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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-04
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】電極チップ
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/30 20060101AFI20220113BHJP
   B23K 35/04 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B23K11/30
B23K35/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025575
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2021-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143112
【氏名又は名称】株式会社向洋技研
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 和裕
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 孝治
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 美利
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246459(JP,A)
【文献】特開平08-174235(JP,A)
【文献】特開2013-107133(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010606(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
B23K 35/00 - 35/12、35/16 - 35/22、35/24、35/26、35/28、
35/30 - 35/32、35/34、35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部と、前記先端部から一方向に延びる円筒形状を成す胴部と、を有し、前記胴部の肉厚が、前記先端部から開口端に向かうに従って徐々に薄くなる電極チップであって、
前記胴部の開口端側に設けられ、前記胴部の外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、表面が絶縁性を有する金属製の第1の環状体を備え、
前記胴部の開口端側の部分の肉厚が、該開口端側が薄くなった階段形状を採り、
前記第1の環状体は、前記胴部の開口端側の部分が肉厚の薄い部分の外径と略同程度の内径を有するとともに、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の厚い部分の外径より大きな外径を有する、
電極チップ。
【請求項2】
被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部と、前記先端部から一方向に延びる円筒形状を成す胴部と、を有し、前記胴部の肉厚が、前記先端部から開口端に向かうに従って徐々に薄くなる電極チップであって、
前記胴部の開口端側の外面に設けられ、該外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、外面側に、周方向に沿って延びる溝部を有する金属製の第2の環状体と、
前記第2の環状体の前記溝部に装着され、絶縁性を有する環状の弾性部材と、
を備える、
電極チップ。
【請求項3】
前記胴部の開口端側の部分の肉厚が、該開口端側が薄くなった階段形状を採り、
前記第2の環状体は、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の薄い部分の外径と略同程度の内径を有するとともに、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の厚い部分の外径より大きな外径を有する、
請求項に記載の電極チップ。
【請求項4】
前記弾性部材は、シリコンゴムからなる、
請求項又は請求項に記載の電極チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接装置に用いて好適な電極チップに関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接装置には、水平ガンとテーブル電極とを備えたものや、垂直ガンとテーブル電極とを備えたものがある。また、水平ガンと垂直ガンの両方とテーブル電極とを備えたものもある。水平ガン及び垂直ガンのそれぞれの先端には、テーブル電極と対を成す電極チップ(“キャップチップ”とも呼ばれる)が装着される。水平ガンを備えた抵抗溶接装置としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。また、垂直ガンを備えた抵抗溶接装置としては、例えば特許文献2に記載されたものがある。これらの文献に記載された技術は、本出願人によって提案されたものである。
【0003】
図5は、水平ガンの先端部分を示す図である。同図において、水平ガンのシャンクホルダ10の先端部分にはシャンク11が装着され、シャンク11の先端部分には電極チップ12が装着される。同図に示すシャンク11は屈曲形状を成しており、オフセットシャンクと呼ばれる。なお、シャンク11には、直線形状のものもある。電極チップ12は、先端部分が球形を成しており、先端球型と呼ばれる。なお、電極チップ12には、先端部分が平坦な先端平型や先端が平坦となった円錐形状の円錐先端平型などもある。電極チップ12は消耗品であるため、正常使用ができなくなると新品と交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-114545号(特許第6504184号)公報
【文献】特開2020-185592号(特許第6590107号)公報
【文献】特開平8-174235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被溶接物に対して溶接を行う場合、電極チップ12の先端部分以外の部分が被溶接物500に接触してしまうことがある。このとき、電極チップ12の先端部分が被溶接物500に接触していると、先端部分を経由した経路と、先端部分以外の部分を経由した経路の2つの経路で電流が流れる、所謂分流が生じることになる。分流が生じると、溶接に必要とする電流が得られなくなって、正常な溶接ができなくなる。
【0006】
ここで、図6及び図7は、水平ガンによるスポット溶接時の様子を示す図である。図6は、電極チップ12の先端部分のみ被溶接物500に接触している場合を示す図である。同図に示すように、電極チップ12の先端部分のみ被溶接物500に接触する場合、溶接点P1を通過する経路R1のみで電流I1が流れる。この場合、溶接に必要な電流I1が得られるので、正常な溶接ができる。一方、図7は、電極チップ12の先端部分とそれ以外の部分が同時に被溶接物500に接触している場合を示す図である。同図に示すように、電極チップ12の先端部分とそれ以外の部分が同時に被溶接物500に接触する場合、電極チップ12の先端部分を経由した経路R1で電流I2が流れるとともに、先端部分以外の部分を経由した経路R2で電流I3が流れる。即ち、分流が生じる。この場合、溶接に必要な電流I1が得られないので、正常な溶接ができない。なお、被溶接物500は、2枚の鋼鈑501,502を重ね合わせてなる板組である。
【0007】
このような課題に対し、例えば特許文献3には、電極チップの外周面に装着する保護サックが記載されている。この保護サックは、絶縁材料より成り、電極チップの外周面に装着することで、電極チップの先端部分以外の部分が被溶接物に接触しないように保護するものである。
【0008】
ところで、電極チップは、シャンクの先端部分に嵌着するための空間が形成された胴部を有しており、この胴部は、開口端に近づくに従って肉厚が徐々に薄くなるテーパ状に形成されている。図8は、従来の一般的な電極チップ12を示す縦断面図である。同図に示すように、胴部121には、シャンクに差し込むための空間122が形成されている。胴部121をテーパ形状とすることで、シャンク11との接触面を大きくとることができるとともに、シャンク11から容易に抜けないようにすることができる。なお、図8に示す電極チップ12は、その先端部124が球形を成した先端球型と呼ばれるものである。
【0009】
しかしながら、電極チップ12においては、その胴部121をテーパ形状としたことで、開口端123に近づくに従って機械的強度が低下して行くことになる。特に、電極チップ12には比較的硬度の低い銅(例えば、クロム銅で硬度(HR)はB72)が用いられるため、電極チップ12をシャンク11に取り付ける毎に開口部分が徐々に広がり、シャンク11から抜け易くなってしまう。電極チップ12をシャンク11に取り付ける頻度が高くなると、電極チップ12の先端部124が摩耗して使用不能になる前に、使用不能になってしまう虞がある。なお、電極チップ12の硬度を上げるためにベリリウム銅(硬度(HR)はB92~96)や銅タングステン(硬度(HR)はB95~)を用いることもあるが、これらの材料は導電率が低いため、電流値に影響を与える。また、銅タングステンは高価である。クロム銅、ベリリウム銅、銅タングステンの導電率(IACS%)は、クロム銅で75、ベリリウム銅で55、銅タングステンで30~48である。
【0010】
一方、特許文献3に記載された電極チップにおいては、保護サックを有したことで、先端部分以外の部分が被溶接物に接触するのを防止できるが、空間部分の機械的な強度が図られていないため、これにおいても、電極チップの先端部が摩耗して使用不能になる前に、使用不能になってしまう虞がある。
【0011】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、溶接時に電極チップの先端部分以外の部分が被溶接物に接触するのを防止できるとともに、電極チップのシャンクに装着する側の部分の機械的強度を鉄やステンレス程度に保つことができる電極チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電極チップは、被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部と、前記先端部から一方向に延びる円筒形状を成す胴部と、を有し、前記胴部の肉厚が、前記先端部から開口端に向かうに従って徐々に薄くなる電極チップであって、前記胴部に設けられ、前記胴部の外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、表面が絶縁性を有する金属製の第1の環状体を備える。
【0013】
上記構成によれば、電極チップの胴部に設けた金属製の第1の環状体が、電極チップの先端部以外の部分が被溶接物に接触するのを防止するので、電極チップの先端部以外の部分が被溶接物に接触することによる分流が起こらず、常に正常な溶接が可能となる。
【0014】
また、金属製の第1の環状体が胴部の機械的強度を大きく保つので、電極チップのシャンクに対する交換頻度が高くなっても、電極チップの開口端側が広がるのを防止できる。
【0015】
また、上記構成において、前記胴部の開口端側の部分の肉厚が、該開口端側が薄くなった階段形状を採り、前記第の環状体は、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の薄い部分の外径と略同程度の内径を有するとともに、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の厚い部分の外径より大きな外径を有する。
【0016】
上記構成によれば、第1の環状体が電極チップの胴部の開口端側に嵌合するので、第1の環状体が電極チップの先端部分側にずれてしまうことがない。
【0017】
上記構成において、前記第1の環状体は、KCFと呼ばれる表面皮膜処理によって絶縁性を有する特殊ステンレスからなる。
【0018】
上記構成によれば、第1の環状体の表面が絶縁性を有するので、第1の環状体の表面上に絶縁性を有する部材を設けることなく、被溶接物との間の絶縁を保つことができる。
【0019】
本発明の電極チップは、被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部と、前記先端部から一方向に延びる円筒形状を成す胴部と、を有し、前記胴部の肉厚が、前記先端部から開口端に向かうに従って徐々に薄くなる電極チップであって、前記胴部の開口端側の外面に設けられ、該外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、外面側に、周方向に沿って延びる溝部を有する金属製の第2の環状体と、前記第2の環状体の前記溝部に装着され、絶縁性を有する環状の弾性部材と、を備える。
【0020】
上記構成によれば、電極チップの胴部に設けた金属製の第2の環状体と、この第2の環状体の外面側に設けた絶縁性を有する環状の弾性部材とが、電極チップの先端部以外の部分が被溶接物に接触するのを防止するので、電極チップの先端部以外の部分が被溶接物に接触することによる分流が起こらず、常に正常な溶接が可能となる。
【0021】
また、金属製の第2の環状体が胴部の機械的強度を大きく保つので、電極チップのシャンクに対する交換頻度が高くなっても、電極チップの開口端側が広がるのを防止できる。
【0022】
また、上記構成において、前記胴部の開口端側の部分の肉厚が、該開口端側が薄くなった階段形状を採り、前記第2の環状体は、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の薄い部分の外径と略同程度の内径を有するとともに、前記胴部の開口端側の部分の肉厚の厚い部分の外径より大きな外径を有する。
【0023】
上記構成によれば、第2の環状体が電極チップの胴部の開口端側に嵌合するので、電極チップの先端部側にずれてしまうことがない。
【0024】
また、上記構成において、前記弾性部材は、シリコンゴムからなる。
【0025】
上記構成によれば、弾性部材がシリコンゴムからなるので、第2の環状体が導電性を有する部材であっても、被溶接物との間の絶縁を保つことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、溶接時に電極チップの先端部分以外の部分が被溶接物に接触するのを防止できるとともに、電極チップのシャンクに装着する側の部分の機械的強度を鉄やステンレス程度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る電極チップを備えた抵抗溶接装置の外観を示す側面図
図2図1の電極チップの縦断面を示す図
図3図1の電極チップを使用して溶接している様子を示す図
図4図1の電極チップの変形例の縦断面を示す図
図5】抵抗溶接装置の水平ガンの先端部分を示す図
図6】従来の電極チップの先端部分のみ被溶接物に接触している場合を示す図
図7】従来の電極チップの先端部分とそれ以外の部分が同時に被溶接物に接触している場合を示す図
図8】従来の電極チップを示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る電極チップを備えた抵抗溶接装置1の外観を示す側面図である。同図において、抵抗溶接装置1は、溶接ガンとして水平ガン20を備えている。水平ガン20は、ガン本体201と、ハンドル202と、シャンクホルダ203と、シャンク204と、電極チップ205と、を備える。シャンク204は、シャンクホルダ203の先端部に装着される。電極チップ205は、先端球型と呼ばれるものであり、シャンク204の先端部に装着される。また、電極チップ205には、例えばクロム銅等の導電率(IACS%)の高いものを用いている。
【0030】
ガン本体201は、その基端部がガンブラケット330によって垂直方向に揺動自在に支持される。ガン本体201の基端部は、溶接時に、加圧シリンダ301によって上方へ引き上げられる。ガン本体201の基端部が上方へ引き上げられることで、ガン本体201の先端部側が下方へ回動し、電極チップ205が被溶接物500に当たる。
【0031】
また、抵抗溶接装置1は、溶接トランス7に水平ガン20を接続するための給電ケーブル6を備えている。給電ケーブル6は、抵抗溶接装置1の支持アーム5の上面側に持ち上げられるように支持される。給電ケーブル6は、その一端が溶接トランス7の出力端に接続され、他端が水平ガン20のシャンクホルダ203に接続される。被溶接物500は、テーブル電極9に載置される。水平ガン20は、溶接トランス7の正側(電源の正側)に接続される。テーブル電極9は、溶接トランス7の負側(電源の負側)に接続される。
【0032】
電極チップ205は、溶接箇所が狭くなった被溶接物に対して溶接を行う場合に、先端部以外の部分が被溶接物に接触するのを防止できる構造を有している。図2は、電極チップ205の縦断面を示す図である。同図に示すように、電極チップ205は、被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部2051と、先端部2051から一方向(図では、上方向)に延びる円筒形状を成す胴部2052と、胴部2052に装着する金属製の環状体(第1の環状体)2054と、を備えている。なお、先端部2051と胴部2052は一体化している。
【0033】
胴部2052は、その肉厚が、先端部2051から開口端2053に向かうに従って徐々に薄くなるテーパ形状を成している。胴部2052の開口端2053側の部分の肉厚は、開口端2053側が薄くなった階段形状を成している。環状体2054は、断面が長方形状となった環状に形成されたものである。環状体2054は、胴部2052の開口端2053側の部分の肉厚の薄い部分の外径と略同程度の内径を有し、また胴部2052の開口端2053側の部分の肉厚の厚い部分の外径より大きな外径を有している。環状体2054には、KCFと呼ばれる表面皮膜処理によって絶縁性を有する特殊ステンレスが用いられている。なお、環状体2054における表面皮膜処理は、環状体2054の内面を除外しても構わない。
【0034】
環状体2054の表面を表面皮膜処理することで絶縁性を保つことができるので、環状体2054が被溶接物500に接触してもその接触箇所から電流が流れることはない。また、環状体2054は、胴部2052の外面から径方向外向きに突出する肉厚を有しているので、先端部2051以外の部分が被溶接物500に接触するのを防止できる。即ち、電極チップ205の胴部2052と被溶接物500との間の絶縁を保つことができる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る電極チップ205を使用して溶接している様子を示す図である。同図に示すように、電極チップ205の胴部に設けた環状体2054が、電極チップ205の胴部2052が被溶接物500に接触するのを防止するので、先端部2051以外の部分からの分流が起こらない。即ち、溶接点P1を通過する経路R1のみで電流I1が流れる。
【0036】
環状体2054は、電極チップ205の胴部2052が被溶接物500に接触するのを防止する以外に、胴部2052の機械的強度を大きく保つことができるので、電極チップ205のシャンク204に対する交換頻度が高くなっても、電極チップ205の開口端側が広がるのを防止できる。
【0037】
また、環状体2054は、胴部2052の開口端2053側の肉厚の薄い部分に嵌合する形で取り付けられるので、位置がずれることがない。これにより、開口端2053側の肉厚の薄い部分の強度向上に寄与する。
【0038】
本実施形態に係る電極チップ205を備えた抵抗溶接装置1は、以下のようにして溶接を行う。
テーブル電極9上に被溶接物500を載置し、その被溶接物500の溶接箇所に水平ガン20の先端部分(電極チップ205が装着された部分)を当てる。そして、この状態で溶接を開始する操作を行うことで、加圧シリンダ301が作動する。加圧シリンダ301が作動することによって、ガン本体201の先端部側が下方へ回動し、電極チップ205が被溶接物500に強く当接する。また、加圧シリンダ301の作動と同時に通電されて、被溶接物500の溶接箇所における溶接が行われる。
【0039】
このように、本実施形態に係る電極チップ205によれば、胴部2052の開口端2053側に、少なくとも外面が絶縁性を有する金属製の環状体2054を有するので、先端部2051以外の部分が被溶接物500に接触するのを防止でき、先端部2051を経由した経路R1と、該先端部2051以外の部分を経由した経路R2の、2つの経路で電流が流れる所謂分流が生じることがなく、常に正常な溶接が可能となる。
【0040】
また、環状体2054を有することで、胴部2052の機械的強度を大きく保つことができるので、電極チップ205のシャンク204に対する交換頻度が高くなっても、電極チップ205の開口端2053側が広がることがなく、シャンク204から抜け易くなることを防止できる。
【0041】
なお、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0042】
例えば、上述した実施形態に係る電極チップ205においては、胴部2052の開口端2053側に、表面皮膜処理によって絶縁性を持たせた特殊ステンレスからなる環状体2054を設けたが、図4に示すような環状体2064も実現可能である。同図は、その電極チップ206の縦断面を示す図である。同図に示すように、電極チップ206は、胴部2062の開口端2063側の外面に設けられ、該外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、外面側に、周方向に沿って延びる溝部20641を有する金属製の環状体(第2の環状体)2064と、環状体2064の溝部20641に装着され、絶縁性を有する環状の弾性部材2065と、を備える。環状体2064には、表面皮膜処理を施していない一般的なステンレスを用いる。環状体2064と、環状体2064に装着する弾性部材2065とによって、電極チップ206の胴部2062と被溶接物500との間の絶縁を保つことができる。また、環状体2064に溝部20641を形成し、その溝部20641に弾性部材2067を嵌め込むことによって、弾性部材2067の位置ずれを防止できる。弾性部材2067には、例えばシリコンゴムが好適である。
【0043】
なお、弾性部材2067を使用せず、環状体2064の外面側に耐熱性の優れたフッ素樹脂(例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)等を被覆するようにすることも可能である。この場合、環状体2064には溝部20641を形成する必要はない。このように、弾性部材2067を用いたり、フッ素樹脂を被覆したりすることでも、電極チップ206の胴部2062と被溶接物500との間の絶縁を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、抵抗溶接装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 抵抗溶接装置
5 支持アーム
6 給電ケーブル
7 溶接トランス
9 テーブル電極
20 水平ガン
201 ガン本体
202 ハンドル
203 シャンクホルダ
204 シャンク
205,206 電極チップ
330 ガンブラケット
2051 先端部
2052 胴部
2053,2063 開口端
2054,2064 環状体
2067 弾性部材
20641 溝部
【要約】
【課題】溶接時に電極チップの先端部分以外の部分が被溶接物に接触するのを防止できるとともに、電極チップのシャンクに装着する側の部分の機械的強度を鉄やステンレス程度に保つことができる電極チップを提供する。
【解決手段】被溶接物の溶接箇所に接触させる先端部2051と、先端部2051から一方向に延びる円筒形状を成す胴部2052と、を有し、胴部2052の肉厚が、先端部2051から開口端2053に向かうに従って徐々に薄くなる電極チップであって、胴部205に、胴部205の外面から径方向外向きに突出する肉厚を有するとともに、表面が絶縁性を有する金属製の環状体2054を設けた。環状体2054には、KCFと呼ばれる表面皮膜処理によって絶縁性を有する特殊ステンレスが好適である。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8