鼻腔内送達のためのデバイス。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれている、2015年9月10日に出願した米国特許仮出願第62/216,789号の優先権を主張するものである。
【0003】
鼻腔の嗅覚領域上への薬剤の沈着は、鼻腔の複雑な構造、および、鼻を通る吸入された呼気のための鼻甲介によって案内される空気経路のために、達成するのが難しい。これらの自然の構造は、この中枢神経系(CNS)内への経路を保護する手段として、物質が嗅覚領域上に沈着するのを防ぐように作用する。Pfieffer経鼻スプレーデバイス(Radolfzell、Germany)などの点鼻デバイスまたは経鼻スプレーデバイスは、下側鼻腔を湿らせるように設計されている。下側鼻腔上に沈着した薬剤は、CNSにではなく血流中に吸収され、CNS送達のための経鼻ルートを使用することの利点が排除される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物または混合物の鼻腔内送達に対するより洗練された手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
化合物の鼻腔内送達のためのデバイスの1つの実施態様が示されかつ説明され、このデバイスは、基部、基部から放射状に延びるy字形接合器(y-junction)の第1の枝路、基部から放射状に延びるy字形接合器の第2の枝路、基部から放射状に延びるy字形接合器の第3の枝路、およびy字形接合器の内部用量装填チャネルを有するy字形接合器と、y字形接合器の第1の枝路と流体連通している定量ポンプと、y字形接合器の第2の枝路と結合する円錐形ばねと、y字形接合器の第3の枝路と流体連通している用量チャンバと、用量チャンバと結合するノズルと、内部用量装填チャネルと用量チャンバとの間に圧縮嵌合する拡散器と、y字形接合器を取り囲むアクチュエータグリップと、y字形接合器が内在するハウジングとを含む。
【0006】
1つの態様では、直列形経鼻送達デバイスは、y字形接合器の第2の枝路と流体連通しかつアクチュエータグリップによって保持される推進剤キャニスタをさらに含み、円錐形ばねは、推進剤キャニスタとy字形接合器の第2の枝路との間に位置する。
【0007】
別の態様では、直列形経鼻送達デバイスは、定量ポンプと流体連通しているバイアルをさらに含む。
【0008】
さらに別の態様では、直列形経鼻送達デバイスは、定量ポンプをバイアルに固定するポンプ取付具をさらに含む。
【0009】
別の実施態様では、化合物の鼻腔内送達のための直列形経鼻送達デバイスが示されかつ説明され、このデバイスは、先端、アクチュエータ、および用量チャンバを含むハウジングであって、該先端および該用量チャンバはハウジング内で流体連通しているハウジングと、該先端の遠位部分に位置するノズルであって、化合物のための出口を提供するノズルと、該用量チャンバと流体連通しているポンプであって、化合物を用量チャンバ内に移動させるためのポンプとを具備する。
【0010】
1つの態様では、直列形経鼻送達デバイスは、ハウジングと連通している推進剤キャニスタであって、推進剤弁を有しかつ用量チャンバと流体連通している推進剤キャニスタをさらに備える。
【0011】
別の態様では、直列形経鼻送達デバイスは、化合物を用量チャンバ内に移動させるためのポンプと協働する化合物のバイアルをさらに含む。
【0012】
別の態様では、直列形経鼻送達デバイスは、作動されると、化合物を用量チャンバ内に移動させるポンプを圧縮し、推進剤弁の作動が、化合物を押す推進剤を分散させて、化合物がノズル開口部を通ってデバイスから出ることを実現する。
【0013】
本発明は、任意の添付の図面と併せ、様々な実施態様に関する以下の詳細な説明を参照することにより、最も良く理解されるであろう。以下の論述は、記述的、例証的、かつ例示的なものであり、任意の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
上記の態様、および利点の多くは、添付の図面と併せ以下の詳細な説明を参照することによりそれらがよりよく理解されるにつれて、より容易に評価されるであろう。
図1】直列形経鼻送達デバイスの断面図である。
図2】休止および作動の段階における直列形経鼻送達デバイスの断面図である。(図2A)休止時の直列形経鼻送達デバイスを示す図である。(図2B)ポンプの作動を示す図である。(図2C)推進剤弁の作動を示す図である。
図3】直列形経鼻送達デバイスの別の実施態様の断面図である。
図4】デバイス内に着座される拡散器の断面図である。
図5A】組み立てられていない用量チャンバおよびy字形接合器の分解組立図である。
図5B】協働する用量チャンバおよびy字形接合器の分解組立図である。
図6】用量および推進剤の両方の流れを表す矢印を示す図である。
図7】アクチュエータグリップおよび円錐形ばね構成を示す図である。
図8】任意選択のノーズコーンの断面図、および任意選択のノーズコーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において商標が使用される場合、出願人は、商標製品および調合物、ジェネリック化合物、ならびに商標製品の医薬品有効成分を独立に含むことを意図する。
【0016】
開示を明確にするために、しかし、限定を目的とするのではなく、詳細な説明は以下のサブセクションに分割される。
【0017】
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、説明される方法、装置、および組成物に関係する当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において、以下の用語および句は、別段明記されない限り、それらに帰する意味を有する。
【0018】
「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。
【0019】
1つの実施態様では、直列形経鼻送達デバイス1は、鼻弁を越えて鼻腔内に化合物を送達し、かつ、鼻腔内に化合物を沈着させる。沈着は、鼻甲介領域および/または嗅覚領域を含む。送達される化合物は、液体である。化合物は、薬剤、医薬品有効成分、または医薬品製剤であり得る。送達される化合物は、一用量であり得る。
【0020】
図1に示されるように、直列形経鼻送達デバイス1は、ハウジング10、拡散器20、先端35、ノズル40、用量チャンバ45、アクチュエータ50、および、化合物を用量チャンバ45内に移動させるためのポンプ25を含む。1つの態様では、直列形経鼻デバイス1は、推進剤キャニスタ5、推進剤弁15、および、化合物を用量チャンバ45内に移動させるためのポンプ25と協働する化合物のバイアル30に結合し、かつ、それらと協働する。
【0021】
1つの態様では、拡散器20は、フリット(frit)21である。拡散器は、推進剤キャニスタ5内の液化推進剤の気体への変換、および/または推進剤の温度の上昇をもたらす。
【0022】
1つの態様では、推進剤弁15は、定量推進剤弁16である。
【0023】
1つの態様では、化合物は、多量の液体を収容する、例えばガラス製の密封されたバイアル30の形態で供給される。1つの態様では、バイアル30は、取り外し可能なクロージャ32(図示せず)によって密封されるネック31を有し、例えば、しかし限定されないが、プラスチック製カバー、圧着金属シール、およびゴム栓を用いて(安定性および滅菌の目的のために)密封される。1つの態様では、バイアル30は、医薬品有効成分を収容し得る。クロージャ32が取り外されると、デバイス1は、1つの態様では、バイアル30のネック31と協働することにより、バイアル30に係合される。ポンプ25が、化合物を用量チャンバ45内に移動させる。
【0024】
推進剤キャニスタ5は、圧縮気体または液化推進剤のキャニスタである。圧縮気体は、圧縮空気および圧縮炭化水素を含むが、これらに限定されない。1つの態様では、窒素または二酸化炭素である。液化推進剤は、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロアルカンを含むが、これらに限定されない。キャニスタ5は一般に、気体流を制御することができる推進剤弁15を備える。
【0025】
先端35は、ノズル40を含む。1つの態様では、ノズル40は、複数のノズル開口部41(図示せず)を有する。化合物および推進剤は、複数のノズル開口部41を通じて、鼻腔に送達される。
【0026】
推進剤キャニスタ5の作動は、化合物のためのバイアル30に対するポンプ25の作動と効率的に協調される。この構成は、化合物のためのバイアル30の作動が推進剤キャニスタ5の作動を生じさせるような構成とされ得る。図2は、休止時(図2A)および作動時(図2Bおよび2C)におけるデバイス1を示す。
【0027】
一例として、デバイス1の作動の段階分けは、以下の通りである。ハウジング10は、推進剤キャニスタ5を準備するために圧迫される。ハウジング10が圧迫されたときに、アクチュエータ50はハウジング10内で静止したままであるが、推進剤キャニスタ5およびバイアル30は、アクチュエータ50に向かって移動する。この時点では、推進剤キャニスタ5に結合された推進剤弁15は、圧迫によって作動されない。アクチュエータ50は、ポンプ25に作用してポンプ25を圧縮し、バイアル30からの化合物は、用量チャンバ45内に移動される。化合物の大部分が用量チャンバ45内に移動した後、アクチュエータ50は推進剤弁15に作用し、推進剤弁15は圧縮し始める。アクチュエータ50の押圧が続けられることにより、推進剤キャニスタ5から推進剤が放出される。推進剤は、先端35内に配置されたノズル40のノズル開口部41を通って化合物がデバイス1から出るときに、該化合物を押す。アクチュエータ50は、ポンプ25の最初の作動をもたらし、次いでポンプ25が底に達すると、アクチュエータ50の押圧が続けられることにより、キャニスタ5からの推進剤の放出がもたらされる。
【0028】
デバイス1の代替的実施態様(図示せず)では、デバイス1は、拡散器20を含まない。
【0029】
図3は、デバイス100のさらに別の実施態様を示す。デバイス100は、バイアル30または他の容器から、1回分または複数回分の用量を送達することができる。デバイス100は、複数回分の用量、または1回分の用量がバイアル30から送達されることを可能にする。例えば、バイアル30は、複数回の投与のための化合物の体積を収容することができ、一方で、使用者は、バイアル30から1回分の用量だけを送達することを決めることができる。化合物は、薬剤、医薬品有効成分、または医薬品製剤であり得る。
【0030】
最初に、バイアル30は、組み立てられたデバイス100の残りの部分とは別体とされ得る。使用時に、デバイス100およびバイアル30は、それらのそれぞれの包装から取り出される。使用に先立って、バイアル30は一般に、密封される。プラスチック製カバー、金属シール、および栓によりバイアル30が覆われる態様では、プラスチック製カバーおよび金属シールは、バイアル30の頂部から引き離され、ゴム栓は、バイアル30から取り除かれる。バイアル30は、デバイス100の基部に配置されたポンプ取付具180にねじ込まれ得る。例えば、これに限定されないが、バイアル30は、ポンプ取付具180上の雄ねじにねじ込まれ得る雌ねじを有してもよく、その逆でもよい。バイアル30は、例えば、これに限定されないが、端点を含めて2~3ml、別の態様では2~2.5mlの化合物を収容し得る。
【0031】
図3に示されるように、デバイス100は、ハウジング110を含む。ハウジング110は、y字形接合器120を含むデバイス100の構成要素を収容する。y字形接合器120は、共通の基部から放射状に延びる3つの枝路を有する。y字形接合器、およびその3つの枝路は、成形された構成要素であってもよい。y字形接合器120は、デバイス100内に流体および気体の両方の経路を構築し、かつ、推進剤キャニスタ140がデバイスと組み合わせられたときに、定量ポンプ130、用量チャンバ150、および推進剤キャニスタ140に接続する。
【0032】
図3に示されるように、デバイス100を使用するために、使用者は一般に、推進剤キャニスタ140を組み付けて上部に配置し、バイアル30を組み付けて底部に配置させた状態で、デバイス100を正しい向きに置く。デバイス100のハウジング110内に収容されると、任意選択の逆止弁160(定量ポンプ130のステムに取り付けられている)は、y字形接合器120の第1の枝路の受入ハブ内に圧入される。内部ボアが、定量ポンプ130から任意選択の逆止弁160およびy字形接合器120を経て用量チャンバ150への流体連通を提供する。1つの態様では、逆止弁160は、定量ポンプ130とy字形接合器120との間でプラスチック製ハウジング内に導入されるエラストマー構成要素である。任意選択の逆止弁160は、(a)ポンプステムが押圧され推進剤キャニスタ140が作動された場合に定量ポンプ130を通じて起こり得る用量漏れを軽減または排除し、(b)デバイス100による用量送達の一貫性の向上を可能にし、かつ/または、化合物がy字形接合器120の内部用量装填チャネル230が押し戻されて定量ポンプ130に入ることがないようにする。
【0033】
動作時に使用されるように配向されると、デバイス100の頂部に向かってデバイス100のハウジング110内に収容された推進剤キャニスタ140は、y字形接合器120の第2の枝路に圧入されて、内部ボアを通り拡散器170を経て用量チャンバ150に至る気体経路を構築する。
【0034】
デバイス100のこの実施態様では、拡散器170は環状である。図4に示されるように、環状拡散器170は、用量チャンバ150の後端にあるボアの内側に位置する。環状拡散器170の外径は、用量チャンバ150との圧縮嵌合状態にある。用量チャンバ150がy字形接合器120上に取り付けられると、y字形接合器120の一部分として成形された内部用量装填チャネル230が、環状拡散器170の内部ボア内に嵌合する。環状拡散器170の内径は、y字形接合器120の内部用量装填チャネル230部分との圧縮状態にある。環状拡散器170は、内部用量装填チャネル230の外壁と用量チャンバ150の内壁との間に着座されて、それらの表面の両方に対して封止して、用量チャンバ150の底部を形成する。
【0035】
1つの態様では、拡散器170は、フリット171である。拡散器170は、(a)推進剤キャニスタ140内の液化推進剤の気体への変換をもたらし、(b)推進剤の温度の上昇をもたらし、(c)推進剤がデバイス100内に逆流するのを防ぐ働きをし、(d)化合物がデバイス100内に逆流するのを防ぐ働きをし、かつ/または(e)化合物が漏出するのを防ぐと同時に用量チャンバ150へ気体の流入を可能にする働きをする。拡散器は、多孔質ポリマー材料で作られ得る。
【0036】
デバイス100の動作における化合物と環状の拡散器170と内側用量装填チューブ230と用量チャンバ150とy字形接合器120との間の関係性が、少なくとも図6に示されている。動作にあたっては、用量チャンバ150内に装填されている化合物は、制限のより少ないルートを通ってバイアル30から流れ出て、環状拡散器170を通ってy字形接合器120の推進剤の送達経路内へと後方に装填されるのではなく、用量チャンバ150を満たす。デバイス100の動作にあたっては、動作の段階分けおよびデバイスの動作に必要とされる時間により、環状拡散器170は、推進剤キャニスタ140が化合物装填後に作動されるように、必要とされる期間にわたって化合物がy字形接合器120内に逆流するのを制限することが可能になる。適切なデバイス100の使用中、定量ポンプ130および推進剤キャニスタ140を含むデバイス100の全体的な作動は、おおよそ1秒、または1秒未満である。用量チャンバ150内の装填された用量には、y字形接合器120内に逆流するに足りるほどの時間がない。用量チャンバ150が満ちるとすぐに、推進剤は、デバイス100から化合物を放出する。
【0037】
用量チャンバ150は、45度の角度をなすy字形接合器120の第3の脚上で、y字形接合器120に圧入されて、デバイスを通過する気体および流体の両方のための流路を完成させる。1つの態様では、角度は、端点および中間の角度を含め、30度、35度、40度、45度、50度、55度、60度である。
【0038】
y字形接合器120は、デバイス100のハウジング110内での組立体の固定および位置決めの助けとなるように、係合リブ(engagement rib)(図示せず)を含み得る。
【0039】
デバイス100は、ポンプ取付具180を含む。ポンプ取付具180は、定量ポンプ130をバイアル30に固定し、かつ、デバイス100の使用中に両方の構成要素を所定の位置に保持する。ポンプ取付具180の1つの態様は、それが係合リブからなるものであり、係合リブは、それをハウジング110内に保持し、垂直方向の変位を提供し、かつ、バイアル30の取り付け中に回転を防止する。
【0040】
デバイス100は、用量チャンバ150を含む。用量チャンバ150は、y字形接合器120の内側チューブから押し出された化合物を受容しかつ貯蔵する。推進剤キャニスタ140が作動されると、y字形接合器120および用量チャンバ150は加圧され、推進剤気体は、化合物を用量チャンバ150から放出する。図5Aおよび5Bに示されるように、用量チャンバ150は、y字形接合器120内に圧入される。ノズル190は、それがy字形接合器120内に圧入されるのとは反対側の用量チャンバ150の端部内に取り付けられる。
【0041】
ノズル190は、用量チャンバ150の遠位端部(用量チャンバ150がy字形接合器120内に圧入されるのとは反対側の端部)内に取り付けられて、外径の周りに液密および気密のシールを形成する。デバイス100の作動中、推進剤は用量チャンバ150から液体化合物を抜いて、それをノズル190から押し出す。
【0042】
ノズル190は、狭い噴煙角度(plume angle)(例えば、端点およびそれらの間の断続的な角度を含めて1から40度の角度であり、1つの態様では、角度は、5度、10度、15度、20度、25度、30度、35度である)の多流沈着(multi-stream deposition)を形成する。ノズル190、および生成される噴煙の得られる角度は、使用者の鼻腔の嗅覚領域への化合物の送達を促進する。
【0043】
この実施態様では、図8に示されるように、デバイス100は、任意選択のノーズコーン200を含み得る。ノーズコーン200の外的な幾何形状は、鼻への挿入中にデバイス100の適切な位置合わせを提供するのに役立つ。直径方向に向かい合った平坦面は、正確な挿入深さを提供する深さ止めとともに、どちらかの鼻孔の隔壁に対する配置を支援する。ノーズコーン200は、設計に取り入れられた機械的干渉を通じて、ノズル190の保持に冗長性を付加する。図3および図8に示されるように、ノーズコーン200には、ノズル190と一列に並ぶ開口部が存在する。ノーズコーン200は、加圧される流路の一部ではない。
【0044】
ハウジング110は、デバイス100の本体に相当する。ハウジング110は、デバイス100の構成要素を隠しかつ全ての構成要素を保持して機能性を保証する、2つの異なる「クラムシェル」を含む。ハウジング110は、定量ポンプ130およびポンプ取付具180、アクチュエータグリップ210、y字形接合器120、推進剤キャニスタ140、ならびに用量チャンバ150を収容する。ノーズコーン200は、ハウジング110の外側幾何形状上に係合する。ハウジング110は、例えば、これらに限定されないが、幾何形状内に成形されたマテルピン、留め具、柱もしくはねじ、またはそれらの組合せの使用を通じて容易に組み立てられるように設計される。
【0045】
アクチュエータグリップ210は、使用者による作動変位(actuation displacement)を提供する。アクチュエータグリップ210は、2つの部品、アクチュエータグリップAおよびアクチュエータグリップBで構成され、かつ、y字形接合器120を取り囲みハウジング110内に常駐する。図7は、使用者が指で、例えば、しかし限定されるのでなしに、人差し指および中指でデバイス100に係合することを可能にするようにアクチュエータグリップ210に設計された、2つの指グリップノッチ215を示す。これらの指グリップノッチ215は、使用者が下向きの動きを加えてデバイス100の作動を引き起こすことを可能にする。
【0046】
定量ポンプ130は、化合物をバイアル30からy字形接合器120へくみ上げる。定量ポンプ130は、特注のポンプ取付具180を利用して、デバイス100内での機能性を高めるとともにねじ山を介したバイアル30の取付けを可能にすることができる。定量ポンプ130は、例えば、これらに限定されないが、作動中に180μl、200μl、または230μlの体積を送達することができる。市販されている定量ポンプ130が使用され得る。
【0047】
デバイス100が化合物を一貫して送達するために、定量ポンプ130が最初に化合物を送達し、続いて推進剤キャニスタ140が作動して化合物を放出する必要がある。図7に示されるように、これを達成する1つの方法は、推進剤キャニスタ140とy字形接合器120との間の円錐形ばね220を介して、定量ポンプ130と推進剤キャニスタ140との間の正しい作動の順序をもたらすのに必要とされる推進剤キャニスタ140の作動力を生じさせるものである。1つの実施態様では円錐形ばね220が使用されるが、この力は円錐形ばね220によって生成されることに限定されるのではなく、他の機構が使用されてもよい。1つの態様では、円錐形ばね220は、約25.5lbf/in(約11.567kgf/2.54cm)のk値および3.2lbf(約1.451kgf)の最大荷重を伴って、ほぼゼロの予荷重を有する。ばねまたは機構の選択は、(a)適切なデバイス100の段階分けを実現すること、(b)デバイス100内の物理的空間、および/または(c)円錐形ばね220のどの程度の硬さにより様々な使用者がデバイス100を作動させることがなおも可能となるかに関する使用者フィードバックについての考慮を含む。
【0048】
円錐形ばね220は、推進剤キャニスタ140とy字形接合器120との間に直線的に取り付けられる。アクチュエータグリップ210は、推進剤キャニスタ140を物理的に保持する。使用者は、例えば、アクチュエータグリップ210から下方に作用するまたはバイアル30から上方に作用する直線的な力を加えることにより、デバイス100を作動させる。この力は、定量ポンプ130および推進剤キャニスタ140の両方を作動させるように同時に作用する。円錐形ばね220は、内部の推進剤キャニスタばねと並行して作用して、推進剤キャニスタ140を作動させるのに必要とされる必須の力を増大させる。推進剤キャニスタ140を作動させるのに必要とされる必須の力が定量ポンプ130を完全に作動させるのに必要とされる最大の必須の力を超えるように円錐形ばね220を選択することにより、デバイス100は、推進剤気体が化合物をデバイス100から放出し始める前に用量チャンバ150内に用量が装填されることを実現する。
【0049】
デバイス100の作動中、定量ポンプ130は、デバイス100の底部にあるバイアル30から、y字形接合器120を介して内部用量装填チャネル230を経て用量チャンバ150内へ、液体化合物をくみ上げる。内部用量装填チャネル230は、化合物が環状拡散器170の多孔質材料を物理的に通過することを必要とすることなく環状拡散器170の前方に装填されるための明瞭なルートを提供する。図6に示されるように、小矢印頭部は、推進剤の流れを表し、大矢印頭部は、化合物の流れを表す。使用者が投与するのに先だって、定量ポンプ130およびy字形接合器120の内部用量装填チャネル230を完全に満たすために、プライミングショット(priming shot)が必要とされ得る。投与キャップ(図示せず)が、デバイス100のノーズコーン200を覆ってプライミングショットを捕捉すると同時に、デバイスがプライミングされたことを示す使用者への可視指示の手段を提供してもよい。
【0050】
デバイス100の作動の第2の段階では、用量チャンバ150が満たされると、推進剤キャニスタ140は、推進剤を放出し、推進剤は、y字形接合器120の頂部から入って、図6において白抜き矢印頭部によって示された経路を辿る。推進剤は、推進剤の気化を促進する環状拡散器170の多孔質材料を物理的に流れる。推進剤は、デバイス100内に着座された環状拡散器150の遠位の(遠位は、ノズル190により近いことであり、近位は、ノズル190からより遠いことである)面において、最初に化合物に接触する。推進剤が膨張し続けるにつれて、それは、化合物を用量チャンバ150内で前方に(ノズル190に向かって)押し、用量チャンバ150の端部においてノズル190から出る。
【0051】
推進剤キャニスタ140は、デバイス100に推進エネルギーを提供する。推進剤弁のステムは、y字形接合器120の頂部受容部内に着座する。使用中、使用者は、アクチュエータグリップ210押し下げ、それが推進剤キャニスタ140の本体を引き下げて、推進剤弁を作動させる。これが、定量の液体推進剤を放出する。推進剤が気化しかつ膨張するにつれて、化合物は、用量チャンバ150の外へ押し出されて、ノズル190を通して外へ押し出される。
【0052】
推進剤の例として、これに限定されないが、推進剤キャニスタ140は、システムのための推進剤としてHFA134Aを使用する。他の推進剤も想定される。市販の推進剤キャニスタ140が存在する。
【0053】
デバイス100、推進剤キャニスタ140、およびバイアル30は、全て、キット内に一緒に含まれるかまたは提供されてもよい。
【実施例1】
【0054】
以下の表は、本明細書に記載のデバイスの1つの実施態様に関するデータを提供する。
【0055】
【表1】
【0056】
以下の条項は、本開示に記載の特徴を実施するための複数の可能な実施形態を説明した。本明細書に記載の様々な実施形態は、限定するものではなく、任意の所与の実施形態からのあらゆる特徴も、別の実施形態に存在することを必要とされるものではない。文脈が特に明確に示していない限り、実施形態のうちの任意の2つ以上が組み合わせられてもよい。本明細書において、この文書では「または(or)」は、および/または(and/or)を意味する。例えば、「AまたはB」は、Bを含まないA、Aを含まないB、または、AおよびBを意味する。本明細書において、「備える(comprising)」は、挙げられた全ての特徴を含むこと、および、挙げられていない他の特徴の追加を潜在的に含むことを意味する。「本質的に・・・からなる(Consisting essentially of)」は、挙げられた特徴と、挙げられた特徴の基本的な特性および新規の特性に実質的に影響を及ぼさないそれらの追加の特徴とを含むことを意味する。「・・・からなる(Consisting of)」は、挙げられていないいかなる特徴をも除外して、挙げられた特徴のみを意味する。
【0057】
条項1。化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
基部、基部から放射状に延びるy字形接合器の第1の枝路、基部から放射状に延びるy字形接合器の第2の枝路、基部から放射状に延びるy字形接合器の第3の枝路、およびy字形接合器の内部用量装填チャネルを含むy字形接合器と、
y字形接合器の第1の枝路と流体連通している定量ポンプと、
y字形接合器の第2の枝路に結合する円錐形ばねと、
y字形接合器の第3の枝路と流体連通している用量チャンバと、
用量チャンバに結合するノズルと、
内部用量装填チャネルと用量チャンバとの間の拡散器と、
y字形接合器を取り囲むアクチュエータグリップと、
y字形接合器が内在するハウジングと
を備えるデバイス。
【0058】
条項2。y字形接合器の第2の枝路と流体連通しかつアクチュエータグリップによって保持される推進剤キャニスタをさらに備え、円錐形ばねは推進剤キャニスタとy字形接合器の第2の枝路との間に位置する
条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0059】
条項3。定量ポンプと流体連通しているバイアルをさらに備える条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0060】
条項4。定量ポンプをバイアルに固定するポンプ取付具をさらに備える条項3に記載のデバイス。
【0061】
条項5。定量ポンプとy字形接合器との間に結合する逆止弁をさらに含む条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0062】
条項6。ハウジングに係合しているノーズコーンをさらに含む条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0063】
条項7。ノーズコーンを覆う投与キャップをさらに備える条項6に記載のデバイス。
【0064】
条項8。y字形接合器の第3の枝路はy字形接合器の基部から45度の角度にある条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0065】
条項9。拡散器は環状である条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0066】
条項10。拡散器は多孔質材料である条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0067】
条項11。拡散器は用量チャンバの底を形成する条項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス。
【0068】
条項12。化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
先端、アクチュエータ、および用量チャンバを含むハウジングであって、先端および用量チャンバはハウジング内で流体連通しているハウジングと、
先端の遠位部分に位置するノズルであって、化合物のための出口を提供し、複数のノズル開口部を含むノズルと、
用量チャンバと流体連通しているポンプであって、アクチュエータが作動したとき化合物を用量チャンバ内に移動させるためのポンプと
を備えるデバイス。
【0069】
条項13。ハウジングに結合する推進剤キャニスタをさらに備え、推進剤キャニスタは、アクチュエータによって作動される推進剤弁を有し、推進剤キャニスタは、用量チャンバと流体連通している条項12乃至15のいずれか一項に記載のデバイス。
【0070】
条項14。化合物をバイアルから用量チャンバ内に移動させるためのポンプに結合する化合物のバイアルをさらに備える条項12乃至15のいずれか一項に記載のデバイス。
【0071】
条項15。拡散器をさらに含む条項12乃至15のいずれか一項に記載のデバイス。
【0072】
条項16。鼻腔の嗅覚領域への化合物の鼻腔内送達のためのデバイスであって、
先端、アクチュエータ、および用量チャンバを含むハウジングであって、先端および用量チャンバはハウジングと流体連通しているハウジングと、
先端の遠位部分に位置するノズルであって、化合物のための出口を提供し、複数のノズル開口部を含むノズルと、
用量チャンバと流体連通しているポンプであって、アクチュエータが作動したとき化合物を用量チャンバ内に移動させるためのポンプと、
ハウジングと結合する推進剤キャニスタであって、アクチュエータによって作動される推進剤弁を有し、用量チャンバと流体連通している推進剤キャニスタと、
化合物をバイアルから用量チャンバ内に移動させるためのポンプに結合する化合物のバイアルと
を備え、
アクチュエータは、デバイスが作動したとき、化合物を用量チャンバ内に移動させるポンプを圧縮し、推進剤弁の作動が、化合物を押す推進剤を分散させて、化合物が複数のノズル開口部を通ってデバイスから出ることを実現するデバイス。
【0073】
条項17。条項1乃至16のいずれか一項に記載のデバイス、推進剤キャニスタ、およびバイアルを含むキット。
【0074】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施態様による範囲に限定されるものではない。実際には、上記の説明および添付の図面から、本発明の様々な修正形態が、本明細書に記載のものに加えて当業者には明らかになるであろう。そのような修正形態は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8