(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】移動ケーブル用架台
(51)【国際特許分類】
H02G 1/06 20060101AFI20220113BHJP
H02G 15/06 20060101ALI20220113BHJP
H02G 7/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
H02G1/06
H02G15/06
H02G7/00
(21)【出願番号】P 2018035715
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭司
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-016193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0003896(US,A1)
【文献】登録実用新案第3170289(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
H02G 15/06
H02G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ケーブルを所望の位置で保持するための移動ケーブル用架台であって、
地面に設置される基台と、この基台に互いに間隔を空けて立設される複数の支柱と、複数の前記支柱の先端同士に懸架され、前記移動ケーブルのヘッド及びこのヘッドとリード線を介して接続される支持碍子のうち少なくともいずれかが係止される台座と、一端及び他端が前記基台と複数の前記支柱にそれぞれ連結され、複数の前記支柱を補助的に支持する複数の補強部材と、作業床を備え、
前記支柱は、その基端を含む固定柱と、前記先端を含み、前記固定柱に沿って昇降する可動柱と、この可動柱を前記固定柱に対して昇降可能に固定する第1の昇降手段を備え、
前記作業床は、複数の前記固定柱の間に、この固定柱に沿って昇降し、複数の前記固定柱にそれぞれ設けられる複数の第2の昇降手段を介し、前記固定柱に対して昇降可能に保持され、
前記支柱は、前記基台の端面側に設けられる設置部に対し、前記基端を取り外し可能に立設する立設部材を備え、
前記補強部材は、前記基台の前記端面に設けられる固着部に対し、前記一端を取り外し可能に固着する第1の固着部材と、前記固定柱に設けられる回動軸に対し、前記他端を回動可能に固定する第2の固着部材を備えることを特徴とする移動ケーブル用架台。
【請求項2】
前記第2の昇降手段の上方に連結手段が設けられ、
この連結手段は、長軸が水平方向に沿って配置される筒状部材と、この筒状部材の短軸を水平方向に沿って貫通する一対の挿通孔と、この一対の挿通孔に前端及び後端がそれぞれ挿通される留め部材からなり、
前記作業床は、その両端面に、前記筒状部材に挿入される軸体をそれぞれ備え、
前記軸体は、前記留め部材が貫通可能な第1及び第2の貫通孔が、前記軸体の長手方向に沿って距離を開けて配列され、
前記第1の貫通孔は、前記作業床の床面に対して平行して穿通され、
前記第2の貫通孔は、前記床面に対して直交して穿通されることを特徴とする請求項
1に記載の移動ケーブル用架台。
【請求項3】
前記支柱の転倒を防止する転倒防止手段を備え、
この転倒防止手段は、一の端部が複数の前記固定柱にそれぞれ連結される複数の長尺体と、複数の前記長尺体の他の端部同士に懸架されて、前記地面に設置される地面設置部からなることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の移動ケーブル用架台。
【請求項4】
前記台座は、前記移動ケーブルの前記ヘッドが係止されるブラケットと、前記支持碍子が固定手段を介して固定される固定台を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の移動ケーブル用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の仮供給対策工事等の際に、移動用ケーブルを支持する移動ケーブル用架台に係り、特に、作業者の負担を軽減しつつ、ケーブルヘッドを地面から所望の高所に保持することができる移動ケーブル用架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器老朽化に伴う取替工事や機器故障に伴う仮供給対策工事を実施する際には、移動用ケーブルを使用して電力を供給する場合がある。
具体的には、例えば、特別高圧用移動ケーブルを使用して、変圧器1次側ブッシング等の高所へ接続することが行われる。しかし、従来の移動用ケーブル専用架台は、高所への接続を想定していないため、ケーブルヘッドを固定するための台座の高さは最大で2m程度であった。そのため、これ以上の高さを有する変圧器1次側ブッシング等へ、特別高圧用移動ケーブルを接続することが困難である。
このような課題を解決するため、現状では、足場や単管を利用した仮設架台を使用している。しかし、この場合、資材の運搬と準備工事を行うため、作業負担が増大するとともに、工事期間が長期化し、かつ費用が嵩むことになる。
そこで、近年、作業負担を軽減することができる技術が開発されており、それに関して既にいくつかの発明が開示されている。
【0003】
特許文献1には「移動用電力ケーブルの取付け装置」という名称で、移動用電力ケーブルを任意の高さ位置で保持する取付け装置に関する発明が開示されている。
以下、特許文献1に開示された発明について説明する。特許文献1に開示された発明は、組み立て台に対して着脱されるブラケットと、このブラケットの任意箇所に着脱自在に取付けられると共に移動用電力ケーブルを保持するクランプと、を備え、ブラケットは、その長手方向位置を変位させることができる可動ブラケットであることを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、可動ブラケットに対してクランプを着脱、移動自在に取付けて、このクランプにより移動用電力ケーブルを任意の高さ位置にて保持する。さらに、可動ブラケットは、鉛直方向、その他の方向に自在に移動する。したがって、組み立て台に対し縦、横、斜め方向の最適な位置に移動用電力ケーブルを進退移動自在に設定することができる。
【0004】
次に、特許文献2には「移動用電力ケーブルのための架台、及び移動用電力ケーブルのための架台設置撤去方法」という名称で、移動用電力ケーブル用の架台に関する発明が開示されている。
以下、特許文献2に開示された発明について説明する。特許文献2に開示された発明は、地面に設置される基台とこの基台に固定されて上方に延びる柱体とを備え、移動用電力ケーブルが備えるケーブルヘッドの重量を支える基体と、基体が備える柱体に水平軸周りに回転自在に取り付けられ、回転によって高さを変える一端側に、ケーブルヘッドを装着するためのブラケットを備える回転台と、回転台の回転範囲を、ケーブルヘッドを横向きにしてブラケットに装着させる装着位置と、ケーブルヘッドを縦向きの使用状態にする使用位置との間に規制する規制部と、回転台を使用位置に位置固定する固定部と、を備えることを特徴とする。
このような特徴を有する発明においては、回転台を回転させて水平とすることで、比較的低所に位置するブラケットにケーブルヘッドを装着し、その後、回転台を鉛直方向に沿うように回転させることで、ケーブルヘッドを高所に持ち上げるよう構成されている。よって、回転台を必要な長さに設定することにより、移動用電力ケーブルを所望の高所に持ち上げることができる。したがって、装置の占有面積の増大を招くことなく、移動用電力ケーブルを架台に設置するための作業の負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-104882号公報
【文献】特開2013-93940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明においては、可動ブラケットを移動させることで、移動用電力ケーブルを進退移動させる負担を省くことができる。しかしながら、可動ブラケットの移動は手動で行われると考えられるため、作業者が別途作業台や足場を用いる等しなければ、ケーブルヘッドを2m以上の高さに移動させることは困難であり、従来の課題を十分に解決できるとは言えない。
【0007】
次に、特許文献2に開示された発明においては、最初に回転台を水平方向に傾けるため、ブラケットにケーブルヘッドを装着し易い一方で、ある程度の設置スペースが必要となる。しかしながら、発変電所の用地面積は、通常、必要最小限しか確保されていないため、機器間隔が狭く設計されている。そのため、特に回転台の長さを数m以上にしたい場合に、水平方向の設置スペースが不足し、架台を設置できないおそれがある。すなわち、設置場所が限定され、汎用性に欠けるおそれがある。
また、設置スペースが確保できた場合であっても、作業者を高所に配置するための足場等が別途必要であるから、準備工事等の負担が軽減されないままである。よって、特許文献2に開示された発明においても、従来の課題を十分に解決できるとは言えない。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、移動ケーブルのヘッドを所望の高さで保持でき、しかも、足場等を別途組み立てることがなく、その高さにおいて作業員がケーブルヘッドに容易に接触可能であるために、作業負担を一層軽減できる移動ケーブル用架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、移動ケーブルを所望の位置で保持するための移動ケーブル用架台であって、地面に設置される基台と、この基台に互いに間隔を空けて立設される複数の支柱と、複数の支柱の先端同士に懸架され、移動ケーブルのヘッド及びこのヘッドとリード線を介して接続される支持碍子のうち少なくともいずれかが係止される台座と、一端及び他端が基台と複数の支柱にそれぞれ連結され、複数の支柱を補助的に支持する複数の補強部材を備え、支柱は、その基端を含む固定柱と、先端を含み、固定柱に沿って昇降する可動柱と、この可動柱を固定柱に対して昇降可能に固定する第1の昇降手段を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成の発明においては、例えば、固定柱と可動柱は、横断面がそれぞれコ字形状をなすことにより、可動柱が固定柱の内部に収容されこれに沿って第1の昇降手段を介して上下方向にスライド移動するものが考えられる。また、第1の昇降手段としては、固定柱の内部に固定され可動柱の最下部を支持する油圧制御装置や、固定柱に設置されるウォームホイールと、可動柱に取り付けられこのウォームホイールに噛合するウォームと、ウォームホイールを回動させるハンドル又はモーターといった手動又は電動による操作手段が使用される。
上記構成の発明においては、例えば、予め複数の支柱の長さをいずれも最短の状態としておいた後、基台を変圧器に隣接する地面に設置し、さらに移動ケーブルのヘッドを支柱の先端に懸架される台座に係止し、そして可動柱を第1の昇降手段によって上昇させることで、移動ケーブルのヘッドが所望の高さに保持される。このとき、一端及び他端が基台と支柱にそれぞれ連結され、基台対して傾斜して設置される補強部材により、複数の支柱がそれぞれ補助的に支持されることから、重量物である移動ケーブルを保持した状態であっても、支柱の傾斜や転倒が防止される。
なお、この台座には、移動ケーブルのヘッドの他、このヘッドをリード線を介して接続される支持碍子が設置されていても良い。また、この支持碍子は、2本目のリード線を介して、変圧器の1次側ブッシングや遮断器のブッシングと接続される。
【0011】
次に、第2の発明は、第1の発明において、複数の固定柱の間に、この固定柱に沿って昇降する作業床を備え、この作業床は、複数の固定柱にそれぞれ設けられる複数の第2の昇降手段を介し、固定柱に対して昇降可能に保持されることを特徴とする。
このような構成の発明において、第2の昇降手段としては、例えば、複数の固定柱にそれぞれ設置される油圧制御手段が考えられる。この第2の昇降手段は、これに対向する作業床の一対の端面とそれぞれ接続されている。
上記構成の発明においては、第1の発明の作用に加えて、第2の昇降手段を駆動させることで、予め作業員を載せた作業床が、移動ケーブルのヘッドの高さ位置に追随するように昇降する。
【0012】
続いて、第3の発明は、第2の発明において、支柱は、基台の端面側に設けられる設置部に対し、基端を取り外し可能に立設する立設部材を備え、補強部材は、基台の端面に設けられる固着部に対し、一端を取り外し可能に固着する第1の固着部材と、固定柱に設けられる回動軸に対し、他端を回動可能に固定する第2の固着部材を備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、第2の発明の作用に加えて、支柱と補強部材は、いずれも立設部材と第1及び第2の固着部材を介して取り外し可能な構成であるから、移動ケーブル用架台を使用する場合のみ、支柱と補強部材を基台に取り付けることができる。また、これ以外の保管や移動時には、支柱と補強部材は基台から取り外された状態にしておくことができる。
このうち、第2の固着部材は、補強部材の他端を回動可能に固定するため、支柱と補強部材が基台から取り外された状態では、補強部材が支柱と平行となる。
【0013】
さらに、第4の発明は、第2又は第3の発明において、第2の昇降手段の上方に連結手段が設けられ、この連結手段は、長軸が水平方向に沿って配置される筒状部材と、この筒状部材の短軸を水平方向に沿って貫通する一対の挿通孔と、この一対の挿通孔に前端及び後端がそれぞれ挿通される留め部材からなり、作業床は、その両端面に、筒状部材に挿入される軸体をそれぞれ備え、軸体は、留め部材が貫通可能な第1及び第2の貫通孔が、軸体の長手方向に沿って距離を開けて配列され、第1の貫通孔は、作業床の床面に対して平行して穿通され、第2の貫通孔は、床面に対して直交して穿通されることを特徴とする。
【0014】
このような構成の発明において、連結手段を構成する留め部材としては、ボルトとこのボルトに螺合するナットが考えられる。また、「第1及び第2の挿通孔のいずれかに挿通される」とは、留め部材が第1及び第2の挿通孔のいずれかに異なるタイミングで挿通されるという意味である。
上記構成の発明においては、第2又は第3の発明の作用に加えて、作業床の両端面に突出する各軸体は、連結部材の環状部材に常に挿入された状態となっている。作業床を使用する場合には、留め部材が、筒状部材の一方の挿通孔と、軸体の第1の貫通孔と、筒状部材の他方の挿通孔を貫き、脱落不能に固定される。ここで、一対の挿通孔は水平方向に沿って設けられ、かつ第1の貫通孔は、作業床の床面に対して平行して穿通されることから、留め部材が脱落不能に固定されると、水平方向に沿った床面が固定柱によって保持される。
【0015】
これに対し、作業床を使用しない場合には、留め部材が、筒状部材の一方の挿通孔と、軸体の第2の貫通孔と、筒状部材の他方の挿通孔を貫き、脱落不能に固定される。ここで、第2の貫通孔は、作業床の床面に対して直交して穿通されることから、留め部材が脱落不能に固定されると、鉛直方向に沿った床面が固定柱によって保持される。
なお、留め部材を差し込む際の第1の貫通孔と第2の貫通孔の選択は、第1及び第2の貫通孔が、軸体の長手方向に沿って距離を開けて配列されることから、作業床を水平方向に沿ってスライド移動させることで行われる。
【0016】
そして、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、支柱の転倒を防止する転倒防止手段を備え、この転倒防止手段は、一の端部が複数の固定柱にそれぞれ連結される複数の長尺部と、複数の長尺体の他の端部同士に懸架されて、地面に設置される地面設置部からなることを特徴とする。
このような構成の発明においては、移動ケーブルや作業員の荷重が複数の長尺部を介して地面設置部に加えられる。その結果、地面設置部と地面との摩擦力が発生し、地面設置部が地面上をずれ動くことが防止される。すなわち、複数の長尺部が立設された支柱を補助的に支持するため、支柱の転倒が防止される。
【0017】
加えて、第6の発明は、台座は、移動ケーブルのヘッドが係止されるブラケットと、支持碍子が固定手段を介して固定される固定台を備えることを特徴とする。
このような構成の発明においては、移動ケーブルのヘッドと、支持碍子の双方が台座によって保持されるが、必ずしもヘッドと支持碍子が同時に保持されなくても良い。支持碍子は、ヘッドと変圧器等のブッシング間を接続するリード線が一定以上の長さを有する場合に、リード線を保持するために用いられるものだからである。なお、固定台とは、例えば、台座のうちボルト孔が設けられる箇所であり、この場合の固定手段とは、ボルト孔に挿通されるボルト及びこのボルトに螺合するナットである。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、地面近くの低所において、予め複数の支柱の長さをいずれも最短の状態としておいた後、移動ケーブルのヘッドを台座に係止することから、地面近くの低所において、ヘッドを台座に取り付けることができる。その後、可動柱を第1の昇降手段によって上昇させることで、移動ケーブルのヘッドが所望の高さに保持されることから、従来のように足場等を組む必要がない。よって、準備工事における資材の準備やそれらの組立等の作業負担とそのための時間を軽減することができる。このとき、補強部材により、重量物である移動ケーブルを保持した状態であっても、支柱の傾斜や転倒が防止されるため、作業員の安全性をも確保することができる。
【0019】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、作業床と第2の昇降手段によって、予め作業員を載せた作業床が移動ケーブルのヘッドの高さ位置に追随するように昇降することから、高所において、作業員がヘッドや支持碍子に容易に接触可能である。そのため、移動ケーブルと、支持碍子又はブッシングをリード線によって接続、分離する際の負担を一層軽減することが可能である。
【0020】
第3の発明によれば、第2の発明の効果に加えて、立設部材と第1及び第2の固着部材を備えることで、必要な場合にのみ移動ケーブル用架台を組み立てて使用することができる。したがって、電力の仮供給対策工事は勿論のこと、緊急時の復旧対応にも短時間で移動ケーブル用架台を設置可能である。また、不使用の際の保管スペースがわずかで済み、かつ運搬も容易となる。
【0021】
第4の発明によれば、第2又は第3の発明の効果に加えて、作業床を水平方向に沿ってスライド移動させることにより、作業床の床面を水平又は鉛直に沿うように変化させることができる。したがって、支柱と補強部材を基台から分離する際には、作業床を支柱等と同様の方向に傾斜させることができるので、不使用時に移動ケーブル用架台をコンパクトに保管することができ、便利である。
【0022】
第5の発明によれば、第1乃至第4のいずれかの発明の効果に加えて、転倒防止手段により支柱の転倒が防止されることから、高所に配置された作業床に作業員が乗ることで重心が高所に位置する場合に事故を確実に防止することができ、特に有効である。
【0023】
第6の発明によれば、第1乃至第5のいずれかの発明の効果に加えて、台座にブラケットと、固定台が設けられることから、移動ケーブルのヘッドと支持碍子のいずれをも保持可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例に係る移動ケーブル用架台の外観を示す斜視図である。
【
図2】(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する支柱の基端の、
図1におけるA方向矢視図であり、(b)は移動ケーブル用架台を構成する補強部材の一端の、
図1におけるA方向矢視図である。
【
図3】(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する補強部材の他端の
図1におけるA方向矢視図であり、(b)は同他端の(a)におけるC方向矢視図である。
【
図4】実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する連結手段と、作業床の軸体を示す斜視図である。
【
図5】(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する作業床の、
図1におけるB方向矢視図であり、(b)は(a)で表示した作業床の方向をその軸体を中心として90°回転させた状態のB方向矢視図である。
【
図6】(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する台座の、
図1におけるB方向矢視図であり、(b)は同台座の斜視図である。
【
図7】(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成するブラケットと固定台の、
図1におけるB方向矢視図であり、(b)は同ブラケットと固定台の、(a)におけるC方向矢視図である。
【
図8】(a)及び(b)は、それぞれ実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する支柱の昇降作用を説明するための正面図である。
【
図9】実施例に係る移動ケーブル用架台の使用状態図である。
【
図10】実施例に係る移動ケーブル用架台の使用状態図である。
【
図11】実施例に係る移動ケーブル用架台に転倒防止手段が付加された場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
本発明の実施の形態に係る移動ケーブル用架台について、
図1乃至
図11を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例に係る移動ケーブル用架台の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、実施例に係る移動ケーブル用架台1は、移動ケーブル50(
図9,10参照)を所望の位置で保持するための移動ケーブル用架台である。
移動ケーブル用架台1は、地面Gに設置される基台2と、この基台2に互いに間隔を空けて立設される複数の支柱3,4と、複数の支柱3,4の先端3a,4a同士に懸架され、移動ケーブル50のヘッド50a(
図7(b)参照)及びこのヘッド50aとリード線52(
図9参照)を介して接続される支持碍子51が係止される台座11と、一端12a~15a及び他端12b~15bが基台2と複数の支柱3,4にそれぞれ連結され、複数の支柱3,4を補助的に支持する複数の補強部材12~15を備える。なお、移動ケーブル50のヘッド50a及び支持碍子51の1個当たりの重量は、それぞれ約50Kg程度である。
【0026】
基台2は、台座11の長手方向Xに直交する方向に設置される一対の角型鋼管2a,2aと、角型鋼管2a,2aの間に架け渡されて、角型鋼管2a,2aに固定される金属平板2bからなる。したがって、角型鋼管2a,2aの各外側面は、基台2の端面2e,2eとなり、この端面2e,2eは台座11の長手方向Xに直交している。なお、角型鋼管2aと、金属平板2bの厚みは、それぞれ約4cmと、1cmであるので、金属平板2b表面は地面Gから約5cmの高さに位置する。
また、補強部材12,13は、支柱3に対してそれぞれ傾斜角α,βで傾斜して固定され、
図1中には示していないが補強部材14,15は、支柱4に対してそれぞれ傾斜角α,βで傾斜して固定されている。なお、補強部材12,13が支柱3と平行するとき、及び補強部材14,15が支柱4と平行するときに、傾斜角α,βはいずれも0度となる。
【0027】
支柱3,4は、その基端3b,4bを含む固定柱5,6と、先端3a,4aを含み、固定柱5,6に沿って昇降する可動柱7,8と、この可動柱7,8を固定柱5,6に対して昇降可能に固定する第1の昇降手段9,10を備える。
固定柱5,6及び可動柱7,8は、いずれも横断面がコ字状をなす鋼材である。そのため、可動柱7,8、及び第1の昇降手段9,10は、固定柱5,6の内部にそれぞれ収容された状態である。このうち、可動柱7,8は、第1の昇降手段9,10を介し、固定柱5,6に沿って上下方向にスライド移動する。より具体的には、固定柱5,6の長さは約230cmであり、可動柱7,8の長さは約80cmである。
【0028】
また、第1の昇降手段9,10としては、それぞれ、基端3b,4b寄りの固定柱5,6の内部に固定され可動柱7,8を支持する油圧シリンダー16a,16aと、固定柱5,6の外表面に固定され油圧シリンダー16a,16aの稼働を制御する油圧ポンプ(図示せず)と、この油圧ポンプと油圧シリンダー16a,16aをそれぞれ連結する油圧ホース(図示せず)が使用される。この油圧ポンプは、固定柱6の外側端面6aに取り付けられるスイッチ16bによってオンオフ制御される。
具体的には、油圧シリンダー16a,16aは多段式のピストンを収容しており、その最大ストロークは約210cmである。また、油圧シリンダー16a,16aの上端の、金属平板2bからの高さは約40cmである。よって、台座11の最低の高さは、金属平板2bから約120cmとなり、その到達し得る最大の高さは、金属平板2bから約330cmとなる。
【0029】
さらに、移動ケーブル用架台1は、固定柱5,6の間に、この固定柱5,6に沿って昇降する作業床17を備える。
この作業床17は、長方形状の金属平板であって、その長辺が台座11の長手方向に平行して設置される。また、作業床17は、固定柱5,6にそれぞれ設けられる複数の第2の昇降手段18,19を介し、固定柱5,6に対して昇降可能に保持される。
第2の昇降手段18,19としては、それぞれ、基端3b,4b寄りの固定柱5,6の内部に固定され作業床17を支持する油圧シリンダー20a,20aと、固定柱5,6の外表面に固定され油圧シリンダー20a,20aの稼働を制御する油圧ポンプ(図示せず)と、この油圧ポンプと油圧シリンダー20a,20aをそれぞれ連結する油圧ホース(図示せず)が使用される。この油圧ポンプは、固定柱5の外側端面5aに取り付けられるスイッチ20bによってオンオフ制御される。
【0030】
具体的には、油圧シリンダー20a,20aは多段式のピストンを収容しており、その最大ストロークは約180cmである。また、油圧シリンダー20a,20aの上端の、金属平板2bからの高さは約25cmである。よって、作業床17の最低の高さは、金属平板2bから約30cmとなり、その到達し得る最大の高さは、金属平板2bから約210cmとなる。
なお、第1の昇降手段9と第2の昇降手段18、及び第1の昇降手段10と第2の昇降手段19は、互いに干渉しないように、間隔を空けて固定柱5,6の内部にそれぞれ設置される。
【0031】
次に、実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する支柱及び補強部材の構成について、
図2及び
図3を用いながら詳細に説明する。
図2(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する支柱の基端の、
図1におけるA方向矢視図であり、
図2(b)は移動ケーブル用架台を構成する補強部材の一端の、
図1におけるA方向矢視図である。なお、
図1で示した構成要素については、
図2においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図2(a)に示すように、支柱3は、基台2の端面2e側に設けられる設置部2cに対し、基端3bを取り外し可能に立設する立設部材21を備える。
このうち、設置部2cとは、金属平板2b表面における任意のエリアである。また、立設部材21は、支柱3の基端3bと基台2の角型鋼管2aの双方に密着する平板状の金属片21aと、この金属片21aと固定柱5の外側端面5aを貫通する留め部材21bと、金属片21aと角型鋼管2aを貫通する留め部材21cからなる。留め部材21bは、ボルト21Bとこのボルト21Bの軸部に螺合するナット21Nの組み合わせである。留め部材21cもこれと同様に、ボルト21B´とこのボルト21B´の軸部に螺合するナット21N´の組み合わせである。したがって、留め部材21b,21cのナット21N,21N´のうちいずれかをボルト21B,21B´から取り外すことで、支柱3が基台2から取り外される。なお、支柱4においても、支柱3と同様の立設部材21を備える。
【0032】
さらに、
図2(b)に示すように、補強部材12は、基台2の端面2eに設けられる固着部2dに対し、一端12aを取り外し可能に固着する第1の固着部材22を備える。
このうち、固着部2dとは、端面2eにおける任意のエリアである。また、第1の固着部材22は、補強部材12の一端12aと角型鋼管2aを貫通する留め部材である。第1の固着部材22は、ボルト22Bとこのボルト22Bの軸部に螺合するナット22Nの組み合わせである。したがって、ナット22Nをボルト22Bから取り外すことで、補強部材12が基台2から取り外される。補強部材13~15においても、補強部材12と同様に第1の固着部材22を備える。
【0033】
そして、
図3(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する補強部材の他端の
図1におけるA方向矢視図であり、
図3(b)は同他端の(a)におけるC方向矢視図である。なお、
図1及び
図2で示した構成要素については、
図3においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3(a)に示すように、補助部材12,13は、固定柱5に設けられる回動軸23に対し、他端12b,13bをそれぞれ回動可能に固定する第2の固着部材24を備える。
回動軸23は、固定柱5の外側端面5aを貫通するボルト23Bであって、このボルト23Bの軸部にナット23Nが螺合している。
そして、第2の固着部材24は、補強部材12,13の他端12b,13bにそれぞれ形成されて、回動軸23に係止される円環部材24a,24bである。補強部材13~15においても、補強部材12と同様に第2の固着部材24を備える。
【0034】
図3(b)に示すように、補強部材12,13の他端12b,13bは、ボルト23Bの中心軸を中心として、両矢印方向X
1,X
2で示すようにそれぞれ回動可能である。したがって、ナット23Nを締め付ける場合は、傾斜角α,βがそれぞれ一定の大きさをなし、補強部材12,13が固定柱5に対して回動不能に固定される。しかし、ナット23Nを緩めると、傾斜角α,βがそれぞれ0度となって、補強部材12,13はそれぞれ固定柱5と平行することになる。
【0035】
さらに、作業床の構成及び作用について、
図4及び
図5を用いながら、詳細に説明する。
図4は、実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する連結手段と、作業床の軸体を示す斜視図である。
図5(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する作業床の、
図1におけるB方向矢視図であり、
図5(b)は(a)で表示した作業床の方向をその軸体を中心として90°回転させた状態のB方向矢視図である。なお、
図1乃至
図3で示した構成要素については、
図4及び
図5においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図4及び
図5に示すように、移動ケーブル用架台1においては、固定柱6の第2の昇降手段19の上方に連結手段25が設けられる。
この連結手段25は、長軸が水平方向に沿って、かつ台座11の長手方向Xと平行に配置される筒状部材26と、この筒状部材26の短軸を水平方向に沿って貫通する一対の挿通孔27a,27bと、この一対の挿通孔27a,27bに前端28a及び後端28bがそれぞれ挿通される留め部材28(
図5参照)からなる。この留め部材28は、ボルト28Bとこのボルト28Bの軸部に螺合するナット28Nの組み合わせである。同様に、固定柱5の第2の昇降手段18の上方にも連結手段25が設けられる。
【0036】
また、作業床17は、台座11の長手方向Xと直交する両端面に、筒状部材26に常時挿入される軸体17a,17bをそれぞれ備える。
軸体17aは、留め部材28が貫通可能な第1の貫通孔29a及び第2の貫通孔29bが、軸体17aの長手方向に沿って距離を開けて配列されている。このうち、第1の貫通孔29aは、作業床17の床面17cに対して平行して穿通され、第2の貫通孔29bは、床面17cに対して直交して穿通される。軸体17bも、これと同様である。
ただし、軸体17aにおいては、作業床17の床面17cに近い方から、第2の貫通孔29b、第1の貫通孔29aの順で設けられる。軸体17bにおいては、床面17cに近い方から、第1の貫通孔29a、第2の貫通孔29bの順で設けられる。
【0037】
したがって、
図5(a)に示すように、軸体17aにおいて、留め部材28が筒状部材26の挿通孔27a,27bと第1の貫通孔29aを貫通し、脱落不能に固定されるとともに、軸体17bにおいて、留め部材28が挿通孔27a,27bと第1の貫通孔29aを貫通し、脱落不能に固定されると、床面17cが、水平になって連結手段25,25と第2の昇降手段18,19を介して、固定柱5,6に対して昇降可能に保持される。
一方、
図5(b)に示すように、軸体17a,17bにおいて、留め部材28,28が、それぞれ挿通孔27a,27bと第2の貫通孔29b,29bを貫通し、脱落不能に固定されると、作業床17が軸体17a,17bを中心として
図5(a)で示した場合に対し90度回動し、床面17cが鉛直方向に沿うようになって、固定柱5,6に対して昇降可能に保持される。
なお、留め部材28を差し込む際の第1の貫通孔29aと第2の貫通孔29bの選択は、作業床17を軸体17a,17bの長軸方向、すなわち台座11の長手方向Xに沿って水平にスライド移動させることで行われる。
【0038】
そして、支柱の先端同士に懸架される台座の構成について、
図6及び
図7を用いながら、詳細に説明する。
図6(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する台座の、
図1におけるB方向矢視図であり、
図6(b)は同台座の斜視図である。
図7(a)は実施例に係る移動ケーブル用架台を構成するブラケットと固定台の、
図1におけるB方向矢視図であり、
図7(b)は同ブラケットと固定台の、(a)におけるC方向矢視図である。なお、
図1乃至
図5で示した構成要素については、
図6及び
図7においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、鉛直方向Vに沿って昇降する台座11は、支柱3,4の先端3a,4a同士、すなわち可動柱7,8の先端同士に懸架される横断面がコ字状の鋼材である。台座11の天井面11aには、支持碍子51(
図1を参照)を固定するための固定手段をそれぞれ挿入する複数の固定孔11bが3組穿設される。
【0039】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、台座11は、移動ケーブル50のヘッド50aが係止されるリング状のブラケット30と、支持碍子51が固定手段であるネジ体32を介して固定される固定台31と、図示しないネジ体を介してブラケット30が固着された支持体33を備える。
このうち、固定台31は、3組の固定孔11b(
図6を参照)と一致する箇所に、それぞれ複数の固定孔31aが穿設され、支持碍子51の底部に設けられたネジ孔にネジ体32を挿入可能である。また、支持体33は、ボルト33Bとこのボルト33Bの軸部に螺合するナット33Nを介して、固定台31によって支持される。
【0040】
さらに、移動ケーブル用架台1の作用について、
図8を用いながら、詳細に説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、それぞれ実施例に係る移動ケーブル用架台を構成する支柱の昇降作用を説明するための正面図である。なお、
図1乃至
図7で示した構成要素については、
図8においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図8(a)は、第1の昇降手段9,10を操作することで、台座11を最も低い位置に下降させるとともに、第2の昇降手段18,19を可動させることで、作業床17を最も低い位置に下降させた状態を示したものである。
図1を用いて説明したように、台座11の最低の高さは、金属平板2bから約120cmであるから、作業員53は、地面Gに立ったままで台座11に手先を到達させて、支持碍子51を台座11に取り付けることができる。
【0041】
図8(b)は、台座11を最も高い位置に上昇させるとともに、作業床17を最も高い位置に上昇させた場合を表したものである。
図1を用いて説明したように、台座11が到達し得る最大の高さは、金属平板2bから約330cmであり、作業床17が到達し得る最大の高さは、金属平板2bから約210cmであるから、作業員53は、作業床17に立つことで、上昇した台座11以上の高さに手先を到達させて、支持碍子51の先端にリード線52を容易に接続することができる。
【0042】
次に、実施例に係る移動ケーブル用架台の使用状態について、
図9及び
図10を用いながら、詳細に説明する。
図9及び
図10は、実施例に係る移動ケーブル用架台の使用状態図である。なお、
図1乃至
図8で示した構成要素については、
図9及び
図10においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、1台の移動ケーブル用架台1が、遮断器54に隣接して設置されている。移動ケーブル用架台1の台座11に係止された移動ケーブル50のヘッド50aと、遮断器54のブッシング54aは、リード線52によって接続されている。なお、ブッシング54aの先端は、地面Gからの高さが約200cmであるため、移動ケーブル用架台1における台座11の地面Gからの高さを同様の200cmとすることで、リード線52の長さを可能な限り短くすることができる。また、リード線52とブッシング54aは、
図9中に示さない作業員53が脚立等を用いることによって接続される。
【0043】
図10に示すように、2台の移動ケーブル用架台1a,1bが、変圧器55に隣接し、並んで設置されている。この移動ケーブル用架台1a,1bの構成は、いずれも移動ケーブル用架台1と同様の構成である。
移動ケーブル用架台1aの台座11に係止された移動ケーブル50のヘッド50aと、移動ケーブル用架台1bの台座11に固定された支持碍子51は、リード線52aによって接続されている。さらに、この支持碍子51と、変圧器55の1次側ブッシング55aは、リード線52bによって接続されている。なお、リード線52bと1次側ブッシング55aは、
図10中に示さない作業員53が変圧器55の天井面に登ることによって接続される。
また、1次側ブッシング55aの先端は、地面Gからの高さが約370cmであるため、移動ケーブル用架台1aに保持された移動ケーブル50のヘッド50aと、1次側ブッシング55aを
図9に示すような1本のリード線52で直接接続しようとすると、このリード線52を長く設定する必要がある。この場合、前述したように、リード線52がふらつき易くなるため、これを防止するために、もう1台の移動ケーブル用架台1bを変圧器55と移動ケーブル用架台1aの間に配置したのである。
【0044】
移動ケーブル用架台1aにおいては、台座11の高さは、地面Gから約230cmである。一方、移動ケーブル用架台1bにおいては、台座11の高さは、地面Gから約270cmである。また、ヘッド50a及び支持碍子51の長さは、いずれも約90cmである。
よって、リード線52a,52bの長さは、いずれも移動ケーブル50のヘッド50aと、1次側ブッシング55aをリード線52で直接接続した場合のリード線52の長さよりも短くすることができる。
【0045】
さらに、実施例の移動ケーブル用架台1と同時に用いられる転倒防止手段について、
図11を用いながら、詳細に説明する。
図11は、実施例に係る移動ケーブル用架台に転倒防止手段が付加された場合の斜視図である。なお、
図1乃至
図10で示した構成要素については、
図11においても同一の符号を付して、その説明を省略する。
図11に示すように、移動ケーブル用架台1は、支柱3,4の転倒を防止する転倒防止手段34が付加される。
この転倒防止手段34は、一の端部35a,35aが複数の固定柱5,6にそれぞれ連結される複数の長尺体35,35と、複数の長尺体35,35の他の端部35b,35b同士に懸架されて、地面Gに設置される地面設置部36からなる。
【0046】
具体的には、長尺体35は鋼材であり、地面設置部36は金属平板である。一の端部35a,35aは、金属片35c,35cと、この金属片35c,35cと固定柱5,6の前端面5b,6bを貫通するボルト及びナット(図示せず)を介して固定柱5,6に固定される。他の端部35b,35bも同様に、金属片35d,35dと図示しないボルト及びナットを介して、それぞれ地面設置部36の表面に固定される。
また、地面設置部36における地面Gと密着する側の裏面に、凹凸面(図示せず)を形成しておき、この凹凸面により地面設置部36と地面Gとの摩擦力を高められるよう構成してもよい。
【0047】
以上説明した構成の移動ケーブル用架台1の組立、設置方法について、以下に説明する。まず、基台2を遮断器54等の側方の地面Gに設置する。次に、予め台座11を最も低い高さに降下させておいた固定柱5,6を立設部材21によって基台2に立設させる。さらに、補強部材12~15を第1の固着部材22及び第2の固着部材24によって、それぞれ固定柱5,6及び基台2に固定する。そして、移動ケーブル50のヘッド50aや支持碍子51を選択して、それぞれ台座11のブラケット30や固定台31に適宜係止又は固定する。
その後、必要な場合は、転倒防止手段34の長尺体35,35を固定柱5,6にそれぞれ固定し、作業員53や移動ケーブル50の荷重による固定柱5,6の転倒防止を図ると良い。次いで、スイッチ16bを操作して、可動柱7,8を上昇させると、ヘッド50a等が所望の高さに保持される。
【0048】
また、ヘッド50a等を例えば地面Gから150cm以上の高さに保持する必要がある場合は、作業床17を使用することが望ましい。そのため、スイッチ16bを操作する前に、留め部材28,28をそれぞれ筒状部材26の挿通孔27a,27bと軸体17a,17bの第1の貫通孔29aに貫通させて脱落不能に固定する。すると、作業床17の床面17cが、水平方向に沿った状態で固定柱5,6によって保持される。そこで、作業員53が予め作業床17に立ち、固定柱5の外側端面5aに取り付けられるスイッチ20bを操作して適切な高さに作業床17を上昇させる。すると、ヘッド50a等に容易に手先が到達するので、ヘッド50a等と遮断器54等のブッシングをリード線52を介して接続することができる。
【0049】
電力の仮供給対策工事等が完了したときは、上記と逆の手順によって、固定柱5,6や補強部材12~15、転倒防止手段34を基台2と固定柱5,6から取り外す。これにより、補強部材12~15が傾斜角度α,βが0度になるように回動軸23を中心として回動し、固定柱5,6と平行する状態となる。
その後、留め部材28,28を挿通孔27a,27bと軸体17a,17bの第2の貫通孔29bに貫通させて脱落不能に固定すると、作業床17の床面17cが固定柱5,6と平行になった状態で回動不能に保持される。したがって、側面視において、固定柱5,6と作業床17は縦長にまとまった形状となるため、不使用時に移動ケーブル用架台1がコンパクトに収容可能となる。
【0050】
以上説明したように、実施例に係る移動ケーブル用架台1によれば、これを設置又は撤去する際に、基台2と支柱3,4を別々に運搬することができるので、労力を軽減することができる。また、移動ケーブル用架台1は、立設部材21、第1の固着部材22及び第2の固着部材24を備えることで、必要な際のみ組み立てて使用することができる。
したがって、電力の仮供給対策工事は勿論のこと、緊急時の復旧対応にも短時間で移動ケーブル用架台1を所望の位置に設置可能である。また、不使用の際の保管スペースがわずかで済む点でも有効である。
さらに、移動ケーブル用架台1は、基台2と固定柱5,6、基台2と補強部材12~15を、ナットの締緩という簡易な方法で組み立てや分解を行うことが可能であるから、取り扱いも容易である。
【0051】
加えて、移動ケーブル用架台1によれば、
図8(a)で示したように、地面G近くの低所において、移動ケーブル50のヘッド50a及び支持碍子51をそれぞれ台座11に係止及び固定することができる。よって、作業員53の作業姿勢や足元が安定して、重量物である移動ケーブル50等を持ち上げる際の負担を大きく軽減することができるとともに、作業員の安全性を確保することができる。このとき、補強部材12~15により、移動ケーブル50を保持した状態であっても、支柱3,4の傾斜や転倒が防止されるため、安全性を一層確保することができる。
【0052】
そして、第1の昇降手段9,10のスイッチ16bを操作することにより、
図8(b)で示したように、従来では到達することが不可能であった高さまで速やかに移動ケーブル50等を上昇させることができる。そのため、従来のように、足場を組んだり、大量の資材を運搬したりすることが不要となるので、準備工事の手間軽減や工事期間短縮、またこれによるコストの低廉化を実現することができる。
また、移動ケーブル用架台1によれば、予め作業員53を載せた作業床17が移動ケーブル50のヘッド50aの高さ位置に追随するように昇降することから、高所において、作業員53がヘッド50aや支持碍子51に容易に接触可能である。そのため、移動ケーブル50と、支持碍子51等をリード線52によって接続、分離する際の負担を一層軽減可能である。
【0053】
さらに、移動ケーブル用架台1によれば、台座11にブラケット30と、固定台31が設けられるため、ヘッド50aと支持碍子51のいずれをも保持可能である。したがって、
図9で示したような移動ケーブル用架台としての用途以外にも、
図10で示したように支持碍子柱としての用途があり、利便性が高い。そして、
図9,10で示した場合では、リード線52,52a,52bの長さを可能な限り短くすることができるため、風や地震等でリード線52,52a,52bがふらついて、短絡事故が発生するのを好適に防止することができる。
そして、移動ケーブル用架台1によれば、作業床17を水平方向に沿ってスライド移動させることにより、床面17cを水平又は鉛直に沿うように簡単に変化させることができるので、使い勝手が良好である。
さらに、移動ケーブル用架台1は、転倒防止手段34を付加することにより、支柱3,4の転倒や折損、移動ケーブル用架台1全体の転倒を防止することができる。したがって、高所に配置された台座11に移動ケーブル50や支持碍子51が係止等され、かつ作業床17に作業員53が乗ることで重心が高所に位置する場合に、転倒事故を確実に防止することができ、特に有効である。ただし、作業床17が備えられない場合にも、転倒防止手段34を使用することができる。
【0054】
なお、本発明に係る移動ケーブル用架台は、実施例に示すものに限定されない。例えば、固定柱5,6、可動柱7,8、第1の昇降手段9,10のウォーム16a,16a、及び第2の昇降手段18,19の油圧シリンダー20a,20aの長さは、具体的に説明した長さ以外であっても良い。また、第1の昇降手段9,10は、油圧シリンダー16a,16aと油圧ポンプ等に代えて、ウォーム及びウォームホイールからなるウォームギヤが使用されても良い。さらに、支柱3,4の基端3b,4bと基台2の設置部2c、及び補強部材12~15の一端12a~15aと基台2の固着部2dは、それぞれ分離不能に固着されても良い。このほか、作業床17は、省略されても良く、連結手段25の筒状部材26の天井部が開放されることで取り外し可能に構成されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、電力の仮供給対策工事等の際に、移動用ケーブルを支持する移動ケーブル用架台、又は支持碍子柱として利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,1b…移動ケーブル用架台 2…基台 2a…角型鋼管 2b…金属平板 2c…設置部 2d…固着部 2e…端面 3,4…支柱 3a,4a…先端 3b,4b…基端 5,6…固定柱 5a,6a…外側端面 5b,6b…前端面 7,8…可動柱 9,10…第1の昇降手段 11…台座 11a…天井面 11b…固定孔 12~15…補強部材 12a~15a…一端 12b~15b…他端 16a…油圧シリンダー 16b…スイッチ 17…作業床 17a,17b…軸体 17c…床面 18,19…第2の昇降手段 20a…油圧シリンダー 20b…スイッチ 21…立設部材 21a…金属片 21b,21c…留め部材 21B,21B´…ボルト 21N,21N´…ナット 22…第1の固着部材 22B…ボルト 22N…ナット 23…回動軸 23B…ボルト 23N…ナット 24…第2の固着部材 24a,24b…円環部材 25…連結手段 26…筒状部材 27a,27b…挿通孔 28…留め部材 28a…前端 28b…後端 28B…ボルト 28N…ナット 29a…第1の貫通孔 29b…第2の貫通孔 30…ブラケット 31…固定台 31a…固定孔 32…ネジ体 33…支持体 33B…ボルト 33N…ナット 34…転倒防止手段 35…長尺体 35a…一の端部 35b…他の端部 35c,35d…金属片 36…地面設置部 50…移動ケーブル 50a…ヘッド 51…支持碍子 52,52a,52b…リード線 53…作業員 54…遮断器 54a…ブッシング 55…変圧器 55a…1次側ブッシング G…地面 α,β…傾斜角