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特許7001834血管破壊剤およびタキサン化合物を含む癌の予防または治療用の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】血管破壊剤およびタキサン化合物を含む癌の予防または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20220113BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K31/427
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/337
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020550084
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 KR2019005941
(87)【国際公開番号】W WO2019221556
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0057131
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
【住所又は居所原語表記】8, CHUNGJEONG-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03742, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,スジン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0085363(US,A1)
【文献】European Journal of Cancer,2011年,47, Supplement 1,pp.S120-121 (1087)
【文献】Anticancer Research,2014年,34,pp.1715-1722
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩、およびドセタキセルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む癌の予防または治療用の医薬組成物。
【化1】
【請求項2】
(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドの薬学的に許容可能な塩は塩酸塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化学式2で表される化合物の活性代謝産物は、下記化学式3で表される(4-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェニル)(3,4,5-トリメトキシフェニル)メタノンである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【化2】
【請求項4】
前記癌は、大腸癌、皮膚黒色腫、肺癌、胃癌、リンパ腫および多発性骨髄腫から選択されるいずれか一つである、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記癌は肺癌である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩は非経口または経口投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記ドセタキセルまたはその薬学的に許容可能な塩は非経口投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩は1日1回~3週1回投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記ドセタキセルまたはその薬学的に許容可能な塩は週1回~3週1回投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
癌を治療するための薬剤を製造するための、下記化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩;およびドセタキセルまたはその薬学的に許容可能な塩の使用。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管破壊剤(VDA)およびタキサン化合物を含む癌の予防または治療用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血管破壊剤(Vascular Disrupting Agent;VDA)は、血管内皮細胞の細胞骨格の微小管を選択的に破壊することにより、形成されている腫瘍血管を迅速且つ選択的に遮断することを目指し、腫瘍の中心部にある細胞の虚血性壊死を誘導することができる。したがって、血管破壊剤(VDA)を用いた血管遮断方法は、最近、新しい抗癌戦略として浮上している。そこで、本出願人は、このような血管破壊剤として、下記化学式1の化合物を開発した(国際公開特許公報WO2009-119980号)。
【0003】
【化1】
【0004】
前記化学式1の化合物は、微小管の不安定化による既存の腫瘍血管の迅速な崩壊および細胞周期の停止によるアポトーシス(apoptosis)の二重作用機序を有するチューブリン重合形成阻害剤である。しかし、前記化学式の化合物をはじめとする血管破壊剤(VDA)を単独で処理する場合には、生存リム(viable rim)から腫瘍が急速に再成長しうるという問題があり、その結果、そのような薬物の治療的有用性を落とす。
【0005】
したがって、本発明者らは、抗癌剤としての血管破壊剤の長所を生かしながら、腫瘍が再成長する問題を解決することにより、癌を治療することのできる組成物および治療方法を提供するために様々な研究を試みてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開特許公報WO2009/119980号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、血管破壊剤およびタキサン化合物を含む癌の予防または治療用の組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、血管破壊剤およびタキサン化合物を必要とする個体に投与するこ
とを含む癌の治療方法を提供することにある。
【0009】
本発明のまた他の目的は、癌治療用の薬剤を製造するための血管破壊剤およびタキサン化合物の使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために研究努力した結果、本発明者らは、血管破壊剤(Vascular Disrupting Agent;VDA)およびタキサン化合物を含む癌の予防または治療用の医薬組成物を完成するに至った。
【0011】
血管破壊剤(Vascular Disrupting Agent;VDA)は、血管内皮細胞の細胞骨格の微小管を選択的に破壊することにより、形成されている腫瘍血管を迅速且つ選択的に遮断することを目指し、腫瘍の中心部にある細胞の虚血性壊死を誘導することができる。
【0012】
本発明において、前記血管破壊剤は、下記化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0013】
【化2】
【0014】
本発明において、前記化学式2の化合物は、例えば、国際公開特許公報WO 2009-119980号に開示された製法により製造できるが、これに制限されるものではない。
【0015】
本発明において、前記化学式2の化合物の薬学的に許容可能な塩は、医薬業界で通常用いられる塩を意味し、例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウムまたはマグネシウムなどから製造された無機イオン塩;塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸または硫酸などから製造された無機酸塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸またはバニリン酸などから製造された有機酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸などから製造されたスルホン酸塩;グリシン、アルギニン、リジンなどから製造されたアミノ酸塩;またはトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどから製造されたアミン塩などが挙げられるが、列挙されたこれらの塩によって本発明で意味する塩の種類が制限されるものではない。
【0016】
具体的には、(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドの塩は塩酸塩であってもよい。
【0017】
本発明において、前記化学式2の化合物の活性代謝産物は、下記化学式3で表される(4-(2-アミノチアゾール-4-イル)-2-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)フェニル)(3,4,5-トリメトキシフェニル)メタノンであってもよい。前記「活性代謝産物」という用語は、生体の同化または異化作用の代謝過程で発生する物質のうち実際に治療対象体内で薬理活性を示す物質である。
【0018】
【化3】
【0019】
本発明において、癌の予防または治療用の医薬組成物に含まれる化学式2の化合物が、個体内の代謝過程により前記化学式3の化合物として存在して癌の予防、改善または治療効果を示すことができる。
【0020】
本発明に係る化学式2の化合物は、腫瘍血管を迅速且つ選択的に遮断して、腫瘍の中心部にある細胞の虚血性壊死を引き起こすことができる。しかし、前記化学式2の化合物などの血管破壊剤は、腫瘍が急速に再成長しうるので、薬物の治療的有用性が落ちることができる。
【0021】
しかし、本発明の組成物において、(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩と、他の治療メカニズムの抗癌剤であるタキサン化合物とを併用投与する場合、上昇補完効果により癌治療活性に非常に優れることを確認した。
【0022】
タキサン化合物(taxane compound)は、抗癌化学療法に広く用いられる物質である、天然に存在するジテルペン(diterpen)化合物系を意味する。前記タキサン化合物は、細胞分裂時に染色体を両極に引っ張る微小管の生成を妨害して、細胞分裂の中断効果によって正常細胞より細胞分裂が頻繁な癌細胞の増殖を抑制する効果を示す。
【0023】
本発明において、前記タキサン化合物は、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、ラロタキセル、オルタタキセルおよびテセタキセルを含む群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。具体的には、前記タキサン化合物は、パクリタキセルまたは
ドセタキセルであってもよい。
【0024】
前記タキサン化合物の薬学的に許容可能な塩は、医薬業界で通常用いられる塩を意味し、例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウムまたはマグネシウムなどから製造された無機イオン塩;塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸または硫酸などから製造された無機酸塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸またはバニリン酸などから製造された有機酸塩;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸などから製造されたスルホン酸塩;グリシン、アルギニン、リジンなどから製造されたアミノ酸塩;またはトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどから製造されたアミン塩などが挙げられるが、列挙されたこれらの塩によって本発明で意味する塩の種類が制限されるものではない。また、前記タキサン化合物は無塩であってもよい。
【0025】
本発明の組成物は、前記(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物、前記(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組み合わせ物、または前記組み合わせ物を含む組成物であってもよい。したがって、本発明において、前記組成物は、組み合わせ物と混用して使用してもよい。
【0026】
本発明の組成物は、癌の予防または治療用として有用に使用できる。前記癌としては、人体の各種癌、婦人科腫瘍、内分泌系癌、中枢神経系腫瘍、尿管癌などが挙げられ、具体的には、肺癌、胃癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、大腸癌、結腸癌、乳癌、子宮肉腫、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膣癌、外陰部癌、食道癌、喉頭癌、小腸癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、慢性または急性白血病、幼年期の固形腫瘍、リンパ腫(例えば、分化リンパ腫、第1中枢神経系リンパ腫)、膀胱癌、腎臓癌、腎臓細胞癌、腎盂癌、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫または脳下垂体アデノーマを含む。より具体的には、本発明の薬学的組成物は、大腸癌、皮膚黒色腫、肺癌、胃癌、リンパ腫または多発性骨髄腫に使用でき、より具体的には肺癌に使用できる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有した者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体を用いて製剤化することによって単位用量の形態に製造するかまたは多用量容器内に入れて製造することができる。
【0028】
前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これらに制限されるものではない。本発明の医薬組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。好適な薬剤学的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.、
1995)に詳細に記載されている。
【0029】
本発明の組成物は、2種の別個の製剤を含むものであってもよく、1個の製剤からなってもよい。
【0030】
本発明の組成物の(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩とタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、同時または異時に投与することができ、(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩の投与後、同時または1日~5日後、具体的には同時または1日~3日後、より具体的には同時または1日後に、タキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することができる。前記用語「同時」とは、(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩の投与と共にタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することと、(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩の投与後1日が経過する前、すなわち、同じ日に別途にタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を投与することをいずれも含む。
【0031】
本発明の組成物は、目的とする方法に応じて、経口投与するかまたは非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)してもよい。
【0032】
本発明において、前記(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩は、非経口または経口投与することができる。
【0033】
本発明において、前記タキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、非経口投与することができる。
【0034】
本発明の組成物において、前記有効成分の好適な投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などに応じてその範囲が様々である。本発明の(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩の1日投与量は、約1~20mg/mであり、好ましくは5~15mg/mである。また、本発明のタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の1日投与量は、タキサン化合物の種類に応じて同じであるかまたは異なってもよい。具体的には、ドセタキセルの1日投与量は、約20~150mg/mであり、好ましくは40~80mg/mである。パクリタキセルの1日投与量は、約100~300mg/mであり、好ましくは150~250mg/mである。
【0035】
また、本発明の組成物において、前記有効成分の好適な投与周期は、前記投与量に応じて決定できる。これに制限されるものではないが、本発明の(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたは
その薬学的に許容可能な塩は、1日1回~3週1回投与されてもよく、具体的には1日1回~1週1回投与されてもよい。
【0036】
また、前記タキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩は、1日1回~3週1回投与されてもよく、具体的には1週1回~3週1回投与されてもよい。
【0037】
本発明は、化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を必要とする個体に投与することを含む癌の治療方法を提供する。
【0038】
具体的には、化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩を必要とする個体に投与するステップ;およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を必要とする個体に投与するステップを含む癌の治療方法を提供する。
【0039】
本発明において、前記「個体」という用語は、哺乳動物、特にヒトを含む。前記治療方法は治療学的に有効な量の投与を含み、「治療学的に有効な量」とは、癌の治療に有効な本発明の化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の量を示す。
【0040】
本発明は、癌治療用の薬剤を製造するための化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩の使用を提供する。
【0041】
薬剤を製造するための本発明の化学式2で表される(S)-N-(4-(3-(1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-4-(3,4,5-トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール-2-イル)-2-アミノ-3-メチルブタンアミドまたはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩およびタキサン化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む組成物は、許容される担体などを混合することができ、他の作用剤をさらに含むこともできる。
【0042】
本発明の使用、組成物、治療方法で言及された事項は互いに矛盾しない限り同様に適用される。
【発明の効果】
【0043】
本発明の組成物は、血管破壊剤およびタキサン化合物を含み、癌の予防または治療活性を示し、単独の有効成分に比べて顕著に優れた抗癌効果を有する。したがって、本発明の組成物は、癌の予防、改善または治療用として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実験終了後に腫瘍(H1975)の体積を比較した結果、CKD-516とドセタキセルの併用投与群が、CKD-516またはドセタキセルの単独投与群に比べて腫瘍体積が顕著に減少したことを確認したグラフである。
図2】実験期間の間に腫瘍(H1975)の体積を比較した結果、CKD-516とドセタキセルの併用投与群が、癌組織の成長抑制効果だけでなく、腫瘍体積の減少効果を示すことを確認したグラフである。
図3】実験終了後に腫瘍(A549)の体積を比較した結果、CKD-516とドセタキセルの併用投与群が、CKD-516またはドセタキセルの単独投与群に比べて腫瘍体積が顕著に減少したことを確認したグラフである。
図4】実験期間の間に腫瘍(A549)の体積を比較した結果、CKD-516とドセタキセルの併用投与群が癌組織の成長抑制効果が顕著に優れることを確認したグラフである。
図5】実験終了後に腫瘍(H460)の体積を比較した結果、CKD-516とパクリタキセルの併用投与群が、CKD-516またはパクリタキセルの単独投与群に比べて腫瘍体積が顕著に減少したことを確認したグラフである。
図6】実験期間の間に腫瘍(H460)の体積を比較した結果、CKD-516とパクリタキセルの併用投与群が癌組織の成長抑制効果が顕著に優れることを確認したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、実施例を通じて本発明の構成および効果についてより詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>化学式2の化合物およびドセタキセルの上昇効果の確認(1)
1.実験方法
腫瘍細胞株の準備
ヒト腫瘍細胞株として肺癌細胞株であるH1975 cell lineを米国微生物保存センター(American Type Culture Collections、ATCC)から購入した。1 バイアル(vial)の前記細胞株を熱不活性化した1
0%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)(FBS;Gibco、10082-742)を含むRPMI1640(Gibco、22400)培地に入れ、37℃および5% COのインキュベーターで培養した。PBSで洗浄し、2.5% Trypsin-EDTA(Gibco、15090)を10倍希釈したものを加えて細胞を分離した。その次に、遠心分離(1,000rpm、5分)して上層液を捨て、新しい培地で細胞浮遊液を得た。顕微鏡で生存率を確認して1.0×10cells/mLで準備した。
【0047】
動物モデルの準備
5週齢の雄胸腺ヌード(thymic nude)マウス(Hsd:Athymic Nude-Foxn1nu)をセロンバイオ(Saeronbio;京畿道、韓国)から購入した。
【0048】
26ゲージ針注射器を用いて、前記準備した腫瘍細胞株をマウスの背中部位に0.2ml(2×10cells)ずつ皮下注射(sc)した。注射して約3~4週間の経過後、腫瘍の大きさが170~220mmに達した動物を選定して実験に用いた。
【0049】
有効成分の準備
化学式2の化合物であるCKD-516を0.9% saline(賦形剤1)で溶かし、下記表1の群の投与用量に合わせて用意した。
【0050】
ドセタキセルをCremophor、エタノールおよびsalineを1:1:8で混合して製造した賦形剤(賦形剤2)で溶かし、下記表1の群の投与用量に合わせて用意し
た。
【0051】
【表1】
【0052】
薬物投与および抗癌活性の確認
CKD-516およびドセタキセルの抗癌効果は、前記準備した動物モデルを用いて評価した。実験群は、前記表1の群に無作為に分けた。
-賦形剤2:週2回、3週間、腹腔投与
-ドセタキセル:6mg/kg、週2回、3週間、腹腔投与
-CKD-516:3mg/kg、週2回、3週間、腹腔投与
-CKD-516+ドセタキセル:先にCKD-516投与(3mg/kg、週2回、3週間、腹腔投与)+翌日にドセタキセル投与(6mg/kg、週2回、3週間、腹腔投与)
【0053】
抗癌活性は、腫瘍の体積を基準に判断した。腫瘍体積は、電子キャリパー(CD-15CPX、Mitutoyo Corp.,日本)を用いて腫瘍の長軸および短軸の大きさを測定し、下記の式を用いて計算した(週1回):
腫瘍体積(tumor volume、mm)=(長軸長さ×短軸長さ)/2
【0054】
統計処理
陰性対照群に対する陽性対照群および試験物質投与群の比較、そして陽性対照群と試験物質投与群に対する比較は一元配置分散分析(One-way ANOVA)を通じて検証し、この時、有意性が認められた場合、等分散性が認められればDuncan testを、等分散性が認められなければDunnett’s testを用いて事後検定を行った。p値が0.05以下の場合に有意性が認められ、商用統計プログラムであるSPSS 10.1を用いた。
【0055】
2.実験結果-抗癌活性
賦形剤だけを投与した陰性対照群の腫瘍体積は、時間が経つにつれて持続的に増加した。陽性対照物質としてドセタキセルを単独で投与した群は、陰性対照群に比べて時間に応じた腫瘍の成長は減少したが、腫瘍の体積は持続的に増加した。また、CKD-516を単独で投与した群もドセタキセルの投与群と類似した傾向を示した。しかし、CKD-516とドセタキセルを併用投与した群は、実験初期に比べて腫瘍の体積がほぼ増加せず、実験終了時にはドセタキセル単独またはCKD-516単独投与群に比べて腫瘍の体積が顕著に小さいことを確認した(表2および図1)。また、3回投与後、増加していた腫瘍の体積が減少したことを確認した(表2および図2)。
【0056】
これは、CKD-516とドセタキセルを併用投与する場合、CKD-516の血管破壊活性とドセタキセルの細胞分裂中断効果のシナジー作用であって、単独投与時には現れない腫瘍体積の減少効果を示すことを示唆する。
【0057】
【表2】
【0058】
<実施例2>化学式2の化合物およびドセタキセルの上昇効果の確認(2)
1.実験方法
動物モデルの準備
4週齢の雄Balb/cヌードマウスを中央実験動物(株)から購入した。
【0059】
ATCCから購入したヒト肺癌細胞株であるA-549癌細胞株(1×10cells)をマウスに皮下注射した。具体的には、癌細胞の注射前にマウスの左側横腹の部分にニードルポイントを挿入してから左右に動かして癌細胞を注射した後、投与液が流出しないことを確認した後、腫瘍の形成を観察した。腫瘍の大きさが100~250mmに達した動物を選定して実験に用いた。
【0060】
有効成分の準備
化学式2の化合物であるCKD-516を精製水で溶かし、下記表3の群の投与用量に合わせて用意した。
【0061】
ドセタキセルをエタノール、ツイン80およびsalineを1:1:8で混合して製造した賦形剤(賦形剤3)で溶かし、下記表3の群の投与用量に合わせて用意した。
【0062】
【表3】
【0063】
薬物投与および抗癌活性の確認
CKD-516およびドセタキセルの抗癌効果は、前記準備した動物モデルを用いて評価した。実験群は、前記表3の群に無作為に分けた。
-vehicle:毎日、8週間、経口投与
-ドセタキセル:2.5mg/kg、週1回、8週間、腹腔投与
-CKD-516:4mg/kg、毎日、8週間、経口投与
-CKD-516+ドセタキセル:先にCKD-516投与(4mg/kg、毎日、8週間、経口投与)+ドセタキセル投与(2.5mg/kg、週1回、8週間、腹腔投与)
【0064】
抗癌活性は、腫瘍の体積を基準に判断した。腫瘍体積は、電子キャリパー(CD-15CPX、Mitutoyo Corp.、日本)を用いて腫瘍の長軸および短軸の大きさを測定し、下記の式を用いて計算した(週2回):
腫瘍体積(tumor volume、mm)=(長軸長さ×短軸長さ)/2
【0065】
統計処理
腫瘍の体積に対して統計処理プログラム(GraphPad PRISMR Version 5.0、GraphPad Software、米国)を用いて統計処理を行った。
【0066】
2.実験結果-抗癌活性
賦形剤だけを投与した陰性対照群の腫瘍体積は、時間が経つにつれて持続的に増加した。陽性対照物質としてドセタキセルを単独で投与した群は、陰性対照群に比べて時間に応じた腫瘍の成長は減少したが、腫瘍の体積は持続的に増加し、陰性対照群との比較時に腫瘍の成長率に大きな差はなかった。CKD-516を単独で投与した群は、腫瘍がほぼ成長しなかった。CKD-516とドセタキセルを併用投与した群は、実験初期に比べて腫瘍の体積がほぼ増加せず、実験終了時にはドセタキセル単独またはCKD-516単独投与群に比べて腫瘍の体積が顕著に小さいことを確認した(図3)。また、実験期間別の腫瘍の体積がほぼ増加せずに一定のレベルを維持し、全ての実験期間の間ドセタキセル単独またはCKD-516単独投与群に比べて腫瘍の体積が顕著に小さいことを確認した(図4)。
【0067】
これは、CKD-516とドセタキセルを併用投与する場合、CKD-516の血管破壊活性とドセタキセルの細胞分裂中断効果のシナジー作用であって、これ以上癌組織が成長できないように成長を遮断する効果を示すことを示唆する。
【0068】
<実施例3>化学式2の化合物およびパクリタキセルの上昇効果の確認
1.実験方法
動物モデルの準備
4週齢の雄Balb/cヌードマウスを中央実験動物(株)から購入した。
【0069】
In vitroで増殖したヒト肺癌細胞株であるH460癌細胞株をマウスの皮下に注射して体内で増殖するようにした。20~25日後に前記マウスを頸椎脱臼法により安楽死させた後、マウスにおいて増殖した固形癌を無菌的に分離し、結合組織、壊死組織、皮膚などを除去した新鮮な癌組織を取った。
【0070】
前記癌組織を無菌状態で50mgに分けた後、16ゲージのトロカール(trocar)を用いてマウスの皮下に移植した。移植して12日の経過後、一定の大きさに増殖したマウスを選定して実験に用いた。
【0071】
有効成分の準備
化学式2の化合物であるCKD-516を0.9% saline(賦形剤1)で溶かし、下記表4の群の投与用量に合わせて用意した。
【0072】
パクリタキセルをCremophor、エタノールおよびsalineを1:1:8で混合して製造した賦形剤(賦形剤2)で溶かし、下記表4の群の投与用量に合わせて用意した。
【0073】
【表4】
【0074】
薬物投与および抗癌活性の確認
CKD-516およびパクリタキセルの抗癌効果は、前記準備した動物腫瘍モデルを用いて評価した。実験群は、前記表4の群に分けた。
-賦形剤1:週1回、3週間、腹腔投与
-パクリタキセル:20mg/kg、週1回、3週間、静脈投与
-CKD-516:2.5mg/kg、週1回、3週間、腹腔投与
-CKD-516+パクリタキセル:先にCKD-516投与(2.5mg/kg、週1回、3週間、腹腔投与)+3日後にパクリタキセル投与(20mg/kg、週1回、3週間、静脈投与)
【0075】
抗癌活性は、腫瘍の体積を基準に判断した。腫瘍体積は、電子キャリパー(CD-15CPX、Mitutoyo Corp.、日本)を用いて腫瘍の長軸および短軸の大きさを測定し、下記の式を用いて計算した(週2回):
腫瘍体積(tumor volume、mm)=(長軸長さ×短軸長さ)/2
【0076】
統計処理
全ての実験結果は平均±標準偏差(Mean±SD)で表わし、各実験群の効果を判定するために各実験群と対照群をStudent’s t-testを用いて比較した。
【0077】
2.実験結果-抗癌活性
賦形剤だけを投与した陰性対照群の腫瘍体積は、時間が経つにつれて持続的に増加した。陽性対照物質としてパクリタキセルを単独で投与した群は、陰性対照群に比べて時間に応じた腫瘍の成長は減少したが、腫瘍の体積は持続的に増加した。また、CKD-516を単独で投与した群もパクリタキセルの投与群と類似した傾向を示した。しかし、CKD-516とパクリタキセルを併用投与した群は、実験初期に比べて腫瘍体積がほぼ増加せず、実験終了時にはパクリタキセル単独またはCKD-516単独投与群に比べて腫瘍の体積が顕著に小さいことを確認した(図5)。また、実験期間の間腫瘍の体積がほぼ増加せずに一定のレベルを維持することを確認した(図6)。
【0078】
これは、CKD-516とパクリタキセルを併用投与する場合、CKD-516の血管破壊活性とパクリタキセルの細胞分裂中断効果のシナジー作用であって、これ以上癌組織が成長できないように成長を遮断する効果を示すことを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6