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特許7001817容量感知クライミングホールド、関連する製造方法および壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】容量感知クライミングホールド、関連する製造方法および壁
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20220113BHJP
   A63B 27/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A63B69/00 517
A63B27/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020514341
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018063063
(87)【国際公開番号】W WO2018211062
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】1754398
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519409143
【氏名又は名称】イクスサン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ドニ・ギャルニエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァランタン・リュル
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第102013002287(DE,B3)
【文献】米国特許出願公開第2007/0191188(US,A1)
【文献】米国特許第8803844(US,B1)
【文献】特開2012-149242(JP,A)
【文献】米国特許第3966668(US,A)
【文献】特開2017-23707(JP,A)
【文献】米国特許第8808145(US,B1)
【文献】特開2001-303595(JP,A)
【文献】特開2004-167237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 27/00
A63B 9/00
A63B 17/00
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーマトリクス(22)と、
前記ポリマーマトリクス(22)内に提供されるアンカーポイント(21)であって、クライミングホールド(20)をクライミング壁上に付着しかつ容量性接触を容量検出アセンブリに伝達するように構成されたアンカーポイント(21)と、を備える容量感知クライミングホールド(20)であって、
前記ポリマーマトリクス(22)に炭素粉末(23)を、前記炭素粉末(23)が前記ポリマーマトリクス(22)の重量の5%から35%の間、好ましくは前記ポリマーマトリクス(22)の重量の10%から35%の間となるように統合し、前記炭素粉末(23)が、前記ポリマーマトリクス(22)内に実質的に均等に分配されていることを特徴とする、容量感知クライミングホールド。
【請求項2】
前記クライミングホールドが、2つのポリマーマトリクスを備え、少なくとも1つのポリマーマトリクス(22)に炭素粉末(23)が、前記炭素粉末(23)が前記ポリマーマトリクス(22)の重量の5%から35%の間、好ましくは前記ポリマーマトリクス(22)の重量の10%から35%の間となるように組み込まれている、請求項1に記載の容量感知クライミングホールド。
【請求項3】
前記炭素粉末(23)が、高度に構造化されたカーボンブラックに対応する、請求項1または2に記載の容量感知クライミングホールド。
【請求項4】
前記炭素粉末(23)が、黒鉛粉末に対応する、請求項1または2に記載の容量感知クライミングホールド。
【請求項5】
前記ポリマーマトリクス(22)が、シリカ粉末を統合する、請求項1から4のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールド。
【請求項6】
前記ポリマーマトリクス(22)が、5重量%から35重量%の間の炭素粉末(23)、好ましくは20重量%から30重量%の間の炭素粉末(23)、および20重量%から60重量%の間のシリカ、好ましくは40重量%から60重量%の間のシリカを統合する、請求項5に記載の容量感知クライミングホールド。
【請求項7】
容量検出を有するクライミングホールドを製造する方法であって、以下の連続するステップ、すなわち
ポリマー樹脂(22)を調製するステップ(30)と、
前記ポリマー樹脂(22)の重量の5%から35%の間、好ましくは前記ポリマー樹脂(22)の重量の10%から35%の間である炭素粉末(23)を組み込むステップ(31)と、
前記ポリマー樹脂(22)および炭素粉末(23)を統合した混合物(24)を攪拌するステップ(32)と、
前記混合物(24)を脱ガスするように、前記混合物(24)をバキュームベル(27)の下に配置するステップ(33)と、
前記混合物(24)を攪拌するステップ(32)の前または後に触媒(28)を前記混合物(24)に追加するステップ(34)と、
前記クライミングホールド(20)を形成するように、前記混合物(24)をモールド成形するステップ(35)とを含む、方法。
【請求項8】
以下の追加のステップ、すなわち
帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂の調製ステップと、
触媒を前記第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
大理石模様のクライミングホールド(20)を形成するために、前記混合物(24)をモールド成形するステップ(35)の間に前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを含む、請求項7に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項9】
以下の追加のステップ、すなわち
帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂を調製するステップと、
触媒を前記第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
前記混合物(24)をモールド成形するステップ(35)の前または後に前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを含む、請求項7に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項10】
以下の追加のステップ、すなわち
前記クライミングホールド(20)内に空洞を形成するように、前記混合物(24)をモールド成形するステップ(35)の前にバックモールドを適用するステップと、
帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂を調製するステップと、
触媒を前記第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
前記バックモールドの適用によって生成される前記空洞内で前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを含む、請求項7に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項11】
前記炭素粉末(23)を組み込むステップ(31)が、前記ポリマー樹脂(22)内に分散剤を追加するステップを含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項12】
ポリマー樹脂(22)を調製するステップ(30)が、シリカを追加するステップを含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項13】
前記混合物(24)を攪拌するステップ(32)が、10m/sから20m/sの間の速度において実行される、請求項7から12のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項14】
前記ポリマー樹脂(22)が、ポリエステルマトリクスに対応する、請求項7から13のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項15】
前記ポリマー樹脂(22)が、ポリウレタンマトリクスに対応する、請求項7から14のいずれか一項に記載の容量感知クライミングホールドを製造する方法。
【請求項16】
請求項1から6のいずれか一項に記載のクライミングホールド(20)と、
各ホールド(20)に接続されかつ各ホールド(20)上のクライマの接触を検出するように構成される容量検出アセンブリとを備える、接続されたクライミング壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングホールドの分野ならびにクライミングホールドを作るためのプロセスおよび関連する壁に関する。
【0002】
本発明はより詳しくは、クライマの容量検出を行うように適合されるクライミングホールドに関する。
【背景技術】
【0003】
クライミングホールドは従来、ポリエステルまたはポリウレタン樹脂をシリコーンモールド内に流すことによって作られる。ポリウレタンは、イソシアネートとアルコールを化合させることによって得られる。ポリエステルは、クランプ力に対してより抵抗性がある、改善されたホールドを得るためにシリカと混合されることもある。液体調製物が、得られるとき、触媒が、液体調製物の硬化を達成するために調製物に追加される。液体調製物が完全に硬くなる前に、液体調製物は、シリコーンモールド内に流し込まれる。
【0004】
従来のクライミング壁は、樹脂被覆のサンドブラストした木製ボードでできており、その上にホールドが、アンカーポイントを用いて固定される。このアンカーポイントは、ホールドを通り抜け、壁内にねじ込まれる、単に木ねじのこともある。好ましくは、アンカーポイントは、ソケットヘッドねじを有するねじ/インサートねじ式システムに対応する。ねじ頭部は、ホールド空洞内に挿入され、一方ねじ本体は、それが、壁のもう一方の側に開き、壁の後ろに埋め込まれたインサートのようなナットによって固定されるように、ホールド内のリセスおよび壁を通って延びる。
【0005】
このねじ/ナットシステムを用いると、ナットに印加される電流は、ねじ頭部において拾い上げられるためにホールドおよび壁を通り抜けることができる。従って、クライマの容量検出を実行することが可能である。
【0006】
容量検出は、人体が導電性であるという事実に基づいている。図1に示されるように、クライマ(13)の身体は、ナットによって取得回路に付着される別の電極(12)の前に来る電極としての役割を果たす。取得回路は、単に抵抗器(R)によって接続される入力端子(10)および出力端子(11)を備える。ナットは、抵抗(R)と出力端子(11)との間に接続される。取得回路とのナットの接続は、第1の残留容量(Cpin)を形成する。
【0007】
クライマ(13)の接触を検出するために、低電流が、入力端子(10)によって放出され、この低電流は、ナットに、次いでねじを介してクライミングホールドに伝達される。もしクライマが、ホールドに触ると、第2の残留容量(Csensed)が、クライマの身体によって生成され、こうして取得回路内へのクライマの身体の放電を誘発するRC回路を形成する。この放電は、出力端子(11)において検出可能である。
【0008】
容量感知クライミング壁においては、各ホールドは、特定の取得回路に接続され、時間とともにクライマによって触れられるホールドを識別することが可能である。この技術は、特に速度競争について、クライマの能力の分析を改善する。
【0009】
この技術は、フランス特許出願第3006797号および米国特許第8,808,145号から知られている。
【0010】
この技術に関する問題は、クライマの検出である。実際、図2に示されるように、クライマの検出は、空中でのねじ頭部(15)の周りの全体的に円形の半球にわたって均一である。第1の円(16)は、検出が最適である、ホールド(14)のエリアを例示する。第2の円(17)内では、検出によって誘発される電流は、第1の円(16)を通過するときよりも低い。第3の円(18)内では、検出によって誘発される電流は、この場合もやはりより低く、この第3の円(18)を越えると、クライマ(13)は、もはや検出できない。
【0011】
それ故に、本発明の技術的問題は、クライミングホールドの容量検出を改善することである。しかしながら、この改善は、自然の岩の接触を再現するように設計される、クライミングホールドの感触を犠牲にしてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】仏国特許出願公開第3006797号明細書
【文献】米国特許第8,808,145号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、導電性粒子をクライミングホールドのポリマーマトリクス内に統合することによってこの技術的問題を解決することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によると、本発明は、
-少なくとも1つのポリマーマトリクスと、
-前記ポリマーマトリクス内に提供されるアンカーポイントとを備える、容量感知クライミングホールドであって、前記アンカーポイントは、前記クライミングホールドをクライミング壁上に固定しかつ容量性接触を容量感知アセンブリに伝達するように構成される、容量感知クライミングホールドに関する。
【0015】
本発明は、前記ポリマーマトリクスに炭素粉末が、前記炭素粉末が前記ポリマーマトリクスの重量の5%から35%の間、好ましくは前記ポリマーマトリクスの重量の10%から35%の間となるように組み込まれ、前記炭素粉末が、前記ポリマーマトリクス内に実質的に均等に分配されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、電荷が、炭素粉末によって形成される帯電防止ネットワークを使用してクライミングホールド内に伝達可能であるので、その容量検出が、既存のホールドよりも大きい表面上で実行される、クライミングホールドを得ることを可能にする。
【0017】
クライミングホールド内への導電性粒子の統合は、導電性粒子が伝統的に、粉末または繊維の形の金属元素によって作られるので、特に直観に反している。しかしながら、クライミングホールド内に埋め込まれた金属繊維は、それらが、表面上に現れるので、切り傷のリスクを増加させ、それ故にユーザ体験を劣化させる。
【0018】
さらに、熟練したクライマは、金属粉末の大部分が、クライミングホールドのポリマーマトリクス内に統合するのが困難である高密度を有するということを知っている。
【0019】
例えば、非常に高密度の金属粉末については、すなわち、3.5g/cmを超えると、ポリマーマトリクス内への金属粉末の組込は、堆積負荷に起因して不均一な混合物を形成する。
【0020】
これらの技術的課題は、導電性特徴として炭素粉末を使用することによる本発明によって克服された。金属導電性材料(銀、銅、金、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、鉄、・・・、スズ、プラチナ、パラジウム、鉛)よりも低い導電率を有するけれども、一般に2.3g/cm未満の、炭素の低密度は、ポリマーマトリクスとの均一な混合物の形成を可能にした。
【0021】
本発明の下で行われたテストは、クライミングホールド本体の全質量と比較して非常に低い炭素質量、すなわち5%未満については、炭素粒子が、クライミングホールド内に帯電防止ネットワークを生成するのに十分でないので、容量検出が、ほんの少しだけ影響を受けることを実証した。さらに、非常に大きい質量、すなわち35%よりも大きい質量については、混合物の粘度は、それが自由な鋳造プロセスと両立し得るにはあまりにも高くなる。
【0022】
本発明は従って、炭素粉末が、クライミングホールドの機械的強度を著しく劣化させることなく容量性伝達の特性を改善する場合の、5%から35%の間の、好ましくは10%から35%の間の比を明らかにした。
【0023】
本発明によると、炭素粉末を前記ポリマーマトリクス内に実質的に均等に分配する特徴は、単一のポリマーマトリクスから成るホールドについては、1cmの体積を有するホールドの各元素ボリュームが、ホールド内に提供される5重量%から35重量%の間、好ましくは10重量%から35重量%の間である炭素粉末の割合の少なくとも半分を含有するということを示す。従って、ホールドの各元素ボリュームは、少なくとも2.5%の炭素粉末、好ましくは少なくとも5%の炭素粉末を含有する。この特徴は、ホールド内での帯電防止ネットワークの連続性を確実にする。
【0024】
さらに、クライミングホールドは、付着手段と一緒にまたはなしで販売されることもある。一般に、付着手段は、クライミングホールド内の穴を通り抜けるねじを備える。この場合、クライミングホールドは、クライミングホールド内にねじ頭部を含有することを目的とする空洞を有する。
【0025】
別法として、クライミングホールドは、ねじ上にオーバーモールドされてもよい。この場合、本発明によるポリマーマトリクスの重量比は、クライミングホールドの重量に対してねじの重量を除去することによって考えられるべきである。
【0026】
別法として、前記クライミングホールドは、2つのポリマーマトリクスを備え、少なくとも1つのポリマーマトリクスに炭素粉末が、前記炭素粉末が前記ポリマーマトリクスの重量の5%から35%の間、好ましくは前記ポリマーマトリクスの重量の10%から35%の間となるように組み込まれている。この実施形態は、二元材料ホールドに当てはまる。この場合、炭素粉末を統合するポリマーマトリクスに対する炭素粉末の重量比は、2つの材料から分離されなければならない。
【0027】
一実施形態によると、前記炭素粉末は、高度に構造化されたカーボンブラックに対応する。テストは、高度に構造化されたカーボンブラックが、炭素粉末とポリマーマトリクスとの間の混合物の均一性を確実にするのに特に有効であることを示した。
【0028】
一実施形態によると、前記炭素粉末は、黒鉛粉末に対応する。テストはまた、黒鉛粉末も、炭素粉末とポリマーマトリクスとの間の混合物の均一性を確実にするのに特に有効であることを示した。
【0029】
一実施形態によると、前記ポリマーマトリクスは、シリカ粉末を統合する。クライミングホールド内でのシリカの使用は、クライミングホールドをクライミング壁上に締め付けるときのクライミングホールドの衝撃に対する機械的抵抗を増加させる。テストは、シリカが、炭素元素によって形成される帯電防止ネットワーク内に不連続性を引き起こさないので、シリカ粉末が、検出信号に無視できる影響を有することを実証した。
【0030】
一実施形態によると、前記ポリマーマトリクスは、5重量%から35重量%の間の炭素粉末、好ましくは20重量%から30重量%の間の炭素粉末、および20重量%から60重量%の間のシリカ、好ましくは40重量%から60重量%の間のシリカを統合する。テストは、炭素粉末、シリカおよびクライミングホールドの重量の間のこの比が、クライミングホールドを実施するための混合物の均一性を確実にするのに特に有効であったことを実証した。
【0031】
第2の態様によると、本発明は、以下の連続するステップ、すなわち
-ポリマー樹脂の調製ステップと、
-前記ポリマー樹脂の5重量%から35重量%の間、好ましくは前記ポリマー樹脂の10重量%から35重量%の間である炭素粉末の組込ステップと、
-前記ポリマー樹脂および炭素粉末を統合した混合物を攪拌するステップと、
-混合物を脱ガスするように、混合物をバキュームベルの下に配置するステップと、
-攪拌ステップの前または後に触媒を混合物に追加するステップと、
-前記クライミングホールドを形成するように、混合物をモールド成形するステップとを含む、容量感知クライミングホールドを製造するための方法に関する。
【0032】
従来のクライミングホールドの製造と異なり、炭素粉末の追加は、混合物の均一性を確実にするためにポリマー樹脂および炭素粉末を攪拌することを必要とする。この攪拌ステップは、混合物内の気泡の形成を誘発し、現況技術に反して、追加の脱ガスステップが、これらの気泡を引き出しかつ良好な機械的抵抗を有するクライミングホールドを得るために必要とされる。
【0033】
ポリマー樹脂を炭素粉末と合体させることによって二元材料ホールドを達成するために、本発明は、3つの異なる変形を提案する。
【0034】
第1の変形では、本方法は、以下の追加のステップ、すなわち
-帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂を調製するステップと、
-触媒を第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
-大理石模様のクライミングホールドを形成するために、混合物のモールド成形ステップの間に前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを伴う。
【0035】
この第1の変形は、大理石模様の二元材料ホールドを得ることを、すなわち2つの材料がモールド成形プロセス中に一緒に混合されることを可能にする。充填ポリマー樹脂は、クライマの手または足と接触するときの容量検出を提供し、一方未充填ポリマー樹脂は、特定の美的な結果を与えるために異なる色である。
【0036】
第2の変形では、本方法は、以下の追加のステップ、すなわち
-帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂を調製するステップと、
-触媒を第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
-混合物のモールド成形ステップの前または後に前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを伴う。
【0037】
この第2の変形は、2つの異なる材料厚さを有する二元材料ホールドを得ることを可能にする。充填ポリマー樹脂の厚さは、クライマの手または足と接触するときの容量検出を確実にし、一方未充填ポリマー樹脂は、特定の美的な結果を与えるために異なる色である。
【0038】
第3の変形では、本方法は、以下の追加のステップ、すなわち
-前記クライミングホールド内に空洞を形成するように、混合物のモールド成形ステップの前にバックモールドを適用するステップと、
-帯電防止特性を有さない第2のポリマー樹脂を調製するステップと、
-触媒を第2のポリマー樹脂に追加するステップと、
-バックモールドの適用によって生成される前記空洞内で前記第2のポリマー樹脂をモールド成形するステップとを伴う。
【0039】
この第3の変形は、ホールドの中心が、帯電防止特性を有さない第2の樹脂を組み込みながら、クライマの手または足と接触することを目的とする、第1の樹脂と炭素粉末との間の混合物によって形成されるスキンを有する二元材料ホールドを得ることを可能にする。
【0040】
一実施形態によると、前記炭素粉末を組み込むステップは、分散剤の追加を伴う。この実施形態は、混合物内の炭素粉末の分布を改善することを目指す。
【0041】
一実施形態によると、ポリマー樹脂の調製段階は、シリカの追加を伴う。
【0042】
この実施形態は、クライミングホールドをクライミング壁上に締め付けるときにクライミングホールドの機械的抵抗を増加させる。
【0043】
本実施形態によると、攪拌ステップは、10m/sから20m/sの間の速度において実行される。この速度は、混合物の動きの速度に対応する。攪拌は、10m/sから20m/sの間のツール移動速度を有する往復移動によって実行されてもよい。別法として、攪拌は、混合物内に浸されたツールを使用する円運動によって実行されてもよく、この線形速度はその時、ツールのブレードの端部の速度に対応する。この実施形態は、混合物内の炭素粉末の効果的な分散を保証する。
【0044】
一実施形態によると、前記ポリマー樹脂は、ポリエステルマトリクスに対応する。
【0045】
一実施形態によると、前記ポリマー樹脂は、ポリウレタンマトリクスに対応する。
【0046】
第3の態様によると、本発明は、
-本発明の第1の態様によるクライミングホールドと、
-各ホールドに接続されかつ各ホールド上のクライマの接触を検出するように構成される容量検出システムとを備える、接続されたクライミング壁に関する。
【0047】
本発明を実施する方法およびそれから結果として生じる利点は、付属の図を支援して、限定されない例として与えられる、次の実施形態から明らかであるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】現況技術のクライミングホールドの容量検出の電気接続図の概略表現である。
図2】現況技術の容量検出を有するクライミングホールドの正面図である。
図3】本発明の容量検出を有するクライミングホールドの正面図である。
図4】導電性粒子の百分率に基づく図3におけるホールドの検出率の進展の概略表現である。
図5図3におけるホールドを製造することに関わるステップの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
このセクションは、その本体が、単一のポリマーマトリクスを有する、クライミングホールドを記述するが、しかしより多くのポリマーマトリクスが、本発明を変えることなく使用されてもよい。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態による容量感知クライミングホールド20を例示する。クライミングホールド20は、ソケットヘッドねじ21を用いて壁に付着される。これをするために、ねじ頭部21は、ホールド20空洞内に統合され、ねじ本体21は、クライミングホールド20の本体内のリセスを通り抜ける。
【0051】
ねじ21は、現況技術のそれらに似た取得回路に接続されるナットによってクライミング壁上に固定される。クライミングホールド20の本体は、ポリマーマトリクス22および導電性粉末23を備える。導電性粉末23は、高度に構造化されたカーボンブラックまたは黒鉛粉末などの、炭素粉末に対応する。例えば、会社Inoxia Ltd(登録商標)からの黒鉛粉末が、使用されてもよい。
【0052】
ポリマーマトリクス22は、ポリエステル、ポリウレタンまたは任意の他の互換性のある樹脂マトリクスとすることができる。例えば、ブランドPolyprocessのポリエステルマトリクスPO820が、使用されてもよい。
【0053】
導電性粒子23の割合は、静電荷をクライマから取得回路に伝達するのに特に敏感である。図4は、黒鉛粉末と関連するポリエステルマトリクスを有するクライミングホールド20について導電性粒子23の重量による百分率に基づく検出率を例示する。クライマの検出の改善は、クライミングホールド20の重量の5%の比に基づいており、25%の比の後に安定する。
【0054】
図3に示されるように、25%黒鉛粉末、50%シリカおよびポリエステルマトリクス、好ましくは30%シリカを統合するクライミングホールドについて、クライマの検出は、全ホールド20にわたって均一であり、炭素粉末23が、静電荷をクライマから取得回路に伝達するのに特に有効であることを明らかにする。
【0055】
そのようなクライミングホールド20は、図5に述べられる方法によって達成される。第1のステップ30は、ポリマーマトリクス22を形成するためである。好ましくは、ポリマーマトリクス22は、容器25内でポリエステルまたはポリウレタン樹脂から形成される。ポリウレタンは、イソシアネートとアルコールを化合させることによって得られる。ポリエステルは、クランプ力に対してより抵抗性がある、改善されたホールド20のためにシリカと混合されてもよい。
【0056】
ポリマーマトリクス22が得られるとき、第2のステップ31において、炭素粉末23が、ポリマーマトリクス22内に組み込まれる。炭素粉末23の重量は、所望の特性に従って決定されるが、しかし炭素粉末23の重量は、ポリマーマトリクス22および炭素粉末23によって形成されるアセンブリの5重量%から35重量%の間、好ましくはアセンブリの重量の10%から35 %の間でなければならない。炭素粉末23に加えて、分散剤が、炭素粉末の分布を改善するために、ポリマーマトリクス22内に組み込まれてもよい。分散剤は、BYKブランドの製品BYK-W969に対応してもよく、分散剤の割合は、ポリマーマトリクス22の重量の0%から20%の間で選択されてもよい。
【0057】
炭素粉末23は次いで、第3のステップ32においてポリマーマトリクス22と混合される。攪拌は、ミキサ26のブレードの端部において10m/sから20m/sの間の線形変位を誘発する回転運動によって駆動されるミキサ26によって実行されてもよい。例えば、5分の攪拌は、ポリマーマトリクス22内での炭素粉末23の良好な分布を可能にすることができる。
【0058】
この段階において、混合物は、実質的にクライミングホールド20の重量を表す。ポリエステルマトリクスの場合、混合物24は、5重量%から35重量%の間の炭素粉末23、好ましくは20重量%から30重量%の間の炭素粉末23、および20重量%から60重量%の間のシリカ、好ましくは40重量%から60重量%の間のシリカを統合することができる。
【0059】
第4のステップ33において、気泡を引き出すために、得られた混合物24は、バキュームベル27の下に置かれる。触媒28が次いで、混合物24の硬化を達成するために、第5のステップ34において、混合物24に追加される。混合物24が、完全に硬くなる前に、混合物24は、第6のステップ35においてシリコーンモールド29内に注がれる。別法として、触媒28は、攪拌33および脱ガス34の前に混合物24内に統合されてもよい。
【0060】
混合物24は、図3に示されるように、クライミングホールド20を形成するためにモールド内に入り込む。この固化ステップにおいて、金属ねじ21が、混合物内に挿入されてもよく、またはモールドの形状が、ねじ21を位置決めするための空洞およびリセスを形成するように適合されてもよい。
【0061】
次いで、一組のホールド20が、各ホールド20の各ねじ21を各ホールド20上のクライマの接触を検出する能力がある容量感知アセンブリと接続することによって容量感知クライミング壁を形成するために使用されてもよい。
【0062】
本発明は、ホールド20内の炭素粒子が、低電流を伝達する帯電防止ネットワークを形成するので、ホールド20の表面上の任意の点におけるクライマの接触の検出を改善する。実際、2つの炭素粒子が、すぐ近くであるとき、静電気電流は、トンネル効果を通じて2つの粒子間で伝達可能である。結果として、本発明は、容量検出を有するクライミングホールド上のクライマの検出を改善することを可能にする。
【符号の説明】
【0063】
20 容量感知クライミングホールド、クライミングホールド、ホールド
21 ソケットヘッドねじ、ねじ頭部、ねじ本体、ねじ、アンカーポイント
22 ポリマーマトリクス、ポリマー樹脂
23 導電性粉末、導電性粒子、炭素粉末
24 混合物
25 容器
26 ミキサ
27 バキュームベル
28 触媒
29 シリコーンモールド
Cpin 第1の残留容量
Csensed 第2の残留容量
R 抵抗器、抵抗
図1
図2
図3
図4
図5