(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ保持具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20220128BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61M25/09 530
A61B17/94
(21)【出願番号】P 2020530882
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001430
(87)【国際公開番号】W WO2020017077
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/027283
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】片山 智文
(72)【発明者】
【氏名】矢沼 豊
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103897(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/103900(WO,A1)
【文献】特表2015-506722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0039250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸に沿って中心軸が延びたルーメンを有するシースと、
前記長手軸に沿って進退可能に前記ルーメン内に挿通された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤの先端に連なり、前記シースの先端から突出されるフックと、を備え、
前記シースは、前記シースの先端から前記シースの基端側に向かって延び、前記長手軸とは直交する方向に凹んだ形状を有する溝を形成する内壁面を有し、
前記溝は、前記シースの外周面に開口した開口部を有し、
前記フックは、ガイドワイヤに係合可能なガイドワイヤ係合面を有し、
前記ガイドワイヤ係合面が前記溝よりも先端側に位置する状態で、前記長手軸の先端側から基端側に向かう方向からの前記シースの先端及び前記フックの正面視において、前記ガイドワイヤを前記ガイドワイヤ係合面と前記内壁面との間に保持可能に構成されている、
ガイドワイヤ保持具。
【請求項2】
前記シースの先端部には、前記長手軸方向において湾曲形状を有するプリカーブ部を備え、
前記内壁面は、前記プリカーブ部の前記湾曲形状における外側に位置する
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項3】
前記フックと前記内壁面とは、前記ガイドワイヤが前記フックと前記内壁面との間で進退自在に保持されるように配置される
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項4】
前記溝は、前記シースの少なくとも先端部において、前記溝の底部から前記シースの外周面に向かって開口幅が広がっている
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項5】
前記溝を構成する前記内壁面は、曲面である
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項6】
前記シースは、前記ルーメンの前記長手軸方向の少なくとも一部に設けられて前記長手軸に直交する断面における前記ルーメンの開口形状が非真円形となる規制部を有し、
前記フックは、
前記非真円形の長辺方向に棒状の部材が折り曲げられて形成され
、前記規制部内に進退可能な被規制部を有し、
前記規制部と前記被規制部とが係止することにより、前記操作ワイヤの軸線周りの回転が規制される
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項7】
前記シースの先端部には、前記長手軸が湾曲したプリカーブ部を有し、
前記フックのうち前記ルーメン内に収納可能な部分は、前記被規制部よりも先端側に延びる第一部分と、前記被規制部よりも基端側に延びる第二部分とを有し、
前記第一部分は、前記第二部分よりも前記プリカーブ部の湾曲の外側に位置し、
前記第二部分は、前記第一部分よりも前記プリカーブ部の湾曲の内側に位置する請求項6に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項8】
前記フックは、先端側に凸状に曲げられて形成されたワイヤ状の部材からなり、
前記ガイドワイヤ係合面が前記ワイヤ状の部材の外周面である
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項9】
前記フックは、ワイヤ状の部材を折り曲げて形成されており、前記操作ワイヤの先端に接続される第一端部と、前記シースの基端側に向かって前記長手軸に沿って延びた第二端部とを有し、
前記フックは、前記操作ワイヤの進退に伴って前記シースの先端側で進退し、
前記フックが前進した前進位置では、前記第二端部は前記シースの先端から離間し、
前記フックが後退した後退位置では、前記第二端部は前記シースの先端と近接配置される
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項10】
前記シースは、前記第二端部の外径よりも大きい内径で形成されたフック収納ルーメンを有し、
前記第二端部は、前記操作ワイヤを後退させることにより前記フック収納ルーメンに収納可能であり、
前記第二端部が前記フック収納ルーメンに収容されたときに、前記フックは、前記シースから突出した部分と前記内壁面との間で前記ガイドワイヤを保持可能に前記シースから突出している
請求項9に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項11】
前記フックは、側視において、前記内壁面側に前記ルーメンの中心軸に対して直角または鈍角に曲がっており、
前記フックは、捕捉される前記ガイドワイヤを前記内壁面から前記シースの基端側に向かって前記長手軸方向に沿わせた状態で捕捉可能に構成されている
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項12】
前記溝の前記開口部は、前記シースの先端面の外周の一部が欠切して先端から基端に向かって延びて形成されている切欠面に開口している
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項13】
前記シースは、前記溝の両側に傾斜面が形成されており、
前記傾斜面は、前記シースの先端から基端側
の前記シースの外周面に向かって傾斜している
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項14】
前記フックには、底面が前記ガイドワイヤ係合面であるスリットが形成され、
前記シースの前記溝と、前記スリットとが逆向きに開口している
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項15】
前記フックの基端部における前記ガイドワイヤ係合面は、前記長手軸に沿う方向からの正面視において、前記内壁面の稜線と交差し、前記内壁面と前記ガイドワイヤ係合面とで閉じた閉領域が形成される
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項16】
前記ガイドワイヤ係合面は、前記フックの基端から先端に向かうにつれて前記シースの中心軸の延長線に近づくように傾斜している
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項17】
前記フックの基端面よりも基端側に突出し、前記フックを後退させると前記シースの側面と当接可能な突起が形成されている
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項18】
前記ルーメンの前記長手軸方向の少なくとも一部に設けられ、前記長手軸に直交する断面における前記ルーメンの開口形状が非真円形となる規制部と、前記操作ワイヤの軸線方向の少なくとも一部に設けられ、前記軸線に直交する断面形状が非真円形であり、前記規制部内を進退可能な被規制部とにより構成され、前記操作ワイヤの前記軸線周りの
回転が規制される回転防止部を備える
請求項1に記載のガイドワイヤ保持具。
【請求項19】
前記規制部は、前記ルーメンの先端部に設けられ、
前記被規制部の基端が前記ルーメン内に配置されている
請求項
18に記載のガイドワイヤ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ保持具に関する。本願は、2018年7月20日に出願された国際出願PCT/JP2018/027283号に基づく優先権を主張した出願であり、前記国際出願の内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
人体の管腔臓器に対する治療や検査の際、ガイドワイヤを使って医療器具を管腔臓器内に導入する方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、管腔臓器の開口部に狭窄や閉塞等の障害があると、ガイドワイヤを管腔臓器に挿入できない場合がある。例えば、十二指腸乳頭が閉塞している場合は、胆管や膵管等、対象となる管腔臓器へ十二指腸乳頭経由でガイドワイヤを挿入することが困難である。
【0003】
このような場合の対処法として、ランデブー法と呼ばれる方法が知られている。ランデブー法では、十二指腸乳頭以外の部位から胆管や膵管内に導入したガイドワイヤを十二指腸乳頭から突出させ、突出したガイドワイヤの端部を医療器具で保持する。十二指腸乳頭から突出させたガイドワイヤを、十二指腸内に挿入した内視鏡の処置具チャンネルを経由させて体外まで引っ張り出す。体外に引っ張り出したガイドワイヤを利用してステント留置などを行う。
【0004】
例えば、特許文献1には、十二指腸乳頭から突出させたガイドワイヤを捕捉することが可能な医療器具が開示されている。この医療器具は、チューブ状のシースと、シースに挿通されたワイヤと、ワイヤの先端に設けられ、ワイヤの延在方向に沿って延びる先端部と、を有している。先端部は、ガイドワイヤを引っ掛けられるように所定の形状に曲がっている曲がり部を有している。
【0005】
また、例えば、特許文献2に記載されているように、ランデブー法によりステントなどの処置具を留置する際に、十二指腸乳頭から十二指腸内に突出させたガイドワイヤを胆管や膵管内に引き戻すことにより、ガイドワイヤを把持した医療器具を処置具とともに胆管や膵管内に導入する方法が知られている。
ランデブー法では、超音波画像の観察下で胆管や膵臓を確認し、食道、胃、十二指腸から肝内胆管や肝外胆管に穿刺針を穿刺する。胆管に穿刺された穿刺針の内部にガイドワイヤを挿入し、ガイドワイヤの先端を胆管又は膵管の内部に挿入する。その後、ガイドワイヤを押し進め、十二指腸乳頭を通過させ、ガイドワイヤの先端側部分を十二指腸内に突出させる。次いで、十二指腸の乳頭から出ているガイドワイヤの先端側部分を内視鏡画像で確認しながら、処置具(例えば把持鉗子)の把持部によりガイドワイヤの先端側部分の一部を把持する。この状態でガイドワイヤを牽引することで、処置具が乳頭内に引き込まれる。これにより、例えば、胆管内に留置された処置具をガイドシースの代わりとして、ステントなどの留置物を処置具に被せて胆管内に留置できる。
【0006】
特許文献1および特許文献2に開示のような手技を実現するための処置具が検討されている(例えば、特許文献3)。特許文献3のデバイスは、乳頭組織のダメージを抑えつつ処置具を胆管内に挿入するため、ガイドワイヤを捕捉し、ガイドワイヤに沿って十二指腸乳頭側に挿入する。具体的には、特許文献3のデバイスは、シースの先端部に切欠き部を備え、切欠き部内でガイドワイヤを保持する構成を有する。この内視鏡用カテーテルでは、ガイドワイヤに対して斜め外方から切欠き部の開口を押し付けることで切欠き部内にガイドワイヤが挿入された状態とし、この状態でシースをガイドワイヤに沿ってスライドさせる構成を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2016-140630号公報
【文献】米国特許出願公開第2016/0121083号明細書
【文献】日本国特開2017-169783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ランデブー法において、ガイドワイヤに沿って移動させて乳頭側に円滑に挿入できるガイドワイヤ保持具が望まれている。特許文献2の内視鏡用カテーテルは、シースの先端部の切欠き部がシースの長手軸に沿って形成されているため、切欠き部内にガイドワイヤを挿入するためには、シースの軸方向とガイドワイヤの延出方向(軸方向)とを合わせる必要があり、シースの先端部の位置合わせが難しい。また、切欠き部はシースの先端部の側面に開放した構成であるため、シースを乳頭側に挿入する操作時に、切欠き部がガイドワイヤから外れる可能性がある。切欠き部がガイドワイヤから外れると、切欠き部内にガイドワイヤを挿入する操作をやり直す必要があり、手技に時間を要する。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、ランデブー法において、ガイドワイヤに沿って乳頭側に円滑に挿入できるガイドワイヤ保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るガイドワイヤ保持具は、長手軸に沿って中心軸が延びたルーメンを有するシースと、前記長手軸に沿って進退可能に前記ルーメン内に挿通された操作ワイヤと、前記操作ワイヤの先端に連なり、前記シースの先端から突出されるフックと、を備え、前記シースは、前記シースの先端から前記シースの基端側に向かって延び、前記長手軸とは直交する方向に凹んだ形状を有する溝を形成する内壁面を有し、前記溝は、前記シースの外周面に開口した開口部を有し、前記フックは、ガイドワイヤに係合可能なガイドワイヤ係合面を有し、前記ガイドワイヤ係合面が前記溝よりも先端側に位置する状態で、前記長手軸の先端側から基端側に向かう方向からの前記シースの先端及び前記フックの正面視において、前記ガイドワイヤを前記ガイドワイヤ係合面と前記内壁面との間に保持可能に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ランデブー法において、ガイドワイヤに沿って乳頭側に円滑に挿入できるガイドワイヤ保持具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具を示す全体図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の先端部を示す上面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の先端部を示す上面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具を先端側から見た正面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具のプリカーブ部の態様を示す側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の回転防止構造を示す模式図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の挿入方法を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の使用時の態様を示す模式図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具を用いてランデブー法による手技を行う例における内視鏡画像を示す模式図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具の使用時の態様を示す模式図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係るガイドワイヤ保持具を用いてランデブー法による手技を行う例を示す模式図である。
【
図13】本発明の第1実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具を先端側から見た正面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態の第2変形例のガイドワイヤ保持具の先端部を示す上面図である。
【
図15】本発明の第1実施形態の第3変形例のガイドワイヤ保持具の先端部を示す上面図である。
【
図16】
図15のガイドワイヤ保持具を先端側から見た正面図である。
【
図17】本発明の第1実施形態の第4変形例のガイドワイヤ保持具を先端側から見た正面図である。
【
図18】本発明の第1実施形態の第5変形例のガイドワイヤ保持具を先端側から見た正面図である。
【
図19】本発明の第1実施形態の第6変形例のガイドワイヤ保持具を先端から見た正面図である。
【
図21】本発明第の第1実施形態の第7変形例のガイドワイヤ保持具を先端から見た正面図である。
【
図22】本発明の第1実施形態の第8変形例のガイドワイヤ保持具を先端から見た正面図である。
【
図23】
図22のXXIII-XXIII線における断面図である。
【
図24】本発明の第1実施形態の第9変形例のガイドワイヤ保持具の長手軸方向の断面図である。
【
図25】本発明の第1実施形態の第9変形例のガイドワイヤ保持具の長手軸方向の断面図である。
【
図26】本発明の第1実施形態の被規制部の変形例を示す側面図である。
【
図27】本発明の第1実施形態の被規制部の変形例を示す側面図である。
【
図28】本発明の第1実施形態の第10変形例のガイドワイヤ保持具の長手軸方向の断面図である。
【
図29】本発明の第1実施形態の第11変形例のガイドワイヤ保持具の長手軸方向の断面図である。
【
図30】本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤ保持具の先端部を示す側面図である。
【
図31】本発明の第2実施形態に係るガイドワイヤ保持具の先端部を示す長手軸方向の断面図である。
【
図32】図
30にXXXII-XXXII線で示す位置における断面図である。
【
図33】本発明の第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具を示す斜視図である。
【
図34】本発明の第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具を示す上面図である。
【
図35】本発明の第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具を示す上面図である。
【
図36】本発明の第2実施形態の第1変形例のシースの正面図である。
【
図37】
図35にXXXVII-XXXVII線で示す位置における断面図である。
【
図38】本発明の第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具の使用時の態様を示す模式図である。
【
図39】本発明の第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具の使用時の態様を示す模式図である。
【
図40】本発明の第2実施形態の第2変形例を示す上面図である。
【
図41】本発明の第2実施形態の第3変形例を示す上面図である。
【
図42】本発明の第2実施形態の第4変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るガイドワイヤ保持具の第1実施形態について、
図1から
図12を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1を示す全体図である。
図2は、ガイドワイヤ保持具1の先端部を示す上面図である。
図3は、ガイドワイヤ保持具1の先端部を示す上面図であり、
図2に示すフックが後退した状態を示す図である。
図4は、ガイドワイヤ保持具1を先端側から見た正面図である。
図5は、
図4に示すV-V線における断面図である。
図6は、ガイドワイヤ保持具1の使用時の態様を示す側面図である。
図7は、ガイドワイヤ保持具1の回転防止部7を模式的に示す図である。
【0015】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1は、ワイヤ、例えば、体内に挿入して使用される医療用のガイドワイヤを保持できる医療器具である。ガイドワイヤ保持具1は、操作ワイヤ3の進退に伴いフック5がシース2の先端側で進退し、シース2の外方に位置するガイドワイヤをフック5で捕捉して保持可能に構成されている処置具である。
図1及び
図2に示すように、ガイドワイヤ保持具1は、シース2と、操作ワイヤ3と、フック5と、操作部4とを備える。
【0016】
シース2は、可撓性を有する長尺部材である。シース2は、術者によって把持される操作部4の操作部本体41に基端部が接続されている。シース2は、内視鏡挿入部を介して体内に挿入されて、先端部が内視鏡から突出可能な長さを有する。
図2から
図4に示すように、シース2は、長手軸L方向に延びる第1ルーメン21(ルーメン)を有する。さらに、シース2は、第1ルーメン21と平行に延びる第2ルーメン(フック収納ルーメン)22を有する。シース2の長手軸Lに沿う方向からシース2の先端を見た正面視において、第1ルーメン21と第2ルーメン22とは、シース2の中心軸Oを通り、中心軸Oに直交する直線である第1直径線R1を挟んだ両側に形成されている。第2ルーメン22は、第二端部52の外径よりも大きい内径を有する。
【0017】
なお、
図4では、長手軸Lと中心軸Oとを同一の線で記載しているが、中心軸Oは、シース2の略円形の断面形状における中心を通る軸線であり、長手軸Lはシース2の長手方向に延びる軸線である。
【0018】
図1及び
図4に示すように、シース2は、外周の一部に溝26を有する。溝26は、外周の一部が凹状に形成されている。溝26は、シース2の先端から基端側へ長手軸L方向に延びて形成されている。
図4に示すように、溝26は、シース2の外周の一部が、外周面から中心軸Oに向かって窪んで形成されている。溝26は、シース2の半径よりも長い深さDを有する。溝26は、少なくともシース2の先端において、
図4に示すように、正面視において、第1ルーメン21と第2ルーメン22との間に底部262が位置し、底部262からシース2の外周面に向かって溝26の開口幅が広がる曲線形成の先端縁(稜線)261を有する。溝26の底部262は、中心軸Oに直交する断面形状が円弧形状に形成されている。シース2の外周側の溝26の外周開口部263(溝の開口)側の縁部は曲線状に形成されて曲面を有する。溝26は、第1直径線R1上に開口している。なお、溝26は、必ずしもシース2の半径よりも長い深さDである必要はなく、シース2の半径よりも短い深さであってもよい。
【0019】
溝26は、シース2の先端から基端側へ長手軸L方向に延びて形成されている。溝26は、溝26の先端から基端まで先端縁261の形状と同じ形状を有する。溝26は、シース2の全長にわたって形成されていてもよいし、先端から基端側へ所定の長さの領域、例えば、内視鏡挿入部の先端から突出する部分のみに形成されていてもよい。
【0020】
図1及び
図6に示すように、シース2は先端部にプリカーブ部20を備える。プリカーブ部20は、所定の方向へ曲げ癖が付与された湾曲形状を有する。本実施形態では、プリカーブ部20は、第1直径線R1方向に沿って湾曲する湾曲形状を有する。プリカーブ部20は、外力が掛かると弾性変形するが、外力が解除された自然状態では、予め付与された湾曲形状に復元する復元力を有する。溝26は、プリカーブ部20が湾曲形状に復元したときに、プリカーブ部20の湾曲形状の外側に開口する位置に形成されている。
【0021】
操作ワイヤ3は、金属製の単線や撚り線で形成されており、シース2の第1ルーメン21内に挿通されている。操作ワイヤ3の基端は操作部4の操作スライダ42に固定され、操作ワイヤ3の先端にはフック5が連結されている。
【0022】
操作ワイヤ3及び第1ルーメン21には、回転防止部7が設けられている。回転防止部7により、第1ルーメン21に対する操作ワイヤ3の軸周りの回転が防止される。回転防止部7は、操作ワイヤ3に設けられる非真円部71(被規制部)と、第1ルーメン21に設けられる非真円開口部72(規制部)とからなる。非真円部71は、操作ワイヤ3の軸方向に直交する横断面形状が楕円形状(非真円形状)となる部分である。非真円開口部72は、楕円形状(非真円形状)の開口形状を有し、第1ルーメン21の先端から基端側に所定長さで設けられており、シース2の長手軸L方向に直交する断面形状が、操作ワイヤ3の非真円部71と相似形の楕円形状の開口である。
図7に示すように、非真円開口部72は、操作ワイヤ3が進退可能であり、かつ、非真円部71が操作ワイヤ3の軸回りに回転不能な開口寸法を有する。なお、規制部及び被規制部は、非真円形状であればよく、楕円形状、長円形状であってもよい。
【0023】
図7に示すように、非真円開口部72の楕円形状の短辺方向の寸法L1は、非真円部71の横断面における短辺方向の寸法L2よりも大きい。非真円開口部72の楕円形状の長辺方向の寸法L3は、非真円部71の短辺方向の寸法L1及び長辺方向の寸法L4より大きい。したがって、操作ワイヤ3が自身の軸回りに回転すると、非真円部71が非真円開口部72の内壁に当接して操作ワイヤ3の軸回りの回転が規制される。その結果、操作ワイヤ3のシース2に対する軸回りの回転が防止されながら、操作ワイヤ3が第1ルーメン21を進退可能に構成される。
【0024】
操作ワイヤ3の非真円部71は、操作ワイヤ3がシース2に対して進退動作する際、第1ルーメン21の先端部の非真円開口部72を通過する領域に設けられている。本実施形態では、操作ワイヤ3は、操作ワイヤ3の長手方向の一部に楕円形状の非真円部71が設けられ、非真円部71以外の部分の横断面形状が略真円形状である。
【0025】
フック5は、
図1から
図3に示すように、操作ワイヤ3の先端に連なって設けられている。フック5は、ワイヤ状の部材がガイドワイヤ保持具1の先端側に向かって凸状に折り曲げられて形成されている。フック5は、凸状の折り曲げ領域50を挟んで両側に端部を有し、操作ワイヤ3の先端に接続される第一端部51と、シース2の基端側に向かって長手軸に沿って延びた第二端部52とを有する。フック5は、金属製の単線、例えばSUSやニッケルチタン合金で形成されていてもよい。
【0026】
フック5は、シース2の先端から突出して設けられている。フック5は、操作ワイヤ3のシース2に対する進退に伴って、シース2の先端側で進退する。
【0027】
フック5は、
図4及び
図5に示すように、正面視において、シース2のラジアル方向(第1直径線R1方向)であって、溝26が位置する側に曲がって形成されている。フック5は、シース2の長手軸L方向に直交する方向であり、かつ、プリカーブ部20の湾曲する方向と直交する方向である側視において、フック5の先端側が直角または鈍角をなして溝26側に曲がって形成されている。
図4に示すように、正面視において、フック5の先端の湾曲部分の突出端部55は溝26の底部262よりもシース2の径方向外側に位置する。つまり、フック5は、第一端部51及び第二端部52と、突出端部55との間で第1直径線R1方向に沿って溝26側に曲がっている。突出端部55の湾曲部分の内側の面がガイドワイヤに係合可能なガイドワイヤ係合面53となる。なお、ここでの係合とは、フックがガイドワイヤを引っ掛けることを意図しており、フックに対してガイドワイヤが進退可能か不可能であるかは関係なく使用する。
【0028】
フック5は、正面視において、溝26の先端縁261と交差しており、フック5と先端縁261とで閉じた閉領域C1が形成される。また、
図3に示すように、第1直径線R1に沿う方向からの第一側面視(上面視)において、フック5が後退位置に配置されたとき、第二端部52がシース2の先端に収納されてフック5とシース2の先端との間に閉領域C2が形成される。
【0029】
図1に示すように、操作部4は、ガイドワイヤ保持具1の基端側に設けられ、シース2の基端に接続されている。操作部4は、操作部本体41及び操作スライダ42を備えている。操作部本体41はシース2の基端に接続されている。操作スライダ42は、操作部本体41にスライド可能に取り付けられている。操作部本体41には中空部を備え、中空部と外部とに連通し、長手軸Lに沿って延びるスリット(不図示)が形成されている。操作スライダ42の一部がスリット内に挿通され、中空部内で操作スライダ42と操作ワイヤ3の基端部とが接続されている。操作スライダ42を操作部本体41に対してシース2の長手軸L方向に進退させると、操作ワイヤ3がシース2に対して進退し、フック5は、シース2の先端側において、操作ワイヤ3の進退に応じて進退可能に構成されている。
【0030】
操作スライダ42を操作部本体41に対して前進させると、操作ワイヤ3が第1ルーメン21内を前進し、シース2の先端側でフック5が前進する。操作スライダ42の可動範囲において、操作スライダ42を最も先端側に前進させると、フック5がシース2に対して最も前進した前進位置に配置される。フック5は、
図2に示すように、前進位置では、第二端部52がシース2の先端から離間する。具体的には、前進位置における第二端部52とシース2の先端との離間距離LS(
図2参照)は、後述するガイドワイヤGWの直径よりも長い。
【0031】
第二端部52は、操作ワイヤ3を後退させることにより第2ルーメン22に収納可能である。操作スライダ42の可動範囲において、操作スライダ42を最も基端側に後退させると、
図3に示すように、フック5がシース2に対して最も後退した後退位置に配置され、第二端部52が第2ルーメン22の先端開口内に進入して収納される。
【0032】
回転防止部7により操作ワイヤ3の軸回りの回転が防止されるため、フック5はシース2の中心軸Oに対する軸回りの相対位置を保持しながら進退する。そのため、フック5の後退位置では、第二端部52が第2ルーメン22の先端開口に確実に進入できる。
【0033】
次に、ガイドワイヤ保持具1の使用態様及びガイドワイヤ保持具の挿入方法について説明する。以下では、管腔臓器、例えば、胆管内に、ランデブー法によりガイドワイヤ保持具1を導入する方法を例に説明する。
図8は、本実施形態に係るガイドワイヤ保持具の挿入方法を示すフローチャートである。
図9から
図11は、ガイドワイヤ保持具1の使用時の態様を示す模式図である。
図12は、ガイドワイヤ保持具1を用いてランデブー法による手技を行う例を示す模式図である。
【0034】
まず、第1ガイドワイヤGW(ガイドワイヤ)を十二指腸内Dに留置する。具体的には、
図9に示すように、超音波内視鏡200の内視鏡挿入部201を患者の口から胃Stまたは十二指腸Dまで挿入し、内視鏡挿入部201に挿通されて内視鏡挿入部201の先端から突出したアクセスニードル202を胆管Bdに穿刺する。その後、内視鏡挿入部201に第1ガイドワイヤGWを挿入し、アクセスニードル202を経由して第1ガイドワイヤGWを胆管Bdに挿入する。胆管Bdに挿入された第1ガイドワイヤGWを押し進め、第1ガイドワイヤGWの先端を十二指腸乳頭Dpから十二指腸D内に向けて突出させる。第1ガイドワイヤGWを十二指腸乳頭Dpに向かって前進させることで、通常、十二指腸乳頭Dpから突出した第1ガイドワイヤGWの先端は十二指腸Dの内腔に沿って延びる。その後、第1ガイドワイヤGWを体内に残した状態で超音波内視鏡200を抜去し、第1ガイドワイヤGWの先端を十二指腸D内に留置させる。このとき、第1ガイドワイヤGWの基端側は患者の体外にある。
【0035】
次に、十二指腸内視鏡(不図示)の内視鏡挿入部201(
図12参照)を患者の口から十二指腸Dまで挿入する。続いて、内視鏡挿入部201にガイドワイヤ保持具1を挿入し、内視鏡挿入部201の先端からシース2の先端部を突出させる。このとき、内視鏡挿入部201の処置具チャンネル203の先端部に設けられた起上台(不図示)でシース2の先端部を起上させる。シース2の先端部が内視鏡挿入部201の処置具チャンネル203から突出しているとき、プリカーブ部20は所定の湾曲形状に復元する。そのため、シース2の先端部が内視鏡画像内に映るように容易に配置でき、かつ、フック5をガイドワイヤGWに引っ掛けやすい向きにシース2を誘導できる。また、溝26内にガイドワイヤGWを挿入しやすい。フック5の第二端部52が内視鏡画像の中央側に位置するため、第1ガイドワイヤGWよりも内視鏡画像の中央寄りに第二端部52が見える。その結果、内視鏡画像において、第二端部52とシース2との隙間が第1ガイドワイヤGWに遮られることを防いで、円滑にフック5で第1ガイドワイヤGWを引っ掛けることができる。
【0036】
術者は、
図10に示すように、十二指腸内視鏡で得られる内視鏡画像を確認しながら、操作部4を操作する。具体的には、十二指腸乳頭Dpから十二指腸D内に向けて突出した第1ガイドワイヤGWが内視鏡画像内に映るように内視鏡挿入部201を配置し、この状態で、シース2を内視鏡挿入部201から突出させ、シース2を第1ガイドワイヤGWに近付ける。
図10に示すように、シース2の先端部は内視鏡画像の右下側から突出して映る。シース2を内視鏡から突出させると、内視鏡画像において、フック5の第二端部52とシース2の先端との間の隙間が視認できる位置に配置される。すなわち、第二端部52は、第一端部51よりも内視鏡画像上では、手前側に表示される。
【0037】
続いて、操作スライダ42を先端側に前進させ、操作ワイヤ3をシース2に対して前進させ、フック5をシース2に対して前進位置まで前進させる(フック前進ステップS1)。
【0038】
術者は、
図10及び
図11に示すように、内視鏡画像を確認しながら、フック5の第二端部52とシース2の先端との間の隙間に第1ガイドワイヤGWを進入させて、フック5で第1ガイドワイヤGWを引っ掛ける(係止ステップS2)。
【0039】
十二指腸乳頭Dpから突出したガイドワイヤGWは内視鏡画像で上側から下側へ走行しており、内視鏡の先端の近傍は、内視鏡画像の下側に表示される。一方、プリカーブ部20が鉗子起上台100を通過する際、プリカーブ部20の湾曲の外側が鉗子起上台100に向いた状態となる(
図25参照)。そのため、プリカーブ部20の湾曲の外側に溝26を形成することにより、内視鏡からプリカーブ部20を突出させたときに、内視鏡画像の下側を溝26が位置する。この結果、シース2の溝26にガイドワイヤGWを収納させ易くなる。また、シース2を押し込む力のベクトルがガイドワイヤGWの長軸方向に変換されやすいため、シース2の先端部がガイドワイヤGWに沿いやすい。
【0040】
次に、術者は操作スライダ42を基端側に後退させ、操作ワイヤ3をシース2に対して後退させ、フック5を後退位置に配置する。フック5を後退位置まで後退させることで、第1ガイドワイヤGWを溝26の先端縁に近付けることができる。後退位置では、フック5の第二端部52が第2ルーメン22内に挿入され、フック5とシース2との間の閉領域C1,C2内に第1ガイドワイヤGWが配置されて捕捉される(ガイドワイヤ保持ステップS3)。
【0041】
フック5を後退位置まで後退させた状態では、ガイドワイヤGWがガイドワイヤ係合面53によって案内されて溝26に挿入されている。後退位置では、溝26の外周開口部263(開口部)の先端よりも先端側にフック5のガイドワイヤ係合面53が位置する。このとき、ガイドワイヤGWを溝26からシース2の基端側に向かって長手軸L方向に沿わせた状態で、溝26の内壁面264とフック5のガイドワイヤ係合面53によってガイドワイヤGWが捕捉されて保持されている。ガイドワイヤGWは、好ましくはフック5のガイドワイヤ係合面53と溝26の内壁面264との間で進退自在に保持される。また、フック5のガイドワイヤ係合面53と溝26の内壁面264との間にガイドワイヤGWが保持されることにより、ガイドワイヤ保持具1からガイドワイヤGWが脱落することを防止できる。
【0042】
次に、ガイドワイヤGWをフック5と溝26との間で保持した状態で、溝26の内壁面264をガイドワイヤGWに押し当てながらガイドワイヤGWに沿って十二指腸乳頭Dpにシース2の先端部を挿入する(シース挿入ステップS4)。術者は操作部4を押し込み、
図12に示すように、シース2の先端部を十二指腸乳頭Dpに挿入する。第1ガイドワイヤGWは、予め、胆管Bdを通り、十二指腸乳頭Dpを介して十二指腸Dまで延びているため、ガイドワイヤ保持具1が押し込まれると、シース2は第1ガイドワイヤGWに沿って前進し、胆管Bd内に到達させる。
【0043】
閉領域C1,C2は、第1ガイドワイヤGWの直径よりも十分に大きいため、シース2及びフック5は、第1ガイドワイヤGWとの間に大きな摩擦抵抗が生じることがない。そのため、シース2は第1ガイドワイヤGWに沿って円滑に進退できる。また、シース2を十二指腸乳頭Dp内に進入させる際、第1ガイドワイヤGWはシース2の溝26内にシース2の長手軸L方向に沿って配置されており、かつ、ガイドワイヤGWがフック5と溝26との間で保持される。その結果、第1ガイドワイヤGWがシース2の長手軸Lに沿って配置された状態が保持される。このとき、フック5の少なくとも一部は、溝26の先端よりも遠位側に位置している。さらに、第1ガイドワイヤGWは、シース2の中心軸Oにより近い位置で長手軸Lに沿って保持され、かつ、上述の通り、シース2及びフック5は、第1ガイドワイヤGWに対して円滑に進退する。このため、シース2及びフック5を容易に胆管Bd内に挿入できる。以上で第1ガイドワイヤGWの胆管Bdへの挿入が完了する。
【0044】
第1ガイドワイヤGWの胆管Bdへの挿入が完了した後、目的の処置を行う。具体例としては、シース2の他のルーメン(不図示)あるいは第2ルーメン22に第1ガイドワイヤGWとは異なる第2ガイドワイヤを挿入し、第2ガイドワイヤを十二指腸乳頭Dp内に挿入する。その後、第1ガイドワイヤGW及びガイドワイヤ保持具1を内視鏡挿入部201から抜去する。
【0045】
その後、十二指腸内視鏡に別の内視鏡用処置具を挿入し、第2ガイドワイヤに沿って十二指腸内に挿入し、十二指腸内で処置を行う。別の内視鏡用処置具で行う処置の例としては、造影剤の注入、採石、ステントの留置等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、シース2の先端から突出し、シース2に対して進退可能なフック5を備えるため、フック5によりガイドワイヤGWを係止できる。本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、フック5を前進位置に配置することで、ガイドワイヤGWをフック5で容易に引っ掛けることができる。また、フック5でガイドワイヤGWを引っ掛ける際、第二端部52とシース2の先端との間に生じた隙間を内視鏡画像下で視認できるため、ガイドワイヤGWをフック5で容易に引っ掛けることができる。フック5の前進位置における第二端部52とシース2の先端との離間距離LSは、ガイドワイヤGWの外径より大きいため、ガイドワイヤGWをフック5で容易に引っ掛けることができる。その後、フック5を後退位置に配置することにより、ガイドワイヤGWのフック5からの脱落を防止できる。
【0047】
フック5のガイドワイヤ係合面53とシース2の溝26の先端の先端縁261(稜線)とで形成される閉領域C1,C2は、ガイドワイヤGWの外径より大きいため、閉領域C1,C2内に捕捉されたガイドワイヤGWは、閉領域C1,C2内を円滑に進退できる。その結果、ガイドワイヤ保持具1の先端部を十二指腸内に挿入する際、ガイドワイヤGWに沿って、シース2を容易に前進させられる。
【0048】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、回転防止部7により、操作ワイヤ3が自身の軸回りの回転が規制される。その結果、フック5の進退時に、フック5の第二端部52がシース2の中心軸O周りに回転することを防ぎ、フック5の後退時に、第二端部52を確実に第2ルーメン22内に挿入できる。
【0049】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、シース2の外周に長手軸Lに沿って形成された溝26を備えるため、シース2の外方に位置するガイドワイヤGWに溝26の内壁面264を押し当てると、溝26内にガイドワイヤGWを容易に挿入できる。
【0050】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、長手軸Lに沿う方向から見た正面視において、フック5が溝26の先端縁261と交差しており、フック5と先端縁261とで閉じた閉領域C1を形成する。このため、フック5が後退位置に配置された状態では、シース2の外方に位置するガイドワイヤGWを溝26内に捕捉して閉領域C1内に保持できる。この結果、操作ワイヤ3の進退操作により容易にフック5でガイドワイヤGWを引っ掛けられ、また、フック5のガイドワイヤ係合面53と溝26の先端縁261との間でガイドワイヤGWを包囲して保持できる。したがって、シース2を十二指腸乳頭Dp内に挿入する際、ガイドワイヤGWからフック5が外れることがなく、安定した状態でシース2を十二指腸乳頭Dp内に挿入できる。
【0051】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1によれば、溝26にガイドワイヤGWを挿入して保持するため、ガイドワイヤGWをシース2の中心軸O付近で保持できる。したがって、簡易な操作でガイドワイヤGWを保持でき、かつ、管腔臓器内において、ガイドワイヤGWに沿ってシース2を円滑に押し進めることができる。さらに、ガイドワイヤGWが溝26に沿った状態で捕捉されて保持されるため、シース2を十二指腸乳頭Dpへ挿入する時、シース2及びガイドワイヤGWからなる部分の直径を抑えられ、シース2を容易に十二指腸乳頭Dp内に挿入できる。
【0052】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1は、シース2にプリカーブ部20を備え、溝26はプリカーブ部20の復元された湾曲形状の外側に開口して形成されるため、溝26にガイドワイヤGWを容易に挿入できる。なお、プリカーブ部20は、必須の構成ではなく、シース2にプリカーブ部20を備えない構成であっても、ガイドワイヤ保持具1は、溝26にガイドワイヤGWを円滑に挿入できる。
【0053】
本発明に係るガイドワイヤ保持具は、上述の実施形態の例に限定されない。例えば、
図13から
図29に示す変形例が挙げられる。以降の説明において、既に説明したものと共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
(第1実施形態の第1変形例)
図13は、第1変形例のガイドワイヤ保持具1Aの正面図である。
図13に示すように、フック5に樹脂製のカバー部材6を設けてもよい。樹脂製のカバー部材6をフック5のシース2から突出した部分に設けることにより、ガイドワイヤGWとフック5との摩擦抵抗を低減させることができる。この結果、シース2をガイドワイヤGWに沿って押し込む際に、容易にシース2を押し込める。なお、カバー部材6は必須の構成ではない。例えば、樹脂製のカバー以外に、フックへの潤滑剤の塗布やPTFEコーティングを施してもよい。この他、ガイドワイヤGWの直径に対して閉領域C1,C2が十分に広い場合は、ガイドワイヤGWとフック5との接触が抑えられるため、カバー部材6は不要である。
【0055】
(第1実施形態の第2変形例)
図14は、第2変形例のガイドワイヤ保持具1Bの上面図である。
図14に示す第2変形例は、シース2における第二端部52のフック収納ルーメンの構成が第1実施形態と異なる。第2変形例では、シース2の先端面27Bに開口する有底形状の凹部22Bがシース2に形成されている。凹部22Bは、フック5が後退位置に位置するときの第二端部52のフック収納ルーメンとして機能する。第1実施形態では、フック収納ルーメンとして、シース2の全長わたって管路が形成され、造影剤や他のワイヤが挿通できる第2ルーメン22をフック収納ルーメンとして利用する例を示した。しかし、フック5の第二端部52を収容する目的においては、全長にわたって形成された第2ルーメン22に代えて、シース2の先端のみに形成された凹部に第二端部52を収納できる構成であってもよい。フック収納ルーメンを第2ルーメン22とは別に設けることにより、フック5を後退位置に保持した状態で、第2ルーメン22を他の用途に使用できる。例えば、フック5を後退位置に保持した状態で、第2ルーメン22から第2ガイドワイヤを供給できる。
【0056】
(第1実施形態の第3変形例)
図15は、第3変形例のガイドワイヤ保持具1Cの上面図である。
図16は、第3変形例のガイドワイヤ保持具1Cの正面図である。
図15及び
図16に示す第3変形例は、第2変形例の凹部22Bと形状が異なる。第3変形例の凹部22Cは、シース2の先端面27Cと外周面との境界部分を含む領域に窪んで形成されている。第二端部52を収納できるフック収納ルーメンがこのような構成であっても、第二端部52を容易に収納できる。
【0057】
(第1実施形態の第4変形例)
図17は、第4変形例のガイドワイヤ保持具1Dの正面図である。本変形例はフック収納ルーメンを備えない例である。
図17に示すように、フック5が後退位置に配置されたときに、第二端部52がシース2の先端の外周面よりも外方に位置して近接配置される構成であってもよい。このような変形例でも、フック5を後退位置まで後退させたときに、第二端部52をシース2の先端よりも基端側に位置させることができ、且つ、正面視において閉領域C1を形成できる。この他、フック収納ルーメンを備えない場合、フック5が後退位置に配置されたときに、第二端部52がシース2の先端に当接または近接配置される構成であってもよい。フック5の後退位置で第二端部52がシース2の先端に近接配置される場合、フック5の第二端部52とシース2の先端との間の離間距離LSは、ガイドワイヤの外径よりも小さければ、ガイドワイヤGWが保持できる。
【0058】
(第1実施形態の第5変形例)
図18は、第5変形例のガイドワイヤ保持具1Eの正面図である。本変形例は、フック収納ルーメンを形成せず、
図18に示すように、シース2Eの先端部であって、第二端部52が進退する位置をDカット(D字型にカット)することで、シース2の長手軸と略平行な外面22Eを形成してもよい。このような変形例でも、フック5を後退位置まで後退させたときに、第二端部52をシース2の先端よりも基端側に位置させることができ、且つ、正面視において閉領域C1を形成できる。
【0059】
(第1実施形態の第6変形例)
図19は、第6変形例のガイドワイヤ保持具1Fの正面図である。
図20は、
図19のXVII-XVII線における断面図である。
図19及び
図20に示す第6変形例は、シース2Fの先端部の形状及び構成が第1実施形態のシース2と異なる。
【0060】
図19及び
図20に示すように、本変形例では、シース2Fの先端部の一部に切欠部(段差)24を設け、シース2Fの先端部の寸法が基端側より小さい構成を備える。このように、シース2Fの先端部の寸法を小さくすることにより、シース2Fが十二指腸乳頭Dpにより挿入しやすくなる。
【0061】
図19に示すように、本変形例のシース2Fは、第1直径線R1方向に溝26と造影用ルーメン25とが並んで設けられており、切欠部24は造影用ルーメン25の先端部に設けられている。したがって、切欠部24の長手軸L方向の寸法は、シース2Fを胆管内に挿入する長さ以下に設定される。切欠部24がシース2DF胆管内に挿入する長さより長いと、造影用ルーメンの先端開口が胆管内に挿入されず、造影剤を胆管内に注入できなくなるためである。また、第1直径線R1方向における切欠部24は、第1ルーメン21及び第2ルーメン22がシース2Fの外部と連通しない程度に切り欠いて形成されることが望ましい。
【0062】
また、第1実施形態では、シース2は先端面27がシース2の長手軸Lに直交する面で形成されていたが、
図20に示すように、シース2Fの先端面27Fが中心軸Oに対して傾斜して形成されていてもよい。具体的には、シース2Fの先端面27Fのうち、溝26側の部分271が先端側に位置し、切欠部24側の部分272が後ろ側に位置するように傾斜して形成されており、シース2Fの先端面27Fの傾斜角度がフック5のラジアル方向への傾斜角度と略平行に構成されていてもよい。このようにシース2Fの溝26側が先端側に位置し、フック5と略平行となるようにシース2Fの先端面27Fが傾斜していると、シース2Dの十二指腸乳頭Dpへの挿入時に、フック5及びシース2Fの先端に保持されたガイドワイヤGWに沿って、円滑にシース2Fの先端を挿入できる。
【0063】
シース2Fの先端部の寸法を基端側の寸法より小さくする態様は、本変形例に示した形態に限定されない。例えば、シースの先端部が全周にわたって先端側が細くなるテーパ形状としてもよい。
【0064】
(第1実施形態の第7変形例)
図21は、第7変形例のガイドワイヤ保持具1Gの正面図である。第7変形例は、フック5G及びシース2Gの構成が第1実施形態と異なる。本変形例では、第1ルーメン21E及び第2ルーメン22Gが溝26の底部262よりも溝26の外周開口部263側に形成されている。また、フック5Gは、ラジアル方向に湾曲しておらず、シース2Gの長手軸L方向に沿って延出している(曲げ角度θ=180度)。このような構成であっても、溝26の先端縁261とフック5Gのガイドワイヤ係合面53Gとの間に閉領域C1が形成できる。したがって、第1実施形態と同様に、ガイドワイヤGWを溝26に収納しながら閉領域C1内に保持し、かつ、ガイドワイヤGWに沿ってシース2Gを容易に進退可能に構成することができる。フックの曲げ角度(
図5参照)は、好ましくは、直角または鈍角(90度以上180度未満)であり、この範囲で曲げ角度θが小さいほど、シース2の先端の正面視において、閉領域C1の面積を広く確保できる。
【0065】
(第1実施形態の第8変形例)
図22は、第8変形例のガイドワイヤ保持具1Iの正面図である。
図23は
図22の側面図である。本変形例では、シース2Iの先端部において、正面視における溝26の両側に傾斜面(バックカット面)26Iを設けてもよい。傾斜面26Iは、シース2Iの先端から基端側に向かって傾斜している。この場合、フック5でガイドワイヤGWを引っ掛けた状態で、フック5を牽引した際に、ガイドワイヤGWが溝26に入りやすい。
【0066】
(第1実施形態の第9変形例)
図24及び
図25は、第9変形例のガイドワイヤ保持具1Jの側面図である。本変形例では、被規制部の構成が上記実施形態と異なる例である。フック5は、操作ワイヤ3の先端まで延びており、接手33でフック5と操作ワイヤ3とが接合されている。被規制部71Jは、フック5の基端領域の途中部分を折り曲げて曲げ部710を形成している。被規制部71Jは、被規制部71Jよりも先端側に延びる第一部分711と、基端側に延びる第二部分712とを有する。すなわち、接手33とフック5との間の折り曲げ形状部分が被規制部71を構成する。本変形例では、フック5の折り曲げ加工のみで簡単に被規制部71Jを形成できる。
【0067】
第一部分711は、第二部分712よりもプリカーブ部20の湾曲の外側に位置し、第二部分712は、プリカーブ部の湾曲の内側に位置する。さらに、第一部分711及び第二部分712は、第1ルーメン21の内壁に対するクリアランスを最小限に抑えている。そのため、
図25に示すように、内視鏡挿入部201に設けられている鉗子起上台100によりシース2Jを起上させたとき、プリカーブ部20の湾曲の外側からシース2Jに対して鉗子起上台100から力を受けても、第1ルーメン21内を通る第一部分711がプリカーブ部20の湾曲の内側に位置ずれを起こし難い。その結果、フック5の第二端部52とシース2Jとの相対位置がずれること防止できる。したがって、鉗子起上台100によりプリカーブ部20が湾曲されても、第2ルーメン22と第二端部52との位置関係を保持できる。
【0068】
被規制部71Jの曲げ部710の形状は、
図24及び
図25に示す態様に限定されない。例えば、
図26または
図27に示す変形例であってもよい。
図26に示す変形例は、フック5の長手軸方向に直交する方向からフック5を見た側視において、曲げ部7101がV字形状に折り曲げられており、第一部分711と第二部分712とが略同軸に位置する例である。曲げ部7101は、第1ルーメン内において溝26あるいは側面側に配置される。本変形例の場合、第一部分711及び第二部分712と、曲げ部7101の頂点部分とが第1ルーメン21に当接してフック5のシース2Jに対する回転を規制する。
【0069】
図27に示す変形例は、フック5の長手軸方向に直交する方向からフック5を見た側視において、曲げ部7102がZ字形状に折り曲げられており、第一部分711と第二部分712とは軸線が径方向にオフセットされている。本変形例では、
図24に示す被規制部71Jと同様に鉗子起上台100によりシース2Jを起上させたとき、プリカーブ部20の湾曲の外側からシース2Jに対して鉗子起上台100から力を受けても、第1ルーメン21内を通る第一部分711がプリカーブ部20の湾曲の内側に位置ずれを起こし難い。
【0070】
(第1実施形態の第10変形例)
図28は、第10変形例のガイドワイヤ保持具1Kの長手軸方向に沿う断面を模式的に示した図である。本変形例では、第6変形例のシース2Fと同様に、シース2Kの先端面27Kが中心軸Oに対して傾斜して形成されている。シース2Kの先端面27Kのうち、溝26側の部分271が先端側に位置するように傾斜して形成されている。また、フック5の第二端部52Kの形状が第1実施形態と異なる。具体的には、第二端部52Kの長手軸方向の基端に曲折部522が形成されている。曲折部522は、第2ルーメン22の長手軸に交差する方向に折り返され、端部521が先端面27Kの傾斜角度と同じ角度で延びている。第二端部52Kの端部521は、第2ルーメン22の長手軸に交差する方向に延びている。この場合、フック5が基端側に移動すると、端部521がシース2の先端面27Kの傾斜に接触して滑るため、第2ルーメン22にフック5の第二端部52Kが収納されやすい。
【0071】
(第1実施形態の第11変形例)
各実施例および変形例におけるシースの先端形状は、
図29に示す第11変形例のように、シース2Fの先端面27Fがテーパ状に傾斜していてもよい。このようにシース2Fの先端面27Fをテーパ状に傾斜させることで、シース2Fの十二指腸乳頭Dpへの挿入が容易となる。
【0072】
(第2実施形態)
図30から
図32を用いて、第2実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hについて説明する。第2実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hは、先端部分の構成が第1実施形態と異なる。そのため、ガイドワイヤ保持具1Hの先端部分のみを図示し、操作部の説明は省略する。また、以下の説明において既に説明したものと共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図30は、本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hの先端部を示す側面図である。
図31は、
図30の中心軸O上に沿う断面図である。
図32は、
図30にXXXII-XXXII線で示す断面図である。
【0073】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hは、フックの構成が第1実施形態と異なる。フック5Hは、操作ワイヤ3Hの先端部に固定された立体形状の部材である。フック5Hは、外形が略円筒形状を有し、長手軸L方向に沿ってスリット56が形成されている。
図30および
図31に示すように、フック5Hの先端部501の外周部はR面502が形成されている。
図32に示すように、スリット56は、フック5Hの外周面における第1直径線R1上に開口し、径方向に窪む溝である。スリット56は、フック5Hの長手軸L方向に全長にわたって延びて形成されている。
図32に示す例では、スリット56は、U字形状を有する溝であり、スリット56の底面がガイドワイヤ係合面53Hである。
【0074】
図31および
図32に示すように、スリット56は、シース2Hの溝26の開口と逆向きに開口している。すなわち、溝26の外周開口部263と、スリット56の開口561とは、それぞれ第1直径線R1上に開口し、周方向に180度異なる向きに開口している。また、長手軸方向から見たときに(長手軸に沿った正面視において)、スリット56のガイドワイヤ係合面53Hは、好ましくは、溝26の曲線形成の先端縁(稜線)261と交差して閉領域C3を形成する。一方、
図31に示すように、長手軸L方向においては、溝26の底部262とガイドワイヤ係合面53Hとは対向せず、スリット56は、溝26の先端縁よりも先端側に位置する。
【0075】
図31に示すように、ガイドワイヤ係合面53Hは、フック5Hの基端から先端に向かうにつれてシース2Hの中心軸Oの延長線に近づくように傾斜している。フック5Hの基端部503におけるガイドワイヤ係合面53Hの径方向の位置は、シース2Hの溝26の底部262の位置よりも径方向外側に位置する。閉領域C3は、長手軸方向から見たときに、少なくともフック5Hの基端部と、シース2の溝26の先端縁261とで閉じた領域が形成されていればよい。そのため、閉領域C3内に捕捉されたガイドワイヤGWは、閉領域C3内を円滑に進退できる。その結果、ガイドワイヤ保持具1Hの先端部を十二指腸内に挿入する際、ガイドワイヤGWに沿って、シース2Hを容易に前進させられる。なお、シース2Hの溝26は、ガイドワイヤ係合面53Hの傾斜の延長上に形成されている。
【0076】
フック5Hは、樹脂からなる部材である。フック5Hは、乳頭挿入性を考慮して小さい形状にしたときに十分強度を有する材料であればよい。フック5Hを樹脂で形成する場合、例えば、ABS、PEEK、PSU、PPSU等を用いることができる。フックは、金属で形成されていてもよい。また、フックは、金属と樹脂とを組み合わせて形成されていてもよい。例えば、スリットの内壁面が樹脂で形成されていれば、ガイドワイヤGWを円滑にスライドできる。
【0077】
フック5Hは、
図30および
図32に示すように、操作ワイヤ3Hが挿入されて固定されるワイヤ固定部54を有する。ワイヤ固定部54は、スリット56とフック5Hの外周面との間に設けられている。ワイヤ固定部54は、長手軸L方向に平行に延びる2本のルーメンが先端部で連通するU字形状の連通孔を備え、連通孔内に操作ワイヤ3Hが挿通されて、例えば接着剤により固定されている。操作ワイヤ3Hとワイヤ固定部54との固定方法は接着剤に限らず、嵌合、圧着等により固定してもよい。
【0078】
操作ワイヤ3Hは、
図30に示すように、2本の操作ワイヤ3Hが長手軸L方向に延設されている。2本の操作ワイヤ3Hは、フック5Hの先端部内で折り返されて基端側に平行に延びている。なお、2本の操作ワイヤ3Hがフック5Hの先端部内で折り返される構成は必須の構成ではない。操作ワイヤ3Hは、シース2Hの第1ルーメン(不図示)内を進退可能に挿通されている。本実施形態では、2本の操作ワイヤ3Hは、共に第1ルーメン内に進退可能に挿通されており、第1実施形態の第2ルーメンを備えない。操作ワイヤ3Hをシース2Hに対して進退させると、フック5Hがシース2Hに対して進退可能となる。
【0079】
フック5Hのガイドワイヤ係合面53Hと、シース2Hの溝26の内壁面264とは、ガイドワイヤGWがフック5Hと溝26との間で進退自在に保持可能に配置される。スリット56の先端部がシース2Hの中心軸O近傍に位置するようにスリット56のガイドワイヤ係合面53Hが傾斜しているため、ガイドワイヤGWは、フック5Hの先端部501において、シース2の中心軸O近傍に位置するように保持される。その結果、ガイドワイヤ保持具1Hの先端部を十二指腸内に挿入する際、ガイドワイヤGWに沿って、シース2Hを容易に前進させられる。
【0080】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hによれば、フック5Hを前進位置に配置することで、ガイドワイヤGWをフック5Hで容易に引っ掛けることができる。また、フック5HでガイドワイヤGWを引っ掛ける際、スリット56の開口561を内視鏡画像下で視認できるため、ガイドワイヤGWをフック5Hのスリット56内に容易に誘導可能であり、ガイドワイヤGWをスリット56に容易に引っ掛けることができる。また、ガイドワイヤGWをガイドワイヤ係合面53Hで引掛けた状態で、フック5Hを後退させること(フック5Hを後退位置に配置すること)により、ガイドワイヤGWをシース2Hの溝26内に入れることができる。このとき、好ましくは、フック5Hの基端部503の基端面505がシース2の先端面27Hに当接することで、フック5H、特に、ガイドワイヤ係合面53Hは、溝26の先端よりも遠位側で位置決めされる。この状態では、ガイドワイヤ係合面53Hと、溝26の内壁面264との間でガイドワイヤGWが保持されている。本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hによれば、第1実施形態と同様に、ガイドワイヤGWに沿ってシース2Hを乳頭側に円滑に挿入できる。
【0081】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hは、スリット56を有する立体形状のフック5Hを操作ワイヤ3Hの先端部に固定する構成であるため、ガイドワイヤGWをスリット56内に捕捉し易く、また、フック5Hを後退位置に配置すると、ガイドワイヤ係合面53Hと溝26の内壁面264との間の閉領域C3にガイドワイヤGWを容易に保持できる。また、フック5Hを後退位置に配置すると、ガイドワイヤGWのフック5Hからの脱落を防止できる。その結果、例えば、シース2Hを乳頭側に円滑に挿入できる。
【0082】
本実施形態に係るガイドワイヤ保持具1Hは、立体形状のフック5Hを操作ワイヤ3Hに固定する構成であるため、第1実施形態の操作ワイヤ3のように線状のフック5を用いる場合に比べて、操作ワイヤの直径を細くできる。したがって、柔軟性の高い操作ワイヤを使用でき、シース2H内に挿通される操作ワイヤ3Hの柔軟性が向上する。この結果、ガイドワイヤ保持具1H全体の柔軟性が極めて向上し、デバイス全体の柔軟性を高めることができる。デバイス全体の柔軟性が高いと、カニュレーションを行うデバイスとしての操作性が向上する。
【0083】
本発明に係るガイドワイヤ保持具は、上述の第2実施形態の例に限定されない。例えば、
図33から
図42に示す変形例が挙げられる。以降の説明において、既に説明したものと共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0084】
(第2実施形態の第1変形例)
図33は、第2実施形態の第1変形例のガイドワイヤ保持具1Mの先端部の斜視図である。
図34は、本変形例のガイドワイヤ保持具1Mの先端部の上面図であり、
図35は、本変形例のガイドワイヤ保持具1Mの先端部の側面図である。
図36は、本変形例のシースの正面図である。図37は、図35にXXXVII-XXXVII線で示す位置における断面図である。本変形例は、フック5M、シース2M、および操作ワイヤ3Mの構成が第2実施形態と異なる。
【0085】
第2実施形態では、フック5Hの基端部503が平面状に形成された例を示したが、本変形例のフック5Mは、フック5Mの基端面よりも基端側に突出する突起58が形成されている。突起58は、ワイヤ固定部54が設けられる領域に形成され、突起58は操作ワイヤ3Mに沿ってシース2側に突出している。突起58は、フック5Mを後退させるとシース2Mの側面と当接可能な当接面581を備える。
【0086】
シース2Mの先端部は、第2実施形態のシース2Hと同様に溝26を備える。シース2Mの先端面27Mには、操作ワイヤ3Mが挿通されている第1ルーメン21Mの領域が基端側に窪む段部273が形成されている。段部273には、長手軸Lに沿って平面状に切り欠いて形成される側面274が形成されている。なお、フック5Mが後退位置に配置されているときに、フック5Mの突起58の基端もしくは基端面503の少なくとも何れかの部分がシース2に当接するように、突起58を設定してもよい。例えば、突起58の基端が段部273に当接したときに、フック5M、特に、ガイドワイヤ係合面53Mは、溝26の先端よりも遠位側で位置決めされるように突起58を設定してもよい。突起58の基端が段部273に当接した状態では、好ましくは、フック5Mの基端面505(突起58を除く)とシース2Mの先端面27Mとは僅かに隙間を形成する。また、例えば、フック5Mの基端面505(突起58を除く)とシース2Mの先端面27Mとが当接するように突起58を設定しもてよい。この場合は、好ましくは、突起58の基端と段部273との間に僅かに隙間を形成する。以上のようにフック5Mとシースとを当接させた状態では、ガイドワイヤ係合面53Mと、溝26の内壁面264との間でガイドワイヤGWが保持されている。
【0087】
操作ワイヤ3Mは、2本の操作ワイヤ31,32が長手軸L方向に延びて設けられている。2本の操作ワイヤ31,32の内の第1操作ワイヤ31は長手軸Lと並行に直線状に延び、第2操作ワイヤ32は、側視において上下方向に凹凸するように複数個所で曲折して設けられている。第1操作ワイヤ31の基端は操作部4の操作スライダ42に固定されている。第2操作ワイヤ32の基端は、第1ルーメン21M内に配置されている。すなわち、第2操作ワイヤ32の基端は、操作部4に接続されず、第1ルーメン21M内に配置されている。
図34に示すように、第1操作ワイヤ31と第2操作ワイヤ32とは、上面視において、長手軸Lに重畳して延びている。第1操作ワイヤ31と第2操作ワイヤ32とは、シース2Mの第1ルーメン21M内に進退可能に挿通されている。
図36に示すように、第1ルーメン21Mは、少なくとも先端開口部において、長楕円形状を有する。第1ルーメン21Mの長辺21aが側面274と平行となるように第1ルーメン21Mが形成されている。この構成により、第1ルーメン21Mおよび側面274は規制部として機能し、2本の操作ワイヤ31,32および当接面581は被規制部となる。この結果、第1ルーメン21Mのみで操作ワイヤが規制される構成よりも軸回りの回転がさらに安定的に規制される。
【0088】
第1操作ワイヤ31を操作部4と接続し、上下方向の凹凸が設けられている第2操作ワイヤ32の基端は操作部4と接続されない構成を備える結果、第2操作ワイヤ32の上下方向の凹凸形状が安定的に保持され、フック5Hの軸回りの回転を効果的に防止できる。すなわち、操作スライダ42が牽引操作された場合等、フック5Hに基端側へ牽引する方向に力が作用した時に、第2操作ワイヤ32に外力が掛かり難く、上下方向の凹凸形状の変形を防止できる。よって、操作ワイヤに被規制部となる凹凸形状を設ける場合、2本の操作ワイヤのうち、基端が操作部4に接続されない操作ワイヤに凹凸形状を設けることが好ましい。
【0089】
図35,
図38,および
図39に示すように、フック5MにはX線画像で視認可能なX線マーカ59が設けられている。本変形例では、操作ワイヤ3Mの先端部の折り返し部内にX線マーカ59が配置され、フック5M内に埋設されている。
【0090】
本実施形態では、当接面581は、スリット56の内壁面から連続して形成されているが、当接面581は、スリット56と分離して設けられていてもよい。突起58は、ワイヤ固定部54と異なる位置に設けられていてもよい。
【0091】
例えば、各実施形態及び変形例の被規制部の構成は上述した態様に限定されない。例えば、第2実施形態または第2実施形態の第1変形例における被規制部を、
図24から
図27に示す形状の被規制部に変更してもよい。
【0092】
本実施形態および第1変形例では、フック5M,5Hの先端部501の外周部にR面502が形成されるため、ガイドワイヤ保持具1H,1Mを円滑に進退できる。この他、フック5M,5Hの基端部503にもR面を形成してもよい。また、ガイドワイヤ保持具の円滑に進退できれば、フックの先端部および基端部の外周部の形状はR面に限定されない。例えば、C面であってもよい。また、
図40に示す第2変形例のように、フックの先端部501にR面502を備え、基端部503にC面の斜面504を備えてもよい。この他、
図41に示す第3変形例のように、フック5Mの基端部503において、操作ワイヤ3Mが連結されている部分からフック5Mの径方向に離間するにつれて切り欠き量が多くなるように、R面またはC面等の斜面504が形成されていてもよい。フック5Mの基端部にこのような斜面を形成することにより、フック5Mを基端側に牽引したときに、組織にフック5Mが引っ掛かり難い。第2実施形態のフック5Hについては、基端面がフラットであり、外周縁部に斜面を備えない例を示したが、
図42に示す第4変形例のように、第2実施形態のフック5Hの基端部503においてもC面またはR面などにより斜面504が形成されていてもよい。なお、ガイドワイヤ保持具において、基端部および先端部の斜面は必須の構成ではない。
【0093】
第2実施形態の第1変形例5Mで示した突起58は必須の構成ではない。
【0094】
X線マーカは、第2実施形態の変形例で示した態様に限定されず、フックの少なくとも一部がX線不透過性材料で形成されていればよい。例えば、X線マーカは、操作ワイヤに設けたり、フック5Hの外周面に露出して設けてもよい。あるいは、フック自体がX線不透過性を有する材料で形成されている場合は、X線マーカは必須ではない。
第1実施形態または第2実施形態のフックにX線マーカを設けてもよいし、フックの少なくとも一部を、X線不透過性を有する材料で形成してもよい。
【0095】
第2実施形態の操作ワイヤ3Hの構成と、変形例の操作ワイヤ3Mの構成とを入れ替えてもよい。
【0096】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したり、各実施形態の構成要素を組み合わせたりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、ランデブー法において、ガイドワイヤに沿って乳頭側に円滑に挿入できるガイドワイヤ保持具及びガイドワイヤ保持具の挿入方法を提供できる。
【符号の説明】
【0098】
1 ガイドワイヤ保持具
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I,2J,2K,2M シース
3 操作ワイヤ
5,5G,5H,5M フック
7 回転防止部
21,21E 第1ルーメン(ルーメン)
20 プリカーブ部
22 第2ルーメン(フック収納ルーメン)
22B,22C 凹部(フック収納ルーメン)
26 溝
26H Dカット部(側面)
26I 傾斜面
261 先端縁(稜線)
263 外周開口部(開口)
264 内壁面
51 第一端部
52 第二端部
53,53G,53H ガイドワイヤ係合面
56 スリット
71,71J 非真円部(被規制部)
72 非真円開口部(規制部)