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特許7001959プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、及びプラズマ処理装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置、プラズマ処理方法、及びプラズマ処理装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20220128BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20220128BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220128BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20220128BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/205
H01L21/31 C
C23C16/509
H01L21/302 101C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018049075
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019160718
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】中田 誓治
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207322(JP,A)
【文献】特開2005-149887(JP,A)
【文献】特開平11-232289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/509
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、
前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、
前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、
前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、
前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷と、
前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを制御する制御装置とを具備する、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記負荷が可変コンデンサであり、
前記制御装置が、前記第1電流値及び前記第2電流値をパラメータとして、前記可変コンデンサの容量を制御する、請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記制御装置が、前記第1電流値及び前記第2電流値が等しくなるように、前記負荷のリアクタンスをフィードバック制御する、請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記アンテナが2つ直列接続されるとともに、前記第1電流検出部、前記第2電流検出部、及び前記負荷が、前記各アンテナに対して設けられており、
前記2つのアンテナのうち前記高周波電源側のアンテナの接地側端部に流れる電流を検出する前記第2電流検出部が、他方のアンテナの給電側端部に流れる電流を検出する前記第1電流検出部として兼用されている、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
少なくとも2つの前記アンテナが、前記真空容器の対向する側壁それぞれを貫通するとともに、前記各アンテナの同じ側の端部の間に介在する接続導体によって互いに直列接続されており、
前記接続導体が、前記一対のアンテナに電気的に接続される可変コンデンサを有している、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記アンテナは、内部に冷却液が流れる流路を有しており、
前記接続導体が、
前記可変コンデンサと一方のアンテナの端部とを接続するとともに、その端部に形成された開口部から流出する前記冷却液を前記可変コンデンサに導く第1の接続部と、
前記可変コンデンサと他方のアンテナの端部とを接続するとともに、その端部に形成された開口部に前記可変コンデンサを通過した前記冷却液を導く第2の接続部とを有し、
前記冷却液が前記可変コンデンサの誘電体である、請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷とを具備するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを変更する、プラズマ処理方法。
【請求項8】
基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷とを具備するプラズマ処理装置に用いられるプログラムであって、
前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを制御する機能をコンピュータに発揮させる、プラズマ処理装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流が流されて誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナを備えたプラズマ処理装置、このプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法、及びプラズマ処理装置用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ処理装置としては、特許文献1に示すように、複数本のアンテナを真空容器内の基板の四方に配置して、これらのアンテナに高周波電流を流すことで誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させて基板をプラズマ処理するように構成されたものがある。
【0003】
より詳細に説明すると、このプラズマ処理装置は、複数のアンテナそれぞれに接続された可変インピーダンス素子と、複数のアンテナそれぞれの給電側に設けられたピックアップコイル又はキャパシタとをさらに備えている。そして、ピックアップコイル又はキャパシタからの出力値に基づいて可変インピーダンス素子のインピーダンス値をフィードバック制御することで、それぞれのアンテナの周囲に発生するプラズマの密度を所定範囲内に制御して、真空容器に発生させるプラズマ密度の空間的な均一化を図っている。
【0004】
ところが、基板が大型なものになると、特許文献1のプラズマ処理装置に用いられているような比較的短尺なアンテナを基板の四方に配置したのでは対応することができず、この場合には特許文献2に示すような長尺状のアンテナが用いられる。
【0005】
このような長尺状のアンテナを真空容器内に配置して誘導結合型プラズマを生成する場合、アンテナとプラズマとの間で生じる静電結合により、プラズマを介してアンテナと真空容器の壁との間で電流が流れたり、プラズマを介して互いに隣り合うアンテナ間で電流が流れたりする。
その結果、アンテナの長手方向に沿った電流量の分布が均一にならず、アンテナの長手方向に沿ったプラズマ密度が不均一になるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-228354号公報
【文献】特開2016-138598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、長尺状のアンテナを用いて基板の大型化に対応することができるようにしつつ、アンテナの長手方向に沿って均一なプラズマを発生させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るプラズマ処理装置は、基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷と、前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを制御する制御装置とを具備することを特徴とするものである。なお、ここでいう負荷とは、高周波電源から供給される高周波電流を消費するもののことである。
【0009】
このようなプラズマ処理装置であれば、アンテナの給電側端部に流れる第1電流値及びアンテナの接地側端部に流れる第2電流値をパラメータとして負荷のリアクタンスを制御するので、アンテナに流れる電流を長手方向に沿って可及的に均一にすることができる。
その結果、長尺状のアンテナを用いて基板の大型化に対応できるようにしつつ、アンテナの長手方向に沿って均一なプラズマを発生させることが可能となる。
【0010】
リアクタンスが可変な負荷としては、例えば容量が異なる複数のコンデンサをアンテナに対して切り替え可能に並列接続した構成を挙げることができるが、かかる構成では複数のコンデンサが必要であり、装置が大掛かりなる等の問題が生じる。
そこで、装置を大掛かりにすることなく、アンテナの長手方向に沿って均一なプラズマを発生させるためには、前記負荷が可変コンデンサであり、前記制御装置が、前記第1電流値及び前記第2電流値をパラメータとして、前記可変コンデンサの容量を制御する構成が挙げられる。
【0011】
アンテナに流れる電流を長手方向に沿って可及的に均一にするための具体的な構成としては、前記制御装置が、前記第1電流値及び前記第2電流値が等しくなるように、前記負荷のリアクタンスをフィードバック制御する構成が挙げられる。
【0012】
前記アンテナが少なくとも2つ直列接続されるとともに、前記第1電流検出部、前記第2電流検出部、及び前記負荷が、前記各アンテナに対して設けられており、前記2つのアンテナのうち前記高周波電源側のアンテナの接地側端部に流れる電流を検出する前記第2電流検出部が、他方のアンテナの給電側端部に流れる電流を検出する前記第1電流検出部として兼用されていることが好ましい。
このような構成であれば、各アンテナに対して第1電流検出部及び第2電流検出部をそれぞれ設ける構成に比べて電流検出部を1つ減らすことができる。これにより、設備コスト削減を図れるうえ、負荷を制御するためのパラメータを1つ減らすことができるので、制御が容易となり、電流のさらなる均一性を図れる。
【0013】
ところで、上述したようにアンテナを直列接続してアンテナの長さを長くすると、当該アンテナのインピーダンスが大きくなり、それによってアンテナの両端間に大きな電位差が発生する。その結果、この大きな電位差の影響を受けてプラズマの密度分布、電位分布、電子温度分布等のプラズマの均一性が悪くなり、ひいては基板処理の均一性が悪くなるという問題がある。また、アンテナのインピーダンスが大きくなると、アンテナに高周波電流を流しにくくなるという問題もある。
【0014】
そこで、少なくとも2つの前記アンテナが、前記真空容器の対向する側壁それぞれを貫通するとともに、前記各アンテナの同じ側の端部の間に介在する接続導体によって互いに直列接続されており、前記接続導体が、前記一対のアンテナに電気的に接続される可変コンデンサを有していることが好ましい。
このような構成であれば、高周波電流に対するリアクタンスは、簡単に言えば、アンテナの誘導性リアクタンスから可変コンデンサの容量性リアクタンスを差し引いたものとなるので、一対のアンテナを直列接続しつつも、アンテナのインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができ、アンテナに高周波電流が流れやすくなり、プラズマを効率良く発生させることができる。
【0015】
前記アンテナは、内部に冷却液が流れる流路を有しており、前記接続導体が、前記可変コンデンサと一方のアンテナの端部とを接続するとともに、その端部に形成された開口部から流出する前記冷却液を前記可変コンデンサに導く第1の接続部と、前記可変コンデンサと他方のアンテナの端部とを接続するとともに、その端部に形成された開口部に前記可変コンデンサを通過した前記冷却液を導く第2の接続部とを有し、前記冷却液が前記可変コンデンサの誘電体であることが好ましい。
このような構成であれば、可変コンデンサを冷却しつつその静電容量の不意の変動を抑えることができる。
【0016】
また、本発明に係るプラズマ処理方法は、基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷とを具備するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを変更することを特徴とする方法である。
【0017】
さらに、本発明に係るプラズマ処理装置用プログラムは、基板を収容する真空容器内にプラズマを発生させるためのアンテナと、前記アンテナに高周波電流を供給する高周波電源と、前記アンテナの給電側端部に流れる電流を検出する第1電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に流れる電流を検出する第2電流検出部と、前記アンテナの接地側端部に接続されたリアクタンスが可変な負荷とを具備するプラズマ処理装置に用いられるプログラムであって、前記第1電流検出部により検出された第1電流値、及び、前記第2電流検出部により検出された第2電流値をパラメータとして、前記負荷のリアクタンスを制御する機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするプログラムである。
【0018】
このようなプラズマ処理方法やプラズマ処理装置用プログラムによれば、上述したプラズマ処理装置による作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、長尺状のアンテナを用いて基板の大型化に対応することができるようにしつつ、アンテナの長手方向に沿って均一なプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図。
図2】同実施形態の制御装置の機能を示す機能ブロック図。
図3】第1電流値及び第2電流値と可変コンデンサの容量との相関を説明するための図。
図4】第1電流値及び第2電流値とリアクタンスとの相関を示す測定データ。
図5】アンテナの長手方向における成膜速度の比較結果を示す図。
図6】アンテナに流れる電流と成膜速度との相関を説明するための図。
図7】変形実施形態のアンテナの周辺構成を模式的に示す図。
図8】変形実施形態の接続導体や第3の可変コンデンサの構成を模式的に示す図。
図9】各電流値と各リアクタンスとの相関を示す測定データ。
図10】アンテナの配列方向における成膜速度の比較結果を示す図。
図11】変形実施形態のアンテナの周辺構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係るプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Wに処理を施すものである。ここで、基板Wは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Wに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0023】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0024】
具体的にプラズマ処理装置100は、図1に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器2と、真空容器2内に配置された長尺状のアンテナ3と、真空容器2内に誘導結合型のプラズマPを生成するための高周波をアンテナ3に印加する高周波電源4とを備えている。なお、アンテナ3に高周波電源4から高周波を印加することによりアンテナ3には高周波電流IRが流れて、真空容器2内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0025】
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置5によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
【0026】
真空容器2内に、例えば流量調整器(図示省略)及び真空容器2の側壁に形成されたガス導入口21を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Wに施す処理内容に応じたものにすれば良い。
【0027】
また、真空容器2内には、基板Wを保持する基板ホルダ6が設けられている。この例のように、基板ホルダ6にバイアス電源7からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Wに入射する時のエネルギーを制御して、基板Wの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ6内に、基板Wを加熱するヒータ61を設けておいても良い。
【0028】
アンテナ3は、ここでは直線状のものであり、真空容器2内における基板Wの上方に、基板Wの表面に沿うように(例えば、基板Wの表面と実質的に平行に)、ここでは1本配置されている。
【0029】
アンテナ3の両端部付近は、真空容器2の相対向する側壁をそれぞれ貫通している。アンテナ3の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部材8がそれぞれ設けられている。この各絶縁部材8を、アンテナ3の両端部が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン91によって真空シールされている。各絶縁部材8と真空容器2との間も、例えばパッキン92によって真空シールされている。なお、絶縁部材8の材質は、例えば、アルミナ等のセラミックス、石英、又はポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等である。
【0030】
真空容器2の外部に位置するアンテナ3の両端部のうち、一方の端部は、高周波電源4に接続される給電側端部3aであり、他方の端部は、接地される接地側端部3bである。具体的に、給電側端部3aは、整合回路41を介して高周波電源4に接続されており、接地側端部3bは、可変コンデンサVCを介して接地されている。なお、この可変コンデンサVCは、高周波電源4から供給される高周波電流を消費するものであり、リアクタンスが可変なリアクタンス素子の一例である。
【0031】
上記構成によって、高周波電源4から、整合回路41を介して、アンテナ3に高周波電流IRを流すことができ、可変コンデンサVCの容量を変更することで、高周波電流IRに対するリアクタンスを変更することができる。なお、高周波の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
【0032】
さらに、アンテナ3において、真空容器2内に位置する部分は、直管状の絶縁カバー10により覆われている。この絶縁カバー10の両端部は絶縁部材8によって支持されている。なお、絶縁カバー10の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等である。
【0033】
本実施形態のアンテナ3は、内部に冷却液CLが流通する流路3Sを有する中空構造のものである。本実施形態では、直管状をなす金属パイプ31である。金属パイプ31の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0034】
なお、冷却液CLは、真空容器2の外部に設けられた循環流路11によりアンテナ3を流通するものであり、前記循環流路11には、冷却液CLを一定温度に調整するための熱交換器などの温調機構111と、循環流路11において冷却液CLを循環させるためのポンプなどの循環機構112とが設けられている。冷却液CLとしては、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましく、例えば純水またはそれに近い水が好ましい。その他、例えばフッ素系不活性液体などの水以外の液冷媒を用いても良い。
【0035】
然して、本実施形態のプラズマ処理装置100は、アンテナ3の給電側端部3aに流れる電流を検出する第1電流検出部S1と、アンテナ3の接地側端部3bに流れる電流を検出する第2電流検出部S2と、第1電流検出部S1により検出された第1電流値及び第2電流検出部S2により検出された第2電流値をパラメータとして可変コンデンサVCの容量を制御する制御装置Xとをさらに具備してなる。
【0036】
第1電流検出部S1は、給電側端部3a又はその近傍に取り付けられて真空容器2の外部に位置する例えばカレントトランス等のカレントモニタであり、給電側端部3aに流れる電流の大きさである第1電流値I1を検出し、この第1電流値I1を示す信号を制御装置Xに出力するものである。
【0037】
第2電流検出部S2は、接地側端部3b又はその近傍に取り付けられて真空容器2の外部に位置する例えばカレントトランス等のカレントモニタであり、接地側端部3bに流れる電流の大きさである第2電流値I2を検出し、この第2電流値I2を示す信号を制御装置Xに出力するものである。
【0038】
制御装置Xは、物理的にはCPU、メモリ、A/Dコンバータ、入出力インターフェース等を備えたコンピュータであり、前記メモリに記憶されたプログラムが実行され、各機器が協業することで、図2に示すように、第1電流値取得部X1、第2電流値取得部X2、及びリアクタンス制御部X3としての機能を発揮するように構成されている。
以下、各部について説明する。
【0039】
第1電流値取得部X1は、第1電流検出部S1から第1電流値I1を示す信号を有線又は無線により取得するとともに、その第1電流値I1をリアクタンス制御部X3に送信するものである。
【0040】
第2電流値取得部X2は、第2電流検出部S2から第2電流値I2を示す信号を有線又は無線により取得するとともに、その第2電流値I2をリアクタンス制御部X3に送信するものである。
【0041】
リアクタンス制御部X3は、第1電流値取得部X1が取得した第1電流値I1及び第2電流値取得部X2が取得した第2電流値I2をパラメータとして可変コンデンサVCの容量を制御するものである。
【0042】
ここで、リアクタンス制御部X3の詳細な制御内容について説明する前に、第1電流値I1及び第2電流値I2と、可変コンデンサVCの容量との関係について説明する。
【0043】
例えば、ネットワークアナライザ等によりリアクタンスを測定したリアクタンス素子たる負荷を複数準備し、図3に示すように、アンテナ3の接地側にリアクタンスの異なる負荷を順次接続する。そして、第1電流検出部S1により検出された第1電流値I1から、第2電流検出部S2により検出された第2電流値I2を差し引いた電流差をこれらの電流値I1、I2の平均値で割った値と、そのときにアンテナ3の接地側に接続されている負荷のリアクタンスとをプロットしたものが図4に示す測定データである。
【0044】
この測定データから分かるように、第1電流値I1及び第2電流値I2の差分と、負荷のリアクタンスとの間には相関があり、リアクタンスが大きくなる程、第1電流値I1から第2電流値I2を差し引いた差分が小さくなり、リアクタンスが小さくなる程、第1電流値I1から第2電流値I2を差し引いた差分が大きくなることが分かる。
このことから、第1電流値I1-第2電流値I2<0の場合、負荷のリアクタンスを小さくすることで、第1電流値I1と第2電流値I2とが等しくなるように制御される。
一方、第1電流値I1-第2電流値I2>0の場合は、負荷のリアクタンスを大きくすることで、第1電流値I1と第2電流値I2とが等しくなるように制御される。
【0045】
そこで、リアクタンス制御部X3は、第1電流値I1と第2電流値I2とが等しくなるように可変コンデンサVCの容量をフィードバック制御するように構成されており、具体的には、第1電流値I1-第2電流値I2<0の場合、可変コンデンサVCの容量を小さくしてリアクタンスを小さくし、第1電流値I1-第2電流値I2>0の場合、可変コンデンサVCの容量を大きくしてリアクタンスを大きくする。
【0046】
<本実施形態の効果>
ここで、本実施形態のプラズマ処理装置100を用いて第1電流値I1と第2電流値I2とが等しくなるように可変コンデンサVCを制御した場合と、本実施形態の可変コンデンサVCに相当する構成を備えておらず、上述した制御をしていない場合(比較例)とで、アンテナの長手方向に沿った成膜速度のばらつきを比較した結果を図5に示す。なお、ここでの「ばらつき」は、下記の式で求めた値である。
(最大値-最小値)/(最大値+最小値)×100
この比較結果から、本実施形態の制御をしていない場合(比較例)では、アンテナ3の長さ方向に沿った成膜速度のばらつきが±12.7%であるのに対して、本実施形態のプラズマ処理装置100を用いた場合には、アンテナ3の長さ方向に沿った成膜速度のばらつきが±4.6%であり、長手方向に沿った成膜速度のばらつきが少ないことが分かる。
【0047】
ところで、図6に示すように、アンテナ3に流れる電流と成膜速度とには相関があり、アンテナ3に流れる電流が大きい程、成膜速度が速くなり、アンテナ3に流れる電流が小さい程、成膜速度が遅くなる傾向にある。なお、この相関は、例えば6本のアンテナから検出された電流値をこれらの平均値で規格化した値を横軸にとり、各アンテナによる成膜速度をこれらの平均値で規格化した値を縦軸にとり、それらの6点をプロットした一例である。
この相関に鑑みれば、図5に示した結果、すなわち本実施形態のプラズマ処理装置100を用いた場合に長手方向に沿った成膜速度のばらつきが少ないという結果は、本実施形態のプラズマ処理装置100を用いることでアンテナ3に流れる電流が長手方向に沿って均一である証左である。
【0048】
このように、本実施形態のプラズマ処理装置100によれば、アンテナ3の給電側端部3aに流れる第1電流値と、アンテナ3の接地側端部3bに流れる第2電流値とが等しくなるように、可変コンデンサVCの容量をフィードバック制御しているので、アンテナ3に流れる電流を長手方向に沿って可及的に均一にすることができる。
その結果、長尺状のアンテナ3を用いて基板Wの大型化に対応できるようにしつつ、アンテナ3の長手方向に沿って均一なプラズマPを発生させることが可能となる。
【0049】
また、リアクタンスが可変な負荷として可変コンデンサVCを用いているので、例えばアンテナに容量が異なる複数の固定コンデンサを切り替え可能に並列接続する構成に比べて、装置全体の構成を簡素化することができる。
【0050】
さらに、第1電流検出部S1を真空容器2の外部に位置する給電側端部3aに設け、第2電流検出部S2を真空容器2の外部に位置する接地側端部3bに設けているので、第1電流検出部S1や第2電流検出部S2のメンテナンスや校正を簡単に行うことができる。
【0051】
加えて、アンテナ3を冷却液CLにより冷却することができるので、プラズマPを安定して発生させることができる。
【0052】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0053】
例えば、前記実施形態ではプラズマ処理装置100が、アンテナ3を1本備えたものであったが、直列又は並列に接続した複数のアンテナ3を備えていても良い。
【0054】
具体的には、図7に示すように、例えば2本のアンテナ3が直列接続されており、この直列接続された2本のアンテナ3が複数組並列に設けられている構成が挙げられる。なお、直列接続されるアンテナ3は3本以上であっても構わない。
【0055】
2本のアンテナ3のうち、高周波電源側のアンテナ3(以下、第1のアンテナ3Aという)は、その給電側端部3aが整合回路41を介して高周波電源4に接続されており、他方のアンテナ3(以下、第2のアンテナ3Bという)は、その接地側端部3bが接地されている。
【0056】
各第1のアンテナ3Aと整合回路41との間それぞれには、第1の可変コンデンサVC1が設けられており、各第1のアンテナ3Aは、共通の高周波電源4や整合回路41に接続されている。一方、各第2のアンテナ3Bはそれぞれ、第2の可変コンデンサVC2を介して接地されている。
【0057】
上述した構成において、第1のアンテナ3A及び第2のアンテナ3Bは、図8に示すように、各アンテナ3A、3Bの同じ側の端部の間に介在する接続導体12によって互いに電気的に接続されて1本のアンテナ構造をなす。なお、図7においては、説明の便宜上、接続導体12を省略している。
【0058】
この接続導体12は、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bと第2のアンテナ3Bの給電側端部3aを接続するものであり、内部に流路を有し、その流路に各アンテナ3A、3Bを冷却する冷却液CLが流れように構成されている。これにより、第1のアンテナ3Aを流れた冷却液CLは、接続導体12の流路を介して第2のアンテナ3Bに流れ込む。
【0059】
具体的に接続導体12は、アンテナ3に電気的に接続される第3の可変コンデンサVC3と、当該第3の可変コンデンサVC3と第1のアンテナ3Aの接地側端部3bとを接続する第1の接続部14と、第3の可変コンデンサVC3と第2のアンテナ3Bの給電側端部3aとを接続する第2の接続部15とを有している。
【0060】
第1の接続部14は、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bを取り囲むことによって、該アンテナ3Aに電気的に接触するとともに、該アンテナ3Aの端部に形成された開口部3Hから冷却液CLを第3の可変コンデンサVC3に導くものである。
【0061】
第2の接続部15は、第2のアンテナ3Bの給電側端部3aを取り囲むことによって、該アンテナ3Bに電気的に接触するとともに、第3の可変コンデンサVC3を通過した冷却液CLを該アンテナ3Bの端部に形成された開口部3Hに導くものである。
【0062】
これらの接続部14、15の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等である。
【0063】
第3の可変コンデンサVC3は、第1のアンテナ3Aに電気的に接続される第1の固定電極16と、第2のアンテナ3Bに電気的に接続される第2の固定電極17と、第1の固定電極16との間で第1のコンデンサを形成するとともに、第2の固定電極17との間で第2のコンデンサを形成する可動電極18とを有し、可動電極18が所定の回転軸C周りに回転することによって、その静電容量を変更できるように構成されている。
【0064】
この可変コンデンサ13は、第1の固定電極16、第2の固定電極17及び可動電極18を収容する絶縁性を有する収容容器19を備えており、収容容器19の内部を満たす冷却液CLが、可変コンデンサ13の誘電体となる。
【0065】
そして、図7に示すように、第1のアンテナ3A及び第2のアンテナ3Bそれぞれに対して、第1電流検出部S1及び第2電流検出部S2が設けられている。
【0066】
より具体的に説明すると、第1のアンテナ3Aに対する第1電流検出部S1は、第1のアンテナ3Aの給電側端部3aと第1の可変コンデンサVC1との間に設けられており、第1のアンテナ3Aに対する第2電流検出部S2は、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bと第2のアンテナ3Bの給電側端部3aとの間に設けられている。
一方、第2のアンテナ3Bに対する第1電流検出部S1は、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bと第2のアンテナ3Bの給電側端部3aとの間に設けられており、第2のアンテナ3Bに対する第2電流検出部S2は、第2のアンテナ3Bの接地側端部3bと第2の可変コンデンサVC2との間に設けられている。
【0067】
ここでは、第1のアンテナ3Aに対して設けられた第2電流検出部S2が、第2のアンテナ3Bに対する第1電流検出部S1として兼用されており、第3の可変コンデンサVC3と第2のアンテナ3Bの給電側端部3aとの間に配置されている。以下、この電流検出部を兼用電流検出部S1(S2)ともいう。なお、兼用電流検出部S1(S2)は、第3の可変コンデンサVC3と第1のアンテナ3Aの接地側端部3bとの間に配置されていても良い。
【0068】
上述した構成により、第1のアンテナ3Aに対して設けられた第1電流検出部S1により、第1のアンテナ3Aの給電側端部3aを流れる第1電流値I1が検出される。また、兼用電流検出部S1(S2)により、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bを流れるとともに第2のアンテナ3Bの給電側端部3aを流れる第2電流値I2が検出される。また、第2のアンテナ3Bに対して設けられた第2電流検出部S2により、第2のアンテナ3Bの接地側端部3bを流れる第3電流値I3が検出される。
【0069】
そして、前記実施形態と同様に、図示しない制御装置が、第1電流値I1、第2電流値I2、及び第3電流値I3をパラメータとして、第2の可変コンデンサVC2及び第3の可変コンデンサVC3の容量を制御する。
【0070】
ここで、第1電流値I1、第2電流値I2、及び第3電流値I3と、第2の可変コンデンサVC2及び第3の可変コンデンサVC3のリアクタンスとの関係について、図9に示す測定データを参照しながら説明する。
この測定データは、第1のアンテナ3Aの接地側端部3bと第2のアンテナ3Bの給電側端部3aとの間のリアクタンスX20を横軸にとり、第2のアンテナ3Bの接地側端部3bのリアクタンスX30を縦軸にとり、プロットされた円の大きさによって、第1電流値I1、第2電流値I2、及び第3電流値I3の標準偏差σをこれらの電流値I1、I2、I3の平均値で割った値を示したものである。
【0071】
プロットされた円の大きさが小さい程、各電流値I1、I2、I3のばらつきが小さいことを示しており、例えばリアクタンスX20が約23[Ω]であり、リアクタンスX30が約4.5[Ω]である場合に、各電流値I1、I2、I3のばらつきが殆どなく、各電流値I1、I2、I3がほぼ等しくなることが分かる。なお、ここでの「ばらつき」は、下記の式で求めた値である。
(I1、I2、及びI3の標準偏差σ)/(I1、I2、及びI3の平均値)
【0072】
そこで、図示しない制御装置は、第1電流値I1、第2電流値I2、及び第3電流値I3が等しくなるように、第2の可変コンデンサVC2の容量及び第3の可変コンデンサVC3の容量をフィードバック制御するように構成されている。
より具体的には、第1電流値I1-第2電流値I2<0の場合、第2の可変コンデンサVC2の容量を小さくしてリアクタンスを小さくし、第1電流値I1-第2電流値I2>0の場合、第2の可変コンデンサVC2の容量を大きくしてリアクタンスを大きくする。
一方、第2電流値I2-第3電流値I3<0の場合、第3の可変コンデンサVC3の容量を小さくしてリアクタンスを小さくし、第2電流値I2-第3電流値I3>0の場合、第3の可変コンデンサVC3の容量を大きくしてリアクタンスを大きくする。
【0073】
このような構成であれば、第1電流値I1、第2電流値I2、及び第3電流値I3が等しくなるように、第2の可変コンデンサVC2の容量及び第3の可変コンデンサVC3の容量を制御しているので、第1のアンテナ3Aから第2のアンテナ3Bに亘って、長手方向に沿って均一なプラズマPを発生させることができる。
【0074】
さらに、第1のアンテナ3Aの給電側端部3aそれぞれ対して設けられた第1電流検出部S1の第1電流値I1に基づいて、各第1のアンテナ3Aに対する高周波電流IRの分配比を把握することができる。従って、各第1電流値I1に基づき各第1の可変コンデンサVC1の容量を変更することで、各第1のアンテナ3Aに対して供給される高周波電流IRの分配比を調整することができる。
【0075】
従って、第1のアンテナ3A及び第2のアンテナ3Bに流れる高周波電流IRを長手方向に沿って均一化しつつ、並列に設けられた各第1のアンテナ3Aに高周波電源4からの高周波電流IRを均等に分配することができ、空間的に均一なプラズマPを発生させることが可能となる。
【0076】
ここで、各可変コンデンサVC1~VC3を上述したように制御した場合と、上述した制御をしていない場合(比較例)とで、アンテナ3の配列方向に沿った成膜速度のばらつきを比較した結果を図10に示す。なお、ここでの「ばらつき」は、下記の式で求めた値である。
(最大値-最小値)/(最大値+最小値)×100
この比較結果から、上述した制御をしていない場合(比較例)では、アンテナ3の配列方向に沿った成膜速度のばらつきが±14.1%であるのに対して、各可変コンデンサVC1~VC3を上述したように制御した場合には、アンテナ3の配列方向に沿った成膜速度のばらつきが±3.4%であり、アンテナ3の配列方向に沿った成膜速度のばらつきが少ないことが分かる。
【0077】
別の装置構成としては、図11に示すように、複数本のアンテナ3が整合回路41を介して共通の高周波電源4に並列接続されていても良い。ここでは、例えば3本のアンテナ3が、第1の可変コンデンサVC1を介して高周波電源4に接続されるとともに、第2の可変コンデンサVC2を介して接地されている。なお、アンテナ3の本数は適宜変更して構わない。
【0078】
そして、各アンテナ3の給電側端部3aそれぞれに第1電流検出部S1が設けられており、各アンテナ3の接地側端部3bそれぞれに第2電流検出部S2が設けられている。
【0079】
このような構成であれば、前記実施形態と同様に、第1電流検出部S1により検出された第1電流値及び第2電流検出部S2により検出された第2電流値が等しくなるように各第2の可変コンデンサVC2の容量を制御することで、各アンテナ3の長手方向に沿って均一なプラズマPを発生させることができる。
さらに、図7の構成と同様に、それぞれの給電側端部3aに設けられた第1電流検出部S1により検出された第1電流値に基づいて、各アンテナ3に対する高周波電流IRの分配比を把握することができる。従って、第1電流値に基づき第1の可変コンデンサVC1の容量を変更することで、各アンテナ3に対して供給される高周波電流IRの分配比を調整することができる。
これにより、各アンテナ3に流れる高周波電流IRを長手方向に沿って均一化しつつ、各アンテナ3に高周波電流IRを均等に分配することができ、空間的に均一なプラズマPを発生させることが可能となる。
【0080】
前記実施形態のリアクタンス制御部X3は、第1電流値I1と第2電流値I2とが等しくなるように可変コンデンサVCの容量をフィードバック制御するように構成されていたが、第1電流値I1と第2電流値I2との差分が所定値(ゼロより大きい値)となるように、可変コンデンサVCの容量をフィードバック制御するように構成されていても良い。
【0081】
また、例えば図4図9などに示した相関データから各電流値が等しくなるリアクタンスを予め求めておけば、そのリアクタンスに基づいてリアクタンス制御部X3が可変コンデンサVCの容量の初期値を設定するように構成されていても良い。
【0082】
第1電流検出部S1や第2電流検出部S2の配置としては、前記実施形態ではアンテナ3の給電側端部3aや接地側端部3bに設けられていたが、例えばアンテナ3の給電側端部3aに接続された導線や、接地側端部3bに接続された導線に設けられていても良い。
【0083】
前記実施形態では、制御装置が、第1電流値及び第2電流値に基づいて可変コンデンサの容量を変更していたが、オペレータが、第1電流値及び第2電流値に基づいて、手動で可変コンデンサの容量をリアクタンス素子のリアクタンスとして変更しても良い。
【0084】
前記実施形態では、リアクタンスが可変な負荷として可変コンデンサを用いていたが、例えば容量やリアクタンスが異なる複数のリアクタンス素子をアンテナに対して切り替え可能に並列接続したものを負荷として用いても良い。
【0085】
前記実施形態では、アンテナは直線状をなすものであったが、湾曲又は屈曲した形状であっても良い。この場合、金属パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良いし、絶縁パイプが湾曲又は屈曲した形状であっても良い。
【0086】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合型プラズマ
IR ・・・高周波電流
2 ・・・真空容器
3 ・・・アンテナ
3a ・・・給電側端部
3b ・・・接地側端部
VC ・・・可変コンデンサ
CL ・・・冷却液(液体の誘電体)
S1 ・・・第1検出部
S2 ・・・第2検出部
X ・・・制御装置
X1 ・・・第1取得部
X2 ・・・第2取得部
X3 ・・・制御用データ格納部
X4 ・・・コンデンサ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11