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特許7001835位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550565
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2018009337
(87)【国際公開番号】W WO2019146861
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2018-0008341
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520210000
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティトゥート オブ スタンダード アンド サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン シク
(72)【発明者】
【氏名】グエン ド マン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョク ギョ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/094880(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/151386(WO,A1)
【文献】特開2003-254733(JP,A)
【文献】特開2016-186663(JP,A)
【文献】特許第4255865(JP,B2)
【文献】国際公開第2014/054446(WO,A1)
【文献】特開2014-106110(JP,A)
【文献】特開2010-014444(JP,A)
【文献】特開2001-174232(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102589479(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0135434(US,A1)
【文献】Zhaoyang Wang and Bongtae Han,"Advanced iterative algorithm for phase extraction of randomly phase-shifted interferograms",Optics Letters,米国,Optical Society of America,2004年07月15日,Vol.29, No.4,P.1671-1673,[令和3年11月18日検索] インターネット <URL:https://www.osapublishing.org/ol/fulltext.cfm?uri=ol-29-14-1671&id=80569>, <DOI:https://doi.org/10.1364/OL.29.001671>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステムであって、
パターンを生成して、測定対象物に投影するパターン発生部と、
前記測定対象物から反射される変形パターンの映像を獲得するディテクターと、
前記パターン発生部と前記ディテクターで発生した非線形応答特性を補償する補償手段とを含み、
前記非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償することとし、
前記位相シフト量は、AIA位相シフトアルゴリズムを適用して算出されることを特徴とする位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【請求項2】
前記パターン発生部は、パターンを生成するスクリーンであり、
前記ディテクターは、カメラからなることを特徴とする請求項1に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【請求項3】
前記補償手段は、前記スクリーンと前記カメラの非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを基に、非線形応答を線形化することを特徴とする請求項2に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【請求項4】
前記スクリーンの全画面の明るさ値を、最小値から最大値までの一定レベルに、前記カメラで測定された測定強度を正規化して示す非線形応答特性グラフを算出し、前記非線形応答特性を、ルックアップテーブルを基に、線形応答特性に変換することを特徴とする請求項3に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【請求項5】
前記非線形応答特性グラフにおいて、最小値(Imin)と最大値(Imax)を線形的につなぐ下記式1の正規化された線形応答特性モデル方程式を生成することを特徴とする請求項4に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【数1】
式中、Xは、入力で与えられる補償前のスクリーン明るさ値(X=0、1、2、3、4、 …、255)、αとβは、スクリーン明るさ値により線形応答特性となるようにする係数値であって、それぞれ、α=(Imax-Imin)/255、β=Iminで与えられ、これにより得られる正規化された線形応答特性モデル値は、Ylinear_modelである。
【請求項6】
測定された前記非線形応答特性グラフから、入力を正規化された測定強度に、出力をスクリーンの明るさ値に変えて、下記式2の多次方程式を生成し、逆関数応答特性を求めることを特徴とする請求項5に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【数2】
式中、Ynor_meaは、前記カメラで測定された正規化された測定強度を表し、Xは、対応する補償前のスクリーン明るさ値であり、a5、a4、a3、a2、a1、a0は、測定された非線形応答特性グラフを用いて得られる逆関数応答特性を、多次方程式(5次方程式)に整合したときに得られる係数値である。
【請求項7】
前記式1及び式2を基に、前記カメラで測定される正規化された測定強度が線形応答特性となるように、スクリーンで入力すべき明るさ値は、下記式3で示され、式1、2、3を基に、カメラで測定される正規化された測定強度が、式1によって線形的に変わるとき、式3におけるスクリーンで入力すべき明るさ値を求めることになり、これを実スクリーンに反映して、線形応答特性を得ることを特徴とする請求項6に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステム。
【数3】
式中、全ての係数値は、式1及び式2により得られ、Xは、補償前のスクリーン明るさ値であり、Xnew_inputは、線形応答特性となるようにする補償後のスクリーン明るさ値である。
【請求項8】
位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法であって、
パターン発生部により、パターンを生成して、測定対象物に投影するステップと、
ディテクターにより、測定対象物から反射される変形パターンの映像を獲得するステップと、
補償手段により、前記パターン発生部と前記ディテクターの非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを基に、非線形応答を線形化するステップと、
前記補償手段により、非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償するステップとを含み、
前記位相シフト量を補償するステップにおいて、前記位相シフト量は、AIA位相シフトアルゴリズムを適用して算出され、
任意の初期位相シフト値を設定する第1のステップと、
前記位相シフト値を基に、位相分布を演算する第2のステップと、
前記演算された位相分布を基に、位相シフト値を更新する第3のステップと、
前記位相シフト値と前記更新された位相シフト値との差が、所定の収束値以下となるまで、第2のステップ及び第3のステップを繰り返す第4のステップとを含むことを特徴とする位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法。
【請求項9】
前記線形化するステップは、前記パターン発生部の全画面の明るさ値を、最小値から最大値までの一定レベルに、前記ディテクターで測定された正規化された測定強度を示す非線形応答特性グラフを算出し、前記非線形応答特性を、ルックアップテーブルにより、線形応答特性に変換することを特徴とする請求項8に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法。
【請求項10】
前記非線形応答特性グラフにおいて、最小値(Imin)と最大値(Imax)を線形的につなぐ下記式1の正規化された線形応答特性モデル方程式を生成することを特徴とする請求項9に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法。
【数1】
式中、Xは、入力で与えられる補償前のスクリーン明るさ値(X=0、1、2、3、4、 …、255)、αとβは、スクリーン明るさ値により線形応答特性となるようにする係数値であって、それぞれ、α=(Imax-Imin)/255、β=Iminで与えられ、これにより得られる正規化された線形応答特性モデル値は、Ylinear_modelである。
【請求項11】
測定された前記非線形応答特性グラフから、入力を正規化された測定強度に、出力をスクリーン明るさ値に変えて、下記式2の多次方程式を生成し、逆関数応答特性を求めることを特徴とする請求項10に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法。
【数2】
式中、Ynor_meaは、前記ディテクターで測定された正規化された測定強度を表し、Xは、対応する補償前のスクリーン明るさ値であり、a5、a4、a3、a2、a1、a0は、測定された非線形応答特性グラフを用いて得られる逆関数応答特性を、多次方程式(5次方程式)に整合したときに得られる係数値である。
【請求項12】
前記式1及び式2を基に、前記ディテクターで測定される正規化された測定強度が線形応答特性になるように、スクリーンで入力すべき明るさ値は、下記式3で示され、式1、2、3を基に、ディテクターで測定される正規化された測定強度が、式1によって線形的に変わるとき、式3におけるスクリーンで入力すべき明るさ値を求めることになり、これを実スクリーンに反映して、線形応答特性を得ることを特徴とする請求項11に記載の位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法。
【数3】
式中、全ての係数値は、式1及び式2により得られ、Xは、補償前のスクリーン明るさ値であり、Xnew_inputは、線形応答特性となるようにする補償後のスクリーン明るさ値である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト偏向測定法を用いた対象物形状測定で、非線形応答特性を補償するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自由曲面とは、いずれの軸に対しても、非対称性を有する任意の面をいい、最近登場したスマートメガネとヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの最先端光学器機の核心部品はいずれも、自由曲面からなっている。このような自由曲面は、従来の球面や非球面のみからなる光学系の光学性能の限界を超えるだけでなく、デザイン的な要素も同時に満たしているので、全世界的に多くの研究が行われている。位相シフト偏向測定法は、このような自由曲面の三次元形状を測定することができる代表的な技術であって、従来の干渉計とは異なり、別の基準面がなくても、測定対象物に対する三次元形状の測定が可能であるため、次世代の自由曲面形状測定器として脚光を浴びている。
【0003】
位相シフト偏向測定法の基本原理は、周期的なパターンを有した縞模様パターンを、測定しようとする測定対象物の表面に入射させた後、測定対象物の形状から、偏向されたパターンの位相を分析することで、各表面の勾配変化を測定することになる。すなわち、測定しようとする対象物の形状がz=z(x、y)であると仮定すると、位相シフト偏向測定法により得られる測定値は、入射されたパターンの方向によって、x軸方向勾配成分(∂z/∂x)と、y軸方向勾配成分(∂z/∂y)とを得ることができる。そこで、測定された位相から得られたx軸とy軸方向の2つの勾配成分を積分することになると、測定対象物に対する三次元形状を復元して得られることになる。
【0004】
このとき、測定された位相の精度は、使われたカメラとスクリーンの非線形応答特性に影響されるため、これを補正することで、測定誤差が減ることになる。
【0005】
LCDを始めとした殆どの商業用ディスプレイは、一般に、人間の視覚的認識を高めるために感度特性が非線形的であり、特に、明るい色調よりも暗い色調間の相対的な差が大きくなる。しかし、輝度によるカメラのようなデジタル装備の感度特性は、人間の目と違う。
【0006】
位相シフト偏向測定法で測定のために、ディスプレイで生成された正弦波パターンの強度を、カメラによって測定することになると、実際に正弦波パターンではなく、歪みパターンを得ることになる。このようなディスプレイとカメラで誘発された非線形成分は、測定結果値に深刻な測定誤差を引き起こすことになる。
【0007】
そこで、位相シフト偏向測定法に最適化された非線形応答特性補償アルゴリズムにより、測定精度を高める方法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の位相シフト偏向測定法において、デジタル装備(スクリーン、カメラ)で発生した非線形応答特性を補償するための方法を提供することにその目的がある。
【0009】
本発明によると、第1のステップでは、測定システムの応答特性を線形にするために、画面パターンに、非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを設けて、システムの非線形応答特性をより線形に近づけて補い、第2のステップでは、干渉計において、位相シフト誤差を減らすために広く使用しているAIA(Advanced Iterative Algorithm)位相シフトアルゴリズムを適用して、非線形応答特性を補償することで、位相シフト偏向測定法において、非線形応答特性による誤差なく、正確に位相を測定し、これによって、測定対象物に対する3D形状を高い精度で測定することができる位相シフト偏向測定法を用いた対象物形状測定において、非線形応答特性を補償するためのシステム及び方法を提供することにその目的がある。
【0010】
一方、本発明で解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していない他の技術的課題は、下記の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一様態によれば、位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステムであって、パターンを生成して、測定対象物に投影するパターン発生部と、前記測定対象物から反射される変形パターンの映像を獲得するディテクターと、前記パターン発生部と前記ディテクターで発生した非線形応答特性を補償する補償手段とを含み、前記非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償することとし、前記位相シフト量は、AIA位相シフトアルゴリズムを適用して算出されることを特徴とする。
【0012】
前記パターン発生部は、パターンを生成するスクリーンであり、前記ディテクターは、カメラからなる。
【0013】
前記補償手段は、前記スクリーンと前記カメラの非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを基に、非線形応答を線形化する。
【0014】
前記スクリーンの全画面の明るさ値を、最小値から最大値までの一定レベルに、前記カメラで測定された測定強度を正規化して示す非線形応答特性グラフを算出し、前記非線形応答特性を、ルックアップテーブルを基に、線形応答特性に変換する。
【0015】
前記非線形応答特性グラフにおいて、最小値(Imin)と最大値(Imax)を線形的につなぐ下記式1の正規化された線形応答特性モデル方程式を生成する。
【0016】
【数1】
式中、Xは、入力で与えられる補償前のスクリーン明るさ値(X=0、1、2、3、4、 …、255)、αとβは、スクリーン明るさ値により線形応答特性となるようにする係数値であって、それぞれ、α=(Imax-Imin)/255、β=Iminで与えられ、これにより得られる正規化された線形応答特性モデル値は、Ylinear_modelとなる。すなわち、数式1は、正規化された線形応答特性モデル方程式を示す。
【0017】
測定された前記非線形応答特性グラフから、入力を正規化された測定強度に、出力をスクリーンの明るさ値に変えて、下記式2の多次方程式を生成し、逆関数応答特性を求める。
【0018】
【数2】
式中、Ynor_meaは、前記カメラで測定された正規化された測定強度を表し、Xは、対応する補償前のスクリーン明るさ値であり、a5、a4、a3、a2、a1、a0は、測定された非線形応答特性グラフを用いて得られる逆関数応答特性を、多次方程式(5次方程式)に整合したときに得られる係数値となる。
【0019】
前記式1及び式2を基に、前記カメラで測定される正規化された測定強度が線形応答特性となるように、スクリーンで入力すべき明るさ値は、下記式3で示され、式1、2、3を基に、カメラで測定される正規化された測定強度が、式1によって線形的に変わるとき、式3におけるスクリーンで入力すべき明るさ値を求めることになり、これを実スクリーンに反映して、線形応答特性を得る。
【0020】
【数3】
式中、全ての係数値は、式1及び式2により得られ、Xは、補償前のスクリーン明るさ値であり、Xnew_inputは、線形応答特性となるようにする補償後のスクリーン明るさ値となる。
【0023】
本発明の別の様態によれば、位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するための方法であって、パターン発生部により、パターンを生成して、測定対象物に投影するステップと、ディテクターにより、測定対象物から反射される変形パターンの映像を獲得するステップと、補償手段により、前記パターン発生部と前記ディテクターの非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを基に、非線形応答を線形化するステップと、前記補償手段により、非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償するステップとを含み、前記位相シフト量を補償するステップにおいて、前記位相シフト量は、AIA位相シフトアルゴリズムを適用して算出され、任意の初期位相シフト値を設定する第1のステップと、前記位相シフト値を基に、位相分布を演算する第2のステップと、前記演算された位相分布を基に、位相シフト値を更新する第3のステップと、前記位相シフト値と前記更新された位相シフト値との差が、所定の収束値以下となるまで、第2のステップ及び第3のステップを繰り返す第4のステップとを含むことを特徴とする。
【0025】
前記線形化するステップは、前記パターン発生部の全画面の明るさ値を、最小値から最大値までの一定レベルに、前記ディテクターで測定された正規化された測定強度を示す非線形応答特性グラフを算出し、前記非線形応答特性を、ルックアップテーブルにより、線形応答特性に変換する。
【0026】
前記非線形応答特性グラフにおいて、最小値(Imin)と最大値(Imax)を線形的につなぐ下記式1の正規化された線形応答特性モデル方程式を生成する。
【0027】
【数1】
式中、Xは、入力で与えられる補償前のスクリーン明るさ値(X=0、1、2、3、4、 …、255)、αとβは、スクリーン明るさ値により線形応答特性となるようにする係数値であって、それぞれ、α=(Imax-Imin)/255、β=Iminで与えられ、これにより得られる正規化された線形応答特性モデル値は、Ylinear_modelとなる。すなわち、数式1は、正規化された線形応答特性モデル方程式を示す。
【0028】
測定された前記非線形応答特性グラフから、入力を正規化された測定強度に、出力をスクリーン明るさ値に変えて、下記式2の多次方程式を生成し、逆関数応答特性を求める。
【0029】
【数2】
式中、Ynor_meaは、前記ディテクターで測定された正規化された測定強度を表し、Xは、対応する補償前のスクリーン明るさ値であり、a5、a4、a3、a2、a1、a0は、測定された非線形応答特性グラフを用いて得られる逆関数応答特性を、多次方程式(5次方程式)に整合したときに得られる係数値となる。
【0030】
前記式1及び式2を基に、前記ディテクターで測定される正規化された測定強度が線形応答特性になるように、スクリーンで入力すべき明るさ値は、下記式3で示され、式1、2、3を基に、ディテクターで測定される正規化された測定強度が、式1によって線形的に変わるとき、式3におけるスクリーンで入力すべき明るさ値を求めることになり、これを実スクリーンに反映して、線形応答特性を得る。
【0031】
【数3】
式中、全ての係数値は、式1及び式2により得られ、Xは、補償前のスクリーン明るさ値であり、Xnew_inputは、線形応答特性となるようにする補償後のスクリーン明るさ値である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、位相シフト偏向測定法において、デジタル装備(スクリーン、カメラ)で発生した非線形応答特性を補償することができる。
【0033】
本発明による位相シフト偏向測定法を用いた対象物形状測定において、非線形応答特性を補償するための方法によると、第1のステップでは、測定システムの応答特性を線形にするために、画面パターンに、非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを設けて、システムの非線形応答特性をより線形に近づけて補い、第2のステップでは、干渉計において、位相シフト誤差を減らすために広く使用しているAIA位相シフトアルゴリズムを適用して、非線形応答特性を補償することで、位相シフト偏向測定法において、非線形応答特性による誤差なく、正確に位相を測定し、これによって、測定対象物に対する3D形状を高い精度で測定することができる。
【0034】
一方、本発明より得られる効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及していない他の効果は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本明細書に添付された下記の図面は、本発明の好適な実施例を例示することに過ぎず、発明の詳細な説明と共に本発明の技術的思想をより理解させる役割を果たしているので、本発明は、このような図面に記載された事項に限定して解釈されない。
図1】位相シフト偏向測定法を用いた3次元形状測定システムの概略図である。
図2】本発明の実施例により、スクリーンの全画面の明るさを、最小値から最大値までの一定レベルに、カメラで測定された明るさ強度値を正規化して示す非線形応答特性グラフである。
図3図2において、最小値と最大値をつなぐグラフに正規化された線形応答特性モデルグラフである。
図4】本発明の実施例により線形化された応答特性グラフである。
図5】本発明の実施例による位相シフト量補償方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明によると、位相シフト偏向測定法において、デジタル装備(スクリーン10、カメラ20)で発生した非線形応答特性を補償するためのシステム及び方法を提供する。
【0037】
本発明による位相シフト偏向測定法で非線形応答特性を補償するためのシステムは、パターンを生成して、測定対象物1に投映するパターン発生部と、測定対象物1から反射される変形パターンの映像を獲得するディテクターと、前記パターン発生部と前記ディテクターで発生した非線形応答特性を補償する補償手段とを含む。
【0038】
図1は、位相シフト偏向測定法を用いた3次元形状測定システムの概略図である。本発明によるパターン発生部は、ディスプレイ機器のスクリーン10てあって、発生された正弦波パターンは、測定対象物1に投影される。そして、測定対象物1に反射されたパターンは、カメラ20からなるディテクターに入射されて、強度を測定することになる。また、分析手段は、該当カメラ20で測定された変形パターンから、位相を測定、分析することで、測定対象物1に対する3D形状を得ることになる。また、制御部は、スクリーン10とカメラ20とに連結されて、これらを制御する。
【0039】
本発明による補償手段は、スクリーン10とカメラ20より誘発された非線形成分による測定誤差を補償する。本発明による位相シフト偏向測定法において、デジタル装備であるスクリーン10とカメラで発生した非線形応答特性を補償するための方法として、2つのステップの過程を経ることになる。
【0040】
第1のステップでは、測定システムの応答特性を線形にするために、スクリーン10の画面パターンに、非線形応答特性を考えたルックアップテーブル(LUT)を設ける。これによって、システムの非線形応答特性をより線形に近づけて補い、次のステップでの測定誤差を減らすことになる。すなわち、本発明による補償手段により、スクリーン10及びカメラの非線形応答特性を考えたルックアップテーブル(LUT)を基に、非線形応答を線形化する。
【0041】
また、第2のステップでは、干渉計において、位相シフト誤差を減らすために広く使用しているAIAを適用して、非線形応答特性を補償する。位相シフト誤差で発生する誤差成分が、デジタル装備の非線形応答特性で発生するパターンの歪みと同様な誤差成分を誘発するため、これを用いて、位相の測定精度を高める。
【0042】
前記2つのステップの補償過程を経ると、位相シフト偏向測定法において、非線形応答特性による誤差なく、正確に位相を測定し、これによって、測定対象物1に対する3D形状を高い精度で測定することができる。
【0043】
以下では、各ステップの構成について、より詳しく説明することにする。
【0044】
第1のステップでは、前記スクリーン10及びカメラの非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを基に、非線形応答を線形化する。図2は、本発明の実施例により、スクリーン10の全画面の明るさを、最小値から最大値までの一定レベルに、カメラで測定された明るさ強度値を正規化して示す非線形応答特性グラフである。
【0045】
本発明の実施例による第1のステップによると、ルックアップテーブル(LUT)を設けるために、まず、スクリーン10及びカメラの非線形応答特性を実験的に求める。その後、適切な補償値をスクリーン10のパターンに反映して、全体としてシステムの応答特性が線形的となるように、正弦波に歪みを与える。
【0046】
より具体的に説明すると、スクリーン10の全画面の明るさを、最小値から最大値までの一定レベルに、グレースケールの明るさで表示するように設定する。例えば、スクリーン10の画面に、0から255のグレースケールに該当する明るさ値を与える。そして、測定対象物1を通じて反射されたイメージを、カメラにより格納し、測定された明るさ強度値は、図2に示しているように、正規化して示している。図3は、図2において、最小値と最大値をつなぐグラフを示しており、図4は、本発明の実施例により線形化された応答特性グラフを示している。
【0047】
前記測定された非線形応答特性グラフを基準に、カメラの測定強度が線形的となるように関数を生成する過程が、ルックアップテーブル(LUT)を作成することである。測定された非線形応答特性グラフにおいて、最小値(Imin)と最大値(Imax)を線形的につなぐ線形応答特性方程式を、下記式1のように生成する。
【0048】
【数1】
式中、Xは、入力で与えられる補償前のスクリーン明るさ値(X=0、1、2、3、4、 …、255)、αとβは、スクリーン明るさ値により線形応答特性となるようにする係数値であって、それぞれ、α=(Imax-Imin)/255、β=Iminで与えられ、これにより得られる正規化された線形応答特性モデル値は、Ylinear_modelとなる。
【0049】
そして、図3の逆関数応答特性を求めるために、入力を、正規化されたカメラ測定強度(normalized measured camera intensity)に、出力を、グレースケール明るさ値(gray scale value)に変えて、多次方程式(5次方程式)を、下記式2のように生成する。
【0050】
【数2】
式中、Ynor_meaは、前記カメラで測定された正規化された測定強度を表し、Xは、対応する補償前のスクリーン明るさ値となる。そして、a5、a4、a3、a2、a1、a0は、測定された非線形応答特性グラフを用いて得られる逆関数応答特性を、多次方程式(5次方程式)に整合したときに得られる係数値となる。
【0051】
式1及び式2を基に、前記カメラで測定される正規化された測定強度が線形応答特性となるように、スクリーンで入力すべき明るさ値は、式3で示される。
【0052】
【数3】
【0053】
【表1】
【0054】
すなわち、表1に示しているように、本発明の実施例によると、補償前のスクリーン明るさ値を与えると、図2のような応答特性を得ることになり、また、ルックアップテーブル(LUT)によって補償値を得、これを反映した補償後のスクリーン明るさ値を与えると、図4のような結果を得ることになる。
【0055】
ついで、本発明の実施例による第2の補償過程について説明する。第2の補償ステップは、本発明の実施例による補償手段により、非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償するためのことである。
【0056】
本発明の実施例による第2のステップの補償過程は、AIA位相シフトアルゴリズムを用いて、非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償することができる。図5は、本発明の実施例による位相シフト量の補償方法のフローチャートである。
【0057】
図5に示しているように、位相シフトアルゴリズムを適用することにおいて、非線形応答特性により発生した非線形位相シフト量を、繰返し演算によって補償することで、より正確に位相値を求める方法であって、このようなAIA位相シフトアルゴリズムは、先行非特許文献に記載されているものであって、干渉計でのみ適用された方法を、本発明の実施例による位相シフト偏向測定法に導入することを特徴とする。
【0058】
図5に示しているように、まず、任意の初期位相シフト値(initial phase shift)を決める(S1)。そして、このような位相シフト値を基に、位相分布(phase distribution)を演算する(S2)。また、該当演算された位相分布を基に、位相シフト値を更新する(S3)。
【0059】
また、更新された位相シフト値と、更新前の位相シフト値との差が、所定のた収束値以下であるか否かを判断し(S4)、収束値以下となるまで、ステップS2及びS3の演算を繰返す。このような繰返し演算によって、収束された位相シフト値を最終的に補償することになる(S5)。
【0060】
前述したように、本発明の実施例によると、位相シフト偏向測定法において、デジタル装備(スクリーン、カメラ)で発生した非線形応答特性を補償することができる。すなわち、本発明の実施例による位相シフト偏向測定法を用いた対象物形状測定において、非線形応答特性を補償するための方法によると、第1のステップでは、測定システムの応答特性を線形にするために、スクリーンのパターンに、非線形応答特性を考えたルックアップテーブルを設けて、システムの非線形応答特性をより線形に近づけて補い、第2のステップでは、干渉計において、位相シフト誤差を減らすために広く使用しているAIA位相シフトアルゴリズムを適用して、非線形応答特性で発生した位相シフト量を補償し、位相シフト偏向測定法において、非線形応答特性による誤差なく、正確に位相を測定し、これによって、測定対象物に対する3D形状を高い精度で測定することができることになる。
【符号の説明】
【0061】
1:測定対象物
10:スクリーン
20:カメラ
図1
図2
図3
図4
図5