(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】植物分離装置、植物栽培システム、植物分離方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/02 20060101AFI20220113BHJP
A01G 9/06 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A01G31/02
A01G9/06
(21)【出願番号】P 2020190488
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 武
(72)【発明者】
【氏名】水品 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】宮元 淳
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/125965(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/216267(WO,A1)
【文献】特許第3646144(JP,B2)
【文献】特許第6850442(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/02
A01G 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具と、
前記保持具を移動可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記保持具の前記穴部に対し、収穫された前記植物の残部を押圧する第1押圧部材を前記穴部の貫通方向における一方側から他方側に向けて挿通させる第1分離装置と、
前記支持部材に支持された前記保持具の前記他方側において、前記残部を押圧する第2押圧部材を前記貫通方向と交差する方向に動作させる第2分離装置と、
を有することを特徴とする植物分離装置。
【請求項2】
前記第2押圧部材は、
前記残部と当接する部分に凹凸部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の植物分離装置。
【請求項3】
前記第1分離装置又は前記第2分離装置の鉛直方向下側に配置され、前記保持具から分離された前記残部を収容する容器と、
前記容器に収容された前記残部にエアを噴出するエア噴出装置と、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物分離装置。
【請求項4】
前記第1分離装置又は前記第2分離装置により前記残部を分離された前記保持具の前記穴部に清掃具を挿通させる清掃装置をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の植物分離装置。
【請求項5】
貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具と、
前記保持具を所定の期間をかけて移動させることにより前記植物を生育させる栽培棚と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の植物分離装置と、
を有することを特徴とする植物栽培システム。
【請求項6】
貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具の前記穴部に対し、収穫された前記植物の残部を押圧する第1押圧部材を前記穴部の貫通方向における一方側から他方側に向けて挿通させることと、
前記保持具の前記他方側において、前記残部を押圧する第2押圧部材を前記貫通方向と交差する方向に動作させることと、
を有することを特徴とする植物分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、植物分離装置、植物栽培システム、及び植物分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、栽培対象である植物を保持具で保持し、当該保持具を所定の期間をかけてレールに沿って移動させることにより、植物を生育させる植物栽培システムが記載されている。この植物栽培システムでは、植物保持具に形成した穴部に培地を充填して植物の種子を播種し、それを生育させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の植物栽培システムにおいて、保持具を再利用するために、生育した植物を収穫した後に残る残部を保持具から適切に分離することが要望されていた。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、生育した植物を収穫した後に残る残部を保持具から適切に分離することが可能な植物分離装置、植物栽培システム、及び植物分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具と、前記保持具を移動可能に支持する支持部材と、前記支持部材に支持された前記保持具の前記穴部に対し、収穫された前記植物の残部を押圧する第1押圧部材を前記穴部の貫通方向における一方側から他方側に向けて挿通させる第1分離装置と、前記支持部材に支持された前記保持具の前記他方側において、前記残部を押圧する第2押圧部材を前記貫通方向と交差する方向に動作させる第2分離装置と、を有する植物分離装置が適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具と、前記保持具を所定の期間をかけて移動させることにより前記植物を生育させる栽培棚と、上記植物分離装置と、を有する植物栽培システムが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、貫通した穴部を備え、当該穴部に栽培対象の植物を保持する保持具の前記穴部に対し、収穫された前記植物の残部を押圧する第1押圧部材を前記穴部の貫通方向における一方側から他方側に向けて挿通させることと、前記保持具の前記他方側において、前記残部を押圧する第2押圧部材を前記貫通方向と交差する方向に動作させることと、を有する植物分離方法が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生育した植物を収穫した後に残る残部を保持具から適切に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る植物栽培システムの全体構成を表す模式図である。
【
図3】栽培棚の各棚部におけるレールの配置の一例を表す説明図である。
【
図4】栽培棚の各棚部における光源の配置の一例を表す説明図である。
【
図5】搬送ロボットの構成の一例を表す斜視図である。
【
図6】保持具を支持した状態のレールの構造の一例を表す横断面図である。
【
図7】植物分離装置の全体構成の一例を表す側面図である。
【
図8】植物分離装置の全体構成の一例を表す正面図である。
【
図9】第2分離装置の構成の一例を表す上面図である。
【
図10】第2分離装置の構成の一例を表す側面図である。
【
図11】植物分離装置により実行される植物分離工程の一例を表す説明図である。
【
図12】エアノズルによるエア噴出動作の一例を表す植物分離装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、植物栽培システムの構成の説明の便宜上、各図中に示す上下左右前後等の方向を共通に定義し適宜使用する場合がある。但し、植物栽培システムの各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
<1.植物栽培システムの構成>
図1乃至
図4を参照しつつ、本実施形態に係る植物栽培システム1の全体構成の一例について説明する。なお
図1においては、各部の詳細な構造については図示を省略し、システム全体の構成を模式的に示している。
【0013】
図1乃至
図4に示すように、植物栽培システム1は、栽培対象である植物2を保持具3で保持し、当該保持具3を所定の期間をかけてレール4に沿って移動させることにより植物2を生育させ、植物2のうちの商用部分(この例では後述する葉部2b)を収穫するとともに保持具3の後処理を行うシステムである。植物栽培システム1は、多数の保持具3と、栽培棚5と、搬送ロボット6と、搬入コンベア7と、搬出コンベア8と、収穫装置9と、植物分離装置10とを有する。
【0014】
(1-1.栽培棚)
栽培棚5には、複数段(この例では8段)の棚部5aが上下方向に多段に積層されて配置されている。なお、「上下方向」は厳密な鉛直方向である必要はなく、実質的な鉛直方向であればよい。したがって、「上下方向」には鉛直方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。また、栽培棚5における棚部5aの積み重ね方向は、上下方向に限定されるものではなく、上下方向に対して所定の角度で傾斜した方向としてもよい。
【0015】
各棚部5aのそれぞれには、複数のレール4が前後方向に沿って水平に延設されている。なお、本実施形態でいう「前後方向」は各棚部5aにおける植物2の流れ方向(搬送方向)であり、レール4の長手方向あるいは延設方向でもある。また、「水平方向」は厳密な水平方向である必要はなく、実質的に水平方向であればよい。したがって、水平方向に対して若干傾斜した方向も含まれる。複数のレール4は、各棚部5aにおいて左右方向に並設されており、各レール4は実質的に平行に配置されている。なお、本実施形態でいう「左右方向」は上記上下方向及び前後方向と直交する方向である。
【0016】
詳細な構造については後述するが、レール4は、複数の保持具3を長手方向に沿って移動可能に支持する。そして、レール4は、保持具3が前後方向における一方側から供給されることで、他の支持された複数の保持具3が前後方向における他方側に向けて押し出されてスライド移動するように構成される。
【0017】
栽培棚5における棚部5aの段数は特に限定されるものではないが、本実施形態では例えば8段である場合を一例として説明する。以下では、説明の便宜上、栽培棚5の棚部5aの段について適宜、最下段の1段をA段、最上段の1段をB段、上から2段目~5段目をまとめてC段、上から6、7段目をまとめてD段という。すなわち、
図2及び
図3に示すように、A段は1つの棚部5aを有し、B段は1つの棚部5aを有し、C段は4つの棚部5aを有し、D段は2つの棚部5aを有する。
図3に示す例では、A段の棚部5aには比較的多数(図示する例では8つ)のレール4が設置されている。B段の棚部5aには、A段よりも少ない数(図示する例では6つ)のレール4が設置されている。C段の棚部5aのそれぞれには、B段よりもさらに少ない数(この例では4つ)のレール4が設置されている。D段の棚部5aのそれぞれには、C段よりもさらに少ない数(この例では3つ)のレール4が設置されている。
【0018】
(1-2.搬送順序)
次に、植物栽培システム1における保持具3及び植物2の搬送順序の一例について説明する。搬入コンベア7は、この例では種子が播種されて発芽した状態の植物2を保持する保持具3を、図示しないパレタイザからA段の後側に搬入し、供給する。また搬出コンベア8は、D段における各段の棚部5aの後側から、十分に生育した状態の植物2を保持した保持具3を搬出する。
【0019】
図1及び
図3に、各棚部5aそれぞれにおける保持具3及び植物2の搬送方向を示す。なお、
図1中における破線矢印が各棚部5aでの保持具3及び植物2の搬送方向を示している。また、
図3中の記号SY1は、上記前後方向における前側から後側への保持具3及び植物2の搬送方向を示し、記号SY2は、反対に後側から前側への保持具3及び植物2の搬送方向を示している。
図1、
図3に示すように、A段では、各レール4において保持具3及び植物2が後側から前側へ向けて搬送される。B段では、各レール4において保持具3及び植物2が前側から後側へ向けて搬送される。C段では、各段とも、各レール4において保持具3及び植物2が後側から前側へ向けて搬送される。D段では、各段とも、各レール4において保持具3及び植物2が前側から後側へ向けて搬送される。
【0020】
栽培棚5の前側に位置する搬送ロボット6は、A段からB段への保持具3及び植物2の上昇搬送と、C段からD段への保持具3及び植物2の下降搬送を行う。このとき、前側の搬送ロボット6は、左右方向の振り分けを行うとともに、異なる段数にあるC段とD段の間の上下方向の振り分けも行う。また、栽培棚5の後側に位置する搬送ロボット6は、搬入コンベア7からA段への保持具3及び植物2の水平搬送と、B段からC段への保持具3及び植物2の下降搬送と、D段から後述する収穫装置9及び植物分離装置10への保持具3及び植物2のまとめ搬送を行う。このとき、後側の搬送ロボット6は、左右方向の振り分けを行うとともに、異なる段数にあるB段とC段の間の上下方向の振り分けも行う。
【0021】
また、
図4に示すように、栽培棚5の棚部5aの上方には、植物2の葉部2b(後述の
図6参照)に光を当てるための複数の光源15が設置されている。各光源15は、各棚部5aの上方にそれぞれ設けられた支持板11の下面に、左右方向に沿って延在するように設置されている。各光源15は、前後方向に沿って所定の間隔で配置されている。なお、光源15は特に限定されるものではないが、植物の光合成を促進するため、例えばLEDや蛍光灯等が使用される。
【0022】
以上の搬送経路において、A段→B段→C段→D段の順で搬送されるに従い左右方向におけるレール間隔が次第に広くなる。これにより、植物2全体の大きさが保持具3よりも小さい育苗段階ではレール間隔が最も狭いA段で密集して栽培し、その後にレール間隔が段階的に広くなるようにB段→C段→D段の順で搬送することができる。すなわち、各植物2の全体が次第に大きく生育する段階に応じて配置間隔を広くできる。その結果、当該栽培棚5全体の設置面積に対して、植物2の栽培面積を効率的に利用できるいわゆる定植が可能となる。
【0023】
(1-3.その他構成)
上述したように、植物栽培システム1は、収穫装置9と植物分離装置10をさらに有している。
【0024】
収穫装置9は、図示は省略するが、例えばカッタなどの切断機構を備えており、保持具3に保持された植物2の茎部2a(後述の
図6参照)を切断する。後側の搬送ロボット6によって栽培棚5のD段から保持具3が搬送された収穫装置9は、当該保持具3に保持されて十分に生育した植物2に対し、その商用部分である葉部2bだけを切り離して収穫する。なお、収穫装置9で収穫した葉部2b等の商用部分は別途の移送手段(専用の移送ロボット等。図示省略)により搬出コンベア8へ移送され、残った保持具3は後方の搬送ロボット6により植物分離装置10へ搬送される。なお、収穫作業は必ずしも自動で行われなくともよく、例えば作業者が手作業で行ってもよい。
【0025】
植物分離装置10は、上記収穫装置9で葉部2bを収穫された後に残った茎部2a及び根部2c(後述の
図6参照)を保持具3から分離するとともに、保持具3を清浄化する。この植物分離装置10の構成と機能については後述する。
【0026】
<2.搬送ロボット>
次に、
図5を用いて、搬送ロボット6の構成の一例について説明する。なお、
図5においては栽培棚5の前側に配置される搬送ロボット6を斜視で示しており、X軸正の方向が右、X軸負の方向が左、Y軸正の方向が後、Y軸負の方向が前、Z軸正の方向が上、Z軸負の方向が下に対応する。また、栽培棚5の後側に配置される搬送ロボット6については、同じ構成のものをX軸、Y軸のそれぞれの正負方向を逆にしただけであるため、図示を省略する。
【0027】
搬送ロボット6は、保持具3及び植物2をレール4の端部から取り出して搬送し、他のレール4の端部へ押し込んで供給する。
図5に示すように、搬送ロボット6は、基台16と、基台16上に設置された門型の支持枠17と、支持枠17に設けられたアクチュエータ30と、ハンド21とを有する。
【0028】
支持枠17は、基台16上にX軸方向に対向するようにZ軸方向に沿って設置された一対の支柱17aと、一対の支柱17aの上端にX軸方向に沿って架け渡された略水平な梁17bとを有する。
【0029】
アクチュエータ30は、X軸ユニット18、Z軸ユニット19、及びY軸ユニット20を有する。X軸ユニット18は、ビーム18aと、スライダ18bと、X軸モータ18cとを有する。ビーム18aは、一対の支柱17a間にX軸方向に略水平に架設される。スライダ18bは、ビーム18aにX軸方向に沿って移動自在に支持される。X軸モータ18cは、例えばビーム18aの左端に取り付けられ、スライダ18bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ18bをX軸方向に駆動する。
【0030】
Z軸ユニット19は、ビーム19aと、スライダ19bと、Z軸モータ19cとを有する。ビーム19aは、上端が梁17bにX軸方向に移動自在に支持されるとともに、スライダ18bに固定される。スライダ19bは、ビーム19aにZ軸方向に沿って移動自在に支持される。Z軸モータ19cは、例えばビーム19aの下端に取り付けられ、スライダ19bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ19bをZ軸方向に駆動する。
【0031】
Y軸ユニット20は、ビーム20aと、スライダ20bと、Y軸モータ20cとを有する。スライダ20bは、スライダ19bに固定される。ビーム20aは、スライダ20bによりY軸方向に沿って移動自在に支持される。Y軸モータ20cは、例えばビーム20aの前端に取り付けられ、スライダ20bに装着された図示しないチェーン等を介してスライダ20bをY軸方向に駆動する。
【0032】
アクチュエータ30では、X軸モータ18cによりスライダ18bがX軸方向に駆動すると、ビーム19aがX軸方向に移動し、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがX軸方向に移動する。また、Z軸モータ19cによりスライダ19bがZ軸方向に駆動すると、スライダ19b及びスライダ20bを介してビーム20aがZ軸方向に移動する。また、Y軸モータ20cによりスライダ20bをY軸方向に駆動すると、スライダ20bを介してビーム20aがY軸方向に移動する。このようにして、アクチュエータ30は、ビーム20aをX軸、Y軸、Z軸の三軸方向に移動することができる。
【0033】
ハンド21は、アクチュエータ30のビーム20aの後側の先端に取り付けられ、保持具3を把持する。アクチュエータ30は、ビーム20aを三軸方向に移動することにより、ハンド21を三軸方向に移動することができる。すなわち、アクチュエータ30は、ハンド21を前後方向(レール4の長手方向)に沿って移動させる。またアクチュエータ30は、前後方向と垂直且つ互いに直交する2方向、すなわち左右方向(レール4の並設方向。略水平方向でもある)と上下方向(棚部5aの積み重ね方向。高さ方向でもある)の2方向に沿って移動させることができる。
【0034】
ハンド21は、例えばレール4の端部に位置する保持具3を抜き出す際には、保持具3を両側から挟んで把持した後に抜き出す。また、ハンド21は、例えばレール4の端部へ保持具3を挿入する際には、把持した保持具3をアクチュエータ30の駆動により別のレール4の端部に移動させ、レール4に挿入する。そして、保持具3を把持したままY軸方向(前後方向)に1ピッチ分(保持具3の前後方向の長さ分)だけ押す。これにより、挿入した保持具3とレール4上に支持されている複数の保持具3を1ピッチ分スライドさせることができる。このようにして、搬送ロボット6は、保持具3の挿入先のレール4上に支持されている複数の保持具3の列全体を搬送方向に移動させる。以上の挿入操作の後、ハンド21は開いて保持具3の把持を解除する。
【0035】
<3.保持具、レール>
次に、
図6を用いて、保持具3及びレール4の構成の一例について説明する。なお、
図6に示す方向は、レール4が棚部5aに設置された状態での方向を示しており、
図6は前後方向におけるレール4の直交断面を示している。
【0036】
(3-1.保持具)
保持具3は、植物栽培システム1の栽培対象である植物2を1株ごとに保持する部材である。なお、ここでいう「1株」とは、単一の種子から生育される1つの個体をいう。例えば
図6に示す植物2のように、複数(単一でもよい)の葉部2bが1本の茎部2aによって支持されることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。また、例えば茎が分岐等により複数ある場合でもその根部2cがつながることで1つの個体としてまとまっているものは1株である。
【0037】
保持具3は、左右方向、前後方向の各方向においてそれぞれ対称な形状を有する。したがって、保持具3はその長手方向である前後方向(つまり搬送方向)において正逆両方向で使用できる方向互換性を有している。保持具3は、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されており、保持具3を支持するレール4に対してスライド可能に構成されている。
【0038】
図6に示すように、保持具3は、本体部31、保持筒部32、穴部33、及びガイド板部34を有している。本体部31は、上方からの平面視で見て前後方向を長手方向とした略矩形形状に形成されている。本体部31のうち左右方向両側の縁部は、搬送ロボット6のハンド21により把持された際に支持される支持部35として機能する。
図6に示す例では、支持部35は、前後方向から見て等脚台形状に形成されているが、三角形や円形等、他の形状としてもよい。
【0039】
保持筒部32は、上記本体部31の前後方向及び左右方向の中心位置に形成されており、上下方向に貫通した穴部33を有する。保持筒部32の上端開口部は、本体部31の上面から突出せずに面一の状態で形成され、下端開口部は本体部31の下面から下方に突出して形成されている。この例では、保持筒部32は例えば穴部33が丸穴である円筒形状であるが、穴部が四角形等の多角形状である多角形筒形状としてもよい。
【0040】
ガイド板部34は、本体部31の上面から上方に突出して前後方向に延設された一対の平板形状部であり、保持筒部32の上端開口部を挟んだ左右方向の2箇所に並設されている。そして、
図6に示すように、本体部31の全体は下方側が開口して中抜きされた中空構造で形成されており、保持具3の重量が軽量化されている。
【0041】
なお、以上説明した保持具3の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、上記では保持具3を一体成形としたが、複数の部品で構成されてもよい。
【0042】
(3-2.レール)
図6に示すように、レール4は、レール部40と、水槽部47とを有しており、摺動性の高い材料(例えば樹脂。金属等でもよい)で一体成形されている。レール部40は、それぞれ左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設された左右一対の上レール板41aと、これら上レール板41aの下方位置で同じくそれぞれ左右方向に所定の幅を有し前後方向に延設された左右一対の下レール板42aとを有する。上レール板41aの対向する側の縁部には、下方に突出する上レール突起部44が形成されている。上レール突起部44と下レール板42aとの間の空間に、保持具3の本体部31が収容される。一対の上レール板41aの間の上レール溝43aには、保持具3における一対のガイド板部34が収容される。
【0043】
水槽部47は、前後方向に延設された一対の側壁部47aと、それら一対の側壁部47aの下端に渡って前後方向に延設された底壁部47bとを有する。水槽部47は、全体が上方を開放した断面略U字状の長尺の水槽であり、内部に培養液48が貯留される。培養液48は、例えばポンプ等の適宜の流動手段(図示省略)により前後方向に流動される。
【0044】
レール4に挿入された保持具3は、レール部40の内側の空間46に収容される。保持具3は、本体部31の下面が左右の下レール板42aの上面にスライド可能に接触するとともに、本体部31の上面が左右の上レール突起部44に当接する。このようにして保持具3を上下から挟み込む構成とすることで、保持具3の傾きや倒れを防止できる。保持具3の本体部31の下面である保持具支持面38は、上述したように本体部31の下面が開口しているため、下レール板42aの上面であるレール支持面45との接触面積が減少され、レール4との摺動性を向上できる。
【0045】
図6に示すように、保持具3の保持筒部32の穴部33には培地50が充填され、培地50に播種された種から生育した植物2の茎部2aを保持する。植物2は、穴部33の下端開口部を介して根部2cを水槽部47内の培養液48に浸しつつ、穴部33の上端開口部を介して葉部2bをレール4の上方に膨出させて成長する。穴部33内に充填する培地50としては、例えば寒天等のゲル状培地を使用してもよいし、スポンジ、ウレタン、ロックウール等の固形培地を使用してもよい。最終的に植物2の生育が進むと、茎部2aの径が穴部33の内径と略一致するまで太くなってほとんどの培地50が抜け落ち、保持筒部32が植物2を直接支持する状態となる。
【0046】
なお、植物栽培システム1では、複数の保持具3の間に挿入されることで保持具3の前後方向の間隔を規定するスペーサが使用される(図示省略)。スペーサは、上記保持具3と共通の部品、すなわち穴部33に培地50を充填しない空の状態の保持具3が使用されてもよい。または、レール4上で移動可能に支持される構成であれば、例えば保持筒部32を備えない形状(穴部33が埋められた形状)などのように保持具3と異なる形状に成形されたものであってもスペーサとして利用できる。したがって、レール4では、複数の保持具3と共に複数のスペーサも前後方向に沿って整列し、それら全体が移動可能に支持される。そして、レール4の前後方向における一方側からスペーサが供給されるごとに、すでに支持されている保持具3及びスペーサの全体が他方側に向けて移動する。なお、光が培養液48に照射されると藻の発生を促すことになるため、スペーサは穴部を備えない形状のものが望ましい。
【0047】
なお、以上説明したレール4の構成は一例であり、上記以外の構成としてもよい。例えば、上記ではレール4を一体成形としたが、複数の部品で構成されてもよい。
【0048】
<4.植物分離装置>
次に、
図7~
図12を用いて、植物分離装置10の詳細について説明する。
(4-1.植物分離装置の構成)
まず、
図7~
図10を用いて、植物分離装置10の構成の一例について説明する。
図7は、植物分離装置10の全体構成の一例を表す側面図であり、
図8は植物分離装置10の全体構成の一例を表す正面図である。なお、植物分離装置10の設置位置は後方の搬送ロボット6の搬送可能範囲内にあればよく、栽培棚5の下方に配置したり、または側方に並べたり、または直列に並べたり、多様な位置に配置できる。また、植物分離装置10を設置する向き(保持具3の搬送方向)についても、栽培棚5における搬送方向と平行な関係に限られず、直交または所定の角度をなすような配置関係であってもよい。このため、
図7~
図10中には方向の図示を省略している。
【0049】
図7及び
図8に示すように、植物分離装置10は、フレーム60と、レール70と、第1分離装置80と、第2分離装置90と、エアノズル100と、清掃装置110と、コンテナ120とを有する。
【0050】
フレーム60は、幅方向(
図8中左右方向)に対向するように上下方向に沿って設置された一対の支柱フレーム61と、一対の支柱フレーム61の上端から搬送方向一方側(
図7中左側)に突出すると共に幅方向に沿って架け渡された支持フレーム62と、支持フレーム62の下方において一対の支柱フレーム61間に幅方向に沿って架け渡された梁フレーム63と、梁フレーム63により吊り下げ部材64を介して支持されると共に搬送方向一方側に突出した支持フレーム65と、梁フレーム63により吊り下げ部材64を介して支持されると共に搬送方向他方側(
図7中右側)に突出した支持フレーム66とを有する。なお、フレーム60の上記構成は一例であり、上記以外のフレーム構成としてもよい。
【0051】
レール70(支持部材の一例)は、梁フレーム63により吊り下げ部材67を介して略水平に支持されており、複数の保持具3を搬送方向(
図7中右方向)に移動可能に支持する。レール70は、下方に位置する支持レール板70aと上方に位置する抑えレール板70bの組合せを、幅方向に所定寸法だけ離間した平行な配置で一対有している。同じ組の支持レール板70aと抑えレール板70bは、保持具3の本体部31と同じ厚み寸法の支柱部71を介して固定されている。すなわち、レール70の全体構成は、前述のレール4から水槽部47を除いたレール部40の構成と同様である。これにより、レール70はレール部40と同様に、複数の保持具3を直列に整列させた状態でその全体を移動可能に支持できる。
【0052】
また、レール70では、保持具3の搬送方向上流側において抑えレール板70bが支持レール板70aより短く、その上流側端部は所定の角度で上方へ跳ね上がるように屈曲している。このため、搬送ロボット6は、抑えレール板70bとの干渉を回避しつつ保持具3(根部2c及び茎部2aを保持した状態のもの)を支持レール板70aの上流側端部に載せやすく、また支持レール板70aと抑えレール板70bの間に保持具3の本体部31を挿入しやすい。そして、搬送ロボット6が1つの保持具3を挿入するたびに、整列した複数の保持具3の全体がそれぞれ所定の位置まで搬送される。そのとき、搬送方向の最も下流側に位置する保持具3はレール70から外れて落下し、予め下方に配置されているコンテナ(図示省略)内へ集積される。
【0053】
第1分離装置80は、レール70の上方に配置されており、エアシリンダ81とロッド82とを有する。エアシリンダ81は、ロッド82を上下方向に昇降移動させ、レール70に支持された保持具3の穴部33に対して、ロッド82を穴部33の貫通方向における上側(一方側の一例)から下側(他方側の一例)に向けて挿通させることにより、収穫された植物2の残部である茎部2a及び根部2cを保持具3の下方へ押し出す。なお、エアシリンダ81の代わりにソレノイドやモータ等のアクチュエータを用いてもよい。また、以下適宜、茎部2a及び根部2cを「残部2a,2c」という。ロッド82(第1押圧部材の一例)は、先端にテーパ形状の面取りが形成された棒状部材であり、外径が保持具3の穴部33の内径より若干小さい径寸法となるように形成されている。第1分離装置80は、ロッド82の中心軸Ax1が、搬送ロボット6によりレール70上の分離位置(
図7中左端の保持具3の位置)に位置決めされた保持具3の穴部33の中心位置と略一致するように、上述の支持フレーム62に固定されている。
【0054】
第2分離装置90は、レール70の下方に配置されている。
図9及び
図10に、第2分離装置90の構成の一例を示す。
図9は第2分離装置90の構成の一例を表す上面図であり、
図10は第2分離装置90の構成の一例を表す側面図である。
図9及び
図10に示すように、第2分離装置90は、エアシリンダ91と、ロッド92と、櫛歯93とを有する。エアシリンダ91が、ロッド92を進退移動させて櫛歯93を一対のガイドバー94の摺動方向に沿って進退移動させることにより、第2分離装置90は、レール70に支持された保持具3の下側において、植物2の残部2a,2cを押圧する櫛歯93を水平方向に動作させる。なお、エアシリンダ91の代わりにソレノイドやモータ等のアクチュエータを用いてもよい。櫛歯93(第2押圧部材の一例)は、植物2の残部2a,2cと当接する部分に凸部93a,93b(凹凸部の一例)及び当該凸部93a,93bの間に形成された凹部93c(凹凸部の一例)を有することにより、略櫛歯状に形成されている。2つの凸部93a,93bは左右対称な形状ではなく、一方側の凸部93aが他方側の凸部93bよりも中心軸Ax2の方向に長い。このように2つの凸部の突出量を異ならせることにより、櫛歯93が植物2の残部2a,2cに突き刺さり易くなる。第2分離装置90は、ロッド92の中心軸Ax2が、第1分離装置80のロッド82の中心軸Ax1と略直角に交差するように、上述の支持フレーム65に固定されている。エアシリンダ91がロッド92を縮めた際には櫛歯93が植物2の残部2a,2cから退避し、ロッド92を伸ばした際には櫛歯93が植物2の残部2a,2cに突き刺さって押圧する。なお、櫛歯93の動作方向は水平方向に限るものではなく、穴部33の貫通方向(上下方向)と交差する方向であれば、水平方向に対して傾斜した方向でもよい。
【0055】
コンテナ120(容器の一例)は、第1分離装置80及び第2分離装置90の鉛直方向下側に配置され、保持具3から分離された残部2a,2cを収容する。
図7及び
図8に示す例では、コンテナ120は複数の車輪121を下端に有する可動式の容器であり、残部2a,2cで一杯になると新たなコンテナ120に交換される。
【0056】
エアノズル100(エア噴出装置の一例)は、エアチューブ101を介してエア供給装置(図示省略)に接続されており、コンテナ120に収容された植物2の残部2a,2cに対してエアを噴出する。
【0057】
清掃装置110は、レール70の下方に配置されており、エアシリンダ111とブラシ112とを有する。エアシリンダ111は、ブラシ112を上下方向に昇降移動させ、第1分離装置80及び第2分離装置90により残部2a,2cを分離された保持具3の穴部33にブラシ112を挿通させる。なお、エアシリンダ111の代わりにソレノイドやモータ等のアクチュエータを用いてもよい。ブラシ112(清掃具の一例)は、ロッド113の外周に植毛が施された棒状部材である。ロッド113の外径は保持具3の穴部33の内径より若干小さく、植毛部を含むブラシ112の外径は穴部33の内径よりも若干大きい。エアシリンダ111は、ブラシ112の中心軸Ax3が、搬送ロボット6によりレール70上の清掃位置(
図7では例えば左から4番目の保持具3の位置)に位置決めされた保持具3の穴部33の中心位置と略一致するように、上述の支持フレーム66に固定されている。
【0058】
(4-2.植物分離工程)
次に、
図11を用いて、植物分離装置10により実行される植物分離工程の一例について説明する。まず、前述の収穫装置9に搬送された保持具3は、
図11(a)に示すように上方の葉部2bと下方の根部2cを連結する茎部2aを穴部33に貫通させて、植物2の全体の略中央位置を保持した状態となっている。収穫装置9は、カッタなどの切断機構51により穴部33の上端開口部近傍で植物2を切断して、葉部2bのみを分離し収穫する。その結果、
図11(b)に示すように、保持具3は穴部33に茎部2aを貫通させたまま、当該茎部2aの上端に葉元部2dを残しつつ茎部2aの下方に根部2cを連ねた状態となり、植物分離装置10に搬送される。なお、葉元部2dはその外径が穴部33の内径より大きいため、それに連なる茎部2a及び根部2cが保持具3から自重で抜け落ちない。
【0059】
この状態の保持具3が、搬送ロボット6により植物分離装置10のレール70に挿入、搬送され、上述した分離位置に位置決めされる。これに同期して、
図11(c)に示すように、第1分離装置80のエアシリンダ81が作動して、ロッド82を上方から下降させて穴部33に挿入し貫通させる。これにより、葉元部2dの中心に穴が開口されるとともに、茎部2aと根部2cが当該葉元部2dから分断されて穴部33の下方から押し出される。これにより、茎部2a及び根部2cが落下した場合にはコンテナ120に収容される。その後、エアシリンダ81がロッド82を上昇移動させる。
【0060】
なお、第1分離装置80のロッド82により残部2a,2cが穴部33から下方に押し出されても、残部2a,2cが有する水分の影響により保持具3に付着していたり、隣接する保持具3との間で根部2cが絡まる等により、残部2a,2cが保持具3から分離されない場合がある。
【0061】
そこで、ロッド82の上昇後に、
図11(d)に示すように、第2分離装置90のエアシリンダ91が作動してロッド92を伸ばし、櫛歯93を水平方向に移動させて残部2a,2cを押圧する。これにより、残部2a,2cが保持具3から分離されて下方に落下し、コンテナ120に収容される。その後、エアシリンダ91がロッド92を縮めて櫛歯93を退避させると共に、搬送ロボット6により新たに保持具3が挿入されて保持具3の次の搬送動作が行われる。
【0062】
なお、この時点において、保持具3の穴部33の上方側には葉元部2dが残存している。また、穴部33の内周面には例えばアオコなどの藻が付着していたり、塵芥などで汚れた状態となっている場合が多い。保持具3を再利用するためには、葉元部2dを分離すると共に、穴部33を清浄な状態にすることが好ましい。
【0063】
この状態の保持具3が上記分離位置よりも下流側に搬送され、上述した清掃位置に位置決めされる。これに同期して、
図11(e)に示すように、清掃装置110のエアシリンダ111が作動してブラシ112を下方から上昇させて保持具3の穴部33に貫通させる。これにより、ブラシ112が穴部33の内周面全体に対して均等に摺接して、上記の藻や汚れを擦り落とすように清掃すると共に、葉元部2dを保持具3の上方へ押し出す。その後、エアシリンダ111がブラシ112を下降移動させてから、搬送ロボット6により新たに保持具3が挿入されて保持具3の次の搬送動作が行われる。このとき、押し出された葉元部2dが保持具3の上面に乗ったままの状態であっても、その後に保持具3が搬送されてレール70の端部から落下し、下方の保持具回収用のコンテナ(図示省略)の底面に衝突した衝撃で葉元部2dを分離できる。
【0064】
以上により、植物分離装置10では、収穫装置9から搬送された保持具3に対して、穴部33に残った茎部2a、根部2c、及び葉元部2dを除去し、また穴部33の内周面における藻や汚れ等を清掃して、自動的に保持具3を再利用可能な状態に後処理できる。
【0065】
(4-3.エア噴出動作)
次に、
図12を用いて、エアノズル100によるエア噴出動作の一例について説明する。
図12に示すように、第1分離装置80及び第2分離装置90により保持具3から分離された植物2の残部2a,2cは、下方に落下してコンテナ120に収容される。残部2a,2cの分離が次々に実行されることで、残部2a,2cはコンテナ120の内部に堆積していく。堆積した残部2a,2cが、第1分離装置80の下方位置においてレール70に支持されている保持具3から根部2cが垂れ下がった領域である領域ARに到達すると、堆積物と保持具3から垂れ下がった根部2cとが接触し、レール70上の保持具3の位置がずれてしまう可能性がある。その場合、第1分離装置80においてロッド82を穴部33に挿通できなくなる。また、堆積物の高さがさらに高くなると、第1分離装置80又は第2分離装置90の動作の妨げとなる可能性がある。以上の要因により、残部2a,2cを保持具3から適切に分離できなくなることが考えられる。
【0066】
そこで本実施形態では、
図12に示すようにエアノズル100によりコンテナ120に集積された残部2a,2cに向けてエアを噴出する。エアの噴出先は、上記領域ARの下方の空間Sである。これにより、堆積した残部2a,2cの山を崩し、堆積物がレール70に支持されている保持具3から垂れ下がった根部2cと接触する高さに到達することを防止できる。その結果、レール70上の保持具3の位置ずれや、第1分離装置80及び第2分離装置90の動作が阻害されることを防止できる。
【0067】
<5.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の植物分離装置10は、貫通した穴部33を備え、当該穴部33に栽培対象の植物2を保持する保持具3と、保持具3を移動可能に支持するレール70と、レール70に支持された保持具3の穴部33に対し、収穫された植物2の残部2a,2cを押圧するロッド82を穴部33の貫通方向における上側から下側に向けて挿通させる第1分離装置80と、レール70に支持された保持具3の下側において、残部2a,2cを押圧する櫛歯93を貫通方向と交差する方向に動作させる第2分離装置90と、を有する。
【0068】
本実施形態の植物分離装置10では、第1分離装置80により、ロッド82を保持具3の穴部33に挿通させることで、収穫された植物2の残部2a,2c(茎部2a及び根部2c)を穴部33から押し出し、保持具3から分離させる。しかしながら、残部2a,2cが有する水分の影響により穴部33から押し出された後も保持具3に付着していたり、隣接する保持具3との間で根部2cが絡まる等により、残部2a,2cを保持具3から適切に分離できない場合がある。
【0069】
そこで本実施形態では、第2分離装置90により、櫛歯93を保持具3の穴部33の下側において貫通方向と交差する方向に動作させる。これにより、ロッド82で穴部33から押し出したものの保持具3から分離されずに穴部33の下側に残っている残部2a,2cを、当該押し出した方向と交差する方向に押圧して、保持具3から分離することができる。このようにして、生育した植物2を収穫した後に残る残部2a,2cを、穴部33の貫通方向一方側から他方側に押し出す工程と、穴部33の他方側で貫通方向に交差する方向に押圧して落下させる工程の、2段階の分離工程を実行することが可能となり、残部2a,2cを保持具3から適切に分離することができる。
【0070】
また、本実施形態では特に、櫛歯93は、残部2a,2cと当接する部分に凸部93a,93b及び凹部93cを有する。これにより、櫛歯93で残部2a,2cを押圧した際に凸部93a,93bが突き刺さって引っ掛かり易くなり、残部2a,2cを保持具3から分離する機能を高めることができる。
【0071】
また、本実施形態では特に、植物分離装置10は、第1分離装置80又は第2分離装置90の鉛直方向下側に配置され、保持具3から分離された残部2a,2cを収容するコンテナ120と、コンテナ120に収容された残部2a,2cにエアを噴出するエアノズル100と、をさらに有する。
【0072】
第1分離装置80又は第2分離装置90により保持具3から分離された植物2の残部2a,2cは、下方に落下してコンテナ120に収容される。残部2a,2cの分離が次々に実行されることで、残部2a,2cはコンテナ120に堆積していく。堆積した残部2a,2cが領域ARに到達すると、堆積物と保持具3から垂れ下がった根部2cとが接触し、レール70上の保持具3の位置がずれてしまう可能性がある。その場合、第1分離装置80においてロッド82を穴部33に挿通できなくなる。また、堆積物の高さがさらに高くなると、第1分離装置80又は第2分離装置90の動作の妨げとなる可能性がある。以上の要因により、残部2a,2cを保持具3から適切に分離できなくなることが考えられる。そこで本実施形態では、エアノズル100でコンテナ120に収容された残部2a,2cにエアを噴出する。これにより、堆積した残部2a,2cの山を崩し、堆積物がレール70に支持されている保持具3から垂れ下がった根部2cと接触する高さに到達することを防止できる。その結果、レール70上の保持具3の位置ずれや、第1分離装置80及び第2分離装置90の動作が阻害されることを防止できる。
【0073】
また、本実施形態では特に、植物分離装置10は、第1分離装置80又は第2分離装置90により残部2a,2cを分離された保持具3の穴部33にブラシ112を挿通させる清掃装置110をさらに有する。
【0074】
保持具3の穴部33の内側は、藻が付着する等、汚れた状態となっている場合が多い。そこで本実施形態では、残部2a,2cを分離した保持具3の穴部33に対してブラシ112を挿通させることで、穴部33の内側を清掃して汚れを除去することができ、再利用に向けて保持具3を清浄化することができる。
【0075】
また、本実施形態では特に、貫通した穴部33を備え、当該穴部33に栽培対象の植物2を保持する保持具3と、保持具3を所定の期間をかけて移動させることにより植物2を生育させる栽培棚5と、を有する植物栽培システム1が、上述の植物分離装置10を有する。これにより、保持具3で保持した植物2を生育させると共に、生育した植物2を収穫した後に残る残部2a,2cを保持具3から適切に分離することで、保持具3を繰り返し再利用することができる植物栽培システム1を実現できる。
【0076】
<6.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0077】
例えば、前述したスペーサが保持具3と同等の穴部33を有している場合や、保持具3自体をスペーサとして利用している場合でも、その穴部33で植物2を保持しなくともレール4での搬送中に内周面が汚れる場合があるため、清掃装置110でスペーサを清掃させてもよい。
【0078】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0079】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0080】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 植物栽培システム
2 植物
2a 茎部
2c 根部
2a,2c 残部
3 保持具
5 栽培棚
10 植物分離装置
33 穴部
70 レール(支持部材)
80 第1分離装置
82 ロッド(第1押圧部材)
90 第2分離装置
93 櫛歯(第2押圧部材)
93a 凸部(凹凸部)
93b 凸部(凹凸部)
93c 凹部(凹凸部)
100 エアノズル(エア噴出装置)
110 清掃装置
112 ブラシ(清掃具)
120 コンテナ(容器)
【要約】
【課題】生育した植物を収穫した後に残る残部を保持具から適切に分離する。
【解決手段】植物分離装置10は、貫通した穴部33を備え、当該穴部33に栽培対象の植物2を保持する保持具3と、保持具3を移動可能に支持するレール70と、レール70に支持された保持具3の穴部33に対し、収穫された植物2の残部2a,2cを押圧するロッド82を穴部33の貫通方向における上側から下側に向けて挿通させる第1分離装置80と、レール70に支持された保持具3の下側において、残部2a,2cを押圧する櫛歯93を貫通方向と交差する方向に動作させる第2分離装置90と、を有する。
【選択図】
図8