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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】工業用殺菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/02 20060101AFI20220113BHJP
   A01N 35/08 20060101ALI20220113BHJP
   A01N 35/10 20060101ALI20220113BHJP
   A01N 37/00 20060101ALI20220113BHJP
   A01N 43/10 20060101ALI20220113BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N35/08
A01N35/10
A01N37/00
A01N43/10 G
A01P3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017170083
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019043907
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川村 泰史
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-2606(JP,A)
【文献】特開2008-94749(JP,A)
【文献】特開2013-91638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/02
A01N 35/08
A01N 35/10
A01N 37/00
A01N 43/10
A01P 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中Xは水素又は塩素を示す)で表されるグリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を含有する組成物であって、さらにエポキシ化植物油を含有し、
前記ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物が、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールからなる群より選択される一種以上であり、
エポキシ化植物油を、0.05~0.5重量%の範囲で含有することを特徴とする工業用殺菌組成物。
【請求項2】
一般式(1)
【化1】
(式中Xは水素又は塩素を示す)で表されるグリオキシム化合物が、ジクロログリオキシムであることを特徴とする請求項1に記載の工業用殺菌組成物。
【請求項3】
エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油であることを特徴とする請求項1または2に記載の工業用殺菌組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙パルプ工業における製紙用薬剤、各種工業用の冷却水、金属加工油、繊維油剤、糊剤、塗型剤等の防腐剤、殺菌剤として有効であり、細菌、真菌等の微生物による腐敗から長期間にわたって保護することが可能な工業用殺菌組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙パルプ工業分野における製紙用薬剤とは、塗料、ラテックス、デンプンスラリー液、紙用コーティングカラー、紙力剤等の水をベースにした工業用水系組成物であり、これらは細菌に汚染されることによって腐敗が生じ、臭気の発生、粘度低下やpH変動等の物性劣化、真菌が繁殖することによってストレーナーの目詰まり、着色、異物混入などを引き起こす。
【0003】
また、多くの工業製品、例えば切削油等の金属加工用油剤、カゼイン、澱粉糊、にかわ、接着剤、合成ゴム、インキ、樹脂製品、コンクリート混和剤、塗型剤等の各種工業製品には、細菌、真菌等の有害な微生物が繁殖しやすく、生産性や品質の低下、悪臭の発生等の原因となっている。そのため、このような微生物の繁殖を防除するために、工業用殺菌剤が広く用いられている。
【0004】
このような工業用殺菌剤としては、従来から、グリオキシム化合物、環状窒素硫黄系化合物、臭素系化合物、チオシアン系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、チオフェン系化合物等が単独又はこれらの混合物が使用されている。しかし、これらの化合物類は使用上においても種々の欠点を有しており、例えば、特定の化合物を組合せることによる分解、薬剤の殺菌効果が不十分であること、長期に使用した場合の微生物の耐性獲得、作業環境上の泡立ち等の悪影響を与える欠点を有する場合がある。
【0005】
グリオキシム化合物とチオフェン系化合物又はハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を混合した殺菌技術としては、グリオキシム化合物と次の化合物群より選ばれる少なくとも一種の化合物を有効成分とする工業用殺菌、防腐、殺藻剤が見出されている(特許文献1)。次の化合物群とは、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール化合物(a)、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(b)、2-ブロモ-2-(ブロモメチル)グルタロニトリル(c)、メチレンビスチオシアナート(d)、4,5-ジクロロ-3H-1,2-ジチオール-3-オン(e)、2,2-ジブロモ-2-シアノアセトアミド(f)、ムコブロム酸(g)、ハロゲン化酢酸エステル化合物(h)、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(i)が挙げられている。
【0006】
チオフェン系化合物とハロゲン化ニトロアルコール系化合物を混合した殺菌技術としては、ジブロモニトロアルコール化合物と3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドを有効成分とする工業殺菌剤が見出されている(特許文献2)。
【0007】
さらに、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドとハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を混合した技術としては、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール及び3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドを含有することを特徴とする工業用殺菌組成物として見出されている(特許文献3)。
【0008】
また、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド等の化合物を安定化させる技術としては、微生物増殖抑制剤含有マイクロカプセル化の技術が見出されている(特許文献4)。
【0009】
グリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドを含有する組成物の場合、各成分の安定性が十分ではなく、分解による効力低下や流通過程、使用現場における保管に耐えられない問題があった。また、特許文献4の様に、マイクロカプセルに微生物増殖抑制剤を封入させることで安定化させた例もあるが、マイクロカプセルを製造するための設備やコスト面など簡易に実用化させるには難しい点も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平7-2606号公報
【文献】特開平1-102004号公報
【文献】特開2003-192507号公報
【文献】特開2001-247409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、合剤化が困難であるグリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を組合せた製剤中で各成分を安定に存在させることで、幅広い効力のスペクトルを持ち、且つ殺菌力と静菌力を有することで耐性獲得を持つ前に微生物を殺菌でき、さらに、長期の安定性に優れるため流通過程や使用現場での保管に有利な工業用殺菌組成物を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、[1]一般式(1)
【化1】
(式中Xは水素又は塩素を示す)で表されるグリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を有効成分とし、安定性を向上させるためエポキシ化植物油を加えることで、グリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物の分解が飛躍的に抑制させることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の発明に係るものである。
[1]一般式(1)
【化1】
(式中Xは水素又は塩素を示す)で表されるグリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を含有する組成物であって、さらにエポキシ化植物油を含有することを特徴とする工業用殺菌組成物。
[2]一般式(1)
【化1】
(式中Xは水素又は塩素を示す)で表されるグリオキシム化合物が、ジクロログリオキシムである[1]に記載の工業用殺菌組成物。
[3]ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物が、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールからなる群より選択される一種以上である[1]又は[2]に記載の工業用殺菌組成物。
[4]エポキシ化植物油が、エポキシ化大豆油である[1]~[3]に記載の工業用殺菌組成物。
[5]エポキシ化植物油を、0.05~0.5重量%の範囲で含有する[1]~[4]に記載の工業用殺菌組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の工業用殺菌組成物を用いることで、紙パルプ工業における製紙用薬剤や各種工業における産業用水、多くの工業製品で、品質の低下、悪臭の発生等の原因となる、細菌、かび、酵母等の繁殖をより長期的に防ぎ、且つ殺菌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用するグリオキシム化合物はHON=C-C=NOHを骨格として持つ化合物であり、公知の技術によって製造することができ、モノクロログリオキシム、ジクロログリオキシム等が挙げられる。また、グリオキシム化合物は、工業用原料として一般に市販されているものも使用することができ、例えば、「DCG・MDG」(ジクロログリオキシムの10重量%、メチルジグリコール溶液)としてフジ産業社から市販されているものが使用できる。これらのグリオキシム化合物としては、ジクロログリオキシムを使用することが好ましい。
【0016】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられるグリオキシム化合物の配合量としては、0.1~20重量%の濃度範囲で含有することが好ましく、1~10重量%の濃度範囲がより好ましく、さらに1~5重量%の濃度範囲で含有することがより好ましい。
【0017】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられる3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドは、公知の技術によって製造することができるが、一般の試薬として市販されているものも使用可能である。
【0018】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられる3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシドの配合量としては、0.1~20重量%の濃度範囲で含有することが好ましく、1~10重量%の濃度範囲がより好ましく、さらに1~5重量%の濃度範囲で含有することがより好ましい。
【0019】
本発明の使用するハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物は公知の技術によって製造することができるが、一般の工業用原料としては市販されているものも使用可能である。例えば、「DBNE-75」(2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールの75重量%、ジエチレングリコール溶液)としてケミクレア社から市販されているもの、「BRONOPOL」(2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールの99重量%以上)としてケミクレア社から市販されているもの等が利用可能である。これらのハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物としては、2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールを使用することが好ましい。
【0020】
本発明におけるハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物は、0.1~60%の濃度範囲で含有することが好ましく、5~40%の濃度範囲で含有することがより好ましい。
【0021】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられるエポキシ化植物油としては、エポキシ化乾性油、エポキシ化半乾性油、エポキシ化不乾性油等が挙げられる。エポキシ化乾性油の具体例としては、エポキシ化アマニ油、エポキシ化キリ油、エポキシ化エノ油等が挙げられ、エポキシ化半乾性油の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化綿実油、エポキシ化ゴマ油、エポキシ化ナタネ油等が挙げられ、エポキシ化不乾性油の具体例としては、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化ツバキ油、エポキシ化ラッカセイ油、エポキシ化ヤシ油等が挙げられ、これらのうち、エポキシ化大豆油が特に好ましい。また、エポキシ化植物油は、公知の技術によって製造することができるが、一般の工業用原料として市販されているものも使用可能である。例えば、エポキシ化大豆油としては「ニューカルゲン800」として竹本油脂株式会社から市販されているもの、「アデカサイザー(登録商標)O-130P」として株式会社ADEKAから市販されているもの等が利用可能である。これらのエポキシ化植物油としては、エポキシ化大豆油を使用することが好ましい。
【0022】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられるエポキシ化植物油の含有量としては、0.05~0.5重量%が好ましく、0.2~0.5重量%の濃度範囲で含有することがより好ましい。
【0023】
本発明の工業用殺菌組成物に用いられる溶剤としては、製剤の安定性に影響を与えない範囲で、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エステル系溶剤等が使用できる。これらの溶剤は、二種以上を混合して使用しても差し支えない。
【0024】
グリコールエーテル系溶剤は、グリコールの水酸基の少なくともひとつがアルキル基のエーテル結合になっている化合物であり、具体的な例としてメチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、ヘキシルジグリコール、イソプロピルジグリコール、イソブチルジグリコール、フェニルジグリコール、メチルプロピレングリコール、ジメチルジグリコール、メチルエチルジグリコール等が挙げられる。
【0025】
アルコール系溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
【0026】
グリコール系溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度1000以下)、ブチレングリコール等が挙げられる。
【0027】
エステル系溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0028】
界面活性剤に関しては、本発明の工業用殺菌組成物の製剤を行なう上で必ずしも配合されるべきものではないが、使用時の溶解性や混合性の向上等の目的のために添加することが可能である。界面活性剤は特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤の種類は、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン性界面活性剤にはアルキルベンゼンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ジアルキルスルホサクシネート等が挙げられる。カチオン性界面活性剤では脂肪族アミン塩及びその4級アンモニウム塩等が挙げられ、両イオン性界面活性剤ではベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸塩等が挙げられる。また、これらの非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤は一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の工業用殺菌組成物は、グリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド、ハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物、エポキシ化植物油を含有するものであり、これら化合物を含有する組成物を調製する為に、上記に示した溶剤及び界面活性剤の他に、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤等を配合することが可能である。
【0030】
本発明の工業用殺菌組成物の殺菌成分であるグリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物に加えて、製剤の安定性に影響を与えない範囲で他の殺菌成分を同時に併用することも可能である。このような殺菌成分は特に限定されるものではないが、例えば、メチレンビスチオシアネート、グルタルアルデヒド、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ピリジンチオール-N-オキシドの亜鉛塩、1,2-ベンゾイソチアゾロン、1,2-ジブロモ-2,4-ジシアノブタン、N-n-ブチルベンゾイソチアゾロン、N-オクチルイソチアゾロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、2-ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチルパラトリルスルホン、パラクロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、o-フェニルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、p-オキシ安息香酸アルキルエステル、脂肪酸グリセリンエステル等を挙げることができる。
【0031】
本発明の工業用殺菌組成物の剤型は特に限定されず、乳剤、可溶化剤、フロアブル製剤、サスポエマルジョン製剤等を挙げることができる。これの剤型のうち、殺菌成分が溶剤に溶解された可溶化剤が適している。
【実施例
【0032】
次に本発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下に示した配合比率は全て重量%である。また、各実施例及び比較例の工業用殺菌組成物は、各成分を常温において混合、溶剤で溶解することによって調製した。なお、殺菌成分、溶剤は特に断りがない限り、以下の市販の原料を用いた。また、殺菌成分、溶剤の表示は以下の略号にて表す。
【0033】
DCG・MDG:ジクロログリオキシムの10重量%、メチルジグリコール溶液
DBNE-75:2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノールの75重量%、ジエチレングリコール溶液
BRONOPOL:2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール
ニューカルゲン800:エポキシ化大豆油
アデカサイザーO-130P:エポキシ化大豆油
【0034】
DCG:ジクロログリオキシム
TCS:3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド(東京化成工業株式会社製)
DBNE:2,2-ジブロモ-2-ニトロエタノール
BNP:2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール
MDG:メチルジグリコール(東京化成工業株式会社製)
BDG:ブチルジグリコール(和光純薬工業株式会社製)
DEG:ジエチレングリコール(東京化成工業株式会社製)
【0035】
実施例1~17比較例1~5
グリオキシム化合物、3,3,4,4-テトラクロロテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド及びハロゲン化脂肪族ニトロアルコール系化合物を含有する製剤を表1~4に示す配合で調剤し、工業用殺菌組成物を得た。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
安定性試験
実施例1~17、比較例1~5を45℃の恒温器中に4週間静置し、これら試料を高速液体クロマトグラフィー(株式会社日立ハイテクフィールディング社製)を用いて分析し、DCG、DBNE及びBNPの初期値に対する残存率(%)を算出した。また、同様にガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製)を用いて分析し、TCSの初期値に対する残存率(%)を算出し、結果を表5に示した。
【0041】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の工業用殺菌組成物は長期安定性に優れ、細菌、かび、酵母等に対して確実な殺菌力且つ静菌効果を発現するため、低温倉庫等に保管する必要がないことからコスト的メリットがあり、紙パルプ工業用分野における製紙用薬剤や、切削油等の金属加工用油剤、カゼイン、澱粉糊、にかわ、接着剤、合成ゴム、インキ、樹脂製品、コンクリート混和剤、塗型剤等の防腐剤、殺菌剤として好適に用いられる。