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特許7001836イモーテルの精油及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物を含む化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-28
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】イモーテルの精油及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20220113BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220113BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/63
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/368
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/39
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020550733
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 FR2019050618
(87)【国際公開番号】W WO2019180368
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】1852359
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517121892
【氏名又は名称】ラボラトワール・エム・アンド・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・セニーソ
(72)【発明者】
【氏名】シャルリーヌ・コンベ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・ルメール
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ポルテ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルジニー・ルケ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-016077(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2975006(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第3003167(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/05
A61K 36/07-36/9068
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
C11B 1/00-15/00
C11C 1/00-5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、イモーテルの精油及びイモーテル蒸留残渣の油性抽出物を含み、
前記イモーテル蒸留残渣の油性抽出物がステロール;2-(Z)-デセン酸及び4-(Z)-デセン酸を含む、飽和又は不飽和の直鎖状C~C10カルボン酸;安息香酸;及び、飽和又は不飽和の直鎖状C~C18脂肪酸のエチルエステルを含む、化粧品組成物。
【請求項2】
前記の精油及び油性抽出物の調製に使用されるイモーテルが、独立に、ヘリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)、ヘリクリサム・アレナリウム(Helichrysum arenarium)、及びヘリクリサム・ストエカス(Helichrysum stoechas)の種から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記の精油及び油性抽出物の調製に使用されるイモーテルが、ヘリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
イモーテルの精油が、その植物の地上部から得られたものであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記の植物の地上部が、花または頭状花であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
イモーテル蒸留残渣の油性抽出物が、溶媒中に希釈されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記の溶媒がカプリル酸トリグリセリドであることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
イモーテルの精油が、組成物の総質量に対して、0.001~5質量%であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
イモーテルの精油が、組成物の総質量に対して、0.001~1質量%であることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
イモーテル蒸留残渣の油性抽出物が、組成物の全質量に対して0.001~5質量%であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
イモーテル蒸留残渣の油性抽出物が、組成物の全質量に対して0.001~1質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
皮膚老化、皮膚の薄化、皮膚の粗さ及び/又は肌の輝きの喪失の発症を遅らせ、進行を低減し、又は徴候の強さを低減させるための;または乾燥肌の予防又は処置のための、請求項1~1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記の皮膚老化が、皮膚のしわ、たるみ、皮膚の柔軟性及び/又は弾性の喪失からなる、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イモーテルの精油(エッセンシャルオイル)及びイモーテル蒸留残渣の油性抽出物を含有する化粧品組成物、並びにスキンケア、特に皮膚の老化の徴候と戦うためのその組成物の化粧用途での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
男性及び女性は現在、できるだけ長く、若く見えることを望む傾向があり、その結果、特にしわや小じわを生じさせる皮膚の老化の痕跡をぼかすことを求めている。
【0003】
皮膚は2つの部分から構成されている。1つは表層である表皮であり、もう1つはより深部の真皮であり、これらは相互に作用している。天然の人間の表皮は3つの細胞タイプから主に構成されており、それらはケラチノサイト(これが非常に圧倒的に多い)、メラノサイト、及びランゲルハンス細胞である。これらの細胞タイプのそれぞれは、それらの特定の機能により、皮膚が身体で果たす根本的な役割、特に「バリア機能」よばれる外部からの攻撃から身体を保護する役割において貢献している。
【0004】
表皮は、通常、表皮の胚芽層を構成するケラチノサイトからなる基底層、胚芽層の上にある多面体細胞のいくつかの層からなる「有棘」層、明確な細胞質封入体、ケラトヒアリン顆粒を含む扁平な細胞からなる1~3の「顆粒」層、及び最後に、分化の最終段階にあり角質細胞とよばれるケラチノサイトの層の集まりからなる角層(horny layer)あるいは角質層(stratum corneum)に分けられる。表皮においては、角質層中での表皮細胞の継続的な損失を補うために、新しいケラチノサイトが常に生成されている。皮膚のホメオスタシス、特に表皮のホメオスタシス(恒常性)は、皮膚細胞の増殖と分化プロセスの間の微調整されたバランスから生じる。これらの増殖及び分化プロセスは完全に制御されており、これらは、皮膚の更新及び/又は再生に関与し、皮膚の一定の厚さ、特に表皮の一定の厚さの維持をもたらす。皮膚の恒常性は、皮膚の機械的特性の維持にも関与している。
【0005】
しかしながら、表皮の更新の速度及び質は、皮膚が受ける物理的及び化学的攻撃、並びにまた老化によって常に変化している。
【0006】
したがって、ケラチノサイトの細胞活力は、特に老化との関連において、あるいは、酸化ストレス(例えば、太陽光放射、すなわちUV、可視、赤外線、青色光放射)のために、ミクロフローラ(微生物叢)の毒素又は代謝産物による表皮への攻撃のために、あるいはより一般的には、経時的な老化のあいだに低下する可能性がある。具体的には、表皮の再生能力はそれほどではなくなり、すなわち、基底層の細胞はあまり活発に分裂せず、そのことが、表皮の再生が遅くなること及び/又は低下することをもたらし、表面において除去された細胞の損失をもはや埋め合わせることはない。このことは、表皮の萎縮及び/又は皮膚の厚さの低下をもたらす。表皮の恒常性(ホメオスタシス)の障害はまた、顔色の鈍さ及び/又は色のさめた外観をもたらす。バリア機能の障害も観察され、それは場所に応じてのさまざまな兆候を通して現れる:すなわち、乾燥肌、角質増殖症、薄い表皮、薄い唇、表面のしわ。
【0007】
加齢とともに観察される皮膚バリアの障害は、さらに、表皮における細胞凝集の緩みに関連しており、これは表皮の弱まりと脱水につながる。ケラチノサイトの分化及び接着に関与するタンパク質の発現の増加は、皮膚バリアの形成及び漏れ防止性を促進し、このことが一方では皮膚の水和を維持し、他方では外部の攻撃に対して皮膚を保護し、その老化に対抗することを可能にする。そのような遺伝子は特にトランスグルタミナーゼ1(TGM1)をコードする遺伝子であり、これは、角質エンベロープの前駆体と細胞膜との間の結合を触媒することができ、かつ表皮分化において重要な役割を果たす酵素である。
【0008】
皮膚の老化の兆候の開始を遅らせ、又はその進行を遅くし、さらに乾燥肌を防止又は処置(治療)するために、基底細胞プールに実質的な影響を及ぼすことなく表皮分化を増やすことを可能にする化粧品組成物を有する利点がしたがって理解される。
【0009】
本出願人は、イモーテルの水性抽出物及び油性抽出物と組み合わせて、バリア機能を強化するために、テルペン化合物が豊富なイモーテルのエッセンシャルオイル(精油)を使用することを既に提案している(国際公開第2012/153064号)。イモーテルの油性抽出物は、例えば、マイクロ波抽出によって得られ、少なくとも99質量%の脂肪酸及び0.2~0.5質量%の植物ステロールを含むことを特徴とする。
【0010】
フランス国特許出願公開第2819718号明細書には、植物由来のトリグリセリド(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)からなる溶媒の存在下で、超臨界COを用いた抽出によって得られる、植物、特にイモーテルの脂質抽出物が記載されている。溶媒の除去及びワックス状化合物の添加後、この脂質抽出物は、レチノイン酸に結合する細胞タンパク質をコードし、また内皮増殖因子(VEGF)をコードするCRABP-II遺伝子の発現を増加させることによってレチノイン酸のように細胞分化に作用したこと、及びこの抽出物がケラチノサイトの分裂(増殖)を刺激したことが示されている。一方で、その脂質抽出物は、表皮分化中に通常発現されるタンパク質、例えばトランスグルタミナーゼ1(TGM1)をコードする遺伝子の発現を阻害する(-61%)ことが強調されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2012/153064号
【文献】フランス国特許出願公開第2819718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の概要
これに関連して、本出願人は、全く驚くべきことに、イモーテルの精油をイモーテル蒸留残渣から特に得られるイモーテルの油性抽出物と組み合わせたときの、表皮分化を調節する遺伝子の相乗的な刺激作用、特にTGM1タンパク質をコードする遺伝子の発現の増加を実証している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本出願人は、イモーテルの蒸留残留物の油性抽出物とイモーテルの精油との組み合わせが、トランスグルタミナーゼ1、サイトケラチン10、インボルクリン、フィラグリン、カテプシンL2、及びロリクリンによって構成される分化マーカーの発現の相乗的増加をもたらすことを実証している。したがって、出願人は、上記の組成物は、乾燥肌及び/又は皮膚に対する老化の兆候に対抗する有効な化粧品組成物を処方することを可能にすると考えた。
【0014】
これに関連して、本発明の主題は、イモーテルの精油(エッセンシャルオイル)及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物を含み、そのイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物がステロール(sterols);2-(Z)-デセン酸及び4-(Z)-デセン酸を含む、飽和又は不飽和の直鎖状C~C10カルボン酸;安息香酸;並びに、飽和又は不飽和の直鎖状C~C18脂肪酸のエチルエステルを含む、化粧品組成物である。
【0015】
本発明の主題はまた、皮膚の老化の兆候、特にしわ、皮膚のたるみ、皮膚の柔軟性の及び/又は弾力性の喪失、皮膚の薄化、肌荒れ、及び/又は肌の輝きの喪失の発症を遅らせ、進行を抑制し、又はその兆候の強さを弱めるため;あるいは乾燥肌を防止又は処置するための、上記組成物の非治療的使用である。
【0016】
本発明の主題はまた、皮膚の老化の兆候、特に皮膚のしわ、たるみ、皮膚の柔軟性の及び/又は弾力性の喪失、皮膚の薄化、肌荒れ、及び/又は肌の輝きの喪失の発症を遅らせ、進行を抑制し、又はその兆候の強さを弱めるため;あるいは乾燥肌を防止又は処置するための化粧方法であり、その方法は、上記組成物を皮膚に局所適用することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本発明は、イモーテルの精油(エッセンシャルオイル)及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物を使用する。
【0018】
精油(エッセンシャルオイル)及び蒸留残渣の油性抽出物を調製するために独立に使用できるイモーテル種の中で、ヘリクリサム(Helichrysum)属に属する全ての種、特にヘリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)(あるいはヘリクリサム・アンガスチフォリウムD.C(Helichrysum angustifolium D.C)(これは カレープラントである)、ヘリクリサム・アレナリウム(Helichrysum arenarium)(これはサンディーイモータル(sandy immortal)である)、及びヘリクリサム・ストエカス(Helichrysum stoechas)(あるいは一般的には永久花(everlasting flower))が挙げられるが、これらに限定されない。亜種にかかわりなく、ヘリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)の精油が優先的に使用される。
【0019】
ここでの説明において、「精油」(エッセンシャルオイル)という用語は、イモーテルの任意の部分又はその植物全体の任意の部分、さらに特にその地上部、例えばその花あるいは頭状花に存在する揮発性有機化合物の水蒸留又は水蒸気蒸留の生成物を意味することを意図している。これらのプロセスでは、植物中に含まれている香気分子は放出されて、植物が添加された水を沸騰させること(従来の水蒸留)によって形成され、又は植物中に含まれる水を沸騰されること(マイクロ波蒸留、任意選択によって真空下で)によって形成され、あるいはボイラーによって提供されて植物を通して循環させられたスチームに、機械的に同伴される。本発明にしたがって使用される精油をハイドロレート(hydrolate)(あるいはフローラルウォーター)から分離するために、蒸留物を次にデカンテーションする。蒸留残渣を構成する固形物残渣は回収して、これも本発明において使用されるイモーテル蒸留残渣の油性抽出物を調製するために処理することができる。
【0020】
イモーテルの精油は、本発明による組成物の総質量に対して、有利には0.001~5質量%、優先的には0.001~1質量%である。
【0021】
この組成物においては、イモーテルの精油は、イモーテル蒸留残渣の油性抽出物と組み合わされる。「蒸留残渣」という用語は、イモーテルの任意の部分の水蒸留又は水蒸気蒸留、並びに精油及び生成されたハイドロレートの分離の後に残る固体残留物を意味することを意図している。蒸留残渣の油性抽出物は、油を抽出する任意のプロセスによって、より具体的には、二酸化炭素、一酸化窒素、ジメチルエーテル、プロパン、エチレン、又はメタノールなど(これらに限定されない)の超臨界流体を使用しての蒸留残渣の抽出によって得ることができる。超臨界状態の二酸化炭素を使用することが好ましい。当業者は、抽出パラメータ、特に、流体の温度、圧力、及び流量を、所望の抽出速度及び収率の関数としてどのように調整するか知っているであろう。例えば、超臨界COによる抽出は、250~300バールの圧力及び40~80℃、好ましくは50~70℃の温度で実施することができる。抽出後、超臨界流体は減圧によってガス状態に戻され、通常はリサイクルされる。このようにして得られた植物抽出物は、次に、有利には、抽出物中に存在する不鹸化化合物を濃縮するために、例えば180~250℃、好ましくは200~220℃の温度において分子蒸留工程にかけられる。この分子蒸留工程の前に、植物抽出物は、任意選択で、植物油、特にひまわり油などの植物油に基づく油溶媒中に希釈することができる。この油性溶媒は、分子蒸留工程中に除去される。特に30~50質量%、より特に35~45質量%の不鹸化化合物、及び1~10質量%、より特に3~7質量%のステロール、不可欠なベータ-シトステロールを含む蒸留物はこのようにして得られる。
【0022】
超臨界流体を使用して得られた抽出物又は分子蒸留工程から得られた蒸留物は、その取り扱いを容易にするために、任意選択により、1~10質量%、例えば特に3~5質量%の濃度で、溶媒中に希釈することができる。化粧品に使用できる全ての油性溶媒をこの目的に使用でき、それは特に脂肪酸トリグリセリド、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドである。
【0023】
本出願人は、質量分析と結合されたガスクロマトグラフィーによって、イモーテル蒸留残渣の油性抽出物の特性分析をした。したがって、本発明に従って使用されるイモーテル蒸留残渣の油性抽出物は、その組成の点で、イモーテル頭状花から超臨界COを用いて得られた抽出物とは、それが実質的に全く(すなわち、10質量%未満、又はさらに5質量%未満、又はさらには2質量%未満)、あるいは完全に全く、パルミトレイン酸、リナロール、2-デセナール、2-トリデカノン、ヘプタデカン、8-ヘプタデセン、イソ酪酸、イソ吉草酸、ヘキサデセノール、ラウリン酸、ペンタデカン酸、デカン酸、及びイソステアリン酸を含まないという事実によって異なることが実証されている。逆に、本発明に従って使用されるイモーテル蒸留残渣の油性抽出物は、イモーテル頭状花から超臨界COで得られた抽出物中において特定されていない成分、すなわち、2-(Z)-デセン酸の及び4-(Z)-デセン酸のメチルエステルを含む。さらに、イモーテルの精油と比較して、本発明に従って使用されるイモーテル蒸留残渣の油性抽出物は、ステロール類、本質的にベータ-シトステロール、飽和又は不飽和の直鎖状C~C10カルボン酸(特に、ヘプタン酸、オクテン酸、及びデセン酸)のメチルエステル、安息香酸のメチルエステル、及び飽和又は不飽和の直鎖状C~C18脂肪酸のエチルエステル(特に、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、及びリノール酸エステル)を含む。
【0024】
このような抽出物は、特に、INCI名:ヘリクリスムイタリクム花/茎エキスで特定される。
【0025】
イモーテル蒸留残渣の油性抽出物は、本発明による組成物の総質量に対して、有利には0.001~5質量%、好ましくは0.001~1質量%である。
【0026】
以下の実施例から明らかになるように、本発明による植物抽出物の組み合わせは、表皮分化の調節に関与する遺伝子の発現を相乗的に活性化することを可能にすることが実証されている。
【0027】
ここでの説明との関連で、「相乗効果」という用語は、本発明による抽出物の組み合わせを使用して得られる効果が、その2つの抽出物のいずれか1つを使用して得られる効果よりも著しく大きく、場合により、それぞれの抽出物によって生み出される効果の合計よりも大きいことを意味することを意図している。
【0028】
上述した組み合わせは、生理学的に許容可能な媒体、特に化粧品として許容可能な媒体、すなわち、化粧品としての使用に適合しないヒリヒリ感又は発赤を生じさせない媒体、を含む化粧品組成物中に含有される。この媒体は、好ましくは、水相及び脂肪相を含む(脂肪相は、一般に、イモーテルの精油及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物を含む)。組成物は、好ましくは、水中油型又は油中水型エマルションの形態、あるいは水中油型分散液の形態である。
【0029】
水相は、水を含み、かつ任意選択により、ポリオール及び水性ゲル化剤から選択される少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。水は、有利には、組成物の総質量の40~80%、例えば50~70%である。ポリオールは、特に、グリセロール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、及びそれらの混合物から選択することができ、組成物の総質量の5~30%、好ましくは15~25%であることができる。
【0030】
「水性ゲル化剤」という用語は、水和することによって水分子を固定化し、そうして水相の粘度を増加させることができるポリマー化合物を意味する。そのようなゲル化剤は、多糖類、例えば、セルロース及びその誘導体、加工デンプン、カラギーナン、寒天、キサンタンガム、及び植物ガム、例えば、グアーガムまたはローカストビーンガム;合成ポリマー、及び特に任意選択により架橋されていてもよいアクリル酸ナトリウムホモポリマー、及びアクリルコポリマー、特に、アクリル酸ナトリウム及び/又は(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル及び/又は(メタ)アクリル酸(ポリエトキシ)アルキルの、それらと場合によっては少なくとも1つの他のモノマー、有利には、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とのコポリマー(これらのコポリマーは任意選択により架橋されていてもよい)、並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0031】
その一部として、脂肪相は、1つ以上の揮発性及び/又は不揮発性油を含んでいてもよい。揮発性油の例は、分岐C10~C13アルカン、例えば、イソドデカン、及び直鎖状C10~C13アルカンである。不揮発性油として、特に以下のものが挙げられる:
- 酸とモノアルコールのエステルであって、以下から選択されるもの:飽和直鎖状C~C10(好ましくはC~C10)酸と飽和直鎖状C10~C18(好ましくはC10~C14)モノアルコールとのモノ及びポリエステル、飽和直鎖状C10~C20酸と分岐状又は不飽和C~C20(好ましくはC~C10)モノアルコールとのモノ及びポリエステル;分岐状又は不飽和C~C20酸と分岐状又は不飽和C~C20モノアルコールとのモノ及びポリエステル;分岐状又は不飽和C~C20酸と直鎖状C~Cモノアルコールとのモノ及びポリエステル;
- C~C12脂肪酸トリグリセリド、例えば、カプリル酸及びカプリン酸トリグリセリド並びにトリヘプタノイン;
- 分岐状及び/又は不飽和C10~C20脂肪酸(例えば、リノール酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸);
- 分岐状及び/又は不飽和C10~C20脂肪アルコール(例えば、オクチルドデカノール及びオレイルアルコール);
- 炭化水素、例えばスクアラン(C30)、特にオリーブオイルから抽出された植物スクアレン、及びヘミスクアラン(C15);
- 炭酸ジアルキル、例えば、炭酸ジカプリリル及び炭酸ジエチルヘキシル;
- ジアルキルエーテル、例えば、ジカプリリルエーテル;並びに
- それらの混合物。
上記の成分の1つ以上を含有する植物油も挙げることができる。
【0032】
酸及びモノアルコールのエステルとして、特に、ココカプリン酸エステル及びカプリル酸エステルの混合物、マカダミン酸エチル、シアバターエチルエステル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸ヘキシル、ネオペンタン酸エチルヘキシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸イソデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソアミル、ノナン酸セトステアリル、カプリル酸プロピルヘプチル、及びそれらの混合物などのモノエステルを挙げることができる。使用できる他のエステルは、酸とモノアルコールとのジエステル、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジエチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、及びセバシン酸ジイソアミルである。
【0033】
植物油の例は、特に、小麦胚芽、ヒマワリ、アルガン、ハイビスカス、コリアンダー、グレープシード、ゴマ、トウモロコシ、アプリコット、ヒマ、シア、アボカド、オリーブ油及び大豆油、スイートアーモンド油、及びヤシ(パーム)、菜種、綿実、ヘーゼルナッツ、マカダミア、ホホバ、アルファルファ、ポピー、カボチャ、ゴマ、マロー、ブラックカラント、月見草、ラベンダー、ボラージ、キビ、大麦、キノア、ライ麦、ベニバナ、キャンドルナッツ、パッションフラワー、ムスクローズ、エキウム、カメリナ、又はカメリアオイルである。
【0034】
脂肪相はまた、少なくとも1つの脂肪相構造化剤を含み得る。「脂肪相構造化剤」という用語は、特に、ワックス、脂肪相ゲル化剤、及びペースト状脂肪物質、並びにそれらの混合物から選択される、組成物中に含まれる油を増粘できる化合物を意味することを意図している。
【0035】
1つの好ましい実施形態によれば、この組成物はまた、イモーテルの抽出物以外の少なくとも1つの抗老化活性剤、特に、皮膚のしわ、たるみ、及び/又は色素沈着斑の予防及び/又は処置に適した活性剤を含み、それは特にフリーラジカルスカベンジャー、ケラチノサイト及び/又は線維芽細胞の分化及び/又は増殖を刺激する薬剤;グリコサミノグリカン及び/又はコラーゲン及び/又は皮膚表皮固定線維及び/又は弾性線維の合成を刺激する薬剤;コラーゲン及び/又はグリコサミノグリカン及び/又は皮膚表皮固定線維及び/又は弾性線維の分解を防止する薬剤;抗糖化剤;色素消失剤及び/又はメラニン形成阻害剤;並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0036】
そのような老化防止活性剤の例は、特に以下のものである:アスコルビン酸、その塩、そのエーテル、及びそのエステル、特にアスコルビルグルコシド;アデノシン;リボース;蜂蜜エキス;特にスイートアーモンドから抽出されたタンパク質及び糖タンパク質;加水分解された植物タンパク質、特に米から、ハイビスカスの種子から、又はルピナスからのもの;ポリペプチド及び疑似ジペプチド、例えば、塩酸カルシニン、パルミトイルペンタペプチド-4(Pal-Lys-Thr-Thr-Lys-Ser)、パルミトイルトリペプチド-38、特にSederma社からMatrixyl(登録商標)3000及びMatrixyl(登録商標)Synthe’6の商品名でそれぞれ販売されているもの、Lucas Meyer社からNutrazen(登録商標)の商標で販売されているパルミトイルトリペプチド-8、Lipotec社からLeuphasyl(登録商標)Solutionの商標で販売されているペンタペプチド-18、Sandream社からNeoendorphin(登録商標)の商標で販売されているsh-decapeptide-9、及びInfinitec社から参照名X50 Myocept(登録商標)Powderで販売されているパルミトイルヘキサペプチド-52;シラン類、例えば、マンヌロン酸メチルシラノール;アラビノキシラン、特にライ麦粉から抽出されたもの;ガラクトアラビナン、特にカラマツからのもの;ヒアルロン酸及びその塩;特にミモザから抽出されたポリフェノール;レモンから抽出されたものを含めた、アルファヒドロキシ酸;ミツガシワ、ワイルドパンジー、スギナ、オランダセンニチ(Acmella oleracea)、ゴロツキアザミ(Onopordum acanthium)、セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium、特にBASF社の製品Neurobiox(登録商標)に含まれている)、エムベリア(Embelia concinna、Seppic社から販売されている)、オオガタホウケン(Opuntia ficus indica、特にMibelle AG Biochemistry社からAquaCacteen(登録商標)の商品名で販売されている)、セージ(Salvia officinalis、特にProvital Groupから販売され
ている)、ニンジンボク(Vitex negundo)(特にLaboratoires Expanscience社から商品参照名Neurovity(登録商標)で販売されている)、栗(sweet chestnut)、パパイヤ、アルガンツリー、オート麦、ヒマワリ、デイジー、牡丹/シャクヤク(peony)、又はディルなどの植物の抽出物(通常は水性抽出物);藻類、特に、サンゴモの、ジャニア・ルーベンス(Jania rubens)の、ウンガリア・ピナティファダ(Ungaria pinnatifada)の、アラリア・エスクレンタ(Alaria esculenta)の、又はナンノクロロシス・オクラタ(Nannochlorosis oculata)の水性抽出物;精油(エッセンシャルオイル)、特にギンバイカ(myrtle)の精油;グルコン酸亜鉛、及び/又はグルコン酸銅;並びにそれらの混合物。
【0037】
変形として、又は加えて、本発明に従って使用される組成物は、少なくとも1つの引き締め剤を含み得る。それは、力学的作用により皮膚を引き締めることができ、したがってしわ及び小じわの外観を低減することができる引き締めポリマー(tensioning polymer)、特に多糖類、特に藻類の又は海洋プランクトンの又は植物ガムの抽出物であり得る。それはまた、ボトックス様タイプの生物学的に作用する引き締め剤、例えば、Gattefosse社によってGatuline(登録商標)Expressionの名称で販売されているアクメリア・オレラセア(Acmella oleracea)の抽出物;BASF BCS社によってMyoxinol(登録商標)LS9736の名前で販売されているハイビスカス種子の抽出物;又はLipotec社によってArgireline(登録商標)の名前で販売されているアセチルヘキサペプチド-8タイプのペプチドであってもよい。
【0038】
本発明による組成物はまた、それらが皮膚への局所適用と適合性であるという条件で、エマルションの脂肪相中及び/又は水相中に分散することができる様々な成分を含んでもよい。
【0039】
したがって、組成物は、少なくとも1つの水中油型又は油中水型乳化剤を含んでいてもよく、それは一般に非イオン性であって、例えば、ポリオキシエチレンエステル、任意選択によりポリオキシエチレン化されていてもよいソルビタンエステル、任意選択によりポリオキシエチレン化されていてもよい脂肪酸及びグリセロールのエステル、脂肪酸のエーテル及び糖のエーテル、例えば、 アルキルグルコシド、並びにそれらの混合物である。乳化剤は、組成物の総質量の2~10%、好ましくは4~6%を占めることができる。
【0040】
本発明による組成物はまた、1つ又は複数の粉末状充填剤も含むことができ、それは有利には多孔質又は中空の形態、好ましくは多孔質の微粒子の形態である。これらの微粒子は原則として実質的に球形である。これらのフィラーは、特に以下のものから選択してよい:
- 有機充填剤、例えば:多糖類粉末、特に天然デンプン粉末、加工デンプン粉末、又はセルロース粉末;ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリルポリマーの、ポリアミドの、又はポリオレフィンの粉末;コラリナ・オフィシナリス(Corallina officinalis)などの乾燥された藻類の粉末;
- 無機充填剤、例えば、シリカ、粘土、パーライト、及びタルク;
- 並びにそれらの混合物。
【0041】
シリカが無機充填剤として好ましく使用される。
【0042】
これらの充填剤(フィラー)は、組成物の総質量に対して1~5質量%を占めることができる。
【0043】
本発明による組成物は、特に、有機及び/又は無機光保護剤、青色光及び/又はUVA及び/又はUVBにおいて活性である薬剤;汚染防止保護フィルムを形成することができる多糖類ベースのフィルム形成ポリマー、例えば、Pollustop(登録商標)及びSolashield(登録商標)の商品名でSolabia社から販売されている製品;落屑剤、例えば、α-及びβ-ヒドロキシ酸;角質除去粒子;香料;抗酸化剤;金属イオン封鎖剤;pH調整剤;保存剤;顔料;染料;及びそれらの混合物から選択される添加剤を含むこともできる。
【0044】
この組成物は、皮膚への局所適用に適した任意の形態、特に、ミルク、クリーム、ローション、ゲル、ペースト、又はフィルムの形態であり得る。組成物は、一般に、リーブオン(leave-on)組成物、特に、ケア組成物、メーキャップ組成物、例えばファンデーション、又は日焼け防止組成物である。
【0045】
本発明による組成物は、皮膚の老化及び/又は乾燥肌の兆候を示す個人(例えば、少なくとも30歳、又はさらには40歳)の身体の少なくとも1つの領域、より具体的には、顔、首、及び/又はネックラインに適用することができる。変形として、組成物は手に適用できる。さらなる変形として、組成物は、皮膚の老化の兆候及び/又は乾燥肌と闘うために、体全体、特に、胸部、腕、脚、及び腹部に適用することができる。
【0046】
この組成物は、処置をされる領域に、1日に1回又は複数回、例えば、朝及び/又は晩に適用することができる。
【0047】
変形として、本発明による組成物は、スキンケアのため、特に顔及び任意選択で場合によっては身体に使用されるリンスオフ(rinse-off)組成物であり得る。この場合、組成物は、例えば、スクラブペースト又はマスクとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、非処理対照と比較した、本発明による組成物で処理された培養物中においてケラチノサイトによって発現される、フィラグリン(FLG)、カテプシン2(CSTL2)、及びロリクリン(LOR)をコードする遺伝子の発現レベルを示す。
図2図2は、非処理対照と比較した、本発明による組成物で処理された培養物中においてケラチノサイトによって発現される、トランスグルタミナーゼ1(TGM1)、サイトケラチン10(KRT10)、及びインボルクリン(IVL)をコードする遺伝子の発現レベルを示す。
図3図3は、非処理対照と比較した、本発明による組成物で処理された培養物中でケラチノサイトによって発現される、Ki-67モノクローナル抗体(MKI67)、β1インテグリン(ITGB1)、及びα6インテグリン(ITGA6)によって識別される抗原をコードする遺伝子の発現レベルを示す。
【実施例
【0049】
本発明は、以下の実施例に照らしてより明確に理解されるであろう。これらの実施例は、単に説明のために与えられ、添付する特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0050】
実施例1:ヒトケラチノサイトの初代培養に対するインビトロ試験:表皮分化に対する本発明による組み合わせ物の効果
【0051】
1.材料と方法
以下の試験では、植物の頭状花から水蒸気蒸留によって得られたヘリクリサム・イタリカム(Helichrysum italicum)の精油、及び水蒸気蒸留残渣から得られたイモーテル蒸留残渣の油性抽出物を使用する。この抽出物は、60℃の温度及び285バールの圧力において超臨界COを用いて残留物(蒸留残渣)を抽出することによって調製した。このようにして得られた不鹸化化合物をひまわり油で希釈し、次に200℃において分子蒸留工程にかけ、得られた留出物をカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドで3~5質量%の量に希釈することにより標準化した。
【0052】
a)細胞培養
乳房生検の女性ドナーに由来する初代培養のケラチノサイトを、96ウェルプレート(Nunc)に、1ウェルあたり12,000細胞の割合で、50μg/mlの下垂体抽出物(Gibco)、5 mg/mlのEGF(上皮成長因子、Gibco)、及び100 μg/mlのノルモシン(Invivogen)を添加したケラチノサイト無血清培地(KSFM、Gibco)中に播いた。その細胞を37℃、5%CO2において3日間培養し、その後、イモーテル蒸留残渣の油性抽出物、イモーテルの精油、及びそれらの組み合わせ物で処理した。
【0053】
b)イモーテルの精油、イモーテル蒸留残渣の油性抽出物、及びそれらの組み合わせ物の細胞毒性
72時間の培養後、0.0005%のイモーテルの精油、0.001%のイモーテル蒸留残渣の油性抽出物、及びそれらの組み合わせ物の非存在下又は存在下で培地を交換した。各濃度について、培養は6つの同一のウェルで行った。
培養物を4日間維持し、試験化合物を含む培地を、培養期間にわたって3回(毎日)交換した。
4日間の培養後、培養液を取り除き、XTT(2,3-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)カルボニル] -2H-テトラゾリウムのナトリウム塩)の溶液を含む培地に交換した。細胞をこの溶液で37℃及び5%CO2において2時間インキュベートした。
インキュベーション期間の最後に、Varioskan(登録商標)マイクロプレートリーダーを使用して、吸光度を450 nmにて測定した。
細胞生存率は以下の方法で計算した:
生存率%=(処理ありのODの平均-ブランク)/(処理なしのODの平均-ブランク)×100
毒性閾値は、処理なしの対照の値の85%に設定した。
【0054】
c)RNA抽出
細胞生存率について吸光度を測定した後、XTT溶液を含む培地を除去し、1%のβ-メルカプトエタノール(VWR)を含むバッファー(RLTバッファー、Qiagen)と交換した。 細胞を、溶解した後に-80℃で凍結させた。リアルタイムPCR分析を実施するのに十分なRNAを得るために、条件ごとに3つのウェルをプールし、RNaseyミニキット(Qiagen)のプロトコルに従って、ゲノムDNA除去するためのDNase Iとのインキュベーションとともに、2つの異なるRNA抽出を行った。RNAの量はNanoView分光光度計を使用して測定し、RNAの質はBioanalyzer 2100(Agilent Technologies)を使用したマイクロキャピラリー電気泳動によって検証した。
【0055】
d)逆転写PCR
「AffinityScript QPCR cDNA合成キット」(Agilent Technologies)を使用して、400 ngのRNAをcDNAに逆転写した。リアルタイムPCRは、MXP 3005システム(Agilent technologies)を使用して、各条件ごとに2回ずつ実施した。使用した増幅キットは、Brilliant III Ultra-Fast SYBR Green QPCR Master Mix(Agilent Technologies)だった。
使用したプライマーは、Bio-Radからのものだった:トランスグルタミナーゼ1(TGM1、qHsaCED0056475)、ケラチン10(KRT10、qHsaCED0034304)、インボルクリン(IVL、qHsaCED0046054)、フィラグリン(FLG、qHsaCED0036604)、カテプシン2(CSTL2、qHsaCED0044736)、ロリクリン(LOR、qHsaCED0048415)、β1インテグリン(ITGB1、qHsaCED0005248)、及びα6インテグリン(ITGA6、qHsaCED0042632)。
2つのハウスキーピング遺伝子、TATAボックス結合タンパク質(TBP、qHsaCID0007122)及びリボソームタンパク質L13a(RPL13A、qHsaCED0045063)を使用して、目的の遺伝子の発現を規格化した。
【0056】
2.結果
別々に試験した抽出物、及びまたそれらの混合物は、いかなる細胞毒性も示さない(細胞生存率>85%)ことが示された。
さらに、表皮の分化に関与する遺伝子の発現とバリア機能(TGM1、KRT10、IVL、FLG、CSTL2、及びLOR)は、別々にとった各抽出物と比較して、2つの抽出物(イモーテルの精油及びイモーテルの蒸留残渣の油性抽出物)の組み合わせを使用して相乗的に大きくなった。これらの遺伝子の発現は、この組み合わせを用いて3~24倍に増加するが、これらの遺伝子はそれぞれの抽出物によって実質的に過剰発現されることはない。この効果は、ロリクリンをコードする遺伝子について特に顕著であり、インボルクリンをコードする遺伝子についてはそれほど顕著ではなく、これらは、表皮のバリア機能に関与する角質化したエンベロープの形成のために必須の不溶性及び可溶性タンパク質であり、それらはカルシウム依存性酵素であるTGM1によって互いに結合されている。フィラグリンをコードする遺伝子の非常に強い過剰発現も観察され、フィラグリンは角質層をも構成するケラチンフィラメントと天然保湿因子(NMF)の前駆体との間のセメントを構成する。
【0057】
さらに、図3から明らかなように、未分化ケラチノサイト(ITGA6及びITGB1)のマーカーの発現にいかなる変化も見られず、このことは、特に本発明の組み合わせ物が増殖性細胞の一定のプールを維持し、表皮の再生を確実にすることを示唆している。
【0058】
したがって、この例は、本発明による組み合わせ物が、皮膚の老化に効果的に対抗し、かつ皮膚のバリア機能を強化することを可能にすることを実証している。
【0059】
例2:化粧品の構成
以下の組成物は、示された質量比率で以下の成分を混合することによって、当業者により従来の方法で調製される。
【表1】
図1
図2
図3