(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具
(51)【国際特許分類】
A47G 29/00 20060101AFI20220113BHJP
A47B 96/14 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A47G29/00 L
A47B96/14 E
A47B96/14 D
(21)【出願番号】P 2016076338
(22)【出願日】2016-04-06
【審査請求日】2019-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000181963
【氏名又は名称】若井ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 颯子
(72)【発明者】
【氏名】山本 英二
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0074085(US,A1)
【文献】特開2004-243059(JP,A)
【文献】実開昭52-134428(JP,U)
【文献】実開昭53-045928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 29/00
A47G 25/02
F16B 9/02
D06F 57/00
A47B 96/14
A47H 1/00-1/12
A47K 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入り隅コーナの隣接する一方の壁面aに固定された一の取付具1と、他方の壁面bに固定された他の一の取付具1とによって、突っ張り棒2の両端を支持することにより、入り隅コーナの隣接する二つの前記壁面aと壁面bの間に突っ張り棒2を架設するための取付具1であり、
前記取付具1が、突っ張り棒2の端部を抜き差し自在に保持するための支持部3と、この支持部3に設けられ、前記支持部3を止着具14によって前記一方の壁面a又は他方の壁面bに固定する第1固定部4と第2固定部5とからなり、
前記支持部3は、突っ張り棒2の端部が納まる間隔で上下に対向する第1の対向壁6と第2の対向壁7及び、第1の対向壁6と第2の対向壁7の間において突っ張り棒2の端面を受け面8で当接支持する受圧壁9とを有し、
前記第1の対向壁6と第2の対向壁7は等しい大きさの直角三角形に形成され、前記第1の対向壁6は、直角の関係にある一方直線辺縁6aと他方直線辺縁6b及び傾斜辺縁6cを備え、
前記第2の対向壁7は、直角の関係にある一方直線辺縁7aと他方直線辺縁7b及び傾斜辺縁7cを備え、
前記受圧壁9は、上下に対向させた前記第1の対向壁6と第2の対向壁7の間に位置し、この第1の対向壁6と第2の対向壁7間で前記傾斜辺縁6cと前記傾斜辺縁7cにおける両端部間を結ぶように設けられ、
この受圧壁9の受け面8が、前記第1の対向壁6における前記傾斜辺縁6cと第2の対向壁7における傾斜辺縁7c間に対して、前記支持部3の内部方向に向けて前記傾斜辺縁6cと前記傾斜辺縁7cにおける両端を結ぶ単一半径の曲面で凹入し、
前記支持部3が、突っ張り棒2の端部出し入れ側となる前記第1の対向壁6の傾斜辺縁6cと第2の対向壁7の傾斜辺縁7c間が開放した容器状に形成されていることを特徴とする入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具。
【請求項2】
上記支持部3は、第1の対向壁6の一方直線辺縁6aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第1座面11で、第2の対向壁7の一方直線辺縁7aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第2座面11aとなり、
この支持部3における第1の対向壁6の前記第1直線辺縁6aと、第2の対向壁7における前記第1の直線辺縁7a間の両端部における一方に第1固定部4と他方に第2固定部5が設けられ、
前記第1座面11と第2座面11a及び第1固定部4の座面12及び第2固定部5の座面13が同一面に形成され、
前記第1固定部4に一方の壁面a又は他方の壁面bに突き刺す止着具14の挿通孔15が、また前記第2固定部5には一方の壁面a又は他方の壁面bに突き刺す止着具14の挿通孔15aが形成され、
前記第1固定部4に形成した挿通孔15と第2固定部5に形成した挿通孔15aの何れか一方又は両方は、第1固定部4の座面12又は第2固定部5の座面13に対して傾斜するように設けられ、
その傾斜方向が、
一方の壁面aに固定された一の取付具1と、他方の壁面bに固定された他の一の取付具1の間に突っ張り棒2を架設支持した際に、突っ張り棒2の伸張力で、一の取付具1に働く一方の壁面aに沿って移動する力の方向及び、他の一の取付具1に働く他方の壁面bに沿って移動する力の方向に対し、止着具14で移動阻止力が得られる方向の傾斜に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入り隅コーナの隣接する壁面間に突っ張り棒を斜めに架設するために用いる、入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、室内空間を利用してタオルやハンガーなどを吊すことができるようにするため、伸長方向に付勢力をもって突っ張り棒を壁面間に架設することは広く一般に行われている。
【0003】
この場合、突っ張り棒を対面する平行の壁面間に架設するだけでなく、室内の随所に存在する入り隅コーナの空間を有効に利用して、入り隅コーナの隣接する直角の壁面間に突っ張り棒を斜めに架設したいという場合があり、このような要望に応えるため、入り隅コーナに突っ張り棒を斜めに架設することのできる取付具が既に提案されている。
【0004】
従来、突っ張り棒を斜めに架設するため取付具には、その構造上から、突っ張り棒の両端に壁面に固定するための取付具を設けた突っ張り棒一体タイプと、突っ張り棒と別部材となり、壁面に固定した状態で突っ張り棒を架設する別体タイプがある。
【0005】
先ず、前者の突っ張り棒一体タイプは、内蔵したスプリングで伸縮管に伸長方向の付勢力を与えて突っ張り棒とし、この突っ張り棒の両端に壁面へ固定するための取付具を設け、両取付具の壁面への当接面を突っ張り棒の伸縮方向に対して45°の相反する傾斜面とし、この傾斜面に壁面への摩擦部材を取り付けた構造となっており、突っ張り棒を収縮させた状態で入り隅コーナの隣接する直角の壁面間に斜めの配置で臨ませ、突っ張り棒の伸長途中で両端の取付具における傾斜面を隣接する直角の壁面間に当接させることにより、突っ張り棒の伸長による付勢力で取付具の傾斜面が押し付けられ、取付具の傾斜面と壁面の摩擦力で突っ張り棒の両端が固定されて斜めの架設状態が保持される(特許文献1参照)。
【0006】
次に、後者の突っ張り棒と別部材となる別体タイプの取付具は、一般に流通している突っ張り棒を使用してこれを架設するためのものであり、壁面に重ねる吸盤部の表面に円軸状の軸受部を突出状に連成し、この軸受部をその軸線に対して45°の傾斜面になるようカットし、この傾斜面に突っ張り棒の端部を支持する底の平らな収納孔を、前記傾斜面に対して直角に設けた構造となっている。
【0007】
この取付具を用いて突っ張り棒を架設するには、先ず、入り隅コーナの隣接する直角の壁面にそれぞれ取付具を、傾斜面が対面する配置で吸着固定し、次に、別途用意した突っ張り棒を収縮させた状態で両取付具間に臨ませ、この突っ張り棒を伸長途中で両端を両取付具における収納孔に嵌め込むようにすれば、突っ張り棒の伸長による付勢力で両取付具の吸盤部が壁面に押し付けられ、軸受部で両端が保持された突っ張り棒は、壁面に対する吸盤部の吸着力と押し付け力で斜めの架設状態に固定される(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-073339号公報
【文献】特開2004-243059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の取付具は、突っ張り棒一体タイプと別体タイプの何れにおいても、突っ張り棒の架設角度が一定に固定化され、入り隅コーナの隣接する直角の壁面間に45°の傾斜角度でしか架設することがてできないものであり、室内空間の条件に応じた斜め角度での架設ができないという不便がある。
【0010】
また、前者の突っ張り棒一体タイプは、手持ちの突っ張り棒や所望する長さの突っ張り棒を選んで架設することができないという不便があり、突っ張り棒の両端に取付具を固定した構造では、入り隅コーナの隣接する壁面間の直角精度が悪いと、取付具における傾斜面と壁面の接触面積が減少し、摩擦力の低減により突っ張り棒の固定強度が低下するという問題がある。
【0011】
上記のような、接触面積が減少するのを防ぐため、特許文献1では、突っ張り棒の端部に取付具をヒンジ機構を介して揺動可能に取付け、突っ張り棒の架設時における取付具の傾斜面が壁面に追従する構造が開示されているが、このように、取付具が揺動する機構を採用すると、構造的に複雑となって製品コストが高くつくだけでなく、施工時に取付具の姿勢が定まらないので施工作業が不安定で行いにくく、更に、施工後に突っ張り棒の伸長方向の付勢力がヒンジのピンを支点にして取付具に掛かり、傾斜面の壁面への押し付け力にピンを支点とする回転力が加わり、このため、ヒンジ部分に衝撃が加わった場合、ヒンジ部分がぐらつき、突っ張り棒の固定強度が低下して外れやすくなる恐れがある。
【0012】
これに対して、別体タイプの取付具は、手持ちの突っ張り棒がそのまま使用できると共に、必要な長さの突っ張り棒を架設することができ、予め隣接する壁面にそれぞれ取付具を固定したあと、取付具間に突っ張り棒架設すればよいので、施工作業が行いやすいと共に、構造が簡単で価格的にも有利である。
【0013】
ところで、このような別体タイプの取付具には、上述したように、突っ張り棒の架設角度が一定に固定化されるため、実際の突っ張り棒を架設する場所の条件や状況に応じて、架設時の斜めの角度を任意に選択することができないという致命的な問題がある。
【0014】
即ち、軸受部に設けた収納孔は軸受部の軸心に対して45°の傾斜角度で設けられているので、入隅コーナーに対して突っ張り棒を45°もしくはその前後の僅かな範囲の角度でしか架設することができず、しかも、収納孔の底面が平坦面に形成されているので、突っ張り棒を正確に45°の角度でセットして架設した場合にのみ、収納孔の底面に突っ張り棒の端面全体が圧接するので、収納孔の底面に加わる突っ張り棒の伸長力で吸盤部全体を壁面に押し付け、取付具の壁面への固定が確保できると共に、突っ張り棒の安定した端部支持状態が得られることになる。
【0015】
しかし、突っ張り棒の取付具間への架設角度が45°から外れた状態でセットされると、収納孔の底面に対して突っ張り棒の端部は、その外周の一部が圧接するだけの状態となって端面が収納孔の底面から浮き、収納孔の底面に加わる突っ張り棒の伸長力が部分的となり、壁面に対する吸盤部の押し付け力が全体に分散されないことで取付具の固定強度が低下すると共に、端面が収納孔の底面から部分的に浮くと、突っ張り棒の端部支持が不安定となり、外力が加わることで突っ張り棒が簡単に移動し、これらの複合した条件によって突っ張り棒が脱落するという危惧が発生する。
【0016】
そこで、この発明の課題は、別体タイプの取付具の利点を有効に生かし、突っ張り棒の架設角度を架設する場所の条件や状況に応じて任意に選択することができ、しかも、突っ張り棒の伸長力による壁面への固定強度及び突っ張り棒の架設状態が安定して得られる入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、入り隅コーナの隣接する一方の壁面aに固定された一の取付具1と、他方の壁面bに固定された他の一の取付具1とによって、突っ張り棒2の両端を支持することにより、入り隅コーナの隣接する二つの前記壁面aと壁面bの間に突っ張り棒2を架設するための取付具1であり、
前記取付具1が、突っ張り棒2の端部を抜き差し自在に保持するための支持部3と、この支持部3に設けられ、前記支持部3を止着具14によって前記一方の壁面a又は他方の壁面bに固定する第1固定部4と第2固定部5とからなり、
前記支持部3は、突っ張り棒2の端部が納まる間隔で上下に対向する第1の対向壁6と第2の対向壁7及び、第1の対向壁6と第2の対向壁7の間において突っ張り棒2の端面を受け面8で当接支持する受圧壁9とを有し、
前記第1の対向壁6と第2の対向壁7は等しい大きさの直角三角形に形成され、前記第1の対向壁6は、直角の関係にある一方直線辺縁6aと他方直線辺縁6b及び傾斜辺縁6cを備え、
前記第2の対向壁7は、直角の関係にある一方直線辺縁7aと他方直線辺縁7b及び傾斜辺縁7cを備え、
前記受圧壁9は、上下に対向させた前記第1の対向壁6と第2の対向壁7の間に位置し、この第1の対向壁6と第2の対向壁7間で前記傾斜辺縁6cと前記傾斜辺縁7cにおける両端部間を結ぶように設けられ、
この受圧壁9の受け面8が、前記第1の対向壁6における前記傾斜辺縁6cと第2の対向壁7における傾斜辺縁7c間に対して、前記支持部3の内部方向に向けて前記傾斜辺縁6cと前記傾斜辺縁7cにおける両端を結ぶ単一半径の曲面で凹入し、
前記支持部3が、突っ張り棒2の端部出し入れ側となる前記第1の対向壁6の傾斜辺縁6cと第2の対向壁7の傾斜辺縁7c間が開放した容器状に形成されているようにしたものである。
【0018】
請求項2の発明は、上記支持部3は、第1の対向壁6の一方直線辺縁6aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第1座面11で、第2の対向壁7の一方直線辺縁7aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第2座面11aとなり、
この支持部3における第1の対向壁6の前記第1直線辺縁6aと、第2の対向壁7における前記第1の直線辺縁7a間の両端部における一方に第1固定部4と他方に第2固定部5が設けられ、
前記第1座面11と第2座面11a及び第1固定部4の座面12及び第2固定部5の座面13が同一面に形成され、
前記第1固定部4に一方の壁面a又は他方の壁面bに突き刺す止着具14の挿通孔15が、また前記第2固定部5には一方の壁面a又は他方の壁面bに突き刺す止着具14の挿通孔15aが形成され、
前記第1固定部4に形成した挿通孔15と第2固定部5に形成した挿通孔15aの何れか一方又は両方は、第1固定部4の座面12又は第2固定部5の座面13に対して傾斜するように設けられ、
その傾斜方向が、
一方の壁面aに固定された一の取付具1と、他方の壁面bに固定された他の一の取付具1の間に突っ張り棒2を架設支持した際に、突っ張り棒2の伸張力で、一の取付具1に働く一方の壁面aに沿って移動する力の方向及び、他の一の取付具1に働く他方の壁面bに沿って移動する力の方向に対し、止着具14で移動阻止力が得られる方向の傾斜に設定されているようにしたものである。
【0021】
また、支持部における受圧壁は、傾斜辺縁側の開放部分から内側に向けて凹入する円弧状に形成され、この受圧壁の受け面を単一半径の曲面とすることで、支持部内に挿入した突っ張り棒の端部は、突っ張り棒の角度が45°の場合は勿論のことそれ以外の角度でも、常に軸心を挟む二カ所の位置が受け面に圧接することになり、これによって、突っ張り棒の端部を安定よく固定でき、架設する場所の条件や状況に応じて突っ張り棒の架設角度を任意に選択できることになる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、前記突っ張り棒の端部を抜き差し自在に保持するための支持部に設けた受圧壁の受け面を、前記支持部の開放面に対して凹入する曲面に形成したので、入隅コーナーの隣接する壁面に固定した取付具間に突っ張り棒を架設したとき、突っ張り棒の端部は、架設する角度に関係なく常に軸心を挟む二カ所の位置が受け面に圧接することになり、これによって、突っ張り棒の端部を安定よく固定でき、外力が加わることで突っ張り棒が脱落するという事態の発生を防ぐことができるだけでなく、突っ張り棒の架設角度を架設する場所の条件や状況に応じて任意に選択できることになる。
【0023】
また、入隅コーナーの隣接する壁面に取付具を固定した状態で、両取付具間に突っ張り棒を架設することができ、従来の突っ張り棒と別体タイプの取付具が有する利点を有効に生かし、突っ張り棒の架設角度の自由度が増すことで、壁面に取付具を固定する際の位置精度にあまり神経を使う必要がなくなり、突っ張り棒を取り付ける作業の容易化と能率向上を図ることができる。
【0024】
更に、取付具には、架設した突っ張り棒の伸張力で、壁面に沿って斜めに押されて移動する力が働くが、固定部に設けた止着具の挿通孔を、座面に対して突っ張り棒の端部出し入れ方向に沿って傾斜するように設けるようにすると、挿通孔から壁面に突き刺して取付具を固定する止着具が、前記移動する方向に対して斜めに差し込まれ、取付具の移動阻止力が向上し、取付具の壁面への安定した固定状態が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明に係る入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具を示す正面図
【
図2】この発明に係る入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具の横断平面図
【
図3】この発明に係る入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具の斜視図
【
図4】この発明に係る入り隅コーナーへの突っ張り棒の取付具を用いて突っ張り棒を架設した使用状態の横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図4のように、この発明の取付具は、同じ構造のものを二個一組で用い、一の取付具1を室内の入り隅コーナにおける隣接する一方の壁面aに、他の一の取付具1を他方の壁面bにそれぞれ固定し、突っ張り棒2の両端を支持して斜めに架設するためのものである。
前記取付具1は、突っ張り棒2の端部を抜き差し自在に保持するための支持部3と、この支持部3を止着具14によって一方の壁面a又は他方の壁面bに固定するため、前記支持部3の両端に設けた第1固定部4と第2固定部5とからなり、支持部3と第1固定部4及び第2固定部5は、例えば、硬質の合成樹脂を用いて一体成形されている。
【0028】
上記支持部3は、突っ張り棒2の端部が納まる間隔で上下に対向する第1の対向壁6と第2の対向壁7及び、この第1の対向壁6と第2の対向壁7の間において支持部3の内部方向に向けて円弧状に凹入し、突っ張り棒2の端面を受け面8で当接支持する受圧壁9とを有し、前記第1の対向壁6は、直角の関係にある一方直線辺縁6aと他方直線辺縁6b及び傾斜辺縁6cを備え備えた直角三角形に形成され、前記第2の対向壁7は、直角の関係にある一方直線辺縁7aと他方直線辺縁7b及び傾斜辺縁7cを備えた直角三角形に形成され、
第1の対向壁6の一方直線辺縁6aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第1座面11で、第2の対向壁7の一方直線辺縁7aが一方の壁面a又は他方の壁面bに対して重ねる第2座面11aとなり、
上下の第1の対向壁6と第2の対向壁7は、第1の対向壁6の他方直線辺縁6bと第2の対向壁7の他方直線辺縁7bの部分が縦壁10で結ばれ、この支持部3は、第1の対向壁6における前記傾斜辺縁6cと第2の対向壁7における傾斜辺縁7c間の部分が、突っ張り棒2の端部を出し入れするための傾斜開口面となる直角三角形の容器状に形成されている。なお、前記縦壁10は、
図2のように、第1の対向壁6と第2の対向壁7の直角コーナー側に位置する端縁面が、第1の対向壁6の第1座面11及び第2の対向壁7の第2座面11aと同一面となる座面10aになっている。
【0029】
上記受圧壁9は、直角三角形となる第1の対向壁6と第2の対向壁7の間で、この第1の対向壁6の傾斜辺縁6cと、第2の対向壁7の傾斜辺縁7cにおける両端部間を結ぶように設けられ、この受圧壁9の受け面8が、第1の対向壁6の傾斜辺縁6cと第2の対向壁7の傾斜辺縁7c間に対して、この支持部3の内部方向に向けて前記傾斜辺縁6cと傾斜辺縁7cにおける両端を結ぶ単一半径の曲面で凹入し、これにより支持部3は、突っ張り棒2の端部出し入れ側となる上下の前記傾斜辺縁6cと傾斜辺縁7c間が開放した容器状になっている。
【0030】
図2のように、上記受圧壁9は、縦壁10の途中から第1の対向壁6の傾斜辺縁6cと第2の対向壁7の傾斜辺縁7c側においてこの縦壁10と厚みが一体化し、縦壁10の前記傾斜辺縁6cと傾斜辺縁7c側で直線面に移行していると共に、第1の対向壁6における第1の座面11と第2の対向壁7における第2の座面11a側の端部(前記傾斜辺縁6cの第1の座面11と傾斜辺縁7cの第2の座面11aに対する下がり側の端部)は、傾斜開口に向けて外広がりの傾斜状に屈曲しており、この第1の座面11と第2の座面11a側の端部間に第1固定部4が外方に突出するよう連ねて設けられている。また、縦壁10において、第1の対向壁6の第1の座面11と第2の対向壁7の第2の座面11a側に位置する端部間に第2固定部5が外方に突出するよう連ねて設けられている。
【0031】
上記受圧壁9の受け面8は、組み合わせて使用する突っ張り棒2の直径に合わせてその曲率半径を設定すればよいが、一般的に流通している突っ張り棒2の直径から勘案して、例えば、25mm程度の半径に設定すればよい。
【0032】
上記第1固定部4と第2固定部5は、第1の対向壁6の一方直線辺縁6aと第2の対向壁7の一方直線辺縁7aにおける両端部間に位置し、支持部3の上下幅方向に沿って伸びる長さを有する板状に形成され、第1固定部4の座面12及び第2固定部5の座面13は、第1の対向壁6の第1座面11と第2の対向壁7の第2座面11a及び縦壁10の座面10aと同一面になっており、前記第1固定部4と第2固定部5のそれぞれには、一方の壁面a又は他方の壁面bに突き刺す有頭ピンや有頭針のごとき止着具14の挿通孔15及び15aが複数ずつ設けられ、各挿通孔15、15aは止着具14の頭部が表面から突出しないようにする段付き孔になっている。
【0033】
図示の場合、第1方固定部4に設ける挿通孔15は座面12に対して傾斜させ、第2固定部5に設ける挿通孔15aは座面13に対して直角としている。ここで、前記第1固定部4に設ける挿通孔15の座面12に対する傾斜方向について述べる。
図4のように、一の取付具1と他の一の取付具1を入り隅コーナの隣接する一方の壁面aと他方の壁面bに固定して、前記一の取付具1と他の一の取付具1の間に突っ張り棒2を架設支持した際に、この突っ張り棒2は一方の壁面aと他方の壁面bに対して斜めとなり、突っ張り棒2の伸張力は、一の取付具1と他の一の取付具1を一方の壁面aと他方の壁面bに沿って離開方向に移動させようとする力となる。
このため、この移動する力の方向に対し、挿通孔15から一方の壁面a又は他方の壁面
bに対して斜めに差し込だ止着具14で移動阻止力が得られるように、前記第1固定部4に設ける挿通孔15の傾斜方向は、
図2及び
図4の拡大図で示されているように、前記移動阻止力が得られる方向の傾斜になっている。
なお、傾斜する挿通孔15は、第1固定部4と第2固定部5の何れに設けてもよく、また、前記両固定部4と5に設けるようにしてもよい。
【0034】
なお、一般に流通している突っ張り棒2は、伸縮パイプの内部にスプリングを組み込み、常時伸張する方向の弾性が付勢され、両端に固定したキャップ2aの端部は円形の端面になっている。
【0035】
この発明の取付具は上記のような構成であり、入隅コーナーに突っ張り棒を斜めに架設するには、同じ構造となる一の取付具1と他の一の取付具1を用意し、入隅コーナーの隣接する一方の壁面aと他方の壁面bに対して一の取付具1と他の一の取付具1を、その支持部3の開口面が互いに対向するよう上下を逆にした配置で固定する。
【0036】
上記一の取付具1と他の一の取付具1の一方の壁面aと他方の壁面bへの固定は、上記した縦壁10の座面10a、第1座面11、第2座面11a、座面12、座面13を一方の壁面a又は他方の壁面bに重ね、第1固定部4と第2固定部5に設けた挿通孔15及び15aから一方の壁面a又は他方の壁面bに止着具14を差し込むことで行い、前記一の取付具1と他の一の取付具1の配置間隔は架設せんとする突っ張り棒2の伸縮ストローク範囲内に適合するよう設定し、また、固定位置は架設せんとする突っ張り棒2の所望する傾斜角度が得られる位置にする。
【0037】
なお、一の取付具1と他の一の取付具1の一方の壁面aと他方の壁面bへの固定は、図示の場合、第1固定部4と第2固定部5に設けた挿通孔15及び15aから止着具14を差し込むようにしたが、両取付具1と1の合成樹脂による成型時に、第1固定部4と第2固定部5に対する挿通孔15及び15aの形成を省き、代わりに、挿通孔15及び15aを形成するための位置に、第1固定部4と第2固定部5の座面12、13から針軸を突出させ、止着具14を予め埋め込んで第1固定部4及び第2固定部5と一体化した構造を採用することができ、一方の壁面a又は他方の壁面bに一の取付具1と他の一の取付具1を固定するには、前記取付具1における縦壁10の座面10a、第1座面11、第2座面11a、座面12、座面13を一方の壁面a又は他方の壁面bに向けて押し付け、このとき、止着具14の針軸を一方の壁面a又は他方の壁面bへ突き刺すようにすればよく、このような止着具14の一体化構造は、取付具1の一方の壁面a又は他方の壁面bに対する固定がワンタッチで能率良く行えるという利点がある。
【0038】
次に、手で突っ張り棒2を収縮状態に保持して一の取付具1と他の一の取付具1の支持部3間に臨ませ、この状態で突っ張り棒2を伸張させながらその両端部を支持部3の内部に納め、手による突っ張り棒2の保持を解くと、伸張弾性が残った状態にある突っ張り棒2は、その両端部に固定したキャップ2aの端面が前記両取付具1と1における受圧壁9の受け面8に圧接し、両受圧壁9間で突っ張ることで突っ張り棒2の架設状態が保持される。
【0039】
図4は、一の取付具1と他の一の取付具1における受圧壁9の受け面8、これに対する突っ張り棒2のキャップ2aにおける端面の圧接部分の関係を示し、受圧壁9の受け面8は、第1の対向壁6と第2の対向壁7間において垂直状態で、支持部3における開放部分から内側に向けて凹入する円弧状となり、この受圧壁9の受け面8が単一半径の曲面になっているので、突っ張り棒2のキャップ2aにおける端面は、常に軸心を挟む前後二カ所の位置が受け面8に圧接することになり、この二点圧接によって突っ張り棒2の端部支持が安定し、突っ張り棒2をガタツキの発生がない状態で架設することができる。
【0040】
上記受圧壁9の受け面8は、単一半径の曲面になっているので、入隅コーナーの隣接する一方の壁面aと他方の壁面b間に架設する突っ張り棒2の角度は、45°の場合は勿論のことそれ以外の角度でも、常に軸心を挟む前後二カ所の位置が受け面8に圧接することになり、
図4に示す例のように、架設する場所の条件や状況に応じて突っ張り棒2の架設角度を広範囲で任意に選択できることになる。
【0041】
このように、突っ張り棒2を傾斜状に架設するとき、一方の壁面aと他方の壁面bに対する両取付具1と1の固定位置に精度が要求されないので、取付作業が行いやすいという利点がある。
【0042】
なお、突っ張り棒2の架設状態において、突っ張り棒2の端部を保持する支持部3は、上下に第1の対向壁6と第2の対向壁7が位置することになり、突っ張り棒2に上又は下向きの余分な外力が加わった場合でも、突っ張り棒2が両取付具1と1間から脱落しないように保持することができる。
【0043】
また、
図4のように、傾斜状に架設した突っ張り棒2の伸張力で、両取付具1と1は一方の壁面aと他方の壁面bに対して斜めに押され、これにより、両取付具1と1に対して一方の壁面aと他方の壁面bの離開する方向へ移動させる力が働き、一の取付具1は一方の壁面aに沿って、他の一の取付具1は他方の壁面bに沿って移動しようとするが、両取付具1と1における第1固定部4の傾斜する挿通孔15から一方の壁面a又は他方の壁面bに、止着具14を前記移動する方向に対して突っ張るように斜めに差し込むことで、両取付具1と1の移動阻止力が向上し、取付具1と1の一方の壁面a又は他方の壁面bへの安定した固定状態が得られることになる。
【符号の説明】
【0044】
1 取付具
2 突っ張り棒
3 支持部
3a 傾斜辺縁
4 第1の固定部
5 第2固定部
6 第1の対向壁
7 第2の対向壁
6a、7a 一方直線辺縁
6b、7b 他方直線辺縁
6c、7c 傾斜辺縁
8 受け面
9 受圧壁
10 縦壁
10a 縦壁の座面
11 第1座面
11a 第2座面
12 第1固定部の座面
13 第2固定部の座面
14 止着具
15、15a 挿通孔