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▶ ホオキパ バイオテック ジーエムビーエイチの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】CMVワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20220128BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220128BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220128BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20220128BHJP
   C07K 14/045 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N7/01
A61K39/245
A61K35/76
A61P31/22
A61P37/04
C12N15/38
C07K14/045
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020218641
(22)【出願日】2020-12-28
(62)【分割の表示】P 2016536893の分割
【原出願日】2014-12-03
(65)【公開番号】P2021061848
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】61/911,135
(32)【優先日】2013-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/055,699
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518408774
【氏名又は名称】ホオキパ バイオテック ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】クラウス オルリンゲル
(72)【発明者】
【氏名】カレン リングナウ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス モナス
(72)【発明者】
【氏名】ファルシャド グイラクホオ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルド フフルマンン
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン コヘン
(72)【発明者】
【氏名】ベラ バウムガルトル‐ストラスセル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アスペック
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ カイネル
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルド ブリム
(72)【発明者】
【氏名】ベティナ キエフマンン
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アイストレイトフネル
(72)【発明者】
【氏名】カタリナ バイエル
(72)【発明者】
【氏名】エルサ ミュールバッヒャー
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-507536(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054199(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/049317(WO,A2)
【文献】HARTIKKA J. et al.,Human Vaccines & Immunotherapeutics,2012年,8(11),p.1595-1606
【文献】FLATZ L. et al.,Nature Medicine,2010年,16(3),p.339-345
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
C07K 19/00
C12N 7/01
A61K 39/245
A61K 35/76
A61P 31/22
A61P 37/04
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメガロウイルス感染を治療又は予防するための医薬の製造における感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターの使用であって、該アレナウイルスウイルスベクターは、感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産生することができず、かつ、Sセグメント内の糖タンパク質(GP)をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、
(i).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;
(ii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;
(iii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;又は
(iv).サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
によって置き換えられている、前記使用。
【請求項2】
(i).前記アレナウイルスがリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに由来するか、又は
(ii).前記アレナウイルスがリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13株に由来する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記GPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列によって置き換えられており、かつ、該糖タンパク質gBが、細胞質ドメインの欠失を有する、請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項3記載の使用。
【請求項6】
前記GPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている、請求項1又は2記載の使用。
【請求項7】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項6記載の使用。
【請求項9】
前記医薬が、
(i).筋肉内注射に好適であるか、
(ii).前記ヌクレオチド配列によってコードされるCMV抗原に対する長期持続性免疫応答を誘導するか、又は
(iii).先天性CMV感染を防御するのに好適である、請求項1~8のいずれか一項記載の使用。
【請求項10】
サイトメガロウイルス感染を治療又は予防するための医薬の製造における第1の感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクター及び第2の感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターの使用であって、該第1のウイルスベクターは、感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産生することができず、かつ、Sセグメント内のGPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、
(i).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;
(ii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列; 又は
(iii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列
によって置き換えられており、
かつ、該第2のウイルスベクターは、感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産生することができず、かつ、Sセグメント内のGPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている、前記使用。
【請求項11】
(i).前記第1のアレナウイルスウイルスベクター、前記第2のアレナウイルスウイルスベクター、又は両方が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに由来するか、又は
(ii).前記第1のアレナウイルスウイルスベクター、前記第2のアレナウイルスウイルスベクター、又は両方が、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13株に由来する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記第1のアレナウイルスウイルスベクターの前記GPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列によって置き換えられており、かつ、該糖タンパク質gBが、細胞質ドメインの欠失を有する、請求項10又は11記載の使用。
【請求項13】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記第2のアレナウイルスウイルスベクターの前記GPタンパク質をコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている、請求項10又は11記載の使用。
【請求項16】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項15記載の使用。
【請求項18】
前記医薬が、
(i).筋肉内注射に好適であるか、
(ii).前記ヌクレオチド配列によってコードされるCMV抗原に対する長期持続性免疫応答を誘導するか、又は
(iii).先天性CMV感染を防御するのに好適である、請求項10~17のいずれか一項記載の使用。
【請求項19】
アレナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸を含む宿主細胞であって、該アレナウイルスゲノムセグメントが短い(S)セグメントであり、かつ、糖タンパク質(GP)をコードする該Sセグメント内のオープンリーディングフレームが除去され、かつ、
(i).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;
(ii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;
(iii).サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列であって、該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが欠失されている、前記ヌクレオチド配列;又は
(iv).サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
によって置き換えられている、前記宿主細胞。
【請求項20】
(i).前記アレナウイルスゲノムセグメントがリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに由来するか、又は
(ii).前記アレナウイルスゲノムセグメントがリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13株に由来する、請求項19記載の宿主細胞。
【請求項21】
前記GPをコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列によって置き換えられており、かつ、該糖タンパク質gBが、細胞質ドメインの欠失を有する、請求項19又は20記載の宿主細胞。
【請求項22】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項21記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記サイトメガロウイルス糖タンパク質gBが、配列番号18と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項21記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記GPをコードするアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ、サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている、請求項19又は20記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項24記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65が、配列番号36と100%同一であるアミノ酸配列からなる、請求項24記載の宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年12月3日に出願された米国仮出願第61/911,135号及び2014年9月26日に
出願された米国仮出願第62/055,699号からの優先権の恩典を主張する。これらは両方とも
、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
(1.序論)
本発明は、サイトメガロウイルス感染及び再活性化の予防及び治療のためのワクチンと
して好適な遺伝子改変アレナウイルスに関する。本発明はまた、サイトメガロウイルス感
染及び再活性化の治療のための医薬組成物及び方法に関する。具体的に、本明細書に提供
されるのは、サイトメガロウイルス感染及び再活性化を治療する医薬組成物、ワクチン、
及び方法である。
【0003】
(2.背景)
(2.1 医学的必要性)
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、健常個体において慢性的な不顕性の無症候性感染
を一般に引き起こす遍在性ベータ-ヘルペスウイルスであり、先進諸国の全体的な年齢調
整CMV血清陽性率は50%を超える(Bateらの文献、Clin. Infect. Dis., 2010, 50(11):143
9; La Rosa及びDiamondの文献、Future Virol., 2012, 7(3):279)。しかしながら、免疫
不全患者、とりわけ、移植レシピエント、HIV感染者、及び先天性感染新生児において、C
MVは、顕著な罹病率及び死亡率を生じさせ、それゆえ、重大な公衆衛生問題を提起する。
【0004】
HCMV感染は、先進諸国における先天性ウイルス感染の最も一般的な原因である。年に約
40,000人の先天性感染新生児が米国で誕生する。先天性CMV感染は、広範囲の神経発達障
害を引き起こすことができ、これは、子供の聴力損失の最も一般的な感染原因を示す。HC
MVの公衆衛生への大きな影響は、より多くの子供が、ダウン症又は胎児性アルコール症候
群のどちらかよりも先天性CMV感染の結果としての長期後遺症に苦しむという事実によっ
て示される(Cannonらの文献、BMC Public Health, 2005, 5:70)。
【0005】
周産期感染症としてのその影響に加えて、HCMVは、肺炎、肝炎、胃腸潰瘍、網膜炎、及
び死をもたらす、移植患者における感染性合併症の重大な原因でもある。現在、これらの
重篤な形態の末端器官疾患は、ほとんどの場合、抗ウイルス薬による先行療法のコスト集
約的な常用によって予防することができるが、CMV感染の後期の再活性化は依然として問
題である。さらに、CMVは、移植拒絶反応、心臓もしくは肺移植後のアテローム性動脈硬
化症の加速、又は免疫抑制などの間接的な作用を引き起こす。
【0006】
さらに、CMV感染及び/又は再活性化は、HIV患者及び集中治療室に入院した患者の死亡
率とも顕著に関連する。
【0007】
(2.2 HCMV免疫及びワクチン開発)
先天性CMVの公衆衛生への顕著な影響は、米国医学研究所が、その最近の報告書である
「21世紀のワクチン(Vaccines for the 21st Century)」において、CMVワクチンの開発を
最優先事項として位置付けるという結果につながった。ワクチン開発努力は、数十年間続
けられているが;これまでのところ、認可された利用可能なCMVワクチンはない。CMVの疫
学及び伝播の理解に依然として決定的な不足があるので、効果のあるワクチンの開発は困
難であることが分かっている。
【0008】
CMVに対する免疫がある程度の防御を提供し、無症候性感染の維持に本質的な役割を果
たしている健常な免疫適格宿主では、CMVが疾患を誘発することは滅多にない。しかしな
がら、ヒト免疫系は感染を除去することができず、CMVは、通常、宿主免疫があるにもか
かわらず、終生存続することができる慢性感染を確立する。対照的に、抑制されないCMV
ウイルス血症及び生命を脅かす症状は、免疫抑制後、及び未成熟宿主において容易に生じ
る。
【0009】
様々な技術に基づくいくつかのワクチン候補が臨床試験で既に検討されている。ワクチ
ン接種による部分的防御は、CMV特異的抗体応答を誘導する弱毒化生ワクチン候補と糖タ
ンパク質ワクチン候補の両方で立証されている。抗体の受動免疫も、いくらかの防御を提
供することが示されている。しかしながら、不顕性感染が確立されてしまうと、再活性化
及び疾患を制御するために、CMV特異的T細胞の強い誘導が必要となるように思われる。
【0010】
(2.3 HCMVワクチン抗原)
いくつかのデータから、宿主細胞へのCMVの侵入を阻害する中和抗体が、水平的及び垂
直的なウイルス伝播の予防に重要な役割を果たすことが示されている。線維芽細胞感染の
中和に基づく研究により、主要エンベロープ糖タンパク質B(gB)が中和抗体の有力な標的
の1つとして規定された。ヒトCMVワクチン候補へのgBの組み入れは、MF59アジュバントと
組み合わせたgBに基づくサブユニットワクチンが、血清陰性女性において部分的防御を付
与することができることを示す臨床第II相データによってさらに支持される(Passの文献
、J. Clin. Virol., 2009, 46(Suppl 4):S73; Passらの文献、N. Eng. J. Med., 2009, 3
60(12):1191)。
【0011】
組換えgBに基づくワクチン候補は、HCMV感染を予防する高力価の中和抗体を誘発するが
、他のHCMV抗原は、上皮細胞及び内皮細胞などの特定の細胞型のHCMV感染を阻害するより
高力価の抗体を誘発することができる。HCMV感染の効果的な予防のためのワクチン戦略は
、様々な細胞型へのウイルス侵入を阻害する強力な中和抗体を誘導する能力に左右される
可能性が高い。最近の研究により、糖タンパク質gH/gL(UL75/UL115)、UL128、UL130、及
びUL131Aによって形成される五量体複合体が、上皮細胞及び内皮細胞へのHCMV侵入に必要
とされ、かつHCMV血清陽性個体における強力な中和抗体の標的であることが示された(Ryc
kmanらの文献、J. Virol., 2008, 82(1):60; Wang及びShenkの文献、Proc. Natl. Acad.
Sci. USA, 2005, 102:18153; Wussowらの文献、J. Virol., 2013, 87(3):1322)。
【0012】
細胞傷害性T細胞によって媒介されるCMV疾患に対する防御の誘導のための潜在的ワクチ
ン抗原は、免疫優勢CD8+ T細胞抗原であるテグメントタンパク質pp65である(Willsらの文
献、J. Virol., 1996, 70(11):7569)。pp65特異的CD8+ T細胞の頻度は、移植患者におけ
るCMVの免疫制御と関連付けられており(Pipelingらの文献、J. Infect. Dis., 2011, 204
(11):1663)、pp65特異的T細胞の養子移入(adaptive transfer)は、造血幹細胞移植レシピ
エントにおける治療的有用性を有するように思われる(Peggsらの文献、Clin Infect Dis
2011, 52(1):49; Einseleらの文献、Blood, 2002, 99(11):3916; Micklethwaiteらの文献
、Blood, 2008, 112(10):3974)。まとめると、これらの知見は、移植患者においてCMV疾
患を予防するように設計されたCMVワクチンがpp65の組み入れを必要とすることを示唆し
ている。
【発明の概要】
【0013】
(3.発明の概要)
本発明は:
a.CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
g.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む感染性複製欠損アレナウイルスウイル
スベクターに関する。
【0014】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性である、す
なわち、宿主細胞に侵入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入することができる。
あるより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性
である、すなわち、宿主細胞に侵入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入し、その
後、宿主細胞内部でその遺伝情報を増幅し、それを発現させることができる。
【0015】
ある実施態様において、CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片は、配列番号3、配列番
号6、配列番号9、配列番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号21、配列番号24、配列
番号27、及び配列番号30、配列番号60、及び配列番号63から選択される。ある実施態様に
おいて、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、
400、450、500、600、700、800、又は少なくとも900アミノ酸長である。ある実施態様に
おいて、該断片は、それが、(i)宿主(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、もしくはロバ)に
おける抗体免疫応答を誘発し(ここで、得られる抗体は、ヒトCMV糖タンパク質gBに特異的
に結合する);及び/又は(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発することができる場合、抗原性で
ある。
【0016】
ある実施態様において、該gB抗原は、配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列番号12
、配列番号15、配列番号18、配列番号21、配列番号24、配列番号27、配列番号30、配列番
号60、及び配列番号63から選択されるgB抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、
84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0017】
ある実施態様において、該pp65抗原は、配列番号36のpp65抗原又は抗原性断片と80%、
81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実
施態様において、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、100、150、200、250、30
0、350、400、450、又は少なくとも500アミノ酸長である。ある実施態様において、該断
片は、それが、(i)宿主(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、もしくはロバ)における抗体免
疫応答を誘発し(ここで、得られる抗体は、ヒトCMV pp65に特異的に結合する);及び/又は
(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発することができる場合、抗原性である。
【0018】
ある実施態様において、該糖タンパク質gHは、配列番号39及び配列番号52から選択され
る糖タンパク質gH又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、
88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100
%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、該抗原性断片は、少なくとも
10、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、又は少な
くとも750アミノ酸長である。ある実施態様において、該断片は、それが、(i)宿主(例え
ば、マウス、ウサギ、ヤギ、もしくはロバ)における抗体免疫応答を誘発し(ここで、得ら
れる抗体は、ヒトCMV糖タンパク質gHに特異的に結合する);及び/又は(ii)特異的T細胞免
疫応答を誘発することができる場合、抗原性である。
【0019】
ある実施態様において、該糖タンパク質gLは、配列番号41の糖タンパク質gL又は抗原性
断片と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を
含む。ある実施態様において、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、100、150、
200、250、又は少なくとも300アミノ酸長である。ある実施態様において、該断片は、そ
れが、(i)宿主(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、もしくはロバ)における抗体免疫応答を
誘発し(ここで、得られる抗体は、ヒトCMV糖タンパク質gLに特異的に結合する);及び/又
は(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発することができる場合、抗原性である。
【0020】
ある実施態様において、該UL128は、配列番号43のUL128又は抗原性断片と80%、81%、
82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様
において、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、100、少なくとも150アミノ酸長
である。ある実施態様において、該断片は、それが、(i)宿主(例えば、マウス、ウサギ、
ヤギ、もしくはロバ)における抗体免疫応答を誘発し(ここで、得られる抗体は、ヒトCMV
UL128に特異的に結合する);及び/又は(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発することができる
場合、抗原性である。
【0021】
ある実施態様において、該UL130は、配列番号46のUL130又は抗原性断片と80%、81%、
82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態様
において、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、100、150、200、少なくとも250
アミノ酸長である。ある実施態様において、該断片は、それが、(i)宿主(例えば、マウス
、ウサギ、ヤギ、もしくはロバ)における抗体免疫応答を誘発し(ここで、得られる抗体は
、ヒトCMV UL130に特異的に結合する);及び/又は(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発するこ
とができる場合、抗原性である。
【0022】
ある実施態様において、該UL131Aは、配列番号48のUL131A又は抗原性断片と80%、81%
、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある実施態
様において、該抗原性断片は、少なくとも10、25、50、75、少なくとも100アミノ酸長で
ある。ある実施態様において、該断片は、それが、(i)宿主(例えば、マウス、ウサギ、ヤ
ギ、もしくはロバ)における抗体免疫応答を誘発し(ここで、得られる抗体は、ヒトCMV UL
131Aに特異的に結合する);及び/又は(ii)特異的T細胞免疫応答を誘発することができる場
合、抗原性である。
【0023】
ある実施態様において、該ウイルスベクターは:
a.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
e.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
のうちの少なくとも2つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される2つのヌクレオチド
配列は、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる。
【0024】
ある実施態様において、該ウイルスベクターは:
a.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
e.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列,
のうちの少なくとも3つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される3つのヌクレオチド
配列は、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる。
【0025】
ある実施態様において、該ウイルスベクターは:
a.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
e.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列,
のうちの少なくとも4つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される4つのヌクレオチド
配列は、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる。
【0026】
ある実施態様において、該ウイルスベクターは:
a.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
e.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列,
を含み、ここで、上記のa.~e.の5つのヌクレオチド配列は、「リボソームスキッピング
」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断ペプチドもしくはアミノ酸配列又は
リボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、「内部リボソ
ーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によって隔てられる。
【0027】
ある実施態様において、該自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピング配列)は、ピ
コルナウイルス科というウイルスファミリーのメンバー由来の2Aタンパク質から得ること
ができる。ある具体的な実施態様において、該自己切断ペプチド(又はリボソームスキッ
ピング配列)は、豚テシオウイルス-1 2A、トセアアシグナウイルス2A、又は口蹄疫ウイル
ス2Aペプチドから得られる(又はこれらに由来する)。
【0028】
ある実施態様において、該アレナウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)は、
欠失しているか又は機能的に不活化されている。具体的な実施態様において、該アレナウ
イルスの糖タンパク質GPをコードするORFは、欠失しているか又は機能的に不活化されて
いる。ある実施態様において、遺伝子の機能的不活化は、翻訳産物を消失させる。ある実
施態様において、機能的不活化は、多少の翻訳を可能にする遺伝子改変を指すが、翻訳産
物はもはや機能的ではなく、野生型タンパク質に取って代わることができない。
【0029】
ある実施態様において、該ウイルスベクターは、該ウイルスベクターに感染している細
胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させることができるが、該ウイルスベクターは、
非相補細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産生することができない。ある実施態様におい
て、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性である、すなわち、宿主細胞に侵
入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入することができる。あるより具体的な実施
態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性である、すなわち、宿
主細胞に侵入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入し、その後、宿主細胞内部でそ
の遺伝情報を増幅し、それを発現させることができる。
【0030】
ある実施態様において、該感染性複製欠損アレナウイルス粒子をコードするゲノム情報
は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)クローン13株又はLCMV MP株に由来する。クロ
ーン13のSセグメント及びLセグメントのヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号32及び
33に示されている。
【0031】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、クローン13ゲノムのORF(例えば、
GPタンパク質のORF)を欠失させ、それを、残りのLCMVゲノムが、クローン13のヌクレオチ
ド配列(配列番号32及び33)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87
%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも
99%、又は100%同一となるように、抗原(例えば、CMV抗原)をコードする異種ORFと置き
換えることにより、そのゲノムが、クローン13のゲノム(配列番号32及び33)に由来する又
は由来しているウイルスベクターである。
【0032】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、LCMV株MPゲノムのORF(例えば、GP
タンパク質のORF)を欠失させ、それを、残りのLCMVゲノムが、LCMV株MPのヌクレオチド配
列(配列番号49及び53)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、
88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%
、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、少なくとも99.9
%又は100%同一となるように、抗原(例えば、CMV抗原)をコードする異種ORFと置き換え
ることにより、そのゲノムが、LCMV株MPのゲノム(配列番号49及び53)に由来しているウイ
ルスベクターである。
【0033】
より具体的な実施態様において、該ウイルスベクターは、配列番号31のヌクレオチド16
39~3315又は配列番号32の1640~3316の配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%
、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、少なくとも99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含むゲノムセグメント
を含む。ある実施態様において、該ウイルスベクターは、そのアミノ酸配列が、配列番号
31の1639~3315又は配列番号32の1640~3316によってコードされるアミノ酸配列と少なく
とも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%
、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一である発現産
物をコードするヌクレオチド配列を含むゲノムセグメントを含む。
【0034】
本発明はまた、CMV糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列を含む感染性複製欠
損アレナウイルス粒子に関するものであり、ここで、該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン
は欠失している。具体的な実施態様において、gBの細胞質ドメインは欠失している。他の
具体的な実施態様において、gBの細胞質ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメインと
置換されている。さらに他の具体的な実施態様において、gBの細胞質ドメイン及び膜貫通
ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインと置換されている。あ
る実施態様において、該異種タンパク質は、水疱性口内炎ウイルス(Vesicular Stomatiti
tis Virus)(VSV)のGタンパク質又はインフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質であ
る。ある実施態様において、該アレナウイルスの増殖又は感染力は、異種アミノ酸によっ
て影響されない。具体的な実施態様において、gBタンパク質の膜貫通ドメインは欠失して
いる。
【0035】
また本明細書に提供されるのは、CMV糖タンパク質gB又はその断片及び異種ポリペプチ
ドを含む融合タンパク質をコードする核酸である。ある実施態様において、該糖タンパク
質gBの細胞質ドメインは欠失している。ある実施態様において、該糖タンパク質gBの細胞
質ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメインと置換されている。さらに他の具体的な
実施態様において、gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、異種タンパク質の細胞質
ドメイン及び膜貫通ドメインと置換されている。ある実施態様において、該異種タンパク
質は、VSVのGタンパク質又はインフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質である。あ
る実施態様において、gBタンパク質の膜貫通ドメインは欠失している。
【0036】
また本明細書に提供されるのは、CMV糖タンパク質gB又はその断片及び異種ポリペプチ
ドを含む融合タンパク質である。ある実施態様において、該糖タンパク質gBの細胞質ドメ
インは欠失している。ある実施態様において、該糖タンパク質gBの細胞質ドメインは、異
種タンパク質の細胞質ドメインと置換されている。さらに他の具体的な実施態様において
、gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫
通ドメインと置換されている。ある実施態様において、該異種タンパク質は、VSVのGタン
パク質又はインフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質である。ある実施態様におい
て、gBタンパク質の膜貫通ドメインは欠失している。
【0037】
また本明細書に提供されるのは、単離された核酸であって、該核酸がアレナウイルスゲ
ノムセグメントをコードし、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFが欠失しているか又
は機能的に不活化されており、かつ該ゲノムセグメントが:
a.CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;及び
g.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
のうちの1つ又は任意の組合せを含む、単離された核酸である。
【0038】
ある実施態様において、該単離された核酸によってコードされるゲノムセグメントは、
GPをコードするORFが欠失している短いセグメントである。ある実施態様において、該ゲ
ノムセグメントは、CMV糖タンパク質gB又はその断片を含む。ある実施態様において、該
糖タンパク質gBの細胞質ドメインは欠失している。ある実施態様において、該糖タンパク
質gBの細胞質ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメインと置換されている。具体的な
実施態様において、該異種タンパク質は、VSVのGタンパク質又はインフルエンザウイルス
の血球凝集素タンパク質である。ある実施態様において、gBタンパク質の膜貫通ドメイン
は欠失している。ある実施態様において、糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ド
メインは、該異種タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインと置換されている。
【0039】
一態様において、本明細書に提供されるのは、感染性複製欠損アレナウイルス粒子を作
製する方法であって:
a.宿主細胞に、本明細書に記載される核酸をトランスフェクトすること;
b.該宿主細胞を、ウイルス形成に好適な条件下で維持すること;及び
c.該感染性複製欠損アレナウイルス粒子を回収すること;
を含み、ここで、該宿主細胞が、該ゲノムセグメント上で欠失しているか又は機能的に不
活化されているORFを発現する、方法である。ある実施態様において、ウイルス粒子のレ
スキューに必要とされる任意の追加の核酸も、工程aにおいて、該宿主細胞にトランスフ
ェクトされる。そのような追加の核酸は:第2のアレナウイルスゲノムセグメントのcDNA、
L ORFをコードする核酸、及び/又はN ORFをコードする核酸であることができる。
【0040】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるウイルスベクタ
ー及び医薬として許容し得る担体を含む組成物、例えば、医薬組成物、免疫原性組成物、
又はワクチン組成物である。また本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される2以
上の異なるウイルスベクターを含む(すなわち、該ウイルスベクターが異なるCMV抗原をコ
ードする)組成物(例えば、ワクチン組成物)である。ある実施態様において、該医薬組成
物は、本明細書に記載される核酸又は融合タンパク質を含む。
【0041】
さらなる態様において、本明細書に提供されるのは、患者におけるCMV感染又は再活性
化を治療又は予防する方法であって、該患者に、本明細書に記載されるウイルスベクター
、医薬組成物、免疫原性組成物、又はワクチンを投与することを含む、方法である。また
別の態様において、本明細書に提供されるのは、患者におけるCMV感染又は再活性化の治
療又は予防のための、本明細書に記載されるウイルスベクター、医薬組成物、免疫原性組
成物、又はワクチンの使用である。ある実施態様において、CMV抗原又はその断片を発現
する感染性複製欠損アレナウイルスは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防
することができる。ある実施態様において、CMV抗原又はその断片を発現する1以上の感染
性複製欠損アレナウイルスは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防すること
ができる。
【0042】
ある実施態様において、患者に、CMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルスを投与すると、長期持続性免疫応答が誘導される。
【0043】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、患者におけるCMV感染又は再活性
化を治療及び又は予防する方法であって、該患者に、CMV抗原又はその断片を発現する2以
上の複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。より具体的な実施態様
において、各々の複製欠損アレナウイルスは、異なるCMV抗原又はその断片を発現する。
他の実施態様において、各々の複製欠損アレナウイルスは、CMV抗原又はその誘導体を発
現する。いくつかの実施態様において、該その誘導体は、CMV抗原断片である。また別の
実施態様において、本明細書に提供されるのは、各々が異なるCMV抗原又はその断片を発
現する2以上の複製欠損アレナウイルスを含む組成物である。
(3.1 慣例及び略語)
【表1】
【0044】
(4.配列表の説明)
以下の配列は、本明細書に記載される方法及び組成物とともに使用することができる例
示的なアミノ酸配列及びヌクレオチド配列である。場合によっては、DNA配列を用いて、
ウイルスゲノムセグメントのRNA配列を説明する。RNA配列は、DNA配列から容易に推測す
ることができる。
【0045】
配列番号1は、HK1-HgB(FL)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセグ
メントはRNAであり、配列番号1中の配列はDNAについて示されたものである;しかしながら
、配列番号1中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提供
される。
【0046】
配列番号2は、HgB(FL) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号3は、HgB(FL)のアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号4は、HK1-HgB(dTM)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセ
グメントはRNAであり、配列番号4中の配列はDNAについて示されたものである;しかしなが
ら、配列番号4中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提
供される。
【0049】
配列番号5は、HgB(dTM) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0050】
配列番号6は、HgB(dTM)のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号7は、HK1-HgB(1-706)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノム
セグメントはRNAであり、配列番号7中の配列はDNAについて示されたものである;しかしな
がら、配列番号7中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が
提供される。
【0052】
配列番号8は、HgB(1-706) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0053】
配列番号9は、HgB(1-706)のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号10は、HK1-HgB(1-691)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノム
セグメントはRNAであり、配列番号10中の配列はDNAについて示されたものである;しかし
ながら、配列番号10中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配
列が提供される。
【0055】
配列番号11は、HgB(1-691) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0056】
配列番号12は、HgB(1-691)のアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号13は、HK1-HgB(1-447)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノム
セグメントはRNAであり、配列番号13中の配列はDNAについて示されたものである;しかし
ながら、配列番号13中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配
列が提供される。
【0058】
配列番号14は、HgB(1-447) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0059】
配列番号15は、HgB(1-447)のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号16は、HK1-HgB(dCt)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセ
グメントはRNAであり、配列番号16中の配列はDNAについて示されたものである;しかしな
がら、配列番号16中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列
が提供される。
【0061】
配列番号17は、HgB(dCt) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0062】
配列番号18は、HgB(dCt)のアミノ酸配列である。
【0063】
配列番号19は、HK1-HgB(VSV-G-1)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノ
ムセグメントはRNAであり、配列番号19中の配列はDNAについて示されたものである;しか
しながら、配列番号19中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA
配列が提供される。
【0064】
配列番号20は、HgB(VSV-G-1) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0065】
配列番号21は、HgB(VSV-G-1)のアミノ酸配列である。
【0066】
配列番号22は、HK1-HgB(VSV-G-2)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノ
ムセグメントはRNAであり、配列番号22中の配列はDNAについて示されたものである;しか
しながら、配列番号22中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA
配列が提供される。
【0067】
配列番号23は、HgB(VSV-G-2) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0068】
配列番号24は、HgB(VSV-G-2)のアミノ酸配列である。
【0069】
配列番号25は、HK1-HgB(H3-1)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノム
セグメントはRNAであり、配列番号25中の配列はDNAについて示されたものである;しかし
ながら、配列番号25中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配
列が提供される。
【0070】
配列番号26は、HgB(H3-1) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0071】
配列番号27は、HgB(H3-1)のアミノ酸配列である。
【0072】
配列番号28は、HK1-HgB(H3-2)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノム
セグメントはRNAであり、配列番号28中の配列はDNAについて示されたものである;しかし
ながら、配列番号28中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配
列が提供される。
【0073】
配列番号29は、HgB(H3-2) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0074】
配列番号30は、HgB(H3-2)のアミノ酸配列である。
【0075】
配列番号31は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスセグメントSの完全配列である。該ゲノ
ムセグメントはRNAであり、配列番号31中の配列はDNAについて示されたものである;しか
しながら、配列番号31中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA
配列が提供される。
【0076】
配列番号32は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13セグメントSの完全配列(GenB
ank: DQ361065.2)である。該ゲノムセグメントはRNAであり、配列番号32中の配列はDNAに
ついて示されたものである;しかしながら、配列番号32中の全てのチミジン(「T」)をウリ
ジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提供される。
【0077】
配列番号33は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13セグメントLの完全配列(GenB
ank: DQ361066.1)である。該ゲノムセグメントはRNAであり、配列番号33中の配列はDNAに
ついて示されたものである;しかしながら、配列番号33中の全てのチミジン(「T」)をウリ
ジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提供される。
【0078】
配列番号34は、HK1-Hpp65ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセグ
メントはRNAであり、配列番号34中の配列はDNAについて示されたものである;しかしなが
ら、配列番号34中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が
提供される。
【0079】
配列番号35は、Hpp65 cDNAのヌクレオチド配列である。
【0080】
配列番号36は、Hpp65のアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号37は、HK1-HgHゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセグメ
ントはRNAであり、配列番号37中の配列はDNAについて示されたものである;しかしながら
、配列番号37中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提
供される。
【0082】
配列番号38は、HgH cDNAのヌクレオチド配列である。
【0083】
配列番号39は、HgHのアミノ酸配列である。
【0084】
配列番号40は、HgL cDNAのヌクレオチド配列である。
【0085】
配列番号41は、HgLのアミノ酸配列である。
【0086】
配列番号42は、HUL128 cDNAのヌクレオチド配列である。
【0087】
配列番号43は、HUL128のアミノ酸配列である。
【0088】
配列番号44は、HK1-HUL130ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセグ
メントはRNAであり、配列番号44中の配列はDNAについて示されたものである;しかしなが
ら、配列番号44中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が
提供される。
【0089】
配列番号45は、HUL130 cDNAのヌクレオチド配列である。
【0090】
配列番号46は、HUL130のアミノ酸配列である。
【0091】
配列番号47は、HUL131A cDNAのヌクレオチド配列である。
【0092】
配列番号48は、HUL131Aのアミノ酸配列である。
【0093】
配列番号49は、リンパ球性脈絡髄膜炎株MPセグメントLの完全配列である。該ゲノムセ
グメントはRNAであり、配列番号49中の配列はDNAについて示されたものである;しかしな
がら、配列番号49中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列
が提供される。
【0094】
配列番号50は、HK1-HgH(dTM)ゲノムセグメントのヌクレオチド配列である。該ゲノムセ
グメントはRNAであり、配列番号50中の配列はDNAについて示されたものである;しかしな
がら、配列番号50中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列
が提供される。
【0095】
配列番号51は、HgH(dTM) cDNAのヌクレオチド配列である。
【0096】
配列番号52は、HgH(dTM)のアミノ酸配列である。
【0097】
配列番号53は、リンパ球性脈絡髄膜炎株MPセグメントSの完全配列である。該ゲノムセ
グメントはRNAであり、配列番号53中の配列はDNAについて示されたものである;しかしな
がら、配列番号53中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列
が提供される。
【0098】
配列番号54は、LCMVのMP株のNPタンパク質のアミノ酸配列である。
【0099】
配列番号55は、LCMVのMP株のGPタンパク質のアミノ酸配列である。
【0100】
配列番号56は、LCMVのMP株のLタンパク質のアミノ酸配列である。
【0101】
配列番号57は、LCMVのMP株のZタンパク質のアミノ酸配列である。
【0102】
配列番号58は、HCMV株Merlin gB;全長野生型をコードするLCMVクローン13 S-セグメン
トの配列である。該ゲノムセグメントはRNAであり、配列番号58中の配列はDNAについて示
されたものである;しかしながら、配列番号58中の全てのチミジン(「T」)をウリジン(「U
」)に交換すると、RNA配列が提供される。
【0103】
配列番号59は、HCMV株Merlin gB(FL) ORFのcDNA配列である。
【0104】
配列番号60は、HCMV株Merlin gB(FL)のアミノ酸配列である。
【0105】
配列番号61は、HCMV株Merlin gB配列;膜貫通領域の欠失(dTM)をコードするLCMVクロー
ン13 S-セグメントの配列である。該ゲノムセグメントはRNAであり、配列番号61中の配列
はDNAについて示されたものである;しかしながら、配列番号61中の全てのチミジン(「T」
)をウリジン(「U」)に交換すると、RNA配列が提供される。
【0106】
配列番号62は、HCMV株Merlin gB(dTM) ORFのcDNA配列である。
【0107】
配列番号63は、HCMV株Merlin gB(dTM)のアミノ酸配列である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
(5.図面の簡単な説明)
図1】野生型アレナウイルスのゲノムは、短い(1;~3.4kb)RNAセグメント及び大きい(2;~7.2kb)RNAセグメントからなる。短いセグメントは、核タンパク質(3)及び糖タンパク質(4)をコードするORFを担持する。大きいセグメントは、RNA依存性RNAポリメラーゼL(5)及びマトリックスタンパク質Z(6)をコードする。野生型アレナウイルスは、糖タンパク質遺伝子を欠失させ、該糖タンパク質遺伝子の代わりに、それに対する免疫応答が誘導されることになる最適な抗原(7)を導入することにより、複製欠損ワクチンベクターにすることができる。
【0109】
図2】(Potzschらの文献、2011から改変)様々な異なるrLCMV-gBベクターで発現されるgBタンパク質の抗原性部位; AS-1/5は、糖タンパク質Bの抗原性部位1~5を指す。TMは、gBの膜貫通ドメインを示す。バツ印が付けられたハサミは、gBの細胞外ドメイン内に位置するフューリン切断部位中の突然変異を示す。ベクター名(例えば、HK1-HgB(FL))中の「H」は、ヒトCMV gB配列を示し;ベクター名(例えば、HK1-GPgB(FL))中の「GP」は、モルモットCMV gB配列を示す。
【0110】
図3図3A:膜結合(野生型)又は非結合(膜貫通ドメイン欠失)型の完全な五量体複合体又はそのただの部分のどちらかの発現のために、様々なrLCMV-PCベクターを作製する。個々の色の矢印は、2A自己切断配列を示す。プラスミドクローニング中の又はベクター骨格との関連における相同組換えを回避するために、2Aヌクレオチド配列にゆらぎを与えた。
【0111】
図3B:膜結合(野生型)又は非結合(膜貫通ドメイン欠失)型の完全な五量体複合体又はそ
のただの部分のどちらかの発現のために、様々なrLCMV-PCベクターを作製する。上で概説
した理由のために、個々のPC成分を隔てる2A自己切断配列にゆらぎを与えた。或いは、IR
ES配列を2つのオープンリーディングフレーム(ORF)の間に配置して、下流ORFの翻訳をも
たらした。さらに、ウェスタンブロッティングでの検出を容易にするために、タンパク質
タグ(V5)を個々の五量体複合タンパク質に融合させた。2A*:ピコルナウイルス科というウ
イルスファミリーのメンバーに由来する2Aタンパク質(例えば、豚テシオウイルス-1 2A、
トセアアシグナウイルス2A)に由来する2Aペプチド。
【0112】
図4】LCMV GPを発現するHEK 293懸濁培養物に、rLCMVベクターのHK1-HgB(FL)、HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(706)、HK1-HgB(691)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、HK1-HgB(H3-1)、及びHK1-HgB(H3-2)(0.001のMOI)を感染させた。緑色蛍光タンパク質を発現する対応するrLCMVベクター(HK1-GFP)を対照として用いた。(A)インキュベーションから72時間又は96時間後、染色されたフォーカスをカウントすることにより、ウイルス感染をフォーカス形成単位(FFU)アッセイでモニタリングした。結果を用いて、1ミリリットル当たりのフォーカス形成単位の数(FFU/ml)を計算することにより、ウイルス力価を決定した。(B)ベクター粒子の感染力を評価するために、ベクターRNAをストック調製物から単離し、ゲノム相当物の量を、定量的リアルタイムPCR(qPCR)を用いて決定した。それぞれの結果を(A)で確定されたFFU力価と相関させて、ベクターコンストラクトの比感染力を計算した。
【0113】
図5】ベクター複製を解析するために、LCMV GPを発現する懸濁HEK 293細胞を用いて、増殖曲線を作成した。それぞれの細胞を3×105細胞/mlの細胞密度で播種し、これに、個々のベクター(HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(H3-2)、及びHK1-HgB(691))を0.001のMOIで感染させた。試料を24時間毎に取り出し、FFUアッセイにより解析した。試験されたベクターは全て、HK1-GFPと比較して同様の増殖動態及びピーク力価を示し、個々のgB導入遺伝子が、小さいレポーター遺伝子のGFPを上回る程度にはベクター複製を妨害しないことを示した。
【0114】
図6】LCMV GPを発現するHEK 293細胞に、個々のrLCMV-gBコンストラクト(HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、HK1-HgB(H3-1)、HK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(FL)、HK1-HgB(dTM))を0.001の感染多重度(MOI)で感染させた。感染から96時間後、細胞を解析した。タンパク質をSDSゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、gBタンパク質発現を導入遺伝子特異的一次抗体(ヒトCMV gBに対するマウスモノクローナル抗体)及び適切な二次抗体で検出した。全長gBの非切断型前駆体が~160kDaでバンドを形成すると考えられるのに対し、切断型gBは、55kDaの推定分子質量を有する膜貫通成分とジスルフィド結合により連結されている116kDaの推定分子質量を有する表面成分を含む。しかしながら、モノクローナル一次抗体の使用により、非切断型gBタンパク質及びgBのより小さい切断産物に相当する2つのバンドのみがブロット上に見られると考えられる。予想通り、全長gB(レーン7)が~160kDaでバンドを形成したのに対し、残りの全てのコンストラクトは、gB細胞質ドメインの少なくとも一部の欠失又は交換によって説明することができるより小さいサイズのバンドを示した。同様に、全長gBの膜貫通部分(レーン7)は~60kDaでバンドを形成し(予想されるよりもわずかに大きい)、全てのgB誘導体は、より小さいサイズの切断産物を示す。全体として、HK1-gB(FL)及びHK1-gB(dTM)は、他の全てのベクターと比較してより弱いgBバンドを示した。
【0115】
図7】C57BL/6マウスを、実験の0、21、及び42日目に、6.7×104FFU/用量のHK1-GPgB-dTM、HK1-GPgB-dTMuc、HK1-GPgB-FLの各々、及び9.2×105FFU/用量のHK1-GFPで3回皮下免疫した。免疫マウスの血清を実験の21、42、及び63日目に回収し、抗GPgB IgG抗体力価をELISAにより決定した。終点GMTを示す。
【0116】
図8図8A及びB: C57BL/6マウスを、実験の0、21、及び42日目に、筋肉内経路(図8A)によるか又は皮下注射(図8B)により、様々な濃度(7.4×101、2.2×103、6.7×104、及び2×106FFU/用量)のHK1-GPgB-dTMで3回免疫した。免疫マウスの血清を実験の21、42、及び63日目に回収し、抗GPgB IgG抗体力価をELISAにより決定した。終点GMTを示す。
【0117】
図8C: C57BL/6マウスを、0及び28日目に、筋肉内経路(第1群及び第2群)又は皮内経路(
第3群及び第4群)により、5,6×105(第1群及び第3群)又は3,2×103(第2群及び第4群)FFU/
用量のHK1-HgB(dCt)で免疫した。免疫マウスの血清を28、56、及び70日目に回収し、抗HC
MVgB IgG抗体力価をELISAにより測定した。モノクローナル抗体相当物の濃度(μg/ml)を
示す;モノクローナル抗gB抗体(mIgG1)を標準曲線作成に用いた。
【0118】
図8D: C57BL/6マウスを、0及び28日目に、筋肉内経路(第1群及び第2群)又は皮内経路(
第3群及び第4群)により、6,7×105(第1群及び第3群)又は3,5×103(第2群及び第4群)FFU/
用量のHK1-Hpp65で免疫した。CD8+ T細胞応答をフローサイトメトリーにより解析し、脾
臓細胞をShedlock D.らの文献(Human Vaccines & Immunotherapeutics 2012; 8:11, 1-14
)に基づいて作製されたペプチドのプールで38日目に再刺激した。対照細胞は、培地のみ
で刺激した。培地(レーン1~4)又は特異的ペプチド(レーン5~8)とのインキュベーション
の後、CD8+ T細胞のフローサイトメトリー解析のために、細胞を染色した。IL-2、IFN-g
、及びTNFの発現を解析した。
【0119】
図9】C57BL/6マウスを、0及び21日目に、1×105FFU/用量のHK1-HgB(691)、HK1-HgB(706)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(H3-1)、HK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、HK1-HgB(dTM)、及び組換えgB/アジュバントで筋肉内免疫した。免疫マウスの血清を実験の0、21、42、63、84、及び105日目に回収し、抗HCMVgB IgG抗体力価をELISAにより測定した。終点GMTを示す。
【0120】
図10】C57BL/6マウスを、0及び21日目に、1×105FFU/用量のHK1-HgB(691)、HK1-HgB(706)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(H3-1)、HK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、HK1-HgB(dTM)、及び組換えgB/アジュバントで筋肉内免疫した。42日目に回収された血清を、モルモット補体(最終濃度:5%)及びGFPタグ化HCMV株TS15-rNを含む培地と混合した。血清/培地混合物を37℃で60分間インキュベートし、その後、ARPE-19細胞を含む384ウェルプレートのウェルに移した。代表的な顕微鏡写真を4日目に撮影し、GFPを感染後7日目に定量した。GFP値を血清濃度に対してプロットし、4パラメータ曲線フィッティングを用いて解析して、50%阻害をもたらすおおよその希釈を決定した。対数による逆数中和力価(IC50)を示す。
【0121】
図11】C57BL/6マウスを、0及び21日目に、1×105FFU/用量のHK1-HgB(691)、HK1-HgB(706)、HK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(dTM)、及び組換えgB/アジュバントで筋肉内免疫した。42日目に回収された血清をHCMVgB特異的IgGサブクラスELISAにより解析した。HCMVgB特異的IgGサブクラスのパーセンテージは、全てのサブクラスの全終点力価GMTで割った個々のサブクラス終点力価GMTの比として計算した。
【0122】
図12】ハートレイ系モルモット(4匹の動物/群)を、0、21、及び42日目に、様々な濃度(1.54×107、1.54×106、1.54×105、及び1.54×104FFU/用量)のHK1-GPgB-dTMで筋肉内免疫した。免疫動物の血清を実験の0、21、42、及び63日目に回収し、抗gB抗体力価をGPgB特異的IgG ELISAにより解析した。終点GMTを示す。離れた位置にある中が塗りつぶされた丸は、GPCMV陽性対照血清を示す。
【0123】
図13】ハートレイ系モルモット(4匹の動物/群)を、0、21、及び42日目に、様々な濃度(1.54×107、1.54×106、1.54×105、及び1.54×104FFU/用量)のHK1-GPgB-dTMで筋肉内免疫した。実験の63日目に回収された免疫動物の血清中の抗GPgB抗体の中和活性をプラーク減少アッセイにより解析した。
【0124】
図14】LCMV GPを発現するHEK 293懸濁細胞に、rLCMVベクターHK1-Hpp65(MOI=0.001)を感染させた。GFPを発現するrLCMVベクター(HK1-GFP)を対照として用いた。試料を示された時点で取り出し、試料単位容量当たりのフォーカス形成単位(FFU)の数(FFU/ml)を計算するためのFFUアッセイ(A)により、及びベクターコンストラクトの比感染力を計算するためのqPCR(B)により解析した。
【0125】
図15】LCMV GPを発現するHEK 293懸濁細胞に、HK1-Hpp65又は陰性対照ベクターHK1-GFPを感染させ、感染から96時間後に回収し、溶解させ、SDSゲル上で分離し、ニトロセルロース膜に転写し、抗pp65一次抗体及び適当なアルカリホスファターゼコンジュゲート二次抗体でプロービングした。ヒトCMV pp65タンパク質は、ウェスタンブロットでのHK1-Hpp65の主要バンドに対応する、65kDaの範囲にバンドを形成すると考えられる。
【0126】
図16】(A)及び(B) 15匹のC57BL/6マウスの群の筋肉内に、1×104の目標用量のHK1-Hpp65(第1群)又はHK3-Hpp65(第2群)をワクチン接種した(合計100μL/マウス; 50μL/大腿部)。ワクチン非接種マウス(第7群)を対照として用いた。T細胞応答の決定のために、サイトカインをフローサイトメトリーにより解析した。免疫後10日目に、5匹のマウス/群を屠殺し、脾臓細胞の単一細胞懸濁液をShedlock D.らの文献(Human Vaccines & Immunotherapeutics 2012; 8:11, 1-14)に基づいて作製されたペプチドのプールで再刺激した。5時間の刺激時間の後、CD4+及びCD8+ T細胞のフローサイトメトリー解析のために、細胞を染色した。細胞を表面マーカーCD3、CD4、及びCD8について染色した。30分間の表面染色の後、細胞を2%PFAで透過処理し(15分)、細胞表面が透過状態のままであることを保証するために、サポニンで処理した。30分間の細胞内染色(IL-2、IFN-g、及びTNF-a)の後、試料を洗浄し、FACS Galliosで測定した。サイトカインを発現するCD4+(A)又はCD8+ T(B)細胞の頻度を報告する。(C)10匹のC57BL/6マウスの群に、実験の0及び28日目に、筋肉内経路により、1×104の目標用量のHK1-HgB(dTM)を2回ワクチン接種した。実験の56日目に、マウスの筋肉内に、1×104の目標用量のHK1-Hpp65(第3群)又はHK3-Hpp65(第4群)をワクチン接種した。ワクチン非接種マウス(第7群)を対照として用いた。実験の66日目に、フローサイトメトリーによってサイトカインを測定することにより、T細胞応答を解析した。屠殺したマウス(5匹/群)由来の脾臓細胞の単一細胞懸濁液を同じペプチドのプールで再刺激した。5時間の刺激時間の後、CD8+ T細胞細胞のフローサイトメトリー解析のために、細胞を染色した。細胞を表面マーカーCD3、CD4、及びCD8について染色した。30分間の表面染色の後、細胞を2%PFAで透過処理し(15分)、細胞表面が透過状態のままであることを保証するために、サポニンで処理した。30分間の細胞内染色(IL-2、IFN-g、及びTNF-a)の後、試料を洗浄し、FACS Galliosで測定した。サイトカインを発現するCD8+ T細胞の頻度を報告する。
【0127】
図17】C57BL/6マウスの筋肉内に、実験の0及び28日目に、1×104の目標用量のHK1-GPgB(dTM)及びHK3-GPgB(dTM)をワクチン接種した(合計100μL/マウス; 50μL/大腿部)。個々の動物由来の血清を、各々のワクチン投与(0、28日)の前、及び最後の(2回目の)注射の4週間後(56日)に得た。全ての血清をGPgB特異的IgG抗体のレベルについてELISAにより試験した; ELISAデータを幾何平均GPgB特異的IgG終点力価として表す。
【0128】
図18】C57BL/6マウスの筋肉内に、実験の0及び28日目に、1×104の目標用量のHK1-HgB(dTM)及びHK3-HgB(dTM)をワクチン接種した(合計100μL/マウス; 50μL/大腿部)。個々の動物由来の血清を、各々のワクチン投与(0、28日)の前、及び最後の(2回目の)注射の4週間後(56日)に得た。全ての血清をHgB特異的IgG抗体のレベルについてELISAにより試験した; ELISAデータを幾何平均HgB特異的IgG終点力価として表す。
【0129】
図19】HEK 293T細胞を、M6ウェル培養ウェルに、1ウェル当たり500,000細胞の密度で播種した。翌日、細胞に様々なLCMV株を0.05の感染多重度で感染させた。上清を示された時点で回収し、ウイルス力価をイムノフォーカスアッセイにより決定した。記号は、2つのウェルの平均を表す。
【0130】
図20】5匹のニュージーランドホワイト種のウサギの群を、0及び28日目に、様々な用量(2.0×102、4.4×104、及び4.5×106FFU/用量)のHK1-HgB(dCt)で筋肉内免疫した。血清を0、28、及び42日目に回収し、抗HCMVgB IgG抗体力価をELISAにより測定した。終点GMTを示す。
【0131】
図21】(21A) C57BL/6マウスを、0、21、及び42日目に、1×105FFU/用量のHK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、及び組換えgB/アジュバントで筋肉内免疫した。免疫マウスの血清を21、42、63、91、119、147、及び175日目に回収し、抗HCMVgB IgG抗体力価をELISAにより測定した。終点GMTを示す。
【0132】
(21B) C57BL/6マウスを、0、21、及び105日目に、1×105FFU/用量のHK1-HgB(H3-2)、HK
1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(dCt)、及び組換えgB/アジュバントで筋肉内免疫
した。免疫マウスの血清を21、42、63、84、105、及び126日目に回収し、抗HCMVgB IgG抗
体力価をELISAにより測定した。終点GMTを示す。
【0133】
図22】10匹のC57BL/6マウスの群を、0及び28日目に、9×104FFU/用量のHK1-HgB(dCt)のみもしくは9×104FFU/用量のHK1-Hpp65のみで、又は9×104FFU/用量の各々のHK1-HgB(dCt)及びHK1-Hpp65を合わせたもので筋肉内免疫した。(A)免疫マウスの血清を49日目に回収し、抗HCMVgB IgG抗体力価をELISAにより測定した。(B)T細胞応答の決定のために、サイトカインをフローサイトメトリーにより解析した。免疫後49日目に、マウスを屠殺し、脾臓細胞の単一細胞懸濁液をShedlock D.らの文献(Human Vaccines & Immunotherapeutics 2012; 8:11, 1-14)に基づいて作製されたペプチドのプールで再刺激した。対照細胞は、培地のみで刺激した。培地(レーン1及び2)又は特異的ペプチド(レーン3及び4)とのインキュベーションの後、CD8+ T細胞のフローサイトメトリー解析のために、細胞を染色した。IL-2、IFN-g、及びTNFの発現を解析した。
【0134】
図23】ハートレイ系モルモット(11匹の動物/群)を、交配に先立って、1.54×106FFU/用量のHK1-GPgB-dTM又はHK1-GPpp65のどちらかで、3回(0、21、及び42日目に)筋肉内免疫した。対照動物(10匹/群)には、rLCMVベクターコンストラクトの代わりに、バッファーを投与した。動物を実験の63日目に交配させた。妊娠から~45日後、モルモットに、1×105pfuのモルモットCMVを皮下投与した。仔の死亡率を出産時に測定し、保護率を、ウイルス血症及び仔の死亡率についての処置群の比較により決定した。*は、有意な(p<0.05)低下を示す。
【0135】
図24】IFNα/β及びγ受容体欠損AG129マウス(A)並びにT細胞及びB細胞欠損RAG-/-マウスに、0日目に、7.65×105及び7.65×103FFU/用量のHK3-Hpp65又はマウス類似体HK3-Mpp65のどちらかを脳内接種した。対照群のマウスには、100FFU/用量の野生型LCMV又は希釈液のみのどちらかを投与した。その後、マウスを病気の兆候についてモニタリングし、脳組織を示された日に回収し、感染性ウイルスの存在について解析した。
【0136】
図25】ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、実験の0、31、及び72日目(第1群)/0、31、及び70日目(第2群)/0、34、及び70日目(第3群)に、8×105FFU/用量のHK1-GPgB(dCt)(第1群)、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第2群)、又は8×105FFU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65(第3群)で筋肉内免疫した。さらに、ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、0、46、及び76日目に、完全フロイントアジュバント中に処方した50μgのサブユニットgBタンパク質(第4群)で皮下免疫した。免疫動物の血清を実験の0、28、52、103、及び155日目に回収し、抗gB抗体力価を、抗gB抗体力価が割り当てられている血清プールを参照標準として用いるGPgB特異的IgG ELISAにより解析した。
【0137】
図26】ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、0、31、及び72日目(第1群)/0、31、及び70日目(第2群)/0、34、及び70日目(第3群)に、8×105FFU/用量のHK1-GPgB(dCt)(第1群)、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第2群)、又は8×105FFU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65(第3群)で筋肉内免疫した。さらに、ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、0、46、及び76日目に、完全フロイントアジュバント中に処方した50μgのサブユニットgBタンパク質(第4群)で皮下免疫した。免疫動物の血清を103日目に回収し、実験の血清の中和活性を解析した。破線は検出限界を示す。グラフ作成及び統計計算のために、アッセイで検出限界に達しない血清試料に、任意に、20の値を割り当てた。
【0138】
図27】脾細胞を、8×105FFU/用量のHK1-GFP(第1群)、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第2群)、又は8×105FFU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65(第3群)で筋肉内免疫したハートレイ系モルモットから単離し、ELISPOTアッセイにより解析した。各々のワクチン群由来の3匹の動物を2回のワクチン投与の後に屠殺し、各々のワクチン群由来のさらに3匹の動物を3回のワクチン投与の後に屠殺した。各々の動物についてのpp65特異的脾細胞応答の大きさを、Prism6を用いて、全てのpp65ペプチドプールに対する各々の動物の応答のDMSO対照を上回る「曲線下面積」として計算した。(A)動物1匹当たりのスポットの平均数は、2回のワクチン投与(丸)又は3回のワクチン投与(四角)のどちらかについてのデータ点によって表されている(棒は、群平均±SEMを表す)。(B)動物1匹当たりのスポットの平均数は、HK1-GFP(丸)、HK1-GPpp65(四角)、又はHK1-GPgB(dCt)/HK1-GPpp65(三角)をワクチン接種した動物についてのデータ点によって表されている(棒は、群平均±SEMを表す)。図に示したp値は、マン・ホイットニーのU検定(Wilcoxon, Biometrics Bulletin, 1945, 1: 80-83; Mann及びWhitneyの文献、Annals of mathematical Statistics, 1947, 18: 50-60)を用いて計算した。
【0139】
図28】ハートレイ系モルモットを、交配に先立って、8×105FFU/用量のHK1-GFP(第1群)、HK1-GPgB(dCt)(第2群)、HK1-GPpp65(第3群)、又は8×105FFU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65の組合せ(第4群)のいずれかで3回筋肉内免疫した。最後のワクチン投与から約1カ月後、動物を交配させた。モルモット母獣の妊娠を確認し、触診によりモニタリングした。妊娠した母獣に、妊娠の第3期に、105プラーク形成単位の唾液腺継代モルモットCMVを投与し、その後、出産までモニタリングした。仔の死亡率を出産時に測定し、保護率を、仔の死亡率についての処置群の比較により決定した。
【0140】
【発明を実施するための形態】
【0141】
(6.発明の詳細な説明)
本明細書に提供されるのは、対象へのCMVの感染、又は対象におけるCMVの再活性化の治
療又は予防のための方法及び組成物である。より具体的には、本明細書に提供されるのは
、CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む感染性複製欠損アレナウイルスである。
これらのウイルスをCMV感染又は再活性化の治療又は予防のために対象に投与することが
できる。本発明とともに使用するための感染性複製欠損アレナウイルスベクターの作製は
、第6.3節により詳細に記載されている。
【0142】
本明細書に提供されるのは、遺伝子改変アレナウイルスであり、ここで、該アレナウイ
ルスは:
・感染性であり;
・非相補細胞(すなわち、複製欠損アレナウイルスから失われた機能性を発現すること
ができず、該ウイルスを複製欠損にする細胞)で感染性子孫ウイルスを形成することがで
きず;
・そのゲノムを複製し、その遺伝情報を発現することができ;かつ
・CMV抗原又はその断片をコードする。
【0143】
本明細書に記載される遺伝子改変アレナウイルスは、感染性である、すなわち、それは
、宿主細胞に付着し、その遺伝物質を宿主細胞内に放出することができる。本明細書に記
載される遺伝子改変アレナウイルスは、複製欠損性である、すなわち、該アレナウイルス
は、非相補細胞でさらなる感染性子孫粒子を産生することができない。特に、該アレナウ
イルスのゲノムは、改変されたゲノムを担持するウイルスが感染性子孫ウイルスをもはや
産生することができないように(例えば、ORFの欠失又は機能的不活化により)改変されて
いる。非相補細胞は、ウイルスゲノムの改変によって複製欠損アレナウイルスから除去さ
れている機能性を提供しない細胞である(例えば、GPタンパク質をコードするORFが欠失し
ているか又は機能的に不活化されている場合、非相補細胞はGPタンパク質を提供しない)
。しかしながら、本明細書に提供される遺伝子改変アレナウイルスは、相補細胞で感染性
子孫ウイルスを産生することができる。相補細胞は、ウイルスゲノムの改変によって複製
欠損アレナウイルスから除去されている機能性を(トランスに)提供する細胞である(例え
ば、GPタンパク質をコードするORFが欠失しているか又は機能的に不活化されている場合
でも、相補細胞はGPタンパク質を提供する)。相補機能性(例えば、GPタンパク質)の発現
は、当業者に公知の任意の方法(例えば、一過性又は安定発現)によって達成することがで
きる。本明細書に記載される遺伝子改変アレナウイルスは、ウイルスに感染している細胞
でその遺伝情報を増幅及び発現させることができる。本明細書に提供される遺伝子改変ア
レナウイルスは、CMV抗原、例えば、限定されないが、第6.2節に記載されるCMV抗原をコ
ードするヌクレオチド配列を含む。
【0144】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、得られるウイルスが非相補細胞で
さらなる感染性子孫ウイルス粒子を産生することができないように、アレナウイルスゲノ
ムのORF(ORF)が欠失しているか又は機能的に不活化されている遺伝子改変アレナウイルス
である。ORFが欠失しているか又は機能的に不活化されている遺伝子改変ゲノムを含むア
レナウイルス粒子は、相補細胞で(すなわち、欠失しているか又は機能的に不活化されて
いるアレナウイルスORFを発現する細胞で)産生することができる(第6.3節参照)。得られ
るアレナウイルス粒子の遺伝物質は、宿主細胞の感染時に、宿主細胞に移入することがで
き、そこで、該遺伝物質を発現及び増幅させることができる。さらに、本明細書に提供さ
れる遺伝子改変アレナウイルス粒子のゲノムは、宿主細胞で発現させることができるCMV
抗原をコードする。
【0145】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質(GP)遺伝子をコードするORF
を欠失させて、本発明とともに使用するための複製欠損アレナウイルスを作製する。具体
的な実施態様において、該複製欠損アレナウイルスは、CMV抗原をコードするヌクレオチ
ド配列を含むゲノムセグメントを含む。したがって、ある実施態様において、本明細書に
提供される遺伝子改変アレナウイルス粒子は、a)野生型形態のゲノムセグメントに存在す
るORFの欠失又は機能的不活化を有し;かつb) CMV抗原を(センス又はアンチセンスのどち
らかで)コードするゲノムセグメントを含む(第6.3節参照)。
【0146】
ある実施態様において、複製欠損アレナウイルスのゲノムに挿入される核酸によってコ
ードされる抗原は、例えば、CMV抗原又はCMV抗原の組合せをコードすることができ、これ
には:
a.CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c.CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e.CMV UL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f.CMV UL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
g.CMV UL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
本明細書に記載される抗原の詳細な説明は、第6.2節に提供されている。
【0148】
ある実施態様において、本明細書に記載される本発明に従って使用されるアレナウイル
スは、旧世界ウイルス、例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)であることができ
る。本明細書に記載されるアレナウイルスのより詳細な説明は、第6.1節に提供されてい
る。
【0149】
本明細書に提供されるのは、そのような複製欠損アレナウイルスのゲノムをコードする
核酸である。ある態様において、感染性複製欠損アレナウイルス粒子は、配列番号1、配
列番号4、配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、
配列番号25、配列番号28、配列番号34、配列番号37、配列番号40、配列番号44、又は配列
番号49、又は配列番号50のヌクレオチド配列を含むゲノムセグメントを含む。
【0150】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるウイルスベクターの作製に必要とさ
れる1以上の構成要素をコードする発現プラスミドである。具体的に、本明細書に提供さ
れるのは、LCMV Sセグメントをコードする発現ベクターであり、ここで、GPタンパク質の
ORFは、該Sセグメントから欠失しており、かつカルボキシ末端の切断を有する(例えば、
配列番号18のアミノ酸配列、又は配列番号18と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86
%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を有する)ヒトCMV糖タンパク質gBのORFと
置換されている。
【0151】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるベクタープラスミドのうちの1つ又
は2つを含むキットである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、a) LCMV
ベクターのSセグメントをコードする発現プラスミド;b) LCMVベクターのLセグメントをコ
ードする発現プラスミド;及びc)相補機能性をコードする発現プラスミドを含むキットで
ある。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、a) LCMV Sセグメントを
コードする発現ベクター(ここで、GPタンパク質のORFは、該Sセグメントから欠失してお
り、かつカルボキシ末端の切断を有する(例えば、配列番号18のアミノ酸配列、又は配列
番号18と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一であるア
ミノ酸配列を有する)ヒトCMV糖タンパク質gBのORFと置換されている);b) LCMVベクターの
Lセグメントをコードする発現プラスミド;及びc) LCMV GPタンパク質をコードする発現プ
ラスミド(又はLCMV GPタンパク質を発現する細胞株)を含むキットである。
【0152】
また本明細書に提供されるのは、細胞株、培養物、並びに本明細書に提供される核酸、
ベクター、及び組成物に感染した細胞を培養する方法である。本明細書に記載される核酸
、ベクター系、及び細胞株のより詳細な説明は、第6.4節に提供されている。
【0153】
本発明は、ワクチンとして好適なそのような遺伝子改変複製欠損アレナウイルス、並び
にワクチン接種及びCMVの感染又はCMVの再活性化の治療又は予防においてそのようなアレ
ナウイルスを使用する方法に関する。本明細書に記載されるそのようなアレナウイルスを
使用する方法のより詳細な説明は、第6.5節に提供されている。
【0154】
ある実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性
複製欠損アレナウイルスによる免疫は、長期持続性免疫応答を提供する。ある実施態様に
おいて、2回の免疫の後に、最大の抗体レベルを達成することができる。別の実施態様に
おいて、追加免疫の効果を得るために、3回目の免疫を施すことができる。より具体的な
実施態様において、本明細書に提供されるのは、CMVの感染又はCMVの再活性化の治療及び
/又は予防のためのワクチン接種において感染性複製欠損アレナウイルスを用いる投与ス
ケジュールである。本明細書に記載される感染性複製欠損アレナウイルスを用いる投与ス
ケジュールのより詳細な説明は、第6.5節に提供されている。
【0155】
ある実施態様において、血清陰性対象に、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片
を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与すると、検出可能な抗体力価が最低少な
くとも4週間誘導される。別の実施態様において、CMV感染に感染した対象に、本明細書に
記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与すると
、抗体力価が少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、
少なくとも500%、又は少なくとも1000%増大する。ある実施態様において、一次抗原暴
露は、感染に免疫があるヒト対象由来の平均対照血清の少なくとも50%、少なくとも100
%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少な
くとも1000%の機能的で、(中和性で)、かつ最小限の抗体力価を誘発する。より具体的な
実施態様において、一次中和幾何平均抗体力価は、免疫後少なくとも4週間以内に、少な
くとも1:50、少なくとも1:100、少なくとも1:200、又は少なくとも1:1000のピーク値にま
で増大する。別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現
する感染性複製欠損アレナウイルスによる免疫は、免疫と、それに続く、1回のワクチン
投与の後、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも6カ月、
少なくとも12カ月、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4年間、又は少なく
とも5年間持続する高力価の抗体を産生させる。
【0156】
また別の実施態様において、二次抗原暴露は、抗体力価を、少なくとも100%、少なく
とも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000
%増大させる。別の実施態様において、二次抗原暴露は、感染に免疫があるヒト対象由来
の平均対照血清の少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300
%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的で、(中和性で)
、かつ最小限の抗体力価を誘発する。より具体的な実施態様において、二次中和幾何平均
抗体力価は、免疫後少なくとも4週間以内に、少なくとも1:50、少なくとも1:100、少なく
とも1:200、又は少なくとも1:1000のピーク値にまで増大する。別の実施態様において、
本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスに
よる2回目の免疫は、免疫後、少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、
少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも2年間、少なくとも3年間、少なくとも4
年間、又は少なくとも5年間持続する高力価の抗体を産生させる。
【0157】
また別の実施態様において、3回目の追加免疫は、抗体力価を、少なくとも100%、少な
くとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも10
00%増大させる。別の実施態様において、該追加免疫は、感染に免疫があるヒト対象由来
の平均対照血清の少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300
%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的で、(中和性で)
、かつ最小限の抗体力価を誘発する。より具体的な実施態様において、3回目の追加免疫
は、感染に免疫があるヒト対象由来の平均対照血清の少なくとも50%、少なくとも100%
、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なく
とも1000%の機能的で、(中和性で)、かつ最小限の抗体力価を誘発する。別の実施態様に
おいて、3回目の追加免疫は、抗体力価を、免疫後、少なくとも4週間、少なくとも8週間
、少なくとも12週間、少なくとも6カ月、少なくとも12カ月、少なくとも2年間、少なくと
も3年間、少なくとも4年間、又は少なくとも5年間延長させる。
【0158】
ある実施態様において、CMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイル
スは、T細胞非依存性又はT細胞依存性応答を誘発する。他の実施態様において、CMV抗原
又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、T細胞応答を誘発する。他の
実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠
損アレナウイルスは、Tヘルパー応答を誘発する。別の実施態様において、本明細書に記
載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、Th1指向性応
答又はTh2指向性応答を誘発する。
【0159】
より具体的な実施態様において、Th1指向性応答は、IgG2に対するIgG1抗体の優位によ
り示される。他の実施態様において、IgG1:IgG2の比は、1:1よりも大きく、2:1よりも大
きく、3:1よりも大きく、又は4:1よりも大きい。別の実施態様において、本明細書に記載
されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、IgG3抗体の優
位により示される。
【0160】
いくつかの実施態様において、CMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナ
ウイルスは、CD8+ T細胞応答を誘発する。他の実施態様において、CMV抗原又はその断片
を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、調節性T細胞応答を誘発する。より具体的
な実施態様において、調節性T細胞応答は、免疫寛容を維持する。別の実施態様において
、CMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、CD4+ T細胞応答とC
D8+ T細胞応答の両方を誘発する。
【0161】
ある実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性
複製欠損アレナウイルスは、高力価の中和抗体を誘発する。別の実施態様において、本明
細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、タ
ンパク質複合体構成要素の個別発現よりも高力価の中和抗体を誘発する。
【0162】
他の実施態様において、CMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルスは、
高力価の中和抗体を誘発する。より具体的な実施態様において、CMV抗原を発現する2以上
の感染性複製欠損アレナウイルスは、1つのCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠
損アレナウイルスよりも高力価の中和抗体を誘発する。
【0163】
別の実施態様において、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれより多くのCMV抗原を発現する
感染性複製欠損アレナウイルスは、1つのCMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損
アレナウイルスよりも高力価の中和抗体を誘発する。
【0164】
(6.1 CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスベクター)
本明細書に提供される方法及び組成物とともに使用するためのアレナウイルスは、旧世
界ウイルスのもの、例えば、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、モ
バラウイルス、モペイアウイルス、もしくはイッピーウイルス、又は新世界ウイルスのも
の、例えば、アマパリウイルス、フレクサルウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイ
ルス、ラチノウイルス、マチュポウイルス、オリベロスウイルス、パラナウイルス、ピチ
ンデウイルス、ピリタルウイルス、サビアウイルス、タカリベウイルス、タミアミウイル
ス、ベアキャニオンウイルス、もしくはホワイトウォーターアロヨウイルスであることが
できる。遺伝子改変アレナウイルスは、第6.3節に記載されている通りに作製することが
できる。
【0165】
野生型アレナウイルスゲノムは、短い(~3.4kb)RNAセグメント及び大きい(~7.2kb)RNA
セグメントからなる。短いセグメントは、核タンパク質NP及び糖タンパク質GP遺伝子をコ
ードするORFを担持する。大きいセグメントは、RNA依存性RNAポリメラーゼL及びマトリッ
クスタンパク質Z遺伝子をコードする。糖タンパク質遺伝子をそれに対する免疫応答が誘
導されることになる1以上のCMV抗原の代わりに用いることによって、野生型アレナウイル
スを複製欠損にして、ワクチンベクターを作製することができる。
【0166】
本明細書に記載されるCMV抗原又はCMV抗原の組合せを発現する感染性複製欠損アレナウ
イルスベクターを用いて、CMV感染又は再活性化に対して、対象を(予防的に)免疫するか
又は(免疫療法的に)治療することができる。具体的な実施態様において、gBとpp65の組合
せを使用する。
【0167】
野生型アレナウイルス感染におけるアレナウイルス疾患及び免疫抑制は、妨げられない
ウイルス複製から生じることが知られている。そのゲノムから、例えば、粒子放出に必要
とされるZ遺伝子、又は標的細胞の感染に必要とされるGP遺伝子を欠失させることによっ
て、アレナウイルスベクターの複製、すなわち、感染性子孫ウイルス粒子を産生する能力
を無効にすることにより、感染細胞の総数を、例えば、ワクチンレシピエントに投与され
る接種源、或いは医学的もしくは生物学的応用に関与する人々又は動物に過失によって伝
播される接種源に限定することができる。したがって、アレナウイルスベクターの複製を
無効にすることは、故意又は過失によるベクター粒子の伝播の結果としての発病を予防す
る。本発明において、1つの重要な態様は、CMV抗原を発現させるために有益な方法で上記
の複製の無効化の必要性を利用することにある。ある実施態様において、アレナウイルス
粒子をそのゲノムの遺伝子改変により複製欠損にする。ゲノムに対するそのような改変と
しては:
・ORF(例えば、GP、NP、L、又はZタンパク質をコードするORF)の欠失;
・ORF(例えば、GP、NP、L、又はZタンパク質をコードするORF)の機能的不活化。例えば
、これは、ミスセンス又はナンセンス突然変異を導入することにより達成することができ
る;
・ORFの配列の変更(例えば、S1P切断部位と別のプロテアーゼの切断部位との交換);
・ゲノムセグメントの1つの5'又は3'末端の一方の突然変異生成;
・遺伝子間領域(すなわち、L又はSゲノムセグメントの遺伝子間領域)の突然変異生成
を挙げることができる。
【0168】
ある実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)であり、ここで、該ウイルスのSセ
グメントは、GPタンパク質をコードするORFをCMV抗原をコードするORFと置換することに
より改変されている。
【0169】
ある実施態様において、野生型アレナウイルスベクターゲノム(図1)は、両方のセグメ
ントの5'及び3'非翻訳領域(UTR)並びに/又は同じく遺伝子間領域(IGR)上の少なくとも必
須の調節エレメントを保持するように設計することができる。理論に束縛されるものでは
ないが、感染細胞における遺伝子発現のための最小限のトランス作用因子は、発現させる
ことができるORFとしてベクターゲノム中に残るが、これらは、ゲノム中に様々な形で配
置することができ、かつ天然とは異なるプロモーターの制御下に配置することができるか
、又は内部リボソーム進入部位から発現させることができる。ある実施態様において、CM
V抗原をコードする核酸は、内在性アレナウイルスプロモーター(すなわち、Sセグメント
の5' UTR、3' UTR、Lセグメントの5' UTR、3' UTR)のうちの1つから転写される。他の実
施態様において、CMV抗原をコードする核酸は、ウイルス性RNA依存性RNAポリメラーゼに
よって、細胞性RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、又はRNAポリメラーゼIIIによっ
て読まれることができる異種導入プロモーター配列、例えば、それぞれ、ウイルスUTRに
天然に見られるウイルスプロモーター配列の重複、28SリボソームRNAプロモーター、β-
アクチンプロモーター、又は5SリボソームRNAプロモーターから発現される。ある実施態
様において、CMV抗原をコードするリボ核酸は、それらだけで、又はアレナウイルスタン
パク質ORFとの融合によるリードスルーとして転写及び翻訳され、宿主細胞内でのタンパ
ク質の発現は、1以上の、例えば、2つ、3つ、又は4つの内部リボソーム進入部位を適当な
場所でウイルス転写物配列中に導入することにより増強することができる。
【0170】
ある実施態様において、1以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LC
MVの特定の株に基づくことができる。LCMVの株としては、クローン13、MP株、Arm CA 137
1、Arm E-250、WE、UBC、Traub、Pasteur、810885、CH-5692、Marseille #12、HP65-2009
、200501927、810362、811316、810316、810366、20112714、Douglas、GR01、SN05、CABN
、及びこれらの派生物が挙げられる。ある実施態様において、1以上のCMV抗原をコードす
るように作製されるベクターは、LCMVクローン13に基づくことができる。他の実施態様に
おいて、1以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LCMV MP株に基づく
ことができる。LCMVクローン13のSセグメントの配列は、配列番号32として記載されてい
る。ある実施態様において、LCMVクローン13のSセグメントの配列は、配列番号31に示さ
れる配列である。LCMVクローン13のLセグメントの配列は、配列番号33として記載されて
いる。LCMV株MPのSセグメントの配列は、配列番号53として記載されている。LCMV株MPのL
セグメントの配列は、配列番号49として記載されている。
【0171】
ある実施態様において、本明細書に記載されるのは、配列番号49、配列番号53から選択
されるヌクレオチド配列もしくはその断片、又はこれらの組合せを含む感染性複製欠損ア
レナウイルス粒子である。
【0172】
ある実施態様において、本明細書に記載されるのは:
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
・サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
・サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列の組合せを含む感染性
複製欠損アレナウイルス粒子である。
【0173】
(6.2 CMV抗原)
ある実施態様において、本明細書に記載される方法及び組成物とともに使用するための
抗原は、CMV抗原である。
【0174】
ある実施態様において、記載されている2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多
くのCMV抗原をコードするORFは、単一の転写物として転写される。ある実施態様において
、その転写物上でCMV抗原をコードするORFは、自己切断ペプチド又はリボソームスキッピ
ング配列をコードする核酸によって隔てられる。ある実施態様において、自己切断ペプチ
ド(又はリボソームスキッピング配列)は、ピコルナウイルス科というウイルスファミリー
のメンバーに由来する2Aタンパク質から得ることができる。ある具体的な実施態様におい
て、自己切断ペプチドは、豚テシオウイルス-1 2A、トセアアシグナウイルス2A、口蹄疫
ウイルス2Aペプチド、又はウマ鼻炎Aウイルス2Aペプチドから得られる(又はこれらに由来
する)。ある具体的な実施態様において、豚テシオウイルス-1 2Aから得られる(又はこれ
に由来する)2Aペプチドは、最大の切断効率を有する。ある実施態様において、該2Aペプ
チドは、該2Aペプチドの上流又は下流にある本明細書に記載されるCMV抗原との組合せで
高い切断効率を有する。
【0175】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、リボソームスキッピング配列によって隔てられる。より具体的な実施
態様において、リボソームスキッピング配列は、シス作用型ヒドロラーゼエレメント配列
である。
【0176】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、ポティウイルス科ファミリーのタバコエッチ病ウイルス(TEV)から得ら
れる(又はこれに由来する)自己切断プロテアーゼによって隔てられる。
【0177】
ある実施態様において、Gly-Ser-Glyリンカーは、2AペプチドのN末端及びC末端に挿入
される。より具体的な実施態様において、Gly-Ser-Glyリンカーは、2AペプチドのN末端に
挿入される。より具体的な実施態様において、Gly-Ser-Glyリンカーは、2AペプチドのC末
端に挿入される。ある実施態様において、Gly-Ser-Glyリンカーは、2Aペプチドによる切
断の効率を向上させる。
【0178】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、内部リボソーム進入部位によって隔てられる。ある実施態様において
、内部リボソーム進入部位は、上流プロモーターの制御下で機能する。ある実施態様にお
いて、内部リボソーム進入部位は、脳心筋炎ウイルスから得られる(又はこれに由来する)
【0179】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、2Aペプチド及びフューリン切断部位によって隔てられる。ある実施態
様において、2Aペプチドは、フューリン切断部位に隣接する。ある実施態様において、フ
ューリン切断部位は、CMV抗原をコードするORFと2AペプチドをコードするORFの間に配置
される。ある実施態様において、フューリン切断部位は、2Aペプチドの上流に付加される
。ある実施態様において、フューリン切断部位は、2Aペプチドの下流に付加される。ある
実施態様において、フューリン切断部位は、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより
多くのCMV抗原をコードするORF、自己切断ペプチド、及びこれらの組合せを有するベクタ
ー中に配置される。ある実施態様において、フューリン切断部位のコンセンサス配列は、
R-X-K-/R-Rである。より具体的な実施態様において、フューリン切断部位は、トランスゴ
ルジネットワークでフューリンタンパク質によって切断される。別の実施態様において、
フューリン切断部位は、2Aペプチド配列を除去する。また別の実施態様において、フュー
リン切断部位は、自己切断ペプチド配列をC末端で除去する。例えば、Fangらの文献、Mol
ecular Therapy. 2007; 15(6):1153-1159を参照されたい。
【0180】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、2Aペプチド及びタグによって隔てられる。ある実施態様において、タ
グは、2Aペプチドに連結される。ある実施態様において、タグは、2Aペプチドとフューリ
ン切断部位の間に配置される。ある実施態様において、タグは、CMV抗原をコードする下
流ORFのC末端又はN末端に配置される。ある実施態様において、タグは、CMV抗原をコード
する上流ORFのC末端又はN末端に配置される。ある実施態様において、タグは、2つ、3つ
、4つ、又はそれより多くのCMV抗原をコードするORF、2Aペプチド、フューリン切断部位
、又はこれらの組合せを有するベクター中に配置される。ある実施態様において、タグは
、ペプチドタグである。より具体的な実施態様において、タグは、V5アミノ酸タグである
【0181】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは、2Aペプチド及びスペーサー配列によって隔てられる。ある実施態様に
おいて、スペーサー配列は、2Aペプチドの上流に配置される。ある実施態様において、ス
ペーサー配列は、CMV抗原をコードするORFの間に配置される。ある実施態様において、ス
ペーサー配列は、2Aペプチドの上流とタグの間に配置される。ある実施態様において、ス
ペーサー配列は、上流の2Aペプチドと下流のフューリン切断部位の間に配置される。ある
実施態様において、スペーサー配列は、CMV抗原、自己切断ペプチド、フューリン切断部
位、タグ、又はこれらの組合せをコードするORFを有するベクター中に配置される。ある
実施態様において、スペーサー配列は、切断効率を増大させる。
【0182】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原を
コードするORFは:自己切断ペプチド、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配
列の遊離をもたらすアミノ酸配列、又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす
配列エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」(IRES)をコードするヌクレオチド
配列によって隔てられる。
【0183】
ある実施態様において、ヒトCMVの任意の株又はヒトCMVの任意の臨床分離株を本発明と
ともに用いて、本明細書に記載されるアレナウイルスベクターの作製のための抗原を得る
ことができる。そのようなCMV株としては、AD-169、Merlin、C327A(GenBank M60929)、C0
76A(GenBank M85228)、及びC194A(GenBank 60926)が挙げられる。現在開示されている組
成物及び方法とともに使用することができる他のヒトCMV株及びヒトCMV抗原性配列は、Me
yer-Koenigらの文献、1998, J Infect Dis 177:1162-1169; Shedlockらの文献、2012, Hu
man Vaccines & Immunotherapuetics 8:1-14;並びにChou及びDennisonの文献、1991, J I
nfect Dis 163:1229-34に記載されている。Meyer-Koenigらの文献、1998, J Infect Dis
177:1162-1169; Shedlockらの文献、2012, Human Vaccines & Immunotherapuetics 8:1-1
4;並びにChou及びDennisonの文献、1991, J Infect Dis 163:1229-34に記載されている配
列及び株は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0184】
ある実施態様において、CMV抗原は、CMV抗原オルソログ、例えば、哺乳動物(すなわち
、非ヒト霊長類、ブタ、イヌ、ネコ、又はウマ)のCMV抗原であることができる。
【0185】
((a)gB抗原)
ある実施態様において、抗原は、CMV主要エンベロープ糖タンパク質gB又はその断片で
ある。ある実施態様において、抗原は、CMV主要エンベロープ糖タンパク質gBの少なくと
も10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700個、又
はそれより多くのアミノ酸の断片である。ある実施態様において、gBの膜貫通ドメインは
欠失している。いくつかの実施態様において、gBの細胞質ドメインは欠失している。ある
実施態様において、抗原は、gBの抗原性断片である。ある実施態様において、糖タンパク
質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは欠失している。
【0186】
具体的な実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、及びAS-4を含む(図2
照)。ある実施態様において、gB抗原は、抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、及びAS-1を含む
。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びAS-3を含
む。ある実施態様において、抗原は、gB膜貫通ドメインを含む。ある実施態様において、
抗原は、gB細胞質ドメインを含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、
AS-5、AS-4、及びAS-1、並びにgB膜貫通ドメインを含む。ある実施態様において、抗原は
、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びAS-3、並びにgB膜貫通ドメインを含む。あ
る実施態様において、抗原は、gB細胞外ドメインを含む。
【0187】
ある実施態様において、抗原は、CMV糖タンパク質gB又はその断片と異種ポリペプチド
の融合タンパク質である。ある実施態様において、抗原は、少なくとも10、20、30、40、
50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、又は少なくと
も900アミノ酸長である。ある実施態様において、gBの1以上のドメインは、異種タンパク
質の1以上のドメインによって置換されている。ある実施態様において、gBの細胞質ドメ
インは、異種タンパク質の細胞質ドメインと置換されている。ある実施態様において、gB
の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメインによって置換
されている。ある実施態様において、gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインは、異種タ
ンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインによって置換されている。ある実施態様に
おいて、gBの細胞質ドメインは、異種タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインに
よって置換されている。ある実施態様において、異種タンパク質は、RNAウイルス由来の
糖タンパク質である。ある実施態様において、異種タンパク質は、VSV由来の糖タンパク
質である。具体的な実施態様において、異種タンパク質は、VSV-Gである。より具体的な
実施態様において、異種タンパク質は、野生型VSVのVSV-Gタンパク質である。他の具体的
な実施態様において、異種タンパク質は、VSV株AV1又はAV2のVSV-Gタンパク質である。他
の具体的な実施態様において、異種タンパク質は、VSV血清型インディアナのVSV-Gタンパ
ク質である。他の具体的な実施態様において、異種タンパク質は、VSV株MARM U、MARM M
、MRr、又はMRbのVSV-Gタンパク質である。ある実施態様において、抗原は、配列番号20
又は配列番号23と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は
100%同一である核酸配列によってコードされる。ある実施態様において、抗原は、配列
番号21又は配列番号24と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%
、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であ
るアミノ酸配列を含む。
【0188】
具体的な実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、及びAS-4、並びにVSV-
G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原
性部位AS-2、AS-5、AS-4、及びAS-1、並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域
を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位 AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びA
S-3、並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。ある実施態様において、
抗原は、gB膜貫通ドメイン並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。あ
る実施態様において、抗原は、gB細胞質ドメイン並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び
細胞質領域を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、及
びAS-1、並びにgB膜貫通ドメイン、並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を
含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びAS-3
、並びにgB膜貫通ドメイン、並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。
ある実施態様において、抗原は、gB細胞外ドメイン並びにVSV-G由来の異種膜貫通領域及
び細胞質領域を含む。
【0189】
ある実施態様において、抗原は、CMV糖タンパク質gB又はその断片と異種ポリペプチド
の融合タンパク質である。ある実施態様において、抗原は、少なくとも10、20、30、40、
50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、又は少なくと
も900アミノ酸長である。ある実施態様において、gBの1以上のドメインは、異種タンパク
質の1以上のドメインによって置換されている。ある実施態様において、異種タンパク質
は、インフルエンザウイルスの糖タンパク質である。具体的な実施態様において、異種タ
ンパク質は、インフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質(Flu-HA)である。より具体
的な実施態様において、異種タンパク質は、A型インフルエンザウイルスの血球凝集素タ
ンパク質である。他の具体的な実施態様において、異種タンパク質は、B型インフルエン
ザウイルスの血球凝集素タンパク質である。他の具体的な実施態様において、異種タンパ
ク質は、C型インフルエンザウイルスの血球凝集素タンパク質である。ある実施態様にお
いて、抗原は、配列番号26又は配列番号29と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%
、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列によってコードされる。ある実施態
様において、抗原は、配列番号27又は配列番号30と80%、81%、82%、83%、84%、85%
、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0190】
具体的な実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、及びAS-4、並びにFlu-
HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原
性部位AS-2、AS-5、AS-4、及びAS-1、並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域
を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びAS
-3並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。ある実施態様において、抗
原は、gB膜貫通ドメイン並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。ある
実施態様において、抗原は、gB細胞質ドメイン並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細
胞質領域を含む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、及び
AS-1、並びにgB膜貫通ドメイン、並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含
む。ある実施態様において、抗原は、gB抗原性部位AS-2、AS-5、AS-4、AS-1、及びAS-3、
並びにgB膜貫通ドメイン、並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び細胞質領域を含む。あ
る実施態様において、抗原は、gB細胞外ドメイン並びにFlu-HA由来の異種膜貫通領域及び
細胞質領域を含む。
【0191】
ある実施態様において、gBタンパク質は、CMV株Merlinに由来するものである。本明細
書に記載されるウイルスベクター組成物及びその使用とともに使用することができる例示
的な配列は、配列番号58~63に示されている。ある実施態様において、抗原は、配列番号
60又は配列番号63と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるア
ミノ酸配列を含む。
【0192】
((b)切断されたgB抗原)
ある実施態様において、gBタンパク質のカルボキシ末端は、切断されている。ある実施
態様において、gBタンパク質のカルボキシ末端の切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、1
0、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、3
0、31、32、33、34、35、36、 37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、
50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、
70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、
90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、
108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、
124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、又は134アミノ酸長であることが
できる。別の実施態様において、gBタンパク質のカルボキシ末端の切断は、1~10、10~2
0、25~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~110、11
0~120、120~130、又は120~134アミノ酸長であることができる。他の実施態様において
、gBタンパク質のカルボキシ末端の切断は、10~134、20~134、30~134、40~134、50~
134、60~134、70~134、80~134、90~134、100~134、110~134、又は120~134アミノ
酸長であることができる。
【0193】
ある実施態様において、カルボキシ末端の切断を有するgBタンパク質は、切断されたgB
タンパク質の全長にわたって配列番号3と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、8
7%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又
は100%同一であるアミノ酸配列を含む。より具体的な実施態様において、該gBタンパク
質は、アミノ酸772~906の間に切断を有し、かつ切断されたgBタンパク質の全長にわたっ
て配列番号3と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、9
1%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸
配列を含む。他の実施態様において、カルボキシ末端の切断を有するgBタンパク質は、配
列番号18と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配
列を含む。
【0194】
ある実施態様において、該gBタンパク質は、カルボキシ末端に欠失を有する。ある実施
態様において、カルボキシ末端における欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1
2、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、3
2、33、34、35、36、 37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、
52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、
72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、
92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109
、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125
、126、127、128、129、130、131、132、又は133アミノ酸長であることができる。別の実
施態様において、gBタンパク質のカルボキシ末端における欠失は、1~10、10~20、20~3
0、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100、100~110、110~120、
120~130、又は130~133アミノ酸長であることができる。他の実施態様において、gBタン
パク質のカルボキシ末端における欠失は、10~133、20~133、30~133、40~133、50~13
3、60~133、70~133、80~133、90~133、100~133、110~133、又は120~133アミノ酸
長であることができる。
【0195】
他の実施態様において、カルボキシ末端の切断を有するgBタンパク質は、CMVウイルス
体(viron)の膜に依然として結合している。
【0196】
((c)pp65抗原)
ある実施態様において、抗原は、CMVテグメントタンパク質pp65又はその断片である。
ある実施態様において、抗原は、CMVテグメントタンパク質pp65又はその断片の少なくと
も10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、500個、又はそれより
多くのアミノ酸の断片である。ある実施態様において、抗原は、pp65の抗原性断片である
。ある実施態様において、抗原は、配列番号35と80%、81%、82%、83%、84%、85%、
86%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、又は100%同一である核酸配列によってコードされる。ある実施態様において
、抗原は、配列番号36と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%
、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同
一であるアミノ酸配列を含む。
【0197】
((d)五量体複合抗原)
ある実施態様において、抗原は、CMV糖タンパク質gH又はその断片である。ある実施態
様において、抗原は、CMV糖タンパク質gH又はその断片の少なくとも10、15、20、25、50
、75、100、150、200、250、300、350、400、500、600、700個、又はそれより多くのアミ
ノ酸の断片である。ある実施態様において、gHは、膜貫通ドメインを欠いている。ある実
施態様において、抗原は、gH細胞外ドメインのみを含有する。ある実施態様において、抗
原は、gHの抗原性断片である。ある実施態様において、抗原は、配列番号38と80%、81%
、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91%、92%、
93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列によってコ
ードされる。ある実施態様において、抗原は、配列番号51と80%、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列によってコードされる。
【0198】
ある実施態様において、抗原は、糖タンパク質gH断片の誘導体である。ある実施態様に
おいて、抗原は、C末端膜結合配列が欠失したgHである、gH(dTM)の抗原性断片である。
【0199】
ある実施態様において、抗原は、CMV糖タンパク質gL又はその断片である。ある実施態
様において、抗原は、CMV糖タンパク質gL又はその断片の少なくとも10、15、20、25、50
、75、100、150、200、250個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である。ある実施態様
において、抗原は、gLの抗原性断片である。ある実施態様において、抗原は、配列番号40
と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配
列によってコードされる。
【0200】
ある実施態様において、抗原は、五量体複合タンパク質又はその断片である。ある実施
態様において、抗原は、CMVの五量体複合タンパク質又はその断片の遺伝子の遺伝子産物
の少なくとも少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150個、又はそれより多くのアミ
ノ酸の断片である。あるより具体的な実施態様において、該五量体複合タンパク質は、CM
V UL128又はその断片である。ある実施態様において、抗原は、UL128の抗原性断片である
。あるより具体的な実施態様において、該五量体複合タンパク質は、CMV UL130又はその
断片である。ある実施態様において、抗原は、UL130の抗原性断片である。あるより具体
的な実施態様において、該五量体複合タンパク質は、CMV UL131A又はその断片である。あ
る実施態様において、抗原は、UL131Aの抗原性断片である。ある実施態様において、抗原
は、配列番号42と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%
、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同
一である核酸配列によってコードされる。ある実施態様において、抗原は、配列番号45と
80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91
%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列
によってコードされる。ある実施態様において、抗原は、配列番号47と80%、81%、82%
、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列によってコードさ
れる。
【0201】
CMV抗原をコードする核酸配列は、糖タンパク質GP、マトリックスタンパク質Z、核タン
パク質NP、又はポリメラーゼタンパク質LのORF(ORF)の核酸配列の置換により、感染性複
製欠損アレナウイルスのゲノムに導入することができる。他の実施態様において、CMV抗
原をコードする核酸配列は、糖タンパク質GP、マトリックスタンパク質Z、核タンパク質N
P、又はポリメラーゼタンパク質LのORF(ORF)に融合される。CMV抗原をコードするヌクレ
オチド配列は、ひとたび感染性複製欠損アレナウイルスのゲノムに挿入されれば、4つの
アレナウイルスプロモーター(Sセグメントの5' UTR及び3' UTR、並びにLセグメントの5'
UTR及び3' UTR)、並びにウイルス性RNA依存性RNAポリメラーゼ、細胞性RNAポリメラーゼI
、RNAポリメラーゼII、又はRNAポリメラーゼIIIによって読まれることができる調節エレ
メント、例えば、それぞれ、ウイルスUTRに天然に見られるウイルスプロモーター配列の
重複、28SリボソームRNAプロモーター、β-アクチンプロモーター、又は5SリボソームRNA
プロモーターとともに挿入されることができるリボ核酸の制御下で転写及び/又は発現さ
れることができる。CMV抗原をコードする核酸は、それらだけで、又はそれぞれアレナウ
イルスORF及び遺伝子との融合によるリードスルーとして、並びに/又は1以上の、例えば
、2つ、3つ、もしくは4つの内部リボソーム進入部位との組合せで、転写及び/又は発現さ
れることができる。
【0202】
一実施態様において、抗原は、感染症の予防に有用である抗原である。具体的な実施態
様において、抗原は、CMVに由来する。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タ
ンパク質をコードするORFは、gH又はgLをコードする核酸配列によって置換される。より
具体的な実施態様において、gH及びgLをコードする核酸配列は、2Aペプチドをコードする
核酸配列によって隔てられる。他の実施態様において、gH及びgLをコードする核酸配列は
、2Aペプチド及びスペーサーをコードする核酸配列によって隔てられる。より具体的な実
施態様において、gH及びgLをコードする核酸配列は、2Aペプチド及びフューリン切断部位
をコードする核酸配列によって隔てられる。ある実施態様において、gH及びgLをコードす
る核酸配列は、V5アミノ酸タグなどのタグに融合した2Aペプチド及び該2Aペプチドの上流
に位置するフューリン切断によって隔てられる。ある実施態様において、gH及びgLをコー
ドする核酸配列は、2Aペプチド、V5アミノ酸タグなどのタグに融合したフューリン切断部
位、及びスペーサーによって隔てられる。具体的な実施態様において、スペーサーは、2A
ペプチドの上流にある。またより具体的な実施態様において、スペーサーは、2Aペプチド
とタグの間の2Aペプチドの上流にある。
【0203】
ある実施態様において、糖タンパク質gH(dTM)及び糖タンパク質gLをコードする核酸配
列は、自己切断ペプチドをコードする核酸配列によって隔てられる。ある実施態様におい
て、糖タンパク質gH(dTM)及び糖タンパク質gLをコードする核酸配列は、2Aペプチドによ
って隔てられる。ある実施態様において、糖タンパク質gH(dTM)及び糖タンパク質gLをコ
ードする核酸配列は、V5などのタグに融合している2Aペプチドに接続される。
【0204】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV五量体
複合タンパク質をコードする核酸配列は、自己切断ペプチドによって隔てられる。ある実
施態様において、CMV五量体複合タンパク質をコードする核酸配列は、2Aペプチドによっ
て接続される。ある実施態様において、CMV五量体複合タンパク質をコードする核酸配列
は、タグに融合した2Aペプチドによって接続される。ある実施態様において、CMV五量体
複合タンパク質をコードする核酸配列は、V5アミノ酸タグに融合した2Aペプチドによって
接続される。
【0205】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV五量体
複合タンパク質をコードする核酸配列は、自己切断ペプチド、「リボソームスキッピング
」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらすアミノ酸配列、又はリボソームの結合及び下
流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」(IRES)に
よって隔てられる。ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより
多くのCMV五量体複合タンパク質をコードする核酸配列は、自己切断ペプチド、「リボソ
ームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらすアミノ酸配列、又はリボソ
ームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、「内部リボソーム進
入部位」(IRES)によって隔てられる。
【0206】
ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV五量体
複合タンパク質をコードする核酸配列は、自己切断ペプチド及びフューリン切断部位によ
って隔てられる。ある実施態様において、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多
くのCMV五量体複合タンパク質をコードする核酸配列は、V5アミノ酸タグなどのタグに融
合した自己切断ペプチドとフューリン切断部位とによって隔てられる。ある実施態様にお
いて、CMV五量体複合タンパク質をコードする核酸配列は、V5アミノ酸タグなどのタグに
融合した自己切断ペプチドと、フューリン切断部位と、スペーサーとによって隔てられる
。具体的な実施態様において、スペーサーは、自己切断ペプチドの上流にある。
【0207】
((e)該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFの置換)
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、本明細
書に記載される1つ、2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV抗原をコード
する核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパ
ク質をコードするORFは、自己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列によって隔
てられた、本明細書に記載される2つ、3つ、4つ、もしくは5つ、又はそれより多くのCMV
抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、自己切断ペプチ
ド(又はリボソームスキッピング配列)は、ピコルナウイルス科というウイルスファミリの
メンバー由来の2Aタンパク質から得ることができる。ある具体的な実施態様において、自
己切断ペプチド(又はリボソームスキッピング配列)は、豚テシオウイルス-1 2A、トセア
アシグナウイルス2A、又は口蹄疫ウイルス2Aペプチドから得られる(又はこれらに由来す
る)。
【0208】
一実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMV抗原を
コードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖
タンパク質をコードするORFは、CMVの主要エンベロープ糖タンパク質gB又はその断片の遺
伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350
、400、500、600、700個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である抗原をコードする核
酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質を
コードするORFは、gBの抗原性断片をコードする核酸配列によって置換される。ある実施
態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、限定されないが、
主要エンベロープ糖タンパク質gB又はgBの断片を含む抗原をコードする核酸配列によって
置換される。
【0209】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gBとVSV
-Gの融合タンパク質である抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様
において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、少なくとも10、15、20
、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、500、600、又は少なくとも700アミ
ノ酸長である抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該
アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、配列番号20又は配列番号23と80%、8
1%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である核酸配列によっ
て置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするOR
Fは、配列番号21又は24と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89
%、90%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は
100%同一であるアミノ酸をコードする核酸配列によって置換される。
【0210】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gBとイ
ンフルエンザウイルス血球凝集素の融合タンパク質である抗原をコードする核酸配列によ
って置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードする
ORFは、少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、350、400、500
、600、又は少なくとも700アミノ酸長である抗原をコードする核酸配列によって置換され
る。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、配列
番号26又は29と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、
90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一
である核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タン
パク質をコードするORFは、配列番号27又は30と80%、81%、82%、83%、84%、85%、8
6%、87%、88%、89%、90%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸をコードする核酸配列によって置換され
る。
【0211】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVのテ
グメントタンパク質pp65又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、25
、50、75、100、150、200、250、300、350、400、500個、又はそれより多くのアミノ酸の
断片である抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該ア
レナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、pp65の抗原性断片をコードする核酸配
列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコー
ドするORFは、限定されないが、pp65又はpp65の断片を含む、抗原をコードする核酸配列
によって置換される。
【0212】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVの糖
タンパク質gH又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、25、50、75、
100、150、200、250、300、350、400、500、600、700個、又はそれより多くのアミノ酸の
断片である抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該ア
レナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gHの抗原性断片をコードする核酸配列
によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコード
するORFは、限定されないが、gH又はgHの断片を含む、抗原をコードする核酸配列によっ
て置換される。
【0213】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVの糖
タンパク質gL又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、25、50、75、
100、150、200、250個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である抗原をコードする核酸
配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコ
ードするORFは、gLの抗原性断片をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態
様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、限定されないが、gL
又はgLの断片を含む、抗原をコードする核酸配列によって置換される。
【0214】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVの五
量体複合タンパク質UL128又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、2
5、50、75、100、150、200、250個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である抗原をコ
ードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タ
ンパク質をコードするORFは、UL128の抗原性断片をコードする核酸配列によって置換され
る。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、限定
されないが、UL128又はUL128の断片を含む、抗原をコードする核酸配列によって置換され
る。
【0215】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVの五
量体複合タンパク質UL130又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、2
5、50、75、100、150、200個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である抗原をコードす
る核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク
質をコードするORFは、UL130の抗原性断片をコードする核酸配列によって置換される。あ
る実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、限定されな
いが、UL130又はUL130の断片を含む、抗原をコードする核酸配列によって置換される。
【0216】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、CMVの五
量体複合タンパク質UL131A又はその断片の遺伝子の遺伝子産物の少なくとも10、15、20、
25、50、75、100、150個、又はそれより多くのアミノ酸の断片である抗原をコードする核
酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質を
コードするORFは、UL131Aの抗原性断片をコードする核酸配列によって置換される。ある
実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、限定されない
が、UL131A又はUL131Aの断片を含む、抗原をコードする核酸配列によって置換される。
【0217】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、自己切
断ペプチド又はリボソームスキッピング配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳を
もたらす配列エレメント、例えば、IRESによって隔てられた、2つ、3つ、4つ、又は5つの
五量体複合タンパク質又はその少なくとも10、15、20、25、50、75、100、150個、もしく
はそれより多くのアミノ酸の断片をコードする核酸配列によって置換される。具体的な実
施態様において、自己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列は、テシオウイルス
2A(T2A)ペプチドである。
【0218】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gH、gL
、UL128、UL130、及びUL131Aをコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様に
おいて、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gH及びgLをコードする核
酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質を
コードするORFは、自己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列又はリボソームの
結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、IRESによって隔てられた、
gH、gL、UL128、UL130、及びUL131Aをコードする核酸配列によって置換される。ある実施
態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、T2Aによって隔てら
れた、gH、gL、UL128、UL130、及びUL131Aをコードする核酸配列によって置換される。あ
る実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするオープンリーディン
グフレームは、T2Aによって、gH及びgLをコードする核酸配列によって置換される。
【0219】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gH、gL
、UL128、UL130、及びUL131Aの細胞外ドメインをコードする核酸配列によって置換される
。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gH及びg
Lの細胞外ドメインをコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、
該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、自己切断ペプチド又はリボソーム
スキッピング配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、
例えば、IRESによって隔てられた、gH、gL、UL128、UL130、及びUL131Aの細胞外ドメイン
をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの
糖タンパク質をコードするORFは、T2Aによって隔てられた、gH及びgLをコードする核酸配
列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコー
ドするORFは、T2Aによって隔てられた、gH及びgLの細胞外ドメインをコードする核酸配列
によって置換される。
【0220】
ある他の実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、自
己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻
訳をもたらす配列エレメント、例えば、IRESによって隔てられた、2つ、3つ、4つ、5つ、
6つ、又は7つのCMV抗原、CMV抗原と異種配列との融合タンパク質、又はこれらの少なくと
も10、15、20、25、50、75、100、150個、もしくはそれより多くのアミノ酸の断片をコー
ドする核酸配列によって置換される。具体的な実施態様において、自己切断ペプチドは、
テシオウイルス2A(T2A)ペプチドである。
【0221】
ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、gB又は
その抗原性断片、pp65又はその抗原性断片、gH又はその抗原性断片、gL又はその抗原性断
片、UL128又はその抗原性断片、UL130又はその抗原性断片、及びUL131A又はその抗原性断
片のうちの1つ又は複数をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様におい
て、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、自己切断ペプチド又はリボソ
ームスキッピング配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメン
ト、例えば、IRESによって隔てられた、gB又はその抗原性断片、pp65又はその抗原性断片
、gH又はその抗原性断片、gL又はその抗原性断片、UL128又はその抗原性断片、UL130又は
その抗原性断片、及びUL131A又はその抗原性断片のうちの1つ又は複数をコードする核酸
配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコ
ードするORFは、T2Aによって隔てられた、gB又はその抗原性断片、pp65又はその抗原性断
片、gH又はその抗原性断片、gL又はその抗原性断片、UL128又はその抗原性断片、UL130又
はその抗原性断片、及びUL131A又はその抗原性断片のうちの1つ又は複数をコードする核
酸配列によって置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質を
コードするORFは、複数のコピーの本明細書におけるCMV抗原をコードする核酸配列によっ
て置換される。ある実施態様において、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするOR
Fは、自己切断ペプチド又はリボソームスキッピング配列又はリボソームの結合及び下流
配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、IRESによって隔てられた、複数のコピー
の本明細書におけるCMV抗原をコードする核酸配列によって置換される。ある実施態様に
おいて、該アレナウイルスの糖タンパク質をコードするORFは、T2Aによって隔てられた、
複数のコピーの本明細書におけるCMV抗原をコードする核酸配列によって置換される。
【0222】
(6.3 CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスの作製)
通常、アレナウイルス粒子は、標準的な逆遺伝学の技術により、LCMVについて記載され
ている通りに、組換えによって産生することができる(L. Flatz、A. Bergthaler、J. C.
de la Torre、及びD. D. Pinschewerの文献、Proc Natl Acad Sci USA 103:4663-4668, 2
006; A. B. Sanchez及びJ. C. de la Torreの文献、Virology 350:370, 2006; E. Ortiz-
Riano、B.Y. Cheng、J. C. de la Torre、L. Martinez-Sobridoの文献。J Gen Virol. 94
:1175-88, 2013)。本発明とともに使用するための感染性複製欠損アレナウイルスを作製
するために、これらの技術を使用することができるが、レスキューされたウイルスのゲノ
ムは、第6.1節に記載されるように改変される。これらの改変は、以下のようであること
ができる:i)正常細胞での感染性粒子の形成を妨げるために、4つのアレナウイルスORF(糖
タンパク質(GP);核タンパク質(NP);マトリックスタンパク質Z;RNA依存性RNAポリメラーゼ
L)のうちの1つ又は複数、例えば、2つ、3つ、又は4つが除去されているか又は機能的に不
活化されているが、アレナウイルスベクター感染宿主細胞での遺伝子発現は依然として可
能である;及びii)CMV抗原をコードする核酸を導入することができる。本明細書に記載さ
れる感染性複製欠損ウイルスは、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる国際特
許出願公開WO 2009/083210号(出願番号PCT/EP2008/010994)に記載されている通りに産生
することができる。
【0223】
ひとたびcDNAから生成させると、本明細書に提供される感染性複製欠損アレナウイルス
は、相補細胞で増殖させることができる。相補細胞は、そのゲノムの改変により複製欠損
アレナウイルスから除去されている機能性を提供する細胞である(例えば、GPタンパク質
をコードするORFが欠失しているか又は機能的に不活化されている場合でも、相補細胞は
、GPタンパク質を提供する)。
【0224】
アレナウイルスベクター中のウイルス遺伝子のうちの1つ又は複数が除去されているか
又は機能的に不活化されている(ここでは、糖タンパク質GPの欠失を例に取る)ため、アレ
ナウイルスベクターを、欠失したウイルス遺伝子(複数可)、例えば、この例では、GPをト
ランスに提供する細胞で生成及び増殖させることができる。そのような相補細胞株(以後
、C細胞と呼ぶ)は、哺乳動物細胞株、例えば、BHK-21、HEK 293、VERO、又はその他(ここ
では、BHK-21を例に取る)に、対象となるウイルス遺伝子(複数可)の発現のための1以上の
プラスミド(C-プラスミドと呼ばれる相補性プラスミド)をトランスフェクトすることによ
り作製される。C-プラスミド(複数可)は、ポリアデニル化シグナルを伴う、哺乳動物細胞
での発現に好適な1以上の発現カセット、例えば、哺乳動物ポリメラーゼIIプロモーター
、例えば、CMV又はEF1αプロモーターの制御下で生成されるアレナウイルスベクターで欠
失しているウイルス遺伝子(複数可)を発現する。さらに、相補性プラスミドは、哺乳動物
細胞での遺伝子発現に好適な発現カセット、例えば、上記のようなポリメラーゼII発現カ
セットの制御下にある、哺乳動物選択マーカー、例えば、ピューロマイシン耐性を特徴と
するか、又はウイルス遺伝子転写物(複数可)の後ろに、内部リボソーム進入部位、例えば
、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位があり、その後ろに、哺乳動物耐性マーカ
ーがある。大腸菌(E. coli)内での産生のために、該プラスミドはさらに、アンピシリン
耐性カセットなどの細菌選択マーカーを特徴とする。
【0225】
使用することができる細胞、例えば、BHK-21、HEK 293、MC57G、又はその他のものを、
培養下で保持し、これに、一般に使用される戦略、例えば、リン酸カルシウム、リポソー
ムに基づくプロトコル、又はエレクトロポレーションのいずれかを用いて、相補性プラス
ミド(複数可)をトランスフェクトする。数日後、好適な選択薬剤、例えば、ピューロマイ
シンを漸増濃度で添加する。生存しているクローンを単離し、標準的な手順に従ってサブ
クローニングし、対象となるウイルスタンパク質(複数可)に対する抗体とともにウェスタ
ンブロット法又はフローサイトメトリー法を用いて、高発現C細胞クローンを同定する。
安定にトランスフェクトされたC細胞の使用の代替法として、正常細胞の一過性トランス
フェクションは、C細胞を以下で使用する以下の工程の各々において、失われたウイルス
遺伝子(複数可)を相補することができる。さらに、ヘルパーウイルスを用いて、失われた
機能性をトランスに提供することができる。
【0226】
使用することができるプラスミドは、2つのタイプのもの:i)本例では、例えば、LCMVの
NPタンパク質及びLタンパク質に由来する、アレナウイルスの最小限のトランス作用因子
をC細胞で細胞内発現させるためのTF-プラスミドと呼ばれる2つのプラスミド;及びii)ア
レナウイルスベクターゲノム断片、例えば、設計された改変を有するセグメントをC細胞
で細胞内発現させるためのGS-プラスミドと呼ばれるプラスミドであることができる。TF-
プラスミドは、それぞれのアレナウイルスベクターのNPタンパク質及びLタンパク質を、
哺乳動物細胞でのタンパク質発現に好適な発現カセット、通常、例えば、哺乳動物ポリメ
ラーゼIIプロモーター、例えば、CMV又はEF1αプロモーターの制御下で、これらのうちの
どちらか一方をポリアデニル化シグナルと優先的に組み合わせて発現する。GS-プラスミ
ドは、該ベクターの小さい(S)ゲノムセグメント及び大きい(L)ゲノムセグメントを発現す
る。通常、ポリメラーゼI駆動性発現カセット又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ
(T7-)駆動性発現カセットを使用することができ、後者は、3'末端リボソームを一次転写
物のプロセシングに優先的に用いて、正確な末端を生じさせる。T7系システムを使用する
場合、C細胞でのT7の発現は、TF-プラスミドと類似した形で構築される、T7を提供するさ
らなる発現プラスミドをリカバリープロセスで含めることによってもたらされなければな
らないか、又はC細胞は、安定な様式でT7をさらに発現するように構築される。ある実施
態様において、TFプラスミドとGSプラスミドは同じであることができる、すなわち、ゲノ
ム配列及びトランス作用因子は、T7、polI、及びpolIIプロモーターによって、1つのプラ
スミドから転写されることができる。
【0227】
該アレナウイルスベクターの回収のために、以下の手順を使用することができる。初日
: M6ウェルプレートで通常80%コンフルエントのC細胞に、2つのTF-プラスミドと2つのGS
-プラスミドの混合物をトランスフェクトする。ある実施態様において、TFプラスミドとG
Sプラスミドは同じであることができる、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は
、T7、polI、及びpolIIプロモーターによって、1つのプラスミドから転写されることがで
きる。このため、一般に使用される戦略、例えば、リン酸カルシウム、リポソームに基づ
くプロトコル、又はエレクトロポレーションのいずれかを利用することができる。
【0228】
3~5日後:培養上清(アレナウイルスベクター調製物)を回収し、分注し、使用前にアレ
ナウイルスベクターが保存されるべき長さに応じて、4℃、-20℃、又は-80℃で保存する
。その後、該アレナウイルスベクター調製物の感染力価をC細胞に対するイムノフォーカ
スアッセイにより評価する。
【0229】
本発明はさらに、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスに感染している細
胞培養物におけるCMV抗原の発現に関する。培養細胞におけるCMV抗原の発現に用いる場合
、以下の2つの手順を用いることができる:
【0230】
i)対象となる細胞型に、本明細書に記載されるアレナウイルスベクター調製物を、1以
上、例えば、2、3、又は4の感染多重度(MOI)で感染させて、感染直後に既に、全ての細胞
でCMV抗原の産生を生じさせる。
【0231】
ii)或いは、より低いMOIを使用することができ、個々の細胞クローンをそのウイルス駆
動性CMV抗原発現レベルについて選択することができる。その後、アレナウイルスベクタ
ーの細胞非溶解性の性質のために、個々のクローンを無限に増殖させることができる。そ
の手法に関係なく、その後、CMV抗原を、産生されるCMV抗原の特性に応じて、培養上清又
は細胞自体のどちらかから回収(及び精製)することができる。しかしながら、本発明は、
これら2つの戦略に限定されるものではなく、感染性複製欠損アレナウイルスをベクター
として用いてCMV抗原の発現を駆動する他の方法を考慮することができる。
【0232】
(6.4 核酸、ベクター系、及び細胞株)
一実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される感染性複製欠
損アレナウイルスの大きいゲノムセグメント(Lセグメント)をコードする核酸配列であり
、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不活化されて
おり、かつ該ゲノムセグメントは、CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0233】
一実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される感染性複製欠
損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列であり、
ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不活化されてお
り、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む。別
の実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される感染性複製欠損
アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列であり、こ
こで、糖タンパク質遺伝子のORFは、欠失しているか又は機能的に不活化されており、か
つ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む。あるより
具体的な実施態様において、CMV抗原は、第6.2節に記載される抗原である。
【0234】
ある実施態様において、本明細書に提供される核酸配列は、LCMVの特定の株に由来する
ことができる。LCMVの株としては、クローン13、MP株、Arm CA 1371、Arm E-250、WE、UB
C、Traub、Pasteur、810885、CH-5692、Marseille #12、HP65-2009、200501927、810362
、811316、810316、810366、20112714、Douglas、GR01、SN05、CABN、及びこれらの派生
物が挙げられる。具体的な実施態様において、該核酸は、LCMVクローン13に由来する。他
の具体的な実施態様において、該核酸は、LCMV MP株に由来する。
【0235】
より具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号1、配列番号4、
配列番号7、配列番号10、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号2
5, OR 配列番号28、配列番号34、配列番号37、配列番号44、又は配列番号50の配列と少な
くとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は
100%同一である配列を含むアレナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)配列番号31のヌクレオチド1639
~3315の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少
なくとも99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列;及び(ii)CMV抗原をコードするヌ
クレオチド配列を含むアレナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。
【0236】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)そのアミノ酸配列が、配列番
号31の1639~3315によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一である発現産物を
コードするヌクレオチド配列;及び(ii)CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含むアレ
ナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。
【0237】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)配列番号32のヌクレオチド164
0~3316の配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
少なくとも99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列;及び(ii)CMV抗原をコードする
ヌクレオチド配列を含むアレナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。
【0238】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)そのアミノ酸配列が、配列番
号32の1640~3316によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一である発現産物を
コードするヌクレオチド配列;及び(ii)CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含むアレ
ナウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。
【0239】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)少なくとも1つの自己切断ペプ
チド(又はリボソームスキッピング配列)をコードするヌクレオチド配列;及び(ii) 2つ、3
つ、4つ、5つ、又はそれより多くのCMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含むアレナ
ウイルスゲノムセグメントをコードする核酸である。具体的な実施態様において、自己切
断ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、テシオウイルス2Aをコードする。ある実施
態様において、本明細書に提供されるのは、自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピ
ング配列)(例えば、T2A)をコードする1以上のヌクレオチド配列によって隔てられた、2つ
、3つ、4つ、又は5つの五量体複合タンパク質をコードする核酸である。ある他の実施態
様において、本明細書に提供されるのは、自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピン
グ配列)をコードする1以上のヌクレオチド配列によって隔てられた、1以上のgBタンパク
質又はその断片及び1以上の他のCMV抗原をコードする核酸である。他の実施態様において
、本明細書に提供されるのは、自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピング配列)をコ
ードする1以上のヌクレオチド配列によって隔てられた、1以上のpp65 タンパク質又はそ
の断片及び1以上の他のCMV抗原をコードする核酸である。具体的な実施態様において、本
明細書に提供されるのは、自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピング配列)をコード
する1以上のヌクレオチド配列によって隔てられた、1以上の五量体タンパク質又はその断
片及び1以上の他のCMV抗原をコードする核酸である。
【0240】
一実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される感染性複製欠
損アレナウイルス粒子のゲノムをまとめてコードする1以上のベクターを含むベクター系
である。具体的に、本明細書に提供されるのは、1以上のベクターが、本明細書に記載さ
れる感染性複製欠損アレナウイルスの2つのアレナウイルスゲノムセグメント、すなわち
、Lセグメント及びSセグメントをコードするベクター系である。そのようなベクター系は
、以下のものを(1以上の別々のDNA分子上に)コードすることができる:
【0241】
この改変されたSゲノムセグメントを担持するアレナウイルス粒子が感染性子孫ウイル
ス粒子を産生することができないように改変されているアレナウイルスSゲノムセグメン
ト、及びCMV抗原を(センス又はアンチセンスで)コードするヌクレオチド配列を含むアレ
ナウイルスLゲノムセグメント;
【0242】
この改変されたLゲノムセグメントを担持するアレナウイルス粒子が感染性子孫ウイル
ス粒子を産生することができないように改変されているアレナウイルスLゲノムセグメン
ト、及びCMV抗原を(センス又はアンチセンスで)コードするヌクレオチド配列を含むアレ
ナウイルスSゲノムセグメント;
【0243】
この改変されたSゲノムセグメントを担持するアレナウイルス粒子が感染性子孫ウイル
ス粒子を産生することができないように改変されており、かつCMV抗原を(センス又はアン
チセンスで)コードするヌクレオチド配列を含む、アレナウイルスSゲノムセグメント、及
び野生型アレナウイルスLゲノムセグメント;又は
【0244】
この改変されたLゲノムセグメントを担持するアレナウイルス粒子が感染性子孫ウイル
ス粒子を産生することができないように改変されており、かつCMV抗原を(センス又はアン
チセンスで)コードするヌクレオチド配列を含む、アレナウイルスLゲノムセグメント、及
び野生型アレナウイルスSゲノムセグメント。
【0245】
ある実施態様において、本明細書に記載されるのは、SゲノムセグメントのGPをコード
するORFが:
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
・サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
・サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
・サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列
をコードするヌクレオチド配列と置換されているアレナウイルス(例えば、LCMV)ゲノムセ
グメントをコードする核酸配列である。
【0246】
ある実施態様において、本明細書に記載されるのは、SゲノムセグメントのGPをコード
するORFが、自己切断ペプチド(又はリボソームスキッピング配列)をコードするヌクレオ
チド配列によって隔てられた、1以上のCMV抗原配列(例えば、上の段落で列挙されている
もののうちの1つ又は複数)をコードするヌクレオチド配列と置換されているアレナウイル
ス(例えば、LCMV)ゲノムセグメントをコードする核酸配列である。具体的な実施態様にお
いて、自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、テシオウイルス2Aをコードす
る。
【0247】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、この節で上に記載されている核酸
又はベクター系を含む細胞である。そのような細胞に由来する細胞株、そのような細胞を
含む培養物、及び感染したそのような細胞を培養する方法も本明細書に提供される。ある
実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製欠損ア
レナウイルスの大きいゲノムセグメント(Lセグメント)をコードする核酸を含む細胞であ
り、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不活化され
ており、かつ該ゲノムセグメントは、CMV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0248】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原gB又はその抗原性断片をコー
ドするヌクレオチド配列を含む。
【0249】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原gB由来の少なくとも1つのドメ
イン及びVSV-G由来の異種ドメインを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む。
【0250】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原gB由来の少なくとも1つのドメ
イン及びFlu-HA由来の異種ドメインを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
を含む。
【0251】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原pp65又はその抗原性断片をコ
ードするヌクレオチド配列を含む。
【0252】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、CMV抗原gH、gL、UL128、UL130、UL131
Aのうちの1つもしくは複数又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列を含む。具
体的な実施態様において、該ゲノムセグメントは、1以上の自己切断ペプチド(又はリボソ
ームスキッピング配列)によって隔てられた、gH、gL、UL128、UL130、UL131Aを含むCMV抗
原の群のうちの1つもしくは複数又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列を含
む。より具体的な実施態様において、1以上の自己切断ペプチドは、T2Aペプチドである。
【0253】
他の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスの短いゲノムセグメント(Sセグメント)をコードする核酸配列を含む
細胞であり、ここで、該ゲノムセグメントの1つのORFは、欠失しているか又は機能的に不
活化されており、かつ該短いゲノムセグメントは、1以上の自己切断ペプチド(又はリボソ
ームスキッピング配列)によって隔てられたCMV抗原のうちの1つ又は複数をコードするヌ
クレオチド配列を含む。具体的な実施態様において、1以上の自己切断ペプチドは、T2Aペ
プチドである。
【0254】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される2つの核酸
又は1つのベクター系を含む細胞である。そのような細胞に由来する細胞株、そのような
細胞を含む培養物、及び感染したそのような細胞を培養する方法も本明細書に提供される
【0255】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号49又は配列番号53と少な
くとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるヌクレオチド配
列を含む核酸である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号49又
は配列番号53と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一で
あるヌクレオチド配列を含む発現ベクターである。ある実施態様において、本明細書に提
供されるのは、配列番号49又は配列番号53と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、
85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む宿主細胞である。
【0256】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号54、55、56、又は57と少
なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、
92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸である。ある実施態様において、本明細書に提
供されるのは、配列番号54、55、56、又は57と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%
、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む発
現ベクターである。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号54、55
、56、又は57と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一で
あるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む宿主細胞である。
【0257】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号54、55、56、又は57と少
なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、
92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列
を含む単離されたタンパク質である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは
、配列番号54、55、56、又は57と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%
、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、
又は100%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質を発現する宿主細胞である。ある実
施態様において、該宿主細胞は、細胞培養培地で培養される。
【0258】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号32又は配列番号33と少な
くとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるヌクレオチド配
列を含む核酸である。ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、配列番号32又
は配列番号33と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一で
あるヌクレオチド配列を含む発現ベクターである。ある実施態様において、本明細書に提
供されるのは、配列番号32又は配列番号33と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、
85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む宿主細胞である。
【0259】
(6.5 使用方法)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染を治療する方法であって
、該対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイ
ルス又はその組成物を投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本
明細書に記載される感染を治療する方法は、それを必要とする対象に、有効量の本明細書
に記載されるCMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物を
投与することを含む。該対象は、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、モルモット、
家畜、例えば、限定されないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムス
ター、ロバなどの、哺乳動物であることができる。具体的な実施態様において、該対象は
、ヒトである。
【0260】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象におけるCMVに対する免疫応
答を誘導する方法であって、該対象に、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイル
ス又はその組成物を投与することを含む、方法である。
【0261】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物が投与される対象は、CMV感染もしくは再活性化を有するか、
それを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている。別の具体的な実施態様において
、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成
物が投与される対象は、CMVの感染もしくはCMVによる再活性化によって冒されているか、
それを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている。
【0262】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物が投与される対象は、とりわけ、肺系統、中枢神経系、リンパ
系、消化器系、もしくは循環器系におけるCMVの感染に悩まされているか、それを起こし
やすいか、又はそのリスクに曝されている。具体的な実施態様において、本明細書に記載
されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物が投与される対
象は、限定されないが、脳、肝臓、肺、目、耳、腸、食道、又は唾液腺を含む、身体の1
以上の器官におけるCMVの感染に悩まされているか、それを起こしやすいか、又はそのリ
スクに曝されている。
【0263】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物が対象に投与される対象は、限定されないが、発熱、寝汗、疲
労、不快感、不安、咽頭痛、腺の腫脹、関節痛、筋肉痛、食欲不振、体重減少、下痢、胃
腸潰瘍、胃腸出血、息切れ、肺炎、口腔内潰瘍、視覚の問題、肝炎、黄疸、脳炎、発作、
昏睡、又は聴力損失を含む症状に悩まされている。
【0264】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物は、CMVの感染に悩まされているか、それを起こしやすいか、
又はそのリスクに曝されている任意の年齢層の対象に投与される。具体的な実施態様にお
いて、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその
組成物は、免疫系不全を有する対象、妊娠している対象、臓器移植もしくは骨髄移植を受
けている対象、免疫抑制薬を服用している対象、血液透析を受けている対象、癌を有する
対象、又はCMVの感染もしくはCMVの再活性化に悩まされているか、それを起こしやすいか
、もしくはそのリスクに曝されている対象に投与される。より具体的な実施態様において
、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成
物は、CMVの感染又はCMVの再活性化に悩まされているか、それを起こしやすいか、もしく
はそのリスクに曝されている、HIV感染が原因で免疫系不全を有する対象に投与される。
また別の具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複
製欠損アレナウイルス又はその組成物は、CMVの感染又はCMVの再活性化に悩まされている
か、それを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている、0、1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17歳の子供である対象に投与される。また別の
具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損ア
レナウイルス又はその組成物は、CMVの感染又はCMVの再活性化に悩まされているか、それ
を起こしやすいか、もしくはそのリスクに曝されている幼児である対象に投与される。ま
た別の具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製
欠損アレナウイルス又はその組成物は、CMVの感染又はCMVの再活性化に悩まされているか
、それを起こしやすいか、もしくはそのリスクに曝されている、0、1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、又は12カ月齢の幼児である対象に投与される。また別の具体的な実施態
様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又
はその組成物は、CMVの感染又はCMVの再活性化に悩まされているか、それを起こしやすい
か、もしくはそのリスクに曝されている高齢対象に投与される。
【0265】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物は、播種性CMV感染のリスクが高まっている対象に投与される
。具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損
アレナウイルス又はその組成物は、未熟な新生児免疫系を有する新生児期の対象に投与さ
れる。
【0266】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物は、CMVの潜伏感染を有する対象に投与される。具体的な実施
態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス
又はその組成物は、免疫系を危機に曝したときに再活性化し得るCMVの潜伏感染を有する
対象に投与される。したがって、本明細書に提供されるのは、CMVの再活性化を予防する
方法である。
【0267】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物は、1以上のCMV株に感染した対象に投与される。ある実施態様
において、1以上のこれらの株には、AD169、Towne、Merlin、Toledo、FIX、PH、TR、Davi
s、TB40/E、3157、6397、711、5234、又はその他の株が含まれる。
【0268】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレ
ナウイルス又はその組成物を対象に投与すると、CMVの感染又はCMVの再活性化に対する細
胞性免疫(CMI)が付与される。理論に束縛されるものではないが、別の実施態様において
、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成
物が感染し、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI及びII上での抗原の直接的な提示のため
に、対象となる抗原を宿主の抗原提示細胞(APC)(例えば、マクロファージ)で発現する。
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナ
ウイルス又はその組成物を対象に投与すると、CMVの感染又はCMVの再活性化を治療又は予
防するための規模の大きい多機能なIFN-γ及びTNF-α共産生CMV特異的CD4+及びCD8+ T細
胞応答が誘導される(IFN-γはCD4+及びCD8+ T細胞によって産生され、TNF-αはCD4+ T細
胞によって産生される)。
【0269】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組
成物を投与すると、個体がCMVの感染又はCMVの再活性化を生じるリスクが、そのような治
療の非存在下でCMVの感染又はCMVの再活性化を生じるリスクと比較して、少なくとも約10
%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少な
くとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約
80%、少なくとも約90%、又はそれより大きく低下する。
【0270】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組
成物を投与すると、CMVの感染又はCMVの再活性化の症状が、そのような治療の非存在下で
のCMVの感染又はCMVの再活性化の症状の発現と比較して、少なくとも約10%、少なくとも
約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、
少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくと
も約90%、又はそれより大きく低下する。
【0271】
別の実施態様において、未成熟な新生児免疫系を有する対象においてCMV抗原を発現す
る感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物を投与すると、CMVの感染又はCMVの再活
性化に対する細胞性免疫(CMI)応答が、そのような治療の非存在下でのCMVの感染又はCMV
の再活性化に対する細胞性免疫(CMI)応答と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約2
0%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少
なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも
約90%、又はそれよりも大きく誘導される。
【0272】
ある実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組
成物を投与すると、唾液腺又は別の組織学的試料で検出される封入体の数が低下する。あ
る実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物
を投与すると、患者血液試料中で検出される抗CMV抗体の数が低下する。ある実施態様に
おいて、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物を投与すると
、CMV pp65抗原血症検査により末梢血白血球中に検出されるCMV pp65の量が低下する。あ
る実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物
を投与すると、尿、唾液、血液、涙液、精液、又は母乳中に検出されるCMVの量が低下す
る。ある実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその
組成物を投与すると、尿、咽頭スワブ、気管支洗浄液、又は組織試料から培養されるウイ
ルスのレベルが低下する。ある実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損ア
レナウイルス又はその組成物を投与すると、定量的又は定性的PCR検査により検出される
ウイルスのレベルが低下する。
【0273】
対象においてCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルス又はその組成物を投与
することにより誘導されるCMVの感染又はCMVの再活性化に対する細胞性免疫(CMI)応答機
能の変化は、当業者に公知の任意のアッセイによって測定することができ、該アッセイに
は、フローサイトメトリー(例えば、Perfetto S.P.らの文献、Nat Rev Immun. 2004; 4(8
):648-55参照)、リンパ球増殖アッセイ(例えば、Bonilla F.A.らの文献、Ann Allergy As
thma Immunol. 2008; 101:101-4;及びHicks M.J.らの文献、Am J Clin Pathol. 1983; 80
:159-63参照)、Tリンパ球のサイトカインの測定に関して活性化後の表面マーカー発現の
変化を決定することを含む、リンパ球活性化を測定するためのアッセイ(例えば、Caruso
A.らの文献、Cytometry. 1997;27:71-6参照)、ELISPOTアッセイ(例えば、Czerkinsky C.C
.らの文献、J Immunol Methods. 1983; 65:109-121;及びHutchings P.R.らの文献、J Imm
unol Methods. 1989; 120:1-8参照)、又はナチュラルキラー細胞の細胞傷害性アッセイ(
例えば、Bonilla F.A.らの文献、Ann Allergy Asthma Immunol. 2005 May; 94(5 Suppl 1
):S1-63参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0274】
別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載されるCMV抗原を
発現する感染性複製欠損アレナウイルス(例えば、LCMV)に関する使用方法であって、Sゲ
ノムセグメントのGPをコードするORFが:
a.CMV糖タンパク質gBもしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b.CMVテグメントタンパク質pp65もしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配
列;
c.CMV糖タンパク質gHもしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d.CMV糖タンパク質gLもしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e.CMV UL128タンパク質もしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f.CMV UL130タンパク質もしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;又は
g.CMV UL131Aタンパク質もしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
をコードするヌクレオチド配列と置換されている、方法である。
【0275】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/
又は感染を予防する方法であって、妊娠可能年齢の対象に、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。第6.2
節を参照されたい。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎
児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防する方法であって、妊娠可能年齢の血清陰性対象に
、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与するこ
とを含む、方法である。また別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親か
ら胎児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防する方法であって、子を産む意向の妊娠可能年
齢の対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを
投与することを含む、方法である。
【0276】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/
又は感染を予防する方法であって、妊娠可能年齢の対象に、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である
。第6.2節を参照されたい。具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、母
親から胎児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防する方法であって、妊娠可能年齢の血清陰
性対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイル
スを投与することを含む、方法である。また別の実施態様において、本明細書に提供され
るのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/又は感染を予防する方法であって、子を産む意
向の妊娠可能年齢の対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する1以上の感染性複製
欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。
【0277】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/
又は感染を予防する方法であって、妊娠している対象に、本明細書に記載されるCMV抗原
を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。具体的な
実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/又は感
染を予防する方法であって、妊娠している対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現
する感染性複製欠損アレナウイルスの有効量を投与することを含む、方法である。
【0278】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及び/
又は感染を予防する方法であって、妊娠している対象に、本明細書に記載されるCMV抗原
を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、母親から胎児へのCMVの伝播及
び/又は感染を予防する方法であって、妊娠している対象に、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルスの有効量を投与することを含む、方
法である。
【0279】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与する
と、症候性先天性CMV感染が低下する。別の実施態様において、CMV抗原を発現する感染性
複製欠損アレナウイルスを投与すると、無症候性先天性CMV感染が低下する。
【0280】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投
与すると、症候性先天性CMV感染が低下する。別の実施態様において、CMV抗原を発現する
1以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投与すると、無症候性先天性CMV感染が低下する
【0281】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを投与する
と、先天性CMV感染の発現が、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも25%、
少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくと
も約60%、少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれより大きく低
下する。別の具体的な実施態様において、CMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイ
ルスを投与すると、先天性CMV感染による新生児の死亡率が低下する。
【0282】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投
与すると、先天性CMV感染の発現が、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも2
5%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少
なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又はそれより大
きく低下する。別の具体的な実施態様において、CMV抗原を発現する1以上の感染性複製欠
損アレナウイルスを投与すると、先天性CMV感染による新生児の死亡率が低下する。
【0283】
先天性CMVのそのような発現には、精神遅滞、盲目及び感音性難聴、小頭症、脈絡網膜
炎、頭蓋内石灰沈着、肝脾腫大症、肝炎、黄疸、直接型高ビリルビン血症、血小板減少症
、点状出血、羊水過少、羊水過多、早産、子宮内発育遅滞、非免疫性水腫、胎児腹水、低
血圧(hyptonia)、並びに貧血が含まれるが、これらに限定されない。
【0284】
(6.6 組成物、投与、及び投薬量)
本発明はさらに、本明細書に記載される遺伝子改変アレナウイルスを含む、ワクチン、
免疫原性組成物、及び医薬組成物に関する。そのようなワクチン及び医薬組成物は、当技
術分野における標準的な手順に従って製剤化することができる。
【0285】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される感染性複製
欠損アレナウイルスを含む組成物である。そのような組成物は、疾患の治療及び予防の方
法において使用することができる。具体的な実施態様において、本明細書に記載される組
成物は、CMVの感染もしくはCMVの再活性化によって冒されているか、又はそれを起こしや
すい対象の治療において使用される。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供さ
れる免疫原性組成物を用いて、該組成物が投与される宿主における免疫応答を誘導するこ
とができる。本明細書に記載される免疫原性組成物はワクチンとして使用することができ
、かつ適宜、医薬組成物として製剤化することができる。具体的な実施態様において、本
明細書に記載される免疫原性組成物は、対象(例えば、ヒト対象)へのCMVの感染又は対象(
例えば、ヒト対象)におけるCMVの再活性化の予防において使用される。
【0286】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるアレナウイ
ルスベクター(又は様々なアレナウイルスベクターの組合せ)を含む免疫原性組成物である
。ある実施態様において、そのような免疫原性組成物は、医薬として許容し得る賦形剤を
さらに含む。ある実施態様において、そのような免疫原性組成物は、アジュバントをさら
に含む。本明細書に記載される組成物と組み合わせた投与のためのアジュバントは、該組
成物の投与の前に、該投与と同時に、又は該投与の後に投与することができる。いくつか
の実施態様において、「アジュバント」という用語は、本明細書に記載される組成物と併
せて又はその一部として投与されたとき、感染性複製欠損アレナウイルス粒子に対する免
疫応答を強化、増強、及び/又は亢進するが、該化合物が単独で投与されたとき、該感染
性複製欠損アレナウイルス粒子に対する免疫応答を発生させない化合物を指す。いくつか
の実施態様において、アジュバントは、感染性複製欠損アレナウイルス粒子に対する免疫
応答を発生させるが、アレルギーも他の有害反応も生じさせない。アジュバントは、例え
ば、リンパ球動員、B及び/又はT細胞の刺激、並びにマクロファージの刺激を含む、いく
つかの機構によって免疫応答を増強することができる。本発明のワクチン又は免疫原性組
成物がアジュバントを含むか、又は1以上のアジュバントと一緒に投与される場合、使用
することができるアジュバントとしては、無機塩アジュバント又は無機塩ゲルアジュバン
ト、粒子状アジュバント、微粒子状アジュバント、粘膜アジュバント、及び免疫刺激性ア
ジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントの例としては、アルミ
ニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、及び硫酸ア
ルミニウム)、3脱-O-アシル化モノホスホリル脂質A(MPL)(GB 2220211号参照)、MF59(Nova
rtis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80;
ICL Americas社)、イミダゾピリジン化合物(国際公開WO2007/109812号として公開された
国際出願PCT/US2007/064857号参照)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開WO2007/1098
13号として公開された国際出願PCT/US2007/064858号参照)、並びにサポニン、例えば、QS
21(ワクチン設計(Vaccine Design)におけるKensilらの文献:サブユニット及びアジュバン
トアプローチ(The Subunit and Adjuvant Approach)(Powell及びNewman編、Plenum Press
, NY, 1995);米国特許第5,057,540号参照)が挙げられるが、これらに限定されない。いく
つかの実施態様において、アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)で
ある。他のアジュバントは、モノホスホリル脂質Aなどの免疫刺激物と任意に組み合わせ
た水中油型エマルジョン(例えば、スクアレン又はピーナツ油)である(Stouteらの文献、N
. Engl. J. Med. 336, 86-91(1997)参照)。
【0287】
組成物は、本明細書に記載される感染性複製欠損アレナウイルスを単独で又は医薬とし
て許容し得る担体と一緒に含む。遺伝子改変アレナウイルスの懸濁液又は分散液、とりわ
け、等張水性懸濁液又は分散液を使用することができる。医薬組成物は滅菌することがで
き、並びに/又は賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、及び/もしくは乳化剤、可
溶化剤、浸透圧を調節するための塩、並びに/又は緩衝剤を含むことができ、かつ例えば
、従来の分散及び懸濁プロセスにより、それ自体公知の方法で調製される。ある実施態様
において、そのような分散液又は懸濁液は、粘度調節剤を含むことができる。該懸濁液又
は分散液を2~8℃前後の温度で維持するか、又は優先的に長期保存のために、凍結させ、
その後、使用直前に解凍することができる。注射のために、ワクチン又は免疫原性調製物
は、水性溶液中に、好ましくは、生理的に適合性のある緩衝液、例えば、ハンクス溶液、
リンガー溶液、又は生理食塩水緩衝液中に製剤化することができる。該溶液は、配合剤、
例えば、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含有することができる。
【0288】
ある実施態様において、本明細書に記載される組成物は、防腐剤、例えば、水銀誘導体
のチメロサールをさらに含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載される医薬組
成物は、0.001%~0.01%のチメロサールを含む。他の実施態様において、本明細書に記
載される医薬組成物は、防腐剤を含まない。
【0289】
医薬組成物は、約103~約1011フォーカス形成単位の遺伝子改変アレナウイルスを含む
。非経口投与のための単位用量形態は、例えば、アンプル又はバイアル、例えば、約103
~1010フォーカス形成単位又は105~1015個の物理的粒子の遺伝子改変アレナウイルスを
含有するバイアルである。
【0290】
別の実施態様において、本明細書に提供されるワクチン又は免疫原性組成物は、例えば
、限定されないが、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、局所、皮下、経皮、鼻腔内、
及び吸入経路により、並びにスカリフィケーション(例えば、二股針を用いて、皮膚の最
上層から傷を付けること)により、対象に投与される。具体的には、皮下又は静脈内経路
を使用することができる。
【0291】
鼻腔内への又は吸入による投与のために、本発明による使用のための調製物は、好適な
噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテト
ラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスを用いて、加圧パック又はネブライ
ザーからエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達することができる。加圧エアロゾ
ルの場合、投薬量単位は、定量を送達するためのバルブを提供することにより決定するこ
とができる。吸入器又は注入器で使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカー
トリッジは、化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含ん
で製剤化することができる。
【0292】
活性成分の投薬量は、ワクチン接種の種類によって、並びに対象及びその年齢、体重、
個々の状態、個々の薬物動態データ、並びに投与様式によって決まる。
【0293】
本発明は、遺伝子改変アレナウイルスを活性成分として含む医薬調製物の形態のワクチ
ンの製造のための方法及び該製造のための遺伝子改変アレナウイルスの使用に関する。本
発明の医薬組成物は、例えば、従来の混合及び/又は分散プロセスにより、それ自体公知
の方法で調製される。
【0294】
(6.7 LCMVベクターの作製の最適化)
アレナウイルスベクター中のウイルス遺伝子のうちの1つ又は複数が除去されているか
又は機能的に不活化されている(ここでは、糖タンパク質GPの欠失を例に取る)ため、アレ
ナウイルスベクターを、欠失した又は機能的に不活化されたウイルス遺伝子(複数可)(例
えば、GP)を「トランスに」提供する細胞で生成及び増殖させることができる。得られる
ウイルス自体は感染性であるが、欠失した又は機能的に不活化されたウイルス遺伝子(複
数可)(例えば、GP)を欠いているため、非相補細胞でさらなる感染性子孫粒子を産生する
ことができない。相補細胞は、安定なトランスフェクション、一過性のトランスフェクシ
ョンによるか、又は失われた機能性を発現するヘルパーウイルスの感染によって、失われ
た機能性を提供することができる。
【0295】
ある実施態様において、相補細胞は、アレナウイルスベクターゲノムから欠失している
か又は機能的に不活化されているウイルス遺伝子を提供する。具体的な実施態様において
、相補細胞は、アレナウイルスベクターのゲノムを作製するために使用されたウイルス株
と同じウイルス株由来のウイルス遺伝子を提供する。別の実施態様において、相補細胞は
、アレナウイルスベクターのゲノムを作製するために使用されたウイルス株と異なるウイ
ルス株由来のウイルス遺伝子を提供する。例えば、相補細胞で提供されるウイルス遺伝子
は、LCMVのMP株から得られ、配列番号54、55、56、又は57のアミノ酸配列を有するタンパ
ク質をコードする。
【0296】
具体的な実施態様において、相補細胞は、LCMVのMP株のGPを提供し、アレナウイルスベ
クターは、GPタンパク質をコードするORFの代わりに、本明細書に記載されるヒトCMV抗原
のORFを含む。さらにより具体的な実施態様において、相補細胞は、LCMVのMP株のGPを提
供し、アレナウイルスベクターは、LCMVクローン13から得られ、GPタンパク質をコードす
るORFの代わりに、本明細書に記載されるヒトCMV抗原のORFを含む。さらにより具体的な
実施態様において、GPタンパク質は、配列番号55のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一である
【0297】
(6.8 併用療法)
(6.8(a)方法)
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCMV感染を治療及び/又は予防
する方法であって、該対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感染性複
製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。例えば、第6.2節を参照され
たい。具体的な実施態様において、CMV感染を治療及び/又は予防する方法は、例えば、S
ゲノムセグメントのGPをコードするORFがCMV抗原をコードするヌクレオチド配列と置換さ
れており、ここで、該CMV抗原が:
a)CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c)CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d)CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e)CMV糖タンパク質UL128又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f)CMV糖タンパク質UL130又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
g)CMV糖タンパク質UL131A又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
であることができるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるCMV抗原を発現す
る第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及び例えば、SゲノムセグメントのGPをコードす
るORFがCMV抗原をコードするヌクレオチド配列と置換されており、ここで、該CMV抗原が:
a)CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c)CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d)CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e)CMV糖タンパク質UL128又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f)CMV糖タンパク質UL130又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
g)CMV糖タンパク質UL131A又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列
であることができるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるCMV抗原を発現す
る第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む。
【0298】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、CMV感染を治療及び/又は予防
する方法であって、本明細書に記載される、CMVテグメントタンパク質pp65もしくはその
抗原性断片; CMV糖タンパク質gHもしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質gL; CMV糖タ
ンパク質UL128もしくはその抗原性断片;もしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質UL130
もしくはその抗原性断片;又はCMV糖タンパク質UL131Aもしくはその抗原性断片:から選択
される、第1のCMV抗原を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及びCMV糖タンパ
ク質gBもしくはその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列; CMVテグメントタンパク
質pp65もしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質gHもしくはその抗原性断片; CMV糖タン
パク質gL; CMV糖タンパク質UL128もしくはその抗原性断片;もしくはその抗原性断片; CMV
糖タンパク質UL130もしくはその抗原性断片;又はCMV糖タンパク質UL131Aもしくはその抗
原性断片:から選択される、第2のCMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルス
を投与することを含む、方法である。
【0299】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、感染を治療及び/又は予防する方
法であって、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2つのアレナウイルスベクターコン
ストラクトを投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、該2つのア
レナウイルスベクターコンストラクトは、異なるCMV抗原を発現する。
【0300】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、感染を治療及び/又は予防する方
法であって、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上のアレナウイルスベクターコ
ンストラクトを投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において、本明細書
に提供されるのは、感染を治療及び/又は予防する方法であって、本明細書に記載されるC
MV抗原を発現する3以上のアレナウイルスベクターコンストラクトを投与することを含む
、方法である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、感染を治療及び/又
は予防する方法であって、本明細書に記載されるCMV抗原を各々発現する、4以上のアレナ
ウイルスベクターコンストラクト、5以上のアレナウイルスベクターコンストラクト、6以
上のアレナウイルスベクターコンストラクト、又は7つのアレナウイルスベクターコンス
トラクトを投与することを含む、方法である。ある実施態様において、該アレナウイルス
ベクターコンストラクトは、LCMVであることができる。
【0301】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、感染を治療及び/又は予防する方
法であって、本明細書に記載される異なるCMV抗原を各々発現する2以上のアレナウイルス
ベクターコンストラクトを投与することを含む、方法である。具体的な実施態様において
、本明細書に提供されるのは、感染を治療及び/又は予防する方法であって、本明細書に
記載される異なるCMV抗原を各々発現する3以上のアレナウイルスベクターコンストラクト
を投与することを含む、方法である。別の実施態様において、本明細書に提供されるのは
、感染を治療及び/又は予防する方法であって、本明細書に記載される異なるCMV抗原を各
々発現する、4以上のアレナウイルスベクターコンストラクト、5以上のアレナウイルスベ
クターコンストラクト、6以上のアレナウイルスベクターコンストラクト、又は7つのアレ
ナウイルスベクターコンストラクトを投与することを含む、方法である。ある実施態様に
おいて、該アレナウイルスベクターコンストラクトは、LCMVであることができる。
【0302】
具体的な実施態様において、抗原は、CMVエンベロープ糖タンパク質gB又はその断片で
ある。(例えば、第6.2節(a)を参照されたい)。より具体的な実施態様において、抗原は、
カルボキシ末端の切断を有するCMVエンベロープ糖タンパク質gBである。(例えば、第6.2
節(b)を参照されたい)。
【0303】
ある実施態様において、抗原は、CMVテグメントタンパク質pp65又はその断片である。(
例えば、第6.2節(c)を参照されたい)。
【0304】
ある実施態様において、抗原は、CMV五量体複合タンパク質である。別の実施態様にお
いて、CMV五量体複合抗原は、gH、gH(dTM)、gL、UL128、UL131A、もしくはUL130、又はこ
れらの組合せである。(例えば、第6.2節(d)を参照されたい)。
【0305】
ある実施態様において、本明細書に記載される1以上のCMV抗原をコードするように作製
されるベクターは、記載されるCMV抗原及びその組合せをコードする1以上の核酸を含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原は、本明細書に記載される様
々なリンカー、スペーサー、及び切断部位によって隔てられる。
【0306】
別の実施態様において、第1の感染性複製欠損アレナウイルスの本明細書に記載される1
以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LCMVクローン13又はLCMV MP株
に基づくことができる。(例えば、第7.1節を参照されたい)。
【0307】
別の実施態様において、第2の感染性複製欠損アレナウイルスの本明細書に記載される1
以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LCMVクローン13又はLCMV MP株
に基づくことができる。(例えば、第7.1節を参照されたい)。
【0308】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染を治療及び/又は
予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を
発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片
を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、方法である。
【0309】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染を治療及び/又は
予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を
発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片
を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを連続的に投与することを含む、方法で
ある。
【0310】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染を治療及び/又は
予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を
発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片
を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを同時に投与することを含む、方法であ
る。
【0311】
別の実施態様において、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を発現する
第1の感染性複製欠損アレナウイルスは一次ワクチン抗原であり、CMV糖タンパク質gB又は
その抗原性断片を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスは二次ワクチン抗原であ
る。
【0312】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCMV感染を治療及び/又
は予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片
を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及びカルボキシ末端の切断を有するCMV
糖タンパク質gBを発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含む、
方法である。(切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照されたい)
【0313】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCMV感染を治療及び/又
は予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片
を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及びカルボキシ末端の切断を有するCMV
糖タンパク質gBを発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを連続的に投与すること
を含む、方法である。(切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照
されたい)。
【0314】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCMV感染を治療及び/又
は予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片
を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及びカルボキシ末端の切断を有するCMV
糖タンパク質gBを発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを同時に投与することを
含む、方法である。(切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照さ
れたい)。
【0315】
別の実施態様において、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を発現する
第1の感染性複製欠損アレナウイルスは一次ワクチン抗原であり、カルボキシ末端の切断
を有するCMV糖タンパク質gBを発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスは二次ワクチ
ン抗原である。
【0316】
ある実施態様において、CMV糖タンパク質gBもしくはその断片又はCMVテグメントタンパ
ク質pp65を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gBもしくは
その断片又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイル
スを投与すると、CMV抗原を発現する、例えば、該糖タンパク質gB(又はその断片)のみ又
は該テグメントタンパク質pp65のみを発現する、単一の感染性複製欠損アレナウイルスを
投与するよりも優れたCMVに対する防御効果がワクチン接種後にもたらされる。他の実施
態様において、CMV糖タンパク質gBもしくはその断片又はCMVテグメントタンパク質pp65を
発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gBもしくはその断片又
はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与す
ると、CMV抗原を発現する、例えば、該糖タンパク質gB(又はその断片)のみ又は該テグメ
ントタンパク質pp65のみを発現する、単一の感染性複製欠損アレナウイルスを投与するよ
りも大きい免疫応答が誘発される。別の実施態様において、CMV糖タンパク質gBもしくは
その断片又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイル
ス及びCMV糖タンパク質gBもしくはその断片又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する
第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与すると、CMV抗原を発現する、例えば、該糖タ
ンパク質gB(又はその断片)のみ又は該テグメントタンパク質pp65のみを発現する、単一の
感染性複製欠損アレナウイルスを投与するよりも大きいCD8+ T細胞応答が誘発される。他
の実施態様において、CMV糖タンパク質gBもしくはその断片又はCMVテグメントタンパク質
pp65を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gBもしくはその
断片又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを
投与すると、CMV抗原を発現する、例えば、該糖タンパク質gB(又はその断片)のみ又は該
テグメントタンパク質pp65のみを発現する、単一の感染性複製欠損アレナウイルスを投与
するよりも高力価の中和抗体が誘発される。
【0317】
ある実施態様において、カルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパク質gBを発現する
感染性複製欠損アレナウイルス(第6.2節(b)参照)は、ELISA、中和抗体アッセイ、及び動
物モデルにより試験したとき、gBの膜貫通ドメインが欠失しているCMV糖タンパク質gBを
発現する感染性複製欠損アレナウイルスよりも優れたCMVに対する防御効果をワクチン接
種後に提供する。第6.9節を参照されたい。他の実施態様において、カルボキシ末端の切
断を有するCMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、gBの膜貫通
ドメインが欠失しているCMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスよ
りも大きい免疫応答を誘発する。ある実施態様において、カルボキシ末端の切断を有する
CMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスは、gBの膜貫通ドメインが
欠失しているCMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスよりも大きいC
D8+ T細胞応答を誘発する。他の実施態様において、カルボキシ末端の切断を有するCMV糖
タンパク質gBを発現する複製欠損アレナウイルスは、gBの膜貫通ドメインが欠失している
CMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスよりも高力価の中和抗体を
誘発する。(例えば、図12、13、及び25、26を参照されたい)。
【0318】
また別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する複製欠損アレナウイルスと1以上の複製欠陥ウイルスベクターの併用である
。より具体的な実施態様において、該複製欠陥ウイルスベクターは、ポックスウイルス、
アデノウイルス、アルファウイルス、単純ヘルペスウイルス、パラミクソウイルス、ラブ
ドウイルス、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びセンダイウイルス、並びにこれ
らの混合物から構成される群から選択される。具体的な実施態様において、ポックスウイ
ルスは、改変ワクチンアンカラである。
【0319】
また別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する複製欠損アレナウイルスとCMV抗原を発現する1以上の複製欠陥ウイルスベク
ターの併用である。より具体的な実施態様において、該複製欠陥ウイルスベクターは、ポ
ックスウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、単純ヘルペスウイルス、パラミク
ソウイルス、ラブドウイルス、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びセンダイウイ
ルス、並びにこれらの混合物から構成される群から選択される。具体的な実施態様におい
て、ポックスウイルスは、改変ワクチンアンカラである。
【0320】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する第1の感染性複製欠損
アレナウイルスは、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナ
ウイルスの前又は後に投与される。例えば、CMV抗原を発現する第1の感染性複製欠損アレ
ナウイルスは、第2の感染性複製欠損アレナウイルスの1回目の投与の約30~60分前又は後
に投与される。
【0321】
別の実施態様において、ワクチン抗原を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス
は、ワクチン抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスの前に投与される。あ
る実施態様において、第1の感染性複製欠損アレナウイルスの投与と第2の感染性複製欠損
アレナウイルスの投与の間に、約1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、1日、2日、3日
、5日、1週間、2週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ
月、10カ月、11カ月、1年の期間がある。
【0322】
別の実施態様において、2つの感染性複製欠損アレナウイルスは、特に: 1:1比、1:2比
、1:5比、1:10比、1:20比、1:50比、1:100比、1:200比、1:300比、1:400比、1:500比、1:
600比、1:700比、1:800比、1:900比、1:1000比を含む、約1:1~1:1000の範囲のモル比の
治療レジメンで投与される。
【0323】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠
損アレナウイルスが投与される対象は、CMV感染もしくは再活性化を有するか、それを起
こしやすいか、又はそのリスクに曝されている。別の実施態様において、CMV抗原を発現
する2以上の本明細書に記載される感染性複製欠損アレナウイルスが投与される対象は、C
MVの感染もしくはCMVによる再活性化によって冒されているか、それを起こしやすいか、
又はそのリスクに曝されている。
【0324】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠
損アレナウイルスが投与される対象は、CMV感染もしくは再活性化を同時に有するか、そ
れを同時に起こしやすいか、又はそのリスクに同時に曝されている。別の実施態様におい
て、CMV抗原を発現する2以上の本明細書に記載される感染性複製欠損アレナウイルスが投
与される対象は、CMVの感染もしくはCMVによる再活性化による影響を同時に受けているか
、それを同時に起こしやすいか、又はそのリスクに同時に曝されている。
【0325】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠
損アレナウイルスが投与される対象は、CMVの感染もしくはCMVによる再活性化を連続的に
有するか、それを連続的に起こしやすいか、又はそのリスクに連続的に曝されている。別
の実施態様において、CMV抗原を発現する2以上の本明細書に記載される感染性複製欠損ア
レナウイルスが投与される対象は、CMVの感染もしくはCMVによる再活性化による影響を連
続的に受けているか、それを連続的に起こしやすいか、又はそのリスクに連続的に曝され
ている。
【0326】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する該2以上の感染性複製
欠損アレナウイルスはさらに、CMVを治療及び/又は予防するための少なくとも1つの他の
薬剤と組み合わせて投与される。CMVを治療及び/又は予防するための治療的薬剤としては
、バルガンシクロビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、シドホビル、又はマリバビル
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0327】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する該2以上の感染性複製
欠損アレナウイルスはさらに、少なくとも1つの他の免疫調節薬と組み合わせて投与され
る。より具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する該2以上の
感染性複製欠損アレナウイルスはさらに、少なくとも1つのTh1特異的アジュバントと組み
合わせて投与される。より具体的な実施態様において、該Th-1特異的アジュバントは、カ
ルメット・ゲラン桿菌(BCG)である。
【0328】
別の実施態様において、投与レジメンは、症候性対象に、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。
また別の実施態様において、投与レジメンは、免疫系不全を有する対象、とりわけ、移植
レシピエント、HIV感染者、妊娠している対象、癌を有する対象に、本明細書に記載され
るCMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことがで
きる。別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感染性複
製欠損アレナウイルスは、CMVの感染もしくはCMVの再活性化に悩まされているか、又はそ
れを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、又は17歳の子供である対象に投与される。
【0329】
別の実施態様において、投与レジメンは、子供である対象に、CMV抗原を発現する第1の
複製欠損アレナウイルスを投与すること、及び思春期にある同じ対象に、CMV抗原を発現
する第2の複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。具体的な実施態
様において、投与レジメンは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15
、16、又は17歳である対象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する第1の複製欠損ア
レナウイルスを投与すること、及び12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、
24、25歳である同じ対象に、CMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投
与することを含むことができる。
【0330】
別の実施態様において、投与レジメンは、思春期前の対象に、CMV抗原を発現する第2の
感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。別の実施態様におい
て、投与レジメンは、12~18歳の思春期の男性に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現
する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。別の実施
態様において、投与レジメンは、12~18歳の女性に、CMV抗原を発現する第2の感染性複製
欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。
【0331】
別の実施態様において、CMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルスを投
与すると、そのような治療の非存在下でのCMVの感染又はCMVの再活性化の症状の発現と比
較して、個体がCMVの感染又はCMVの再活性化を発症するリスクが少なくとも10%、少なく
とも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50
%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は
それより大きく低下する。
【0332】
別の実施態様において、別々に投与される、CMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠損
アレナウイルスを投与すると、そのような治療の非存在下でのCMVの感染又はCMVの再活性
化の症状の発現と比較して、個体がCMVの感染又はCMVの再活性化を発症するリスクが少な
くとも10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40
%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少な
くとも約90%、又はそれより大きく低下する。
【0333】
別の実施態様において、連続的に投与される、CMV抗原を発現する2以上の感染性複製欠
損アレナウイルスを投与すると、そのような治療の非存在下でのCMVの感染又はCMVの再活
性化の症状の発現と比較して、個体がCMVの感染又はCMVの再活性化を発症するリスクが少
なくとも10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約
40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少
なくとも約90%、又はそれより大きく低下する。
【0334】
(6.8(b)組成物)
本発明はさらに、本明細書に記載される遺伝子改変アレナウイルスを含む、ワクチン、
免疫原性組成物、及び医薬組成物に関する。そのようなワクチン及び医薬組成物は、当技
術分野における標準的な手順に従って製剤化することができる。
【0335】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗原を発
現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルスを含む組成物である。例えば、第6.2節を参
照されたい。具体的な実施態様において、本明細書に記載される組成物は、対象に、例え
ば、SゲノムセグメントのGPをコードするORFがCMV抗原をコードするヌクレオチド配列と
置換されており、該CMV抗原が:
a)CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c)CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d)CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e)CMV糖タンパク質UL128又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f)CMV糖タンパク質UL130又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
g)CMV糖タンパク質UL131A又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
であることができるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるCMV抗原を発現す
る第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及び例えば、SゲノムセグメントのGPをコードす
るORFがCMV抗原をコードするヌクレオチド配列と置換されており、該CMV抗原が:
a)CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
b)CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
c)CMV糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
d)CMV糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
e)CMV糖タンパク質UL128又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
f)CMV糖タンパク質UL130又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列;
g)CMV糖タンパク質UL131A又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列.
であることができるが、これらに限定されない、本明細書に記載されるCMV抗原を発現す
る第2の感染性複製欠損アレナウイルス組成物を投与することを含む。
【0336】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、CMV感染を治療及び/又は予防
する方法であって、本明細書に記載される、CMVテグメントタンパク質pp65もしくはその
抗原性断片; CMV糖タンパク質gHもしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質gL; CMV糖タ
ンパク質UL128もしくはその抗原性断片;もしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質UL130
もしくはその抗原性断片;又はCMV糖タンパク質UL131Aもしくはその抗原性断片:から選択
される、第1のCMV抗原を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス、及びCMV糖タンパ
ク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド配列; CMVテグメントタンパク質pp6
5もしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク質gHもしくはその抗原性断片; CMV糖タンパク
質gL; CMV糖タンパク質UL128もしくはその抗原性断片;もしくはその抗原性断片; CMV糖タ
ンパク質UL130もしくはその抗原性断片;又はCMV糖タンパク質UL131Aもしくはその抗原性
断片:から選択される、第2のCMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投
与することを含む、方法である。
【0337】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、CMV感染を治療及び/又は予防する
方法であって、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2つのアレナウイルスコンストラ
クトを投与することを含む、方法に好適な組成物である。具体的な実施態様において、該
2つのアレナウイルス(arenavuris)ベクターコンストラクトは、CMV抗原を発現する。
【0338】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗原を
発現する2以上のアレナウイルスベクターコンストラクトを含む組成物である。具体的な
実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗原を発現す
る3以上のアレナウイルスベクターコンストラクトを含む組成物である。別の実施態様に
おいて、本明細書に提供されるのは、CMV抗原を発現する4以上のアレナウイルスベクター
コンストラクト、CMV抗原を発現する5以上のアレナウイルスベクターコンストラクト、CM
V抗原を発現する6以上のアレナウイルスベクターコンストラクト、もしくは本明細書に記
載されるCMV抗原を各々発現する7つのアレナウイルスベクターコンストラクト、又はこれ
らの組合せを含む組成物である。ある実施態様において、該アレナウイルスは、LCMVであ
ることができる。
【0339】
具体的な実施態様において、抗原は、CMV主要エンベロープ糖タンパク質gB又はその断
片である。(例えば、第6.2節(a)を参照されたい)。より具体的な実施態様において、抗原
は、カルボキシ末端の切断を有するCMV主要エンベロープ糖タンパク質gBである。(切断さ
れたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照されたい)。
【0340】
ある実施態様において、抗原は、CMVテグメントタンパク質pp65又はその断片である。(
例えば、第6.2節(c)を参照されたい)。
【0341】
ある実施態様において、抗原は、CMV五量体複合タンパク質である。別の実施態様にお
いて、CMV五量体複合抗原は、gH、gH(dTM)、gL、UL128、UL131A、もしくはUL130、又はこ
れらの組合せである。(例えば、第6.2節(d)を参照されたい)。
【0342】
ある実施態様において、本明細書に記載される1以上のCMV抗原をコードするように作製
されるベクターは、記載されるCMV抗原及びその組合せをコードする1以上の核酸を含む。
具体的な実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原は、本明細書に記載される様
々なリンカー、スペーサー、及び切断部位によって隔てられる。
【0343】
別の実施態様において、第1の感染性複製欠損アレナウイルスの本明細書に記載される1
以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LCMVクローン13又はLCMV MP株
に基づくことができる。(例えば、第7.1節を参照されたい)。
【0344】
別の実施態様において、第2の感染性複製欠損アレナウイルスの本明細書に記載される1
以上のCMV抗原をコードするように作製されるベクターは、LCMVクローン13又はLCMV MP株
に基づくことができる。(例えば、第7.1節を参照されたい)。
【0345】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象のCMV感染を治療及び/又
は予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片
を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス組成物及びCMV糖タンパク質gB又はその抗
原性断片を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルス組成物を投与することを含む、
方法に好適な組成物である。
【0346】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染を治療及び/又は
予防する方法であって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を
発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片
を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを連続的に投与することを含む、方法に
好適な組成物である。
【0347】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象の感染に好適な組成物で
あって、該対象に、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を発現する第1の感
染性複製欠損アレナウイルス及びCMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片を発現する第2の
感染性複製欠損アレナウイルスを同時に投与することを含む、組成物である。
【0348】
別の実施態様において、CMVテグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片を発現する
第1の感染性複製欠損アレナウイルス組成物は一次ワクチン抗原であり、CMV糖タンパク質
gB又はその抗原性断片を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスは二次ワクチン抗
原である。
【0349】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、CMVテグメントタンパク質pp6
5又はその抗原性断片を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス組成物及びカルボキ
シ末端の切断を有するCMV糖タンパク質を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルス組
成物を含む組成物である。(切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を
参照されたい)。
【0350】
また別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるCMV抗
原を発現する複製欠損アレナウイルス組成物と1以上の複製欠陥ウイルスベクター組成物
の併用である。より具体的な実施態様において、該複製欠陥ウイルスベクター組成物は:
ポックスウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、単純ヘルペスウイルス、パラミ
クソウイルス、ラブドウイルス、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びセンダイウ
イルス、並びにこれらの混合物であることができるが、これらに限定されない。具体的な
実施態様において、ポックスウイルスは、改変ワクチンアンカラである。
【0351】
別の実施態様において、2つの感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、特に: 1:1比、
1:2比、1:5比、1:10比、1:20比、1:50比、1:100比、1:200比、1:300比、1:400比、1:500
比、1:600比、1:700比、1:800比、1:900比、1:1000比を含む、約1:1~1:1000の範囲のモ
ル比を有する。
【0352】
別の実施態様において、組成物は、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2以上の感
染性複製欠損アレナウイルス組成物が投与される対象であって、CMVの感染もしくはCMVに
よる再活性化を有するか、それを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている対象へ
の投与に好適である。別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する2
以上の感染性複製欠損アレナウイルス組成物又はその組成物が投与される対象は、CMVの
感染もしくはCMVによる再活性化によって冒されているか、それを起こしやすいか、又は
そのリスクに曝されている。
【0353】
別の実施態様において、該2以上の感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、CMV感染又
はCMVの再活性化を治療及び/又は予防するための少なくとも1つの他の薬剤をさらに含む
。治療的薬剤としては、バルガンシクロビル、ガンシクロビル、ホスカルネット、シドホ
ビル、又はマリバビルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0354】
別の実施態様において、組成物は、症候性対象に、本明細書に記載されるCMV抗原又は
その断片を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルス組成物を投与するのに好適であ
る。また別の実施態様において、組成物は、免疫系不全を有する対象、とりわけ、移植レ
シピエント、HIV感染者、妊娠している対象、又は癌を有する対象に、本明細書に記載さ
れるCMV抗原又はその断片を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルス組成物を投与す
るのに好適である。別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片
を発現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、CMVの感染もしくはCMVの再
活性化に悩まされているか、又はそれを起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている
、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17歳の子供である
対象に投与するのに好適である。
【0355】
別の実施態様において、組成物は、子供である対象に、CMV抗原を発現する第1の複製欠
損アレナウイルスを投与し、かつ思春期にある同じ対象に、CMV抗原を発現する第2の複製
欠損アレナウイルスを投与するのに好適である。具体的な実施態様において、投与レジメ
ンは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又は17歳である対
象に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する第1の複製欠損アレナウイルスを投与する
こと、及び12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25歳である同じ対象
に、CMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことが
できる。
【0356】
別の実施態様において、組成物は、思春期前の対象に、CMV抗原を発現する第2の感染性
複製欠損アレナウイルスを投与するのに好適である。別の実施態様において、投与レジメ
ンは、12~18歳の思春期の男性に、本明細書に記載されるCMV抗原を発現する第2の感染性
複製欠損アレナウイルスを投与することを含むことができる。別の実施態様において、投
与レジメンは、12~18歳の女性に、CMV抗原を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイル
スを投与することを含むことができる。
【0357】
別の実施態様において、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断片を発現する2以上の
感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、そのような治療の非存在下でのCMVの感染又はC
MVの再活性化の症状の発現と比較して、個体がCMVの感染又はCMVの再活性化を発症するリ
スクを少なくとも10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少な
くとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約
80%、少なくとも約90%、又はそれより大きく低下させる。
【0358】
別の実施態様において、別々に投与される、本明細書に記載されるCMV抗原又はその断
片を発現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、そのような治療の非存在
下でのCMVの感染又はCMVの再活性化の症状の発現と比較して、個体がCMVの感染又はCMVの
再活性化を発症するリスクを少なくとも10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少
なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも
約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれより大きく低下させる。
【0359】
別の実施態様において、連続的に投与される、本明細書に記載されるCMV抗原又はその
断片を発現する2以上の感染性複製欠損アレナウイルス組成物は、そのような治療の非存
在下でのCMVの感染又はCMVの再活性化の症状の発現と比較して、個体がCMVの感染又はCMV
の再活性化を発症するリスクを少なくとも10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、
少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくと
も約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれより大きく低下させる。
【0360】
本明細書に提供される別の実施態様において、本発明は、CMV抗原を発現する2以上の感
染性複製欠損アレナウイルスの相乗的組合せを含むワクチン組成物を提供する。
【0361】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、カルボキシ末端の切断を有す
るCMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスを含む医薬組成物である
。(切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照されたい)。別の実施
態様において、本明細書に提供されるのは、カルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパ
ク質gB、又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイル
ス、及びカルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパク質gB、又はCMVテグメントタンパク
質pp65を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを含む医薬組成物である。
【0362】
他の実施態様において、該医薬組成物は、切断されたgBタンパク質の全長にわたって配
列番号3のアミノ酸配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89
%、90%、91%、92%、93%、94% 95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であ
ることができるカルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパク質gBを発現する感染性複製
欠損アレナウイルスを含む。より具体的な実施態様において、該CMV糖タンパク質gBは、
配列番号3のアミノ酸773~906の領域に切断を有する。具体的な実施態様において、切断
されたgBタンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列からなる。
【0363】
ある実施態様において、該糖タンパク質gBの切断は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30
、31、32、33、34、35、36、37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50
、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70
、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90
、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、10
8、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、12
4、125、126、127、128、129、130、131、132、133、又は134アミノ酸長であることがで
きる。切断されたgBタンパク質については、第6.2節(b)を参照されたい。
【0364】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、カルボキシ末端の切断を有するCM
V糖タンパク質gBを発現する感染性複製欠損アレナウイルスを含む免疫原性組成物である(
切断されたgBタンパク質については、例えば、第6.2節(b)を参照されたい)。別の実施態
様において、本明細書に提供されるのは、カルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパク
質gB、又はCMVテグメントタンパク質pp65を発現する第1の感染性複製欠損アレナウイルス
、及びカルボキシ末端の切断を有するCMV糖タンパク質gB、又はCMVテグメントタンパク質
pp65を発現する第2の感染性複製欠損アレナウイルスを含む免疫原性組成物である。
【0365】
他の実施態様において、該免疫原性組成物は、他のgBの全長にわたって配列番号3のア
ミノ酸配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91
%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であることがで
きるポリペプチドを含む。より具体的な実施態様において、該免疫原性組成物は、配列番
号3のアミノ酸773~906の領域に切断又は欠失を有する。また他の具体的な実施態様にお
いて、該切断又は欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14 、15、16、
17、18、19、20、21、22、23、24 、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36
、 37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、5
6、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、7
6、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、9
6、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、
113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、
129、130、131、132、133、又は134アミノ酸長である。ある実施態様において、該免疫原
性組成物は、医薬として許容し得る担体をさらに含む。
【0366】
(6.9 アッセイ)
(アレナウイルスベクターの感染力を測定するためのアッセイ)
当業者に公知の任意のアッセイをアレナウイルスベクター調製物の感染力を測定するた
めに使用することができる。例えば、ウイルス/ベクター力価の決定は、「フォーカス形
成単位アッセイ」(FFUアッセイ)により行うことができる。簡潔に述べると、相補細胞、
例えば、LCMV GPタンパク質を発現するHEK 293細胞をプレーティングし、ウイルス/ベク
ター試料の様々な希釈物を接種する。インキュベーション期間の後、細胞に単層を形成さ
せ、ウイルスを細胞に付着させるために、単層をメチルセルロースで覆う。プレートをさ
らにインキュベートすると、もとの感染細胞はウイルス子孫を放出する。メチルセルロー
スが重層されるため、新しいウイルスの拡散は、隣接する細胞に制限される。結果として
、各々の感染性粒子は、フォーカスと呼ばれる感染細胞の円形のゾーンを生じさせる。そ
のようなフォーカスを、LCMV-NPに対する抗体及びHRPベースの呈色反応を用いて見えるよ
うにし、それにより、数えられるようにすることができる。ウイルス/ベクターの力価は
、1ミリリットル当たりのフォーカス形成単位(FFU/mL)で計算することができる。
【0367】
導入遺伝子を担持するベクターの感染力価(FFU/mL)を決定するために、このアッセイを
、抗LCMV-NP抗体の代わりに、それぞれの導入遺伝子特異的抗体を用いることにより改変
する。
【0368】
(血清ELISA)
動物(例えば、マウス、モルモット)のワクチン接種後の液性免疫応答の決定は、抗原特
異的血清ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により行うことができる。簡潔に述べると、
プレートを抗原(例えば、組換えタンパク質)でコーティングし、抗体の非特異的結合を避
けるためにブロッキングし、血清の連続希釈物とともにインキュベートした。インキュベ
ーション後、結合した血清-抗体を、例えば、酵素が結合した(全IgG又はIgGサブクラスを
検出する)抗種(例えば、マウス、モルモット)特異的抗体及びその後の呈色反応を用いて
、検出することができる。抗体力価を、例えば、終点幾何平均力価として決定することが
できる。
【0369】
(ARPE-19細胞における中和アッセイ)
血清中の誘導された抗体の中和活性の決定は、ATCCからのARPE-19細胞とGFPタグ化ウイ
ルスとを用いる以下の細胞アッセイを用いて行う。さらに、外因性補体の源としての補足
のモルモット血清を使用する。このアッセイは、中和に使用する1日又は2日前に、384ウ
ェルプレートに6.5×103細胞/ウェル(50μl/ウェル)を播種することにより開始する。中
和は、細胞を含まない96ウェル滅菌組織培養プレートで、37℃で1時間行う。中和インキ
ュベーション工程の後、混合物を細胞に添加し、プレートリーダーによるGFP検出のため
に、さらに4日間インキュベートする。陽性の中和ヒト血清を各々のプレートでアッセイ
陽性対照として用いて、全ての結果の信頼性を確認する。4パラメータロジスティック曲
線フィッティングを用いて、力価(EC50)を決定する。追加の検査として、ウェルを蛍光顕
微鏡で確認する。
【0370】
(プラーク減少アッセイ)
簡潔に述べると、モルモットサイトメガロウイルスについてのプラーク減少(中和)アッ
セイを、緑色蛍光タンパク質がタグ付けされているGPCMVの分離株を用いて行い、5%ウサ
ギ血清を外因性補体の源として使用し、プラークを蛍光顕微鏡観察により数え上げた。中
和力価を、対照(免疫前)血清試料における希釈と比較して、プラークの50%減少をもたら
す血清の最大希釈と定義した。
【0371】
(モルモット肺線維芽細胞(GPL)細胞における中和アッセイ)
簡潔に述べると、試験血清及び対照(ワクチン接種前)血清の連続希釈物を、補足のウサ
ギ血清(1%)を外因性補体の源として含むGPL完全培地中で調製した。希釈系列は、1:40か
ら1:5120に及んだ。血清希釈物をeGFPタグ化ウイルス(1ウェル当たり100~200pfu)ととも
に37℃で30分間インキュベートし、その後、コンフルエントなGPL細胞を含む12ウェルプ
レートに移した。試料を3連で処理した。37℃で2時間のインキュベーションの後、細胞を
PBSで洗浄し、GPL完全培地を再供給し、37℃/5%CO2で5日間インキュベートした。プラー
クを蛍光顕微鏡観察により可視化し、計数し、対照ウェルと比較した。対照と比較したプ
ラーク数の50%減少をもたらすその血清希釈を中和力価と表した。
【0372】
(qPCR)
LCMV RNAゲノムを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、QIAamp Viral RNA
ミニキット(QIAGEN)を用いて単離する。LCMV RNAゲノム相当物を、SuperScript(登録商標
) III Platinum(登録商標) One-Step qRT-PCRキット(Invitrogen)並びにLCMV NPコード領
域の部分に特異的なプライマー及びプローブ(FAMレポーター及びNFQ-MGBクエンチャー)を
用いるStepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で実施される定量的PC
Rにより検出する。反応の温度プロファイルは: 60℃で30分、95℃で2分の後、95℃で15秒
、56℃で30秒を45サイクルである。RNAを、試料の結果と、プライマー及びプローブ結合
部位を含むLCMV NPコード配列の断片に対応する、分光光学的に定量されたインビトロ転
写RNA断片のlog10希釈系列から作成された標準曲線との比較により定量する。
【0373】
(ウェスタンブロッティング)
組織培養フラスコ中又は懸濁下で増殖させた感染細胞を、示された感染後の時点でRIPA
バッファー(Thermo Scientific)を用いて溶解させるか、又は細胞溶解なしでそのまま使
用する。試料を還元剤及びNuPage LDS試料バッファー(NOVEX)とともに99℃に10分間加熱
し、室温に冷却した後、電気泳動のために4-12%SDS-ゲルに充填する。タンパク質を、In
vitrogens iBlot Gel転写装置を用いて膜上にブロッティングし、ポンソー染色により可
視化する。最後に、調製物を対象となるタンパク質に対する一次抗体及びアルカリホスフ
ァターゼコンジュゲート二次抗体でプロービングし、その後、1-Step NBT/BCIP溶液(INVI
TROGEN)で染色する。
【0374】
(抗原特異的CD8+ T細胞増殖の検出のためのMHC-ペプチド多量体染色アッセイ)
当業者に公知の任意のアッセイを用いて、抗原特異的CD8+ T細胞応答を試験することが
できる。例えば、MHC-ペプチドテトラマー染色アッセイを使用することができる(例えば
、Altman J.D.らの文献、Science. 1996; 274:94-96;及びMurali-Krishna K.らの文献、I
mmunity. 1998; 8:177-187参照)。簡潔に述べると、このアッセイは、以下の工程を含み
、テトラマーアッセイを用いて、抗原特異的T細胞の存在を検出する。T細胞がそれに対し
て特異的なペプチドを検出するために、T細胞は、ペプチドと(通常、蛍光標識されている
)抗原特異的T細胞用の特別仕様のMHC分子のテトラマーの両方を認識しなければならない
。その後、テトラマーを、蛍光標識を介してフローサイトメトリーにより検出する。
【0375】
(抗原特異的CD4+ T細胞増殖の検出のためのELISPOTアッセイ)
当業者に公知の任意のアッセイを用いて、抗原特異的CD4+ T細胞応答を試験することが
できる。例えば、ELISPOTアッセイを使用することができる(例えば、Czerkinsky C.C.ら
の文献、J Immunol Methods. 1983; 65:109-121;及びHutchings P.R.らの文献、J Immuno
l Methods. 1989; 120:1-8参照)。簡潔に述べると、このアッセイは、以下の工程を含む:
免疫スポットプレートを抗サイトカイン抗体でコーティングする。細胞を免疫スポットプ
レート中でインキュベートする。細胞はサイトカインを分泌し、その後、洗い落とされる
。その後、プレートを第2のビオチン化抗サイトカイン抗体でコーティングし、アビジン-
HRPシステムで可視化する。
【0376】
(CD8+及びCD4+ T細胞応答の機能性の検出のための細胞内サイトカインアッセイ)
当業者に公知の任意のアッセイを用いて、CD8+及びCD4+ T細胞応答の機能性を試験する
ことができる。例えば、フローサイトメトリーと組み合わせた細胞内サイトカインアッセ
イを使用することができる(例えば、Suni M.A.らの文献、J Immunol Methods. 1998; 212
:89-98; Nomura L.E.らの文献、Cytometry. 2000; 40:60-68;及びGhanekar S.A.らの文献
、Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology. 2001; 8:628-63参照)。簡潔に述べ
ると、このアッセイは、以下の工程を含む:特異的ペプチド又はタンパク質による細胞の
活性化、タンパク質輸送の阻害(例えば、ブレフェルジンA)を加えて、サイトカインを細
胞内に保持する。洗浄後、他の細胞マーカーに対する抗体を細胞に添加することができる
。その後、細胞を固定し、透過処理する。抗サイトカイン抗体を添加し、細胞をフローサ
イトメトリーにより解析することができる。
【0377】
(ウイルスベクターの複製欠損を確認するためのアッセイ)
感染性でかつ複製可能なウイルス粒子の濃度を決定する当業者に公知の任意のアッセイ
を用いて、試料中の複製欠損ウイルス粒子を測定することができる。例えば、非相補細胞
を用いる([0225]に記載されているような)FFUアッセイをこの目的で使用することができ
る。
【0378】
さらに、プラークベースのアッセイは、ウイルス試料中のプラーク形成単位(PFU)に関
してウイルス濃度を決定するために使用される標準的な方法である。具体的には、非相補
宿主細胞のコンフルエントな単層に様々な希釈のウイルスを感染させ、寒天などの半固形
培地で覆って、ウイルス感染が無制限に拡大するのを防ぐ。ウイルスが感染し、固定され
た細胞単層内の細胞でそれ自体を複製するのに成功すると、ウイルスプラークが形成され
る(例えば、Kaufmann, S.H.; Kabelitz, D.の文献(2002)。微生物学の方法(Methods in M
icrobiology) 第32巻:感染の免疫学(Immunology of Infection)。Academic Press. ISBN
0-12-521532-0参照)。プラーク形成は、解析されているウイルスによって、3~14日間か
かることがある。プラークを全体的に手作業で計数し、その結果を、プレートを作成する
ために使用した希釈係数と組み合わせて用いて、試料単位容量当たりのプラーク形成単位
の数(PFU/mL)を計算する。PFU/mLの結果は、試料中の感染性複製可能粒子の数を表す。
【0379】
(ウイルス抗原の発現についてのアッセイ)
当業者に公知の任意のアッセイを、ウイルス抗原の発現を測定するために使用すること
ができる。例えば、([0225]に記載されているような)FFUアッセイを実施することができ
る。検出のために、それぞれのウイルス抗原に対するモノクローナル又はポリクローナル
抗体調製物を使用する(導入遺伝子特異的FFU)。
【0380】
さらに、([0231]に記載されているような)ウェスタンブロッティングを実施することが
できる。
【0381】
(動物モデル)
本明細書に記載されるCMV抗原を発現する感染性複製欠損アレナウイルスを含むワクチ
ン又はその組成物の安全性、忍容性、及び免疫原性効果を動物モデルで試験することがで
きる。ある実施態様において、本明細書で使用されるワクチン及びその組成物の安全性、
忍容性、及び免疫原性効果を試験するために使用することができる動物モデルとしては、
マウス、モルモット、ラット、及びサルが挙げられる。好ましい実施態様において、本明
細書で使用されるワクチン及びその組成物の安全性、忍容性、及び免疫原性効果を試験す
るために使用することができる動物モデルとしては、マウスが挙げられる。
【0382】
(モルモットモデル)
HCMVワクチンの免疫原性及び有効性の前臨床評価は、CMVの種特異性により困難となっ
ている。しかしながら、モルモットにおいて、モルモットCMV(GPCMV)は、胎盤を横断し、
ヒト感染と類似した先天性感染を引き起こす(Bourne Nらの文献、JID 1996; Schleiss M
らの文献、JID 2003)。さらに、モルモットの胎盤の構造及び第1期に似た妊娠期間は、ヒ
トのものと類似している。さらに、ヒトと同様、母親抗体の経胎盤通過が起こる。これら
の特徴に基づいて、モルモットモデルは、ワクチン戦略の評価のために一般に使用されて
いる。
【0383】
先天性CMV感染に対する保護効力を調べるために、ハートレイ系モルモットを試験ワク
チン候補で免疫することができ、その後、免疫モルモットを交配させることができる。モ
ルモット母獣の妊娠を確認し、触診によりモニタリングすることができる。妊娠した母獣
にGPCMVを投与することができ、仔の死亡率を測定し、出産時に保護率を決定することが
できる。
【0384】
ある実施態様において、他のウイルス由来の異種ドメインをヒトCMV抗原の中に含める
と、より高い抗体レベルの誘導がもたらされる。中和抗体の生成を試験するために、アッ
セイを以下の通りに実施することができる:雌モルモットを0、21、及び42日目に3回免疫
する。最後のワクチン投与から2週間後、免疫モルモットを交配させる。妊娠したモルモ
ットに、妊娠から40~50日で、GPCMVを投与する。ワクチン接種動物の血清をELISA及び中
和アッセイにより解析し、投与後、リアルタイムPCRによるウイルス血症の検出のために
、血液試料を得る。母獣を出産までモニタリングし、子孫の生存及び状態を詳細に解析す
る。
【0385】
ある実施態様において、他のウイルス由来の異種ドメインをヒトCMV抗原の中に含める
と、より高い抗体レベルの誘導がもたらされる。
【実施例
【0386】
(7.実施例)
(7.1 アレナウイルスベクターゲノムの設計/ベクター構築)
確立されている手法(米国特許出願公開US 2010/0297172 A1号;及びFlatz L.らの文献、
Nat Med. 2010 March; 16(3): 339-345)に従って、それぞれのCMV抗原又はその特定のド
メインを発現するrLCMVワクチンベクターを設計した(図1)。
【0387】
(CMV gBを発現するrLCMVベクターの設計)
CMVのgB抗原を発現するrLCMVワクチンベクターの作製のために、gBタンパク質の選択さ
れた部分をコードする様々なrLCMV-gBベクターコンストラクト(図2)を設計した。それぞ
れのコンストラクトには:
・全長野生型gB(HK1-HgB(FL)、配列番号1)、
・アミノ酸1~698がアミノ酸775-906と融合している膜貫通領域欠失(dTM) gB (HK1-HgB
(dTM)、配列番号4)、
・gBの706個のN末端アミノ酸からなるC末端切断gB(HK1-HgB(1-706)、配列番号7)、
・gBの691個のN末端アミノ酸からなるC末端切断gB(HK1-HgB(1-691)、配列番号10)
・gBの447個のN末端アミノ酸からなるC末端切断gB(HK1-HgB(1-447)、配列番号13)、
・gBの細胞外ドメイン及び膜貫通領域をコードするgBの772個のN末端アミノ酸と、それ
に続く、位置773の人工アルギニン残基からなるC末端切断gB(HK1-HgB(dCt)、配列番号16)

・gBの751個のN末端アミノ酸と、それに続く、水疱性口内炎ウイルス(Vesicular Strom
atitis Virus)タンパク質Gの49個のC末端アミノ酸からなるgBコンストラクト(HK1-HgB(VS
VG-1)、配列番号19)、
・gBの706個のN末端アミノ酸と、それに続く、水疱性口内炎ウイルス(Vesicular Strom
atitis Virus)タンパク質Gの49個のC末端アミノ酸からなるgBコンストラクト(HK1-HgB(VS
VG-2)、配列番号22)、
・gBの751個のN末端アミノ酸と、それに続く、インフルエンザ血球凝集素H3の37個のC
末端アミノ酸からなるC末端切断gB(HK1-HgB(H3-1)、配列番号25)、
・gBの706個のN末端アミノ酸と、それに続く、インフルエンザ血球凝集素H3の37個のC
末端アミノ酸からなるC末端切断gB(HK1-HgB(H3-2)、配列番号28)
をコードするrLCMVベクターが含まれた。
【0388】
CMVの種特異性のために、ヒトCMV抗原を発現するワクチンの動物有効性研究が不可能と
なるので、ヒトCMV(HCMV)のgB配列をコードするrLCMVベクターを作製するだけでなく、い
くつかのコンストラクトについてのモルモットCMV(GPCMV)の類似配列を発現する対応する
ベクター、例えば、HK1-GPgB(FL)、HK1-GPgB(FLuc)、HK1-GPgB(dTM)、HK1-GPgB(dTMuc)、
HK1-GPgB(1-706)、HK1-GPgB(1-691)、HK1-GPgB(1-447)、HK1-GPgB(dCt)、HK1-GPgB(FLuc)
も、gBの細胞外ドメインに位置するフューリン切断部位が突然変異により不活化されてい
ることを除き、HK1-GPgB(FL)と同様に設計した。HK1-GPgB(dTMuc)は、gBの細胞外ドメイ
ンに位置するフューリン切断部位が突然変異により不活化されていることを除き、HK1-GP
gB(dTM)と同様に設計した。GPCMV抗原をコードするベクターコンストラクトは、CMVワク
チン開発の至適基準を提供するモルモットモデルでの前臨床的免疫原性及び有効性研究を
可能にする。同様に、マウスCMV gBの類似配列を発現するコンストラクトを作製し、個々
のベクター設計の迅速でかつ費用効果が高い事前スクリーニングを可能にした。
【0389】
同様に、ヒトCMV由来の全長T細胞抗原pp65を発現するrLCMVベクターを構築した(HK1-Hp
p65、配列番号34)。さらに、モルモットCMV(GPCMV)の類似配列を発現する対応するベクタ
ーを作製した(HK1-GPpp65)。
【0390】
さらに、糖タンパク質gH/gL、UL128、UL130、及びUL131Aによって形成される、CMVの五
量体複合体(PC)の様々な部分の発現のためのrLCMVベクターを設計した。完全な複合体を
発現するrLCMVベクターを作製するために、テシオウイルス2Aペプチド(T2A)配列によって
隔てられた5つのタンパク質をコードするポリタンパク質ベクター(図3)を設計した(Donne
lly MLLらの文献(2001)、Gao SYらの文献(2012)、Kim JHらの文献(2011))。自己切断2A
ペプチドは、比較的サイズが小さく、かつ2Aペプチドの上流の遺伝子と下流の遺伝子の間
で高い切断効率を示すので、自己切断2Aペプチドを選択した(Donnelly MLLらの文献(2001
)、Gao SYらの文献(2012)、Kim JHらの文献(2011))。
【0391】
それぞれのコンストラクトは、
・糖タンパク質gHのみをコードするベクター(HK1-HgH、配列番号37)
・膜貫通ドメイン欠失型の糖タンパク質gHをコードするベクター(HK1-HgH(dTM)、配列
番号50)
を含んでいた。
【0392】
(rLCMVベクターコンストラクトの起源)
rLCMVベクターは、cDNA配列が由来しているLCMV株及びそのレスキューに使用されるプ
ラスミド系が異なり得る。クローン13又はMP株のLCMVは、ベクターの起源に使用される2
つのあり得る株である。免疫応答の誘導に対するrLCMVベクター骨格のクローン13及びMP
の効果を比較する研究は、図16~18に示すように、Hpp65、HgBdTM、及びGPgBdTMを導入遺
伝子として用いて評価されている。4つの異なる手法/プラスミド系をベクターレスキュー
に使用することができる。1つの手法では、ウイルスベクターの短い(S)ゲノムセグメント
及び長い(L)ゲノムセグメントの転写は、マウス特異的RNAポリメラーゼIプロモーター及
びターミネーターにより制御される。ポリメラーゼ及びNPタンパク質は、ポリメラーゼII
プロモーターの制御下で、個々のコンストラクトから発現される。cDNAシステムにおいて
、GPをCMV抗原に置換し、その後、LCMV GPタンパク質をトランスに提供するマウス細胞で
4つのプラスミドをトランスフェクトすると、トランスフェクトされた細胞の上清から回
収することができるベクター粒子の形成がもたらされる。この手法は、Flatzらの文献、P
roc. Natl. Acad. Sci. USA 2006, 103:4663で使用されている。
【0393】
第2のシステムでは、Sセグメント(CMV抗原を含む)及びLセグメントの転写は、T7プロモ
ーターの制御下にあり、これは、T7プロモーターからの発現を駆動するために、T7ポリメ
ラーゼをコードする第5のプラスミドの導入を必要とする。ウイルスのトランス作用因子(
NP及びL)は、この場合も、RNAポリメラーゼIIプロモーターを用いて、異なるプラスミド
から共発現される。このシステムは、Sanchez及びde la Torreの文献、Virology 2006 Ju
ly, 350(2):370から改変されたものである。
【0394】
第3のシステムでは、ウイルスベクターの短い(S)ゲノムセグメント及び長い(L)ゲノム
セグメントの転写は、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及び適当なターミネーターによ
って制御される。ウイルスのトランス作用因子(NP及びL)は、この場合も、RNAポリメラー
ゼIIプロモーターを用いて、異なるプラスミドから共発現される。
【0395】
第4のシステムでは、ウイルスベクターの短い(S)ゲノムセグメント及び長い(L)ゲノム
セグメントの転写は、ヒトRNAポリメラーゼIプロモーター及び適当なターミネーターによ
って制御される。同じプラスミド上で、ウイルスのトランス作用因子の転写は、同じ鋳型
由来のNP ORF及びL ORFからプラス鎖RNAの転写を駆動するために反対方向に配向するよう
に設計されているポリメラーゼIIプロモーターによって駆動される。そのような手法は、
組換えインフルエンザウイルスを作製するために以前に使用され、Hoffmann Eらの文献(2
000)に記載されている。上記のrLCMVベクターは全て、確立されている方法に従って産生
することができる(米国特許出願公開US 2010/0297172 A1号;及びFlatz L.らの文献、Nat
Med. 2010 March; 16(3): 339-345)。他の方法を用いることもでき;例えば、異なるプラ
スミド系、異なる細胞、及び異なるトランスフェクション法を用いて、本明細書に提供さ
れるアレナウイルスベクターを作製することができる。
【0396】
(7.2 ベクターの特徴付け)
(CMV gBを発現するrLCMVベクターの特徴付け)
作製されたベクターコンストラクトの特徴付けには、ウイルス複製及び宿主細胞の比感
染度の解析が含まれた(図4)。
【0397】
図4は、ベクターコンストラクトHK1-HgB(FL)、HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(706)、HK1-HgB(
691)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、HK1-HgB(H3-1)、及びHK1-HgB
(H3-2)のウイルス力価及び感染力を示す。それぞれのベクターコンストラクトは、緑色蛍
光タンパク質を発現する対照LCMVベクター(HK1-GFP)に匹敵する同様のピーク力価及び感
染力を示し、導入遺伝子のサイズ及び性質によるベクター産生への負の影響がなかったこ
とを示している。
【0398】
ベクター複製を解析するために、増殖曲線を、LCMV GPを発現する懸濁HEK 293細胞を用
いて作成した。それぞれの細胞を3×105細胞/mlの細胞密度で播種し、個々のベクター(HK
1-HgB(dTM)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(H3-2)、及びHK1-HgB(691))に0.0
01のMOIで感染させた。試料を24時間毎に取り出し、FFUアッセイにより解析した(図5)。
試験されたベクターは全て、HK1-GFPと比較して同様の増殖動態及びピーク力価を示し、
個々のgB導入遺伝子が、小さいレポーター遺伝子のGFPを上回る程度にはベクター複製を
妨害しないことを示した。
【0399】
ウェスタンブロット実験を用いて、試験された全てのコンストラクトについて、gB抗原
の存在を確認した。例示的なデータを図6に示す。全長gBの非切断型前駆体が~160kDaで
バンドを形成すると考えられるのに対し、切断型gBは、55kDaの推定分子質量を有する膜
貫通成分とジスルフィド結合により連結されている116kDaの推定分子質量を有する表面成
分を含む。しかしながら、モノクローナル一次抗体の使用により、非切断型gBタンパク質
及びgBのより小さい切断産物に相当する2つのバンドのみがブロット上に見られると考え
られる。全長gB(レーン7)が~160kDaの予想された範囲でバンドを形成したのに対し、残
りの全てのコンストラクトは、gB細胞質ドメインの少なくとも一部の欠失又は交換によっ
て説明することができるより小さいサイズのバンドを示した。同様に、全長gBの膜貫通部
分(レーン7)は~60kDaでバンドを形成し(予想されるよりもわずかに大きい)、全てのgB誘
導体は、より小さいサイズの切断産物を示す。全体として、HK1-gB(FL)及びHK1-gB(dTM)
は、他の全てのベクターと比較してより弱いgBバンドを示した。
【0400】
(HK1-GPgB(FL)、HK1-GPgB(dTM)、及びHK1-GPgB(dTMuc)の免疫原性の比較)
次に、HK1-GPgB(FL)、HK1-GPgB(dTM)、及びHK1-GPgB(dTMuc)の免疫原性をマウスで解析
し、比較した(図7)。C57BL/6マウスを、実験の0、21、及び42日目に、6.7×104FFU/用量
のそれぞれのベクターで皮下免疫した。免疫マウスの血清を、実験の21、42、及び63日目
に回収し、抗gB抗体力価をELISAにより測定した。緑色蛍光タンパク質を発現する類似のr
LCMVベクター(HK1-GFP)を対照として用いた。対照ベクターは、注射1回当たり9.2×105FF
Uの濃度で用いた。
【0401】
HK1-GPgB(dTM)及びHK1-GPgB(dTMuc)は、皮下注射後、マウスでHK1-GPgB(FL)よりも有意
に高い抗体力価を誘導した。
【0402】
(様々な濃度で筋肉内又は皮下経路により投与されたHK1-GPgB(dTM)ワクチンベクターの免
疫原性の比較)
次に、様々な用量及び様々な注入経路で投与した場合のHK1-GPgB-dTMの免疫原性を体系
的に解析した(図8A及びB)。
【0403】
これらの解析は、HK1-GPgB-dTMが、皮下投与と比較して、筋肉内注射後により大きい抗
体応答を誘導することを示した(図8A)。試験された免疫用量の中で、2×106及び6.7×104
FFU/用量のワクチン用量が同程度に高い抗体力価をもたらした。
【0404】
(筋肉内免疫経路と皮内免疫経路の比較)
液性応答及びCD8+ T細胞応答の誘導を、筋肉内経路及び皮内経路を用いて、様々な濃度
のHK1-HgB(dCt)(図8C)又はHK1-Hpp65(図8D)のどちらかによる免疫の後に解析した。それ
ぞれの結果は、5.6×105FFU(図8C、第1群及び第3群)の用量での皮内経路と比較して、有
意により高い力価の抗原特異的抗体が筋肉内によって誘発されたことを示しており、ワク
チンが皮内経路を介して投与されたとき、用量節約効果を達成することができなかったこ
とを示している。同様に、6,7×105FFU(図8D、第1群及び第3群)の用量での皮内免疫と比
較して、より大きいCD8+ T細胞応答が筋肉内注射後に観察された。
【0405】
(HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(1-706)、HK1-HgB(1-691)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(H3-1)、HK1-
HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、及びアジュバントと混合した組換えgB
タンパク質の免疫原性の比較)
HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(1-706)、HK1-HgB(1-691)、HK1-HgB(dCt)、HK1-HgB(H3-1)、HK1
-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HK1-HgB(VSVG-2)、及びアジュバントと混合した組換えgB
タンパク質の免疫原性をマウスで解析した。C57BL/6マウスを、実験の0及び21日目に、1
×105FFU/用量のそれぞれのベクター又はアジュバントと1:1で混合した5μgの組換えgBタ
ンパク質で筋肉内免疫した。免疫マウスの血清を、各々のワクチン投与の前、0日目、21
日目、及び3週間間隔で実験の42、63、84、及び105日目に回収した。得られた血清を、抗
HCMVgB IgG抗体レベルについてはELISAにより、及び中和抗体の存在についてはARPE-19細
胞での中和アッセイにより試験した。
【0406】
それぞれのELISAデータの統計解析(図9)から、組換えgBタンパク質(アジュバントと混
合したもの)及び試験された全てのrLCMV-gBコンストラクトの同程度の抗体誘導が明らか
になった。さらに、得られた結果は、抗体レベルが2回目の免疫の後にプラトーに達する
ので、非常に長い間持続する免疫応答が2回の免疫の後に既に達成され得ることを示して
いる。
【0407】
(誘導された抗体の機能性)
誘導された抗体の機能性を試験するために、ワクチン接種動物の血清をARPE-19細胞で
の中和アッセイによりさらに解析した。42日目に回収された、免疫マウスの血清中に存在
する誘導された抗体の中和活性を上皮ARPE-19細胞で測定した(図10)。それぞれの結果は
、試験された全てのrLCMV-gBコンストラクトが、アジュバントと混合した組換えサブユニ
ットgBタンパク質よりも高いHCMV 中和抗体レベルを誘導したことを示している。しかし
ながら、HgB(dTM)は、試験された他の全てのrLCMV-gBベクターよりも有意に低いレベルの
HCMV中和抗体を誘導した。
【0408】
(個々のIgGサブクラスの解析)
42日目に回収された、(HK1-HgB(dTM)、HK1-HgB(1-706)、HK1-HgB(1-691)、HK1-HgB(H3-
2)、HK1-HgB(VSVG-1)、及びアジュバントと混合した組換えgBタンパク質をワクチン接種
された)選択された実験群の血清をHCMVgB特異的IgGサブクラスELISAにより解析した(図11
)。それぞれの解析から、rLCMV-gBコンストラクトが主にIgG2cを誘導するのに対し、アジ
ュバントと混合した組換えgBタンパク質が主にIgG1を誘導することが明らかになった。こ
のデータは、rLCMV-gBベクターによる1型に偏った免疫応答誘導を示しており、これは、g
Bサブユニットタンパク質によって誘導される2型に偏った応答とは顕著に異なるように思
われる。
【0409】
(モルモットにおけるHK1-GPgB(dTM)の免疫原性)
ハートレイ系モルモットを、実験の0、21、及び42日目に、様々な濃度(1.54×107、1.5
4×106、1.54×105、及び1.54×104FFU/用量)のHK1-GPgB-dTMで、筋肉内注射により免疫
した。対照目的で、1匹の動物には、ワクチンもバッファーも投与しなかった。免疫動物
の血清を実験の0、21、42、及び63日目に回収し、抗GPgB抗体力価をGPgB特異的IgG ELISA
により解析した。GPCMV陽性血清を対照として用いた。
【0410】
ELISAデータは、単一の筋肉内免疫(一次免疫)の後に既に、HK1-GPgB(dTM)が、かなりの
大きさの抗GPgB抗体応答を用量依存的に誘導したことを示している(図12)。これらの応答
は、同じベクターを一次免疫の3週間後に再投与したとき効率的に強化することができ、3
つの最大用量(1.54×107、1.54×106、1.54×105)のHK1-GPgB(dTM)の2回の注射の後、IgG
応答のプラトーに達した。達した値は、使用された(1×105pfuのGPCMVを用いて感染から3
0日後に得られた)対照血清と類似している。有意に低い応答は、最小用量群(1.54×104)
により誘導された。
【0411】
それぞれの血清を、ウイルス中和抗体の存在について、プラーク減少アッセイによりさ
らに解析した(図13)。結果は、HK1-GPgB(dTM)で免疫したときのモルモットにおける中和
抗体の誘導を示した。それぞれのデータは、≧1.54×105の範囲の最小用量のHK1-GpgB(dT
M)が、強力な中和抗体を誘発するために必要とされることを示している。入手可能なデー
タに基づいて、1.54×106FFUの用量を、先天性GPCMV感染モデルにおけるHK1-GpgB(dTM)の
保護効果を検討するために選択した(図23と比較されたい)。
【0412】
(CMV pp65を発現するrLCMVベクターの特徴付け)
作製されたHK1-Hpp65ベクターの増殖動態及び感染力を特徴付けるために、LCMV GPを発
現するHEK 293懸濁細胞にHK1-Hpp65をMOI=0.001で感染させた。感染後の規定の時点(2時
間、24時間、48時間、72時間、及び96時間)で、細胞上清の試料を取り出し、FFUアッセイ
及びqPCRにより解析した(図14)。
【0413】
図14のデータは、ベクターコンストラクトHK1-Hpp65及び対照ベクターHK1-GFPの同程度
の複製動態、ピーク力価、及び感染力を示しており、pp65抗原がベクターの増殖又は感染
力に負の影響を及ぼさないことを示している。より低い粒子感染力比は、より後の時点で
観察された。
【0414】
pp65抗原の発現を確認するために、LCMV GPを発現するHEK 293懸濁細胞にHK1-Hpp65又
は陰性対照ベクターHK1-GFPを感染させ、回収し、感染から96時間後に溶解させ、その後
、モノクローナル抗HCMV pp65一次抗体及び適当なアルカリホスファターゼコンジュゲー
ト二次抗体を用いるウェスタンブロッティングにより解析した(図15)。
【0415】
次に、異なるLCMVベクター骨格(HK1(クローン13)、HK3(MP))の効果を調べるために、HK
1-Hpp65及びHK3-Hpp65の免疫原性をC57BL/6マウスで解析した。C57BL/6マウスの筋肉内に
、1×104FFUの目標用量のHK1-Hpp65(第1群)又はHK3-Hpp65(第2群)をワクチン接種した(50
μL/大腿部;合計100μL/マウス)。ワクチン非接種マウスを対照(第7群)として用いた。細
胞性免疫応答の誘導を、注射後10日目に、フローサイトメトリーにより決定し、CD4+及び
CD8+ T細胞のサイトカイン産生(IL-2、IFN-g、TNF-a)を解析した。Hpp65ペプチドプール(
Shedlock D.J.らの文献; Human Vaccines & Immunotherapeutics 2012に基づく)を脾細胞
の再刺激に用いた。
【0416】
単一の筋肉内注射の後、HK1-Hpp65及びHK3-Hpp65は、かなりの大きさのHCMV特異的CD8+
(及びCD4+) T細胞応答を誘導した。単一の注射から10日後に解析されたCD8+ T細胞応答の
頻度は、CD4+ T細胞応答について観察されたものよりも高かった(それぞれ、図16A及びB)
。ベクター骨格(HK1又はHK3)に基づくと、観察されたCD4+ T細胞の誘導には差がなかった
。対照的に、より大きいCD8+ T細胞応答は、HK3-Hpp65と比較して、HK1-pp65により誘導
された。(C)同様の大きさのHCMV特異的CD8+T細胞応答は、HK1-Hpp65(第3群)及びHK3-Hpp6
5(第4群)の単一の筋肉内注射(実験の56日目)から10日後(実験の66日目)に、それまでに2
回(8及び4週間前;すなわち、実験の0及び28日目)、HK1-HgB(dTM)で免疫されていたマウス
で観察された。それぞれの結果は、抗原特異的CD8+T細胞応答の誘導が、同じベクター骨
格による事前免疫のために、ベクター免疫によって障害されていなかったことを示してい
る。
【0417】
また、免疫応答の誘導に対するrLCMVベクター骨格HK1(クローン13)又はHK3(MP)の効果
を、GPgBdTM(図17)及びHgBdTM(図18)を導入遺伝子として用いて評価した。
【0418】
GPgB-dTMコンストラクトの免疫原性に対する異なるベクター骨格の効果を調べるために
、C57BL/6マウスの筋肉内に、0及び28日目に、1×104FFUの目標用量のそれぞれのベクタ
ーをワクチン接種した。個々の動物由来の血清を、各々のワクチン投与(0、28日)の前、
及び最後の(2回目の)注射の4週間後(56日)に得た。全ての血清をGPgB特異的IgG抗体のレ
ベルについてELISAにより試験した; ELISAデータを幾何平均GPgB特異的IgG終点力価とし
て表す。図17に示したデータの統計解析は、HK1-GPgB(dTM)によって誘導される応答がHK3
-GPgB(dTM)よりも優れていることを示している。
【0419】
HgB-dTMコンストラクトの免疫原性に対する異なるベクター骨格の効果を調べるために
、C57BL/6マウスの筋肉内に、0及び28日目に、1×104FFUの目標用量のそれぞれのベクタ
ーをワクチン接種した。個々の動物由来の血清を、各々のワクチン投与(0、28日)の前、
及び最後の(2回目の)注射の4週間後(56日)に得た。全ての血清をHgB特異的IgG抗体のレベ
ルについてELISAにより試験した; ELISAデータを幾何平均HgB特異的IgG終点力価として表
す。図18に示したデータの統計解析は、HK1-HgB(dTM)及びHK3-HgB(dTM)によって誘導され
た応答に有意差がないことを示している。
【0420】
図19に示すように、HEK 293 T細胞とともに使用するための最適なLCMV株を決定するた
めに、HEK 293T細胞を、M6ウェル培養ウェルに、1ウェル当たり500,000細胞の密度で播種
した。翌日、これらを、0.05の感染多重度で、MP株、Pasteur株、クローン13株、及びWE5
4株に感染させた。上清を示された時点で回収し、ウイルス力価をイムノフォーカスアッ
セイにより決定した。記号は、2つのウェルの平均を表す。
【0421】
(ウサギにおけるHK1-HgB(dCt)の免疫原性)
ニュージーランドホワイト種のウサギを、実験の0及び28日目に、様々な濃度(2.0×102
、4.4×104、及び4.5×106FFU/用量)のHK1-HgB(dCt)で、筋肉内注射により免疫した。免
疫動物の血清を実験の0、28、及び42日目に回収し、抗HgB抗体力価をHgB特異的IgG ELISA
により解析した。
【0422】
ELISAデータは、単一の筋肉内免疫(一次免疫)の後に既に、より高用量(4.4×104及び4.
5×106FFU/用量)のHK1-HgB(dCt)が、かなりの大きさの抗HgB抗体応答を用量依存的に誘導
したことを示している(図20)。これらの応答は、同じベクターを一次免疫の4週間後に再
投与したとき効率的に強化することができた。4.5×106FFU/用量のHK1-HgB(dCt)の注射は
、4.4×104FFU/用量よりも統計的に有意に大きい抗体応答を28及び42日で誘導した。
【0423】
(抗体応答の持続時間及び様々な免疫スケジュールの比較)
様々な注射スケジュールを、HK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、及びアジュバントと混
合した組換えgBタンパク質(図21A)、又はHK1-HgB(H3-2)、HK1-HgB(VSVG-1)、HgB(dTM)、H
K1-HgB(dCt)、及びアジュバントと混合した組換えgBタンパク質(図21B)で免疫したときに
誘導される抗体応答のレベル及び持続時間に関して比較した。C57BL/6マウスを、実験の0
、21、及び42日目に(図21A)又は0、21、及び105日目に(図21B)、1×105FFU/用量のそれぞ
れのベクター又はアジュバントと1:1で混合した5μgの組換えgBタンパク質で筋肉内免疫
した。免疫マウスの血清を、実験の21、42、63、91、119、147、及び175日目に(図21A)、
又は21、42、63、84、105、及び126日目に(図21B)回収した。得られた血清を抗HCMVgB Ig
G抗体のレベルについてELISAにより試験した。それぞれのELISAデータは、最大の抗体レ
ベルを2回の免疫により達成することができること及び誘導された液性応答が非常に長い
間持続することを示している。
【0424】
(2つのベクターの同時注射による負の干渉はない)
様々なLCMVベクターコンストラクトの干渉の可能性を調べるために、B細胞応答及びCD8
+ T細胞応答の誘導を、HK1-HgB(dCt)のみ、HK1-Hpp65のみによる免疫の後、又はHK1-HgB(
dCt)とHK1-Hpp65の同時注射の後に解析した。C57BL/6マウスを、0及び28日目に、9×104F
FU/用量のHK1-HgB(dCt)のみ、9×104FFU/用量のHK1-Hpp65のみ、又は9×104FFU/用量の各
々のHK1-HgB(dCt)及びHK1-Hpp65を併せて筋肉内免疫した。抗HCMVgB抗体(図22A)又はpp65
特異的CD8+ T細胞応答(図22B)の誘導を1回目の注射の49日後にモニタリングした。一価ワ
クチン(HK1-HgB(dCt)又はHK1-Hpp65のみ)と二価ワクチン(HK1-HgB(dCt)及びHK1-Hpp65)の
間で、抗HCMVgB抗体レベル(図22A)の有意な差も、pp65特異的CD8+ T細胞応答(図22B)の有
意な差も観察することができなかった。これは、2つのrLCMVベクターを混合し、共注射し
たときに、負の干渉がないことを示している。
【0425】
(LCMVベクターはモルモットモデルで仔を先天性CMV感染から保護する)
先天性CMV感染に対するHCMVワクチンの保護効力の前臨床評価は、CMVの種特異性により
困難となっている。しかしながら、モルモットCMV(GPCMV)は、胎盤を横断し、ヒト感染と
類似した先天性感染を引き起こす(Bourne Nらの文献、JID 1996; Schleiss Mらの文献、J
ID 2003)。さらに、胎盤の構造並びに第1期に似た妊娠期間及び母親抗体の経胎盤通過は
、モルモットとヒトで類似している。これらの特徴に基づいて、モルモットモデルは、先
天性感染に対するCMVワクチン効力の評価のための利用可能な最も優れた動物モデルであ
る。
【0426】
ハートレイ系モルモットを、0、21、及び42日目に、HK1-GPgB(dTM)、HK1-GPpp65、又は
バッファー(対照群)で3回筋肉内免疫した。最後のワクチン投与から約2週間後、免疫モル
モットを交配させた。妊娠したモルモットに、妊娠から~45日でGPCMVを投与し、その後
、出産までモニタリングした。子孫の生存の解析により、交配前にHK1-GPgB(dTM)(p=0.0
26)又はHK1-GPpp65(p=0.032)のみで免疫した母獣における仔の死亡率の有意な低下が明
らかになった(図23)。より高い保護率は、gB及びpp65を発現するrLCMVベクターコンスト
ラクトの組合せでワクチン接種した後に期待することができる。例えば、図28を参照され
たい。
【0427】
rLCMVベクターの安全性(病原性及びウイルス複製)を決定するために、LCMV感染を非常
に起こしやすい特定のマウスに、0日目に、HK3-Hpp65又はマウスCMV由来のpp65抗原を発
現するLCMVのMP株に由来する複製欠損LCMVベクターであるHK3-Mpp65を脳内接種した。そ
の後、マウスを病気の兆候についてモニタリングした。複製するウイルスの存在を、28日
目に又は病気の場合はそれより早く回収された脳組織で解析した。
【0428】
様々な用量のHK3-Hpp65又はHK3-Mpp65の脳内接種から28日後、IFNα/β及びγ受容体に
欠損があり、それゆえ、LCMV感染を非常に起こしやすいAG129マウスでは、病気の兆候及
びウイルス複製を観察することができなかった(図24A)。対照的に、野生型LCMVを接種し
たAG129マウスは、疾患の兆候を示し、そのため、7日目に安楽死させなければならなかっ
た。
【0429】
同様に、様々な用量のHK3-Hpp65又はHK3-Mpp65の脳内接種から28日後、同じくLCMV感染
を非常に起こしやすいT及びB細胞欠損RAG-/-マウスでは、ウイルス複製を観察することが
できなかった(図24B)。高用量の複製ウイルスは、野生型LCMVを接種したRAG-/-マウスで
観察することができた。
【0430】
(モルモットにおけるHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65の免疫原性)
ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、実験の0、31、及び72日目(第1群)/0、31
、及び70日目(第2群)/0、34、及び70日目(第3群)に、8×105FFU/用量のHK1-GPgB(dCt)(第
1群)、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第2群)、又は8×105FFU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)
及びHK1-GPpp65(第3群)で、筋肉内注射により免疫した。さらに、ハートレイ系モルモッ
ト(18匹の動物/群)を、0、46、及び76日目に、完全フロイントアジュバント中に処方した
50μgのサブユニットgBタンパク質(第4群)で、皮下注射により免疫した。免疫動物の血清
を実験の0、28、52、103、及び155日目に回収し、抗GPgB抗体力価を、抗gB抗体力価が割
り当てられている血清プールを参照標準として用いるGPgB特異的IgG ELISAにより解析し
た。
【0431】
ELISAデータは、単一の免疫の後に既に、HK1-GPgB(dCt)が、かなりの大きさの抗GPgB抗
体応答を誘導したことを示している(図25)。これらの応答は、同じベクターを1回目のワ
クチン接種から1カ月後に再投与したとき、効率的に強化することができた。HK1-GPgB(dC
t)のみでの免疫によって誘導される抗GPgB抗体応答は、HK1-GPpp65と組み合わせたHK1-GP
gB(dCt)をワクチン接種した後に誘導されるものと同様の範囲にあった。重要なことに、
完全フロイントアジュバント中に処方されたサブユニットgBタンパク質をワクチン接種し
た後よりも有意に高いレベルの抗GPgB抗体がHK1-GPgB(dCt)で免疫した後に刺激された。
【0432】
(中和データ)
それぞれの血清を、ウイルス中和抗体の存在について、GPL細胞における中和アッセイ
によりさらに解析した(図26)。結果は、HK1-GPgB(dCt)のみ(第1群)又はHK1-GPpp65と組み
合わせたHK1-GPgB(dCt)(第3群)で免疫したときのモルモットにおける中和抗体の誘導を示
した。ELISAデータ(図25)と一致して、HK1-GPgB(dCt)は、完全フロイントアジュバント中
に処方されたサブユニットgBタンパク質よりも有意に(P<0.0001、対応のないt検定)高い
レベルの中和抗体を誘導した。予想外のことに、HK1-GPgB(dCt)とHK1-GPpp65との組合せ(
第3群)は、HK1-GPgB(dCt)のみ(第1群)よりも有意に(P=0.0003、対応のないt検定)強く中
和する血清を誘発した。
【0433】
(T細胞データ)
ワクチン接種動物におけるpp65特異的T細胞応答の誘導を解析するために、脾細胞を8×
105FFU/用量のHK1-GFP(第1群)、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第2群)、又は8×105FFU/用
量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65(第3群)で筋肉内免疫したハートレイ系モルモッ
トから単離した。各々のワクチン群(第1群、第2群、及び第3群)由来の3匹の動物を2回の
ワクチン投与の後に屠殺した(動物を、それぞれ、2回目のワクチン投与から43、40、及び
37日後に屠殺した)。3回目のワクチン投与が、2回のワクチン投与と比較して、pp65特異
的T細胞応答をさらに強化するかどうかを解析するために、各々のワクチン群由来の3匹の
追加の動物を3回目の投与から7日後に屠殺した。
【0434】
単離された脾細胞を、pp65ペプチドのプールを再刺激に用いるELISPOTアッセイにより
解析した。それぞれのペプチド(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を、5アミノ酸の重複を
有する9アミノ酸長の断片(合計140個のペプチド)単位で、pp65にまたがるように設計した
。ペプチドを11個又は12個のペプチドを含むプールに割り当てた。各々の動物の応答の大
きさは、各々のペプチドプールについての、ペプチドで再刺激した脾細胞とDMSO(ビヒク
ル)対照で再刺激した脾細胞との間の累積差(「曲線下面積」)である。
【0435】
図27Aに示すように、pp65特異的IFN-γ産生脾細胞は、HK1-GPpp65のみをワクチン接種
した動物(第2群)及びHK1-GPgB(dCt)と組み合わせたHK1-GPpp65をワクチン接種した動物(
第3群)で誘導された。両方のワクチン群において、pp65特異的IFN-γ産生脾細胞のより大
きい平均数が、2回の投与と比較して、3回のワクチン投与後に観察された。
【0436】
小さい群サイズ(n=3)は、2回又は3回のどちらかのワクチン投与後のワクチン群間の直
接的な統計比較を妨げるが、統計比較を、組み合わせたワクチン接種群間で行う、すなわ
ち、各々のワクチン(第1群、第2群、及び第3群)について、2回投与群のデータと3回投与
群のデータを1つに組み合わせることができる(図27B)。それぞれの解析により、HK1-GPpp
65をワクチン接種した動物(第2群)は、HK1-GFP対照(第1群)と比較して、動物当たりのpp6
5特異的脾細胞の数が有意に増加することが明らかになった。同様に、HK1-GPgB(dCt)/HK1
-GPpp65ワクチン群(第3群)も、HK1-GFP対照(第1群)と比較して、pp65特異的脾細胞の数が
有意に増加した。ワクチン群2とワクチン群3の間の統計的に有意な差は観察することがで
きなかった。これは、gBの存在がpp65応答を妨害しなかったことを示している。
【0437】
(保護データ)
LCMVベクターはモルモットモデルで仔を先天性CMV感染から保護する。先天性CMV感染に
対するHCMVワクチンの保護効力の前臨床評価は、CMVの種特異性により困難となっている
。しかしながら、モルモットCMV(GPCMV)は、胎盤を横断し、ヒト感染と類似した先天性感
染を引き起こす(Bourne Nらの文献、JID 1996; Schleiss Mらの文献、JID 2003)。さらに
、胎盤の構造並びに第1期に似た妊娠期間及び母親抗体の経胎盤通過は、モルモットとヒ
トで類似している。これらの特徴に基づいて、モルモットモデルは、先天性感染に対する
CMVワクチン効力の評価のための利用可能な最も優れた動物モデルである。
【0438】
ハートレイ系モルモット(18匹の動物/群)を、8×105FFU/用量のHK1-GFP(第1群)、8×10
5FFU/用量のHK1-GPgB(dCt)(第2群) 、8×105FFU/用量のHK1-GPpp65(第3群)、又は8×105F
FU/用量の各々のHK1-GPgB(dCt)及びHK1-GPpp65(第4群)で、3回(0、~30、及び~70日目に
)、筋肉内免疫した。最後のワクチン投与から約1カ月後、免疫モルモットを交配させた。
モルモット母獣の妊娠を触診により確認し、モニタリングした。妊娠した母獣に、妊娠の
第3期に、GPCMVを投与し、その後、出産までモニタリングした。子孫の生存の解析(図28)
により、対照群と比較した、HK1-GPgB(dCt)又はHK1-GPpp65のみで免疫した母獣における
仔の死亡率の低下が明らかになった。HK1-GPgB(dCt)のワクチン接種は、HK1-GPpp65より
も良好な保護を付与した。一層より高い保護率は、HK1-GPgB(dCt)とHK1-GPpp65の組合せ
をワクチン接種した後に観察することができた。対照群(第1群)における高い死亡率は、
厳しい投与条件を示している。
(等価物及び引用による組込み:)
本明細書に記載される実施態様は、単に例示的であることが意図されており、当業者は
、本明細書に記載される具体的な手順の多くの等価物を認識するか、又はルーチンの実験
だけを用いて、それらを確認することができるであろう。そのような等価物は全て、本発
明の範囲内にあると考えられ、以下の実施態様によって包含される。本明細書に引用され
る参考文献(特許出願、特許、及び刊行物を含む)は全て、あたかも各々の個々の刊行物又
は特許又は特許出願が、完全に、あらゆる目的のために、具体的かつ個別的に引用により
組み込まれることが示されるのと同じ程度まで、完全にかつあらゆる目的のために引用に
より本明細書中に組み込まれる。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように
改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産
生することができない感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、1つの
アレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
c.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
d.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
e.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
f.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
g.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列に置き換えられている、前記感染性複製欠損
アレナウイルスウイルスベクター。
(構成2)
前記糖タンパク質gB又はその抗原性断片が、配列番号3、配列番号6、配列番号9、配列
番号12、配列番号15、配列番号18、配列番号21、配列番号24、配列番号27、配列番号30、
配列番号60、又は配列番号63と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同
一であるアミノ酸配列を含む、構成1記載のウイルスベクター。
(構成3)
前記pp65抗原が、配列番号36のpp65抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%
、98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイルスベクター。
(構成4)
前記糖タンパク質gHが、配列番号39又は配列番号52から選択されるgH抗原又は抗原性断
片と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%
、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイ
ルスベクター。
(構成5)
前記糖タンパク質gLが、配列番号41のgL抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%
、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイルスベクター。
(構成6)
前記UL128が、配列番号43のUL128抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、84%
、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイルスベクター。
(構成7)
前記UL130が、配列番号46のUL130抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、84%
、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイルスベクター。
(構成8)
前記UL131Aが、配列番号48のUL131A抗原又は抗原性断片と80%、81%、82%、83%、84
%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%
、98%、99%、又は100%同一である、構成1記載のウイルスベクター。
(構成9)
以下のもの:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
c.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
d.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
e.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
のうちの少なくとも2つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される2つのヌクレオチド
配列が、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる、構成1記載のウイルスベクター。
(構成10)
以下のもの:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
c.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
d.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
e.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
のうちの少なくとも3つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される3つのヌクレオチド
配列が、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる、構成1記載のウイルスベクター。
(構成11)
以下のもの:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
c.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
d.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
e.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
のうちの少なくとも4つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される4つのヌクレオチド
配列が、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列又はリボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列
エレメント、例えば、「内部リボソーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によっ
て隔てられる、構成1記載のウイルスベクター。
(構成12)
以下のもの:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
c.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
d.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
e.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
を含み、ここで、上記のa.~e.の5つのヌクレオチド配列が、「リボソームスキッピング
」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断ペプチドもしくはアミノ酸配列又は
リボソームの結合及び下流配列の翻訳をもたらす配列エレメント、例えば、「内部リボソ
ーム進入部位」をコードするヌクレオチド配列によって隔てられる、構成1記載のウイル
スベクター。
(構成13)
前記ヌクレオチド配列の発現が、タンパク質複合体構成要素の個別発現よりも高力価の
中和抗体を誘発する抗原性タンパク質複合体を産生する、構成9、0、11、又は0記載のウ
イルスベクター。
(構成14)
前記自己切断ペプチド(又は「リボソームスキッピング」配列)が、豚テシオウイルス-1
2A、トセアアシグナウイルス2A、又は口蹄疫ウイルス2Aペプチドである、構成9、0、11
、又は0記載のウイルスベクター。
(構成15)
前記アレナウイルスがリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスである、構成1~14のいずれか一
項記載のウイルスベクター。
(構成16)
前記アレナウイルスの糖タンパク質をコードするオープンリーディングフレームが欠失
しているか又は機能的に不活化されている、構成1~15のいずれか一項記載のウイルスベ
クター。
(構成17)
前記感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターをコードするゲノム情報が、リン
パ球性脈絡髄膜炎ウイルスクローン13株に由来する、構成1~16のいずれか一項記載のウ
イルスベクター。
(構成18)
前記感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターをコードするゲノム情報が、リン
パ球性脈絡髄膜炎ウイルスMP株に由来する、構成1~17のいずれか一項記載のウイルスベ
クター。
(構成19)
前記ウイルスベクターがゲノムセグメントを含み、ここで、該ゲノムセグメントが、配
列番号31のヌクレオチド1639~3315又は配列番号32の1640~3316の配列と少なくとも90%
、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一
であるヌクレオチド配列を含む、構成1~18のいずれか一項記載のウイルスベクター。
(構成20)
前記ウイルスベクターが、そのアミノ酸配列が、配列番号31の1639~3315又は配列番号
32の1640~3316によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%
、94%、95%、96%、97%、98%、少なくとも99%、又は100%同一である発現産物をコ
ードするヌクレオチド配列を含むゲノムセグメントを含む、構成1~19のいずれか一項記
載のウイルスベクター。
(構成21)
サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列を含む感染性複製
欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、(i)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン
が異種ペプチドと置換されているか;又は(ii)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜
貫通ドメインが異種ペプチドと置換されている、前記感染性複製欠損アレナウイルスウイ
ルスベクター。
(構成22)
前記異種ペプチドが、ウイルスタンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインを含む
、構成21記載のウイルスベクター。
(構成23)
前記異種ペプチドが、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質又はインフルエンザウイル
スの血球凝集素タンパク質である、構成21記載のウイルスベクター。
(構成24)
前記gBタンパク質の膜貫通ドメインが欠失している、構成21又は23記載のウイルスベク
ター。
(構成25)
前記gBタンパク質のカルボキシ末端が切断されている、構成21又は23記載のウイルスベ
クター。
(構成26)
前記アレナウイルスの増殖又は感染力が異種核酸によって影響されない、構成1~24の
いずれか一項記載のウイルスベクター。
(構成27)
サイトメガロウイルス糖タンパク質gBをコードするヌクレオチド配列を含む感染性複製
欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、(i)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン
が欠失しているか;又は(ii)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが欠
失している、前記感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクター。
(構成28)
構成1~27のいずれか一項記載のウイルスベクター及び医薬として許容し得る担体を含
む医薬組成物。
(構成29)
構成1~27のいずれか一項記載のウイルスベクター及び医薬として許容し得る担体を含
む免疫原性組成物。
(構成30)
構成1~27のいずれか一項記載のウイルスベクター及び医薬として許容し得る担体を含
むワクチン。
(構成31)
患者におけるサイトメガロウイルス感染を治療又は予防する方法であって、該患者に、
構成1~27のいずれか一項記載のウイルスベクター、構成28記載の医薬組成物、構成29記
載の免疫原性組成物、又は構成30記載のワクチンを投与することを含む、前記方法。
(構成32)
患者におけるサイトメガロウイルス感染の治療又は予防のための、構成1~27のいずれ
か一項記載のウイルスベクター、構成28記載の医薬組成物、構成29記載の免疫原性組成物
、又は構成30記載のワクチンの使用。
(構成33)
構成1~27のいずれか一項記載のウイルスベクター、構成28記載の医薬組成物、構成29
記載の免疫原性組成物、又は構成30記載のワクチンが筋肉内注射に好適である、構成32記
載の使用。
(構成34)
CMV糖タンパク質gB又はその断片及び異種ポリペプチドを含む融合タンパク質をコード
するヌクレオチド配列を含む核酸。
(構成35)
(i)前記糖タンパク質gBの細胞質ドメインが前記異種ペプチドの細胞質ドメインと置換
されているか;又は(ii)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが前記異
種ペプチドの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインと置換されている、構成34記載の核酸。
(構成36)
前記異種タンパク質が、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質又はインフルエンザウイ
ルスの血球凝集素タンパク質である、構成34又は35記載の核酸。
(構成37)
前記gBタンパク質の膜貫通ドメインが欠失している、構成34又は35又は36記載の核酸。
(構成38)
CMV糖タンパク質gB又はその断片及び異種ポリペプチドを含む融合タンパク質。
(構成39)
前記糖タンパク質gBの細胞質ドメインが前記異種タンパク質の細胞質ドメインと置換さ
れている、構成38記載の融合タンパク質。
(構成40)
前記異種タンパク質が、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質又はインフルエンザウイ
ルスの血球凝集素タンパク質である、構成38又は39記載の融合タンパク質。
(構成41)
前記gBタンパク質の膜貫通ドメインが欠失している、構成38又は39又は40記載の融合タ
ンパク質。
(構成42)
構成34もしくは35もしくは36もしくは37記載の核酸、又は構成38もしくは39もしくは40
もしくは41記載の融合タンパク質を含む医薬組成物。
(構成43)
単離された核酸であって、該核酸がアレナウイルスゲノムセグメントをコードし、ここ
で、該ゲノムセグメントの1つのオープンリーディングフレームが欠失しているか又は機
能的に不活化されており、かつ該ゲノムセグメントが:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
c.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
d.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
e.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
f.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
g.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
のうちの1つ又は複数を含む、前記単離された核酸。
(構成44)
前記ゲノムセグメントが短いセグメントであり、ここで、前記GPをコードするオープン
リーディングフレームが欠失している、構成43記載の単離された核酸。
(構成45)
前記ゲノムセグメントが、CMV糖タンパク質gB又はその断片及び異種ポリペプチドを含
む、構成43又は44記載の単離された核酸。
(構成46)
(i)前記糖タンパク質gBの細胞質ドメインが前記異種タンパク質の細胞質ドメインと置
換されているか;又は(ii)該糖タンパク質gBの細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインが該異
種タンパク質の細胞質ドメイン及び膜貫通ドメインと置換されている、構成45記載の単離
された核酸。
(構成47)
前記異種タンパク質が、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質又はインフルエンザウイ
ルスの血球凝集素タンパク質である、構成46記載の単離された核酸。
(構成48)
前記gBタンパク質の膜貫通ドメインが欠失している、構成47記載の単離された核酸。
(構成49)
感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターを作製する方法であって:
a.宿主細胞に、構成43、44、45、46、47、又は48のいずれか一項記載の核酸をトランス
フェクトすること;
b.該宿主細胞を、ウイルス形成に好適な条件下で維持すること;及び
c.該感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターを回収すること;
を含み、ここで、該宿主細胞が、前記ゲノムセグメントの欠失しているか又は機能的に不
活化されているオープンリーディングフレームを発現する、前記方法。
(構成50)
組換えLCMV株MP。
(構成51)
(i)配列番号54と少なくとも99%又は100%同一のもの;(ii)配列番号55と少なくとも94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;(iii)配列番号56と少なくと
も96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;及び(iv)配列番号57と少なくとも93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のものからなる群から選択され
るアミノ酸配列をコードする単離された核酸。
(構成52)
(i)配列番号54と少なくとも99%又は100%同一のもの;(ii)配列番号55と少なくとも94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;(iii)配列番号56と少なくと
も96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;及び(iv)配列番号57と少なくとも93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のものからなる群から選択され
るアミノ酸配列をコードする核酸を含む発現ベクター。
(構成53)
(i)配列番号54と少なくとも99%又は100%同一のもの;(ii)配列番号55と少なくとも94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;(iii)配列番号56と少なくと
も96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;及び(iv)配列番号57と少なくとも93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のものからなる群から選択され
るアミノ酸配列をコードする核酸を含む宿主細胞。
(構成54)
(i)配列番号54と少なくとも99%又は100%同一のもの;(ii)配列番号55と少なくとも94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;(iii)配列番号56と少なくと
も96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;及び(iv)配列番号57と少なくとも93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のものからなる群から選択され
るアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質。
(構成55)
(i)配列番号54と少なくとも99%又は100%同一のもの;(ii)配列番号55と少なくとも94
%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;(iii)配列番号56と少なくと
も96%、97%、98%、99%、又は100%同一のもの;及び(iv)配列番号57と少なくとも93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のものからなる群から選択され
るアミノ酸配列を含むタンパク質に免疫特異的に結合する抗体。
(構成56)
配列番号49又は53のヌクレオチド配列を含む単離された核酸。
(構成57)
構成56記載の核酸を含む発現ベクター。
(構成58)
構成56記載の核酸又は構成57記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(構成59)
構成56記載のヌクレオチド配列を含む組換えウイルスベクター。
(構成60)
HCMV gBの細胞質ドメインが欠失している、ワクチン組成物HCMV gBタンパク質。
(構成61)
前記切断されたHCMV gBが、gB株Merlinの772個のN末端アミノ酸(配列番号60)を含むが
、gB株Merlinの残りのC末端アミノ酸を含まない、構成60記載のワクチン。
(構成62)
前記切断されたHCMV gBが、gB株Merlinの772個のN末端アミノ酸(配列番号60)から本質
的になる、構成60記載のワクチン。
(構成63)
前記切断されたHCMV gBが、gB株Merlinの772個のN末端アミノ酸(配列番号60)と、それ
に続く、位置773のアルギニン残基から本質的になる、構成60記載のワクチン。
(構成64)
前記切断されたHCMV gBが、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%
、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、
96%、97%、98%、99%、少なくとも99.5%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む
、構成60記載のワクチン。
(構成65)
前記1つのアレナウイルスオープンリーディングフレームが、糖タンパク質(GP)オープ
ンリーディングフレームである、構成1記載のアレナウイルスウイルスベクター。
(構成66)
感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように
改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産
生することができない感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、1つの
アレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつCMV抗原又はその抗原性
断片をコードするヌクレオチド配列に置き換えられており、ここで、対象への該アレナウ
イルスウイルスベクターの投与が、該CMV抗原又はその抗原性断片に対する長期持続性免
疫応答を誘導する、前記感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクター。
(構成67)
前記長期持続性免疫応答が、前記CMV糖タンパク質gB又はその抗原性断片に対する検出
可能な抗体力価を誘導する、構成66記載のアレナウイルスウイルスベクター。
(構成68)
前記長期持続性免疫応答が、前記CMV抗原又はその抗原性断片に対する検出可能な抗体
力価を少なくとも最低4週間誘導する、構成66記載のアレナウイルスウイルスベクター。
(構成69)
前記長期持続性免疫応答が、前記CMV抗原又はその抗原性断片に対する抗体力価を、少
なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500
%、又は少なくとも1000%増大させる、構成66又は66記載のアレナウイルスウイルスベク
ター。
(構成70)
感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように
改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産
生することができない感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、1つの
アレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつCMV抗原又はその抗原性
断片をコードするヌクレオチド配列に置き換えられており、ここで、該アレナウイルスウ
イルスベクターが先天性CMV感染を防御するのに好適である、前記感染性複製欠損アレナ
ウイルスウイルスベクター。
(構成71)
前記先天性CMV感染が症候性である、構成70記載のアレナウイルスウイルスベクター。
(構成72)
前記先天性CMV感染が無症候性である、構成70記載のアレナウイルスウイルスベクター

(構成73)
対象の先天性CMV感染を、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、
少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくと
も約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれよりも大
きく低下させる、構成70~72のいずれか一項記載のアレナウイルスウイルスベクター。
(構成74)
先天性CMVの発現を低下させる、構成70~73のいずれか一項記載のアレナウイルスウイ
ルスベクター。
(構成75)
前記発現が:先天性CMV感染の結果としての、精神遅滞、盲目及び感音性難聴、小頭症、
脈絡網膜炎、頭蓋内石灰沈着、肝脾腫大症、肝炎、黄疸、直接型高ビリルビン血症、血小
板減少症、点状出血、羊水過少症、羊水過多症、早産、子宮内発育遅滞、非免疫性水腫、
胎児腹水症、低血圧症(hyptonia)、並びに貧血を含む、構成74記載のアレナウイルスベク
ター。
(構成76)
感染細胞でその遺伝情報を増幅し、それを発現させる能力を有するゲノムを含むように
改変されているが、遺伝子改変されていない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産
生することができない第1の感染性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、1
つのアレナウイルスオープンリーディングフレームが除去され、かつ:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
c.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
d.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
e.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
f.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
g.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
からなる群から選択される第1のヌクレオチド配列に置き換えられている、前記第1の感染
性複製欠損アレナウイルスウイルスベクター、並びに感染細胞でその遺伝情報を増幅し、
それを発現させる能力を有するゲノムを含むように改変されているが、遺伝子改変されて
いない正常な細胞ではさらなる感染性子孫粒子を産生することができない第2の感染性複
製欠損アレナウイルスウイルスベクターであって、1つのアレナウイルスオープンリーデ
ィングフレームが除去され、かつ:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gB又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルステグメントタンパク質pp65又はその抗原性断片をコードするヌ
クレオチド配列;
c.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
d.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
e.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
f.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
g.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
からなる群から選択される第2のヌクレオチド配列に置き換えられている、前記第2の感染
性複製欠損アレナウイルスウイルスベクターを含む、医薬組成物。
(構成77)
前記第1の核酸配列と前記第2の核酸配列が異なる、構成76記載の医薬組成物。
(構成78)
前記第1の核酸配列がCMV主要エンベロープ糖タンパク質gB又はその断片をコードし、前
記第2の核酸配列がCMVテグメントタンパク質pp65又はその断片をコードする、構成76又は
77記載の医薬組成物。
(構成79)
前記第1のCMV抗原がCMVテグメントタンパク質pp65又はその断片であり、前記第2のCMV
抗原がCMV主要エンベロープ糖タンパク質gB又はその断片である、構成76又は77記載の医
薬組成物。
(構成80)
前記第1の核酸配列が、カルボキシ末端の切断を有するCMV主要エンベロープ糖タンパク
質gBをコードし、前記第2の核酸配列がCMVテグメントタンパク質pp65又はその断片をコー
ドする、構成76又は77記載の医薬組成物。
(構成81)
前記第1のCMV抗原がCMVテグメントタンパク質pp65又はその断片であり、前記第2のCMV
抗原が、カルボキシ末端の切断を有するCMV主要エンベロープ糖タンパク質gBである、構
成76又は77記載の医薬組成物。
(構成82)
前記カルボキシ末端の切断を有する糖タンパク質gBが、切断されたgBの全長にわたって
、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は少
なくとも100%同一であり、ここで、該切断が、配列番号3のアミノ酸772~906の領域にあ
る、構成80又は81記載の医薬組成物。
(構成83)
前記切断又は欠失が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14 、15、16、17
、18、19、20、21、22、23、24 、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、
37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、
57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、
77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、
97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113
、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129
、130、131、132、133、又は134アミノ酸長である、構成82記載の医薬組成物。
(構成84)
前記第1の核酸配列がCMV五量体複合抗原又はその断片をコードし、前記第2のものが、C
MV抗原五量体複合抗原又はその断片をコードする、構成76又は77記載の医薬組成物。
(構成85)
前記第1の核酸及び前記第2の核酸が、(c)~(g)のうちの2つ以上を含む、構成76又は77
記載の医薬組成物。
(構成86)
筋肉内投与に好適である、構成76~85のいずれか一項記載の医薬組成物。
(構成87)
以下のもの:
a.サイトメガロウイルス糖タンパク質gH又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
b.サイトメガロウイルス糖タンパク質gL又はその抗原性断片をコードするヌクレオチド
配列;
c.サイトメガロウイルスUL128タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;
d.サイトメガロウイルスUL130タンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列;及び
e.サイトメガロウイルスUL131Aタンパク質又はその抗原性断片をコードするヌクレオチ
ド配列
のうちの少なくとも2つを含み、ここで、上記のa.~e.から選択される3つのヌクレオチド
配列が、「リボソームスキッピング」による上流アミノ酸配列の遊離をもたらす自己切断
ペプチドもしくはアミノ酸配列、フューリン切断部位、ペプチドタグ、又は配列スペーサ
ーをコードするヌクレオチド配列によって隔てられる、構成1記載のウイルスベクター。
(構成88)
配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、又は少なくと
も99%同一であるポリペプチドであって、配列番号3のアミノ酸772~906の領域に切断又
は欠失を有する、前記ポリペプチドを含み、ここで、パーセント同一性が該ポリペプチド
の長さにわたって決定される、免疫原性組成物。
(構成89)
前記切断又は欠失が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14 、15、16、17
、18、19、20、21、22、23、24 、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、
37、38、29、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、
57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、
77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、
97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113
、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129
、130、131、132、133、又は134アミノ酸長である、構成88記載の免疫原性組成物。
(構成90)
工程a.において、前記宿主細胞に:第2のアレナウイルスゲノムセグメントのcDNA、Lタ
ンパク質ORFをコードする核酸、及び/又はNPタンパク質ORFをコードする核酸をトランス
フェクトすることをさらに含む、構成49記載の方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A-B】
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
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