(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】帯鋸刃巻取装置及びそれを備えた帯鋸盤
(51)【国際特許分類】
B23D 55/00 20060101AFI20220113BHJP
B23D 53/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B23D55/00 Z
B23D53/00
(21)【出願番号】P 2020189045
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2021-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042612
【氏名又は名称】浅見工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092808
【氏名又は名称】羽鳥 亘
(74)【代理人】
【識別番号】100140981
【氏名又は名称】柿原 希望
(72)【発明者】
【氏名】猪平 大典
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-202221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 53/00-55/10
B27B 13/00-13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ホイールと従動ホイールに環状の帯鋸刃が架設され前記駆動ホイールの回転駆動により走行する前記帯鋸刃でワークの切断作業を行うものとした帯鋸盤における帯鋸刃走行経路上の所定位置に付設され、前記帯鋸刃の交換時にそれを帯鋸刃巻取部で巻取って収納することで前記帯鋸盤から取外し可能な状態にする帯鋸刃巻取装置であって、前記帯鋸刃巻取部は、その中心位置を通って前記帯鋸刃を通過させるための開口部が前記帯鋸刃を収納する収納ケースの外周面対角位置に形成されているとともに前記帯鋸盤側に着脱可能な状態で装着され、前記
収納ケースの中心位置には、前記帯鋸刃の通過方向に対しその中心軸線を直角にして配置されるとともに基端側に
モータを有した巻取軸が、前記中心軸線の位置で前記帯鋸刃を直角に通過させるスリットが先端面から形成された状態で挿設されており、前記帯鋸刃の交換時に、その環状の少なくとも1部が切断されて1本の帯状となった前記帯鋸刃が、前記スリットを挿通した状態で前記巻取軸が回転動作を行うことにより、前記帯鋸刃が前記巻取軸で巻取られて前記
収納ケース内に総て収納され、所定の着脱操作手段により前記帯鋸刃巻取部とともに前記帯鋸盤から取り外される、ことを特徴とする帯鋸刃巻取装置。
【請求項2】
前記巻取軸は、その先端側で前記スリットを間に形成している一対の挟み爪の間隔を変更するように先端側を開閉する動作が可能とされており、前記帯鋸刃の巻取り時に、前記スリットに挿通した前記帯鋸刃を前記挟み爪で挟み込んだ状態とし、ワーク切断作業時及び前記帯鋸刃巻取部の取り外し時には、前記挟み爪を開いて前記スリットの幅を前記帯鋸刃の厚さよりも広げるものとされている、ことを特徴とする請求項1に記載した帯鋸刃巻取装置。
【請求項3】
駆動ホイールと従動ホイールに環状の帯鋸刃が架設され前記駆動ホイールの回転駆動により走行する前記帯鋸刃でワークの切断作業を行うとともにその帯鋸刃走行経路上の所定位置に、請求項1又は2に記載した帯鋸刃巻取装置が付設されている帯鋸盤において、前記帯鋸刃走行経路上で前記帯鋸刃巻取装置の付設位置とは異なる位置に、前記帯鋸刃を切断するための帯鋸刃切断手段が配設されており、遠隔的に環状の前記帯鋸刃を所定位置で切断する操作が可能とされている、ことを特徴とする帯鋸盤。
【請求項4】
前記帯鋸刃切断手段は、前記帯鋸刃走行経路上でワーク切断部の左右両側に対で配設されている、ことを特徴とする請求項3に記載した帯鋸盤。
【請求項5】
前記帯鋸刃巻取装置は、前記駆動ホイールと前記従動ホイールに架設されて前記帯鋸刃が互いに反対方向に進むように並列した2条の走行部分のうち、ワーク切断部側とは反対側の条において、前記駆動ホイール寄りと前記従動ホイール寄りの左右2箇所に付設されている、ことを特徴とする請求項4に記載した帯鋸盤。
【請求項6】
前記帯鋸刃走行経路上で前記駆動ホイール又は/及び前記従動ホイールに前記帯鋸刃が架設されている部分の所定位置には、ホイールの回転及び前記帯鋸刃がホイールから離脱するのを停止させるストッパ手段が配設されている、ことを特徴とする請求項3,4又は5に記載した帯鋸盤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載した帯鋸刃巻取装置における前記帯鋸刃巻取部は、前記帯鋸刃の巻取り後に、ガントリー型クレーンの作動部分に設けた把持手段により把持された状態で、前記帯鋸盤から取り外されて廃棄ルートに運搬される、ことを特徴とする帯鋸刃巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯鋸刃巻取装置及びそれを備えた帯鋸盤に関し、殊に、放射性物質で汚染されたワークの切断作業や放射線被曝の畏れがある等の人体に危険が及ぶような状況で切断作業を行う帯鋸盤において、使用した帯鋸刃を巻取って回収するための帯鋸刃巻取装置及びその装置を備えた帯鋸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ホイールと従動ホイールに架設された帯鋸刃をエンドレスに走行させてワークの切断作業を行う帯鋸盤が広く普及しているが、その高い切断能力と切断速度により通常の工具では切断が困難とされる硬質のワークや大きなサイズのワークを切断する目的で多用されており、様々な状況においてワーク切断作業の効率化を実現している。
【0003】
しかし、摩耗した帯鋸刃を交換する際には、駆動ホイールと従動ホイールに架設した使用済みの帯鋸刃を作業者が取り外して新品と交換する作業が必要になるが、その作業において手間と危険を伴いやすいという問題があった。また、放射線物質で汚染されたワークの切断作業や放射線被曝の畏れのある作業環境において、人手による帯鋸刃の交換は作業者の安全確保の観点から回避することが推奨されている。
【0004】
このような問題に対し、特開平6-262429号公報において、2つのホイールを内装したカッティングヘッドの上部フレームに固定鋸刃保持輪とこれに近接離反可能な移動鋸刃保持輪を設けた板状体を有して帯鋸刃をストック可能なツールストッカを備えており、その板状体が回転可能とされながらその両面に帯鋸刃を保持可能なものとして、一方の面側で古い帯鋸刃を回収し他方の面側で新しい帯鋸刃を供給可能とした帯鋸刃交換装置が提案されており、板状体の両面をストッカとして使用したことで従来の帯鋸刃交換装置よりもコンパクトなものとしながら、人手による帯鋸刃の交換作業の手間を軽減可能としている。
【0005】
しかしながら、近年においては、放射線治療施設や原子力発電所等において放射性物質で汚染又は放射能を賦与された設備・機器を廃棄するために、それらを所定の廃棄容器に収納可能なサイズまで切断するニーズが増大している。この場合、その切断作業のためのスペースが通常よりも限定されるとともに、作業により汚染される帯鋸盤及び帯鋸刃交換装置も最終的には安全に廃棄する必要性が生じることになる。
【0006】
そこで、本願出願人・発明者らは、先に特開2017-144496号公報において、クレーン手段で吊り下げながら操作されて帯鋸盤の帯鋸刃を交換する帯鋸刃交換装置の帯鋸刃保持板について、電磁石による磁力で板面上に保持した帯鋸刃の着脱操作を行うものとして、その帯鋸刃保持板を表裏回転させながら、古い帯鋸刃を保持板に保持する操作と新しい帯鋸刃を帯鋸盤に装着する操作を連続的に実施可能としたものを提案しており、少ない部品点数の簡易な装置により帯鋸刃を遠隔的且つ迅速に交換可能としながら、帯鋸刃交換装置の廃棄容量を小さく抑えることを実現した。
【0007】
ところが、前述したものを含む従来の技術に共通して、使用済みの帯鋸刃は放射性物質で汚染されたワークが刃先に溶着する場合が多いことから、これも最終的には放射性物質で汚染された二次廃棄物として安全に廃棄する必要性が生じている。そのため、鋭利な刃先を有して取外し後に弾性反発力で環状に広がりやすい帯鋸刃を、コンパクトな容量に纏めながら廃棄完了まで安全に取り扱えるようにすることも課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-262429号公報
【文献】特開2017-144496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、帯鋸盤によるワーク切断作業について、使用後の帯鋸刃をコンパクトな容量で安全に廃棄可能としながらその交換作業を迅速に完了できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、駆動ホイールと従動ホイールに環状の帯鋸刃が架設され駆動ホイールの回転駆動により走行する帯鋸刃でワークの切断作業を行うものとした帯鋸盤における帯鋸刃走行経路上の所定位置に付設され、その帯鋸刃の交換時にそれを帯鋸刃巻取部で巻取って収納することで帯鋸盤から取外し可能な状態にする帯鋸刃巻取装置であって、その帯鋸刃巻取部は、その中心位置を通って帯鋸刃を通過させるための開口部が帯鋸刃を収納する収納ケースの外周面対角位置に形成されているとともに帯鋸盤側に着脱可能な状態で装着され、その収納ケースの中心位置には、帯鋸刃の通過方向に対しその中心軸線を直角にして配置されるとともに基端側にモータを有した巻取軸が、その中心軸線の位置で帯鋸刃を直角に通過させるスリットが先端面から形成された状態で挿設されており、帯鋸刃の交換時に、その環状の少なくとも1部が切断されて1本の帯状となった帯鋸刃が、スリットを挿通した状態で巻取軸が回転動作を行うことによりその巻取軸で巻取られて収納ケース内に総て収納され、所定の着脱操作手段により帯鋸刃巻取部とともに帯鋸盤から取り外される、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、帯鋸盤に装着した帯鋸刃の走行経路の途中に、帯鋸刃を巻取軸で巻取りながら収納ケース内に収納する帯鋸刃巻取装置を配置して、帯鋸刃の巻取り後にその帯鋸刃巻取部を取り外して帯鋸刃とともに廃棄可能としたことで、交換する帯鋸刃をコンパクトな容量に納めながらこれが外部に露出しない状態を確保するものとして、安全に廃棄可能としながら帯鋸刃の交換作業を迅速に完了することができる。
【0012】
また、この帯鋸刃巻取装置において、その巻取軸は、その先端側でスリットを間に形成している一対の挟み爪の間隔を変更するように先端側を開閉する動作が可能とされており、帯鋸刃の巻取り時に、スリットに挿通した帯鋸刃を挟み爪で挟み込んだ状態とし、ワーク切断作業時及び帯鋸刃巻取部の取り外し時には挟み爪を開いてスリットの幅を帯鋸刃の厚さよりも広げるものとされている、ことを特徴としたものとすれば、その巻取軸が切断作業時と帯鋸刃交換時には帯鋸刃に対する抵抗にはならず、帯鋸刃巻取り時には巻取り作業を行いやすい状態を確保することができる。
【0013】
さらに、駆動ホイールと従動ホイールに環状の帯鋸刃が架設され駆動ホイールの回転駆動により走行する帯鋸刃でワークの切断作業を行うとともにその帯鋸刃走行経路上の所定位置に、上述した帯鋸刃巻取装置が付設されている帯鋸盤において、その帯鋸刃走行経路上で帯鋸刃巻取装置の付設位置とは異なる位置に、帯鋸刃を切断するための帯鋸刃切断手段が配設されており、遠隔的に環状の帯鋸刃を所定位置で切断する操作が可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、環状の帯鋸刃を交換作業時に切断して1本の帯状にすることで、帯鋸刃巻取装置で巻取り可能な状態にすることができる。
【0014】
この場合、その帯鋸刃切断手段は、帯鋸刃走行経路上でワーク切断部の左右両側に対で配設されている、ことを特徴としたものとすれば、巻取りに好適な位置を選んで帯鋸刃を切断できることに加え、ワークに帯鋸刃が食い込んで停止した場合には、遠隔的操作でワークの両側で切断することで帯鋸刃を巻取り可能な状態にして作業を継続させることができる。
【0015】
また、この帯鋸刃巻取装置は、駆動ホイールと従動ホイールに架設されて帯鋸刃が互いに反対方向に進むように並列した2条の走行部分のうち、ワーク切断部側とは反対側の条において、駆動ホイール寄りと従動ホイール寄りの左右2箇所に付設されている、ことを特徴としたものとすれば、2箇所の切断位置に応じて帯鋸刃を巻取りやすい方の帯鋸刃巻取装置を使用しながら、巻取り作業を実施することができる。
【0016】
さらにまた、上述した帯鋸盤において、その帯鋸刃走行経路上で駆動ホイール又は/及び従動ホイールに帯鋸刃が架設されている部分の所定位置には、ホイールの回転及び帯鋸刃がホイールから離脱するのを停止させるストッパ手段が配設されている、ことを特徴としたものとすれば、切断された帯鋸刃がホイールから離脱して巻取り作業を妨げてしまう事態を回避することができる。
【0017】
加えて、上述した帯鋸刃巻取装置及び帯鋸盤の帯鋸刃巻取部は、帯鋸刃の巻取り後に、ガントリー型クレーンの作動部分に設けた把持手段により把持された状態で、帯鋸盤から取り外されて廃棄ルートに運搬される、ことを特徴としたものとすれば、使用後の帯鋸刃を作業者の人手を要することなく安全かつスムーズに廃棄することができる。
【発明の効果】
【0018】
帯鋸刃巻取部で帯鋸刃を巻取りながら収納する帯鋸刃巻取装置を配置して、巻取り後に帯鋸刃巻取部のみを取り外して帯鋸刃とともに廃棄可能とした本発明によると、交換する帯鋸刃をコンパクトな容量で安全に廃棄可能としながら、その交換作業を迅速に完了できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の帯鋸盤に付設した帯鋸刃巻取装置を拡大した斜視図である。
【
図4】
図2の帯鋸刃巻取装置に帯鋸刃が挿通されている状態の斜視図である。
【
図5】
図4の状態の帯鋸刃巻取装置を帯鋸刃巻取部の位置で縦断して拡大した縦断面図である。
【
図6】
図1の帯鋸盤の帯鋸刃切断手段で帯鋸刃を切断している状態を示す拡大部分斜視図である。
【
図7】
図5の帯鋸刃巻取装置で帯鋸刃を巻取る手順を説明するための縦断面図であって、(A)は巻取軸先端側の挟み爪で帯鋸刃を挟み込んだ状態、(B)は巻取軸回転開始時の状態である。
【
図8】帯鋸刃を巻取る手順を説明するための
図7から続く縦断面図であって、(A)は巻取り動作中の状態、(B)は巻取り完了の状態である。
【
図9】
図8(B)の巻取り完了後の帯鋸刃巻取装置の帯鋸刃巻取部を帯鋸刃巻取装置の本体部側から脱抜して帯鋸盤から取り外した状態を示す拡大部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態である帯鋸刃巻取装置10,10を備えた帯鋸盤1を示している。この帯鋸盤1は、主に放射線治療施設や原子力発電所等において放射性物質で汚染又は放射能を賦与された設備・器具を廃棄するために、それらを所定の廃棄容器等に収納可能なサイズまで切断するための装置であって、その駆動ホイール71aと従動ホイール71bに環状の帯鋸刃400が架設されて駆動ホイール71aの回転駆動でエンドレスに走行する帯鋸刃400によりワークの切断作業を行うものである。
【0022】
また、この帯鋸盤1では、その帯鋸刃400を遠隔的に交換することを想定しており、ガントリークレーン等で吊り下げられて三次元的に移動操作される特許文献2に記載したような図示しない帯鋸刃交換装置等を用いて、帯鋸盤1の上部に露出している使用済みの帯鋸刃400を、作業者が触れることなく安全に交換できるようにしている。
【0023】
そして、本実施の形態の帯鋸盤1においては、その帯鋸刃400の走行経路上に付設された
図2に示す帯鋸刃巻取装置10を用いて、帯鋸刃400の交換時にその帯鋸刃巻取部11を用いて巻取ることにより、帯鋸刃400をコンパクトな状態で収納ケース111内に収納した状態にして、帯鋸盤1から取外し可能な状態にする点を特徴としている。
【0024】
このように、帯鋸刃400の走行経路上でこれを巻取りながら帯鋸刃巻取部11の収納ケース111内に収納する機能を備えた帯鋸刃巻取装置10を付設したことにより、帯鋸刃400の巻取り後に、その帯鋸刃巻取部11を取り外して帯鋸刃400とともに廃棄可能な状態にして、廃棄する帯鋸刃400をコンパクトな容量に納めながらこれが外部に露出しない状態を確保することができ、その交換作業を迅速に完了することができる。
【0025】
図2の斜視図及び
図3の分解斜視図を参照しながら、帯鋸刃巻取装置10の構成を詳細に説明すると、帯鋸刃巻取装置10の先端側部分を構成している帯鋸刃巻取部11は、円筒状の収納ケース111の中心位置で帯鋸刃400を通過させる開口部111a,111bが、その外周面の対角位置に形成されているとともに、その開口端の上下側に1対のローラ105が各々配設されており、帯鋸盤1上部側に架設した支持板71表面側で着脱操作を行えるように、支持板71に固定された本体部12先端側の収納ケース受け130に対し、着脱自在に装着されている。
【0026】
また、収納ケース111の内部には、帯鋸刃400を巻くためのボビン100が回転可能に配設され、収納ケース111の開口部は、蓋102a,102bがネジ90で収納ケース111側に螺着されて閉鎖されているが、ボビン100にはスリット100aが、蓋102a,102bの間にはスリット10a(
図4参照)が形成されており、帯鋸刃巻取部11の先端側から帯鋸刃400を挿入できるようになっている。
【0027】
さらに、帯鋸刃巻取部11の中心位置には、帯鋸刃400の走行方向に対しその中心軸線を直角にして配置され、その基端側の回転体122先端のクリップユニット122aを介して接続された巻取軸11が挿設されている。この巻取軸101は、その中心軸線位置で帯鋸刃400を直角に通過させるためのスリット101aが先端面から形成されている。
【0028】
この巻取軸11は、その先端側で間にスリット101aを形成している一対の挟み爪101b,101cの間隔を変更するように、回転体122のクリップユニット122aを介して先端側を開閉する動作が可能とされており、その巻取り動作の際に、
図4に示すようにスリット101aに挿通した帯鋸刃400を挟み爪101b,101cで挟み込んだ状態にすることができる。
【0029】
そして、ワーク切断作業時及び帯鋸刃巻取部11の取り外し時には、
図5に示すように、挟み爪101b,101cを開いてスリットの101aの幅を帯鋸刃400の厚さよりも広げるようになっており、これにより、巻取軸101が切断作業時及び帯鋸刃400の交換時に抵抗にならない状態を確保することができ、その作業を行いやすいものとしている。
【0030】
また、本実施の形態の帯鋸盤1においては、
図6に示すように、帯鋸刃400走行位置上のワーク切断部の左右側に配置されて帯鋸刃400を支持する左右1対のアーム20a,20bの先端部に設けたインサート22の側面側には、帯鋸刃400をその位置で切断する帯鋸刃切断手段として、上下にスライド動作を行う剪断刃23が各々配設されており、遠隔操作によりその位置で帯鋸刃400を切断できるようになっている。
【0031】
この剪断刃23を用いることで、環状の帯鋸刃400の交換時にその一部を切断することで1本の帯状にして、帯鋸刃巻取装置10で巻取り可能な状態にすることができる。また、ワークに帯鋸刃400が食い込んで停止した場合には、ワークの両側で切断してそれを送り出すことで、残った帯鋸刃400を巻取り可能な状態にすることもできる。
【0032】
以下に、帯鋸刃400の交換時における帯鋸刃巻取部11内の動作について、さらに詳細に説明すると、
図6の剪断刃23の動作により、その環状の少なくとも1部が切断されて1本の帯状となった帯鋸刃400は、
図7(A)に示すように、回転体122のクリップユニット122aの作動により挟み爪101b,101cを閉じることで挟み込まれ、巻取軸101の先端側に固定される。
【0033】
その後、巻取軸101が帯鋸刃400を挟み込んだ状態のまま、本体部12のモータケース120に内装したモータ121が回転駆動して回転体122を回転させることで、帯鋸刃400の巻取り動作が開始される。この巻取り動作の際には収納ケース111に内装したボビンも巻取軸とともに回転しながら、その軸部の回りに帯鋸刃400を巻回することになる。
【0034】
そして、
図8(A)に示すように、ボビン100の軸部外周側に帯鋸刃400が渦巻き状に重ねられながら巻き取られていき、
図8(B)に示すように、その1本の帯鋸刃400が総て帯鋸刃巻取部11の収納ケース111内に巻取られることにより、その両端側の切断部分も含めて総てケース内に収納された状態になる。
【0035】
帯鋸刃400が帯鋸刃巻取部11に総て収納された状態になったら、帯鋸刃400の交換作業に使用する図示しないガントリー型クレーンで三次元的に移動するロボットハンド等の着脱操作手段を用いて、
図9に示すように巻き取られた帯鋸刃400を帯鋸刃巻取部11とともに把持しながら帯鋸盤1側から取り外し、廃棄ルートに運搬するものである。尚、この着脱操作手段としては、正確な位置決めを確保する観点で、マシニングセンターのツールチェンジャーに用いるものと同様の機能を備えたものが好適である。
【0036】
このように、本実施の形態の帯鋸刃巻取装置10及びそれを備えた帯鋸盤1を用いることで、鋭利な刃先に放射性物質が溶着した状態で弾性的に広がりやすく取り扱うには極めて危険な使用済みの帯鋸刃400を、コンパクトな容量に納めて外部に露出しない状態を確保しながら、遠隔的操作により人の手に触れない状態にて安全かつ迅速に廃棄可能なものとしている。
【0037】
尚、上述した帯鋸刃巻取装置10は、
図1に示したように、駆動ホイール71aと従動ホイール71bに架設された帯鋸刃400が上下に並列している2条の走行経路のうち、ワーク切断側とは反対側の条に配置されたアイドラホイール71cの左右側で、駆動ホイール71a寄りと従動ホイール71b寄りの2箇所に各々付設されたものとなっているが、このように2箇所の離れた位置に配置したことで、2箇所の切断位置に応じて帯鋸刃400を巻取りやすい方の帯鋸刃巻取装置10を使用しながら巻取り作業を行うことができる。
【0038】
また、本実施の形態の帯鋸盤1においては、
図1に示すように、その帯鋸刃走行経路上のうち、駆動ホイール71a及び従動ホイール71bに帯鋸刃400が架設されている部分には、帯鋸刃400の移動とホイールの回転を停止させるストッパ手段としてのブレーキ30が各々配設されており、切断された帯鋸刃400がずれ動いたりホイール上から脱落したりすることを回避できるようになっており、その作動は、遠隔的な操作のほか、帯鋸刃のテンションンに変化があったことを検知した場合に、自動的に行われるようにする方式が想定される。
【0039】
以上、述べたように、帯鋸盤による切断作業について、本発明により、使用後の帯鋸刃をコンパクトな容量で安全に廃棄可能としながら、その交換作業を迅速に完了できるようになった。
【符号の説明】
【0040】
1 帯鋸盤、10 帯鋸刃巻取装置、11 帯鋸刃巻取部、12 本体部、23 剪断刃、30 ブレーキ、71a 駆動ホイール、71b 従動ホイール、101 巻取軸、101a スリット、101b,101c 挟み爪、111 収納ケース、111a,111b 開口部、121 モータ、122 回転体、400 帯鋸刃
【要約】 (修正有)
【課題】帯鋸盤によるワーク切断作業について、使用後の帯鋸刃をコンパクトな容量で安全に廃棄可能としながらその交換作業を迅速に完了できるようにする。
【解決手段】帯鋸盤の帯鋸刃走行経路上に付設され帯鋸刃の交換時にそれを帯鋸刃巻取部11で巻取って収納することで帯鋸盤から取外し可能な状態にする帯鋸刃巻取装置10であって、帯鋸刃巻取部11は、開口部111a,111bを巻取ケース111の外周面対角位置に有するとともに帯鋸盤側に着脱可能に装着され、巻取ケース111の中心位置には、基端側にモータ121を有した巻取軸101が帯鋸刃を直角に通過させるスリット101aを有して挿設されており、帯鋸刃交換時に、帯鋸刃がスリット101aを挿通した状態で巻取軸101が回転動作を行うことで、帯鋸刃が巻取られて巻取ケース111内に収納され帯鋸刃巻取部11とともに帯鋸盤から取り外されるものとした。
【選択図】
図3