(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】飛行体、吸引システム及び吸引方法
(51)【国際特許分類】
B64D 1/22 20060101AFI20220113BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20220113BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B64D1/22
B64C39/02
G01N1/02 A
(21)【出願番号】P 2020113337
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】田爪 敏明
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108528718(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110646422(CN,A)
【文献】特開2020-059333(JP,A)
【文献】特開2018-136315(JP,A)
【文献】特開平10-084816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 1/22
B64C 39/02
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転によって飛行するための空気流を発生させる回転翼と、
対象物を採集可能な採集容器と、
前記回転翼の回転方向を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、飛行時の回転方向とは逆の方向に前記回転翼を回転させることで前記採集容器に向かう吸引流を発生させる飛行体。
【請求項2】
前記採集容器は、前記回転翼の下方に配置される請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記制御部は、着陸した状態で前記吸引流を発生させる請求項1又は2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記回転翼は複数配置され、
前記制御部は、前記吸引流を発生させながら、複数の前記回転翼のうち少なくとも1つを飛行時の回転方向に回転させる請求項1から3の何れかに記載の飛行体。
【請求項5】
前記制御部は、飛行するための制御を行う飛行モードと前記吸引流を発生させて対象物を前記採集容器に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部を有し、
前記モード選択部によって前記採集モードが選択されると、前記制御部は飛行時の回転方向に前記回転翼を回転させた後に、前記回転翼の回転方向を切り替えて前記吸引流を発生させる請求項1から3の何れかに記載の飛行体。
【請求項6】
前記制御部は、飛行するための制御を行う飛行モードと前記吸引流を発生させて対象物を前記採集容器に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部を有し、
前記飛行モードにおいて所定の地点まで飛行する制御を行い、当該地点に到達すると、前記飛行モードから前記採集モードに切り替える請求項1から5の何れかに記載の飛行体。
【請求項7】
前記制御部は、飛行するための制御を行う飛行モードと前記吸引流を発生させて対象物を前記採集容器に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部を有し、
前記モード選択部は、外部からの信号に応じて前記飛行モードと前記採集モードを選択する請求項1から6の何れかに記載の飛行体。
【請求項8】
回転によって飛行するための空気流を発生させる回転翼と対象物を採集可能な採集容器を備える飛行体と、
前記飛行体の前記回転翼の回転方向を制御し、飛行時の回転方向とは逆の方向に前記回転翼を回転させることで前記採集容器に向かう吸引流を発生させる制御部と、を備える吸引システム。
【請求項9】
回転によって飛行するための空気流を発生させる回転翼と対象物を採集可能な採集容器を備える飛行体を制御する制御装置が実行する吸引方法であって、
前記飛行体の前記回転翼を飛行時の回転方向とは逆の方向に回転させることで前記採集容器に向かう吸引流を発生させる吸引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体、吸引システム及び吸引方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環境調査等のために飛行体を用いて微粒子等の対象物を採集する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして特許文献1がある。特許文献1には、計測器を取り付けたドローンを用いて風速、圧力、温度、微粒子濃度などの物理量または化学量の分布を測定するための測定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術のように飛行体を用いることで人の立ち入りが困難な場所でも対象物の採集を安全に行うことができる。しかし、特許文献1の技術は、飛行体が採集できる対象物が空中に存在するものに限られ、地面に存在する対象物の採集には適していない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、地面に存在する対象物を手作業によらず、効率的に採集できる飛行体、吸引システム及び吸引方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の飛行体は、回転によって飛行するための空気流を発生させる回転翼と、対象物を採集可能な採集容器と、前記回転翼の回転方向を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、飛行時の回転方向とは逆の方向に前記回転翼を回転させることで前記採集容器に向かう吸引流を発生させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地面に存在する対象物を手作業によらず、効率的に採集できる飛行体、吸引システム及び吸引方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る飛行体を斜め下から示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る飛行体が第1制御例において対象物を採集する様子を模式的に示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る飛行体の制御装置に関する電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る飛行体を斜め下から示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る飛行体が第2制御例において対象物を採集する様子を模式的に示す側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る飛行体が第3制御例において対象物を採集する様子を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の限定的ではない例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明をする。
【0010】
本発明の第1実施形態に係る飛行体1について説明する。
図1は飛行体1を斜め下から見た斜視図、
図2は飛行体1によって対象物2が採集される様子を示す斜視図である。なお、
図2では保護部44の記載を省略している。
【0011】
本発明に係る飛行体1は、無人で飛行可能であり、地面3に存在する対象物2を採集可能なドローンである。なお、「無人で飛行可能」とは、飛行体に人が搭乗しない状態で飛行できることを意味し、自律飛行可能である場合だけでなく、人によって飛行体が遠隔操縦される場合も含む。
【0012】
飛行体1によって採集される対象物2の種類は、特に限定されない。例えば、砂埃や粉塵等の粒子状物質、放射性物質等が挙げられる。
【0013】
飛行体1は、本体部10と、本体部10から延出するアーム部20と、アーム部20に支持される回転翼30と、回転翼30を保護するガード部40と、対象物2を採集可能な採集容器50と、を備える。また、飛行体1は、空中で飛行するための飛行モードと、地面3に存在する対象物2を採集するための採集モードの2つのモードを備える。
【0014】
本体部10は、平面視において飛行体1の中心に位置する。本体部10の下側には、着陸平面に接地する脚部11が配置される。また、本体部10は、後述する飛行体1の各種の制御を行う制御装置60やカメラ74等を備える。
【0015】
アーム部20は、その一側の端部が本体部10に接続され、他側の端部(以下、先端部)に回転翼30が配置される支持部である。本実施形態では、6本(複数)のアーム部20のそれぞれが、平面視において本体部10から放射状(径方向)に延びている。6本のアーム部20の間隔は、平面視における周方向で等間隔となっている。なお、
図2では、紙面奥側に位置する2本のアーム部20が紙面手前側に位置するアーム部20によって隠れている。
【0016】
回転翼30は、回転によって飛行するための空気流Aを発生させる。回転翼30は、アーム部20の先端部の上面に配置される回転翼駆動部31に回転自在に取り付けられる。回転翼駆動部31は、内蔵する正逆回転可能なモータ(図示省略)によって回転翼30を回転させる。回転翼駆動部31の駆動によって回転翼30が正回転すると、飛行体1が飛行するための下方に向かう空気流Aが発生する。一方で、回転翼駆動部31の駆動によって回転翼30が逆回転すると、上方に向かう吸引流Bが発生する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態では、6本のアーム部20のそれぞれに回転翼30及び回転翼駆動部31が支持される。即ち、本実施形態の飛行体1は、6個の回転翼30である回転翼30a~30fと、6個の回転翼駆動部31を備える。なお、
図2では、紙面奥側に位置する回転翼30a,30fや回転翼30a,30fが取り付けられる回転翼駆動部31が紙面手前側に位置する回転翼30b~30eや回転翼30b~30eに接続される回転翼駆動部31によって隠れている。
【0018】
ガード部40は、各アーム部20の先端部に連結されるガード延出部41と、ガード延出部41の先端から上方に延出するガード支持部42と、ガード支持部42によって支持される保護部44と、を備える。
【0019】
ガード延出部41は、アーム部20から更に径方向外側に水平方向に延びる。なお、ここでいう「外側」とは、平面視において、飛行体1の本体部10の重心又は中心を起点としたときに本体部10から離れた側であり、前記起点を球の中心として径方向外側と表現することもできる。
【0020】
ガード支持部42は、ガード延出部41の先端から回転翼30の回転軸と略平行に延びている。ガード支持部42と回転翼30は、当該回転翼30が回転してもガード支持部42に接触しない位置関係となっている。ガード支持部42には、保護部44を固定するためのガード固定部43が配置される。
【0021】
保護部44は、平面視において全体として本体部10を囲う環状に配置される帯状の部材である。保護部44は可撓性を有し、6本のガード支持部42の間を接続するように張り渡される。即ち、平面視において、6本(複数本)の保護部44によって6角形(多角形)が形成されており、複数の回転翼30の全ては、この6角形の内側に位置する。また、本実施形態において、保護部44の高さは、回転翼30を他の飛行物体、建物等から保護するため、上下方向において回転翼30と略同じ高さの位置に設定される。
【0022】
採集容器50は、アーム部20の先端部の下面に取り付けられる。即ち、採集容器50は、回転翼30の下方に位置する。本実施形態では、採集容器50は回転翼30の回転軸方向視において、回転軌道の内側に位置するように形成される。
【0023】
採集容器50は、下部に開口53を有する本体部51と、開口53を開閉する蓋部52と、開閉駆動部54を有する。本実施形態では、採集容器50は全体として箱状であるが、その形状は特に限定されない。例えば、採集容器50の形状が円柱状であってもよい。
【0024】
蓋部52は、本体部51の下部に接続される。蓋部52が本体部51との接続箇所を中心に回転することで採集容器50の開口53が開閉する。開閉駆動部54は、モータを含み、当該モータの駆動させることで蓋部52を回転させる。なお、
図1及び
図2では開閉駆動部54の図示を省略している。
【0025】
本実施形態に係る採集容器50は、6個のアーム部20のそれぞれに取り付けられる。即ち、本実施形態の飛行体1は、6個の採集容器50である採集容器50a~50fを備える。
図1に示すように、採集容器50aは回転翼30aの下方に位置し、採集容器50bは回転翼30bの下方に位置し、採集容器50cは回転翼30cの下方に位置し、採集容器50dは回転翼30dの下方に位置し、採集容器50eは回転翼30eの下方に位置し、採集容器50fは回転翼30fの下方に位置する。なお、
図2では、紙面奥側に位置する採集容器50a,50fが紙面手前側に位置する採集容器50b~50eによって隠れている。
【0026】
次に、制御装置60について説明する。
図3は、飛行体1の制御装置60に関する電気的な構成を示すブロック図である。
図3において回転翼駆動部31や開閉駆動部54については、右回りの順にアルファベットを付し、回転翼駆動部31a~31f、開閉駆動部54a~54fを区別して説明する。回転翼駆動部31aは回転翼30aを回転させ、回転翼駆動部31bは回転翼30bを回転させ、回転翼駆動部31cは回転翼30cを回転させ、回転翼駆動部31dは回転翼30dを回転させ、回転翼駆動部31eは回転翼30eを回転させ、回転翼駆動部31fは回転翼30fを回転させる。また、開閉駆動部54aは採集容器50aの蓋部52を回転させ、開閉駆動部54bは採集容器50bの蓋部52を回転させ、開閉駆動部54cは採集容器50cの蓋部52を回転させ、開閉駆動部54dは採集容器50dの蓋部52を回転させ、開閉駆動部54eは採集容器50eの蓋部52を回転させ、開閉駆動部54fは採集容器50fの蓋部52を回転させる。
【0027】
制御装置60は、例えばCPU、メモリ等を有し、制御プログラムを実行するコンピュータであり、飛行体1の飛行や対象物2の採集容器50a~50fへの採集動作の制御処理を実行する。制御装置60には、バッテリ等の電源装置(図示省略)、カメラ74等の検出部、操作用コントローラやGPS等の外部装置と信号の送受信を行う通信装置75、ジャイロセンサ71、加速度センサ72、高度センサ73等の各種電子機器が電気的に接続される。
【0028】
図3に示すように、制御装置60は、モード選択部61と、飛行制御部62と、採集制御部63と、を備える。モード選択部61と、飛行制御部62と、採集制御部63は、制御装置60に記憶されるプログラムの一部によって構成される。
【0029】
モード選択部61は、飛行体1が飛行するための制御を行う飛行モードと、採集容器50に向かう吸引流Bを発生させて対象物2を採集容器50に採集するための制御を行う採集モードを選択可能である。
【0030】
モード選択部61は、予め制御装置60に記憶されたプログラムに基づき、自律制御又は遠隔制御によって飛行モードと採集モードを選択する。
【0031】
モード選択部61の自律制御の例と遠隔制御の例について説明する。自律制御では、例えば、モード選択部61は飛行体1が予め定められた所定の地点に到達すると、予め定められた自律制御用プログラムに基づき、飛行モードから採集モードに切り替える。所定の地点としては、例えば、対象物2が存在する地面3やその上空等が挙げられる。遠隔制御では、例えば、モード選択部61は通信装置75等を介して外部から受信した信号に基づき、飛行モードと採集モードを選択する。外部からの信号としては、ユーザーが外部のコントローラを操作して発信した信号等が挙げられる。
【0032】
飛行体1の動作は、飛行モードが選択されると飛行制御部62によって制御され、採集モードが選択されると採集制御部63によって制御される。
【0033】
飛行制御部62は、飛行モードにおいて、ジャイロセンサ71、加速度センサ72、高度センサ73、カメラ74、通信装置75等からの各種情報や予め定められたプログラムに基づいて飛行体1の飛行を制御する。飛行制御部62は、回転翼駆動部31a~31fの駆動を制御することにより、回転翼30a~30fの回転数等を調整する。
【0034】
飛行制御部62による飛行制御は、自律制御又は遠隔制御によって実行される。自律制御では、例えば、飛行制御部62は、予め設定されたルートに沿って、対象物2が存在する地面3の上空等の所定の地点まで飛行する制御を行う。遠隔制御では、例えば、飛行制御部62は通信装置75等を介して外部から受信した信号に基づき、飛行する制御を行う。具体的には、ユーザーの操作によって外部のコントローラから発信された信号を通信装置75が受信すると、飛行制御部62は当該信号に基づいて回転翼駆動部31の駆動を制御し、飛行体1の飛行を制御する。
【0035】
採集制御部63は、採集モードにおいて、ジャイロセンサ71、加速度センサ72、高度センサ73、カメラ74、通信装置75等からの各種情報や予め定められたプログラムに基づいて、地面3に存在する対象物2を採集するための飛行体1の動作を制御する。例えば、採集制御部63は、回転翼30a~30fの回転方向や回転数の制御、採集容器50a~50fの蓋部52の開閉の制御等を行う。採集制御部63は、回転翼30a~30fを飛行時の回転方向に回転させることで地面3に向かう空気流Aを発生させる。また、採集制御部63は、飛行時の回転方向とは逆の方向に回転翼30a~30fを回転させることで地面3から採集容器50a~50fに向かう吸引流Bを発生させる。即ち、回転翼30a~30fを正回転すると地面3に向かう空気流Aが発生し、回転翼30a~30fを逆回転すると地面3から採集容器50a~50fに向かう吸引流Bが発生する。また、採集制御部63は、回転翼30a~30fの回転数を調整して空気流Aや吸引流Bの強さを調整する。また、本実施形態では、採集制御部63は、飛行体1が地面3に着陸した状態で吸引流Bを発生させる。
【0036】
採集制御部63による制御は、自律制御又は遠隔制御によって実行される。自律制御では、例えば、採集制御部63は、予め定められた自律制御用プログラムに基づいて、採集容器50の開閉動作や回転翼の回転方向の切り替え動作等の対象物2を採集するための動作を制御する。遠隔制御では、例えば、採集制御部63は通信装置75等を介して外部から受信した信号に基づき、採集容器50の開閉動作や回転翼の回転方向の切り替え動作等の制御を行う。外部からの信号としては、ユーザーが外部のコントローラを操作して発信した信号等が挙げられる。
【0037】
次に、採集モードにおける採集制御部63による3つの制御例である第1制御例から第3制御例について説明する。
【0038】
まず、第1制御例について
図1から
図3を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、第1制御例において飛行体1が対象物2を採集する様子を示している。
【0039】
飛行体1が飛行制御部62によって対象物2が存在する地点まで到達すると、モード選択部61によって飛行モードから採集モードに切り替わる。このとき、採集容器50a~50fの開口53は蓋部52で閉じられた状態である。
【0040】
採集モードに切り替わると、採集制御部63は、開閉駆動部54a~54fの何れか1つを駆動して対応する採集容器50を開く制御を行う。例えば、
図1に示すように、採集制御部63は、開閉駆動部54a~54fのうち開閉駆動部54cを駆動することで蓋部52を回転させて採集容器50cの開口53を開く制御を行う。
【0041】
採集容器50cの開口53が開くと、採集制御部63は回転翼駆動部31a~31fを駆動し、回転翼30a~30fを回転させる制御を行う。第1制御例では、採集制御部63は、開口53が開いた採集容器50cの上方に位置する回転翼30cを逆回転させることで採集容器50cに向かう吸引流Bを発生させながら、回転翼30c以外の回転翼30のうち少なくとも1つを正回転させる。例えば、採集制御部63は回転翼30cが逆回転するように回転翼駆動部31cの駆動を制御し、回転翼30a,30b,30d~30fが正回転するように回転翼駆動部31a,31b,31d~31fの駆動を制御する。この結果、
図1及び
図2に示すように、回転翼30a,30b,30d~30fの回転によって地面3に向かう空気流Aが発生し、回転翼30cの回転によって開口53が開いた採集容器50cに向かう吸引流Bが発生する。これにより、
図2に示すように、空気流Aによって地面3に存在する対象物2が上方に舞い上がるとともに、吸引流Bによって地面3に存在する対象物2や地面3から舞い上がった対象物2を採集容器50c内に吸引することができる。
【0042】
吸引流Bが発生してから所定の時間経過すると、採集制御部63は、開閉駆動部54cの駆動を制御して蓋部52を回転させて採集容器50cの開口53を閉じる。これにより、採集容器50c内に対象物2が採集される。
【0043】
採集容器50cの開口53が閉じられると、採集制御部63は、回転翼駆動部31a~31fの駆動を停止する。採集容器50cへの対象物2の採集が完了した後に、制御装置60は、上述した第1制御例の制御を繰り返して採集容器50c以外の採集容器50への対象物2の採集を行ってもよい。
【0044】
次に、第2制御例について
図3から
図5を参照しながら説明する。
図4は第2制御例において飛行体1が対象物2を採集する様子を斜め下から見た斜視図、
図5は第2制御例において飛行体1が対象物2を採集する様子を示す側面図である。なお、
図5では保護部44の記載を省略している。また、
図5では、紙面奥側に位置する回転翼30a,30fや採集容器50a,50f等が紙面手前側に位置する回転翼30b~30e、採集容器50a,50f等によって隠れている。
【0045】
飛行体1が飛行制御部62によって対象物2が存在する地点まで到達すると、モード選択部61によって飛行モードから採集モードに切り替わる。このとき、採集容器50a~50fの開口53は蓋部52で閉じられた状態である。
【0046】
採集モードに切り替わると、採集制御部63は、平面視における周方向で1つ置きに採集容器50の開口53が開くように、開閉駆動部54a~54fの駆動を制御する。例えば、採集制御部63は、開閉駆動部54a~54fのうち開閉駆動部54a,54c,54eを駆動することで蓋部52を回転させて採集容器50a,50c,50eの開口53を開く制御を行う。
【0047】
採集容器50a,50c,50eの開口53が開くと、採集制御部63は回転翼駆動部31a~31fを駆動し、回転翼30a~30fを回転させる制御を行う。第2制御例では、採集制御部63は回転翼30a,30c,30eが逆回転するように回転翼駆動部31a,31c,31eの駆動を制御し、回転翼30b,30d,30fが正回転するように回転翼駆動部31b,31d,31fの駆動を制御する。この結果、
図4及び
図5に示すように、回転翼30b,30d,30fの回転によって地面3に向かう空気流Aが発生し、回転翼30a,30c,30eの回転によって開口53が開いた採集容器50a,50c,50eに向かう吸引流Bが発生する。これにより、
図5に示すように、空気流Aによって地面3に存在する対象物2が上方に舞い上がるとともに、吸引流Bによって地面3に存在する対象物2や地面3から舞い上がった対象物2を採集容器50a,50c,50e内に吸引することができる。また、第2制御例では、上方に向かう空気流Aを発生させる回転翼30b,30d,30fと上方に向かう吸引流Bを発生させる回転翼30a,30c,30eが平面視における周方向で交互に配置されるので、安定した姿勢を維持しつつ、対象物2を採集できる。
【0048】
吸引流Bが発生してから所定の時間経過後に、採集制御部63は、開閉駆動部54a,54c,54eの駆動を制御し、蓋部52を回転させて採集容器50a,50c,50eの開口53を閉じる。これにより、採集容器50a,50c,50e内に対象物2が採集される。
【0049】
採集容器50a,50c,50eの開口53が閉じられると、採集制御部63は、回転翼駆動部31a~31fの駆動を停止する。採集容器50cへの対象物2の採集が完了した後に、制御装置60は、上述した第2制御例の制御を繰り返して採集容器50b,50d,50fへの対象物2の採集を行ってもよい。
【0050】
次に、第3制御例について
図6を参照しながら説明する。
図6は第3制御例において飛行体1が対象物2を採集する様子を模式的に示す側面図である。
図6(A)は採集制御部63が回転翼30の回転方向を制御して空気流Aを発生させている状態を示す図、
図6(B)は採集制御部63が回転翼30の回転方向を制御して吸引流Bを発生させている状態を示す図、
図6(C)は採集容器50への対象物2の採集が完了した状態を示す図である。なお、
図6では保護部44の記載を省略している。また、
図6では、紙面奥側に位置する回転翼30a,30fや採集容器50a,50f等が紙面手前側に位置する回転翼30b~30e、採集容器50a,50f等によって隠れている。
【0051】
飛行体1が飛行制御部62によって対象物2が存在する地点まで到達すると、モード選択部61によって飛行モードから採集モードに切り替わる。このとき、採集容器50a~50fの開口53は蓋部52で閉じられた状態である。
【0052】
採集モードに切り替わると、採集制御部63は、開閉駆動部54a~54fを駆動して採集容器50a~50fの開口53を開く制御を行う。第3制御例では、第1制御例及び第2制御例と異なり、採集制御部63によって全ての採集容器50の開口53を開く制御が行われる。
【0053】
採集容器50a~50fの開口53が開くと、採集制御部63は回転翼駆動部31a~31fを駆動し、回転翼30a~30fを回転させる制御を行う。第3制御例では、採集制御部63は、回転翼30a~30fが正回転するように回転翼駆動部31a~31fの駆動を制御する。これにより、
図6(A)に示すように、回転翼30a~30fの回転によって地面3に向かう空気流Aが発生し、当該空気流Aによって地面3に存在する対象物2が上方に舞い上がる。
【0054】
空気流Aが発生してから所定時間経過後に、採集制御部63は、回転翼30a~30fが逆回転するように回転翼駆動部31a~31fの駆動を制御する。この結果、
図6(B)に示すように、回転翼30a~30fの回転によって開口53が開いた採集容器50a~50fに向かう吸引流Bが発生する。これにより、空気流Aによって地面3から上方に舞い上がった対象物2を採集容器50a~50f内に吸引することができる。第3制御例では、第1制御例及び第2制御例と異なり、全ての回転翼30が正回転した後に、全ての回転翼30が逆回転する制御が行われる。
【0055】
吸引流Bが発生してから所定の時間経過後に、採集制御部63は、開閉駆動部54a~54fの駆動を制御し、蓋部52を回転させて採集容器50a~50fの開口53を閉じる。この結果、
図6(C)に示すように、採集容器50a~50f内に対象物2が採集される。これにより、一度に全ての採集容器50に対象物2を採集できる。
【0056】
採集容器50a~50fの開口53が閉じられると、採集制御部63は、回転翼駆動部31a~31fの駆動を停止する。
【0057】
上記実施形態は、
図3に示すように、飛行体1と、採集容器50に向かう吸引流Bが発生するように飛行体1を制御する制御装置60と、を備える吸引システム100でもある。なお、本実施形態の吸引システム100では、制御装置60は飛行体1の本体部10に配置されているがこの構成に限定される訳ではない。例えば、制御装置60が飛行体1の外部に配置され、外部の制御装置60から受信した信号に基づいて飛行体1が遠隔制御される構成の吸引システムであってもよい。
【0058】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態は、以下の各構成により、それぞれ有利な効果を奏する。
【0059】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)は、回転によって飛行するための空気流(A)を発生させる回転翼(30)と、対象物(2)を採集可能な採集容器(50)と、回転翼(30)の回転方向を制御する制御装置(60)と、を備え、制御装置(60)は、飛行時の回転方向とは逆の方向に回転翼(30)を回転させることで採集容器(50)に向かう吸引流(B)を発生させる。これにより、回転翼(30)の回転を利用して吸引流(B)を発生させることで地面(3)に存在する対象物(2)を採集容器(50)に向かって吸引できる。よって、地面(3)に存在する対象物(2)を手作業によらず効率的に採集することができる。
【0060】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、採集容器(50)は、回転翼(30)の下方に配置される。これにより、採集容器(50)が吸引流(B)を発生させる回転翼(30)の下方に配置されるので、採集容器(50)に向かって吸引流(B)をより確実に流すことができる。
【0061】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、制御装置(60)は、着陸した状態で吸引流(B)を発生させる。これにより、飛行体(1)が地面(3)に着陸しているので、安定した姿勢で対象物(2)の採集容器(50)への吸引を行うことができる。
【0062】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、回転翼(30)は複数配置され、制御装置(60)は、吸引流(B)を発生させながら、複数の回転翼(30)のうち少なくとも1つを飛行時の回転方向に回転させる。これにより、地面(3)に向かう空気流(A)を発生させて対象物(2)を地面(3)から舞い上がらせるとともに、吸引流(B)によって対象物(2)を採集容器(50)に吸引できる。よって、地面(3)に存在する対象物(2)をより効率的に採集できる。
【0063】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、制御装置(60)は、飛行するための制御を行う飛行モードと吸引流(B)を発生させて対象物(2)を採集容器(50)に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部(61)を有し、モード選択部(61)によって採集モードが選択されると、制御装置(60)は飛行時の回転方向に回転翼(30)を回転させた後に、回転翼(30)の回転方向を切り替えて吸引流(B)を発生させる。これにより、地面(3)に向かう空気流(A)を発生させて地面(3)に存在する対象物(2)を舞い上がらせた上で、地面(3)から舞い上がった対象物(2)を吸引できる。また、空気流Aと吸引流Bを異なるタイミングで発生させるので、制御装置60の処理負担を軽減し、処理の効率化を実現できる。
【0064】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、制御装置(60)は、飛行するための制御を行う飛行モードと吸引流(B)を発生させて対象物(2)を採集容器(50)に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部(61)を有し、飛行モードにおいて所定の地点まで飛行する制御を行い、当該地点に到達すると、飛行モードから採集モードに切り替える。これにより、飛行体1が自動で所定の地点まで飛行し、採集モードに切り替わるので、飛行体1を操縦又は指示せずに対象物(2)が存在する地点まで飛行させ、対象物2を採集できる。
【0065】
本発明の実施形態に係る飛行体(1)において、制御装置(60)は、飛行するための制御を行う飛行モードと吸引流(B)を発生させて対象物(2)を採集容器(50)に採集するための制御を行う採集モードを選択可能なモード選択部(61)を有し、モード選択部(61)は、外部からの信号に基づいて前記飛行モードと前記採集モードを選択する。これにより、外部からの信号に基づいて採集モードに切り替えることができるので、任意のタイミングで対象物(2)を採集できる。
【0066】
本発明の実施形態に係る吸引システム(100)は、回転によって飛行するための空気流(A)を発生させる回転翼(30)と対象物(2)を採集可能な採集容器(50)を備える飛行体(1)と、飛行体(1)の回転翼(30)の回転方向を制御し、飛行時の回転方向とは逆の方向に回転翼(30)を回転させることで採集容器(50)に向かう吸引流(B)を発生させる制御装置(60)と、を備える。これにより、飛行体(1)の回転翼(30)の回転を利用して吸引流(B)を発生させて地面(3)に存在する対象物(2)を採集容器(50)に向かって吸引することができる。よって、地面(3)に存在する対象物(2)を手作業によらず効率的に採集することができる。
【0067】
本発明の実施形態に係る吸引方法は、回転によって飛行するための空気流(A)を発生させる回転翼(30)と対象物(2)を採集可能な採集容器(50)を備える飛行体(1)を制御する制御装置(60)が実行する吸引方法であって、飛行体の前記回転翼を飛行時の回転方向とは逆の方向に回転させることで前記採集容器に向かう吸引流を発生させる。これにより、飛行体(1)の回転翼(30)の回転を利用して吸引流(B)を発生させて地面(3)に存在する対象物(2)を採集容器(50)に向かって吸引することができる。よって、地面(3)に存在する対象物(2)を手作業によらず効率的に採集することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0069】
上記実施形態では、採集容器50が回転翼30の下方に位置するが、採集容器50の位置は特に限定されない。例えば、採集容器50が回転翼30の上方に位置する構成としてもよい。
【0070】
上記実施形態では、採集容器50が回転翼30の回転軸方向視において、回転軌道の内側に位置するように形成されるが、回転翼30の少なくとも一部分が当該回転軌道の外側に位置するように形成してもよい。
【0071】
上記実施形態では、採集容器50の本体部51の下部に開口53が形成されているが、本体部51に形成される開口53の位置は特に限定されない。例えば、本体部51の上部に開口53を形成する構成としてもよい。
【0072】
上記実施形態では、蓋部52を回転させることで採集容器50の開口53を開閉する構成であったが、開口53の開閉の機構は特に限定されない。例えば、蓋部52をスライド移動させることで開口53を開閉する機構としてもよい。
【0073】
上記実施形態では、飛行体1が地面3に着陸した状態で吸引流Bを発生させる制御が行われるが、飛行体1が空中に浮いている状態で吸引流Bを発生させる制御が行われる構成としてもよい。
【0074】
上記実施形態では、回転翼30の数は6個であったが、回転翼30の数は特に制限されない。例えば、回転翼30の数が5個以下であっても、7個以上であってもよい。
【0075】
上記実施形態では、採集容器50の数は6個であったが、採集容器50の数は特に制限されない。例えば、採集容器50の数が5個以下であっても、7個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1・・・飛行体、2・・・対象物、30,30a,30b,30c,30d,30e,30f・・・回転翼、50,50a,50b,50c,50d,50e,50f・・・採集容器、60・・・制御装置(制御部)、A・・・空気流、B・・・吸引流
【要約】
【課題】地面に存在する対象物を手作業によらず、効率的に採集できる飛行体、吸引システム及び吸引方法を提供すること。
【解決手段】飛行体1は、回転によって飛行するための空気流Aを発生させる回転翼30と、対象物2を採集可能な採集容器50と、回転翼30の回転方向を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、飛行時の回転方向とは逆の方向に回転翼30を回転させることで採集容器50に向かう吸引流Bを発生させる。
【選択図】
図2