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特許7001882ピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20220113BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20220113BHJP
   B01D 61/46 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/44 500
B01D61/46 500
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021144021
(22)【出願日】2021-09-03
【審査請求日】2021-09-04
(31)【優先権主張番号】202110831953.2
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520223723
【氏名又は名称】生態環境部華南環境科学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】520231016
【氏名又は名称】重慶市固体廃物管理中心
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】胡小英
(72)【発明者】
【氏名】賀框
(72)【発明者】
【氏名】劉嘉烈
(72)【発明者】
【氏名】張曼麗
(72)【発明者】
【氏名】卓麗
(72)【発明者】
【氏名】蔡洪英
(72)【発明者】
【氏名】李潔
(72)【発明者】
【氏名】張明楊
(72)【発明者】
【氏名】杜建偉
(72)【発明者】
【氏名】温勇
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6829798(JP,B1)
【文献】特表2015-534506(JP,A)
【文献】特表2005-532147(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111960515(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111960513(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111954568(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44- 1/48
B01D61/00-71/82
C02F 9/00- 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気透析器(1)と電気透析器(1)の内部空洞(11)に位置する膜スタック(2)
を含み、前記膜スタック(2)はバイポーラ膜(BPM)、陽イオン交換膜(CEM)、
陰イオン交換膜(AEM)と陽イオン交換膜が交互に配列されてなる4つのコンパートメ
ント(21)を有する二重電極膜電気透析構成(BP-C-A-C)であるピロリン酸銅め
っき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置であって、
前記電気透析器(1)の内部空洞(11)に、膜スタック(2)の両端にそれぞれ電極
組(3)が設けられ、前記電気透析器(1)上に膜スタック(2)のコンパートメント(
21)に適している配水システム(4)が設けられ、
前記電気透析器(1)の内部空洞(11)に、電極組(3)は膜スタック(2)から離
れた一側方向に沿って順次仕切り板(31)、アノードプレート(32)、カソードプレ
ート(33)および内部空洞(11)の側壁に埋め込まれた配線ボード(35)が垂直に
配置され、
前記アノードプレート(32)はアノード(321)と電極板(34)が接続されてな
り、前記カソードプレート(33)はカソード(331)と電極板(34)が接続されて
なり、
前記電極板(34)と仕切り板(31)の上下縁が摺動コンポーネント(36)を介し
て摺動可能に電気透析器(1)の上下内壁に接続され、電気透析器(1)外部に設けられ
たモータ(37)によって駆動され、電気透析器(1)側壁に開設されたスロット(12
)を介して電気透析器(1)にスライドしたり、電気透析器(1)からスライドしたりす
ることができ、前記電極板(34)の膜スタック(2)から離れた側に電気接続スロット
(341)が設けられ、
前記配線ボード(35)の膜スタック(2)から離れた側に配線ボックス(351)が
設けられ、他側に前記電気接続スロット(341)に適している伸縮可能な配線ポスト(
352)が設けられ、
前記配水システム(4)は、原水貯蔵プール(41)と、排水貯蔵プール(42)と、
単独に前記原水貯蔵プール(41)に接続された原水入口管(43)と、単独に前記排水
貯蔵プールに接続された排水管(4a)と、一端が原水貯蔵プール(41)に接続され第
1ポンプ(44)、電気透析器(1)、第2ポンプ(45)を介して、他端が原水貯蔵プ
ール(41)に接続された第1循環水管(46)と、一端が排水貯蔵プール(42)に接
続され第3ポンプ(47)、電気透析器(1)、第4ポンプ(48)を介して、他端が排
水貯蔵プール(42)に接続された第2循環水管(49)と、を含む、
ことを特徴とするピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置。
【請求項2】
前記仕切り板(31)と電極組(3)間の空洞が電極水チャンバー(13)を形成し、前
記2つの電極水チャンバー(13)間が第3循環水管A(4b)および第3循環水管B(
4c)を介して連通し、流体の循環を実現し、前記第3循環水管A(4b)の水流路上に
順次第5ポンプ(4b1)および第1電極水プール(4b2)が設けられ、前記第3循環
水管B(4c)の水流路上に順次第6ポンプ(4c1)および第2電極水プール(4c2
)が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の電気透析装置。
【請求項3】
前記膜スタック(2)の各コンパートメント(21)の底部に水入口(211)が設けら
れ、前記各水入口(211)の電気透析器(1)から離れた側に三方弁(213)を介し
てそれぞれ第1循環水管(46)および第2循環水管(49)と連通し、
前記膜スタック(2)の各コンパートメント(21)の頂部に排水口(212)が設けら
れ、前記各排水口(212)の電気透析器(1)から離れた側が三方弁(213)を介し
てそれぞれ第1循環水管(46)および第2循環水管(49)と連通する、ことを特徴と
する請求項1に記載の電気透析装置。
【請求項4】
前記各排水口(212)の電気透析器(1)に近い側が三方弁(213)を介してそれぞ
れ高水位管(2121)および低水位管(2122)と連通し、前記高水位管(2121
)の水入口高さが電気透析器(1)の内部空洞(11)の頂部の高さと一致し、前記低水
位管(2122)の水入口高さが電気透析器(1)の内部空洞(11)の底部の高さの近
くにある、ことを特徴とする請求項3に記載の電気透析装置。
【請求項5】
前記電極板(34)および仕切り板(31)は摺動方向に沿ってスロット(12)から離
れた縁にシールストリップ(38)が設けられ、前記シールストリップ(38)の形状は
スロット(12)の形状に適合している、ことを特徴とする請求項1に記載の電気透析装
置。
【請求項6】
前記各コンパートメント(21)の電極板(34)に平行する中心軸面に間隔を空けて複
数のストリップ状の波形乱流促進器(13)が垂直に設けられる、ことを特徴とする請求
項1に記載の電気透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気透析処理の技術分野に関し、具体的にピロリン酸銅めっき廃水を高効率に
脱塩する電気透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気透析器の動作中、陽イオン膜の低濃度室側で激化現象が発生、陰イオン膜の高濃度室
側で沈殿現象が発生し、沈殿物の蓄積は、イオン膜の作業効率を低下させる。沈殿現象の
問題を解決するために、定期的なメンテナンスを行い、電気透析器の内部を酸洗いするか
、電流効率を下げて、装置を低電力で運転する。しかし、これらの2つの方法は、電気透
析器の操作効率と時間を低下させる。したがって、現在の電気透析装置による沈殿したス
ケールに対する処理方法を最適化する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
上記の目的を達成するために、本発明は、ピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電
気透析装置を提供し、電極を切り替えることで、スケールが溶解と沈殿間に変更され、ス
ケールによるイオン膜の詰まりに起因して電気透析器の運転に悪影響を与えることを防ぎ
、具体的な技術的解決策は、以下のとおりである。
【0004】
本発明によって設計されたピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置は、
電気透析器と電気透析器の内部空洞に位置する膜スタックを含み、前記膜スタックは4つ
のコンパートメントを有するBP-C-A-C構成である。
膜スタックは実質的にバイポーラ膜電気透析技術であり、バイポーラ膜(BPM)、陽イ
オン交換膜(CEM)、陰イオン交換膜(AEM)と陽イオン交換膜が交互に配列されて
なる4コンパートメント二重電極膜電気透析構成(BP-C-A-C)である。ピロリン酸
イオンなどの陰イオンがイオン交換膜を通過して排水貯蔵プールに入り、銅イオンが高濃
度室から原水貯蔵プールに入って循環し、それによって銅およびリンを分離する。
前記電気透析器の内部空洞に、膜スタックの両端にそれぞれ電極組が設けられ、前記電気
透析器上に、膜スタックのコンパートメントに適している配水システムが設けられる。
前記電気透析器の内部空洞に、電極組が膜スタックから離れた側の方向に沿って順次仕切
り板、アノードプレート、カソードプレートおよび内部空洞側壁に埋め込まれた配線ボー
ドが垂直に配置される。
前記アノードプレートは、アノードと電極板が接続されてなり、前記カソードプレートは
カソードと電極板が接続されてなる。
前記電極板と仕切り板の上下縁が摺動コンポーネントを介して摺動可能に電気透析器の上
下内壁に接続され、電気透析器外部に設けられたモータによって駆動され、電気透析器側
壁に開設されたスロットを介して電気透析器にスライドしたり、電気透析器からスライド
したりすることができ、前記電極板の膜スタックから離れた側に電気接続スロットが設け
られる。
前記配線ボードの膜スタックから離れた側に配線ボックスが設けられ、他側に前記電気接
続スロットに適している伸縮可能な配線ポストが設けられる。「配線ボード-カソードプ
レート-アノードプレート」の構造を例とする場合、アノードプレートを引き抜くと、配
線ボードの配線ポストがカソードプレートの電気接続スロットに当接され、このときカソ
ードプレートが作動し始め、カソードプレートを引き抜くと、配線ボードの配線ポストが
アノードプレートの電気接続スロットに当接され、このときアノードプレートが作動し始
める。上記のステップによって、本発明は、連続排水の前提下で、膜スタック両側の電極
組の回路方向を変更することができる。
前記配水システムは、原水貯蔵プール、排水貯蔵プール、単独に前記原水貯蔵プールに接
続された原水入口管、単独に前記排水貯蔵プールに接続された排水管、一端が原水貯蔵プ
ールに接続され第1ポンプ、電気透析器、第2ポンプを介して、他端が原水貯蔵プールに
接続された第1循環水管、および一端が排水貯蔵プールに接続され第3ポンプ、電気透析
器、第4ポンプを介して、他端が排水貯蔵プールに接続された第2循環水管を含む。
配水システムの設計目的は、電気透析器のモータが変換されたとき、膜スタックの高濃度
室、低濃度室の変換に適応することであり、高濃度室、低濃度室が電流方向によって変わ
ると、原水の進入経路と排水の出力経路をともに変更する必要がある。
本発明の一側面として、前記仕切り板と電極組間の空洞が電極水チャンバーを形成し、前
記2つの電極水チャンバー間が第3循環水管Aおよび第3循環水管Bを介して連通し、流
体循環を実現し、前記第3循環水管Aの水流路に順次第5ポンプおよび第1電極水プール
が設けられ、前記第3循環水管Bの水流路に順次第6ポンプおよび第2電極水プールが設
けられる。
第3循環水管Aおよび第3循環水管Bは、2つの電極水チャンバーの電極水が循環および
流動するための通路を形成し、これに加えて、第3循環水管Aは水路調整の作用も果たし
、電気透析器の電極極性を変更する必要がある時、仕切り板を使用して電極水チャンバー
を封止し、第5ポンプにより電極水チャンバー中の電極水を第1電極水プールに吸い込ん
で、電極の変更過程中、電極水チャンバー中に電極水がないのを確保する。
【0005】
本発明の一側面として、前記膜スタックの各コンパートメントの底部にそれぞれ水入口が
設けられ、前記各水入口の電気透析器から離れた側が三方弁を介してそれぞれ第1循環水
管および第2循環水管と連通する。
前記膜スタックの各コンパートメントの頂部にそれぞれ排水口が設けられ、前記各排水口
の電気透析器から離れた側が三方弁を介してそれぞれ第1循環水管および第2循環水管と
連通する。
高濃度室、低濃度室は電流方向によって位置が変更したと、原水の進入経路と目標水の出
力経路をともに変更する必要があり、このとき各コンパートメントの水入口、排水口が三
方弁を介して正確的な循環水路に接続される必要があり、選択標準として、高濃度室、低
濃度室のコンパートメントの水入口、排水口が接続される水路は同じ循環水路であり、高
濃度室、低濃度室が変更された後、ピロリン酸銅廃水が継続的に原水貯蔵プールに流入し
、リン含有廃液も排水貯蔵プールに流入することを確保する必要がある。
【0006】
本発明の一側面として、前記各排水口の電気透析器に近い側が三方弁を介してそれぞれ高
水位管および低水位管と連通し、前記高水位管の水入口高さが電気透析器の内部空洞の頂
部と一致し、前記低水位管の水入口高さが電気透析器の内部空洞の底部の近くにある。
高水位管と低水位管の2つの排水方式を設計することで、異なる状態のコンパートメント
の排水ニーズを満たし、電気透析器が正常に動作すると、コンパートメントに水で満たさ
れているため、排水が高水位管から流出するが、定期的なメンテナンスや点検により電気
透析器の動作を停止すると、水の流入が中断するため、コンパートメント中の水位が徐々
に低下し、水面と高水位管の間に隙間ができ、高水位管のポンプ性能が遮断されるため、
低水位管によりコンパートメント中の残りの水を吸い込む必要がある。
【0007】
本発明の一側面として、前記電極板と仕切り板は摺動方向に沿ってスロットから離れた縁
にシールストリップが設けられ、前記シールストリップはスロットの形状に適合している
。シールストリップの作用は、電気透析器全体の封止性を確保し、電極板と仕切り板が変
位した後、外部の空気が電気透析器に進入して外部汚染物を導入するのを回避することで
ある。
本発明の一側面として、前記各コンパートメントは電極板に平行する中心軸面に間隔を空
けて複数のストリップ状の波形乱流促進器が垂直に配置される。水流が乱流促進器を通っ
て流れると、物質移動境界層に周期的な不安定な流動を生成し、濃度境界層、物質移動を
破壊する同時に沈殿による詰まりを防ぐことができる。
【0008】
本発明の一側面として、本発明で使用される水路用パイプの内面がサンドブラスト処理さ
れ、処理後の表面粗さが0.01~0.04であり、流体の流動抵抗を低減し、パイプが
スムーズであるのを確保することができる。
【0009】
従来の電気透析装置と比べると、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、ピロリン酸銅めっき廃水を連続的に脱塩する前提下で、電気透析器の電
極を迅速変更し、高濃度室、低濃度室を対応して変更して、陰イオン膜の両側表面上のス
ケールが溶解と沈殿状態間で交互に変更し、常に不安定な状態になり、スケールによるイ
オン膜の詰まりに起因して電気透析器の運転に悪影響を与えるのを防ぐ。
(2)本発明によって設計された電気透析器は、配水システムを最適化することで、廃水
中のピロリン酸塩の分離効率が95%以上に達し、得られたリン含有濃縮液の濃度が10
g/L以上と高かった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電気透析器の正面断面図である。
図2】本発明の電気透析器の上面図である。
図3】本発明の配水システムの接続の概略図である。
図4】本発明の応用例における正方向電流下の配水方式である。
図5】本発明の応用例における略方向電流下の配水方式である。
【0011】
[符号の説明]
1 電気透析器
11 内部空洞
12 スロット
13 電極水チャンバー
14 乱流促進器
2 膜スタック
21 コンパートメント
211 水入口
212 排水口
2121 高水位管
2122 低水位管
213 三方弁
3 電極組
31 仕切り板
32 アノードプレート
321 アノード
33 カソードプレート
331 カソード
34 電極板
341 電気接続スロット
35 配線ボード
351 配線ボックス
352 配線ポスト
36 摺動コンポーネント
37 モータ
38 シールストリップ
4 配水システム
41 原水貯蔵プール
42 排水貯蔵プール
43 原水入口管
44 第1ポンプ
45 第2ポンプ
46 第1循環水管
47 第3ポンプ
48 第4ポンプ
49 第2循環水管
4a 排水管
4b 第3循環水管A
4b1 第5ポンプ
4b2 第1電極水プール
4c 第3循環水管B
4c1 第6ポンプ
4c2 第2電極水プール
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によって達成される方法および効果をさらに説明するために、本発明の技術的解決
策を、添付の図面と併せて以下に明確かつ完全に説明する。
【0013】
実施例1
実施例1では、本発明によって設計された装置の具体的な構造を説明し、具体的に以下の
とおりである。
図1および図2に示すように、本発明によって設計されたピロリン酸銅めっき廃水を高効
率に脱塩する電気透析装置は、電気透析器1と電気透析器1の内部空洞11に位置する膜
スタック2を含み、前記膜スタック2は4つのコンパートメント21を有するBP-C-A
-C構成である。
膜スタック2は実質的にバイポーラ膜電気透析技術であり、バイポーラ膜、陽イオン交換
膜、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜が交互に配列されてなる4コンパートメント二重電
極膜電気透析構成である。ピロリン酸イオンなどの陰イオンがイオン交換膜を通過して排
水貯蔵プール42に入り、銅イオンが高濃度室から原水貯蔵プール41に入って循環し、
それによって銅およびリンを分離する。
前記電気透析器1の内部空洞11に、膜スタック2の両端にそれぞれ電極組3が設けられ
、前記電気透析器12上に、膜スタック2のコンパートメント21に適している配水シス
テム4が設けられる。
前記電気透析器1の内部空洞11に、電極組3が膜スタック2から離れた側の方向に沿っ
て順次仕切り板31、アノードプレート32、カソードプレート33および内部空洞11
側壁に埋め込まれた配線ボード35が垂直に配置される。
前記アノードプレート32はアノード321と電極板34が接続されてなり、前記カソー
ドプレート33はカソード331と電極板34が接続されてなる。本実験例では、前記ア
ノード321はプラチナイリジウムコーティングされた電極であり、前記カソードプレー
ト33はチタン電極である。
前記電極板34と仕切り板31の上下縁が摺動コンポーネント36を介して摺動可能に電
気透析器1の上下内壁に接続され、電気透析器1外部に設けられたモータ37によって駆
動され、電気透析器1の側壁上に開設されたスロット12を介して電気透析器1に対して
スライドすることができ、前記電極板34の膜スタック2から離れた側に電気接続スロッ
ト341が設けられる。
前記配線ボード35の膜スタック2から離れた側に配線ボックス351が設けられ、他側
に前記電気接続スロット341に適している伸縮可能な配線ポスト352が設けられる。
「配線ボード35-カソードプレート33-アノードプレート32「の構造を例にすると、
アノードプレート32を引き抜くと、配線ボード35の配線ポスト352がカソードプレ
ート33の電気接続スロット341に当接され、このときカソードプレート33が作動し
始め、カソードプレート33を引き抜くと、配線ボード35の配線ポスト352がアノー
ドプレート32の電気接続スロット341に当接され、このときアノードプレート32が
作動し始める。上記のステップによって、本発明は、連続排水の前提下で、膜スタック2
両側の電極組3の回路方向を変更することができる。
図3に示すように、前記配水システム4は原水貯蔵プール41、排水貯蔵プール42、単
独に前記原水貯蔵プール41に接続された原水入口管43、単独に前記排水貯蔵プールに
接続された排水管4a、一端が原水貯蔵プール41に接続され第1ポンプ44、電気透析
器1、第2ポンプ45を介して、他端が原水貯蔵プール41に接続された第1循環水管4
6、および一端が排水貯蔵プール42に接続され第3ポンプ47、電気透析器1、第4ポ
ンプ48を介して、他端が排水貯蔵プール42に接続された第2循環水管49を含む。
配水システム4の設計目的は、電気透析器1モータが変更されたとき、膜スタック2の高
濃度室、低濃度室の変換に適応することであり、高濃度室、低濃度室が電流方向によって
変わると、原水の進入経路と排水の出力経路をともに変更する必要がある。
具体的には、前記仕切り板31と電極組3間の空洞が電極水チャンバー13を形成し、前
記2つの電極水チャンバー13間が第3循環水管A 4bおよび第3循環水管B 4cを介
して連通し、流体の循環を実現し、前記第3循環水管A 4bの水流路上に順次第5ポン
プ4b1および第1電極水プール4b2が設けられ、前記第3循環水管B 4cの水流路
に順次第6ポンプ4c1および第2電極水プール4c2が設けられる。
第3循環水管A 4bおよび第3循環水管B 4cは、2つの電極水チャンバー13中の電
極水が循環および流動するための通路を形成し、これに加えて、第3循環水管A 4bは
水路調整の作用も果たし、電気透析器1の電極極性を変更する必要がある時、仕切り板3
1を使用して電極水チャンバー13を封止し、第5ポンプ4b1により電極水チャンバー
13中の電極水を第1電極水プール4b2に吸い込んで、電極の変更過程中、電極水チャ
ンバー13中に電極水がないのを確保する。
具体的には、前記膜スタック2の各コンパートメント21の底部に水入口211が設けら
れ、前記各水入口211の電気透析器1から離れた側が三方弁213を介してそれぞれ第
1循環水管46および第2循環水管49と連通する。
前記膜スタック2の各コンパートメント21の頂部にそれぞれ排水口212が設けられ、
前記各排水口212の電気透析器1から離れた側が三方弁213を介してそれぞれ第1循
環水管46および第2循環水管49と連通する。
高濃度室、低濃度室は電流方向によって位置が変更したと、原水の進入経路と目標水の出
力経路をともに変更する必要があり、このとき各コンパートメント21の水入口211、
排水口212が三方弁213を介して正確的な循環水路に接続される必要があり、選択標
準として、高濃度室、低濃度室のコンパートメント21の水入口211、排水口212が
接続される水路は同じ循環水路であり、高濃度室、分散箇が変更された後、ピロリン酸銅
廃水が継続的に原水貯蔵プール41に流入し、リン含有廃液も排水貯蔵プール42に流入
することを確保する必要がある。
具体的には、前記各排水口212の電気透析器1に近い側が三方弁213を介してそれぞ
れ高水位管2121および低水位管2122と連通し、前記高水位管2121の水入口高
さが電気透析器1の内部空洞11の頂部に一致し、前記低水位管2122の水入口高さが
電気透析器1の内部空洞11の底部の近くにある。
高水位管2121と低水位管2122の2つの排水方式を設計することで、異なる状態の
コンパートメント21の排水ニーズを満たし、電気透析器1が正常に動作すると、コンパ
ートメント21に水で満たされているため、排水が高水位管2121から流出するが、定
期的なメンテナンスや点検などにより電気透析器1の動作を停止すると、水の流入が中断
するため、コンパートメント21中の水位が徐々に低下し、水面と高水位管2121間に
隙間ができ、高水位管2121のポンプ性能が遮断されるため、低水位管2122により
コンパートメント21中の残りの水を吸い込む必要がある。
具体的には、前記電極板34と仕切り板31は摺動方向に沿ってスロット12から離れた
縁にシールストリップ38が設けられ、前記シールストリップ38はスロット12の形状
に適合している。シールストリップ38の作用は、電気透析器1全体の封止性を確保し、
電極板34と仕切り板31が変位した後、外部の空気が電気透析器1に進入して外部汚染
物を導入するのを回避することである。
具体的には、前記各コンパートメント21は電極板34に平行する中心軸面上に間隔を空
けて複数のストリップ状の波形乱流促進器13が垂直に配置される。水流が乱流促進器1
3を通って流れると、物質移動境界層に周期的な不安定な流動を生成し、濃度境界層、物
質移動を破壊する同時に沈殿による詰まりを防ぐことができる。
具体的には、本発明で使用される水路用パイプの内面がサンドブラスト処理され、処理後
の表面粗さが0.01であり、流体の流動抵抗を低減し、パイプがスムーズであるのを確
保することができる。
【0014】
実施例2
以下のことを除いて、実施例2は実施例1と同じである。
本実施例では、乱流促進器13は、斜方向にコンパートメント21に設けられたネット構
造であり、斜向角度は45°であり、水入口211の近くにあり、中心高さがコンパート
メント21の高さの1/4である。このような位置設計は、コンパートメント21の他の
部分の流体境界層の流速が低く、生成される渦強度も低いため、より良い均質化効果を達
成するために、乱流促進器13を流速の高い水入口211に取り付けることで渦強度を高
める。
すべての水路用パイプの内面がサンドブラスト処理され、処理後の表面粗さが0.04で
ある。
【0015】
応用例
本応用例は実施例1に記載の内容に基づいて説明されるが、本発明の動作原理を説明する
ためである。
図4に示すように、BP-C-A-C構成では、膜スタック2の左端が「配線ボード35-ア
ノードプレート32」であり、膜スタック2の右端が「配線ボード35-カソードプレー
ト33」であり、このとき4つのコンパートメント21は、アノードからカソードへそれ
ぞれ「低濃度室-高濃度室-低濃度室-高濃度室」である。
ピロリン酸銅めっき廃水が原水入口管43が原水貯蔵プール41に進入し、第1ポンプ4
4の作用下で、高濃度室底部の水入口211から電気透析器1に進入する。ピロリン酸銅
めっき廃水が電気透析器1で満たされた後、ピロリン酸イオンなどの陰イオンがイオン交
換膜を通過して低濃度室に進入し、低濃度室の排水口212から排水貯蔵プール42に流
入し、銅イオンが高濃度室の排水口212から原水貯蔵プール41に流入して循環する。
これまで、銅およびリンの分離を達成する。
電気透析器1を一定時間運転した後(具体的な運転状況に応じて、1週間から1ヶ月の間
)、陰イオン膜の高濃度室側では沈殿現象が発生し、沈殿によりイオン膜の動作効率が低
下し、このとき電極を反転する必要がある。電極を反転する場合、仕切り板31により内
部空洞11と電極水チャンバー13を仕切り、電極水チャンバー13を完全に排出して、
膜スタック2の左端のカソードプレート33を下げ、アノードプレート32を引き抜き、
膜スタック2の右端のアノードプレート32を下げ、カソードプレート33を引き抜く。
図5に示すように、電極を反転した後、膜スタック2の左端が「配線ボード35-カソー
ドプレート33」であり、膜スタック2の右端が「配線ボード35-アノードプレート3
2」であり、このとき4つのコンパートメント21は、カソードからアノードへそれぞれ
「高濃度室-低濃度室-高濃度室-低濃度室」である。三方弁213により高濃度室の進水
と排水が依然として第1循環水管44にあり、低濃度室の進水と排水が依然として第2循
環水管49にあることを確保する。
その後の電気透析器1中の銅およびリンの分離過程は上記と同じである。
【0016】
実験例
本実験例は上記実施例1に記載の内容に基づいて説明されるが、本発明の実際の運転効果
を説明するためである。
本実験例で使用されるピロリン酸塩銅めっき廃水は西安のある工場のめっき部品の浸出水
から採取したものであり、水質指標が表1に示される。電気透析器1で使用されるイオン
交換膜の物理的および化学的性能指標が表2に示される。
表1 ピロリン酸塩銅めっき廃水の水質
【0017】
【0018】
表2イオン交換膜の物理的および化学的性能指標
【0019】
【0020】
本発明によって設計された電気透析器1によるピロリン酸銅めっき廃水中のピロリン酸イ
オンに対する分離効率を比較するために、以下の実験組を設計した。
ブランク組:通常のBP-C-A-C構成の電気透析器により上記実験廃水-ピロリン酸銅め
っき廃水を脱塩し、つまり直接フロープロセスによりピロリン酸イオンを分離して、12
h後の排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測定した。
対照組1:本発明によって設計された電気透析器1により上記実験廃水を脱塩し、該対照
組では、配水システム4の循環水路に加えて、つまり直接フロープロセスによりピロリン
酸イオンを分離して、12 h後の排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測定した。
対照組2:対照組2は、電気透析器中の乱流促進器14を省略することを除いて対照組1
と同じである。
対照組3:本発明によって設計された電気透析器1により上記実験廃水を脱塩し、該対照
組では、配水システム4の循環水路を使用し、つまり循環式プロセスによりピロリン酸イ
オンを分離して、12 h後排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測定した。
対照組4:対照組4は、3日間後の排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測定することを
除いて、対照組3と同じである。
対照組5:対照組4は、7日間後の排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測定することを
除いて、対照組3と同じである。
対照組6:対照組6は、電極を反転して1 h後排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測
定することを除いて、対照組5と同じである。
対照組7:対照組7は、電極を反転して1日間後排水管4aのピロリン酸イオン濃度を測
定することを除いて、対照組6と同じである。
上記実験組の具体的なデータ結果が表3に示される。
表3実験組の具体的なデータ結果
【0021】
【0022】
ブランク組と対照組1を比較して分かるように、本発明の配水システム4の循環水路を省
略すると、つまり直接フロープロセスによりピロリン酸イオンを分離する時、通常の電気
透析器と比べると、ピロリン酸イオンの分離効率が大きな差がなく、最終的にリン含有濃
縮液の濃度が5~6g/Lであった。
比対照組1と対照組2を比較して分かるように、本発明の乱流促進器14を省略した後、
ピロリン酸イオンの分離効率がわずか低下し、このときシステムのエネルギー消費量が増
加し、電気透析器1内の物質移動効率が低下してシステムの電気抵抗が大きくなって、エ
ネルギー消費量が増加するからである可能性がある。
比対照組3と対照組1を比較して分かるように、本発明の配水システム4は循環水路を採
用すると、つまり循環式プロセスによりピロリン酸イオンを分離する時、直接フロープロ
セスと比べると、ピロリン酸イオンの分離効率が顕著に増加し、96.2%に達し、最終
的にリン含有濃縮液の濃度が10g/Lより大きかった。
対照組4と対照組1を比較して分かるように、電気透析器1の動作時間の増加に従って、
ピロリン酸イオンの分離効率が87.0%に低下し、最終的にリン含有濃縮液の濃度が1
2~13g/Lであった。
比対照組5と対照組1を比較して分かるように、電気透析器1の動作時間の増加に従って
、ピロリン酸イオンの分離効率が74.98%に低下し、最終的にリン含有濃縮液の濃度
が10~11g/Lであり、このときシステムのエネルギー消費量が91.8 kW・h/
kgのピーク値に達し、これは、電気透析器1内の陰イオン膜の高濃度室側では沈殿現象
が発生し、物質移動効率が大幅低下し、システムの電気抵抗が大きくなり、エネルギー消
費量が顕著に増加するからである可能性がある。
対照組6と対照組5を比較して分かるように、電極を反転した後、ピロリン酸イオンの分
離効率がやや向上し、81.34%に達し、最終的にリン含有濃縮液の濃度が11~12
g/Lであり、システムのエネルギー消費量も85.7 kW・h/kgに低下した。これ
は、電極を反転した後、高濃度室、低濃度室も反転し、陰イオン膜の両側表面上のスケー
ルが溶解し、物質移動効率が上昇し、システムの電気抵抗が小さくなり、エネルギー消費
量も低下するからである可能性がある。
対照組7と対照組6を比較して分かるように、電気透析器1の動作時間の増加に従って、
ピロリン酸イオンの分離効率が継続的に94.78%に上昇し、最終的にリン含有濃縮液
の濃度が13~14g/Lであり、これは、電極を反転した後、陰イオン膜の両側表面上
のスケールが溶解と沈殿状態間で交互に変更し、常に不安定な状態になり、物質移動効率
が向上し、システムのエネルギー消費量も再び71.2kW・h/kgに低下した。
以上のように、本実験例をまとめると、7日のサイクルで電気透析器1の電極を反転する
と、電気透析器1中のスケールの沈殿現象を大幅に軽減することができ、システムによっ
て得られたリン含有濃縮液の濃度が10g/L以上になり、ピロリン酸塩の分離効率が9
5%以上になるため、本発明は幅広く適用される価値がある。
【要約】      (修正有)
【課題】ピロリン酸銅めっき廃水を高効率に脱塩する電気透析装置を提供する。
【解決手段】膜スタックは4つのコンパートメントを有するBP-C-A-C構成であり、電気透析器の内部空洞に、膜スタックの両端にそれぞれ電極組を設け、電気透析器上に膜スタックのコンパートメントに適している配水システム4が設けられ、ピロリン酸銅めっき廃水の電気透析器の電極を迅速に切り替え、陰イオン膜の両側表面上のスケールが溶解と沈殿状態間に交互に切り替えられ、スケールによるイオン膜の詰まりに起因して電気透析器の運転に悪影響を与えることを防止する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5