(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】雌端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/15 20060101AFI20220113BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H01R13/15 B
H01R13/11 J
(21)【出願番号】P 2018075671
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018037699
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】西島 誠道
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-047585(JP,U)
【文献】特開2014-032867(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02675017(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007016333(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/10-13/14
H01R13/15-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、
前記雌端子金具に保持さ
れ、前記接続部に対して前記雄端子が挿通される雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されている対向部材と、
前記雌端子金具に保持さ
れ、前記対向部材と前記接続部の少なくとも一方を他方に向かって付勢する付勢手段と、
前記対向部材と前記接続部間の接近方向の変位を規制して、前記雄端子挿通隙間を維持する接近変位規制手段とを有し、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記接続部と前記対向部材間の離隔方向の変位が許容されることにより、前記雄端子挿通隙間へ前記雄端子が圧入されて前記接続部と前記対向部材の間に配設されるようになって
おり、
前記雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースをさらに有しており、
前記付勢手段が前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持されており、
前記接近変位規制手段が、前記付勢手段により前記他方に向かって付勢される前記対向部材と前記接続部の少なくとも一方に設けられた係合突起と、前記ケースの壁部に貫設された係合窓を含んで構成されており、前記係合窓に前記係合突起が係合することにより、前記対向部材と前記接続部間の接近方向の変位が規制されている
ことを特徴とする雌端子。
【請求項2】
前記対向部材が、前記雌端子金具に保持されている押圧部材を含んでおり、
前記押圧部材が、前記雄端子挿通隙間を隔てて前記雌端子金具の前記接続部に対向配置さ
れ、前記付勢手段によって前記接続部側に向かって付勢されて
おり、
前記押圧部材が、前記付勢力に抗して前記接続部から離隔する方向へ変位可能とされている請求項1に記載の雌端子。
【請求項3】
前記押圧部材と前記付勢手段が、前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持されて
おり、
前記接近変位規制手段が、前記押圧部材に設けられた
前記係合突起と、前記ケースの
前記壁部に貫設されて前記押圧部材と前記接続部の対向方向に所定長さで延びる
前記係合窓を含んで構成されており、前記係合窓の前記接続部側の端縁部が、前記接続部から前記雄端子挿通隙間を隔てた位置に設定されている一方、該端縁部に対して前記押圧部材の前記係合突起が付勢されて係合されている請求項2に記載の雌端子。
【請求項4】
前記雌端子金具が矩形平板形状を有し、該雌端子金具の長手方向一方側に電線接続部が設けられて
おり、該電線接続部よりも長手方向他方側が前記接続部とされており、
前記雌端子金具の前記接続部の表面上に前記ケースが組み付けら
れ、該ケースが前記収容空所を介して前記接続部に対向する前記壁部を含んでおり、該収容空所内に収容配置された平板状の前記押圧部材が前記接続部上に前記雄端子挿通隙間を隔てて相互に平行に位置決め保持されて
おり、
前記ケースの前記壁部と前記押圧部材の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置されて前記押圧部材の前記係合突起が前記係合窓の前記接続部側の前記端縁部に付勢されており、
前記ケースに設けられた雄端子挿入口を介して前記雄端子挿通隙間が外部に連通されている請求項3に記載の雌端子。
【請求項5】
前記ケースの前記雄端子挿入口が、前記雌端子金具の前記長手方向に直交する方向に開口している請求項4に記載の雌端子。
【請求項6】
前記押圧部材の縁部が、前記ケースに設けられた前記雄端子挿入口から外方に突出していると共に、前記接続部から離隔する方向に屈曲されている請求項4または5に記載の雌端子。
【請求項7】
前記雌端子金具の長手方向一方の端縁部に電線接続部が設けら
れ、前記雌端子金具の長手方向他方の端縁部に該長手方向他方側に向かって開口する凹状の前記接続部が設けら
れ、
前記長手方向において前記接続部に対して前記電線接続部とは反対側に配設されて前記ケースが前記雌端子金具に組み付けられて
おり、該ケースが前記収容空所を介して前記接続部に対向する前記壁部を含んで
おり、該収容空所内に収容配置された前記押圧部材が前記接続部に対して前記長手方向で前記雄端子挿通隙間を隔てて位置決め保持されて
おり、
前記ケースの前記壁部と前記押圧部材の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置されて前記押圧部材の前記係合突起が前記係合窓の前記接続部側の前記端縁部に付勢されており、
前記長手方向において前記押圧部材と前記接続部の間に位置して前記ケースに設けられて、前記長手方向に直交する方向に開口する雄端子挿入口を介して前記雄端子挿通隙間が外部に連通されている請求項3に記載の雌端子。
【請求項8】
前記雌端子金具が帯状の平板金具を折り曲げて形成されており、前記電線接続部は前記平板金具の長手方向端縁部同士が重ね合されて構成されている一方、
前記雌端子金具の前記長手方向他方の端縁部が、側面視で筒体状に形成されており、前記雌端子金具の前記長手方向他方の端面を画成する壁部が凹状に凹まされることにより前記凹状の前記接続部が構成されている請求項7に記載の雌端子。
【請求項9】
前記雌端子金具の前記接続部が、前記雌端子金具に組み付けられた
前記ケースの
前記収容空所内に収容配置されており、前記対向部材が前記ケースの
前記壁部を含んで
おり、
前記雌端子金具の前記接続部が、前記雄端子挿通隙間を隔てて前記ケースの前記壁部に対向配置さ
れ、前記付勢手段によって前記壁部側に向かって付勢されて
おり、
前記雌端子金具の前記接続部が、前記付勢力に抗して前記ケースの前記壁部から離隔する方向へ変位可能とされている請求項1に記載の雌端子。
【請求項10】
前記雌端子金具が矩形平板形状を有し、該雌端子金具の長手方向一方側に電線接続部が設けられて
おり、該電線接続部よりも長手方向他方側が前記接続部とされており、
前記ケースの前記収容空所に収容された前記雌端子金具の前記接続部の一方の面が、隙間を隔てて前記ケースの前記壁部と対向
して、前記接続部の他方の面が、隙間を隔てて前記ケースの他の壁部と対向して
おり、
前記接続部と前記ケースの前記他の壁部の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置さ
れ、前記接続部と前記ケースの前記壁部が前記雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されており、
前記接続部が前記付勢手段によって前記ケースの前記壁部に向かって付勢されている請求項9に記載の雌端子。
【請求項11】
前記付勢手段がコイルばねを含んでいる請求項1~10の何れか1項に記載の雌端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌端子に係り、特に、大きな接圧で雄端子との導通接続が可能な雌端子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の電装系に使用される雌端子として、例えば、特開2011-238558号公報(特許文献1)に記載のように、側縁部に開口部を有する箱状のケースと、ケースの内部に向かって突出する撓み変形可能な一対の接続部を備えたものが知られている。このような雌端子は、特許文献1の
図8に示されているように、雄端子を開口部からケースの内部に挿入した後に、一対の接続部に接近する方向の付勢力を付与する別体のばね部材を取り付けることにより、大きな接圧で雄端子と雌端子の接続部の電気的接続が図られるようになっている。
【0003】
ところで、このような従来構造の雌端子においては、雄端子を開口部からケースの内部に挿入した後に別体のばね部材を取り付ける必要があることから、作業工程が増加して作業性が悪化するおそれがあった。そこで、例えば一対の接続部に接近する方向の大きな付勢力を予め与えておくことが考えられるが、この場合は雄端子を開口部からケースの一対の接続部間に挿入する際の挿入力が大きくなることから、挿入が困難になったり挿入時に雌端子のケースや雄端子を損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、雌雄端子間の大きな接圧を確保しつつ、雄端子挿入時の挿入力の低減や雌雄端子の組付作業の容易性を図ることができる、新規な構造の雌端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、雄端子と導通接続される接続部を含む雌端子金具と、前記雌端子金具に保持され、前記接続部に対して前記雄端子が挿通される雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されている対向部材と、前記雌端子金具に保持され、前記対向部材と前記接続部の少なくとも一方を他方に向かって付勢する付勢手段と、前記対向部材と前記接続部間の接近方向の変位を規制して、前記雄端子挿通隙間を維持する接近変位規制手段とを有し、前記付勢手段の付勢力に抗して前記接続部と前記対向部材間の離隔方向の変位が許容されることにより、前記雄端子挿通隙間へ前記雄端子が圧入されて前記接続部と前記対向部材の間に配設されるようになっており、前記雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースをさらに有しており、前記付勢手段が前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持されており、前記接近変位規制手段が、前記付勢手段により前記他方に向かって付勢される前記対向部材と前記接続部の少なくとも一方に設けられた係合突起と、前記ケースの壁部に貫設された係合窓を含んで構成されており、前記係合窓に前記係合突起が係合することにより、前記対向部材と前記接続部間の接近方向の変位が規制されていることを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、雄端子が挿通される雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されている対向部材と接続部の少なくとも一方が、付勢手段によって他方に向かって付勢されている。これにより、雄端子挿通隙間に挿通配置された雄端子は、雌端子金具の接続部に対して付勢手段の付勢力によって押圧されることとなり、高い接圧で雄端子を雌端子の接続部に押圧保持することができる。しかも、対向部材や付勢手段は、接続部を備えた雌端子金具に保持されていることから、従来構造のように雄端子を雌端子に導通接続した後に、別体のばね部材等を導通接続部分を挟持するように取り付ける必要がない。それゆえ、作業工程の簡略化を図ることができて、雌雄端子間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。
【0008】
加えて、接近変位規制手段により、対向部材と接続部が付勢手段の付勢力に抗して雄端子挿通隙間を隔てた位置(状態)に保持されている。これにより、雄端子を雌端子の接続部へ向けて挿入する際には、予め付勢手段の付勢力が接近変位規制手段に分散された状態で形成された雄端子挿通隙間に雄端子を挿入するだけでよく、雄端子の挿入当初の挿入力を有利に低減することができる。さらに、付勢手段の付勢力に抗して接続部と対向部材間の離隔方向の変位が許容されるようになっていることから、雄端子挿通隙間に雄端子を圧入することにより、付勢力に抗して接続部と対向部材間の離隔方向の変位が許容され、接続部と対向部材の間へ雄端子を挿し入れて両者の間に圧接状態で配設保持することができる。この際には、付勢手段の付勢力が接近変位規制手段に分散させることなく対向部材や接続部の少なくとも一方を介して雄端子や他方側に及ぼすことができ、雄端子を大きな接圧で雌端子の接続部に押圧することが可能となる。
【0009】
なお、付勢手段としては、例えば、コイルばねや板ばねや皿ばね等のばね部材や、ゴム弾性体等の弾性体などの周知の付勢力を付与する部材を何れも採用可能である。
【0010】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記対向部材が、前記雌端子金具に保持されている押圧部材を含んでおり、前記押圧部材が、前記雄端子挿通隙間を隔てて前記雌端子金具の前記接続部に対向配置され、前記付勢手段によって前記接続部側に向かって付勢されており、前記押圧部材が、前記付勢力に抗して前記接続部から離隔する方向へ変位可能とされているものである。
【0011】
本態様によれば、接続部に対して雄端子が挿通される雄端子挿通隙間を隔てて対向配置された対向部材が押圧部材によって構成されている。これにより、付勢手段による付勢力を、雄端子挿通隙間に圧入される雄端子に対して、押圧部材を介して安定して及ぼすことができる。さらに、付勢手段と押圧部材を一連の部品として扱うことができることから、押圧部材と付勢手段を1つの部材として組み上げた後に、接続部を備えた雌端子金具に組付けることができる。あるいは、押圧部材と付勢手段を一体部品として構成することも可能となる。これにより、雌端子の組み付け作業性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記押圧部材と前記付勢手段が、前記ケースの前記収容空所に収容されることにより、前記雌端子金具に保持されており、前記接近変位規制手段が、前記押圧部材に設けられた前記係合突起と、前記ケースの前記壁部に貫設されて前記押圧部材と前記接続部の対向方向に所定長さで延びる前記係合窓を含んで構成されており、前記係合窓の前記接続部側の端縁部が、前記接続部から前記雄端子挿通隙間を隔てた位置に設定されている一方、該端縁部に対して前記押圧部材の前記係合突起が付勢されて係合されているものである。
【0013】
本態様によれば、雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースを用い、かかるケースの収容空所に押圧部材と付勢手段が収容されることにより、それら押圧部材と付勢手段が雌端子金具に保持されている。これにより、少ない部品点数により雌端子金具に対する押圧部材と付勢手段の一体的な保持が可能となる。加えて、接近変位規制手段も、ケースの壁部に貫設されて押圧部材と接続部の対向方向に所定長さで延びる係合窓と、押圧部材に設けられた係合突起を係合させることにより、実現されていることから、より少ない部品点数により各種の機構を効率的に実現することができる。
【0014】
特に、雌端子金具に組み付けられた収容空所を有するケースと、ケース内に収容保持される押圧部材と付勢手段を利用して、雄端子の雌端子の接続部に対する接圧の向上を図っていることから、雌雄端子の接続部の形状の変更等を伴うことなく接圧を上げることができ、既存の雄端子や既存の雌端子金具を利用しつつ汎用性よく本発明の雌端子を実現することが可能となる。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具が矩形平板形状を有し、該雌端子金具の長手方向一方側に電線接続部が設けられており、該電線接続部よりも長手方向他方側が前記接続部とされており、前記雌端子金具の前記接続部の表面上に前記ケースが組み付けられ、該ケースが前記収容空所を介して前記接続部に対向する前記壁部を含んでおり、該収容空所内に収容配置された平板状の前記押圧部材が前記接続部上に前記雄端子挿通隙間を隔てて相互に平行に位置決め保持されており、前記ケースの前記壁部と前記押圧部材の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置されて前記押圧部材の前記係合突起が前記係合窓の前記接続部側の前記端縁部に付勢されており、前記ケースに設けられた雄端子挿入口を介して前記雄端子挿通隙間が外部に連通されているものである。
【0016】
本態様によれば、矩形平板状の雌端子金具に設けられた接続部の表面上に、ケースが組み付けられて、接続部に対して雄端子挿通隙間を隔てて相互に平行に対向配置された状態でケース内に位置決め保持された平板状の押圧部材が、押圧部材とケースの接続部に対向する壁部との間に圧縮状態で配設された付勢手段によって付勢されている。これにより、平板状の押圧部材と平板状の接続部との間に形成された雄端子挿通隙間において、付勢手段の付勢力により雄端子を確実に押圧することができる。それゆえ、特に雄端子が平板形状の場合、より広い接触面積で雄端子を雌端子金具に安定して押圧することができ、雌雄端子の接圧の向上を確実に図ることができると共に、雌雄端子間が一層低抵抗で導通接続可能となる。
【0017】
本発明の第五の態様は、前記第四の態様に記載のものにおいて、前記ケースの前記雄端子挿入口が、前記雌端子金具の前記長手方向に直交する方向に開口しているものである。
【0018】
本態様によれば、ケースに設けられた雄端子挿入口が雌端子金具の長手方向に直交する方向に開口していることから、雄端子を雌端子の側方から組み付けることが可能となり、雄端子の雌端子への挿入距離を短くしつつ十分な接触面積を確保することができる。また、雄端子が鉛直方向に突設されている場合などには、雌雄端子の接続領域の低背化を有利に実現できる。
【0019】
本発明の第六の態様は、前記第四または第五の態様に記載のものにおいて、前記押圧部材の縁部が、前記ケースに設けられた前記雄端子挿入口から外方に突出していると共に、前記接続部から離隔する方向に屈曲されているものである。
【0020】
本態様によれば、押圧部材の縁部がケースの雄端子挿入口から外部に突出して、かつ接続部から離隔する上方側に向かって屈曲されている。これにより、押圧部材の縁部が誘い込み機能を発揮し、雄端子挿入口さらには雄端子挿入隙間への雄端子の挿し入れをよりスムーズに行うことが可能となる。
【0021】
本発明の第七の態様は、前記第三の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具の長手方向一方の端縁部に電線接続部が設けられ、前記雌端子金具の長手方向他方の端縁部に該長手方向他方側に向かって開口する凹状の前記接続部が設けられ、前記長手方向において前記接続部に対して前記電線接続部とは反対側に配設されて前記ケースが前記雌端子金具に組み付けられており、該ケースが前記収容空所を介して前記接続部に対向する前記壁部を含んでおり、該収容空所内に収容配置された前記押圧部材が前記接続部に対して前記長手方向で前記雄端子挿通隙間を隔てて位置決め保持されており、前記ケースの前記壁部と前記押圧部材の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置されて前記押圧部材の前記係合突起が前記係合窓の前記接続部側の前記端縁部に付勢されており、前記長手方向において前記押圧部材と前記接続部の間に位置して前記ケースに設けられて、前記長手方向に直交する方向に開口する雄端子挿入口を介して前記雄端子挿通隙間が外部に連通されているものである。
【0022】
本態様によれば、雌端子金具が、その長手方向一方の端縁部に電線接続部が設けられ、長手方向他方の端縁部に長手方向他方側に向かって開口する凹状の接続部が設けられた形状を備えている。さらに、雌端子金具の長手方向他方の端縁部側にケースが組み付けられて、接続部に対して雄端子挿通隙間を隔てて長手方向で対向配置された状態でケース内に位置決め保持された平板状の押圧部材が、押圧部材とケースの壁部の間に圧縮状態で配設された付勢手段によって付勢されている。これにより、雌端子金具の長手方向、すなわち、雌端子金具から電線が延出する方向で、雌端子金具およびケース内の押圧部材、付勢手段が順次重ね合されて配設されている。それゆえ、雄端子が円筒のピン形状の場合に、雄端子の径寸法が大きい場合でも、電線の延出方向に直交する方向に押圧部材や付勢手段を積み上げる構造を回避することができ、雌端子の高さ寸法を抑えた構造を有利に提供することができる。
【0023】
しかも、雄端子挿入口が雌端子金具の長手方向に直交する方向に開口していることから、雄端子を雌端子の側方から組み付けることが可能となり、雌端子の低背化を実現しつつ雌雄端子の安定した接続を高い接圧で確保することができる。特に、接続部が凹状とされていることから、円筒のピン形状の雄端子との接触面積を確実に確保しつつ、ピン形状の雄端子の安定した保持を実現することができる。
【0024】
本発明の第八の態様は、前記第七の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具が帯状の平板金具を折り曲げて形成されており、前記電線接続部は前記平板金具の長手方向端縁部同士が重ね合されて構成されている一方、前記雌端子金具の前記長手方向他方の端縁部が、側面視で筒体状に形成されており、前記雌端子金具の前記長手方向他方の端面を画成する壁部が凹状に凹まされることにより前記凹状の前記接続部が構成されているものである。
【0025】
本態様によれば、帯状の平板金具を折り曲げて形成することにより、第七の態様に記載の雌端子金具を容易に形成することができると共に、接続部が筒体状の端縁部の先端面に設けられ、電流経路が筒体状の端縁部の両側壁を通って、電線接続部で重ね合されていることから、雌端子金具の軽量化と強度確保を図りつつ、断面積を増大させてより大きな電流を流すことができる。
【0026】
本発明の第九の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具の前記接続部が、前記雌端子金具に組み付けられた前記ケースの前記収容空所内に収容配置されており、前記対向部材が前記ケースの前記壁部を含んでおり、前記雌端子金具の前記接続部が、前記雄端子挿通隙間を隔てて前記ケースの前記壁部に対向配置され、前記付勢手段によって前記壁部側に向かって付勢されており、前記雌端子金具の前記接続部が、前記付勢力に抗して前記ケースの前記壁部から離隔する方向へ変位可能とされているものである。
【0027】
本態様によれば、雌端子金具の接続部と対向部材を構成するケースの壁部が雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されており、接続部とケースの壁部のうち、雌端子金具の接続部がケースの壁部に向かって付勢手段によって付勢されている。これにより、雄端子挿通隙間に圧入されて配置された雄端子に対して、雌端子金具の接続部が付勢手段の付勢力によって直接押圧されることとなり、高い接圧で雄端子を雌端子の接続部に押圧保持することができる。しかも、雄端子に対して雌端子の接続部が付勢手段によって直接押圧されていることから、例えば車両運転時の振動等により雄端子が変位した際の雌端子の接続部の雄端子に対する追従性を良好とすることができる。これにより、雌端子の接続部に対する片当たり等の発生を有利に回避して、雌端子の接続部を雄端子に対して広い面積で有利に接触させて雌端子の接続安定性の向上を図ることができる。
【0028】
本発明の第十の態様は、前記第九の態様に記載のものにおいて、前記雌端子金具が矩形平板形状を有し、該雌端子金具の長手方向一方側に電線接続部が設けられており、該電線接続部よりも長手方向他方側が前記接続部とされており、前記ケースの前記収容空所に収容された前記雌端子金具の前記接続部の一方の面が、隙間を隔てて前記ケースの前記壁部と対向して、前記接続部の他方の面が、隙間を隔てて前記ケースの他の壁部と対向しており、前記接続部と前記ケースの前記他の壁部の間に前記付勢手段が圧縮状態で収容配置され、前記接続部と前記ケースの前記壁部が前記雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されており、前記接続部が前記付勢手段によって前記ケースの前記壁部に向かって付勢されているものである。
【0029】
本態様によれば、ケースの収容空所に収容された雌端子金具の接続部の一方の面が、隙間を隔ててケースの壁部と対向すると共に、接続部の他方の面が、隙間を隔ててケースの他の壁部と対向している。そして、接続部は接続部とケースの他の壁部との間に圧縮状態で配設された付勢手段によって、ケースの壁部に向かって付勢されている。これにより、接続部とケースの壁部との間に形成された雄端子挿通隙間において、付勢手段の付勢力により雄端子を確実に押圧することができる。それゆえ、特に雄端子が平板形状の場合、より広い接触面積で雄端子を雌端子金具に安定して押圧することができ、雌雄端子の接圧の向上を確実に図ることができると共に、雌雄端子間が一層低抵抗で導通接続可能となる。
【0030】
しかも、単一のケースの収容空所内に雌端子金具の接続部を収容配置し、その両側で対向するケースの一対の壁部を利用して付勢手段の圧縮や対向部材の形成を行っていることから、本発明の雌端子をコンパクトに形成することができる。
【0031】
本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第十の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記付勢手段がコイルばねを含んでいるものである。
【0032】
本態様によれば、付勢手段がコイルばねを含んで構成されていることから、雄端子挿通隙間に雄端子が挿通されて接続保持される際の付勢手段のたわみ量を大きく確保することができる。それゆえ、限られたケースの収容空間内に付勢手段を配設してコンパクトな構成を実現しつつばね定数を小さくすることができ、部品等の寸法誤差が生じても雌雄端子間の接圧の変化を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、雄端子挿通隙間を隔てて対向配置されている対向部材と接続部の少なくとも一方が、付勢手段によって他方に向かって付勢されている。これにより、高い接圧で雄端子を雌端子の接続部に押圧保持することができる。しかも、対向部材や付勢手段は、接続部を備えた雌端子金具に保持されていることから、従来構造のように雄端子を雌端子に導通接続した後に、別体のばね部材等を取り付ける必要がなく、雌雄端子間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。加えて、接近変位規制手段により、対向部材と接続部が付勢手段の付勢力に抗して雄端子挿通隙間を隔てた位置(状態)に保持されている。これにより、雄端子を雌端子の接続部へ向けて挿入する際には、雄端子挿通隙間に雄端子を挿入するだけでよく、雄端子の挿入当初の挿入力を有利に低減できる。さらに、付勢力に抗して接続部と対向部材間の離隔方向の変位が許容されることから、雄端子挿通隙間に雄端子を圧入することにより、接続部と対向部材の間へ雄端子を挿し入れて圧接状態で配設保持できる。この際には、付勢手段の付勢力が接近変位規制手段に分散させることなく対向部材や接続部の少なくとも一方を介して雄端子や他方側に及ぼすことができ、雄端子を大きな接圧で雌端子の接続部に押圧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第一の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図6】本発明の第二の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図11】本発明の第三の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【
図16】本発明の第四の実施形態としての雌端子を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
先ず、
図1~5には、本発明の第一の実施形態としての雌端子10が、示されている。雌端子10は、略矩形平板状のタブ形状を有する雄端子12と導通接続される接続部14を含む雌端子金具16を有している。さらに、雌端子10は、雌端子金具16に組み付けられる、収容空所18を有するケース20を有している。なお、以下の説明において、上方とは、
図1,4,5中の上方、下方とは、
図1,4,5中の下方を言い、また前方とは、
図2~4中の左方、後方とは、
図2~4中の右方を言い、さらに長手方向とは、
図2~4中の左右方向、幅方向とは、
図2~3中の上下方向を言うものとする。
【0037】
図1および
図4に示されているように、雌端子金具16は、長手方向に向かって延びる略矩形平板形状を有している。雌端子金具16の長手方向一方側(
図4中、右側)の平坦な部分に電線接続部22が設けられている一方、電線接続部22よりもやや低い(
図4中、下方)位置にある、電線接続部22よりも長手方向他方側(
図4中、左側)の平坦な部分が接続部14とされている。かかる雌端子金具16は、導電性を有しており、かつプレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いて形成されている。そして、電線接続部22において、雌端子金具16に対して電線24の芯線26が導通接続されている。より詳細には、電線24は、導体である銅やアルミニウムその他の金属線の複数を束ね合わせた芯線26が、エチレン系樹脂やスチレン系樹脂等の電気絶縁性を有する絶縁被覆28で覆われた構造とされている。そして、電線24の端末において絶縁被覆28を剥いで露呈された芯線26を、例えば抵抗溶接等の公知の技術を用いて雌端子金具16の電線接続部22に固着することにより電線24の芯線26が雌端子金具16に対して導通接続されるようになっている。
【0038】
一方、
図3~4に示されているように、接続部14の長手方向(
図3~4中、左右方向)の中央部には、長手方向に離隔した2箇所において幅方向(
図3中、上下方向)に延びると共に板厚方向(
図4中、上下方向)上方に向かって突出するエンボス30が形成されている。加えて、
図1~3に示されているように、接続部14の長手方向両側における幅方向両側縁部には、平面視で略矩形状を有しかつ板厚方向および外方(
図2~3中、上下方向)に向かって開口する切欠部32が設けられている。
【0039】
このような構成とされた雌端子金具16の接続部14の表面34上にケース20が組み付けられるようになっている(例えば、
図4参照)。かかるケース20は、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等を用いて形成されている。より詳細には、ケース20は、雌端子金具16の接続部14に組み付けられた状態で収容空所18を介して接続部14に対向する略矩形平板形状の壁部36を含んでいる。また、ケース20は、壁部36の長手方向の両側縁部から下方に向かって延び出す略矩形平板状の一対の壁部38,38を有しており、壁部36と一対の壁部38,38によって収容空所18が構成されている。さらに、ケース20は、壁部38の幅方向(
図2中、上下方向)の両側縁部から外方に向かって突出後に長手方向(
図2中、左右方向)外方に向かって突出する略平板状の脚部40と、脚部40の突出端部から下方に向かって突設された略矩形平板状の加締め突起42と、を有している。加えて、壁部36の幅方向の両側縁部の中央部には、下方に向かって延び出すと共に延出先端部において内方に向かって開口する略凹状を有するコイルばね保持枠44が設けられている。また、長手方向に対向配置された一対の壁部38,38には、コイルばね保持枠44より下方において対向する同じ位置に略横長矩形断面形状の後述する接近変位規制手段を構成する係合窓46が貫設されている。
【0040】
このような構成とされたケース20の収容空所18に対して、対向部材を構成する押圧部材48と付勢手段を構成するコイルばね50が収容配置された状態で雌端子金具16の接続部14に保持されている(例えば、
図4参照)。より詳細には、押圧部材48は、略矩形平板形状を有しており、プレス加工や打抜き加工等が可能な種々の金属材料、例えば真鍮や銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等を用いて形成されている。押圧部材48の長手方向(
図4中、左右方向)の両側縁部には、長手方向の外方に向かって突出する略矩形平板状の後述する接近変位規制手段を構成する係合突起52が設けられている一方、押圧部材48の幅方向(
図5中、左右方向)の両端縁部53,53は、斜め上方に向かって屈曲されている。そして、コイルばね50をケース20のコイルばね保持枠44内に収容保持した状態で、ケース20の一対の壁部38,38の延出端部を押し広げて押圧部材48を収容空所18に挿入する。すなわち、押圧部材48の係合突起52をケース20の係合窓46に係合することにより、ケース20の壁部36と押圧部材48との間にコイルばね50が圧縮状態で収容配置されて、押圧部材48を接続部14側に付勢すると共に押圧部材48の係合突起52が係合窓46の接続部14側の端縁部
47aに付勢される。次に、このようにして押圧部材48とコイルばね50が収容配置されたケース20を、雌端子金具16の接続部14の表面34上に組み付ける。すなわち、ケース20の加締め突起42を接続部14の切欠部32に挿入後、幅方向内方に折り曲げて加締めることにより、ケース20が、ケース20の脚部40が接続部14の表面34上に載置された状態で固定されて、ケース20に収容された押圧部材48とコイルばね50が間接的に雌端子金具16に保持されるのである。このように、本実施形態では、付勢手段を構成するコイルばね50と押圧部材48を予め一連の部品として組み上げた後に接続部14を備えた雌端子金具16に組み付けることができ、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0041】
これにより、例えば
図4に示されているように、収容空所18内に収容配置された平板状の押圧部材48が、接続部14上に雄端子挿通隙間51を隔てて相互に平行に位置決め保持されて、接続部14に対向配置されている。なお、本実施形態では、接続部14にエンボス30,30が突設されていることから、雄端子挿通隙間51の隙間寸法:g(
図5参照)はエンボス30の突出端面と押圧部材48の下面の対向面間寸法で規定されている。そして、押圧部材48が雌端子金具16に間接的に保持されていると共に、ケース20に設けられた雄端子挿入口54を介して、雄端子挿通隙間51が外部に連通されている。すなわち、ケース20の雄端子挿入口54が、雌端子金具16の長手方向に直交する方向(
図1中、右斜め下方および左斜め上方)に開口しているのである。それゆえ、雄端子12を雌端子10の側方(
図2中、上下方向)から組み付けることが可能となり、雄端子12の雌端子10への挿入距離を短くしつつ十分な接触面積を確保することが可能となるのである。また、雄端子12が鉛直方向に突設されている場合などには、雌端子10と雄端子12の接続領域の低背化を有利に実現できる。さらに、例えば
図5に示されているように、押圧部材48の幅方向(
図5中、左右方向)の両端縁部53,53が、ケース20に設けられた雄端子挿入口54から外方に向かって突出していると共に、雌端子金具16の接続部14から離隔する方向(本実施形態では、斜め上方)に屈曲されている。かかる屈曲部分が雄端子12の誘い込み機能を発揮することから、雄端子12の雄端子挿入口54を介しての雄端子挿通隙間51への挿し入れをよりスムーズに行うことが可能となっている。
【0042】
加えて、接近変位規制手段が、押圧部材48に設けられた係合突起52と、ケース20の壁部38に貫設された係合窓46を含んで構成されている。かかる接近変位規制手段も間接的に雌端子金具16に保持されている。ここで、係合窓46は、押圧部材48と接続部14の対向方向(
図4~5中、上下方向)に所定長さで延びている。そして、雄端子挿通隙間51の隙間寸法:gより大きな板厚:t(t>g)を有する雄端子12が雄端子挿入口54から雄端子挿通隙間51に圧入状態で挿入された際に、押圧部材48がコイルばね50の付勢力に抗して接続部14から離隔する方向へ変位可能となっている。すなわち、雄端子12が、雄端子挿通隙間51へ圧入されて接続部14と押圧部材48の間に配設されるようになっている。しかも、係合窓46の接続部14側の端縁部47aが、押圧部材48を
エンボス30の突出端面に対して雄端子挿通隙間51の隙間寸法:g分だけ隔てた位置に保持するように設定されている一方、かかる端縁部に対して押圧部材48に設けられた係合突起52がコイルばね50によって接続部14側に付勢された状態で係合されている。すなわち、接近変位規制手段を構成する係合突起52と係合窓46により、押圧部材48と接続部14間の接近方向の変位を規制して、雄端子挿通隙間51を維持するようになっている。また、係合窓46の接続部14から離隔する側の端縁部47bに対して押圧部材48の係合突起52が当接することにより、振動等による雌端子10と雄端子12間の過度な変位を抑えて、雄端子12の抜け等が防止されるようになっている。なお、本実施形態では、付勢手段がコイルばね50を用いて構成されていることから、たわみ量を大きく確保することができる。それゆえ、ばね定数が小さいコイルばね50を限られたケース20の収容空間内にコンパクトに配設することができ、雄端子挿通隙間51の隙間寸法:gや雄端子の板厚:t等がばらついても雌端子10と雄端子12間の接圧の変化を小さく抑えることができる。
【0043】
このような構造とされた本実施形態の雌端子10によれば、押圧部材48が、接続部14上に雄端子挿通隙間51を隔てて相互に平行に位置決め保持されていると共に、コイルばね50によって押圧部材48が接続部14側に付勢されている。これにより、雄端子挿通隙間51に挿通配置された雄端子12は、雌端子金具16の接続部14に対してコイルばね50の付勢力によって押圧されることから、高い接圧で雄端子12を雌端子10の接続部14に押圧保持することができる。しかも、押圧部材48やコイルばね50は予め雌端子10に組付けられており、従来の如き雄端子12の導通接続後に別体のばね部材等を取り付ける必要がないことから、作業工程の簡略化を図ることができて、雄端子12と雌端子10間の高い接圧を優れた作業性により実現することができる。
【0044】
また、接近変位規制手段を構成する係合突起52と係合窓46により、押圧部材48が、雄端子挿通隙間51を隔てた位置に保持されていると共に、コイルばね50の付勢力に抗して接続部14から離隔する方向へ変位可能となっている。これにより、雄端子12を雌端子10の雄端子挿通隙間51に挿入するだけで、雄端子12と雌端子10を高い接圧で以って導通接続することができる。しかも、雄端子挿通隙間51の隙間寸法:gが雄端子12の板厚:t よりもわずかに狭くされていることから、雄端子12が雄端子挿通隙間51に挿入された際に押圧部材48が接続部14から離隔する方向へ変位する量はわずかで仕事量が少なくて済み、雄端子12の雄端子挿通隙間51への挿入時の挿入力を有利に低減することができる。
【0045】
加えて、雌端子金具16に組み付けられる収容空所18を有するケース20を用い、かかる収容空所18に押圧部材48と付勢手段を構成するコイルばね50を収容配置した状態で雌端子金具16に組付けることにより、押圧部材48とコイルばね50を容易に雌端子金具16に保持できるようになっている。それゆえ、かかるケース20を用いることにより、雌端子金具16に対する押圧部材48とコイルばね50の一体的な保持を容易に実現することが可能となるのである。また、接近変位規制手段も、ケース20の壁部38に貫設された係合窓46と、押圧部材48に設けられた係合突起52によって構成されていることから、ケース20を用いることにより、接近変位規制手段を効率的に構成することができる。しかも、雌端子金具16にケース20を組み付けることにより、ケース20内に収容保持される押圧部材48とコイルばね50と接近変位規制手段(係合窓46と係合突起52)を利用して、雄端子12の雌端子10の雄端子挿通隙間51に対する挿入力の低減および接圧の向上を図っている。したがって、雌端子10の接続部14と雄端子12の形状の変更等を伴うことなく挿入力の低減および接圧の向上を図ることができるので、既存の雄端子12や既存の雌端子金具を利用しつつ汎用性よく本発明の雌端子10を実現することが可能となるのである。
【0046】
次に、
図6~10を用いて、本発明の第二の実施形態としての雌端子56について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、長手方向において接続部58に対して電線接続部22とは反対側にケース60が配設されて雌端子金具62に組み付けられている点に関して、上記第一の実施形態と異なる実施形態を示すものである。より詳細には、雌端子金具62は図示しない帯状の平板金具を折り曲げることによって形成されており、雌端子金具62の長手方向一方側(
図8中、右側)において平板金具の長手方向端縁部同士が重ね合されて構成されている平坦な部分に電線接続部22が設けられている。一方、雌端子金具62の長手方向他方側(
図8中、左側)において平板金具の中央部が側面視で筒体状に形成されると共に、雌端子金具62の長手方向他方側の端縁部には端面を画成する壁部57が凹状に凹まされることにより長手方向他方側に向かって開口する凹状の接続部58が構成されている。
【0047】
接続部58から電線接続部22に向かって延びる壁部72,72には、後述する加締め突起42が加締め固定される切欠部32が形成されている。そして、長手方向において接続部58に対して電線接続部22とは反対側にケース60が配設されて雌端子金具62の接続部58に組み付けられている。ケース60は、雌端子金具62の接続部58に組み付けられた状態で収容空所66を介して接続部58に対向する略矩形平板形状の壁部36を含んでいる。ケース60には、幅方向(
図8中、上下方向)の両端縁部から長手方向一方側(
図8中、右側)に向かって突出する略矩形平板状の壁部38が設けられており、壁部38の突出先端部の幅方向両端縁部には外方に向かって突出する加締め突起42が設けられている。また、ケース60には、収容空所66内に平板状の部材の中央部が接続部58に向かって凸状に突設されることにより形成された押圧部材68が収容配置され、押圧部材68とケース60の壁部36の間にコイルばね50が収容されている。そして、押圧部材68に設けられた係合突起52がケース60の係合窓46に係合した状態で、ケース60の加締め突起42を接続部58の切欠部32に対して加締めることにより、ケース60が接続部58に対して固定されて、押圧部材68の凸状の中央部68aが接続部58に対して長手方向で雄端子挿通隙間51を隔てて位置決め保持されている。かかる状態で、ケース60の壁部36と押圧部材68の間のコイルばね50が圧縮状態で収容配置されていることから、押圧部材68に設けられた係合突起52がケース60に設けられた係合窓46の接続部58側の端縁部47aに付勢されている。長手方向において押圧部材68と接続部58の間に位置してケースに設けられた、長手方向に直交する方向に開口する雄端子挿入口54を介して、雄端子挿通隙間51が外部に連通されている。そして、かかる雄端子挿通隙間51に対して、ピン状の雄端子70が挿通保持されることにより雌端子金具62の接続部58に対して導通接続されるようになっている。本実施形態では、凹状の接続部58の曲率半径は、雄端子70の曲率半径よりもわずかに大きくされていることから、ピン状の雄端子70を広い接触面積で凹状の接続部58に収容保持することができ、より低抵抗での雌端子56と雄端子70間の接続を実現することができる。なお、押圧部材68が凸状になっているのは、高圧の雄端子70側に設けられた人との接触防止用のリブを収容する隙間を長さ方向(
図8中、上下方向)に作るためである。また、本実施形態では、
図9に示すように、雄端子挿通隙間51を構成する押圧部材68の中央部68aと接続部58の最大隙間寸法:gが雄端子70の最大外径寸法:dよりもわずかに小さくされている(g<d)。
【0048】
本実施形態によれば、雌端子金具62の長手方向一方側に電線接続部22が設けられている一方、雌端子金具62の長手方向他方側に向かって開口する凹状の接続部58が構成されている。しかも、長手方向において接続部58に対して電線接続部22とは反対側にケース60が配設されて雌端子金具62に組み付けられている。そして、押圧部材68の凸状の中央部68aと凹状の接続部58に対して長手方向で雄端子挿通隙間51を隔てて位置決め保持されており、押圧部材68が、ケース60の壁部36と押圧部材68の間に圧縮状態で収容配置されているコイルばね50によって接続部58側に付勢されている。これにより、ピン状の雄端子70の最大外径寸法:dが大きい場合であっても、上記第一の実施形態の如き電線24の延出方向に直交する方向に押圧部材68やコイルばね50を積み上げる構造を回避することができることから、雌端子56の高さ寸法を抑えた構造を有利に実現することができる。
【0049】
さらに、雄端子挿入口54が雌端子金具62の長手方向に直交する方向に開口していることから、雄端子70を雌端子56の側方から組み付けることが可能となり、雌端子56の低背化を実現しつつ雌端子56と雄端子70間の安定した接続を高い接圧で確保できる。また、接続部58が凹状とされていることから、ピン状の雄端子70との接触面積を確実に確保しつつ安定した保持を実現できる。加えて、雌端子金具62は図示しない帯状の平板金具を折り曲げることによって容易に形成することができると共に、凹状の接続部58が、雌端子金具62の長手方向他方側における端縁部の壁部の中央部に設けられており、電流経路が壁部の長さ方向(
図8中、上下方向)の両側を通って電線接続部22で重ね合されていることから、雌端子金具62の軽量化と強度確保を図りつつ電流経路の断面積を増大させてより大きな電流を流すことができる。
【0050】
続いて、
図11~15を用いて、本発明の第三の実施形態としての雌端子74について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、ケース76の雄端子挿入口78が、雌端子金具16の長手方向前方(
図11中、左斜め下方)に向かって開口している点に関して、上記第一の実施形態と異なる実施形態を示すものである。この結果、雄端子12を雌端子74の前方(
図12中、左方)から組み付けることが可能となることから、上記第一の実施形態における雄端子12の雌端子10への側方からの組み付けに加えて種々の組付け構造に対応することが可能となるのである。より詳細には、本実施形態におけるケース76では、接続部14に対向する壁部36の幅方向(
図12中、上下方向)の両側縁部から下方に向かって一対の壁部38,38が延び出しており、壁部36と一対の壁部38,38によって長手方向(
図12中、左右方向)の両側に開口する収容空所18が構成されている。そして、ケース76の壁部36に設けられたコイルばね保持枠44内にコイルばね50を収容配置した状態で、ケース76の一対の壁部38,38の延出端部を押し広げて押圧部材48を収容空所18に挿入する。これにより、押圧部材48の係合突起52がケース76の係合窓46に係合されて、押圧部材48とコイルばね50が収容配置されたケース76ができあがる。最後に、かかるケース76を、雌端子74の接続部14の表面34上に組み付ける。すなわち、ケース76の一対の壁部38,38の延出端部に設けられている加締め突起42を接続部14の切欠部32に挿入後、幅方向内方に折り曲げて加締めることにより、ケース76が、ケース76の脚部40が接続部14の表面34上に載置された状態で固定されるのである。この結果、
図11に示されているように、ケース76の雄端子挿入口78が、雌端子
74の長手方向前方(
図11中、左斜め下方)に向かって開口形成されるようになっているのである。
【0051】
このような構造とされた本実施形態の雌端子74においても、上記第一の実施形態と同様に、押圧部材48がコイルばね50によって接続部14側に付勢されていることから、雄端子挿通隙間51に挿通配置された雄端子12を高い接圧で接続部14に押圧保持することができる。しかも、押圧部材48やコイルばね50は予め雌端子74に組付けられていることから、従来の如き雄端子12の導通接続後に別体のばね部材等を取り付ける必要がなく、雄端子12と雌端子74間の高い接圧を優れた作業性により実現できる。加えて、押圧部材48と接続部14がコイルばね50の付勢力に抗して雄端子挿通隙間51を隔てた位置(状態)に保持されていると共に、雄端子挿通隙間51の隙間寸法:gが雄端子12の板厚:t よりもわずかに狭くされている。これにより、雄端子12が雄端子挿通隙間51に圧入状態で挿入された際に押圧部材48が接続部14から離隔する方向へ変位する量はわずかで仕事量が少なくて済み、雄端子12の雄端子挿通隙間51への挿入時の挿入力を有利に低減することができるのである。
【0052】
さらに、
図16~20を用いて、本発明の第四の実施形態としての雌端子80について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。本実施形態では、雌端子金具16の接続部14が、雌端子金具16に組み付けられたケース82の収容空所18内に収容配置されており、対向部材がケース82の壁部84を含んで構成されている点に関して、上記第三の実施形態と異なる実施形態を示すものである。より詳細には、
図19~20に示されているように、ケース82の収容空所18に収容された雌端子金具16の接続部14の一方の面である裏面86が、雄端子挿通隙間51を隔ててケース82の壁部84と対向すると共に、接続部14の他方の面である表面34が、隙間を隔ててケース82の他の壁部36と対向している。そして、接続部14とケース82の他の壁部36の間に付勢手段であるコイルばね50が圧縮状態で収容配置されており、接続部14がコイルばね50によってケース82の壁部84に向かって付勢されている。また、雌端子金具16の接続部14は、コイルばね50による付勢力に抗してケース82の壁部84から離隔する方向へ変位可能とされている。かかる構造は、接近変位規制手段を構成する、接続部14の前方側(
図17~18中、左側)の幅方向(
図17~18中、上下方向)両側縁部から外方に向かって突設された略矩形平板状の係合突起88と、ケース82の一対の壁部90a,90bに設けられた係合窓92と、によって構成されている。
【0053】
本実施形態において接続部14に対してケース82を組み付ける際には、まず、コイルばね50をケース82のコイルばね保持枠44内に収容保持した状態で、ケース82の一対の壁部90a,90bの延出端部を押し広げて接続部14の先端側を収容空所18に挿入する。すなわち、接続部14の係合突起88をケース82の係合窓92の壁部84側の端縁部93aに係合することにより、ケース82の壁部36と接続部14との間にコイルばね50が圧縮状態で収容配置される収容空所18を構成する1つの隙間が形成される。また、壁部84から離隔する側の係合窓92の端縁部93bに対して押圧部材48の係合突起52が当接することにより、振動等による雌端子80と雄端子12間の過度な変位を抑えて、雄端子12の抜け等が防止されるようになっている。続いて、ケース82の一方(
図20中、左方)の壁部90aを他方(
図20中、右方)の壁部90bに向かって屈曲させた後、壁部90aの先端部に設けられた略平板状の係合突起94を壁部90bに設けられた貫通孔96に挿入して、壁部90bの外面に当接するように上方に向かって屈曲させる。この結果、壁部90aの接続部14と対向する部位によって、対向部材である壁部84が構成されるのである。なお、対向部材である壁部84には、長手方向(
図19中、左右方向)に向かって延びると共に幅方向(
図18中、上下方向)に離隔して底面視で略矩形状の一対のエンボス98,98が設けられている。最後に、他方の壁部90bの先端部を貫通孔96において壁部90aの外面に当接するように一方の壁部90a側(
図20中、左側)に向かって屈曲させることにより、ケース82の接続部14に対する組み付けが完了する。
【0054】
本実施形態によれば、ケース82の収容空所18に収容された雌端子金具16の接続部14の一方の面である裏面86が、雄端子挿通隙間51を隔ててケース82の壁部84と対向すると共に、接続部14の他方の面である表面34が、隙間を隔ててケース82の他の壁部36と対向している。そして、接続部14とケース82の他の壁部36の間に付勢手段であるコイルばね50が圧縮状態で収容配置されており、接続部14がコイルばね50によってケース82の壁部84に向かって付勢されている。それゆえ、本実施形態においても他の実施形態と同様に、雄端子挿通隙間51においてコイルばね50の付勢力によって雄端子12を確実に接続部14に対して押圧することができる。これにより、特に本実施形態のように雄端子12が平板形状の場合には、より広い接触面積で雄端子12を雌端子金具16に対して安定して押圧することができ、雌端子80と雄端子12間の接圧の向上を確実に図ることができることから、雌端子80と雄端子12を一層低抵抗で導通接続可能となるのである。
【0055】
また、単一のケース82の収容空所18内に接続部14を収容配置すると共に、ケース82の一対の壁部90a,90bを利用してコイルばね50の圧縮や対向部材である壁部84を形成していることから、雌端子80をコンパクトに形成できる。さらに、雄端子12に対して雌端子80の接続部14がコイルばね50によって直接押圧されていることから、例えば車両運転時の振動等により雄端子12が変位した際の接続部14の雄端子12に対する追従性を改善することができる。それゆえ、雄端子12の雌端子80の接続部14に対する片当たり等の発生を有利に回避して、雌端子80の接続部14を雄端子12に対して広い面積で有利に接触させることができるので、雌端子80と雄端子12間の接続安定性の向上を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の複数の実施形態について詳述したが、本発明はこれらの具体的な記載によって限定されない。例えば、上記実施形態では、付勢手段としてコイルばね50を例示して説明を行ったが、付勢手段はこれに限定されず、例えば板ばねや皿ばね等のばね部材や、ゴム弾性体等の弾性体などの周知の付勢力を付与する部材の何れも採用可能である。また、上記実施形態では、押圧部材48,68とコイルばね50はケース20,60,76を介して雌端子金具16,62に間接的に保持されていたが、直接的に保持されていてもよい。さらに、上記実施形態においては、ケース20,60や押圧部材48,68は金属製として説明を行ったが、十分な剛性を有する部材であればよく、合成樹脂等の採用が可能である。加えて、上記実施形態では、押圧部材48,68と接続部14の一方がコイルばね50によって付勢されていたが、両方がコイルばね50によって付勢されていてもよい。これにより、コイルばね50を小型化でき製造が容易となることから、コストダウンを図ることが可能となる。さらに、雄端子挿通隙間51に対して雄端子12,70が挿入される方向は、雌端子10,56,74,80の配設場所等の要求により任意に設定可能であり、例えば雌端子10,56,74,80に接続される電線24の延出方向と同方向でもよいし直交する方向でもよい。
【符号の説明】
【0057】
10,56,74,80:雌端子、12,70:雄端子、14,58:接続部、16,62:雌端子金具、18,66:収容空所、20,60,76,82:ケース、22:電線接続部、34:表面、36,90a,90b:壁部、46,92:係合窓(接近変位規制手段)、47a,b,93a,b:端縁部、48,68:押圧部材(対向部材)、50:コイルばね(付勢手段)、51:雄端子挿通隙間、52,88:係合突起(接近変位規制手段)、53:端縁部、54,78:雄端子挿入口、57:壁部、84:壁部(対向部材)、86:裏面(一方の面)