(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】タイル、タイル固定用の金具、該金具の固定方法、タイルの施工方法及びPCコンクリート板の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E04F13/08 102N
E04F13/08 101G
E04F13/08 101V
E04F13/08 102H
(21)【出願番号】P 2016248216
(22)【出願日】2016-12-21
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2015257632
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391004322
【氏名又は名称】株式会社ファスナーエンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】509298562
【氏名又は名称】株式会社アクト
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100067770
【氏名又は名称】中山 清
(73)【特許権者】
【識別番号】519436312
【氏名又は名称】Myrex株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(73)【特許権者】
【識別番号】508275467
【氏名又は名称】野平 修
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100067770
【氏名又は名称】中山 清
(72)【発明者】
【氏名】中島 一男
(72)【発明者】
【氏名】原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】宮村 重樹
(72)【発明者】
【氏名】野平 修
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-269069(JP,A)
【文献】特開平07-279361(JP,A)
【文献】特開平10-169157(JP,A)
【文献】特開平09-105231(JP,A)
【文献】実開昭59-008434(JP,U)
【文献】特開平10-046790(JP,A)
【文献】特開2013-049995(JP,A)
【文献】特開2010-236262(JP,A)
【文献】特開2008-308927(JP,A)
【文献】実公平07-030818(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に設けられた溝と、
前記溝に固定された金具と、
を含み、
前記金具は、スリットを挟んで設けられた2つの接触部と、2つの前記接触部を連結する連結部と、を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記金具は、2つの前記接触部が前記溝の対向する2つの側面に接触し、前記スリットに変形防止部材が配置されて2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することが制限されたことを特徴とする、タイル。
【請求項2】
請求項1において、
前記変形防止部材は、接着剤であることを特徴とする、タイル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記変形防止部材は、2つの前記接触部に固定された金属製又は合成樹脂製の部材であることを特徴とする、タイル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記連結部は、前記裏面から突出しない状態で前記溝に収容されたことを特徴とする、
タイル。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項において、
前記金具は、前記連結部に隣接し、前記金具を屈曲する屈曲部をさらに含み、
前記金具が前記屈曲部で屈曲された状態で、前記連結部が前記裏面から突出していることを特徴とする、タイル。
【請求項6】
裏面に設けられた溝と、
前記溝に固定された金具と、
を含み、
前記金具は、前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、前記接触部から前記金具の長手方向に延びる脱落防止部と、2つの前記接触部の間で前記接触部と一体に形成された変形防止部と、を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記脱落防止部は、前記補強部が形成されていない部分で前記脱落防止部を屈曲させることで前記裏面から前記脱落防止部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部は、前記接触部が前記側面に接触した状態で、2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする、タイル。
【請求項7】
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
2つの前記接触部の間に形成され、かつ、2つの前記接触部が互いに近接する方向への移動を許容するスリットと、
2つの前記接触部を連結する連結部と、
2つの前記接触部と前記連結部との間に設けられた屈曲部と、
前記金具に対し着脱可能な変形防止部材と、
を含み、
2つの前記連結部は、前記屈曲部で前記金具を屈曲させることで前記裏面から前記連結部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部材は、前記スリットに配置されて前記接触部に固定されることで2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする、タイル固定用の金具。
【請求項8】
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
2つの前記接触部の間に形成され、かつ、2つの前記接触部が互いに近接する方向への移動を許容するスリットと、
2つの前記接触部を連結する連結部と、
を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
2つの前記連結部は、前記補強部が形成されていない部分で前記金具を屈曲させることで前記裏面から前記連結部の少なくとも一部が突出可能な長さを有することを特徴とする、タイル固定用の金具。
【請求項9】
請求項7又は8において、
2つの前記連結部は、前記金具を前記溝に装着するために2つの前記接触部が互いに近接する方向へ弾性変形可能であることを特徴とする、タイル固定用の金具。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項において、
前記接触部は、前記金具の長手方向に沿って形成されることを特徴とする、タイル固定
用の金具。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか1項の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
2つの前記接触部が近接するように前記金具を弾性変形させて前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの前記接触部が離間するように前記金具が復元して前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部が接触し、
前記スリットの幅を埋めるように変形防止部材を充填して前記金具を前記溝に固定することを特徴とする、金具の固定方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記変形防止部材は、前記スリットの幅を埋めるように充填し、前記スリットの幅を埋めたまま硬化することを特徴とする、金具の固定方法。
【請求項13】
請求項7の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
前記金具を前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの接触部が離間するように前記金具を変形させて、前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部を接触させ、
前記スリットに前記変形防止部材を配置して、前記変形防止部材を前記接触部に固定することで、2つの前記接触部の前記近接する方向への移動を制限すると共に、前記金具を前記溝に固定することを特徴とする、金具の固定方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項の前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記連結部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記タイルを、壁面側のモルタルに前記連結部が埋設されるように、前記壁面に貼り付けることを特徴とする、タイルの施工方法。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか1項の前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記連結部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記裏面を上にして複数の前記タイルを並べ、前記裏面側にコンクリートを打設して前記タイルと一体化したPCコンクリート板を製造することを特徴とする、PCコンクリート板の製造方法。
【請求項16】
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
前記接触部から前記金具の長手方向に延びる脱落防止部と、
2つの前記接触部の間で前記接触部と一体に形成された変形防止部と、
を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記脱落防止部は、前記補強部が形成されていない部分で前記脱落防止部を屈曲させることで前記裏面から前記脱落防止部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部は、前記接触部が前記側面に接触した状態で、2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする、タイル固定用の金具。
【請求項17】
請求項
16の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
前記金具を前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの前記接触部が離間するように前記金具を変形させて、前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部を接触させ、
前記変形防止部が2つの前記接触部の前記近接する方向への移動を制限することで、前記金具を前記溝に固定することを特徴とする、金具の固定方法。
【請求項18】
請求項
17の前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前
記脱落防止部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記タイルを、壁面側のモルタルに前
記脱落防止部が埋設されるように、前記壁面に貼り付けることを特徴とする、タイルの施工方法。
【請求項19】
請求項
17の前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前
記脱落防止部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記裏面を上にして複数の前記タイルを並べ、前記裏面側にコンクリートを打設して前記タイルと一体化したPCコンクリート板を製造することを特徴とする、PCコンクリート板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル、タイル固定用の金具、該金具の固定方法、タイルの施工方法及びPCコンクリート板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建築物の壁面に装飾用のタイルが施工されている。
【0003】
例えば、天然石材タイルを現場施工等する際に、タイルの裏面の被係合部にゴムのような弾性材を圧入して一体とするタイルが提案されている(特許文献1を参照)。この施工方法によれば、ゴムのような弾性材の圧入作業は容易になるものの、弾性材が変形してモルタルからも脱落する可能性がある。
【0004】
又、タイル掛止部を有した金属板が建築物の躯体にビス留めされ、裏面に溝を有したタイルが、該溝を前記掛止部に掛止させると共に接着剤によって接着されて該金属板に取り付けられているタイルの施工構造が提案されている(特許文献2を参照)。この施工方法によれば、タイルの脱落防止には効果があるものの、専用のタイルと、専用の金属板とが必要となり、選択肢の幅が狭い。
【0005】
そのため、現在でも裏面にいわゆる蟻溝を設けただけのタイルが一般的に施工されている。蟻溝は、接着面積を広げるとともに抜け止め構造とすることでモルタルに対する貼付性を向上させるものである。タイルにおける蟻溝はその製造工程上の制約から、溝の側面の傾斜はわずかしか設けることができない。タイルにさらなる脱落防止構造を付加するために、金具をタイルに固定したいという要望があるが、タイルは陶磁器製や石材であるため一般に金具の固定に適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-102736号公報
【文献】特開2004-124642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金具が確実に固定されたタイルと、タイルに確実に固定することができるタイル固定用の金具と、該金具の固定方法と、該金具が固定されたタイルの施工方法と、該金具が固定されたタイルを用いたPCコンクリート板の製造方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本適用例に係るタイルの一態様は、
裏面に設けられた溝と、
前記溝に固定された金具と、
を含み、
前記金具は、スリットを挟んで設けられた2つの接触部と、2つの前記接触部を連結する連結部と、を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記金具は、2つの前記接触部が前記溝の対向する2つの側面に接触し、前記スリットに変形防止部材が配置されて2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することが制限されたことを特徴とする。
【0010】
本適用例に係るタイルによれば、変形防止部材によって接触部の移動が制限されるため、金具をタイルに確実に固定することができる。また、本適用例に係るタイルによれば、補強部によって接触部の変形を抑えることができる。補強部の変形を抑えることで接触部と溝の側面との接触状態を確実に維持することができる。又、変形防止部材が比較的流動しやすい場合でも補強部の間に充填しやすく、作業性が高い。
【0011】
[適用例2]
本適用例に係るタイルの一態様において、
前記変形防止部材は、接着剤であることができる。
【0012】
本適用例に係るタイルによれば、接着剤を用いることでスリットへの充填時には自在に変形して所望量を充填しやすく、硬化すればスリットが埋められるため接触部の移動を確実に制限することができる。
【0015】
[適用例3]
本適用例に係るタイルの一態様において、
前記変形防止部材は、2つの前記接触部に固定された金属製又は合成樹脂製の部材であることができる。
【0016】
本適用例に係るタイルによれば、接触部に固定された金属製又は合成樹脂製の変形防止部材により、接触部の移動が機械的に制限できる。
【0017】
[適用例4]
本適用例に係るタイルの一態様において、
前記連結部は、前記裏面から突出しない状態で前記溝に収容されることができる。
【0018】
本適用例に係るタイルによれば、連結部が裏面から突出しないようにすることで、金具を埋め込んだタイルを重ねて梱包しても嵩張らず、市場流通性に優れることができる。
【0019】
[適用例5]
本適用例に係るタイルの一態様において、
前記金具は、前記連結部に隣接し、前記金具を屈曲する屈曲部をさらに含み、
前記金具が前記屈曲部で屈曲された状態で、前記連結部が前記裏面から突出することができる。
【0020】
本適用例に係るタイルによれば、金具を屈曲部で折り曲げることにより、連結部を裏面から突出させてタイルの脱落防止構造とすることができる。
【0021】
[適用例6]
本適用例に係るタイルの一態様は、
裏面に設けられた溝と、
前記溝に固定された金具と、
を含み、
前記金具は、前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、前記接触部から前記金具の長手方向に延びる脱落防止部と、2つの前記接触部の間で前記接触部と一体に形成された変形防止部と、を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記脱落防止部は、前記補強部が形成されていない部分で前記脱落防止部を屈曲させることで前記裏面から前記脱落防止部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部は、前記接触部が前記側面に接触した状態で、2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、変形防止部によって接触部の移動が制限されるため、金具をタイルに確実に固定することができる。
【0023】
[請求項7]
本適用例に係るタイル固定用の金具の一態様は、
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
2つの前記接触部の間に形成され、かつ、2つの前記接触部が互いに近接する方向への移動を許容するスリットと、
2つの前記接触部を連結する連結部と、
2つの前記接触部と前記連結部との間に設けられた屈曲部と、
前記金具に対し着脱可能な変形防止部材と、
を含み、
2つの前記連結部は、前記屈曲部で前記金具を屈曲させることで前記裏面から前記連結部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部材は、前記スリットに配置されて前記接触部に固定されることで2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする。
【0024】
本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、裏面から突出することができる連結部がタイルの脱落を防止することができる。また、本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、変形防止部材が接触部に固定されることで接触部の移動を確実に制限することができる。
【0025】
[適用例8]
本適用例に係るタイル固定用の金具の一態様は、
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
2つの前記接触部の間に形成され、かつ、2つの前記接触部が互いに近接する方向への移動を許容するスリットと、
2つの前記接触部を連結する連結部と、
を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
2つの前記連結部は、前記補強部が形成されていない部分で前記金具を屈曲させることで前記裏面から前記連結部の少なくとも一部が突出可能な長さを有することを特徴とする。
【0026】
本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、裏面から突出することができる連結部がタイルの脱落を防止することができる。特に、補強部によって接触部の変形を抑えることができる。補強部が変形を抑えることで接触部と溝の側面との接触状態を確実に維持することができる。
【0027】
[適用例9]
本適用例に係るタイル固定用の金具の一態様おいて、
2つの前記連結部は、前記金具を前記溝に装着するために2つの前記接触部が互いに近接する方向へ弾性変形可能であることができる。
【0028】
本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、連結部の弾性変形により、金具を溝の中に容易に装着できると共に、溝の中では連結部の弾性変形により復元することで接触部が溝の側面を押圧するように確実に接触することができる。
【0029】
[適用例10]
本適用例に係るタイル固定用の金具の一態様において、
前記接触部は、前記金具の長手方向に沿って形成されてもよい。
【0030】
本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、接触部の長さを長くとることができるので、接触部と溝の側面との接触面積を大きくすることができ、溝に対する金具の固定を確実にすることができる。
【0033】
[適用例11]
本適用例に係る金具の固定方法の一態様は、
適用例7~10の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
2つの前記接触部が近接するように前記金具を弾性変形させて前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの前記接触部が離間するように前記金具が復元して前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部が接触し、
前記スリットの幅を埋めるように変形防止部材を充填して前記金具を前記溝に固定することを特徴とする。
【0034】
本適用例に係る金具の固定方法によれば、金具の弾性変形により、金具を溝の中に容易に装着できると共に、溝の中では金具が復元することで接触部が溝の側面を押圧するように確実に接触することができる。さらに、本適用例に係る金具の固定方法によれば、変形防止部材により接触部が再び近接移動することを防止できる。
【0035】
[適用例12]
本適用例に係る金具の固定方法の一態様において、
前記変形防止部材は、前記スリットの幅を埋めるように充填し、前記スリットの幅を埋めたまま硬化することができる。
【0036】
本適用例に係る金具の固定方法によれば、スリットの幅を埋めるように所望量を充填し、その後硬化すれば接触部の移動を確実に制限することができる。
【0037】
[適用例13]
適用例7の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
前記金具を前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの接触部が離間するように前記金具を変形させて、前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部を接触させ、
前記スリットに前記変形防止部材を配置して、前記変形防止部材を前記接触部に固定することで、2つの前記接触部の前記近接する方向への移動を制限すると共に、前記金具を前記溝に固定することを特徴とする。
【0038】
本適用例に係る金具の固定方法によれば、スリットに変形防止部材を配置して接触部に固定することで接触部の移動を確実に制限することができる。
[適用例14]
本適用例に係るタイルの施工方法は、
前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記連結部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記タイルを、壁面側のモルタルに前記連結部が埋設されるように、前記壁面に貼り付けることを特徴とする。
[適用例15]
本適用例に係るPCコンクリート板の製造方法は、前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記連結部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記裏面を上にして複数の前記タイルを並べ、前記裏面側にコンクリートを打設して前記タイルと一体化したPCコンクリート板を製造することを特徴とする。
【0039】
[適用例16]
本適用例に係るタイル固定用の金具の一態様は、
タイルの裏面の溝に固定する金具であって、
前記溝の対向する2つの側面に接触する2つの接触部と、
前記接触部から前記金具の長手方向に延びる脱落防止部と、
2つの前記接触部の間で前記接触部と一体に形成された変形防止部と、
を含み、
前記接触部は、前記接触部に沿って延びる補強部を含み、
前記脱落防止部は、前記補強部が形成されていない部分で前記脱落防止部を屈曲させることで前記裏面から前記脱落防止部の少なくとも一部が突出可能な長さを有し、
前記変形防止部は、前記接触部が前記側面に接触した状態で、2つの前記接触部が互いに近接する方向へ移動することを制限することを特徴とする。
【0040】
本適用例に係るタイル固定用の金具によれば、裏面から突出することができる脱落防止部がタイルの脱落を防止することができる。
【0041】
[適用例17]
適用例16の前記金具を、前記タイルに固定する固定方法であって、
前記金具を前記溝の中に配置し、
前記溝の中で2つの前記接触部が離間するように前記金具を変形させて、前記溝の対向する2つの前記側面に2つの前記接触部を接触させ、
前記変形防止部が2つの前記接触部の前記近接する方向への移動を制限することで、前記金具を前記溝に固定することを特徴とする。
【0042】
本適用例に係る金具の固定方法によれば、金具の変形により、接触部を溝の側面に接触させることができ、変形防止部が接触部の移動を制限することにより、金具を溝の中に確実に固定できる。
【0043】
[適用例18]
本適用例に係るタイルの施工方法の一態様は、
前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記脱落防止部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記タイルを、壁面側のモルタルに前記脱落防止部が埋設されるように、前記壁面に貼り付けることを特徴とする。
【0044】
本適用例に係るタイルの施工方法によれば、連結部又は前記脱落防止部がモルタルに埋設されることにより壁面からのタイルの脱落を確実に防止することができる。
【0045】
[適用例19]
本適用例に係るPCコンクリート板の製造方法の一態様は、
前記金具の固定方法によって得られた前記タイルの前記裏面から前記脱落防止部が突出するように前記金具を屈曲し、
前記裏面を上にして複数の前記タイルを並べ、前記裏面側にコンクリートを打設して前記タイルと一体化したPCコンクリート板を製造することを特徴する。
【0046】
本適用例に係るPCコンクリート板の製造方法によれば、連結部によって脱落が防止されたタイルを用いたPCコンクリート板を製造することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るタイルによれば、金具が確実に固定されたタイルを提供することができる。本発明に係るタイル固定用の金具によれば、金具をタイルに確実に固定することができる。本発明に係る金具の固定方法によれば、金具をタイルに確実に固定することができる。本発明に係るタイルの施工方法によれば、金具が固定されたタイルを壁面に施工することができる。本発明に係るPCコンクリート板の製造方法によれば、金具が固定されたタイルを用いたPCコンクリート板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図3】一実施形態に係る金具の固定方法を説明する正面図である。
【
図4】一実施形態に係るPCコンクリート板の製造方法を説明する斜視図である。
【
図5】一実施形態に係るPCコンクリート板の側面図である。
【
図6】一実施形態に係るタイルの施工方法を説明する側面図である。
【
図10】変形例3に係る金具の固定方法を説明する断面図である。
【
図12】変形例4に係る金具の固定方法を説明する断面図である。
【
図13】変形例5に係る金具の変形前の斜視図である。
【
図14】変形例5に係る金具の変形後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
1.タイル固定用の金具
まず、
図1~
図3を用いて、本実施の形態に係るタイル固定用の金具について説明する。
図1は本実施の形態に係る金具40の平面図であり、
図2は金具40の側面図であり、
図3は金具の固定方法を説明する正面図である。
【0051】
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るタイル固定用の金具40は、タイル10の裏面20の溝30に固定する金具40である。
【0052】
図1~
図3に示すように、金具40は、溝30の対向する2つの側面34a,34bに接触する2つの接触部44a,44bと、2つの接触部44a,44bの間に形成され、かつ、2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向への移動を許容するスリット42と、2つの接触部44a,44bを連結する連結部46a,46bと、2つの接触部44a,44bと連結部46a,46bとの間に設けられた屈曲部48a,48bと、を含む。
【0053】
金具40は、薄い平板状の金属製である。金具40の材質は、建築物の壁面に設けられることを考慮すると、耐腐食性に優れたものを採用することが好ましく、例えば、ステン
レスが好ましく、特にオーステナイト系ステンレス(例えばSUS304、SUS316等)が好ましい。
【0054】
金具40は、一方の連結部46aから2つの接触部44a,44bを介して他方の連結部46bまでが連続した無端状の部材である。スリット42は、その無端状の部材の中心部分に金具40の長手方向に沿って形成される。
【0055】
接触部44aは、スリット42を挟んで接触部44bと対向して配置された幅広の平板状である。接触部44aから接触部44bまでの幅(スリット42を含む)は、タイル10の溝30の幅に合わせて適宜設定することができ、溝30の幅(金具40が設置される部分の幅)よりもわずかに広いことが好ましい。金具40を溝30に配置したときに、接触部44a,44bが2つの側面34a,34bを確実に押圧するためである。
【0056】
接触部44a,44bは、金具40の長手方向に沿って形成される。このようにすると、接触部44a,44bの長さを長くとることができるので、接触部44a,44bと溝30の側面34a,34bとの接触面積を大きくすることができ、溝30に対する金具40の固定を確実にすることができる。
【0057】
スリット42の幅は、接触部44a,44bを両側から
図1の矢印の方向に押した際に破線のような接触部44a,44bが近接する方向への移動を許容する距離である。スリット42の幅は、溝30に金具40を押し込む際に、金具40が必要とする変形量と同じかそれよりも広くなければならない。
【0058】
連結部46aは、一方の端部を接触部44aの左端に屈曲部48aを介して接続し、他方の端部を接触部44bの左端に屈曲部48aを介して接続する、U字状の部分である。
【0059】
又、連結部46bは、一方の端部を接触部44aの右端に屈曲部48bを介して接続し、他方の端部を接触部44bの右端に屈曲部48bを介して接続する、U字状の部分である。なお、ここでは連結部46a,46bが2つある例について説明するが、1つでもよい。その場合には、例えば、接触部44a及び接触部44bの左端同士を連結する連結部46aを有し、接触部44a,44bの右端を解放端としてもよい。
【0060】
連結部46a,46bは、両側から
図1の矢印の方向に押した際に、破線で示すように2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ内側に弾性変形可能である。そして、接触部44a,44bの押圧力を解放すると実線で示す形状に復元する。連結部46a,46bは、少なくとも金具40を溝30に装着するために必要な接触部44a,44bの移動量について弾性変形することができる。このように、連結部46a,46bの弾性変形により、金具40を溝30の中に容易に装着できる。又、溝30の中では連結部46a,46bの弾性変形により復元することで、接触部44a,44bが溝30の対向する2つの側面34a,34bを押圧して確実に接触することができる。
【0061】
屈曲部48a,48bは、接触部44a,44bと連結部46a,46bとの間にある。屈曲部48a,48bは、接触部44a,44bに隣接して設けられる。接触部44a,44bが固定されるため、それに隣接する屈曲部48a,48bが屈曲させやすいからである。屈曲部48a,48bは、接触部44a,44bの幅よりも狭く、括れている。金具40を屈曲させるときに屈曲部48a,48bから確実に曲がるようにするためである。溝30内では接触部44a,44bが側面34a,34bに接触して固定されているので、細く括れた屈曲部48a,48bを設けずに、連結部46a,46bにおける接触部44a,44b寄りの位置で屈曲させてもよい。
【0062】
図2に示すように、連結部46a,46bの長手方向における先端が溝30の底面32との間にわずかな隙間を有するように屈曲部48a,48bで屈曲している。連結部46a,46bを上に持ち上げて屈曲させる際に連結部46a,46bを持ちやすくするためである。
【0063】
図2に破線で示すように、連結部46a,46bは、屈曲部48a,48bにおいて金具40を屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの少なくとも一部が突出可能な長さを有する。又、連結部46a,46bは、溝30の裏面20の開口幅よりも狭い幅を有する。金具40を溝30内に装着する際も、裏面20から突出させる際も移動や変形を妨げないためである。裏面20から突出することができる連結部46a,46bの一部がタイル10の脱落を防止することができるからである。
図2において破線で示した連結部46a,46bは、底面32に対して45度と90度の位置を示している。
【0064】
図2では、溝30の底面32と裏面20とを一点鎖線で示している。金具40は、接触部44a,44bの長さ全部が溝30の側面34a,34bに接触して固定されているため、連結部46a,46bを屈曲する角度は、貼付剤であるモルタルの厚さによって適宜設定することができる。
【0065】
2.タイル
図2~
図4を用いて、本実施形態に係るタイル10について説明する。
図4は一実施形態に係るPCコンクリート板の製造方法を説明する斜視図であって、タイル10を裏面20側から見た斜視図と、その斜視図の一部を拡大して示している。
【0066】
本実施形態に係るタイル10は、表面12と、表面12の反対側の裏面20に設けられた溝30と、溝30に固定された金具40と、を含む。上述の通り、金具40は、スリット42を挟んで設けられた2つの接触部44a,44bと、2つの接触部44a,44bを連結する連結部46a,46bと、を含む。
【0067】
図3の左下に示すように、タイル10に固定された金具40は、2つの接触部44a,44bが溝30の対向する2つの側面34a,34bに接触し、スリット42に変形防止部材60が配置されて2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ移動することが制限されている。このように、変形防止部材60によって接触部44a,44bの移動が制限されるため、金具40をタイル10に確実に固定することができる。特に溝30がいわゆる蟻溝である際に効果が高い。変形防止部材60は充填時には自在に変形が可能な高粘度の材質が好ましく、充填後は迅速に硬化して体積変化の小さい材質が好ましい。変形防止部材60が硬化する前の流動しやすい状態でスリット42内に確実に充填するために、接触部44a,44bのスリット42側に立ち上がり面を設けてもよい。なお、立ち上がり面については、変形例3の補強部として詳細に説明する。
【0068】
変形防止部材60は、接着剤であることができる。変形防止部材60として接着剤を用いることでスリット42への充填時には自在に変形可能で所望量を充填しやすく、硬化すればスリット42が埋められるため接触部44a,44bの移動を確実に制限することができる。接着剤としては、主剤と硬化剤とからなるものが好ましく、エポキシ系接着剤などがあり、硬化前の状態で比較的高粘度のもの(ペースト状、粘土状)が取り扱いやすいため好ましい。接着剤としては熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等を採用することができる。接着剤としては、金具40の材質に適したものを採用することができる。接着剤であれば、金具40との接着により変形防止部材60が外れるのが防止されるからである。又、接着剤であれば、金具40と溝30とを接着することにより金具40が外れるのを防止するからである。
【0069】
変形防止部材60の材質としては、スリット42の幅が変わらないようにできれば、固形状のものであってもよい。固形状の変形防止部材60がスリット42から外れないようにするために、変形防止部材60が弾性を有する金属、樹脂、ゴム等としてもよい。ゴム等を用いる場合には、剛性が高く変形しにくいものが望ましい。固形状の変形防止部材60については、後述する変形例3で詳細に説明する。
【0070】
変形防止部材60の量は、スリット42を全部埋める必要はない。変形防止部材60は、スリット42の幅が変わらないようにするためのものであるため、少なくともスリット42の幅全部に充填できればよい。又、変形防止部材60をスリット42の全幅に充填しない場合であっても、変形防止部材60が接触部44a,44bの一部に接触するようにすることで、接触部44a,44bの強度を高めて変形を抑えることによって金具40を溝30に固定してもよい。この場合は、スリット42の全幅に変形防止部材60を充填する場合に比べると、接触部44a,44bが近接する方向へ移動することを制限する力は弱いものとなる。
【0071】
図4に示すように、溝30は、タイル10の長手方向に沿って3本設けられている。溝30の数は、1本以上であればよい。
図3に示すように、溝30は、底面32と、底面32の両端から表面12へ延びる対向する2つの側面34a,34bと、を有する。底面32は、平坦な面であり、表面12から底面32までの高さは金具40の高さよりも高い。側面34a,34bは、底面32から裏面20へ向かって互いに近接するように傾斜している、いわゆる蟻溝である。したがって、
図3の左下の金具40のように、溝30の中に収容された金具40は、対向する2つの側面34a,34bと接触部44a,44bが接触していれば、スリット42の幅が変わらない限り溝30から抜け落ちることは無い。溝30が蟻溝でない場合(例えば、側面34a,34bが鉛直方向に延びる場合等)でも接触部44a,44bと側面34a,34bとの摩擦によって外れるのを防止してもよい。なお、より確実に金具40を溝30に固定するためには、変形防止部材60を用いることが好ましい。
【0072】
図2~
図4に示すように、連結部46a,46bは、裏面20から突出しない状態で溝30に収容されることができる。連結部46a,46bが裏面20から突出しないようにすることで、金具40を埋め込んだタイル10を重ねて梱包しても嵩張らず、市場流通性に優れることができる。すなわち、タイル10は、建築物の施工現場に搬入されるまで箱内に積み重ねた状態で運び込まれるのが一般的である。このとき、タイル10の裏面20から金具40の一部が突出していれば、タイル10の上に別のタイル10を載せることができず、又は載せることができたとしてもタイル10の表面12を金具40で傷つけてしまう恐れもある。しかし、
図2~
図4に示すように、流通段階ではタイル10の溝30の中に金具40が収容された状態であれば、タイル10を積み重ねることに支障はなく、タイル10の表面12を傷つける恐れもない。
【0073】
上述した通り、金具40は、連結部46a,46bに隣接し、金具40を屈曲する屈曲部48a,48bを含む。施工現場又はPCコンクリート板の製造現場においては、金具40が屈曲部48a,48bで屈曲された状態で、連結部46a,46bが裏面20から突出していてもよい。金具40を屈曲部48a,48bで折り曲げることにより、連結部46a,46bを裏面20から突出させてタイル10の脱落防止構造とすることができる。
【0074】
図1に示すように、金具40は、薄板であり、屈曲部48a,48bは括れて細いため、連結部46a,46bを指で持ち上げて容易に屈曲させることができる。金具40は、溝30の中に収容された状態で、連結部46a,46bが底面32との間にわずかに隙間
を有しているため、指やドライバーの先端等で持ち上げることができ、施工条件に合わせて適当な角度に設定することができる。
【0075】
3.金具の固定方法
次に、
図3及び
図4を用いて、本実施形態に係る金具40の固定方法について説明する。
図3では、左側の溝30において金具40の固定方法の工程を説明し、右側と中央の溝30において金具40を溝30の中に押し込む工程の他の態様について説明する。なお、
図3における金具40は、
図1におけるIII-III断面図であり、接触部44a,44bの状態がわかるようにしている。
【0076】
本実施形態に係る金具40の固定方法は、金具40を、タイル10に固定する固定方法である。
【0077】
図3の左上の金具40は、溝30に固定される前の状態で、金具40の2つの接触部44a,44bが互いに最も離間した状態(最も広い間隔を有する状態)にある。
【0078】
次に、
図3の左側の中間の金具40のように、矢印の方向に2つの接触部44a,44bを押して、2つの接触部44a,44bが互いに近接するように金具40を弾性変形させて溝30の中に配置する。このとき、接触部44aから接触部44bまでの幅は、溝30の開口幅(一点鎖線で示す)より狭い。金具40は、弾性変形する範囲で接触部44a,44bを近接させる。
【0079】
そして、
図3の左下の金具40のように、溝30の中で2つの接触部44a,44bが離間するように金具40が復元して溝30の対向する2つの側面34a,34bに2つの接触部44a,44bが接触する。金具40が溝30の中に配置された状態で、2つの接触部44a,44bは完全に復元されておらず、わずかに接触部44a,44bが対向する2つの側面34a,34bを押圧する程度に弾性変形分を残して(負荷をかけた状態にして)もよい。金具40の抜け止め効果を高めるためである。
【0080】
さらに、スリット42の幅を埋めるように変形防止部材60を充填して金具40を溝30に固定する。変形防止部材60は、スリット42の幅を埋めるように充填し、スリット42の幅を埋めたまま硬化することができる。このようにスリット42の幅を埋めるように充填し、その後硬化すれば接触部44a,44bの移動(スリット42の幅が変更すること)を確実に制限することができる。変形防止部材60は、例えば、接着剤である。
【0081】
本実施形態に係る金具40の固定方法によれば、金具40の弾性変形により、金具40を溝30の中に容易に装着できる。又、本実施形態に係る金具40の固定方法によれば、溝30の中では金具40が復元することで接触部44a,44bが溝30の側面34a,34bを押圧するように確実に接触することができる。特に、変形防止剤60を用いることで金具40の固定は確実となる。
【0082】
金具40の固定方法は、例えば、
図3の右側に示すように、まず接触部44bだけを溝30の中に入れた後、矢印の方向に接触部44aを押して、スリット42の幅を狭める。次に、
図3の中央に示すように、矢印の方向に金具40を押し込むことで溝30の中に金具40を配置してもよい。このようにすれば、金具40のわずかな弾性変形によって金具40を溝30の中に配置することができる。
【0083】
溝30の中に配置された金具40の幅は溝30の裏面20における開口幅よりも広いので、このままであれば金具40は裏面20側から抜け落ちることはない。本実施形態ではさらにスリット42の中に変形防止部材60が設けられることで、溝30の中で金具40
が確実に固定される。
【0084】
4.PCコンクリート板の製造方法
次に、
図4及び
図5を用いて、PCコンクリート板80の製造方法について説明する。
図4は一実施形態に係るPCコンクリート板80の製造方法を説明する斜視図であり、
図5は一実施形態に係るPCコンクリート板80の側面図である。本実施形態におけるPCコンクリート板80は、コンクリート板に複数のタイル10が固着して一体化したものである。
【0085】
図4に示すように、本実施形態に係るPCコンクリート板80の製造方法は、まず、上記「3.金具40の固定方法」によって得られたタイル10の裏面20から連結部46a,46bが突出するように金具40を屈曲する(
図4の左端及び拡大図)。次に、裏面20を上にして複数のタイル10を敷き並べ、裏面20側にコンクリートを打設してタイル10と一体化したPCコンクリート板80(
図5)を製造する。
【0086】
本実施形態に係るPCコンクリート板80の製造方法によれば、連結部46a,46bによって脱落が防止されたタイル10を用いたPCコンクリート板80を製造することができる。
【0087】
PCコンクリート板80の製造方法におけるコンクリートの打設は、公知の方法、例えば合成樹脂製のシートにタイルを接着してコンクリートを打設するタイルシート法などを採用することができる。
【0088】
なお、
図4では連結部46a,46bを90度に曲げた例を示したが、これに限らず、所望の角度を選択できる。又、金具40の数は、タイル10のサイズによって適宜設定できる。
【0089】
5.タイルの施工方法
図6を用いて本実施形態に係るタイル10の施工方法について説明する。
図6は、一実施形態に係るタイル10の施工方法を説明する側面図である。本実施形態におけるタイル10の施工方法は、コンクリート壁面等にタイル10を施工する方法である。
【0090】
本実施形態に係るタイル10の施工方法は、まず、上記「3.金具の固定方法」によって得られたタイル10の裏面20から連結部46a,46bが突出するように金具40を屈曲する。次に、連結部46a,46bが壁面90側のモルタル92に埋設されるように、タイル10を壁面90に貼り付ける。
【0091】
本実施形態に係るタイル10の施工方法によれば、連結部46a,46bがモルタル92に埋設されることにより壁面90からのタイル10の脱落を確実に防止することができる。
【0092】
6.変形例1
図7を用いて、変形例1に係る金具40aについて説明する。
図7は、変形例1に係る金具40aの側面図である。金具40aの基本的構成は
図1~
図3の金具40の構成と同様であるので、重複する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0093】
図7に示すように、金具40aの連結部46a,46bは屈曲部48a,48bで上方に45度屈曲されている。金具40aの連結部46a,46bには複数の凸部50a,50b,52a,52bが形成されるように折り曲げられている。このように複数の凸部50a,50b,52a,52bを設けることにより、連結部46a,46bはモルタルの
ような貼付剤やコンクリートと強固に接合され、タイル10の脱落を防止できる。
【0094】
連結部46a,46bに設ける凸部50a,50b,52a,52bの形態は、タイル10がモルタル等の貼付剤から剥がれ落ちるのを防止するものであれば適宜採用できる。
【0095】
7.変形例2
図8を用いて、変形例2に係る金具40bについて説明する。
図8は、変形例2に係る金具40bの平面図である。金具40bの基本的構成は
図1~
図3の金具40の構成と同様であるので、重複する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
金具40bは、金属の線材で形成される。金属の線材は横断面円形のものであってもよいし、横断面多角形のものであってもよい。
【0097】
金具40bは、線材からなるため、全体に柔軟であり、金具40bを溝30に押し込む際には、連結部46a,46bだけでなく、接触部44a,44bも弾性変形することができる。接触部44aは、2つに分割している。金具40bが1本の線材で構成されるため、接触部44aがその端部に位置するからである。屈曲部48a,48bは、他の部分よりも細く括れていることが好ましい。屈曲部48a,48bが屈曲の起点となりやすくするためである。
【0098】
金具40bを線材で構成することにより、金具40bの製造コストを低減することができる。又、金具40bは、適度な弾性を有するばね用鋼材を選択してもよい。
【0099】
8.変形例3
図9及び
図10を用いて、変形例3に係る金具40cについて説明する。
図9は、変形例3に係る金具40cの斜視図であり、
図10は、変形例3に係る金具40cを溝30に固定する方法を説明する断面図である。
図10における金具40cは
図9のA-A断面で示す。溝30及び金具40cの基本的構成は
図1~
図3の溝30及び金具40の構成と同様であるので、重複する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0100】
8-1.金具
図9及び
図10に示すように、タイル固定用の金具40cは、タイル10の裏面20の溝30に固定する金具40cであって、溝30の対向する2つの側面34a,34bに接触する2つの接触部44a,44bと、2つの接触部44a,44bの間に形成され、かつ、2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向への移動を許容するスリット42と、2つの接触部44a,44bを連結する連結部46a,46bと、を含む。接触部44a,44bは、接触部44a,44bに沿って延びる補強部440a,440bを含む。2つの連結部46a,46bは、補強部440a,440bが形成されていない部分で金具40cを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの少なくとも一部が突出可能な長さを有する。
【0101】
金具40cは、例えば、金属製の薄板をプレスにより打ち抜き加工及び曲げ加工して得ることができる。
【0102】
裏面20から突出する連結部46a,46bがタイル10の脱落を防止できる。特に、補強部440a,440bによって接触部44a,44bの変形を抑えることができる。補強部440a,440bが変形を抑えることで接触部44a,44bと溝30の側面34a,34bとの接触状態を確実に維持することができる。
【0103】
補強部440a,440bは、接触部44a,44bのスリット42側から図の上方へ
立上る面を有する。補強部440a,440bは、接触部44a,44bに対し90度の角度で屈曲して形成される。この屈曲角度は、連結部46a,46bを裏面20側へ曲げる際に接触部44a,44bが変形しない強度を与えることができる範囲で適宜設定できる。金具40cが金属板を打ち抜き加工して得られる場合には、曲げ加工により補強部440a,440bを形成してもよい。
【0104】
補強部440a,440bは、貫通孔442a,442bを有する。板状の変形防止部材60aの一部を挿入し、固定するためである。貫通孔442a,442bは、金具40cの長手方向に延びる細長い孔である。
【0105】
変形例3では、変形防止部材60aとして板状体の例を示すため、補強部440a,440bに貫通孔442a,442bを設けたが、変形防止部材として流動しやすい材料(接着剤等)を用いた場合には貫通孔442a,442bを設けなくてもよい。変形防止部材を補強部440a,440b間に充填するためである。接着剤のような流動しやすい材料は、高さのある補強部440a,440bの間に充填しやすく、作業性に優れる。
【0106】
金具40cは、金具40cに対し着脱可能な変形防止部材60aを含む。変形防止部材60aは、金具40cを溝30に装着する前であれば金具40cに対し着脱可能である。変形防止部材60aは、2つの接触部44a,44bに固定することができる金属製又は合成樹脂製の部材であってもよい。接触部44a,44bに固定された金属製又は合成樹脂製の変形防止部材60aにより、接触部44a,44bの移動が機械的に制限できる。
【0107】
変形防止部材60aは、スリット42に配置されて接触部44a,44bに固定されることで2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ移動することを制限する。
【0108】
変形防止部材60aは、弾性変形可能な板状の部材であり、厚さが貫通孔442a,442bの幅よりも薄く、第1幅L1及び第2幅L2を有する。第1幅L1は第2幅L2より大きく、第2幅L2はスリット42の幅と略同じである。変形防止部材60aの形状は、接触部44a,44bの近接方向の移動を制限できれば他の形状を採用することができる。変形防止部材60aは、金属製の薄板をプレスにより打ち抜き加工して得られた金属板を用いることができる。又、変形防止部材60aは、弾性を有する合成樹脂製の部材であってもよい。
【0109】
8-2.固定方法
図10を用いて、金具40cを、タイル10に固定する固定方法について説明する。
【0110】
金具40cの接触部44a,44bを近接するように弾性変形させ、溝30の開口よりも狭くしながら、金具40cを溝30の中に配置する。金具40cは溝30の底面32上に配置する。溝30の中で2つの接触部44a,44bが離間するように金具40cを変形(復元)させて、溝30の対向する2つの側面34a,34bに2つの接触部44a,44bを接触させる。溝30は、底面32より開口の方が狭いので、金具40cは溝30内から抜け落ちることはない。
【0111】
スリット42に変形防止部材60aを配置して、変形防止部材60aを接触部44a,44bに固定する。変形防止部材60aは、スリット42の幅よりも小さくなるように湾曲させながらスリット42に配置する。そして、変形防止部材60aの第1幅L1を有する部分を貫通孔442a,442b内に差し込み、第2幅L2の部分を補強部440a,440bに当てる。2つの接触部44a,44bの幅は溝30の底面32の幅と略同一であり、変形防止部材60aが補強部440a,440bの間隔を第2幅L2に維持する。変形防止部材60aが2つの接触部44a,44bの近接する方向への移動を制限すると
共に、金具40cを溝30に固定するため、金具40cを溝30に確実に固定することができる。
【0112】
8-3.タイル
図10に示すように、タイル10は、溝30に金具40cを収容する。連結部46a,46bを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46b(
図10では一点鎖線で示した)の一部を突出させることができる。突出した部分が建物の壁面のモルタルに埋設されて、タイル10を壁面に確実に貼り付けることができる。
【0113】
金具40cの変形防止部材60aは、2つの接触部44a,44bに固定された金属製又は合成樹脂製の部材である。ここでは金属製の薄板を用いる例について説明する。接触部44a,44bに固定された金属製の変形防止部材60aにより、接触部44a,44bの移動が機械的に制限できる。又、タイル10に金具40cを固定した状態で、連結部46a,46bを図の上方へ持ち上げても、補強部440a,440bによって接触部44a,44bの変形が抑えられる。さらに上方へ持ち上げると、連結部46a,46bは、接触部44a,44b寄りの位置が屈曲部48a,48bとなって折れ曲り、塑性変形することで一部を裏面20から突出させた状態を維持することができる。
【0114】
9.変形例4
図11及び
図12を用いて、変形例4に係る金具40dについて説明する。
図11は、変形例4に係る金具40dの斜視図であり、
図12は、変形例4に係る金具40dを溝30に固定する方法を説明する断面図である。
図12における金具40dは
図11のB-B断面で示す。溝30及び金具40dの基本的構成は
図1~
図3の溝30及び金具40の構成と同様であるので、重複する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0115】
9-1.金具
図11に示すように、タイル固定用の金具40dは、タイル10の裏面20の溝30に固定する金具40dであって、溝30の対向する2つの側面34a,34bに接触する2つの接触部44a,44bと、接触部44a,44bから金具40dの長手方向に延びる脱落防止部としての連結部46a,46bと、2つの接触部44a,44bの間で接触部44a,44bと一体に形成された変形防止部62a,62bと、を含む。
【0116】
金具40dは、例えば、金属製の薄板をプレスにより打ち抜き加工及び曲げ加工して得ることができる。
【0117】
接触部44a,44bは、第1部分444a,444bと、第1部分444a,444bに連続する第2部分446a,446bと、第2部分446a,446bに連続する第3部分448a,448bと、を含む。
【0118】
第1部分444a,444bは、連結部46a,46bと同じ高さで連続する環状の薄板の一部を構成する。第1部分444a,444bの長手方向の両端から連結部46a,46bが当該長手方向に延在する。
【0119】
第2部分446a,446bは、第1部分444a,444bの幅方向の外側の端部から図の下方に延びる。第2部分446a,446bは、接触部44a,44bを補強する補強部である。第2部分446a,446bの間隔は、第3幅L3であり、スリット42の幅と同じである。
【0120】
第3部分448a,448bは、第2部分446a,446bの図の下端から水平方向の外側に延びる部分である。第3部分448a,448bの位置の金具40dの全幅は、
第4幅L4であり、溝30の開口幅と同じかわずかに狭い。溝30に配置しやすくするためである。第3部分448a,448bの先端は、溝30内に配置されて、所定操作の後に、側面34a,34bに接触する。
【0121】
連結部46a,46bは、連結部46a,46bを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの少なくとも一部が突出可能な長さを有する。連結部46a,46bの一部が突出することで、タイル10の脱落を防止することができる点で脱落防止部としての機能を有する。連結部46a,46bを屈曲させると、補強部である第2部分446a,446b付近の屈曲部48a,48bで曲がる。屈曲部48a,48bは曲げやすくするための特別な形状を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0122】
第3部分448a,448bと連結部46a,46bとは溝30に配置されたときの高さが異なる。第3部分448a,448bが溝30の底面32に配置されたときに、連結部46a,46bと底面32との間に所定の隙間ができることで、連結部46a,46bを持ち上げやすくすることができる。
【0123】
変形防止部62a,62bは、図の上方に屈曲した状態で接触部44a,44bの第1部分444a,444bの間に延在する。変形防止部62a,62bは、第1部分444a,444bと一体である。変形防止部62a,62bの屈曲状態は、金具40dを曲げ加工して得ることができる。
【0124】
変形防止部62a,62bは、
図12に示すように、溝30内に収容された状態で矢印Pの方向に押されて屈曲状態から平らな状態に変形させることができる。平らな状態を維持するために、例えば、金具40dは熱処理されてない生材を用いることができる。
【0125】
変形防止部62a,62bは、接触部44a,44bが側面34a,34bに接触した状態で、2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ移動することを制限する。すなわち、変形防止部62a,62bが延びて平らな状態にあることで、第3部分448a,448bが側面34a,34bに押し付けられた状態を維持することができ、タイル10から金具40dが脱落することを防止する。
【0126】
連結部46a,46bは、
図1と同様に、無端状の金具40dの両端を構成する。連結部46a,46bの長手方向における先端は、変形防止部62a,62bと同様に屈曲して形成されているが、変形防止部62a,62bを平らにしたときの当該先端の復元力が小さければ平らであってもよい。
【0127】
第1部分444a,444bがスリット42を有さず、第1部分444a,444bの間隔全体が変形防止部62a,62bに形成されてもよい。また、連結部46a,46bもスリット42を有する形態に限らず、変形防止部62a,62bに連続する屈曲した一枚の板であってもよい。
【0128】
9-2.固定方法
図12を用いて金具40dを、タイル10に固定する固定方法について説明する。
【0129】
金具40dを溝30の中に配置し、溝30の中で2つの接触部44a,44bが離間するように金具40dを変形させて、溝30の対向する2つの側面34a,34bに2つの接触部44a,44bを接触させ、変形防止部62a,62bが2つの接触部44a,44bの近接する方向への移動を制限することで、金具40dを溝30に固定する。
【0130】
金具40dの変形は、屈曲した状態の変形防止部62a,62bを、矢印Pの負荷を与
えることにより押し広げて平らにすることで行う。完全に平らにしなくてもよいし、反対側にわずかに屈曲(反転)させてもよい。押し広げられた変形防止部62a,62bは、矢印Pの負荷を取り除いても屈曲状態に復元しない。
【0131】
このように金具40dを変形させることにより、接触部44a,44b(第3部分448a,448b)を溝30の側面34a,34bに接触させることができ、変形防止部62a,62bが接触部44a,44bの移動を制限することにより、金具40dを溝30の中に確実に固定できる。
【0132】
また、連結部46a,46bを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの一部を突出させることができ、突出した部分が建物の壁面のモルタルに埋設されて、タイル10を壁面に確実に貼り付けることができる。
【0133】
9-3.タイル
金具40dが取り付けられたタイル10について説明する。
【0134】
タイル10は、裏面20に設けられた溝30と、溝30に固定された金具40dと、を含む。金具40dは、溝30の対向する2つの側面34a,34bに接触する2つの接触部44a,44bと、接触部44a,44bから金具40dの長手方向に延びる脱落防止部である連結部46a,46bと、2つの接触部44a,44bの間で接触部44a,44bと一体に形成された変形防止部62a,62bと、を含む。
【0135】
脱落防止部である連結部46a,46bは、連結部46a,46bを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの少なくとも一部が突出可能な長さを有する。突出した連結部46a,46bの部分が建物の壁面のモルタルに埋設されて、脱落防止の機能を発揮して、タイル10を壁面に確実に貼り付けるためである。
【0136】
変形防止部62a,62bは、接触部44a,44bが側面34a,34bに接触した状態で、2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ移動することを制限する。
図12では変形防止部62a,62bが屈曲しているが、タイル10に金具40dが固定された状態では、変形防止部62a,62bは押し広げられて平らになっている。第2部分446a,446bの間隔は、広げられた状態で第3幅L3より大きく設定され、第3部分448a,448bの先端は側面34a,34bに接触している。押し広げられた変形防止部62a,62bによって接触部44a,44bの移動が制限されるため、金具40dがタイル10に確実に固定される。
【0137】
10.変形例5
図13及び
図14を用いて、変形例5に係る金具40eについて説明する。
図13は、変形例5に係る金具40eの変形前の斜視図であり、
図14は、変形例5に係る金具40eの変形後の斜視図である。溝30及び金具40eの基本的構成は
図1~
図3の溝30及び金具40の構成と同様であるので、重複する構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0138】
図13及び
図14に示す金具40eは、変形防止部64a,64bが金具40dと異なる以外は基本的に金具40dと同じである。
【0139】
図13に示すように、変形防止部64a,64bは、第1部分444a,444bと同じ平面内で互いに近接する方向に湾曲した形状を有している。変形防止部64a,64bは、第1部分444a,444bと同じ薄板の一部であり、第1部分444a,444bと一体である。
【0140】
図13の内側に湾曲して形成された変形防止部64a,64bを矢印の方向へ押し広げると、
図14に示すように、変形防止部64a,64bが真っ直ぐに延びるように変形してスリット42の間隔を広げて第5幅L5から第6幅L6へと変更する。真っ直ぐに延びるように変形した変形防止部64a,64bは、湾曲する方向へ復元しない。
【0141】
そのため、変形防止部64a,64bは、接触部44a,44bが側面34a,34bに接触した状態で、2つの接触部44a,44bが互いに近接する方向へ移動することを制限することができる。そして、この状態で連結部46a,46bを屈曲させることで裏面20から連結部46a,46bの突出した部分が建物の壁面のモルタルに埋設されて、脱落防止の機能を発揮して、タイル10を壁面に確実に貼り付けることができる。
【0142】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。又、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。又、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。又、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0143】
10…タイル、12…表面、20…裏面、30…溝、32…底面、34a,34b…側面、40,40a,40b,40c,40d,40e…金具、42…スリット、44a,44b…接触部、46a,46b…連結部、48a,48b…屈曲部、50a,50b,52a,52b…凸部、60,60a…変形防止部材、62a,62b,64a,64b…変形防止部、80…PCコンクリート板、90…壁面、92…モルタル、440a,440b…補強部、442a,442b…貫通孔、444a,444b…第1部分、446a,446b…第2部分、448a,448b…第3部分、L1…第1幅、L2…第2幅、L3…第3幅、L4…第4幅、L5…第5幅、L6…第6幅