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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】駐輪装置
(51)【国際特許分類】
   B62H 3/08 20060101AFI20220113BHJP
   B62H 3/04 20060101ALI20220113BHJP
   E04H 6/06 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B62H3/08
B62H3/04
E04H6/06 X
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020029267
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133714
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519317114
【氏名又は名称】株式会社CPM
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 敬子
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-174362(JP,A)
【文献】特開2012-86806(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2012-0003870(KR,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0028546(KR,A)
【文献】特開2013-119758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 3/08
B62H 3/04
E04H 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記第二ラックに関して水平姿勢から倒立姿勢に至る可逆的な姿勢変更と前記可動把手に関して退避姿勢から突出姿勢に至る可逆的な姿勢変更とを互いに関連付けて同時進行させるための連係機構と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となる場合、前記回動ストップ機構がロック作動状態からロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更する際に、前記連係機構を介して前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更し、前記第二ラックが倒立姿勢で静止すると前記可動把手が突出姿勢で静止することを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記第二ラックに関して水平姿勢から倒立姿勢に至る可逆的な姿勢変更と前記可動把手に関して退避姿勢から突出姿勢に至る可逆的な姿勢変更とを互いに関連付けて同時進行させるための連係機構と、
前記第二ラックからの自転車の搬出終了を検知する搬出検知手段と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となる場合、前記搬出検知手段の搬出終了の検知に基づき前記回動ストップ機構がロック作動状態からロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更する際に、前記連係機構を介して前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更し、前記第二ラックが倒立姿勢で静止すると前記可動把手が突出姿勢で静止することを特徴とする駐輪装置。
【請求項3】
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて倒立姿勢である場合、前記可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際に、前記連係機構を介して前記第二ラックが倒立姿勢から水平姿勢へ姿勢変更し、前記可動把手が退避姿勢で静止すると前記第二ラックが水平姿勢で静止し、前記回動ストップ機構がロック解除状態からロック作動状態に切換えられて前記第二ラックへの自転車の搬入が可能となる請求項1又は請求項2に記載の駐輪装置。
【請求項4】
前記第二ラックと前記可動把手とは、少なくともいずれか一方に関する姿勢変更を人為的に操作することにより、前記連係機構を介して他方に関する姿勢変更と連係させることが可能である請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の駐輪装置。
【請求項5】
前記ベース体が下段位置にあって水平姿勢の前記第二ラックに搬出入される自転車の横揺れ振動であるローリング運動を阻止又は抑制するために前記第二ラックの幅方向両側に配置されるとともに、自身の一端部が前記ベース体の上部に対し幅方向の揺動軸線周りで揺動可能に軸支される一方、その他端部は前記第二ラックの前記ラック回転軸線と前記把手回転軸線との間に長手方向に沿って一体形成されたラックガイド部に対しスライド移動可能に係合支持されるスライダを形成することにより、前記ベース体と前記第二ラックとの間に掛け渡されるサイドガードをさらに備え、
前記ベース体が下段位置にあるとき、前記ベース体、前記第二ラック及び前記サイドガードが幅方向から見て剛体構造の三角形状をなし、かつ空車状態において前記第二ラックとサイドガードとが前記スライダを介してクランク運動する回転スライダクランク機構が構成され、
空車状態にて水平姿勢である前記第二ラックの基端部にモーメントを付与することにより、前記スライダが前記ラックガイド部で長手方向に沿ってスライド移動しながら、前記第二ラック及び前記サイドガードが前記ベース体に対し上向きに回動して前記支柱に沿う倒立姿勢で収納される請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の駐輪装置。
【請求項6】
前記可動把手には、前記サイドガードのスライダをスライド移動可能に係合支持する把手ガイド部が一体形成され、
前記連係機構は、前記サイドガードの他端部に形成されたスライダと、前記第二ラックに一体形成された前記ラックガイド部と、前記可動把手に一体形成された前記把手ガイド部とを有するとともに、
前記スライダは前記ラックガイド部及び前記把手ガイド部に同時に係合支持され、前記第二ラックの姿勢変更及び前記可動把手の姿勢変更は前記スライダのスライド移動と連動し、
前記回動ストップ機構のロック作動状態は前記スライダのスライド移動をロックすることにより達成される請求項5に記載の駐輪装置。
【請求項7】
前記連係機構において、前記可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際の変更範囲の後半部分では、前記スライダと前記把手ガイド部との係合が解除可能である請求項6に記載の駐輪装置。
【請求項8】
前記第二ラックが実車状態であるとき、前記ベース体が下段位置及び上段位置のいずれにおいても前記可動把手は退避姿勢に維持される請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の駐輪装置。
【請求項9】
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記可動把手の前記第二ラックに対する姿勢変更が不能となるロック作動状態と姿勢変更が可能となるロック解除状態とに人為操作により切換えるための把手ストップ操作機構と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となり、かつ前記可動把手が退避姿勢である場合、人為操作により前記把手ストップ操作機構がロック解除状態に切換えられて前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更する際に、人為操作と同期して前記回動ストップ機構がロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能となることを特徴とする駐輪装置。
【請求項10】
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて倒立姿勢であり、かつ前記可動把手が突出姿勢である場合、前記可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際に、前記第二ラックが倒立姿勢から水平姿勢へ姿勢変更可能であり、人為操作により前記把手ストップ操作機構がロック作動状態に切換えられて前記可動把手が退避姿勢で静止すると、人為操作と同期して前記回動ストップ機構がロック作動状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢で静止する請求項9に記載の駐輪装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直上下昇降式のラックを有する駐輪機では、支柱の下部位置においてラックに自転車が搬入され、実車状態のラックが上部位置にて保管・管理される。自転車が搬出され空車状態となったラックの収納方式として、水平姿勢のまま上部位置にスライド収納(すなわち水平収納)するタイプと、基端部を中心に回動させて倒立姿勢に跳ね上げ収納(すなわち倒立収納)するタイプとが知られている。特許文献1は後者の跳ね上げ収納タイプを示し、前者のスライド収納タイプと比較すると、収納時におけるラックの突出量を少なくして省スペース化を図ることができる。
【0003】
ところで、特許文献1に示された、跳ね上げ収納タイプである垂直上下昇降式のラック(上部ラック)を有する駐輪機と、特許文献2に示すような、地面(基準面)に敷設されたレール上を摺動するスライド式のラック(下部ラック)を有する駐輪機と、を組み合わせて上下2段式の駐輪装置を構成することにより、より多くの自転車を効率よく格納することができる。その反面、跳ね上げ収納タイプでは、自転車を搬入する前に作業者は1本又は2本の下部ラック用レールを跨ぐようにして倒立姿勢の上部ラックに近づいて把持し、その上部ラックを水平姿勢に姿勢変更する(引き戻す)作業を行わねばならず、レールにつまづいたりレール越しに手を伸ばす不安定な体勢を強いられたりして、危険を伴うおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6598340号公報
【文献】特許第5970797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、倒立収納されたラックを水平姿勢に引き戻す際に安全かつ楽な体勢で自転車の搬入準備作業が行える駐輪装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の駐輪装置は、
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記第二ラックに関して水平姿勢から倒立姿勢に至る可逆的な姿勢変更と前記可動把手に関して退避姿勢から突出姿勢に至る可逆的な姿勢変更とを互いに関連付けて同時進行させるための連係機構と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となる場合、前記回動ストップ機構がロック作動状態からロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更する際に、前記連係機構を介して前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更し、前記第二ラックが倒立姿勢で静止すると前記可動把手が突出姿勢で静止することを特徴とする。
【0007】
このように、第二ラックの倒立収納時に可動把手が突出姿勢で待機するので、第二ラックの水平回復作業(すなわち自転車の搬入準備作業)の際に可動把手を把持して引き寄せることができる。したがって、レールにつまづいたりレール越しに不安定な体勢を強いられたりすることなく、また子供や小柄な人であっても、誰でも安全に搬入準備作業が行える。
【0008】
そして、連係機構を介することにより、第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢(可動把手が退避姿勢から突出姿勢)に姿勢変更する途中で緊急事態が発生した(発見された)とき、第二ラックの倒立収納の中止や逆操作が可能であり、第二ラックを倒立収納する際の突発的な危険も回避できる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の駐輪装置は、
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記第二ラックに関して水平姿勢から倒立姿勢に至る可逆的な姿勢変更と前記可動把手に関して退避姿勢から突出姿勢に至る可逆的な姿勢変更とを互いに関連付けて同時進行させるための連係機構と、
前記第二ラックからの自転車の搬出終了を検知する搬出検知手段と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となる場合、前記搬出検知手段の搬出終了の検知に基づき前記回動ストップ機構がロック作動状態からロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更する際に、前記連係機構を介して前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更し、前記第二ラックが倒立姿勢で静止すると前記可動把手が突出姿勢で静止することを特徴とする。
【0010】
このように、第二ラックの倒立収納時に可動把手が突出姿勢で待機するので、第二ラックの水平回復作業(すなわち自転車の搬入準備作業)の際に可動把手を把持して引き寄せることができる。したがって、レールにつまづいたりレール越しに不安定な体勢を強いられたりすることなく、また子供や小柄な人であっても、誰でも安全に搬入準備作業が行える。
【0011】
そして、連係機構を介することにより、第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢(可動把手が退避姿勢から突出姿勢)に姿勢変更する途中で緊急事態が発生した(発見された)とき、第二ラックの倒立収納の中止や逆操作が可能であり、第二ラックを倒立収納する際の突発的な危険も回避できる。
【0012】
さらに、自転車の搬出検知に連動して回動ストップ機構がロック解除され第二ラックが倒立収納される(いわゆるオートリターン)ので、作業負担が軽減され収納忘れも防止できる。
【0013】
上記ベース体が下段位置にあり第二ラックが空車状態にて倒立姿勢である場合、可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際に、連係機構を介して第二ラックが倒立姿勢から水平姿勢へ姿勢変更し、可動把手が退避姿勢で静止すると第二ラックが水平姿勢で静止し、回動ストップ機構がロック解除状態からロック作動状態に切換えられて第二ラックへの自転車の搬入が可能となる。
【0014】
このように、連係機構を介することにより、突出姿勢の可動把手を把持して退避姿勢に変更する作業の途中で第二ラックに持ち換え、その第二ラックを水平姿勢に変更することができる。したがって、第二ラックの水平回復作業(すなわち自転車の搬入準備作業)が誰でも容易に行える。
【0015】
上記第二ラックと可動把手とは、少なくともいずれか一方に関する姿勢変更を人為的に操作することにより、連係機構を介して他方に関する姿勢変更と連係させることが可能である。
【0016】
このように、第二ラックと可動把手は、連係機構を介することにより次のような連係操作がいずれも可能であるから、第二ラックと可動把手の作動姿勢を選択、組合せすることにより、作業者が操作を行うのに適した状況を容易に設定・再現できる。
【0017】
・両者を同じ方向(順方向又は逆方向)に同時操作可能
・一方を順方向操作中に中断し、他方に持ち替えて同方向(つまり順方向)に操作可能
(例えば、上記したように、可動把手を突出姿勢から退避姿勢に至る操作途中で持ち替えた第二ラックを倒立姿勢から水平姿勢に操作)
・一方を順方向操作中に中断・停止した後、再び一方を同方向(つまり順方向)に操作可能
・一方を順方向操作中に中断し、その後一方を逆方向に戻り操作可能
・一方を順方向操作中に中断し、他方に持ち替えて逆方向に戻り操作可能
【0018】
上記ベース体が下段位置にあって水平姿勢の第二ラックに搬出入される自転車の横揺れ振動であるローリング運動を阻止又は抑制するために第二ラックの幅方向両側に配置されるとともに、自身の一端部がベース体の上部に対し幅方向の揺動軸線周りで揺動可能に軸支される一方、その他端部は第二ラックのラック回転軸線と把手回転軸線との間に長手方向に沿って一体形成されたラックガイド部に対しスライド移動可能に係合支持されるスライダを形成することにより、ベース体と第二ラックとの間に掛け渡されるサイドガードをさらに備え、
ベース体が下段位置にあるとき、ベース体、第二ラック及びサイドガードが幅方向から見て剛体構造の三角形状をなし、かつ空車状態において第二ラックとサイドガードとがスライダを介してクランク運動する回転スライダクランク機構が構成され、
空車状態にて水平姿勢である第二ラックの基端部にモーメントを付与することにより、スライダがラックガイド部で長手方向に沿ってスライド移動しながら、第二ラック及びサイドガードがベース体に対し上向きに回動して支柱に沿う倒立姿勢で収納される。
【0019】
このように、空車状態にて水平姿勢である第二ラック及びサイドガードは、倒立姿勢で収納されるまでの間折れ曲がりやたるみを生じることなく、強度や耐久性に優れた堅牢な剛体構造を保つことができる。そして、可動把手は、このように堅牢な第二ラックと連係機構を介して組み合わされるので、強度や耐久性に優れ、円滑な姿勢変更を長期にわたり維持することができる。
【0020】
上記可動把手には、サイドガードのスライダをスライド移動可能に係合支持する把手ガイド部が一体形成され、
連係機構は、サイドガードの他端部に形成されたスライダと、第二ラックに一体形成されたラックガイド部と、可動把手に一体形成された把手ガイド部とを有するとともに、
スライダはラックガイド部及び把手ガイド部に同時に係合支持され、第二ラックの姿勢変更及び可動把手の姿勢変更はスライダのスライド移動と連動し、
回動ストップ機構のロック作動状態はスライダのスライド移動をロックすることにより達成される。
【0021】
このように、スライダのスライド移動をロックすることにより、回動ストップ機構がロック作動状態となるので、ベース体が下段位置にあるとき第二ラックの水平姿勢と可動把手の退避姿勢とを同時に維持できる。
【0022】
上記連係機構において、可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際の変更範囲の後半部分では、スライダと把手ガイド部との係合が解除可能である。
【0023】
このように、梱包運搬時等には、突出姿勢の可動把手(の把手ガイド部)をスライダとの係合から解除し、第二ラックに沿う退避姿勢へ姿勢変更して収納できるから、組立状態で出荷する場合でも可動把手の破損を防止できる。
【0024】
上記第二ラックが実車状態であるとき、ベース体が下段位置及び上段位置のいずれにおいても可動把手は退避姿勢に維持される。
【0025】
このように、自転車を上段位置に格納し下段位置で搬出入するため、実車状態の第二ラックは常に水平姿勢に保たれている。よって、連係機構の機能により可動把手は常に実車状態の第二ラックの底面に沿う退避姿勢に維持されるので、自転車を搭載する第一ラックは上段位置にある第二ラックの下方でレール上を支障なくスライドできる。
【0026】
そして、上記課題を解決するために、本発明の駐輪装置は、
基準面に敷設されたレールに対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車を搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にて前記レールに沿って水平姿勢でスライド可能な第一ラックと、前記レールに対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、前記第一ラックのスライドによって生じ得るスペースであって前記レールから離間した基準面に立設された支柱に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な第二ラックと、を有する駐輪装置において、
前記支柱の下段位置と上段位置との間で実車状態の前記第二ラックを保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の前記第二ラックを長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向のラック回転軸線の周りに上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支するベース体と、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが空車状態にて水平姿勢であるとき、前記第二ラックの前記ベース体に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに切換えられる回動ストップ機構と、
前記第二ラックに対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の把手回転軸線周りで軸支され、前記第二ラックの底面に沿うように退避する退避姿勢と前記第二ラックの底面から突出する突出姿勢との間を揺動可能な可動把手と、
前記可動把手の前記第二ラックに対する姿勢変更が不能となるロック作動状態と姿勢変更が可能となるロック解除状態とに人為操作により切換えるための把手ストップ操作機構と、を備え、
前記ベース体が下段位置にあり前記第二ラックが自転車の搬出により空車状態にて水平姿勢となり、かつ前記可動把手が退避姿勢である場合、人為操作により前記把手ストップ操作機構がロック解除状態に切換えられて前記可動把手が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更する際に、人為操作と同期して前記回動ストップ機構がロック解除状態に切換えられて前記第二ラックが水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能となることを特徴とする。
【0027】
このように、第二ラックの倒立収納時に可動把手が突出姿勢で待機するので、第二ラックの水平回復作業(すなわち自転車の搬入準備作業)の際に可動把手を把持して引き寄せることができる。したがって、レールにつまづいたりレール越しに不安定な体勢を強いられたりすることなく、また子供や小柄な人であっても、誰でも安全に搬入準備作業が行える。
【0028】
上記ベース体が下段位置にあり第二ラックが空車状態にて倒立姿勢であり、かつ可動把手が突出姿勢である場合、可動把手が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際に、第二ラックが倒立姿勢から水平姿勢へ姿勢変更可能であり、人為操作により把手ストップ操作機構がロック作動状態に切換えられて可動把手が退避姿勢で静止すると、人為操作と同期して回動ストップ機構がロック作動状態に切換えられて第二ラックが水平姿勢で静止する。
【0029】
このように、把手ストップ操作機構の人為操作に回動ストップ機構が同期することにより、第二ラックの水平回復作業(すなわち自転車の搬入準備作業)が誰でも容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例として、下段位置であって水平姿勢の昇降ラックにおいて自転車の搬出途中であることを表わす上段駐輪機の全体正面図。
図2図1の要部を示す正面図。
図3図1の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図4図1を一部拡大して示す作用説明図。
図5図1に続いて、水平姿勢の昇降ラックから自転車の搬出が終了し、倒立姿勢への自動収納が開始可能になった段階を表わす上段駐輪機の全体正面図。
図6図5を一部拡大して示す作用説明図。
図7図5に続いて、昇降ラックの倒立姿勢に至る収納途中段階及び収納終了段階を表わす上段駐輪機の全体正面図。
図8図7の収納途中段階を一部拡大して示す作用説明図。
図9図7の収納終了段階での背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図10図7に続いて、下段位置において昇降ラックが倒立姿勢から水平姿勢へ復帰し、空車状態すなわち自転車の搬入待機状態であることを表わす上段駐輪機の全体正面図。
図11図10に続いて、下段位置であって水平姿勢の昇降ラックにおいて自転車の搬入終了状態すなわち実車状態であることを表わす上段駐輪機の全体正面図。
図12図11の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図13図11に続いて、実車状態の昇降ラックを上昇し、上段位置において自転車を保管することを表わす上段駐輪機の全体正面図。
図14図13の背面側を一部拡大して示す作用説明図。
図15図13を一部拡大して示す作用説明図。
図16図13に続いて、実車状態の昇降ラックを下降し、下段位置において自転車の搬出直前状態であることを表わす上段駐輪機の全体正面図。
図17図5の倒立収納の開始直前段階(0°)において、連係機構を拡大して示す作用説明図。
図18図7の収納途中段階(20°)において、連係機構を拡大して示す作用説明図。
図19図7の収納途中段階(40°)において、連係機構を拡大して示す作用説明図。
図20図7の収納途中段階(60°)において、連係機構を拡大して示す作用説明図。
図21図7の収納終了段階(90°)において、連係機構を拡大して示す作用説明図。
図22図1の実施例の昇降ラックの倒立姿勢において、連係機構を拡大して示す側面図。
図23図1の実施例において、連係機構の収納手順を説明するための作用説明図。
図24図23に続いて、連係機構の収納手順を説明するために一部を拡大して示す作用説明図。
図25図1の実施例において、上段駐輪機及び下段駐輪機を表わす全体正面図。
図26図25の実施例において、下段駐輪機の一部をスライドさせた状態を表わす全体正面図。
図27図1の実施例において、レール上の第一スライドラックが自転車の搬入終了状態すなわち実車状態であることを表わす下段駐輪機の全体正面図。
図28図1の実施例において、レール上の第二スライドラックが自転車の搬入終了状態すなわち実車状態であることを表わす下段駐輪機の全体正面図。
図29図1の実施例の第一変形例において、昇降ラックの倒立姿勢を表わす全体正面図。
図30図1の実施例の第二変形例において、昇降ラックの倒立姿勢から水平姿勢への回動を簡略的に表わす全体正面図。
図31図30の実施例において、水平姿勢の昇降ラックの回動がロックされていない状態を簡略的に表わす全体正面図。
図32図30の実施例において、水平姿勢の昇降ラックが回動をロックされた状態での上下昇降を簡略的に表わす全体正面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。
【0032】
本実施例の駐輪装置100は、図25及び図26に示すような上下二段式の駐輪装置であり、上段駐輪機200及び下段駐輪機300を備える。下段駐輪機300は、基準面RPに敷設された1本又は2本のレール301に対し長手方向に交差して載置されるとともに、自転車BCLを搭載する実車状態又は搭載しない空車状態にてレール301に沿って水平姿勢(水平状態)でスライド可能なスライドラック310、320(第一ラック)を有する。上段駐輪機200は、レール301に対しその上方で長手方向に交差して配置されるとともに、スライドラック310、320のスライドによって生じ得るスペースであってレール301から離間した基準面RPに立設された支柱1に沿って実車状態にて水平姿勢で垂直昇降可能な昇降ラック12(第二ラック)を有する。ここでのスライドラック310、320は1本のレール301に対し複数配置され、各々がレール301に沿ってスライド可能である。また、支柱1は、レール301に沿って広がるスライドラック310、320のスライド領域よりもやや前方(奥側)の基準面RP上に所定のピッチで複数立設され、それら支柱1に対応して昇降ラック12が配置され、各々が水平姿勢で垂直昇降可能である。
【0033】
まずは、上段駐輪機200について説明する。
【0034】
上段駐輪機200は、図1に示すように、1の支柱1に対し自転車BCLを1台搬入保管する1の昇降ラック12を対応させる形で構成される。駐輪装置100は、複数の上段駐輪機200を有し、駐輪場において上段駐輪機200は所定方向に複数並んだ形で立設される(図25及び図26参照)。
【0035】
図1に示す上段駐輪機200は、倒立収納、すなわち自転車BCLが搭載されない空車状態の昇降ラック12を倒立姿勢(倒立状態)で収納する(図7参照)機能を実現するための基本構成である回転スライダクランク機構10と、その各部を駆動するための手段である台車昇降機構20(牽引力付与機構)及びラック回動機構30(モーメント付与機構)と、その各部の作動を規制するための手段である台車ロック機構40(下段ストップ機構)、スライダロック機構50(回動ストップ機構)及びラックロック機構60(移動ストップ機構)とを備えている。
【0036】
図1図2に示すように、回転スライダクランク機構10は、固定リンクとして機能する台車11(ベース体)と、回転駆動リンクとして機能する昇降ラック12(第二ラック)と、回転従動リンクとして機能するブレース13(サイドガード)とを有し、正面視で(すなわち昇降ラック12の幅方向から見て)剛体構造の三角形状に形成される。
【0037】
台車11(ベース体)は、支柱1の下段位置と上段位置との間で実車状態の昇降ラック12を保持して昇降可能に配置されるとともに、空車状態の昇降ラック12を長手方向の一端部側である基端部に位置する幅方向の回転軸線C120(ラック回転軸線)周りで上向き回動して水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更可能に軸支する。
【0038】
ここでの台車11は、上下方向に筒状形態で立設された支柱1に沿って一定の高さを有し、台車昇降機構20により牽引力を付与されて、支柱1の下段位置と上段位置との間でローラ111(図3参照)により昇降可能に配置される(詳しくは後述する)。また、台車11は台車ロック機構40により下段位置において支柱1にロックされ(詳しくは後述する)、回転スライダクランク機構10においては固定リンクとして機能する。
【0039】
昇降ラック12(第二ラック)は、台車11の下部に対し前端部(基端部)が幅方向の回転軸120(回転軸線C120)を中心に回転可能に支持されて長手方向に樋形状で片持ち状に延び、先端(後端)に自転車BCLを搬出入するための出入口123が形成される。ラック回動機構30により空車状態において前端部に回転軸120を中心とするモーメントを付与されて、下段位置にある台車11に対して水平姿勢から支柱1に沿う倒立姿勢へ回転可能に配置され(詳しくは後述する)、回転スライダクランク機構10においては回転駆動リンクとして機能する。さらに、ラックロック機構60により昇降ラック12は支柱1に係止可能である(詳しくは後述する)。
【0040】
ブレース13(サイドガード)は、台車11が下段位置にあって水平姿勢の昇降ラック12に搬出入される自転車BCLの横揺れ振動であるローリング運動を阻止又は抑制するために昇降ラック12の幅方向両側に配置される。ブレース13自身の一端部が台車11の上部に対し幅方向の揺動軸線C131周りで揺動可能に軸支される一方、その他端部は昇降ラック12の回転軸線C120(ラック回転軸線)と後述する連係機構70の回転軸線C170(把手回転軸線)との間に長手方向に沿って一体形成された長孔121(ラックガイド部)に対しスライド移動可能に係合支持される軸状のスライドピン131(スライダ)を形成することにより、台車11と昇降ラック12との間に掛け渡される。
【0041】
ここでのブレース13は、昇降ラック12の幅方向両側に一対配置され、左ブレース13L、右ブレース13R(図3図4参照)はそれぞれの一端部(図1~4では上端部)が台車11の上部に対し、幅方向の揺動軸130(揺動軸線)を中心に揺動可能に支持される。一方、左右のブレース13L、13Rの他端部(図1~4では下端部)は、昇降ラック12の中途部であって後端部(先端部)寄りに固定された板状部材122の長手方向に沿って一体形成された長孔121(ラックガイド部)に対し、下段位置の空車状態においてスライド移動可能に係合支持されるスライドピン131(スライダ)を形成し、回転スライダクランク機構10においては回転従動リンクとして機能する。また、ブレース13は台車11と昇降ラック12との間に斜め交差状に掛け渡された左右一対の筋交いであり、下段位置において水平姿勢の昇降ラック12に搬出入される自転車BCLの横揺れ振動(すなわち左右傾動)であるローリング運動を阻止又は抑制し、あるいは搭載自転車BCLの落下を防止する。さらに、スライダロック機構50により長孔121に対するスライドピン131のスライド移動はロック可能である(詳しくは後述する)。
【0042】
つまり、支柱1の下段位置において、台車11、昇降ラック12及びブレース13は、正面視で台車11と昇降ラック12とがほぼ直角に交差しブレース13が斜辺をなす疑似的な直角三角形状の剛体構造を有する。厳密に表現すれば、回転軸心C120及び揺動軸心C130を結ぶ直線と、回転軸心C120及びスライダ中心C131を結ぶ直線とがほぼ直角に交差する疑似直角三角形が形成されている。このように、昇降ラック12とブレース13とがスライドピン131(スライダ)を介してクランク運動する回転スライダクランク機構10が構成されている。よって、空車状態にて水平姿勢である昇降ラック12の基端部にモーメントを付与することにより、スライドピン131(スライダ)が長孔121内(ラックガイド部)で長手方向に沿ってスライド移動しながら、昇降ラック12及びブレース13が台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立姿勢で収納される。そして、この倒立姿勢において昇降ラック12は正面視で台車11及びブレース13と重なり合って収納されている(図7参照)。
【0043】
このような回転スライダクランク機構10を用いることにより、上段駐輪機200の倒立収納構造においてコンパクト化を実現することができる。また、台車11、昇降ラック12及びブレース13によって各辺が剛性を有する堅牢な三角形状に形成され、昇降ラック12及びブレース13が倒立姿勢で収納される際に折れ曲がり部やたるみ部を生じることがない。
【0044】
本実施例の回転スライダクランク機構10において、回転駆動リンクとしての昇降ラック12は水平姿勢から支柱1に沿う倒立姿勢まで約90°の回転角(1/4回転)の範囲でのみ作動する(図7参照)から、「1/4回転スライダクランク機構」と称することもできる。
【0045】
なお、一般的に「回転スライダクランク機構」で構成される構造体の例(例えば星型ロータリエンジン)に倣えば、また機構名の呼称に照らしても、ブレース13のスライドピン131が回転駆動リンク(原動節)になるのが通常であるが、本実施例では構成部材の強度を考慮して昇降ラック12(の長孔121)を回転駆動リンクとしている。
【0046】
斜辺をなすブレース13の高位置側端部近傍(すなわち支柱1寄り)であって正面視で車輪受け44(後述する)と揺動軸130との間には、ラック搭載自転車BCLの前輪FW(先行搬入車輪)を保持するタイヤガード132が、ブレース13から直立状に起立するとともに起伏自在に設けられている。タイヤガード132は、一方のブレース(例えば左ブレース13L)から上向きに突出し前輪FWのタイヤを迂回して他方のブレース(例えば右ブレース13R)に至る逆U字形状に形成され、下段位置において水平姿勢の昇降ラック12に自転車BCLを搬入する際に前輪FWの両側を上方から跨いで内側に保持する(図11参照)。このように、昇降ラック12に自転車BCLが搬入されるとき、タイヤガード132は前輪FWのタイヤを内側に保持するタイヤホルダとして機能する。
【0047】
起立付勢ばね133がブレース13とタイヤガード132との間に架設され、ブレース13に対してタイヤガード132を常時直立状に起立する姿勢に保持している。空車状態の昇降ラック12及びブレース13が上向きに回動して倒立姿勢に至る過程において、タイヤガード132の上端部は支柱1と接触し、起立付勢ばね133の付勢力に抗して支柱1に沿うように徐々に姿勢変更し、正面視で昇降ラック12や支柱1と重なり合って収納される(図7参照)。このように、空車状態となった昇降ラック12が倒立姿勢となって収納されるときには、タイヤガード132は支柱1と接触して徐々に折り畳み収納される収納ガイドとして機能する。
【0048】
図1に戻り、台車昇降機構20の主要部をなす昇降用ガススプリング21は、その基端部が支柱1内の上端部に取り付けられ、下向きに突出するピストンロッド21Rの先端部(下端部)には動滑車22が取り付けられる。また、支柱1内の上端部には定滑車23も取り付けられる。支柱1内の所定位置に連結ワイヤ24の一端が固定され、動滑車22、定滑車23の順に巻回された後、他端が台車11の上端面に固定される。ピストンロッド21Rの退入(収縮)時に昇降ラック12は台車11とともに下段位置にあり、自転車BCLの搬入により実車状態となる(図11参照)。ピストンロッド21Rの突出(伸長)により昇降ラック12が台車11とともに上段位置に上昇して自転車BCLを保管する(図13参照)。
【0049】
図1図2に示すように、ラック回動機構30は主として回動用ガススプリング31で構成され、その基端部が台車11の上端部に取り付けられる一方、ピストンロッド31Rの先端部が昇降ラック12の前端部に取り付けられる。ピストンロッド31Rの押出力は、ピストンロッド31Rの先端部取付位置と回転軸心C120との水平方向離間距離を腕の長さとするモーメントを生じる。ピストンロッド31Rの退入(縮小)時には昇降ラック12が水平姿勢に維持される(図5参照)。一方、ピストンロッド31Rの突出(伸長)時には昇降ラック12及びブレース13が台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立姿勢で収納される(図7参照)。
【0050】
ところで、台車昇降機構20の昇降用ガススプリング21は、台車11、昇降ラック12、ブレース13及びラック搭載自転車BCLの合計荷重に対応する牽引力で台車11を常時上方に引き上げるように作用する。また、ラック回動機構30の回動用ガススプリング31は、昇降ラック12及びブレース13の合計荷重に対応するモーメントで昇降ラック12の前端部を常時倒立姿勢に収納するように作用する。
【0051】
図1図2に示す台車ロック機構40は、台車11が下段位置にあるとき、空車状態においては支柱1に対し昇降用ガススプリング21の牽引力に基づく台車11の昇降が不能となるようにロック作動し(図3参照)、実車状態においては昇降が可能となるようにロック解除する(図12参照)ように作用する。
【0052】
具体的には図3に示すように、台車11に配置された幅方向の支軸42にロックアーム41が揺動可能に取り付けられ、ロックアーム41の下端部はL字状に前方に屈曲して係止爪412が形成される。係止爪412は支柱1の下段位置に形成されたアーム係合部2に係合可能であり、台車11とロックアーム41の上端部との間にはアーム付勢ばね43が配置され、係止爪412がアーム係合部2と係合する方向(前方側)に常時付勢する。なお、係止爪412の後部には突起411が下向きに突出形成されている。
【0053】
また、昇降ラック12の前端部寄りには、搬入自転車BCLの前輪FW(先行搬入車輪)を受け止めるための車輪受け44が前後揺動可能に配置される。車輪受け44は前後方向に延びる延長ロッド45に接続されるとともに、延長ロッド45は車輪受け44と昇降ラック12との間に配置されたロッド付勢ばね46により常時前方に付勢される。延長ロッド45の前端部は幅方向にL字状に屈曲して引掛部451が形成され、引掛部451はロックアーム41の下端部に形成された突起411の周囲を取り囲み前方に位置している。
【0054】
図3に示すように、昇降ラック12が空車状態すなわち車輪受け44に前輪FWが載っていないとき、ロッド付勢ばね46の付勢力により車輪受け44は後傾し延長ロッド45は前進するので、引掛部451は突起411よりも前方に位置する。ロックアーム41の下端部はアーム付勢ばね43により前方側に付勢され、係止爪412はアーム係合部2と係合してロックされる。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降不能となるようにロック作動する。
【0055】
一方、図12に示すように、昇降ラック12が実車状態すなわち車輪受け44に前輪FWが載ったとき、車輪受け44はロッド付勢ばね46の付勢力に抗して前傾し延長ロッド45を後退させるので、引掛部451は突起411と係合して後方に引き寄せる。ロックアーム41の係止爪412はアーム付勢ばね43及びロッド付勢ばね46の合計付勢力に抗して後方側に回動し、アーム係合部2との係合が解除される。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降可能となるようにロック解除する。
【0056】
なお、図9に示すように、昇降ラック12が倒立姿勢に収納されるとき、すなわち昇降ラック12が回転軸120を中心に回転するとき、引掛部451は突起411の外側を回って次第に遠ざかることになる。ロックアーム41の下端部はアーム付勢ばね43により前方側に付勢され、係止爪412はアーム係合部2と係合してロックされる。つまり、台車ロック機構40は、台車11が支柱1に対して昇降不能となるようにロック作動する。
【0057】
図1図2に戻り、スライダロック機構50は、台車11が下段位置にあり昇降ラック12が水平姿勢であるとき、昇降ラック12の台車11に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに人為的に又は機械的に切換えられる。ここでは、長孔121に対するスライドピン131のスライド移動を禁止することによって、台車11に対し回動用ガススプリング31によるモーメントに基づく昇降ラック12及びブレース13の上向き回動が不能となるようにロック作動する一方(図4参照)、スライドピン131のスライド移動を許可することによって、昇降ラック12及びブレース13の上向き回動が可能となるようにロック解除する(図6参照)。
【0058】
また、ラックロック機構60は、下段位置又は上段位置において、昇降ラック12を支柱1に係止して移動を不能とするロック作動態様(図4又は図15参照)と、係止を解いて移動を可能とするロック解除態様(図6参照)とに切換えられる。ラックロック機構60におけるロック作動態様とロック解除態様との切換えは、昇降ラック12の出入口123に配置されるとともに、空車状態の検知手段と人為的な操作手段とを兼用する作動部材64の作動に基づいて行われ、スライダロック機構50のロック作動及びロック解除と相互に連動して同時に実行される(図4図6参照)。
【0059】
具体的には図4に示すように、支柱1の下段位置には下へ行くほど後方側への突出量が大きくなる下段係合部4が形成され、昇降ラック12の下方にはストッパ付勢ばね62によって常時支柱側(前方側)に付勢されたラックストッパ61は昇降ラック12に沿って長手方向へ延びる連結ロッド63を介し、空車状態の検知手段と人為的な操作手段とを兼用する形で出入口123に設けられた、作動部材64に連結される。
【0060】
昇降ラック12に支持板124が固定され、支持板124に配置された幅方向の回動軸52を中心として回動ロック板51の一端部が回動可能に設けられる。回動ロック板51の他端部には下向きに開口する切欠を含むロック爪511が形成され、ロック爪511の切欠はスライドピン131に上方から嵌合可能である。回動軸52とロック爪511との中間には、長孔121の長軸配置方向(すなわち水平方向)に対して交差する方向に傾斜長孔513が形成され、連結ロッド63から幅方向に突出形成された操作ピン53が傾斜長孔513に挿入される。回動ロック板51のロック爪511よりさらに先端部には、傾斜長孔513とは異なる方向に傾く斜面部512が形成される。
【0061】
図4に示すように、台車11が下段位置にあり、昇降ラック12が水平姿勢であるとき、作動部材64が作動せず連結ロッド63が引かれない場合には、ラックストッパ61はストッパ付勢ばね62により前方側に付勢され、下段係合部4に乗り上げた後下側に係止される。つまり、ラックロック機構60は、昇降ラック12を支柱1に係止して移動不能となるようにロック作動する。また、操作ピン53は傾斜長孔513の前端部側にあり回動ロック板51を回動させないので、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックし、昇降ラック12及びブレース13の上向き回動が不能となるようにロック作動する。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を禁止し、倒立収納が不能となるようにロック作動する。
【0062】
一方、図6に示すように、台車11が下段位置にあり、昇降ラック12が水平姿勢であるとき、作動部材64が作動し連結ロッド63が引かれる場合には、ラックストッパ61はストッパ付勢ばね62に抗して後方側に移動し、下段係合部4との係止が解かれる。つまり、ラックロック機構60は、昇降ラック12の支柱1に対する係止を解いて移動可能となるようにロック解除する。また、操作ピン53が傾斜長孔513の後方側に移動し回動ロック板51を上方回動させ、ロック爪511の切欠とスライドピン131との嵌合が解かれてスライド移動が許可され、昇降ラック12及びブレース13の上向き回動が可能となるようにロック解除する。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を許可し、倒立収納が可能となるようにロック解除する。
【0063】
なお、昇降ラック12が倒立姿勢に収納されるとき、すなわち昇降ラック12が回転軸120を中心に回転するとき、ラックストッパ61は下段係合部4から次第に遠ざかることになる。つまり、ラックロック機構60は、昇降ラック12の支柱1に対する係止を解いて移動可能となるようにロック解除を維持する。また、図8に示すように、スライドピン131は回動ロック板51とは無関係に長孔121内をスライド移動可能になる。つまり、スライダロック機構50は、スライドピン131のスライド移動を許可し、倒立収納が可能となるようにロック解除を維持する。
【0064】
さらに、昇降ラック12が倒立姿勢から水平姿勢に復帰するときには、倒立姿勢への収納と逆方向に移行することにより、ラックストッパ61は下段係合部4に係止され、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする。その際、図8の矢印と逆方向にスライドピン131が長孔121内をスライド移動するとき、スライドピン131はロック爪511の斜面部512に潜り込んで回動軸52を中心に回動ロック板51を上向きに回動させ、ロック爪511の切欠がスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする。
【0065】
このようにして、台車11が下段位置にあり、自転車BCLの搬出に伴い水平姿勢の昇降ラック12が空車状態になったとき(図5参照)、台車ロック機構40は支柱1に対する台車11の昇降が不能となるようにロック作動するとともに(図3参照)、スライダロック機構50が長孔121に対するスライドピン131のスライド移動を許可し、かつラックロック機構60が支柱1に対する昇降ラック12の係止を解いて移動を可能とするように、相互に連動して同時にロック解除することによって(図6参照)、回動用ガススプリング31によるモーメントに基づき昇降ラック12及びブレース13が台車11に対し上向きに回動して支柱1に沿う倒立姿勢で収納される(図7参照)。
【0066】
さらに、作動部材64の人為的操作により昇降ラック12が倒立姿勢から水平姿勢に復帰操作される際に、スライダロック機構50による、長孔121に対するスライドピン131のロック作動と、ラックロック機構60による、支柱1に対する昇降ラック12の係止ロック作動とが相互に連動して実行される(図10参照)。
【0067】
このように、自転車BCLが搬出され空車状態となった昇降ラック12及びブレース13は、倒立姿勢で収納されるまでの間折れ曲がりやたるみを生じることなく、回転スライダクランク機構10を構成する回転駆動リンク及び回転従動リンクとして剛体構造を保つことができる。よって、強度や耐久性に優れるとともに堅牢なラック収納構造を備え、軽量級から重量級まで各種の自転車を安全確実に保管・管理できる上段駐輪機200とすることができる。
【0068】
さらに、下段位置において昇降ラック12から自転車BCLを搬出して空車状態となった昇降ラック12は倒立姿勢に自動収納され、下段位置において昇降ラック12に自転車BCLを搬入して実車状態となった昇降ラック12は上段位置で保管・管理される。よって、倒立収納タイプの上段駐輪機200において、自転車BCLの搬出作業及び搬入作業がいずれも下段位置において行われるので、作業負担が軽減され誤操作も生じにくくなる。
【0069】
また、上段駐輪機200は、既に述べた昇降ラック12からの自転車BCLの搬出終了を検知する作動部材64(搬出検知手段)と共に、可動把手7と、連係機構70と、を備える。
【0070】
可動把手7は、図2に示すように、昇降ラック12(第二ラック)に対し長手方向の他端部側である先端部に位置する幅方向の回転軸線C170(把手回転軸線)周りで軸支され、昇降ラック12の底面12bに沿うように退避する退避姿勢と昇降ラック12の底面12bから突出する突出姿勢との間を揺動可能に構成される。
【0071】
ここでの可動把手7には、ブレース13のスライドピン131(スライダ)をスライド移動可能に係合支持する把手ガイド部としてのアーム71、72が一体形成される。アーム71、72は、昇降ラック12に固定された幅方向の把手回転軸170(把手回転軸線C170)を中心に回転可能に支持されており、先端には把手部73が設けられている。
【0072】
具体的にいえば、可動把手7は、図22に示すように、昇降ラック12の幅方向の一方側(ここでは図22の右側)に組み付けられており、図21に示す昇降ラック12の倒立姿勢においては、長手アーム71が下側、短手アーム72が上側に位置して互いに対向する形で、水平方向(やや斜め下方)に向けて直線状に突出する。長手アーム71は、短手アーム72よりも長く直線状に延び、その先で斜め下方へと折れ曲がってさらに直線状に延びる。その先端は、昇降ラック12に対し幅方向の一方側(図22の右側)から他方側(ここでは左側)へと屈曲する形で水平方向に延びており、その延びた部分に把手部73が形成されている。長手アーム71及び短手アーム72は、それぞれが断面が円形の棒状部材からなり、図2に示すように、それらの基端側で取付部材74によって一体に固定されている。取付部材74は、昇降ラック12に対しその前方側に固定された支持部材75を貫通する幅方向の把手回転軸170を中心に回転可能に組み付けられる。
【0073】
連係機構70は、昇降ラック12(第二ラック)に関して水平姿勢から倒立姿勢に至る可逆的な姿勢変更(図7図10)と、可動把手7に関して退避姿勢から突出姿勢に至る可逆的な姿勢変更(図17図21)と、を互いに関連付けて同時進行させる。即ち、台車11が下段位置にあり昇降ラック12が自転車BCLの搬出により空車状態にて水平姿勢となる場合、作動部材64(搬出検知手段)の自転車搬出終了の検知に基づきスライダロック機構50(回動ストップ機構)がロック作動状態(図4)からロック解除状態(図6)に切換えられて昇降ラック12が水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更(図7)するが、その姿勢変更の際に、連係機構70を介して可動把手7も退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更(図17図21)し、昇降ラック12が倒立姿勢で静止すると可動把手7が突出姿勢で静止する(図21)。逆に、台車11が下段位置にあり昇降ラック12が空車状態にて倒立姿勢である場合、可動把手7が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際に(図21図17)、連係機構70を介して昇降ラック12も倒立姿勢から水平姿勢へ姿勢変更(図10)し、可動把手7が退避姿勢で静止すると昇降ラック12が水平姿勢で静止する(図17)。さらに昇降ラック12が水平姿勢となった際に、スライダロック機構50(回動ストップ機構)もロック解除状態(図6)からロック作動状態(図4)に切換えられて、昇降ラック12への自転車BCLの搬入が可能な状態となる。
【0074】
ここでの連係機構70は、図2に示すように、ブレース13(サイドガード)の他端部に形成されたスライドピン131(スライダ)と、昇降ラック12に一体形成された長孔121(ラックガイド部)と、可動把手7に一体形成された把手ガイド部としてのアーム71、72と、を有する。スライドピン131は長孔121(ラックガイド部)及びアーム71、72(把手ガイド部)に同時に係合支持され、昇降ラック12の姿勢変更及び可動把手7の姿勢変更はスライドピン131(スライダ)のスライド移動と連動する。スライダロック機構50(回動ストップ機構)のロック作動状態はスライドピン131(スライダ)のスライド移動をロックすることにより達成されるから、このスライドピン131(スライダ)のロックにより、スライダロック機構50(回動ストップ機構)がロック作動状態となって昇降ラック12の姿勢変更が阻止されると同時に、昇降ラック12と連係する可動把手7の姿勢変更も阻止される。
【0075】
具体的にいえば、連係機構70は、昇降ラック12の倒立姿勢において、図21に示すように、長手アーム71と短手アーム72との対向間に拘束されたスライドピン131が短手アーム72を下支えする形で可動把手7を係合支持している。これにより、可動把手7(アーム71、72)は、支柱1に接近する側に向けて略水平に突出した突出姿勢に維持される。一方、スライドピン131は長孔121にも係合支持されており、倒立姿勢の昇降ラック12が回動して水平姿勢への移行を開始すると、これに連動してスライドピン131が長孔121内をスライド移動していく。このとき、可動把手7は、スライドピン131が長手アーム71と短手アーム72との対向間に拘束され、かつ短手アーム72を下支えする係合状態を継続する形で、揺動が進んでいく(図21図20)。さらに昇降ラック12の回動が進むと、これに連動してスライドピン131の長孔121内のスライド移動も進み、長手アーム71と短手アーム72がスライドピン131の直下を支柱1に接近する側へと通過する形で可動把手7の揺動が進む(図20図19)。その途中、図19に示すように、可動把手7は、スライドピン131が短手アーム72に代わって長手アーム71を下支えする係合状態へと移行する。さらにいえば図19の段階で長手アーム71と短手アーム72との対向間に拘束されていたスライドピン131の、短手アーム72側の拘束が無くなり、可動把手7はスライドピン131が長手アーム71を下支えするだけの係合状態となる。この先は、昇降ラック12の回動が進むに伴い、長手アーム71が下支えするだけの係合状態を継続する形で可動把手7の揺動が進む(図19図17)。昇降ラック12が水平姿勢になると、図17に示すように、スライドピン131が長手アーム71を下支えした係合状態となり、可動把手7は、昇降ラック12と同様、支柱1から離れる側に向けて略水平に延びる退避姿勢に維持される。
【0076】
なお、連係機構70は、昇降ラック12及び可動把手7の動きを互いに連動させる形で双方を可逆的に生じさせる。このため、上述した昇降ラック12の倒立姿勢から水平姿勢への回動動作(図10)とそのときの可動把手7の揺動動作(図21図17)を逆向きにトレースする形で、昇降ラック12が水平姿勢から倒立姿勢へ移行する回動動作(図7)とそのときの可動把手7の揺動動作(図17図21)は進行する。
【0077】
上段駐輪機200の作動について、操作の順序に沿って概略を説明する。
【0078】
<下段位置、水平姿勢のラックから自転車の搬出途中>(図1図17
図1に示すように、前輪FWが車輪受け44よりも後方で作動部材64よりも前方にあり、自転車BCLは搬出の途中にある。
車輪受け44(第一検知手段)が搬出終了すなわち空車状態を検知し、係止爪412がアーム係合部2と係合し、台車11は支柱1にロックされる(台車ロック機構40:図3)。前輪FWは作動部材64(第二検知手段、搬出検知手段)に接触せず、搬出終了(空車状態)とは検知されないため、ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、昇降ラック12は支柱1に係止ロックされる(ラックロック機構60:図4)。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、昇降ラック12の倒立収納は阻止される(スライダロック機構50:図4)。
可動把手7は、スライドピン131上に長手アーム71が載置されただけの係合状態にあり、退避姿勢に維持される(連係機構70:図17)。長手アーム71の先端の把手部73は、昇降ラック12の下側に回り込む形で昇降ラック12に対し近接している。
【0079】
<ラックから自転車の搬出終了直前>(図5図17
図5に示すように、自転車BCLの後輪RWが先行して昇降ラック12を離脱し、前輪FWが作動部材64に接触している。
車輪受け44(第一検知手段)はすでに空車状態を検知しているので、台車11は支柱1にロックされる状態を継続する(台車ロック機構40:図3)。前輪FWにより作動部材64(第二検知手段、搬出検知手段)が作動し、ラックストッパ61は下段係合部4から離脱して、昇降ラック12と支柱1との係止が解かれる(ラックロック機構60:図6)。また、ロック爪511の切欠とスライドピン131との嵌合が解かれ、スライド移動が許可されるので、昇降ラック12の倒立収納が可能となる(スライダロック機構50:図6)。
可動把手7は、昇降ラック12が水平姿勢のままであるから退避姿勢のままで変化はない(連係機構70:図17)。
【0080】
<ラックの自動倒立収納>(図7図17図21
図7に示すように、下段位置、空車状態の昇降ラック12が回動用ガススプリング31の付勢力によって自動的に回転することにより、水平姿勢から倒立姿勢に移行して倒立収納状態とされる。このときの昇降ラック12の回転は図5の前輪FW(先行搬入車輪)が作動部材64から離れるに伴い自動的に発生する。
このとき、ロックアーム41の係止爪412はアーム係合部2との係合が維持され、台車11は支柱1にロックされる(台車ロック機構40:図9)。また、昇降ラック12が回転してことでラックストッパ61も回転し、昇降ラック12と支柱1との係止が不可となる(ラックロック機構60:図7)。スライドピン131は長孔121内をスライド移動できる(スライダロック機構50:図8)。タイヤガード132も支柱1に沿って収納される。
可動把手7は、回動する昇降ラック12に対し把手回転軸170を支点にして回転する(連係機構70:図17図18図19図20図21)。可動把手7は、スライドピン131が長手アーム71を下支えする係合によって退避姿勢に維持された状態(図17)から、スライドピン131が長手アーム71と短手アーム72との対向間に拘束され、かつスライドピン131が短手アーム72を下支えする係合によって突出姿勢に維持された状態(図21)となる。このように可動把手7は、回動する昇降ラック12に対してはほぼ90°回転し、不動の支柱1に対してはほぼ180°回転する。
【0081】
<ラックの姿勢変更途中>(図17図21
図17図21に示す昇降ラック12の水平姿勢から倒立姿勢へ、もしくは倒立姿勢から水平姿勢への姿勢変更途中において、昇降ラック12と可動把手7とは、少なくともいずれか一方に関する姿勢変更を人為的に操作することにより、連係機構70を介して他方に関する姿勢変更と連係させることが可能である。具体的には、以下のような連係操作が可能である。
・両者を同じ方向(順方向又は逆方向)に同時操作可能
・一方を順方向又は逆方向操作中に中断し、他方に持ち替えて同方向に操作可能(例えば、上記したように、可動把手7を突出姿勢から退避姿勢に至る操作途中で持ち替えた昇降ラック12を倒立姿勢から水平姿勢に操作)
・一方を順方向又は逆方向操作中に中断・停止した後、再び一方を同方向に操作可能
・一方を順方向又は逆方向操作中に中断し、その後一方をそれまでとは逆の方向に戻り操作可能
・一方を順方向又は逆方向操作中に中断し、他方に持ち替えてそれまでとは逆の方向に戻り操作可能
【0082】
<ラックの倒立姿勢から水平姿勢への復帰>(図10図21図17
図10に示すように、把手部73を把持して倒立姿勢の昇降ラック12の回転を開始させ、水平姿勢に復帰させる。
これにより、下段係合部4にラックストッパ61が捕捉され、昇降ラック12は支柱1に係止ロックされる(ラックロック機構60:図4)。ロックアーム41の係止爪412はアーム係合部2との係合が維持され、台車11は支柱1にロックされる(台車ロック機構40:図9図3)。スライドピン131は斜面部512(回動ロック板51)を上向きに回動させ、ロック爪511の切欠がスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックする(スライダロック機構50:図8図4)。タイヤガード132も起立状態に復帰する。
可動把手7は、回動する昇降ラック12に対し把手回転軸170を支点にして回転する(連係機構70:図21図20図19図18図17)。可動把手7は、スライドピン131が長手アーム71と短手アーム72との対向間に拘束され、かつスライドピン131が短手アーム72を下支えする係合によって突出姿勢に維持された状態(図21)から、スライドピン131が長手アーム71を下支えする係合によって退避姿勢に維持された状態(図17)となる。このように可動把手7は、回動する昇降ラック12に対してはほぼ90°回転し、不動の支柱1に対してはほぼ180°回転する。
【0083】
<自転車の搬入終了>(図11図17
図11は、下段位置、水平姿勢の昇降ラック12へ自転車BCLの搬入を終了した状態を示す。
前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(台車ロック機構40:図12)。ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、昇降ラック12は支柱1に係止ロックされる(ラックロック機構60:図4)。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、昇降ラック12の倒立収納は阻止される(スライダロック機構50:図4)。
可動把手7は、昇降ラック12が水平姿勢のままであるから退避姿勢のままで変化はない(連係機構70:図17)。
【0084】
<自転車の上段位置保管>(図13図17
図13は、自転車BCLを搬入した昇降ラック12を上段位置で保管する状態を示す。
前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2(図3参照)との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(台車ロック機構40:図14)。ラックストッパ61は上部係合部3に捕捉され、昇降ラック12は支柱1に係止ロックされる(ラックロック機構60:図15)。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、昇降ラック12の倒立収納は阻止される(スライダロック機構50:図15)。
可動把手7は、昇降ラック12が水平姿勢のままであるから退避姿勢のままで変化はない(連係機構70:図17)。昇降ラック12が水平姿勢のままであれば、昇降ラック12が実車状態及び空車状態のいずれにあっても、台車11が下段位置及び上段位置のいずれにあっても、可動把手7は退避姿勢に維持される。
【0085】
<自転車の下段位置搬出直前>(図16図17
図16は、下段位置、水平姿勢の昇降ラック12から自転車BCLの搬出直前の状態を示す。
前輪FWが車輪受け44に載置されることによりロックアーム41の係止爪412とアーム係合部2との係合が解除され、台車11は支柱1に対して昇降可能となる(台車ロック機構40:図12)。ラックストッパ61は下段係合部4に捕捉され、昇降ラック12は支柱1に係止ロックされる(ラックロック機構60:図4)。また、ロック爪511の切欠はスライドピン131に嵌合してスライド移動をロックするので、昇降ラック12の倒立収納は阻止される(スライダロック機構50:図4)。
可動把手7は、昇降ラック12が水平姿勢のままであるから退避姿勢のままで変化はない(連係機構70:図17)。
【0086】
次に、連係機構70による可動把手7の収納について説明する。
【0087】
可動把手7は、昇降ラック12が倒立姿勢にあるときの突出姿勢(図21)と、昇降ラック12が水平姿勢にあるときの退避姿勢(図17)との間で切り替わる。ところが、連係機構70において、可動把手7が突出姿勢から退避姿勢へ姿勢変更する際の変更範囲の一部(ここでは後半部分:図19図17)では、スライドピン131(スライダ)とアーム71、72(把手ガイド部)との係合が解除可能である。この係合解除により、可動把手7は、昇降ラック12が倒立姿勢にあるときでも昇降ラック12に沿う退避姿勢のままとされた収納状態とすることができる。
【0088】
具体的には、可動把手7は、例えば図23に示すように昇降ラック12を倒立姿勢から水平姿勢へ回動させる途中、地表面RPからの回転角度が所定回転角度(ここでは約40°)となったときに、図24の左下に示すように、スライドピン131が長手アーム71と短手アーム72との対向間に挟まれた拘束状態から、挟まれない非拘束状態(係合解除状態)となる。この非拘束状態となったとき、人為操作(係合解除操作)によって可動把手7の先端側を上方に持ち上げることが可能になる。そして、この非拘束状態の昇降ラック12を再び倒立姿勢へと回転させるときに、可動把手7を持ち上げ、スライドピン131を長手アーム71と短手アーム72との対向間ではなく、図24の中央に示すように短手アーム72の下側を通過させることで、上記拘束状態を避けることができる。その後、非拘束状態となった昇降ラック12は、自重により下方に垂れ下がった状態となり、昇降ラック12が倒立姿勢に戻ったときには、図24の右上に示すように、可動把手7は、その昇降ラック12に対し長さ方向とほぼ一致する向きに垂れ下がって延びる退避姿勢(把手収納状態)となる。
【0089】
多数の上段駐輪機200を梱包・運搬する場合、昇降ラック12を倒立姿勢とした形で各支柱1を横倒しにして重ね、車両に収容することになる。このとき、可動把手7を退避姿勢(収納状態)にしておくことで、各上段駐輪機200が突起部位の無い柱状形態になるから、多数であっても車両に収容しやすい。
【0090】
最後に、下段駐輪機300について説明する。
【0091】
下段駐輪機300は、図25及び図26に示すように、支柱1の後方側で地表面RPに固定されて所定方向に延びるレール301と、レール301にガイドされる形で上記所定方向に移動可能な複数のスライドラック310、320と、を有する。
【0092】
各スライドラック310、320には、図27及び図28に示すように、幅方向両側に対をなして配置される固定ブレース(サイドガード)313、323と、ラック搭載自転車BCLの前輪FW(先行搬入車輪)を保持する固定タイヤガード314、324と、が各スライドラック310、320に対し固定的に設けられている。スライドラック310、320は、搬入される自転車BCLが前方側(支柱1側)に偏って位置する第一スライドラック310と、それよりも後方側に所定幅ずれて位置する第二スライドラック320と、が上記所定方向において交互に配置されている(図25)。また、各スライドラック310、320は、前方側でレール301上を転がる前方側ローラ311、321と、後方側で地表面RP上を転がる後方側ローラ312、322と、を有する。
【0093】
レール301は、図27及び図28に示すように、支柱1の並び方向に沿って、それら支柱1の後方側に所定幅Sの領域を挟んだ位置に設けられる。従来、倒立姿勢の昇降ラック12を水平姿勢に回動させるための把手部は、昇降ラック12の底面12b付近に設けられており、この把手部をつかむためにはレール301をまたいで、上記所定幅Sの領域内に進入しなければならず、その際に地表面RP上に突出するレール301につまづく惧れがあった。本実施例では、昇降ラック12が倒立姿勢にあるとき、可動把手7は昇降ラック12からレール301側に突出しているため、把手部73をつかむためにレール301をまたぐ必要が無いため、より容易に倒立姿勢の昇降ラック12を水平姿勢に回動させることができる。
【0094】
下段駐輪機300に駐輪する場合、まずは複数のスライドラック310、320の中から1つを選び、選んだスライドラック310、320上に後方から前方に向けて自転車BCLを搬入する(図27及び図28)。搬入されて保管状態の自転車BCLは、スライドラック310、320上を後方に移動させることによりスライドラック310、320から搬出できる。
【0095】
一方、上段駐輪機200に駐輪する場合、複数並ぶ支柱1の中から1つを選び、選んだ支柱1の手前にスペースを確保するためにその支柱1付近に位置する下段駐輪機300(スライドラック310、320)を左右にスライドさせる(図25図26)。そして、選んだ支柱1に対し倒立収納されている昇降ラック12を回転させて水平姿勢とするために(図26)、ユーザーは昇降ラック12から後方側に突出する可動把手7の把手部73を掴み、倒立姿勢の昇降ラック12を手前側に回転させる(図10)。途中、把手部73から昇降ラック12の後端側へと持ち替えて昇降ラック12を回転させてもよい。水平姿勢となった昇降ラック12には、自転車BCLを搬入することができる(図11)。自転車BCLが搬入された昇降ラック12は、上段位置まで上昇させることができ、上段位置で保管することができる(図13)。上段位置で保管された自転車BCLは、作動部材64を作動させて昇降ラック12を上段位置から下段位置に降下させれば搬出することができ(図11)、搬出が完了すると昇降ラック12は自動的に倒立収納される(図1図5図7)。
【0096】
上記実施例はあくまでも例示にすぎない。本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0097】
以下、他の実施例や変形例について説明する。ただし、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付することで、説明を省略する。なお、上記実施例と下記実施例ないし下記変形例は、技術的な矛盾を生じない領域において適宜組み合わせて実施できる。
【0098】
上記実施例の第一変形例を、図29を用いて説明する。
【0099】
第一変形例の上段駐輪機200では、図29に示すように、可動把手7が長手状の板状部材からなる把手アーム76を有して形成され、その板状の把手アーム76に長手方向側に延びる長孔761(把手ガイド部)が形成されている点で、上記実施例と異なる。その長孔761にはスライド移動可能に係合支持される軸状のスライドピン131(スライダ)が貫通配置されており、可動把手7は、昇降ラック12の回動に伴うスライドピン131のスライド移動に連動して、突出姿勢から退避姿勢、あるいは退避姿勢から突出姿勢へと、上記実施例と同様に姿勢変更できる。この第一変形例では、スライドピン131(スライダ)は長孔761(把手ガイド部)と長孔121(ラックガイド部;図2)と常時係合しており、それらの係合状態が解除されることがなく確実に維持される。
【0100】
なお、第一変形例の把手ガイド部は長孔761として形成されるが、長孔761の周囲の環状壁部が部分的に切り欠かれ、スライドピン131が脱出可能としたならば、上記の係合状態を解除可能とすることができ、解除することで可動把手7を倒立姿勢の昇降ラック12に沿う退避姿勢(把手収納状態)へ姿勢変更することが可能になる。
【0101】
上記実施例の第二変形例を、図30図32を用いて説明する。
【0102】
第二変形例の上段駐輪機200では、図30図32に示すように、連係機構70が存在せず、台車11(ベース体)が下段位置にあり昇降ラック12(第二ラック)が空車状態にて水平姿勢であるとき、昇降ラック12の台車11に対する上向き回動が不能となるロック作動状態と上向き回動が可能となるロック解除状態とに人為的又は機械的(ここでは人為的)に切換えられる回動ストップ機構90と、可動把手7の昇降ラック12に対する姿勢変更が不能となるロック作動状態と姿勢変更が可能となるロック解除状態とに人為操作(ロック作動操作/ロック解除操作)により切換えるための把手ストップ操作機構80と、を備える。そして、台車11が下段位置にあり昇降ラック12が自転車BCLの搬出により空車状態にて水平姿勢となり、かつ可動把手7が退避姿勢である場合(図32)、人為操作(ロック解除操作)により把手ストップ操作機構80がロック解除状態に切換えられ(図32:把手ストップ部材8の実線→破線)、可動把手7が退避姿勢から突出姿勢へ姿勢変更する際に(図31図30)、上記人為操作(ロック解除操作)と同期して回動ストップ機構90がロック解除状態に切換えられ(図32:回動ストップ部材9の実線→破線)、昇降ラック12が水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更することが可能とされている(図31図30)。
【0103】
なお、上記実施例における回動ストップ機構はスライダロック機構50によって構成されているが、第二変形例における回動ストップ機構90はスライダロック機構50とは異なる機構である。
【0104】
可動把手7は、昇降ラック12に設けられた幅方向の把手回転軸177(把手回転軸線C177)の周りを回転可能に支持される把手アーム77と、その先端に設けられる把手部79と、把手アーム77(可動把手7)を突出姿勢に付勢する把手付勢ばね78(把手付勢手段)と、を備える。
【0105】
把手ストップ操作機構80は、昇降ラック12に設けられた幅方向の回転軸81(把手ストップ部材回転軸線C81)と、その周りを回転可能に支持され、可動把手7を退避姿勢で姿勢変更不能(ロック作動状態)に保持可能な把手ストップ部材8と、を備える。把手ストップ部材8は、一端側に可動把手7を退避姿勢で姿勢変更不能(ロック作動状態)に保持するストップ部82が設けられ、他端側に退避姿勢の可動把手7を姿勢変更の可能状態(ロック作動状態:図32の実線)と不能状態(ロック解除状態:図32の破線)とで切換える人為操作(ロック作動操作/ロック解除操作)をするための操作部83が設けられる。また、他端側は、ワイヤ等の連動手段85によって回動ストップ機構90の回動ストップ部材9の他端側と連動状態とされており、把手ストップ部材8のロック動作に回動ストップ部材9が連動する。
【0106】
回動ストップ機構90は、台車11に設けられた上記幅方向の回転軸94(回動ストップ部材回転軸線C94)と、その周りを回転可能に支持される回動ストップ部材9と、を有する。回動ストップ部材9は、一端(符号96)側が連動手段85によって把手ストップ部材8と連動し、他端(符号95)側が水平姿勢の昇降ラック12の基端部底面を係止する形でロック作動状態となって、昇降ラック12を回動不可(姿勢変更不能)とする一方(図32の実線)、回転軸94周りを回転することで係止が解かれてロック解除状態となって、昇降ラック12を回動可能(姿勢変更可能)とする(図32の破線)。
【0107】
第二変形例の上段駐輪機200について、可動把手7、把手ストップ操作機構80、及び回動ストップ機構90の作動について説明する。
【0108】
なお、第二変形例における回転スライダクランク機構10、台車昇降機構20、ラック回動機構30(モーメント付与機構)、台車ロック機構40(下段ストップ機構)、及びラックロック機構60(移動ストップ機構)については、上記の実施例及びその第一変形例と同様に作動するため説明を省略する。
【0109】
空車状態の昇降ラック12が倒立姿勢にあるとき、可動把手7は把手付勢ばね78の付勢力により突出姿勢に維持される(図30の破線)。
【0110】
空車状態の昇降ラック12が倒立姿勢から水平姿勢に姿勢変更するとき、可動把手7は昇降ラック12に対する突出姿勢を維持するが、昇降ラック12が回動していくと先端の把手部79が地表面RPと接触する(図30の実線)。ここでの可動把手7は、把手アーム77が長手方向の途中で屈曲しており、把手部79はローラとして形成されているため、把手部79が地表面RPと接触した状態でさらに昇降ラック12を水平姿勢へと近づけていくと、把手アーム77が把手付勢ばね78の付勢力に抗して把手回転軸177周りを回転し、把手部79が地表面RP上を支柱1側に向かって転がる(図30の実線→図31の破線)。ここでの把手部79はローラとして形成されている。
【0111】
空車状態の昇降ラック12が水平姿勢になったとき、可動把手7は、把手部79が地表面RP上を支柱1側に転がって把手ストップ部材8のストップ部82上に載った退避準備姿勢となる(図31の実線)。ストップ部82における把手部79が載る面は、地表面RPから続く上り勾配の斜面として形成されている。
【0112】
空車状態の昇降ラック12が水平姿勢になったとき、把手ストップ部材8の操作部83を支柱1側に倒す人為操作(ロック作動操作)がなされると、把手ストップ操作機構80は、把手ストップ部材8が回転軸81の周りを回転する形でストップ部82が把手部79を抄い上げ、可動把手7の把手回転軸177周りの逆回転を阻止した状態に維持される(図32の破線→実線)。これにより、可動把手7は、退避準備姿勢から退避姿勢となって姿勢変更不能(ロック作動状態)となる。一方、この人為操作(ロック作動操作)により、回動ストップ機構90は、回動ストップ部材9が把手ストップ部材8と同期してロック作動し、水平姿勢となった昇降ラック12の基端部底面を係止したロック作動状態となり、昇降ラック12が回動不可(姿勢変更不能)となる。これにより、昇降ラック12が自転車搬入可能状態となる。
【0113】
自転車BCLが搬入された昇降ラック12を下段位置から上段位置に上昇させることで、その自転車BCLを上段位置で保管できる(図32の実線→細線)。このときの可動把手7は、把手ストップ部材8によって退避姿勢に維持できる。
【0114】
水平姿勢で下段位置にある昇降ラック12から自転車BCLが搬出されるとき、既に述べた実施例では搬出終了に伴い昇降ラック12は自動的に倒立姿勢に移行したが、ここでは必ずしも自動的には倒立姿勢に移行しない。これは、把手ストップ部材8の操作部83への人為操作(ロック作動操作)によって回動ストップ部材9が昇降ラック12を回動不可(姿勢変更不能)に維持しているからである。このため、昇降ラック12を倒立姿勢に移行させるためには、操作部83を支柱1とは逆側に倒す人為操作(ロック解除操作)をして、昇降ラック12を回動可能(姿勢変更可能)とする必要がある。この人為操作(ロック解除操作)を、自転車BCLを昇降ラック12から搬出する前にしておくことで、自転車BCLを昇降ラック12から搬出することで自動的に昇降ラック12を水平姿勢から倒立姿勢へと姿勢変更することができる。
【0115】
一方、この人為操作(ロック解除操作)をすることにより、把手ストップ部材8が回転軸81の周りを回転し、可動把手7が退避姿勢から退避準備姿勢へと戻る。これにより、可動把手7は姿勢変更可能になり、昇降ラック12が水平姿勢から倒立姿勢に移行するときには、把手付勢ばね78の付勢力に従い把手ストップ部材8を押しのけて把手アーム77が回転する形で姿勢変更する。この姿勢変更は、把手部79が地表面RPを支柱1とは逆向きに転がる形で進行し(図31の実線→図31の破線)、把手部79が地表面RPから離れるに伴い可動把手7は突出姿勢となり(図30の実線)、その後に昇降ラック12が倒立状態に至る(図30の破線)。
【0116】
本発明は、歩道上・公園内等に常設された屋外駐輪場、マンション・アパート等に開設された屋内駐輪場、ビル・地下駅等に併設された地下駐輪場を問わず、これらに設置されたいずれの駐輪装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0117】
1 支柱
10 回転スライダクランク機構
11 台車(ベース体)
12 昇降ラック(第二ラック)
120 回転軸(ラック回転軸)
121 長孔(ラックガイド部)
13 ブレース(サイドガード)
13L 左ブレース(サイドガード)
13R 右ブレース(サイドガード)
130 揺動軸(揺動軸線)
131 スライドピン(スライダ)
132 タイヤガード
133 起立付勢ばね
20 台車昇降機構(牽引力付与機構)
21 昇降用ガススプリング
30 ラック回動機構(モーメント付与機構)
31 回動用ガススプリング
40 台車ロック機構(下段ストップ機構)
41 ロックアーム
42 支軸
44 車輪受け(第一検知手段)
50 スライダロック機構(回動ストップ機構)
51 回動ロック板
52 回動軸
53 操作ピン
60 ラックロック機構(移動ストップ機構)
61 ラックストッパ
64 作動部材(操作手段;第二検知手段;搬出検知手段)
7 可動把手
70 連係機構
71 長手アーム(把手ガイド部)
72 短手アーム(把手ガイド部)
73、79 把手部
8 把手ストップ部材
80 把手ストップ操作機構
83 操作部
9 回動ストップ部材
90 回動ストップ機構
170 把手回転軸
100 駐輪装置
200 上段駐輪機
300 下段駐輪機
301 レール
310 第一スライドラック(第一ラック)
320 第二スライドラック(第一ラック)
BCL 自転車
FW 前輪(先行搬入車輪;後続搬出車輪)
RW 後輪(後続搬入車輪;先行搬出車輪)
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