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  • 特許-触感検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】触感検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01L5/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018031396
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019144213
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503061485
【氏名又は名称】株式会社テック技販
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 和美
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122363(JP,A)
【文献】特開2011-153826(JP,A)
【文献】特開平04-271403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0176266(US,A1)
【文献】特開2001-282099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を載置するプレートと、
当該プレートに掛かる荷重を検出する複数の荷重検出センサーと、
当該荷重検出センサーを用いて、指が前記検体に接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段と、
前記複数の荷重検出センサーに掛かる荷重から前記検体に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段と、
前記荷重算出手段で検出された荷重と前記移動状態算出手段で算出された移動速度から、前記指と前記検体との触感を数値化する触感値算出手段と、
を備えたことを特徴とする触感検出装置。
【請求項2】
前記荷重検出センサーが、前記プレートの離れた少なくとも三箇所以上の位置に設けられるものである請求項1に記載の触感検出装置。
【請求項3】
前記移動状態算出手段が、所定時間毎に前記複数の荷重検出センサーの荷重から指の荷重位置を算出し、当該荷重位置の移動時間から移動速度を算出するものである請求項1に記載の触感検出装置。
【請求項4】
前記荷重検出センサーを用いて振動波形も抽出するようにした請求項1に記載の触感検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を触った際の触感を数値化して評価できるようにした触感検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人間が物体を触った場合、その物体から受ける反力や摩擦などによって感覚が大きく変わる。例えば、人間が固い板などを触った場合、指が受ける反力は指の押圧力に敏感に反応して反力が大きくなり、一方、柔らかい布やスポンジなどを触った場合、指の押圧力に対してゆっくりと反力が大きくなる。また、人間が物体をなぞるように触った場合は、その物体の表面の状態や、人間の指との粘性などによって触感が変わる。このため、これらの触感を定量的に数値化することで、検体の表面の状態を評価することができる。
【0003】
しかしながら、従来、人間の触感を数値化する場合、指による反力や波形を計測したり(特許文献1など)、あるいは、指の押圧力に対する反力からクーロン摩擦係数などを算出して数値化したりすることしかできなかったため、指で物体をなぞるように触った際における粘性に基づく触感などを評価することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-332917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、反力だけでなく、人間の指の動きによる触感なども考慮して検体から受ける触感を数値化して評価できるようにした触感検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、検体を載置するプレートと、当該プレートに掛かる荷重を検出する複数の荷重検出センサーと、当該荷重検出センサーを用いて、指が前記検体に接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段と、前記複数の荷重検出センサーに掛かる荷重から前記検体に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段と、前記荷重算出手段で検出された荷重と前記移動状態算出手段で算出された移動速度から、前記指と前記検体との触感を数値化する触感値算出手段とを備えるようにしたものである。
【0007】
このように構成すれば、荷重に基づくクーロン摩擦係数だけでなく、移動速度などに基づく粘性摩擦係数なども算出することができるため、より人間の触感に近い感覚を数値化して評価することができるようになる。
【0008】
また、このような発明において、前記荷重検出センサーを、前記プレートの離れた少なくとも三箇所以上の位置、好ましくは、プレートの四隅近傍に設けるようにする。
【0009】
このように構成すれば、荷重検出センサーによる荷重に基づいてクーロン摩擦係数を算出することができるとともに、この荷重検出センサーによって荷重位置を算出することができるため、移動状態に基づく粘性摩擦係数も算出することができるようになる。
【0010】
このとき、好ましくは、前記移動状態算出手段で移動状態を算出する場合、所定時間毎に前記複数の荷重検出センサーの荷重から指の荷重位置を算出し、当該荷重位置の移動時間から移動速度を算出する。
【0011】
このように構成すれば、同じ荷重検出センサーを用いて荷重に基づくクーロン摩擦係数と移動状態に基づく粘性摩擦係数を同時に算出することができるようになる。
【0012】
さらには、前記荷重検出センサーを用いて振動情報も抽出する。
【0013】
このように構成すれば、クーロン摩擦係数や粘性摩擦係数などの他に、振動情報を抽出することで、より人間の触感に近い情報を抽出して評価することができる。なお、ここで振動情報としては、振動波形の他、スペクトルなどの情報を抽出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検体を載置するプレートと、当該プレートに掛かる荷重を検出する複数の荷重検出センサーと、当該荷重検出センサーを用いて、指が前記検体に接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段と、前記複数の荷重検出センサーに掛かる荷重から前記検体に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段と、前記荷重算出手段で検出された荷重と前記移動状態算出手段で算出された移動速度から、前記指と前記検体との触感を数値化する触感値算出手段とを備えるようにしたので、荷重に基づくクーロン摩擦係数だけでなく、移動速度に基づく粘性摩擦係数も算出することができ、より人間の触感に近い感覚を評価することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態を示す触感検出装置の側面概略図
図2】同形態における触感検出装置の平面概略図
図3】同形態における機能ブロック図
図4】他の実施の形態における機能ブロック図
図5】同形態における触感検出装置のフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
この実施の形態における触感検出装置1は、布などの平面的な検体8の触感を数値化して評価できるようにしたものであって、図1図2に示すように、検体8を載置するための平面状のプレート2と、そのプレート2の四隅近傍に設けられた荷重検出センサー3とを備えて構成される。そして、特徴的に、そのプレート2に載置・固定された検体8を指で押圧させながらなぞるように移動させる際に、そのプレート2の鉛直方向下向きの荷重とプレート2の平面方向に沿った荷重を検出し、また、四隅近傍に設けられた荷重検出センサー3から指の押圧部分であるCOPを求める。そして、そのCOPの移動時間から指の移動速度などを検出し、その、鉛直下方向の荷重やプレート2の平面方向の荷重や移動速度などから、クーロン摩擦係数や粘性摩擦係数などを算出して触感を数値化できるようにしたものである。以下、本実施の形態における触感検出装置1について詳細に説明する。
【0018】
まず、プレート2は、正方形状あるいは長方形状の透明体で構成されている。このプレート2の表面には検体8を載置できるようになっており、固定具81を用いてその検体8を平面状に引っ張った状態に取り付けて移動できないようにしている。このような固定具81としては、クリップなどのような挟持具であってもよいし、あるいは、両面テープなどの粘着体であってもよい。また、ここでプレート2を透明体にしておけば、プレート2の下方からカメラで検体8の裏面側を撮影することなどができ、荷重検出センサー3によるCOPの検出だけでなく、カメラによって指の位置などを撮影して移動速度などを算出することもできるようになる。
【0019】
荷重検出センサー3は、このプレート2の四隅近傍に設けられるものであって、互いに直交するXYZ方向の荷重の他、XYZ軸回りのモーメントなどを検出できるようにしたものが用いられる。ここでは、プレート2の鉛直方向をZ軸とし、プレート2の平面に沿った方向をX軸やY軸として説明する。このような荷重検出センサー3としては、ひずみゲージ式のセンサーや、圧電式センサーなどを用いることができるが、ここでは、長期的なモニタリングに適したひずみゲージ式の荷重検出センサー3を用いるようにする。これらの、荷重検出センサー3からの出力値は、それぞれ荷重算出手段4や移動状態算出手段5に出力され、そこで指の押圧による荷重や指の移動状態などが算出される。
【0020】
この荷重算出手段4では、各荷重検出センサー3から出力されてきた信号のうち、Z軸方向の荷重の合計と、XY平面方向の荷重の合計が算出される。Z軸方向の荷重を算出する場合、各荷重検出センサー3からのZ軸方向の荷重を合計してPzを算出し、また、XY平面方向に掛かる荷重を算出する場合、X軸方向の荷重の合計Pxと、Y軸方向の荷重の合計Pyを算出し、それらの合力をPxyとして算出する。そして、これらZ軸方向の荷重PzやPxyをサンプリング時間毎に記憶しておく。
【0021】
一方、移動状態算出手段5では、各荷重検出センサー3から出力されたZ軸方向の荷重から指の押圧部分の座標であるCOPを算出する。この指の荷重位置であるCOPを算出する場合、プレート2の下方に設けられた右前方の荷重検出センサー3の出力値をPFR(Front Right)、左前方の荷重検出センサー3の出力値をPFL(Front Left)、右後方の荷重検出センサー3の出力値をPBR(Back Right)、左後方の荷重検出センサー3の出力値をPBL(Back Left)とした場合、モーメントの釣り合い式によって次のようにCOP(Gx,Gy)が算出される。
【0022】
<式1>
Gx=(PFR+PBR)×Lx/(PFR+PFL+PBR+PBL)
Gy=(PFR+PFL)×Ly/(PFR+PFL+PBR+PBL)
【0023】
なお、ここでLx、LyはX方向やY方向の荷重検出センサー3の距離である。
【0024】
そして、この式1を用いてサンプリング時間毎にCOPの座標を算出し、そのサンプリング時間の差からCOPの移動距離を算出する。そして、その移動距離をサンプリング時間で割ってCOPの移動速度を算出する。なお、ここでは、COPの移動速度を算出するようにしているが、移動の加速度も検出するようにしてもよい。このような加速度を検出する場合、前後のサンプリング時間で加速度がゼロの場合、すなわち、等速で指を移動させている際における移動速度などを抽出するようにするとよい。
【0025】
このように荷重算出手段4で算出されたPz、Pxyや、移動状態算出手段5で算出された移動速度Vは、触感値算出手段6に出力され、そこで、触感のための指標が算出される。この触感値算出手段6で触感を数値化して出力する場合、次の関係式を用いる。
【0026】
<式2>
【0027】
Pxy=μPz+γV
【0028】
ここで、「μ」はクーロン摩擦係数であり、「γ」は粘性摩擦係数である。このクーロン摩擦係数μは、プレート2の法線方向の荷重に積算されるものであり、また、粘性係数は物体である指の移動速度に積算されるものである。
【0029】
そして、少なくとも2つのサンプリング時間のPxy、Pz、Vに基づいて、式2から未知数であるクーロン摩擦係数μと粘性摩擦係数γを算出する。なお、これらの係数を算出する場合、サンプリング時間が多い場合は、サンプリング時間ごとにクーロン摩擦係数μと粘性摩擦係数γを算出し、それらの平均値などを算出するようにしてもよい。そして、これらのクーロン摩擦係数μや粘性摩擦係数γを記憶部7に記憶させておき、その検体8の触感のための指標として出力できるようにしておく。
【0030】
次に、このように構成された触感検出装置1の使用方法について、図5を用いて説明する。
【0031】
まず、検体8の触感を検出する場合、プレート2の表面に検体8を載せてシワのない状態に引っ張って固定しておき、その状態で各荷重検出センサー3の出力値をゼロに初期設定する(ステップS1)。
【0032】
そして、このように初期設定が終わった後、検体8の表面を指で押圧し、そのプレート2の平面方向になぞっていく。すると、プレート2の四隅近傍に設けられた荷重検出センサー3からXYZ軸方向の荷重が検出され(ステップS2)、荷重算出手段4や移動状態算出手段5に出力される(ステップS3)。
【0033】
荷重算出手段4では、まず、各荷重検出センサー3からのZ軸方向の荷重の合計を算出してPzを算出する(ステップS4)。また、これと並行してX軸方向の荷重の合計とY軸方向の荷重の合計を算出し、これらの合力であるPxyの値を算出する(ステップS4)。
【0034】
また、移動状態算出手段5では、各荷重検出センサー3から出力されたZ軸方向の荷重から、式1を用いて指の押圧部分の座標であるCOPを算出する(ステップS5)。
【0035】
そして、COPをサンプリング時間ごとに算出し、その時間とCOPの距離から指の移動速度Vを算出する(ステップS6)。
【0036】
そして、この移動速度Vや、先に荷重算出手段4で算出されたPz、Pxyを用い、複数のサンプリング時間ごとに式2を用いてクーロン摩擦係数μや粘性摩擦係数γを算出する(ステップS7)。
【0037】
そして、このように算出されたクーロン摩擦係数μや粘性摩擦係数γを記憶部7に記憶させ、検体8の触感として出力して評価できるようにする。
【0038】
このように上記実施の形態によれば、検体8を載置するプレート2と、当該プレート2に掛かる荷重を検出する複数の荷重検出センサー3と、当該荷重検出センサー3を用いて、指が前記検体8に接触した際におけるXYZ方向の荷重を検出する荷重算出手段4と、前記複数の荷重検出センサー3に掛かる荷重から前記検体8に掛かる荷重位置の移動速度を算出する移動状態算出手段5と、前記荷重算出手段4で検出された荷重と前記移動状態算出手段5で算出された移動速度から、前記指と前記検体8との触感を数値化する触感値算出手段6とを備えるようにしたので、荷重に基づくクーロン摩擦係数だけでなく、移動状態に基づく粘性摩擦係数も算出することができ、より人間の触感に近い感覚を評価することができるようになる。
【0039】
また、前記荷重検出センサー3を、前記プレート2の四隅近傍に設けるようにしたので、荷重検出センサー3によって荷重を検出してクーロン摩擦係数を算出することができるとともに、この荷重検出センサー3によって荷重位置を算出することができ、移動状態に基づく粘性摩擦係数も算出することができるようになる。
【0040】
さらに、前記移動状態算出手段5で移動状態を算出する場合、所定時間毎に前記複数の荷重検出センサー3の荷重からCOPを算出し、当該COPの移動時間から移動状態を算出するようにしたので、同じ荷重検出センサー3を用いて荷重に基づくクーロン摩擦係数と移動状態に基づく粘性摩擦係数を同時に算出することができるようになる。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、荷重検出センサー3を用いてPxy、Pz、Vなどを算出できるようにしたが、荷重検出センサー3を用いてXY平面方向に沿った荷重の振動波形も抽出するようにして、これを触感の指標とできるようにしてもよい。この場合、指の移動速度によって振動波形も異なるため、時間-荷重(Pxy)の振動波形を速度Vを用いて標準化し、同じ速度での振動波形を算出するようにしてもよい。そして、図4に示すように、その振動波形を周波数解析手段9を用いて周波数解析し、所定の閾値を越えるスペクトルを有する周波数を触感のための指標として記憶させるようにしてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、プレート2の四隅近傍に荷重検出センサー3を設けるようにしたが、指の座標やXYZ方向の荷重を検出できるのであれば、少なくとも非直線的な3箇所以上の位置に荷重検出センサー3を設けるようにしてもよい。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、検体8と指との間におけるクーロン摩擦係数や粘性摩擦係数を算出するようにしたが、プレート2上で検体8を移動させることによって、検体8とプレート2との間におけるクーロン摩擦係数や粘性摩擦係数、振動波形などを算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1・・・触感検出装置
2・・・プレート
3・・・荷重検出センサー
4・・・荷重算出手段
5・・・移動状態算出手段
6・・・触感値算出手段
7・・・記憶部
8・・・検体
81・・・固定具
9・・・周波数解析手段
図1
図2
図3
図4
図5