IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山屋産業株式会社の特許一覧

特許7002065芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法
<>
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図1
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図2
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図3
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図4
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図5
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図6
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図7
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図8
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図9
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図10
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図11
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図12
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図13
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図14
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図15
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図16
  • 特許-芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20220128BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20220128BHJP
   A41B 11/02 20060101ALI20220128BHJP
   A41D 27/12 20060101ALI20220128BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20220128BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A41D13/015
A41D13/06
A41B11/02
A41D27/12
A41D27/28 D
A41D27/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017558296
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2016088526
(87)【国際公開番号】W WO2017111106
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2015254656
(32)【優先日】2015-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513115257
【氏名又は名称】山屋産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】小村 喜隆
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-105200(JP,A)
【文献】特開平06-134071(JP,A)
【文献】特開平03-279402(JP,A)
【文献】特開平09-010255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/015
A41D 13/06
A41B 11/02
A41D 27/12
A41D 27/28
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する断面円環状の基布材と、前記基布材の内側面から凸状や凹状の型を用いて前記基布材と接着され、前記基布材の外側面から全域が突出した状態で配された芯材と、前記芯材を覆うように前記基布材の内側面に配された当て部材と、これらを接合するための接着層を備えたことを特徴とする芯材付き当て部材を有する基布材。
【請求項2】
前記芯材付き当て部材を有する基布材は、さらに前記接着層の接着しない箇所に配された被接着防止布を備え、前記被接着防止布が配置される位置での通気性を確保することを特徴とする請求項1記載の芯材付き当て部材を有する基布材。
【請求項3】
前記当て部材は、前記接着層の接着剤が浸潤硬化するためのループを前記接着層側に形成したパイル織物や紡績生地或いは編物生地であることを特徴とする請求項1または2記載の芯材付き当て部材を有する基布材。
【請求項4】
前記接着層は、前記芯材の接着面積よりも大きくかつ前記当て部材と略同一の大きさで形成された接着フィルムであり、前記芯材の片面全面と前記当て部材間および前記芯材の片面外周に位置する前記基布材と前記当て部材間は前記接着フィルムにより強固に接着されていることを特徴とする請求項記載の芯材付き当て部材を有する基布材。
【請求項5】
前記接着層がメッシュ状であり、前記メッシュ状の所定間隔の隙間ごとに通気性が確保された状態で接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の芯材付き当て部材を有する基布材。
【請求項6】
伸縮性を有する断面円環状の基布材と、クッション材である芯材と、芯材を覆うように配される当て部材と、これらを接合するための接着層を備えて、芯材の形状及び厚みに合わせた穴や溝を有する凹状や凸状の型を用いて接着することにより、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域が前記基布材ごとほぼ突出するように形成されて接合することを特徴とする芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【請求項7】
伸縮性を有する断面円環状の基布材と、あらかじめ芯材を備えた当て部材と、これらを接合するための接着層を、芯材の形状及び厚みに合わせた穴や溝を有する凹状の型や凸状の型を用いて熱圧着することにより、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域が前記基布材ごとほぼ突出するように形成されて接合することを特徴とする芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【請求項8】
表裏を反転させた伸縮性を有する断面円環状の基布材の内部に芯材の形状および厚みに合わせた穴や溝を有する型を挿入し、前記芯材および接着層を仮接着した当て部材を前記基布材の内側面に配置し、前記当て部材側から熱板により加熱することにより前記接着層を溶かし、前記芯材を前記型の穴や溝の内部に突出させ、前記基布材と前記当て部材の接着を形成することを特徴とする芯材付き当て部材を有する基布材を有する基布材の製造方法。
【請求項9】
凹状の型の角部に接着層が位置するように配して、芯材の厚みや形状に合わせた穴や溝を有する凹状の型や凸状の型を用いて熱圧着することを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【請求項10】
前記当て部材が接着層側にループが形成されたパイル織物や紡績生地或いは編物生地であり、前記接着層の接着剤が前記生地のループに浸潤硬化してなることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【請求項11】
前記接着層の接着しない箇所に被接着防止布が配されており、通気性を確保することを特徴とする請求項6から10のいずれか一項記載の芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【請求項12】
前記芯材付き当て部材を有する基布材は、膝を円環状に覆う膝用サポータ又は肘を円環状に覆う肘用サポータであることを特徴とする請求項6から11のいずれか一項に記載の芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポータ、靴下、枕等にクッション材や保温材を当て部材で挟んで取付ける場合に利用される芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サポータ等の伸縮性を有する筒状部分に、弾性発泡材よりなるクッション材等を取付ける際には、クッション材等に当て部材を重ね、この当て部材周囲をサポータ等に縫着する方法が用いられる。
【0003】
この縫着作業は、サポータ等が筒状であり、伸縮性を有するので、ミシンを用いるときに異常な変形をして、歪んだ状態に取付けられてしまうことが起こりやすく、困難なものである。特に肘、足首用サポータ、枕のように細いものではこの困難は著しい。したがって、この作業は能率が低く、また作業者には高度の熟練が要求される
【0004】
一方、本出願人は、この縫着作業を容易化し、効率を高めるための新たな方法を既に提案している(特許文献1)。上記縫着工程の前に、接着剤として機能する低融点糸、または熱接着フィルムを用いて、当て部材を基布材に仮止めすることにより、縫着作業が容易となり、熟練を要することなく、効率的に行うことが可能となり、しかも美しい仕上がりを得ることができるとしている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の接合方法では、仮止め工程ののち、縫着工程を実施することになり、工程が長くなり、なおかつ仮止め工程の部材等によるコストアップも懸念される。
【0006】
上記提案(特許文献1)の課題を解消するために、さらに、本出願人は熱接着フィルムによる保護部材付きサポータの製法を提案している(特許文献2)。サポータに熱接着フィルムにより保護部材を加熱接着する、あるいは、カバー材および熱接着フィルムにより保護部材を加熱接着するというものである。サポータに保護部材が良好な状態で接着されるため、従来必須とされていた逢着作業が不要となり、特許文献1で課題とされていた、工程の煩雑化およびコストアップ懸念を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-279402号公報
【文献】特開平6-134071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば、バレーボール用膝サポータや、凹凸状の表面生地を構成する枕等では、そのクッション材(芯材)を表面側に突出させることが求められる。
上記従来公報の製造方法では、十分に突出させて取り付けることが出来なかった。特に、伸縮材で構成されるサポータ生地では、その伸縮性や筒状の形を維持したままクッション材等の芯材を外側に突出させて接合することは困難であった。
また、上記従来公報の製造方法により、膝当て、肘当てまたは腰当て等のクッション等の芯材が配されたサポータ本体(筒状のサポータ)に対して接着剤を介して熱融着させると、誤ってクッション材と熱融着させてしまったり、溶融箇所によっては、十分な通気性が確保されなくなったり、しかも、強力な接合で早く仕上げることができない等の問題を有していた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、クッション材等の芯材が配された当て部材を十分に外側に突出させた状態で美しい仕上がりで早く強固に接合できる芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
芯材付き当て部材を有する基布材は、伸縮性を有する断面円環状の基布材と、前記基布材の内側面から凸状や凹状の型を用いて前記基布材と接着され、前記基布材の外側面から全域が突出した状態で配された芯材と、前記芯材を覆うように前記基布材の内側面に配された当て部材と、これらを接合するための接着層を備えたことを特徴とする。
また本発明の芯材付き当て部材を有する基布材は、伸縮性を有する断面円環状の基布材と、前記基布材の内側面から凸状や凹状等の型を用いて前記基布材と接着することにより前記基布材の外側面から全域が突出するように配された芯材と、前記芯材を覆うように前記基布材の内側面に配された当て部材と、これらを接合するための接着層を備えたことを特徴とする。
ここで、「内側面」とは、芯材付き当て部材を有する基布材を使用した場合に、断面円環状の基布材が内側になる面であり、使用者の身体表面に接触する面を指す。
また「外側面」とは、芯材付き当て部材を有する基布材を使用した場合に、断面円環状の基布材のうち外側にあらわれる面であり、使用者の身体表面に接触しない外側の面を指す。
ここで「接着層」とは、接合するための部材上に形成されている接着部材を指し、接着フィルムや接着剤等を指すものとする。
本発明によれば、膝当てサポータ、肘当てサポータまたは腰当てサポータに適用すると、強力な接着が得られるとともに表面仕上がりが綺麗であり、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域がほぼ突出するために、膝や肘または腰への衝撃吸収力の向上が図られる。
【0011】
本発明は、前記芯材付き当て部材を有する基布材がさらに前記接着層の接着しない箇所に配された被接着防止布を備え、前記被接着防止布が配置される位置での通気性を確保することを特徴とする。
本発明によれば、接着剤が塗布される位置と塗布されない位置とが分けられて、例えばクッション材に接着剤が付着するなどの事態を防止したり、又、通気性を確保する箇所と確保しない箇所とを明確に区別して、通気性等を考慮した芯材付き当て部材を有する基布材にすることができる。
【0012】
本発明は、前記当て部材が前記接着層の接着剤が浸潤硬化するためのループを前記接着層側に形成したパイル織物や紡績生地或いは編物生地であることを特徴とする。
本発明によれば、当て部材と基布材との強力な接着が得られて剥離し難くなる。
【0013】
本発明は、前記基布材が筒状で伸縮性を有するサポータまたは腰当てサポータであり、前記芯材が膝当て、肘当てまたは腰当て用のクッション材であることを特徴とする。
本発明によれば、前記基布材が筒状で伸縮性を有するサポータにおいて、強力な接着が得られるので、激しい運動によっても剥がれ難くなり、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域がほぼ突出するために、膝、肘または腰への衝撃吸収力の向上が図られる。
【0014】
本発明は、前記接着層が前記芯材の角部に配され、前記芯材付き当て部材を有する基布材には、前記芯材の周囲に折り目が形成されていることを特徴とする。例えば、凹状の型の内側角部から外周側にかけて接着フィルムが位置するように配して、当て部材の外周囲に沿って接着フィルムを溶かして当て部材を基布材に接着する。
本発明によれば、芯材を有する当て部材の折り目が形成できるほどでも良く、凹状の型の内側角部から外周側にかけて接着フィルムが位置するように配しているので、芯材を有する当て部材の型崩れが防止できる。
また本発明は、前記接着層が前記芯材の接着面積よりも大きくかつ前記当て部材と略同一の大きさで形成された接着フィルムであり、前記芯材の片面全面と前記当て部材間および前記芯材の片面外周に位置する前記基布材と前記当て部材間は前記接着フィルムにより強固に接着されていることを特徴とする。
本発明によれば、芯材の接着面積よりも大きな接着フィルムを備えた当て部材を、芯材の接着面および芯材の接着面外周の基布材に接着させると、芯材の接着面と当て部材間は接着層が全面に存在するため強固に接着され、かつ当て部材の大きさが芯材の接着面よりも大きく形成されているため、芯材の接着面外周に位置する基布材と当て部材間も同時に強固に接着される。芯材だけでなく芯材の接着面外周全てが当て部材と強固に接着されるため、芯材が位置ズレすることなくより強固に基布材に固定され、かつ芯材が外側表面に十分に突出した状態を長期間保つことが可能となり、繰り返し使用しても耐久性が高くかつ型崩れしない芯材付き当て部材を提供することができる。
【0015】
また、本発明の芯材付き当て部材の製造方法は、伸縮性を有する断面円環状の基布材と、クッション材である芯材と、芯材を覆うように配される当て部材と、これらを接合するための接着層を備えて、芯材の形状及び厚みに合わせた穴や溝を有する凹状や凸状型を用いて接着することにより、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域が前記基布材ごとほぼ突出するように形成されて接合することを特徴とする。また、伸縮性を有する断面円環状の基布材と、あらかじめ芯材を備えた当て部材と、これらを接合するための接着層を、芯材の形状及び厚みに合わせた穴や溝を有する凹状の型や凸状型を用いて熱圧着することにより、芯材を有する当て部材が基布材の一方側表面にその厚みの全域が前記基布材ごとほぼ突出するように形成されて接合することを特徴とする芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法である。
また、本発明の芯材付き当て部材の製造方法は、表裏を反転させた伸縮性を有する断面円環状の基布材の内部に芯材の形状および厚みに合わせた穴や溝を有する型を挿入し、前記芯材および接着層を仮接着した当て部材を前記基布材の内側面に配置し、前記当て部材側から熱板により加熱することにより前記接着層を溶かし、前記芯材を前記型の穴や溝の内部に突出させ、前記基布材と前記当て部材の接着を形成することを特徴とする。
本発明によれば、伸縮性を有する断面円環状の基布材、芯材、当て部材を接着層を介して凹状や凸状等の型を用いて接着すると、基布材も当て部材も凹状の型の形状に沿って突出するので、芯材の厚さを片面側に十分に突出させるとともに、早く強固な接着が可能である。
ここで、「接着」とは、熱圧着、紫外線による接着、硬化剤を混合することによる接着、常温で圧力を加えることによる接着等の種々の接着方法を含むものとする。
【0016】
本発明は、前記当て部材の接着層側にループが形成されたパイル織物あるいは紡績生地であることを特徴とする。
本発明によれば、前記接着層の接着剤が紡績生地あるいはパイル生地のループに浸潤硬化するために、基布材と当て部材とがより一層強固な接着を形成する。
【0017】
本発明は、前記接着層がメッシュ状であり、前記メッシュ状の所定間隔の隙間ごとに通気性が確保された状態で接合されていることを特徴とする。
本発明によれば、接着部においても接着部分と非接着部分が共存し、非接着部分では、通気性、吸水性、伸縮性、発汗性等の部材本来の特性が維持される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の芯材付き当て部材を有する基布材によれば、例えば膝当て、肘当て、腰当て等のサポータに適用すると、クッション材等の芯材が外側表面に十分に突出するので、その弾力性が十分に発揮されて、膝、肘、腰等の保護の向上を図ることが可能となる。
本発明の芯材付き当て部材を有する基布材の製造方法によれば、凹状の型を接着工程に用いることにより、クッション材等の芯材が外側表面に十分に突出するのみでなく、クッション材や保温材の形状維持および取付け位置の精度維持が容易となるため、従来より美しい仕上がりのサポータ等の芯材付き当て部材を有する基布材が速く強固な接着で製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のサポータの斜視図である。
図2】上記サポータで使用する部材を示す斜視図である。
図3】上記サポータの断面図である。
図4】本発明の製造工程で使用する型の斜視図である。
図5】本発明の第1の実施形態の製造工程図である。
図6】本発明の第2の実施形態の製造工程図である。
図7】本発明の第3の実施形態の製造工程図である。
図8】本発明の第4の実施形態の製造工程図である。
図9】本発明の第5の実施形態の模式図である。
図10】本発明の第6の実施形態の模式図である。
図11】本発明が適用されるサポータと従来製法のサポータの比較画像である。
図12】本発明が適用される枕カバー(枕が挿入された状態)を示す斜視図である。
図13】本発明が適用される枕カバー(枕が挿入されていない状態)を示す斜視図である。
図14】本発明が適用される靴下を示す模式図である。
図15】本発明が適用される腰当てサポータを示す模式図である。
図16】本発明のその他の実施形態における製造工程で使用する凸状熱板を示す模式図である。
図17】本発明のその他の実施形態における製造工程で使用する凸状熱板の使用方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態のサポータS1を示す斜視図であり、図2は使用する部材を示す斜視図である。図3はサポータS1のA-A断面図である。
本実施形態のサポータS1は、スポーツ選手(バレーボールやバスケットボール選手)が衝撃から肘関節や膝関節を保護する為に装着して使用されるクッション材付きの筒状サポータとして構成した場合について説明する。
【0022】
サポータS1は、サポータ本体よりなる基布材1a、クッション材よりなる芯材1b、クッション材を丁度覆う大きさ、形状の布よりなる当て部材1d、および、当て部材1dと同一大きさ、形状の接着フィルム1cから構成されており、基布材1aの設定された位置に芯材1bを当て部材1dにより挟持することにより製造されている。
基布材1aは、実施例においては筒状(断面円環状)に形成(図2)されているが、サポータの形状によっては、端部同士が接合されていない長尺状でも長方形状でもよい。
サポータの材質としては、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの繊維に、ゴム質の繊維を織り込んだり、パイル加工を施したり、多層構造としたりするが、レーヨン、ポリエステル、アクリルなどの化学繊維と、中間層の部材としては、ゴム質の化学繊維を織り込んだり、パイル加工を施したりしたものを使用することもできる。
クッション材の材質としては、ウレタン樹脂、ゴム、発泡ウレタン樹脂、発泡ゴム等が使用される。
接着フィルムは、ポリウレタン系の熱接着フィルムがサポータの伸縮性との適合性から使用される。接着フィルムには、剥離シートがあるもの、ないもの双方が使用可能であり、剥離シートがあるものに関しては、あらかじめ仮接着の工程が必要となるが、ないものに関しては仮接着の工程は不要である。
当て部材1dおよび接着フィルム1cの大きさは、芯材を丁度覆う大きさおよび形状としたが、当て部材1dおよび接着フィルム1cの大きさを芯材の接着面積よりも大きく形成することで、前記芯材の片面全面と前記当て部材間および前記芯材の片面外周に位置する前記基布材と前記当て部材間を強固に接着することができる。
当て部材1dおよび接着フィルム1cの大きさは、芯材の接着面積よりも大きければ大きいほど前記芯材の片面外周に位置する前記基布材と前記当て部材間の接着面積が大きくなるため、より強固に接着することが可能であるが、接着方法やコスト等を考慮し、適宜選択可能である。
実施例においては、熱接着フィルム1cを使用したが、当て部材1dに接着剤を塗布することで接着することも可能であるし、加熱することによって接着する熱接着性の接着剤だけでなく、紫外線を照射することにより短時間で接着する紫外線接着型や、本剤と硬化剤を混合することによって接着する硬化剤混合型のもの、常温で圧力を加えることによって接着する感圧型等、様々な種類の接着フィルムおよび接着剤を使用することが可能である。
当て部材は、ポリエステル、綿等の繊維からなる布、不織布等任意の素材が使用しうるが、サポータの伸縮性との適合性からニット素材が好適である。
【0023】
本発明の第1の実施形態は、図5の製造工程により実施される。
当て部材1dと同等の大きさ、形状を持った接着フィルム1cを準備し、当て部材1dに仮接着する。芯材1bの形状および厚みに合わせた穴や溝を有する凹状の型K(図4)に、表裏を反転させた基布材1a、芯材1b、および、接着フィルム1cを仮接着した当て部材1dを設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱する事により接着フィルム1cを溶かし、基布材1aと当て部材1dの接着を形成する。冷却後、型Kから取り出し、基布材1aの表裏を反転する事によりサポータS1が完成する。
ここで、凹状の型Kの上に表裏を反転させた基布材1a、芯材1b、接着フィルム1cを仮接着した当て部材1dを設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱したが、凹状の型Kを表裏を反転させた基布材1aの内部に挿入して、芯材1b、接着フィルム1cを仮接着した当て部材1dを基布材1aの上に設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱することにより接着フィルム1cを溶かし、芯材1bを型Kの穴や溝の内部に突出させ、基布材1aと当て部材1dの接着を形成してもよい。
【0024】
基布材1a、当て部材1d間には強固な接着が形成される。芯材1b、当て部材1d間にも接着は形成されるが、芯材1bのクッション性および接着剤との親和性によりそれほど強固なものではない。
【0025】
本実施形態では、接着フィルム1cと当て部材1dの大きさは同等とし、当て部材1d全面に接着を形成したものを例示しているが、接着形成範囲は、これに限定されるものではなく、当て部材の範囲内で任意である。例えば当て部材1dの周囲のみに接着を形成しても良い。その際には、接着フィルム1c準備の段階で、接着を形成したくない範囲のフィルムを、型抜きあるいは切断等の手段で、あらかじめ除去しておけば良い。
また、基布材1aの芯材1bが接する範囲および当て部材1dに接着層を形成し、芯材1bの外周面全体に接着層が形成されるようにすることも可能である。芯材1bの外周面全体に接着層が形成されることで、芯材1bを基布材1aにより強固に固定することが可
能となる。
【0026】
本実施形態では、サポータS1の芯材の形状は矩形であり、この矩形形状に合わせた大きさと厚さの型K1を使用して製造する工程を例示している。しかし、芯材の形状に関しては、任意であり、芯材1bが円形であるときには、これに合わせた円形の型K2(図4)を使用する。また、複数に分かれた芯材1bが使用される場合もあり、この場合は、複数に分かれた型K3(図4)を使用する。型Kの穴(中空形状)Kaと芯材1bの厚みは同じになっている。型Kに凹状の溝Kbを形成しても良いが、上記中空形状Kaの方が芯材1bの外側への突出量を多くすることができる。型の下方には、下敷き(布製の下敷き)や、鉄板を敷いて、密着力を高めるようにしても良い。
【0027】
実施例においては、熱圧着によって基布材1aと当て部材1dを接着したが、本発明は、前記接着部がレーザ加熱、高周波加熱、熱板加熱、振動加熱、超音波加熱、またはスチーム等の熱気体を吹き付けて行う加熱により互いに接着されるものでも良く、紫外線を照射することにより短時間で接着する方法や、本剤と硬化剤を混合することによって接着する方法、常温で圧力を加えることによって接着する方法等、適切に接着できれば、どのうな接着方法であってもよい。
【0028】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施形態は、図6の製造工程により実施される。
【0029】
芯材1bをあらかじめ備えた当て部材1dを準備し、芯材1bの形状および厚みに合わせた穴や溝を有する凹状の型K(図4)に、前記芯材1bをあらかじめ備えた当て部材1dを凹部に挿入する。下敷きに、基布材1aおよび接着領域に対応した接着フィルム1cを設置し、その上から、前記当て部材1dおよび芯材1bがはめ込まれた型Kを載せ、下敷き側から熱板Hにより加熱する事により接着フィルム1cを溶かし、基布材1aと当て部材1dの接着を形成する。冷却後、型Kから取り出す事によりサポータS2が完成する。
【0030】
本実施形態では、芯材1bをあらかじめ備えた当て部材1dとして、当て部材の中間層に芯材が挿入されたものを例示しているが、円筒状の当て部材に芯材が保持されているもの等、芯材があらかじめ当て部材に保持されておればよく、本実施形態の構造に限定されるものではない。
【0031】
本実施形態では、溝を有する型Kを上方より、下敷き上に搭載し、加熱接着工程を実施しているが、これに限定されるものではない。型構造に関しては穴を有する型Kを用いてもよく、また、型Kを下方に設置し、その上に接着フィルム1cおよび基布材1aを載せ上方より加熱してもよい。
【0032】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施形態は、図7の製造工程により実施される。
【0033】
当て部材1dと同等の大きさ形状を持った接着フィルム1cと被接着防止布1eを準備し、当て部材1dに仮接着する。ここで、被接着防止布とは、あらかじめ設定した接着しない箇所に貼り付ける布であり、例えば、芯材1bの部分を接着しない場合は芯材1bの外形形状に合わせた布を接着フィルム上1cに仮接着する。本仮接着防止布1eを貼る位置は、芯材部分に固定されているわけではなく、設計意図により、接着フィルム上自由な位置に貼ることが出来、複数位置に貼る事も出来る。
芯材1bの形状および厚みに合わせた型K(図4)に、表裏を反転させた基布材1a、芯材1b、および、接着フィルム1cおよび被接着防止布1eを仮接着した当て部材1dを設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱する事により接着フィルム1cを溶かし、基布材1aと当て部材1dの接着を形成する。冷却後、型Kから取り出し、基布材1aの表裏を反転する事によりサポータS3が完成する。
【0034】
本実施の形態では、基布材1a、当て部材1d間には強固な接着が形成されるが、被接着防止布1eにより、芯材1b、当て部材1d間は接着されない製造方法である。例えば、通気性を確保したい箇所には、接着剤を塗布することは好ましくないので、通気性を確保する箇所では、被接着防止布1eを配すると良い。
【0035】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施形態は、図8の製造工程により実施される。
【0036】
接着フィルム1cを、内周が、芯材1bの形状および厚みに合わせた型K(図4)の内側角部Kc(図4)側面に垂れ下がる程度に型内周より小さく、なおかつ、当て部材1dと同等の外周を持つように準備する。型K(図4)に、表裏を反転させた基布材1a、上記接着フィルム1cを設置し、その後、芯材1bを型に挿入し、当て部材1dを設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱する事により接着フィルム1cを溶かし、基布材1aと当て部材1dの接着を形成する。冷却後、型から取り出し、基布材1aの表裏を反転する事によりサポータS4が完成する。
【0037】
基布材1aと当て部材1d間には強固な接着が形成される。また、上記型側面位置に設置された接着フィルムにより、基布材1aと芯材1b下角部、および、当て部材1dと芯材1b側面部に接着が形成される。
上記接着が形成されることにより、サポータS3の芯材1bの下角部付近の基布材1aおよび当て部材1dには折り目Scが発生する場合もある(図7)。これにより、第4実施形態で製造されたサポータS4は、第1、3実施形態で製造されたサポータS1,S3よりも芯材1bの表面側への突出が顕著であり、また、形状維持能力が向上し、芯材1bおよび当て部材1dの型崩れが防止できる。
【0038】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施形態は、図9に模式的に示す。
【0039】
当て部材1dが接着フィルム側にループが形成されたパイル織物あるいは紡績生地であった場合の、上記第1の実施形態で製造されたサポータS1の接着部の微細構造を模式的に示している。接着フィルム1cの接着剤が当て部材1dのループに浸潤硬化しており、強靭な接着を実現している。これにより、従来の縫着と同等あるいはそれ以上の強度が得られ、サポータ装着者の激しい運動時に加わる力にも剥離が生じないものとなっている。
【0040】
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施形態は、図10に模式的に示す。
【0041】
接着フィルム1cがメッシュ状であった場合の、上記第1の実施形態で製造されたサポータS1の接着部の微細構造を模式的に示している。接着部は、前記メッシュの所定間隔に従い隙間が形成されており、通気経路Vが確保されている。これにより、部材本来の特性である通気性、給水性、伸縮性、発汗性を確保する事が可能となる。
本発明によれば、接着強度を優先する領域においては、シート状の接着フィルムを使用し、一方、部材本来の特性を優先する領域においては、メッシュ状の接着フィルムを使用する等、設計意図に応じた接着の設計が可能となり、サポータ等の製品設計の自由度が広がるという優位性が発揮される。
【0042】
(本発明によるサポータと従来製法によるサポータの比較)
図10に本発明によるサポータと従来製法によるサポータの画像を示す。S1は上記第1の実施形態で製造されたサポータであり、Soは従来製法である、サポータ本体と当て部材を縫着により製造されたサポータである。本発明のサポータS1は、従来品Soと比べクッション材の表面側への突出が顕著であり、その弾力性を十分発揮させうることが明白であり、膝、肘または腰等の保護性能の向上が期待できる。よって、本発明の効果がクッション材付きサポータ等の性能向上に大きく寄与することは明白である。
【0043】
また、本発明のサポータS1は、サポータ本体と当て部材との接合部に不要な応力がかかっていない為、接合部が平坦であるが、従来品Soは逢着による応力が残存しており、逢着部周辺にはしわ、よれ(図10w)等サポータ本来の機能には寄与しない形状を発現している。よって、本発明により、外観的にもより美しい仕上がりのサポータを製造できることは明白である。
【0044】
(第7の実施の形態)
図16は、本発明のその他の実施形態における製造工程で使用する凸状熱板を示す模式図であり、図17は、本発明のその他の実施形態における製造工程で使用する凸状熱板の使用方法を示す模式図である。
第1,第2,第3,第4,第5,第6の実施形態においては、凹状の型K,K1,K2,K3に、表裏を反転させた基布材1a、芯材1b、接着フィルム1cを仮接着した当て部材1dを設置し、当て部材1d側から熱板Hにより加熱する事によりサポータS1,S2,S3,S4を形成していたが、第7の実施の形態においては、凸部を備えた凸状熱板HK1,HK2,HK3を使用することにより、芯材をさらに外側に突出させた美しい仕上がり状態で早く強固に接合できる芯材付き当て部材を有する基布材及びその製造方法を提供することができる。
【0045】
凸状熱板HK1,HK2,HK3は、サポータを生成する際に凹状の型Kに相対する状態で使用される熱板であり、凸部Ha1,Ha2,Ha3を備える。
凸部Ha1,Ha2,Ha3は、使用する凹状の型Kに設けられた穴Kaまたは溝Kbと断面形状は同じであるが小さいサイズとなっており、凸部Ha1,Ha2,Ha3の高さは、凹状の型Kに設けられた穴Kaまたは溝Kbの深さより小さく形成されている。
芯材1bの形状および厚みに合わせた穴や溝を有する凹状の型Kに、表裏を反転させた基布材1a、芯材1b、および、接着フィルム1cを仮接着した当て部材1dを設置し、当て部材1d側から凸状熱板HK1,HK2,HK3により加熱する事により接着フィルム1cを溶かしながら芯材1bを基布材面側へ十分に突出するように凸部Ha1,Ha2,Ha3を押し付ける。凸状熱板HK1,HK2,HK3の凸部Ha1,Ha2,Ha3以外の箇所も同様に高温となっているため、芯材1bの接着面外周に位置する基布材1aと当て部材1d間の接着フィルム1cも凸状熱板HK1,HK2,HK3によって溶かされ、同時に強固に接着される。
このように、凸部Ha1,Ha2,Ha3を備えた凸状熱板HK1,HK2,HK3を使用して、当て部材1d側から接着フィルム1cを溶かしながら芯材1bを基布材面側へ十分に突出するように凸部Ha1,Ha2,Ha3を押し付けることによって、芯材をさらに外側に突出させた美しい仕上がりの芯材付き当て部材を有する基布材を提供することができる。
【0046】
図12は、本発明が適用される枕カバー(枕が挿入された状態)を示す斜視図であり、図13は、本発明が適用される枕カバー(枕が挿入されていない状態)を示す斜視図である。図14は、本発明が適用される靴下を示す模式図であり、図15は、本発明が適用される腰当てサポータを示す模式図である。第1,第2,第3,第4,第5,第6の実施の形態においては、サポータS1,S2S3,S4で説明したが、本発明はサポータに限定されず、基布材にクッション材よりなる芯材を接合して使用する様々な部材、具体的には枕カバー(図12図13S5や靴下(図14S6、腰当てサポータ(図15S7等の部材に適用可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
S1,S2,S3,S4 本発明が適用されるサポータ、
S5 本発明が適用されるカバー
S6 本発明が適用される靴下、
S7 本発明が適用される腰当てサポータ、
1a サポータを構成する基布材、
1b サポータを構成する芯材、
1c サポータを構成する接着フィルム、
1d サポータを構成する当て部材、
1e サポータを構成する被接着防止布、
Sc サポータの折り目、
K 本発明に使用される型、
K1 矩形の芯材用の型、
K2 円形の芯材用の型、
K3 複数の芯材用の型、
Ka 型の穴(中空形状)、
Kb 型の溝(凹状)、
Kc 型の角部、
H 熱板、
HK1 矩形の芯材用の凸状熱板、
HK2 円形の芯材用の凸状熱板、
HK3 複数の芯材用の凸状熱板、
Ha1,Ha2,Ha3 凸部、
B 下敷き、
V 通気経路、
So 従来製法のサポータ、
w サポータのよれ、
本発明が適用される
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17