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  • 特許-抜け止めワッシャ付きの取付具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】抜け止めワッシャ付きの取付具
(51)【国際特許分類】
   F16B 41/00 20060101AFI20220113BHJP
   F16B 39/24 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16B41/00 F
F16B39/24 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019118521
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004645
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000152169
【氏名又は名称】株式会社栃木屋
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】水谷 欣正
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224722(JP,A)
【文献】実公昭48-041486(JP,Y1)
【文献】米国特許第04952107(US,A)
【文献】特表2010-530501(JP,A)
【文献】特開2017-057995(JP,A)
【文献】特開2013-236183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 41/00
F16B 39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向及び縦方向を有し、ワッシャが配置された取付本体と、締結部材が挿通される挿通孔とを含む抜け止めワッシャ付きの取付具において、
前記抜け止めワッシャは、前記取付本体内において前記挿通孔に連通される軸孔と、前記縦方向へ変形可能な可撓領域とを有し、前記取付本体内の配置スペースにおいて前記軸孔に貫通された挿通部材の軸部とともに回転可能な状態で配置されることを特徴とする前記取付具。
【請求項2】
前記取付本体には、前記周方向へ延びるスリットが形成されていて、前記ワッシャを前記スリットから前記配置スペース内に配置することができる請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記配置スペースは、前記縦方向において対向し、かつ、中央に開口を有する第1内壁と第2内壁との間に形成されていて、前記抜け止めワッシャは前記第1及び第2内壁の内面に当接した状態で配置される請求項1又は2に記載の取付具。
【請求項4】
前記スリットの外周寸法は、前記取付本体の外周寸法の40~55%である請求項2に記載の取付具。
【請求項5】
前記締結部材によって締結された状態において、前記締結部材の頭部と前記取付本体の第1端面とが、同一平面上に位置する請求項1~3のいずれかに記載の取付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿通部材の抜け止めのためのワッシャ付きの取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネジ等の締結部材の抜け止めのためのワッシャは、公知である。例えば、特許文献1には、第1面と、第1面の反対側の第2面と、円形の外周と、その内側であって第1面から第2面へと貫通する円形の軸孔と、軸孔から外周側へ放射状に延びる複数のスリットとを有する抜け止めワッシャが開示されている。抜け止めワッシャは、締結部材を介して筐体本体とパネルとを締結する際に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-47240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された抜け止めワッシャでは、複数のスリットを有することによって可撓性に優れ、締結部材のネジ山部間の溝に入り込むので、パネルや締結部材の頭部を掴んで上方へ引き上げたりしても、締結部材が抜けて、締結状態が解除されるのを防止することができる。しかしながら、抜け止めワッシャは、薄板状であって比較的に肉薄であることから、取付作業時において作業者が摘持し難く、特に、厚手の手袋を着用している場合には作業中に指先から滑り落ちてしまうことがあった。
【0005】
本発明が課題とするところは、作業中に抜け止めワッシャを摘持することなく、素早く締結操作を行うことのできる抜け止めワッシャ付きの取付具の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、周方向及び縦方向を有し、ワッシャが配置された取付本体と、締結部材が挿通される挿通孔とを含む抜け止めワッシャ付きの取付具である。
【0007】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具は、前記取付本体内において前記挿通孔に連通される軸孔と、前記縦方向へ変形可能な可撓領域とを有し、前記取付本体内の配置スペースにおいて前記軸孔に貫通された挿通部材の軸部とともに回転可能な状態で配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具の実施態様の一つにおいて、前記取付本体には、前記周方向へ延びるスリットが形成されていて、前記ワッシャを前記スリットから前記配置スペース内に配置することができる。
【0009】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具の実施態様の一つにおいて、前記配置スペースは、前記縦方向において対向し、かつ、中央に開口を有する第1内壁と第2内壁との間に形成されていて、前記抜け止めワッシャは前記第1及び第2内壁の内面に当接した状態で配置される。
【0010】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具の実施態様の一つにおいて、前記スリットの外周寸法は、前記取付本体の外周寸法の40~60%である。
【0011】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具の実施態様の一つにおいて、前記締結部材によって締結された状態において、前記締結部材の頭部と前記取付具の第1端面とが、互いに同一平面上に位置する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具によれば、抜け止めワッシャが取付本体内において、締結部材の軸部とともに旋回可能な状態で配置されていることから、締結部材の締付を阻害することなくその抜けが防止される。また、抜け止めワッシャが取付本体内に安定的に配置されることから、取付作業中に作業者の指先から抜け止めワッシャを脱落させることなく、スムーズに取付作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は、本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具の特定の実施の形態を示し、発明に不可欠な構成ばかりでなく、選択的に実施することができる形態および好ましい実施の形態を含む。
図1】抜け止めワッシャ付きの取付具の使用状態を示す図。
図2】取付具の斜視図。
図3】取付具の分解斜視図。
図4】(a)図3のIV(a)-IV(a)線に沿う断面図。(b)図3の一点鎖線IV(b)で囲んだ領域の一部拡大図。
図5】(a)抜け止めワッシャの斜視図。(b)抜け止めワッシャの側面図。
図6】(a)図2のVI(a)-VI(a)線に沿う断面図。(b)図2のVI(b)-VI(b)線に沿う断面図。
図7】(a)取付具に締結部材が挿通される様子を示す、取付体の一部破断斜視図(b)締結状態における取付具の一部破断斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して本発明に係る抜け止めワッシャ付きの取付具10の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0015】
図1図4を参照すると、抜け止めワッシャ付きの取付具(以下、取付具)10は、例えば、平面ハンドルや施錠装置等の対象物1に使用されるものであって、図示例では、対象物1が、筐体本体2と、パネル3とを有し、筐体本体2とパネル3とが取付具10を介してネジ5(締結部材)によって互いに固定される。具体的には、筐体本体2の背面には中央にネジ溝4を有する複数の突起2aが位置し、突起2aがパネル3の取付孔3aを貫通した状態で、取付具10が突起2aに被着され、取付具10を介してネジ5がネジ溝4に進入して螺合される。
【0016】
取付具10は、互いに交差する周方向Rと縦方向(又は上下方向)Yと、中空円筒状の取付本体20と、取付本体20内に配置された抜け止めワッシャ30とを有する。
【0017】
取付本体20は、硬質な材料、例えば、金属やABS樹脂やポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の硬質プラスチック材料から形成されたものであって、第1端面21と、縦方向Yにおいて第1面の反対側に位置する第2端面22と、第1及び第2端面21,22間において周方向へ延びる周面部23とを有する。
【0018】
取付本体20は、その中央に位置して内部を貫通するように、第1端面21から第2端面22まで縦方向Yへ延びる挿通部25を有する。挿通部25は、第1端面21側に位置する有底の第1開口25aと、第2端面22側に位置する第2開口25bとを有する。取付本体20の周面部23には、周方向Rへ延びるスリット40が設けられている。
【0019】
図4(a)を参照すると、取付本体20の内部には、第1開口25aの底である第1内壁28aと、第1内壁28aと縦方向Yにおいて離間対向するように、第2端面22側に位置する第2内壁(支持壁)28bとが位置する。第2内壁28bは、取付本体20の縦方向Yの寸法を2等分する横中心線Qよりも第1端面21側に位置する。第1内壁28aと第2内壁28bとの中心には、それぞれ、同形同大の開口25c,25dが形成されていて、第1端面21の第1開口25a、第1内壁28aの開口25c、第2内壁28bの開口25d、第2端面22の第2開口25bは、縦方向Yにおいて互いに連通して、取付本体20を貫通する挿通部25を形成している。第2開口25bの径寸法は第1開口25aの径寸法とほぼ同じ又はそれよりも僅かに大きく、第1内壁28aの開口25cの径寸法と第2内壁28bの開口25dとはほぼ同じであって、それらの径寸法は、第1及び第2開口25a,25bの径寸法よりも小さくなっている。
【0020】
スリット40は、周面部23のうちの第1内壁28aと第2内壁28bとの間において周方向Rへ延びていて、第1内壁28aと第2内壁28bとの間に形成された配置スペースSには、薄板円形状の抜け止めワッシャ30が配置されている。抜け止めワッシャ30は、可撓性の軟質材料、例えば、薄い金属板、熱可塑性合成樹脂等のプラスチック材料、ウレタン、ゴム、スポンジ、フェルト等から形成することができる。
【0021】
図5(a)及び図(b)を参照すると、抜け止めワッシャ30は、第1面31と、第1面31の反対側に位置する第2面32と、円形の外周面33と、外周面33の径方向の内側であって第1面31から第2面32へと貫通する円形の軸孔34と、軸孔34から外周面33側へと放射状に延びる複数のスリット35とを含む。スリット35の外周面33側に位置する終端35aには、円形の端末孔36が位置する。
【0022】
放射状に延びるスリット35間に位置する、軸孔34から外周面33へ向かって径方向へ延び、かつ、互いに周方向へ並ぶ複数の略扇形の領域は、第1面31側から第2面32側へ変形しうる、すなわち、抜け止めワッシャ30の厚さ方向(取付具の縦方向Y)へ変形しうる可撓領域である。また、軸孔34の周辺には、第1面31から第2面32へ次第に縮径するように傾斜する傾斜部37が位置する。抜け止めワッシャ30は、端末孔36を形成することによって、それを形成しない場合に比べて、変形の基端となる周方向の離間寸法が小さくなるので、可撓領域の可撓性(バネ性)を大きくすることができる。
【0023】
図4(b)、図5(a),(b)及び図6(a),(b)を参照すると、軸孔34の直径D1は、ネジ5の軸部6のネジ山部6aによって形成される外径D2、及び、ネジ谷部6bによって形成される軸部6の内径D3のうちの少なくとも内径D3よりも小さくされている。抜け止めワッシャ30とネジ5とがかかる寸法関係を有することから、ネジ5の軸部6を抜け止めワッシャ30の軸孔34に挿入すると、抜け止めワッシャ30の各可撓領域が第2面32へ向かって撓んで変形し、特に、ネジ山部6aを越えたときには、その変化量が大きくなる。また、軸孔34の周辺には挿入方向に沿ってその径が小さくなるように傾斜部37が形成されていることから、第1面31から第2面32に向かって軸部6が挿入されたときには、抜け止めワッシャ30が撓み易く、挿入し易くなる。ネジ5を突起2aのネジ溝4に螺合させて筐体本体2とパネル3とを締結した後において、ネジ5の頭部5aを挿入方向とは反対の後退方向へ引っ張ったり、パネル3を引っ張ったりして、縦方向Yにおいて軸部6に対して抜け止めワッシャ30から外れるような力が作用した場合には、ネジ山部6aに軸孔34の開口縁部が引っ掛かって、抜け難くなる。
【0024】
抜け止めワッシャ30は、スリット40から第1内壁28aと第2内壁28bとの間に形成された配置スペースS内に進入させることができる。具体的には、抜け止めワッシャ30は可撓性を有する材料から形成されているので、スリット40に抜け止めワッシャ30の一部を挿入して、それを変形させながら、配置スペースS内に収容させることができる。このように、工具等を用いることなく、抜け止めワッシャ30をスリット40から押し込むようにして挿入することで配置スペースS内に配置することができので、組み付け操作が容易である。
【0025】
抜け止めワッシャ30は、縦方向Yにおいて第1内壁28aと第2内壁28bとの間に介在され、かつ、それらに当接した状態で配置されていることから、配置スペースS内において安定して配置されており、大きく位置ずれすることはない。また、抜け止めワッシャ30は、配置スペースS内で接着手段や溶着手段等によってその一部が固定されていないことから、ネジ5の軸部6とともに自由に旋回することができる。したがって、抜け止めワッシャ30は、配置スペースS内においてネジ5の軸部6が筐体本体2の突起2aのネジ溝4に螺合しながら移動するのを抑制することなく、ネジ5が後退方向へ抜けるのを防止することができるといえる。
【0026】
図6(a)を参照すると、スリット40の周方向Rの外周寸法L2は、取付本体20の外周寸法L1の40~55%の大きさであることが好ましい。外周寸法L2が外周寸法L1の40%未満の大きさである場合には、スリット40から抜け止めワッシャ30を押し込むようにして挿入して配置スペースSに配置することができない。一方、外周寸法L2が外周寸法L1の55%を超える場合には、取付本体20の強度が比較的に低くなって、取付作業時及び/又は外部衝撃を受けた際に、その一部が破損するおそれがある。
【0027】
図7(a),(b)を参照すると、筐体本体2にパネル3を取り付ける場合には、まず、筐体本体2の突起2aをパネル3の取付孔3aに貫通させ、突起2aに取付具10を被せる。取付具10の第1端面21側から第1開口25aにネジ5の軸部6の先端を挿入してドライバー等の工具でネジ5を回転操作し、ネジ5を下方へ移動させる。ネジ5の軸部6が突起2aのネジ溝4に螺合されることによって、筐体本体2とパネル3とが安定的に固定される。ネジ5は、抜け止めワッシャ30によって挿入方向とは反対の後退方向への引き抜きが阻止されているので、筐体本体2が外部衝撃等を受けてもネジ5が上方へずれて螺合が解除されるおそれはない。
【0028】
このように、パネル3を筐体本体2へ取り付ける際に、パネル3の取付孔3aに貫通された突起2aに、予め、抜け止めワッシャ30が組み付けられた取付具10を被せるだけで、抜け止めワッシャ30を安定的に配置した状態でネジ5を軸孔34に貫通させることができるので、作業現場で薄板小片状の抜け止めワッシャ30を直接取り扱うことがなく、抜け止めワッシャ30が指先から落下したり、上手く摘持することができなくて作業者がいらいらしたりすることはない。
【0029】
図2及び図6(b)を参照すると、ネジ5が取付具10の挿通部25に挿通されて、筐体本体2とパネル3とが締結された状態において、ネジ5の頭部5aと取付本体20の第1端面21とは、互いに同一平面上に位置するように、ほぼ面一な状態となっている。ネジ5全体が取付本体20内に位置し、ネジ5の頭部5aが第1端面21から突出していないことから、すっきりとした外観を有するとともに、頭部5aが引っ掛かって後退方向へ引き抜かれるのを抑制することができる。
【0030】
取付具10は、平面ハンドルや施錠装置を扉に取り付ける際にも使用することができる。かかる場合には、扉の正面に立つ作業者が、扉の背面側において直接視認することなく取付作業を行うことになるので、指先を直接視認することができないことから薄板小片状の抜け止めワッシャ30等をより摘持し難くなるが、抜け止めワッシャ30が予め組み込まれた取付具10を用いることによって、抜け止めワッシャ30を落下させることなく、スムーズに取付作業を行うことができる。
【0031】
図示していないが、本実施形態の他に、取付本体20の周面部23にスリット40を設けることなく、すなわち、周面部23を完全に塞いだ状態で内部の配置スペースS内にネジ5の軸部6とともに旋回可能に抜け止めワッシャ30を配置することもできる。かかる場合には、取付本体20を第1内壁28aを有する第1部分と、第2内壁28bを有する第2部分との別体からなる2つの部材から形成し、第2部分の第2内壁28b上に抜け止めワッシャ30を配置し、その上から第1部分を被せて第1部分の外周壁と第2部分の外周壁とを接着手段や溶着手段等の各種公知の手段によって互いに固定することによって、取付具10を形成することができる。
【符号の説明】
【0032】
5 締結部材(ネジ)
6 締結部材の軸部
10 抜け止めワッシャ付きの取付具(取付具)
28a 第1内壁
28b 第2内壁
30 抜け止めワッシャ
40 スリット
L1 スリットの外周寸法
L2 取付本体の外周寸法
R 周方向
S 配置スペース
Y 縦方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7